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急激な肺高血圧症に陥った犬の動脈管開存症の一例

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Academic year: 2021

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麻布大学雑誌 第17・18巻 2008年

第83回麻布獣医学会 一般演題6

急激な肺高血圧症に陥った犬の動脈管開存症の一例

飯野 亮太1,赤塚 巧2,市川智津子2,藤井 洋子1,若尾 義人1 1麻布大学,2赤塚犬猫病院

【はじめに】

 犬の動脈管開存症(PDA)はその血行動態により,

三一右短絡から左心不全に陥る例が多いが,症例によ っては重度の肺高血圧により右一左短絡を発現する場 合がある。右一左短絡に移行する例では移行する時 期および発現経過に関しては不明な点が多い。今回,

我々は,初診後1ヶ月間で著明な肺高血圧症へ移行 し,手術が不可能となった一例に遭遇したことから その臨床経過について報告する。

【症例および経過】

 チワワ,5ヵ月齢,未去勢雄,1.6kg。他院にてワ クチン時に心雑音を聴取し,PDAの可能性を指摘さ れ本学附属動物病院へ紹介された。左側心基底部に おいてLevine IHMの機械様雑音を聴取し,各種検査 により左一右短絡のPDAと診断した。しかしながら

心拡大が著明でないこと(CTR61.3%, VHS I 1.Ov),

体重が小さいことを考慮し,・ACEIを投与しながら体 重増加を期待し手術時期を延期した。

 動脈管からの短絡血流速は4.12m/s(圧較差 67.80mmHg)であった。約1ヶ月後,手術前提で再 来院した際,左側心基底部より非典型的な連続性雑 音が聴取された。心エコー検査により右室腔の拡大,

心室中隔の著しい扁平化,左室腔の狭少化,肺動脈 の拡張,さらにカラードプラにおいて肺動脈弁逆流

と三尖弁逆流が認められ,肺動脈内にはPDAからの 短絡血流は認められなかった。三尖弁逆流速5.15m/s

(圧較差106.25mmHg),肺動脈弁逆流速4.02 m/s

(圧較差64.62mmHg)であり,これにより重度の肺 高血圧症と診断した。手術については大きなリスク

を伴うと判断し,飼主と相談の上,中止とした。

 現在,ACEI,ピモベンダンの投薬により経過観察

中である。

【考察】

 PDAにおいて右一左の逆短絡が生じる場合,一般 的に生後6ヶ月以内が多いと報告されている。その 原因は明確にされていないが胎児性肺の遺残あるい は肺血管への過灌流により内膜の増生および平滑筋 の肥厚が発現して,肺高血圧を発症すると報告され ている。本症例はおよそ1ヶ月間という非常に短期 間で手術不可能な肺高血圧症にまで移行した例であ り,このような急激な病態を予測することは困難で あった。PDAの手術実施時期を決定する明確な基準 は存在 しないが,教科書的にはできる限り早期に実 施することが望ましいとされている。これまでの経 験では体重が小さく,心拡大が認められない例では,

体重増加を期待して手術時期を延期したが,今回の ように極めて短期間に急激な病態へ進行する例があ ることを考えれば,より頻繁なモニタリングが必要 であると同時に,体重の大小や心拡大の程度に関係 なく,できる限り早期に手術を行う必要があると考

えられた。

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