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食 品 と 微 生 物 食品加工に関係ある微生物

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(1)

食  品  と  微  生  物 食品加工に関係ある微生物

堀 籠 平 吾

(1982年10月31日受理)

1 は じ め に

わが国は,比較的気候温暖で湿度も比較的高いため,微生物の生育に都合よく,多種多様な微生 物が人,動物,植物,食品,土壌,水などに広く分布している。

これらの微生物が,われわれの生活に及ぼす影響も極めて大きく,人,動物,植物の疾病に関す るもの,食品の腐敗,発酵に関するもの,化学薬品の製造や工業廃棄物の処に関するもの,土壌改 良に関するものなど,医学,食品工業,工業化学,土壌学などにかかわりあいをもっている。

また食品と微生物といっても,食品を変質,腐敗に導くことを防ぐことを目的とした食品貯蔵の 面や,変質腐敗産物により人に中毒を惹起させることを防ぐ食品衛生の面や,微生物を利用して食 生活を一層豊かにする食品加工の面などがあるが,本研究においては,食品加工に関係する主な微 生物について,その分類,形状,利用面などを明らかにし,微生物を利用して行う食品加工の一助

となることを意図して行ったものである。

皿 微生物の意義,分類,名命法 1.微生物とは

微生物とは,単細胞又は数個の細胞からなり,顕微鏡の助けを借りるなど,肉眼ではみることの できない微小な生物をさしているとされているが,今日では主としてカビ(糸状菌),酵母(芽生 菌),細菌(分裂菌)などの微小な植物の一群を総称する名称として用いられている。1)

2.微生物の分類

微生物の分類については,研究者によりそれぞれ異なった分類がなされているが,ここでは主と して実用的見地からの分類を中心として掲げた。

(1)生物学的分類

i動物界に属するもの

(の原生動物(原虫類),単細胞の動物で葉緑素をもたず,多くのものは他の微生物の死 体などの有機物を食物としている,所謂死物寄生を行っている。また一般に水中に住む

ものが多く,アミーバー,ゾウリムシ,ツリガネムシなどがある。

ii植物界に属するもの

(i)菌類,Fungi 葉緑素をもたない下等な植物の一群でカビ類,酵母類,細菌類がある。

Gi)リケッチャ, Richettscea細菌とビールスの中間のもので発疹チフス病原体,発疹熱

(2)

リケッチャなどがある。

qii)ビールス, Virus 大きさ200 mμ以下の微小な生物で,電子顕微鏡によってとらえ ることのできるもので,この中にタバコモザイク病,天然痘,インフルエンザ,ファー ジなどがある。

②実用的分類

食品に関係の深い微生物は植物界に属するカビ,酵母,細菌で,それらを便宜上発酵微生物又 は発酵菌類とよんでいる。これらは植物学的分類から,次のように位置づけられている。2)

顕花植物(有性的に繁殖) 藷瀦}茎葉あり

植物界

隠花植物(胞子で繁殖) 繍轍あり

葉状植物 担子菌類(キノコ類)

    藻状菌類(カビ類)真 菌

菌 類 子嚢菌類(カビ類,酵母類)

不完全菌類(カビ類,酵母類)

変形菌(粘菌)

分裂菌……(細菌類)

なお,植物学の立場から標準とされているE㎎lerの分類に準じて植物を分類すると,細菌及び ビールスは,最も下等な細菌植物部門に属し分裂菌類綱に一括されており,カビと酵母は,菌類 植物(真菌類)に属し四つの綱(担子菌類綱,藻状菌類綱,子嚢菌類綱,不完全菌類綱)に分け

られている。

3.命名法

国際植物命名規則によると,細菌植物門および菌類植物門は,さらに亜門(アモン),綱(コウ),

目(モク),科(カ),属(ゾク),種(シュ)の順で細かく分類されており,その際,亜門は一 mycotina,綱は一mycetes,亜綱は一mycetidae,目は一ales,科は一aceaeの語尾をつけるこ とになっているが属と種には特に規準は設けられていない。

皿  微生物の利用

微生物の利用法としては,微生物を利用して行う食品製造,微生物の代謝生産物を利用して有機 溶剤の製造,アミノ酸の製造,医薬品や酵素の製造,菌体や微生物の分解活性を利用するなどその 応用極めて広く多方面にわたっている。微生物の利用例を示すと表13)のようである。

表 1  微生物の応用

1 飲食物の製造 ジベレリン :カビ(ジベレラ)

(a)醸造食品 ステロイドホ

しょう油:こうじかび,酵母,乳酸菌

     :くものすかび,こうじかびノレモン

み   そ:こうじかび,酵母,乳酸菌 デキストラン:乳酸菌(ロイコノストック)

(3)

1  食   酢:酢酸菌 {6)抗生物質の製造

つ け 物:乳酸菌,酵母 ペニシリン :青かび(ペニシリウム)

パ   ン:パン酵母 ストレプトマ

@     :放線菌(ストレプトミセス)

チ ー ズ:乳酸菌,プロピオン酸菌,青か イシン

び カナマイシン:放線菌(ストレプトミセス)

バ タ ー:乳酸菌 ブラストサイ

@     :放線菌(ストレプトミセス)

ヨーグルト:乳酸菌 ジンS

納   豆:納豆菌(バチルス・ナットー) (7)酵素の製造

かつおぶし:こうじかび ジアスターゼ:こうじかび

㈲発酵飲料 アミラーゼ :枯草菌など

日 本 酒:こうじかび,酵母 プロテアーゼ:黒こうじかび,細菌 ビ ー ル:ビール酵母 リパーゼ  :酵母(キャンディダ)

ブドー酒:ブドー酒酵母 凝乳酵素  :けかび

中 国 酒:くものすかび,けかび,酵母 ペクチナーゼ:青かび

甘   酒:こうじかび,酵母 セルラーゼ :黒こうじかび,トリコデルマ 焼酎(しょうちゅう):黒こうじかび,酵母 皿 菌体の利用

ウイスキー:酵母 (1}ワクチンの製造

乳酸菌飲料:乳酸菌 腸チフスワクチン

H 代謝生産物の利用 コレラワクチン それぞれの

(1)有機溶剤の製造 BCGワクチン 原因株を使

エチルアルコール:酵母,こうじかび 天然痘ワクチン :用して製造

訟勢コール}ブタノール菌 インフルエンザワクチン

坙{脳炎ワクチン する

②有機酸の製造 ポリオ(小児マヒ)ワクチン

乳   酸:乳酸菌 など

クエン酸:黒こうじかび ② 飼料用酵母の製造

グルコン酸:黒こうじかび 廃糖蜜酵母  :酵母(トルラ)

③ アミノ酸の製造 パルプ廃液酵母:酵母(トルラ)

グルタミン酸:細菌(コリネバクテリウム) 石油酵母   :酵母(キャンディダ)

リ ジ ン :細菌の栄養要求変異体 (3}その他

イソロイシン:細菌(プソイドモナス) 薬用酵母  :ビール酵母

㈲ 呈味性ヌクレオチドの製造 酵母エキス :ビール酵母 イノシン酸 酵母菌体の核酸とカビの酵素, クロレラ菌体:クロレラ

または,細菌(バチルス)の変 1V 微生物の分解活性の利用

グァニル酸異株 (1)都市下水および工業廃水の処理

⑤ ビタミン・ホルモンなど医薬品の製造 活性汚泥法 :細菌と原生動物

ビタミンC :酢酸菌 メタン発酵法:メタン発酵細菌

ビタミンB2 :アシュビア菌 ②鉱石より重金属の溶出:無機栄養細菌 ビタミンB12:放線菌(ストレプトミセス)

IV 食品加工に関係ある微生物

1.カビ類(糸状菌),Mold

(4)

(1)形態と増殖

カビは真菌類に属し,菌糸は分枝した糸状を呈しているので糸状菌ともよばれている菌糸の太 さは10〜20μ,菌糸の長さは数㎝であり,顕微鏡では30〜40倍に拡大すると観察することができ る。菌糸は集合して菌糸体をつくり,成熟すると一部の菌糸の先端に胞子をつくって増殖する。

胞子はカビの種類により赤,青,黄,緑色などに着色する。胞子は一般に乾燥状態で長年月にわ たって生存し,コウジカビは3〜10年,アオカビは21年間も発芽力を失わないといわれている。

筆者が培養したコウジカビは乾燥状態で20数年にわたって発芽力を失わなかった。

② カビの分類と主なカビ類

カビは四つの綱に分かれ,菌糸に隔膜がなく1個の長い細胞からできているものを藻状菌類,

菌糸に隔膜があり子嚢胞子をつくるものを子嚢菌類,担子胞子をつくるものを担子菌類,有性胞 子をつくらないものを不完全菌類とよんでいる。そのうち食品加工に関係あるものは藻状菌類と 子嚢菌類とである。

i藻状菌類綱,Phycomycetes 数群の目と属とがあるが食品加工に関係するものは,ケ カビ属とクモノスカビ属でその形態は図14)のようである。

鍵  胞子嚢     騒子実体

胞 子

o

菌糸 菌糸体

仮 根

ケカビ属       クモノスカビ属

図 1  藻状菌の形態

(i)ケカビ属,Mucor(シャクシ状) 死物寄生的な生活を行い,腐敗した動物質又はパ ン,果実類,穀類,麦芽,コウジなどに毛髪状に発生するカビで食品を悪変させるもの が多い。

a ムコール・ムセド,Mucor mucedo(ケカビ) 肉類,パン,野菜,果実の表面,

コウジ,麦芽,馬尿などに発生するカビで,コウジ製造の際に発生するとコウジの香 気を悪くし不良コウジの原因となる。又たん白質や脂肪を分解するので酪農,皮革工 業上有害である。

b ムコール・ラセモスス,Mucor rasemosus(モツレカビ) ムセドと共に果実を腐 敗させる腐敗菌である。

c ムコール。ルーキシイ,Mucor rouxii,アルファ・アミロミセス,α一Amylomyces

ともよばれ,でんぷん糖化力が強いのでアミロ法によるアルコール製造に用いられた

(5)

最初のカビである。

qDクモノスカビ属, Rhizopus図1に示したように菌糸はムコール属とことなり,根に 相当する仮根がある。ここから胞子嚢柄が直立し全体がクモノスのような外観になって

いるのでこの名がある。

a リゾプス・ジャバニクス,Rhizopus j avanicus アミロ法による甘藷からのアルコ 一ル製造用カビとして,わが国で重要視されている。

b リゾプス・デレマー,Rhizopus delemar アミロ法菌として最も有名でガンマ・

アミロミセス,r−Amylomycesといわれ穀類を原料とするモロミの糖化に利用され

ている。

c リゾプス・ジャポニクス,Rhizopus j aponicus,ベータ・アミロミセス,β一Amyl omyces とよばれ甘藷を原料とするモロミの糖化に使われる。外国では麦芽の代用として使用

される。

d リゾプス・ニグリカンス,Rhizopus nigricans この属の代表的なもので,腐敗菌

である。

li子嚢菌類綱, Ascomycetes 数目10数属あり食品に関係深いのは2属で形態は図25)の ようである。

 鬼  o

aゐ.

       o

スと舞鳥鼎鼻Oooご)     °000    頂 嚢

   ら 

ハ急ノ      oρo

9。。ゐ 分生胞子柄

隔 膜

コウジカビ属      アオカビ属 \菌糸

図 2  子嚢菌の形態

(P コウジカビ属,Aspergillus(水さし状) でんぷんの糖化力やたん白質の分解力が強 いので,食品発酵工業に広く利用されているカビである。

a アスペルギルス・オリゼ,Aspergillus oryzae(日本コウジカビ) 菌叢は白色か ら黄緑色をへて褐色となる。芽胞子柄にトゲがあり芽胞子の表面は平滑である。植物 質とくに蒸米によく繁殖するのでコウジをつくり,みそ,しょうゆ,日本酒,甘酒や 酵素剤(ジアスターゼ)の製造に利用される。

b アスペルギルス・ソイエ,Aspergillus s(オae(ショウユコウジカビ) 菌叢はオリ ゼと同じであるが芽胞子柄の表面平滑で芽胞子の表面に小突起がある。しょうゆ製造

、

(6)

に用いられる。

c アスペルギルス・グラウクス,Aspergillus gl aucusかつお節に香味と貯蔵性をあ

たえる。

d アスペルギルス・アワモリ,Aspergillus awamori アワモリの製造に使われる。

その外アスペルギルス・ニガーは,アルコールやクエン酸製造に,アスペルギルス・

フラバスは,穀類などに繁殖して発ガン物質(アフラトキシン)をつくる。

(ii)アオカビ属, Penicillum(フデ状) 外生胞子柄がフデ状で菌叢は青〜緑色である。

a ペニシリウム・グラウクス,Penicillum glaucum アオカビの代表的なもので,

パン,餅,糊,果実,コウジ,麦芽などに発生し食品の変質腐敗の原因となる。

この外,黄変米の病原菌として毒素を生産するペニシリウス・トキシカリウム,ペニ シリウム・イスランジクス,ペニシリウム・シトリヌムなどがあり,またペニシリンを 生産するペニシリウム・ノタツムやペニシリウム・クリソゲヌムなどがある。

2.酵母類(芽生菌) Yeast

(1)形態と増殖

酵母はカビ類に較べて一層小さい微生物(5〜10μ)で泥状であるが,乾燥すると粉状となる。

顕微鏡では200倍に拡大すると観察できる。形態は図3に示したように分けられる。

球 形     卵 形      ダ円形        レモン形       ソーセージ形

円筒形      糸 状

図3  酵 母 の 形 態

出     芽       芽生団

図 4  酵母の出芽と芽生団

(7)

増殖は出芽によるもので図4のように細胞の一端に小突起ができ,次第に大きくなり母細胞と 同じ大きさ位になると母体を離れて独立した細胞となる。また独立することなく母細胞に付着し,

第2,第3の芽生団(芽族)を形成することもある。然し栄養温度など増殖の条件が悪いと厚い 膜をつくり耐久酵母となって増殖を中止する。また種類により細胞内胞子をつくることもある。

天然で果実及び野菜にとりついている酵母はこのような状態で増殖の時期を待つのである。

(2)酵母の分類と主な酵母

酵母は真菌類中出芽によってふえるもので,子嚢菌類,担子菌類,不完全菌類の3綱にまたが り,Lodderの分類によると39の属と約350の種とがある。6)

酵母は子嚢胞子を形成するか否かにより,有胞子酵母と無胞子酵母とに分けられる。

i 有胞子酵母類,Sporogenus yeast子嚢菌類に属し,一般にアルコール発酵が強い。

(i)サッカロミセス属,Saccharomyces 各種の発酵工業に主役を演じている。

a サッカロミセス・セレビシエ,Saccharomyces cereviciae(麦酒酵母) 卵形の上       

ハ酵母で,英国で麦酒酵母として用いられ,またパン酵母や薬用酵母(ビタミンB1)

として用いられている。

b サッカロミセス・カールベルゲンシス,Saccharomyces corlbergensis(麦酒酵母)

日本で用いられる麦酒酵母で下面酵母で,やや長いダエン形である。

c サッカロミセス・エリプソイデウス,Saccharomyces ellipsoideus(ブドウ酒酵母)

ダエン形でブドウの果皮に存在する野生酵母で,ブドウ酒の製造,その他果実酒の製 造に用いられる。

d サッカロミセス・サケ,Saccharomyces sake(清酒酵母)分類上はセレビシエに 入る。上面酵母で0.4〜0.6%の乳酸液中でよく発育する。大形でダエン形,細胞内

に1〜4個の胞子を有す。

(li)チゴサッカロミセス属, Zygosaccharomyces Lodderの分類ではサッカロミセス属

に入る。

a チゴサッカロミセス・マジョール,Zygosaccharomyces maj or(しょうゆ酵母)

現在サッカロミセス・ルーキシとよばれ,しょうゆもろみ中で発育し,しょうゆに独 特な香味をあたえる。

この外,しょうゆカビとしてチゴサッカロミセス・サルススやチゴサッカロミセス・

ジャポニクスがあり,いずれもしょうゆの香味を悪くする。

{m ピピア属,Pichia 酒精発酵しない酵母でしょうゆカビとしてピピアファリノーザが あり,またみそに発育するカビとして産膜酵母のチゴビピア・ミソがある。

ii無胞子酵母類, Asporogenous yeast 不完全菌類に属し,発酵力弱い。

(i)トルロプシス属,Torulopsis清涼飲料水の混濁,砂糖に繁殖して悪臭を発生し,み そ,しょうゆに繁殖して変質させる酵母である。

Gi}カンジダ属, Candida

a カンジダ・ユチリス,Candida utilis たん白質含量が高く,食用,飼料酵母とし て利用。

b カンジダ・ミコデルマ,Candida mycoderma 麦酒やブドウ酒を変質させる産膜

酵母。

(8)

3.細菌類(分裂菌) Bacteria

(1)形態と増殖

一般に細菌類は極めて小さく(0.5〜2.0μx1〜5μ),顕微鏡下で600倍よりみとめられ 1500〜2000倍に拡大すると観察することができる。細菌は形態から球菌・Cocus,桿菌・Rod,

ラセン菌・Spirill㎜の三っに区別される。球菌はさらに図5のように分けられる。

。。・ @。。 解  騒・・ °°  働  筋     ゜

単球菌    双球菌     4連球菌    8連球菌   ブドウ状球菌     連鎖球菌

図5  球 菌 の 形 態

桿菌は,図6のように長桿で長さが幅の2倍以上あるものをバチルス・Bacillus,球菌に近い ものをバクテリウム・Bacteriumとよぶが,これは厳密な区別ではない。またこの外,紡錘形の クロストリジウム・Clostridiumやシャモジ形のプレクトリジウム・Plectridiumがある。

⊂:⊃ 口  !∠ク∠ク  ・(つ一

バチルス    バクテリウム      紡 錘 形         シャモジ形

図6  桿 菌 の 形 態

ラセン菌はラセン状に稔れたものをさし,その形は図7のようである。

∫

スピロヘーテ       ビプリオ      スピリルム

図 7  ラセ ン菌の形態

(9)

堀籠:食品と微生物       89

細菌には鞭毛のあるものとないものとがあり,鞭毛の種類は,図8のようである。また胞子を

単毛      両極毛       極東毛      両極東毛       周毛 図8  鞭 毛 の 種 類

形成するものは,環境条件が悪いと胞子のままで存在し,環境条件がよくなると発芽する。胞子 は抵抗性が強いので殺菌にあたっては注意しなければならない。

② 細菌類の分類と主な細菌類

Bergyの便覧によると分裂菌綱を10目に分けている。そのうち食品加工に関係の深い細菌を含 む目は3目である。

i シユウドモナス目,Pseudomonadales

q)シユウドモナス科,Pseudom onadaceae 酸生産菌,腐敗菌,食中毒菌,伝染病菌が

ある。

a シユウドモナス属,食品に取りついて食品を腐敗させる腐敗菌がある。

b アセトバクター属,Acetobacter

(a)アセトバクター・アセチ,Acetobacter aceti(酢酸菌) アルコール(ブドウ酒,

酒粕などの)を酸化して食酢を製造する重要菌で,短桿状,11%の酒精にたえ最大 生酸量約8.8%である。

〔b}アセトバクター・キシリヌム,Acetobacter xylinum(グルコン酸菌) 苺,柿,

「     みかん,りんご,杏などから分離したものでグルコン酸製造に用いられ酸味料,カ ルシウム剤として利用される。

(c}アセトバクター。サブオキシダンス,Acetobacter suboxydarls  ビタミンCの 合成材料であるソルボースをつくるのに利用されている。

n 真正細菌目,Eubacteriales数100種類の細菌の大群で13の科に分かれ有益菌,有害菌

がある。

(P乳酸菌科,Lactobacillaceae 乳酸生成菌,腐敗菌,病原菌などがある。

a ラストバチルス属,Lactobacillus 乳酸桿菌はこの科に属している。発酵型式に よりホモ乳酸菌とヘテロ乳酸菌に分け,前者は糖類を発酵して大部分乳酸とする有用 菌で,後者は糖類を発酵して約半量の乳酸と他の半量を酒精,揮発酸,炭酸ガス,水 素などとする有害菌である。

{a)ラクトバチルス・ブルガリクス,Lactobacillus bulgaricus ホモ乳酸菌で,ブ

ルガリア菌又はヨーグルト菌といわれ,ブルガリアの乳酸飲料,ヨーグルト製造の

重要菌で牛乳を原料とする乳酸製造及び整腸剤製造に用いられる。

(10)

{b}ラクトバチルス・デルブルッキー,Lactobacillus delbrakii グルコースを発酵 するホモ乳酸菌で,工業上乳酸の製造に使われる,長桿菌である。

{c}ラクトバチルス・プランタルム,Lactobacillus pl antarm ホモ乳酸菌で植物界 に広く分布し,漬物などの乳酸発酵を行う有用菌である。

{d}ラクトバチルス・ヒオチ,Lactobacillus hiochii 清酒の白濁,酸敗の原因とな

る。

b ストレプトコッカス属,Streptoc㏄us

(a}ストレプトコッカス・ラクチス,Streptococus lactis 乳酸球菌で牛乳中の乳糖 を発酵するホモ乳酸菌でチーズやバター製造の際のスターター(発酵のもと)とし て用いられる。

(b)ストレプトコッカス・クレモリス,Streptococus cremorisチーズやバター製造 のスターターとして用いられる。

(iD桿菌科, Bacillaceae腐敗菌や食中毒菌が多いが,納豆菌のように有用菌もある。

a バチルス属,Baci11us

(a}バチルス。スブチリス,Bacillus subtilis(枯草菌) 枯草に分布し,食品を腐 敗させる。

{blバチルス・ナットウ, Bacillus natto (ナットウ菌) 枯草菌の一種で稲わらに 付着している。好気性菌で発育温度は40℃内外,大豆たん白質を分解して粘質物を 生成し納豆製造に使用される。

{c)バチルス・メセンテリクス,Bacillus mesenterccus(バレイショ菌) 腐敗菌で パンが古くなると内部が粘性をおび異臭を発して糸を引くようになる(ロープ病)

のはこの菌による。

(d)クロストリジウム属,Cl ostridium 腐敗菌や食中毒菌が含まれている。

(iil)腸内細菌科, Enterobacteriaceae 腐敗菌,食中毒菌があり,大腸菌属Esherichiaの エヒリキア・コリ,Eherichia coli(大腸菌)は,食品の衛生度の目印になっている。

qV)小球菌科, Micrococaceae

スタフィロコッカス属,Staphyl ococus

スタフィロコッカス・アウレウス,Staphyloc㏄us aureus(黄色ブドウ球菌)

皮膚や粘膜に付着して化膿を起こし,また食品にとりついて食中毒の原因となる。

iii放線菌目, Actinomycetales カビと細菌の中間的な微生物で,土壌,堆肥などに分布 し,腐土臭の原因となる。7)また抗生物質であるストレプトマイシンやオーレオマイシン を生産するのもある。放線菌は一般にでんぷん分解力やたん白質分解力が強いので,土中 では有機物の分解に大きな働きをしているものと思われる。8)

V む す び

以上のように,食品加工に関係ある主な微生物についてみたのであるが,日常われわれの食生活 と密着している,みそ,しょうゆ,漬物,納豆,甘酒,乳酸飲料や乳製品,果実酒,酒類などは,

これら微生物の利用による産物である。ことに日本コウジカビは古くより日本人の食生活と共に歩

んできたものであり,その功績もまた極めて大きいといわなければならない。

(11)

食生活が近代化,合理化されるにつれて自家用製品特に微生物利用による加工は,各家庭より全 く姿を消してしまったといっても過言ではない。身近で然も利用可能な微生物についての知識をふ やし,ささやかな自家食品の加工に心掛けることも大切なことと思考される。

注

1)中村浩 「びせいぶつ」『世界大百科事典』25巻 1974年,p.437。

2)下田吉人,島薗順雄監修,小池五郎,福場博保編集 『新版食品加工貯蔵』 (朝倉書店,1975年)p.179。

3)天羽幹丸小石川仁治  『精説応用微生物学』 (光生館,1971年)p.16。

4)藤野安彦  『食品化学概論』(改訂版) (裳華房,1977年)p.184。

5)同書,P.184。

6)天羽,小石川 前掲書,p.43。

7)藤野 前掲書 p.194。

8)天羽,小石川 前掲書,p.67。

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