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化学と生物 Vol. 53, No. 9, 2015
新スタンダード栄養 ・ 食物シリーズ16 食品微生物学
村田容常,渋井達郎 編
B5判,232頁,本体価格2,500円 東京化学同人,2015年
食品微生物学とは,その名のとおり 食品 と 微生 物 との接点に位置する学問であり,本書は,主として栄 養士や管理栄養士養成課程に属する学生に対して,食品微 生物学の教科書として執筆されたものである.
だが,強くお薦めしたい.微生物研究に携わっている 諸氏は,本書を手許に置いておくべきである!
食品微生物学の教科書である限りは,これまでの教科書 と同様に, 微生物 を基礎的なところから紹介するのは 当然である.しかしながら,本書の 微生物 部分の記述 は,そのまま微生物学の講義用としても十分に使えるぐら いに的確にまとめられていると評価できる.「ここから先 は専門書等で学習して欲しい」旨の記述が何カ所かで見ら れたことにも,好感がもてた.あえて注文をつければ,呼 吸・発酵についてのもう少し詳しい説明があればという点 と,嫌気的アンモニア酸化(アナモックス)を項目として 取り上げてもよかったのでは,という2点ぐらいである.
さて, 微生物 に続いて 食品微生物 に入ってい く. 微生物 紹介の後半部分で,『第8章:微生物の増殖 制御と殺菌』なる章が出てくる.第6章において,『微生 物の栄養と増殖』がすでにあるので,あれれ? と感じ た.評者としては,どうしてもまとめてしまいたくなる章 立てである.しかし,実際に読み進んでいくと,8章が独 立していることで, 微生物 からうまく 食品微生物 への導入がなされていることがわかってくる.こうした編 集上のうまさは,表現の平易さと相まって,本書を極めて 理解しやすいものとしている.
編者の魔術にかかってしまうと,食品微生物の領域は
『醸造食品:第10章』にはとどまらず,『食品素材と微生 物:第11章』としてのアミノ酸・核酸発酵となり,食を支 える農業とそこにかかわる微生物,環境と微生物,こうし たものすべてを含めた『グリーンバイオテクノロジー:農
業や環境と微生物:第12章』と展開していく.もう止まら ない! 対象を外の環境に求めるだけではなく,ヒトの体 をも対象として『口腔細菌や腸内細菌と健康:第13章』と して,腸管免疫を含めた最新の知見も紹介してくれてい る.
14章『食品の腐敗と微生物』,15章『微生物による食性 病害』は,本書を特徴づけている,斬新で的確な内容と なっている.
14章:これまでの食品微生物学の教科書では,ある食 品の製造過程にかかわる微生物(叢)は書かれていても,
その食品に特徴的な腐敗様式さらにはそれにかかわる微生 物について記述された例を評者は見たことがない.この章 を入れ込んだことは高く評価できよう.
15章:病原微生物を食にかかわる観点からまとめ上げ,
写真を豊富に入れ込むことで,興味を逃がさない内容と なっている.
本書のB5判という大きさとレイアウトも好ましいもの と言える.見開きの両端を語句説明などにあてていること で,ゆったりとした紙面の使い方となっている.ところど ころにあるコラムも,全体の理解を助けるものとなってい る.章のはじめに理解すべき項目が簡潔に挙げられてお り,章の終わりには重要な用語が囲みとして挙げられてい る.学生としては,講義を聴いた後,両方を参考にしつ つ,さらなる学びを進めていけば, 食品微生物学 をき ちんと修了できること間違いない.先生は全員に優をつけ ざるをえないだろう!
繰り返しとなるが,微生物研究を志す諸氏にも,強く お薦めする一冊である.
(石井正治)
Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.645