75 6
金 沢大
学 十 全 医 学 会雑 誌 第9 6
巻 第4
号7 5 6
−7 7 2
く1 9 87
さ神 経 性 食 思 不 振 症
の予 後
に関 す
る研 究
金
沢
大 学 医学 部 神経
精神 医 学 講座く主
任二山
口成
良 教授I
牧 田 治 郎
く昭
和6 2年7月
2 9日
受 付I
1 97 0
旬8 4 年
に, 金 沢 大学 医学 部 附属 病 院に初 回入 院し た
神 経 性 食 思 不 振 症 女性 患者3 7
名の 予
後調 査を
実 施し た
. 初回
退 院後の平 均 追跡 期 間は
,6
.3
年で
あった
.予
後を
評価す る
にあ た
って
, 二つの予後評 価 尺度を 用
いた
. 一 つは
, 体 重と
月 経 機能に基づ
いた
全 般 改 善 分類で
ある
. これ
によ る と
,予
後 調査 晩 患 者は
以下の よ う
に分 類さ れ た
. 良 好1 8
例く4 8
.6
%1, 軽 快1 2
例く3 2
.4
%う, 不良6
例く16
.2
%う, 死亡1
例 ほ.7
%I. 良好 例は
,軽 快お よ び
不 良例と 比
較し て
, 抑う
つ気 分と
便秘が よ り
改善さ れ て
いた
. 他の 一 つは
,体 重,月 経, 体 型に関
す る
観 念,心 理
社 会 的適 応, 精神 症 状に基づ
いた
臨 床 的予
後で
ある
.そ れ
によ る と
,治 癒
9
例く2 4
.3
%1, 改 善1 9
例く5 1
.4
%1, 未 治8
例く2 1
.6
%う,死 亡 1
例く2
.7
%1で あ
った
. 精神 的 悩み を
抱い
て
いる
例が
多く
, 彼 女ら は
, 長 期の治 療を
希望し て
いた
. 身体 面の 回
復に数 年を
要し
, 精神 面を
含め た
治 癒に至 る
には
最 低4
年 間必 要で あ
った
. 過 食は
予 後不
良と
有 意に関連し
て おり
,予
後の
面か ら も
,不
食型 と
過食 型に
分類す る
こと は
有用 と
考え ら れ た
.し か し
,や せ
願 望の
有 無, 発 症 年齢, 最 低体 重は
予後と
有 意な
関連は な か
った
. 以上
の成 績か ら
, 神 経性 食 思 不振 症の予
後は
決し て
楽 観で き る も
の では な
い こと
が
明ら か
にさ れ た
.K e
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神経 性 食 思不 振 症
は
,1 8 7 4
年G
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n o r e− xi
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命 名さ れ て
以 来,d 時 期 下
垂
体 萎 縮 説が
唱 えら れ た
時期も
あった が
, 今日
では
心 因 説が
一般 的と な
って
いる
疾 患で あ る
.し か し
,そ の
心理
, 行 動,身体 的病 態 生
理 は
多 彩で
, 発 症 機 序, 病 型 分 類, 治 療 法に つ いて も
不 明瞭な
部分が
残さ れ
て いる
.予
後調 査は
, 病 態の
本 質を理
解す る た め
の 一つの
有用 な
研究 方 法で あ り
,予
後に関 連し た
要 因を
解 明し
, 治 療 効 果の評価
を
行う
こと は
, 今 後の治 療にと
って も
役 立つ こと の
多い研究で
ある
.今
ま で
の報 告では
, 神経 性 食 思 不 振 症の予後は
, 短 期 間の
外 来通 院で
完 全に治癒す る
例から
, 慢 性 的にや せ が
持 続し た り
2ト 引, つ い には
栄 養 失 調や
自 殺で 死
に いた る
例8ト8さま で
多様で
ある
.さ ら
に,体 重は
回復し て も
, 過 食,嘔
吐な ど
の食 行 動 異 常が
慢 性 的に持 続し た り
2ト5I, 感情 障害9J 川, 強 迫 神経 症引, 社 会 恐怖引,ア
ルコ ー ル依 存 症1り,精 神 分裂 病1 2ト1引
な どの
精 神疾 患への
移 行
が み ら れ た り
, 未婚の ま ま
家に寄 生し た り し て
,家庭
や
社 会で の
適応が
著し く
損な わ れ て
いる
例が
数多く
報 告さ れ て
いる
.そ
のた め
,そ
の予後を
評 価す る
場 合, 体 重や
月 経と
いった
身体 面の改 善のみ で は な く
,食 行 動 異常, 性
心 理
的発 達, 家庭や
社 会で の適 応状況,精 神 的健 康
な ど
いく
つ か の指標によ
って
総合 的に評価す る 必
要が あ る
.ま た
, 治 癒に いた る ま で
には
数年を
要す る
こと が ま れ
でな く
, 長 期の経過
観 察が 必
要であ る
.欧 米で
は
数 多く の 予
後に関す る
研 究1 6ト2 6Iが み ら れ る が
,ま だ
本 邦で は
, 長期
の総合 的に予
後を
調査 した
報 告2 7 ト 3 11が
少な
い.そ
こで
, 今回
, 金 沢 大学 医学部附 属 病 院に過 去1 5
年 間に入
院し た
神 経 性 食 思不
振 症患 者の長 期,短 期予
後を
総合 的に判定し た
の で報 告す る
.ま た
同 時に, 発 病, 有病 時を
振り
返って
の意鬼や
感想を
求め
, 急性 期を
過 ぎ, 当時には み え な か
った
こと や
,治療に対
す る
捷 言な ど を
自 由に記入 し て も ら
った
の でA b br e via
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ic al M a n u al of M e nt
al Di
s o rde r s, T hird E dit
io n.神経 性 食 思不 振症
の 予
後に関す る
研 究あ
わ
せ て報告す る
対 象お
よ び
方法 L
対 象1 . 対 象の選 択
昭和
4 5
年から 59
年の1 5
年 間に,金 沢 大 学 医学 部 附 属病 院神 経科 精 神 科, 第1 , 第2
, 第3
内科お よ び
小 児科に, 神経 性 食 思 不振 症の診 断にて
初回 入
院し た
女 性患者8 4
例を
対 象と し た
.診断 基準
と し て は
,欧米で は
表1 に示 し た F
ei
gh n e rら
細の も
のが
, 本 邦では
表2
に示 し た
厚 生 省 特 定 疾 患.神経 性 食 思不 振 症 調査 研 究班
2 81の も の が
多く
使わ れ
, 最 近で は ア メ リ カ
精神 医 学会によ る
精神 障 害の分 類と
診 断の
手 引, 第3
版 のi
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m 細の診 断基
準も
使わ れ だ し て
いる
. 今回 の
調 査で は
, 身体像な ど
新し
い診 断基 準の
記 載が
, 過 去の 入
院 病歴
には な
いた め
,D S M
一工 1I は 用
いな か
った
.ま た
, 最 低体重
に関し て は
,F
ei
gh n e rら
の診 断 基 準では
,元
来7 5 7
肥 満
型 の 人 が
, 標 準体 重から み れ
ばや せ て
いな
いの
に含
ま れ
てし ま
い,厚 生省 研究 班の
診 断基準を用
いる と
,元
来や せ
型の人 が
, 軽 度の
体 重 減少を き た し た だ け
でも
含ま れ て し ま う
.そ
のた め
, 今回
の調査で は
,よ り
対 象を
明 瞭にす る た め
,F
ei
gh n e rら の
診断基 準お よ び
厚 生 省特 定疾 患.神経 性 食思 不振 症 調査 研究 班の
広義の診 断基 準
の
両 方を
満た す
症 例を
選 択した
.ま た
, 少 数の男性 例は
調 査の対 象から
除 外し た
.2
. 追 跡 率8 4
例 中予後を
知り
得た の は 3 7
例であり
, 追跡 率は 4 4
.0
%で
あった
.回
答のあった 37
例と
無 回答の 4 7
例を
, 病 型, 発症 年 齢, 最 低体 重お よ び
追 跡期 間によ
って
比 較し た
. 病 型は
,や せ
願 望を
持って いる の を
一次 性,や せ
願 望のな
い のを
二次 性と し
, 主に拒 食や
小 食の
み を
主 症状と す る の を
不 食 塾, 過食や 嘔 吐 を と も な う
のを
過 食塾と
分 類し
, 各病 型の 人
数を
比 較し た
. 発 症 年齢は
,15
歳 以 下と 16
歳以 上 の 人
数お よ び
全 体の
平 均値土
壌 準偏 差で 比
較し た
. 最 低体 重は
, 標準 体 重か ら の
パ ー セ ント の
平 均値士
標 準 偏 差を 用
いて
比 較T
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し
,棲 準 体 重の
算 出は
平田
の方法瑚を 用
いた
.追 跡 期 間は
,初回
退 院か ら
調査 時ま で の
期 間と し
,そ の
平均 値士
標準 偏 差を
用いて
比 較を
行った
.そ れ ら
の数値を
表3
に
示 した
.そ の
結 果,上
記 全て
の項 目で 回
答例と
無回
答例 間で有意差を
認め なか
った
.ま た
,入
院 料 別,退
院 年度別で も 回
答 例と
無回
答 例の比
率は ほ ぼ
同じ
であ り
,回
答 例は
母集 団を
代 表す る も
のと み な し た
.回
答 例の 入
院 料は
, 第3
内 科が 2 2
例と 圧
倒 的に多く
,以
下小 児 科6
例, 第2
内科4
例, 神経 科 精 神 科3
例, 第1
内科2
例で あ
った
. 退 院年 度は
,入
院 患 者 数が
,昭 和5 0 年
代後 半にそ れ
以 前の
約2
倍に増 加し て き た
こと を
反映し
,昭和4 5
ノー4 9
年7
例,5 0
ノー54
年1 0
例,5 5
へ5 9
年2 0
例であ
った
.工 工
. 方法
1
. 調査
方法昭 和
6 0
年7
月に, 任意に作成し た
質 問紙く表り を
,患者 本
人
に郵送し
,そ
の返 事を
分析す る
こと
によ り
予 後 調査 を
実 施し た
. 質 問紙は
, 体型,月
経機 能,や せ
願 望, 食 行 動, 家庭や
社 会生 活, 親への精 神 的依存,性に対
す る
観念, 身体お よ び
精 神症 帆 調 査 時の
悩み
,治 療 中の思い出
や
感 想, 治 療に対す る
意 見や
要望な ど
に つ いて の
質 問で
構 成さ れ て
いる
.2
.予
後の
評 価 方 法身 体 機 能
の 回
復は
,M
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の 予
後に関す る
研 究善 分 類ge n e r a
l
o utc o m e c atego ryを 用
いて
評 価し た
. 評価 基 準は
, 体重が
標 準体重 の 士1 5
% 以 内にあ り
,月経
が
順 調な
例を
良 軌 標 準体 重の8 5
%未 満のや せ
及び
月経 障 害の
ある
例を 不
良,そ
の中 間を
軽 快と し た
.予
後判 定は
, 独 自の
判 定 基準を 用
い, 体 重, 月 経と も
に回
復し
, 食 行 動で も
小食, 過 食が な く
, 体 型に関す る
こだ わ り
, 精 神症 状お よ び
適 応不
全の
全く な
いも
のを
治 癒と
判 定し
, 低 体重
, 月 経 機 能 障害, 体 型に関す る
こだ わ り お よ び
小 食や
過 食と
いった
食 行 動 異常を
認め る も
のを
未 治と
判 定し た
.そ
の中 間を
軽 快と し
,さ ら
に家庭や
社 会生
活の
満 足し て
いな
いの を
適 応 不全 群と し
て,そ の
他の軽 快例と
分類し た
.3
. 統計 学 的処理
人
数の比
較には
,カイ
ニ乗検 定およ び Fi
sh
e r の直接 確率計 算法を用
い,平 均 値の比
較には
t検 定を 用
い,危 険率5
%以
下を
有 意と し た
.成 績
王
. 調査 時の状 態像調査 時に死 亡
が
判 明し た
のは 1
例で
あった
.死
亡 例は
, 後で
症例を
提示 す る
こと
にし て
,以
下は そ
の死 亡 例を
除いた 36
例の, 調査 時の
状 態に つ いて 示 す
. 調 査 時年齢は
,22
.8 士5
.5
歳であ
った
.7 5 9
1
. 体 重と
月経 機 能体 重
の 回
復では
,2 2
例く6 1
.1
%うが
標 準体 重の士1 5
% 以 内の正
常 範 囲 内にあり
,13
例く36
.1
%1が
標 準 体 重の 8 5
% 未満のや せ を
呈し て お り
,そ の う ち 6
例く1 6
.7
%1で は
標 準 体 重 め8 0
% 未満で あ
った
. 標準 体 重の 1 1 5
% 以上
の肥 満を
呈して
いた
例は 1
例く2
.8
%1の み で
あった
.月 経機 能
で は
,2 6
例く7 2
.2
%1が ほ ぼ
規 則 的に
月 経が あ り
,2
例く5
.6
%うは
非 常に不 規則で
,8
例く2 2
.2
%Jが
無 月経で あ
った
. 体重 が
標 準 体 重の8 5
% 以上に回
復し た
後も
, 月 経が
不 凍則 ある
いは
無 月経の例が 4
例認め ら れ
, 逆に, 標 準体 重の 8 5
%未 満で, 規則 的に
月経が
ある
例が 7
例 認め ら れ た
.全 般 改善 分 類2 3
り
こ当て は め て み る と
,全体で は
,良好は 1 8
例く5 0
.0
%1, 軽 快は 1 2
例く3 3
.3
%う, 不良は 6
例 く16
.7
%1で
あった
.2
. 体 型に関す る
こだ わ り
体 型に関
す る
こだ わ り に
つ い ては
, 調 査 時の体 重,身体 像
の
自己
評価,や せ
頗 望, 理想 体 重を
総合し て
評 価し た
.身体 像
で は
, 調査 時体 重が
標 準 体重の 貼
%未 満で
あり な が ら
, 丁 度い い, 太って
いる と
認識し て
いた の は 6
例で
, 調 査 時 体重 が
標 準体 重の 8 5
% 以上1 0 0
% 未満T
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