平成28年9月21日
最近の亜炭空洞充填工事を振りかえって
一般社団法人充填技術協会 会長 川 本 朓 万 亜炭空洞の充填工事が初期には地盤の安定化、鉱害防止、余剰資源の有効活用、未利用 土地の有効利用など、環境分野や省エネルギー分野の観点から行われ始めたが、東日本大 震災以後は、さらに防災対策の面が強調され、充填工事の重要性が再認識されてきた。亜 炭空洞に対する充填事業については、昭和49 年(1974 年)の名古屋通産局(現中部経済 産業局)の古洞関連総合施策委員会(飯田汲事委員長)の発足から、昭和52 年(1977 年) 3 月の日本充てん協会の設立を経て、平成 26 年(2014 年)までの変遷につい書き留めて おいた。さらに、平成26 年 8 月付けで一般社団法人充填技術協会ホームページに「亜炭 廃坑の充填に係わって40年」という小文を出したが、それから2年が経とうとしている。 この6月の総会で協会の代表理事を愛知工業大学客員教授 正木和明氏に引き継いでもら ったが、充填技術協会の定款の改訂により会長職が設けられ、会長としてさらに充填事業 に係わっていくことになった。 従来より、名古屋近郊や岐阜県御嵩町地区で発生している浅所陥没や地盤沈下の多くは、 空洞周辺の地盤の経年変化や地下水の影響による強度劣化が引き起こすものと考えられ、 その対策が考えられてきた。空洞天盤の崩落や残柱の破壊による上部地盤の変動による地 盤災害である。しかし最近では南海トラフ巨大地震に対する地盤防災が問題になってきて、 亜炭空洞を有する地盤についても地震時の安定度が議論され始めた。 岐阜県御嵩町地区においては、早くから地震時の地盤の安定性については調査研究が行 われている。昭和53 年(1978 年)6 月に東海地震対策として大規模地震対策特別措置法 が制定され、平成23 年(2001 年)4 月 1 日に中央防災会議において地震防災対策強化地 域として8県157市町村が指定された。当時、「負の遺産」といわれた亜炭坑掘削跡空洞 によりしばしは鉱害が発生していた岐阜県御嵩町はその指定から漏れ、柳川喜郎町長はそ れを不服として、早稲田大学濱田政則教授(当時)に御嵩町地区の地震時の地盤の安定性 の調査を依頼した。これが地震時に地下空洞が地盤の安定にどのように影響するかを検討 した初めである。御嵩町はそれまでにも浅所陥没や地盤沈下のために悩まされてきており、 わずか東濃高校、向陽中学校、御嵩小学校などの公共施設での充填工事が行われたに過ぎ ない。しかし、地震による影響については関心がなかったようである。 平成14 年度・15 年度の両年にわたり、濱田政則教授を中心とする専門家グループは、 亜炭廃坑が大地震時(東海地震・東南海地震を想定)にどのような挙動をするかの調査を 実施した。その結果、御嵩町の亜炭廃坑は市街地を中心に約 6 平方キロメートルに分布し、 大地震時に浅い廃坑で、坑道を支えている残柱および天盤の劣化が進んでいる個所では破壊や崩落が発生し、地盤沈下や浅所陥没の発生によって地上施設に被害をもたらす可能性 の高いことが指摘された。さらに震度5強の地震時には町内の約150地点で落盤や陥没、 地下埋設の水道管が約20か所で破断する被害が想定された。これらの調査研究は平成14 年度に始まって21 年度まで続いているが、それらの結果を踏まえて被害軽減の対策法(建 物基礎の補強、充填工法、耐震診断、地下水流路調査等)の検討を行うこと等が論議され た。充填技術協会でも委員会活動などで協力し、充填工事の調査・設計・施工に関しては、 特に飛島建設(株)がかなりの努力を払ってきた。平成16 年度から 20 年度にかけて亜炭 廃坑の対策を国に要望するとともに共和中学校における調査が行われた。平成 24 年度に は早稲田大学より「共和中学校における亜炭廃坑危険度調査」の結果が報告され、共和中 学校耐震地下充填工事の施工が行われている。平成 18 年度には、被害予測を町内の廃坑 が残存する全域に適用し、空洞の深さ、残柱強度低下率、多段掘り等の条件を変化させた 場合の危険度について検討している。その結果をもとに、町内に分布する空洞の条件(深 さ、多段掘り等)に当てはめて震度マップおよび陥没危険度マップが作成されているが、 空洞深さ0~20mの地区には重要施設が多数存在することが明らかにされた。このよう な御嵩町における亜炭廃坑の調査研究や陥没事故の処理、また実際の充填施工において充 填技術協会も参加することができ、多くの新しい知見を得ることができた。 宮城県沖地震(平成15 年(2003 年)7 月 26 日)直後に、東北地方でも多くの陥没事 故が発生したが、筆者達主に矢本町における亜炭廃坑跡地を視察し、陥没と噴砂の現場調 査及び関係亜炭鉱業の資料収集を行った。この場合には被圧地下水と地盤中の含水層の存 在が影響しており、亜炭鉱周辺の地質および水理的な状態の把握が重要であることを実感 した。平成23 年(2011 年)3 月 11 日の東日本大震災では東北地方でも石炭や亜炭の廃坑 による地盤災害が多数発生している。しかし、多くの災害調査団のいずれの報告書にもそ の記載はなくがっかりしたが、少しは亜炭廃坑による地盤災害が全国的に問題視されるよ うになったものと思われる。 平成26 年(2014 年)1 月に経済産業省は「平成 25 年度旧鉱物採掘区域防災対策費補 助金(南海トラフ巨大地震亜炭鉱跡防災モデル事業)」に係る補助対象県公募に対し、岐阜 県は申請書および提案書を提出した。その結果、資源エネルギー庁石炭課で平成 25 年度 補正予算として南海トラフ巨大地震亜炭鉱跡防災モデル事業が認められた。その目的は南 海トラフ巨大地震において、震度6 弱以上が予想される地域であって、亜炭採掘跡の陥没 の危険性が見込まれる場合において、地盤の脆弱性調査及び陥没を防止するための工事等 を行うというものである。この事業が平成26 年 1 月に認められ、岐阜県御嵩町を対象に して亜炭空洞の危険度評価基準の作成や対策工事の計画と実施について検討していくこと になったが、充填技術協会が今まで経験し蓄積してきた成果が十分に活かされてきた。 日本充てん協会が空洞対策に関する技術的所見をまとめたのは、昭和60 年(1985 年)
に発行した「空洞充てん要領」が最初で、そのなかで空洞による陥没事故防止や地盤安定 化のための技術を紹介している。その後、調査および充填施工の経験の蓄積に伴う知見を 加え、充填工法の普及拡大を図るため、平成 7 年(1995 年)に「空洞調査マニュアル」 と「空洞充てん施工マニュアル」に分冊して改訂を行っている。更に、「空洞充填施工マニ ュアル」は、限定充填工法などの新技術を織り込むなどして、平成16 年(2004 年)に「改 訂版 空洞充填施工マニュアル」として発行している。その後、協会は平成19 年(2007 年)には「充填技術センター」、さらに平成22 年(2010 年)年 4 月には「一般社団法人 充填技術協会」に移行し、現在に至っているが、これまでに築き上げた実績と最新の研究 開発の成果を取り込んで、同年5 月に「新版 空洞充填調査施工マニュアル」を刊行して いる。現在の充填工事の指針としているものはこのマニュアルである。 「新版」の発刊からすでに5 年が経過しているが、平成 26 年 1 月の資源エネルギー庁 からの南海巨大地震亜炭鉱跡防災モデル事業の認可により、岐阜県御嵩町を対象にして、 亜炭空洞の危険度評価基準の作成や対策工事の計画と実施について検討や充填工事が行わ れている。充填技術協会が今まで経験し蓄積してきた成果が活かされており、この5年間 の社会的ニーズの変化や、当協会の実績などを考慮して見直しが行われたのが、「空洞充填 調査施工マニュアル(2016)」である。 日本充てん協会(現 一般社団法人充填技術協会の前身)発足直後に春日井市高蔵寺地区 で実地試験が初めて行われている。この充填工事に対しては、現在行われているような充 填施工完了調査表による各種評価項目ごとの記述はないが、充填工事、充填材料、環境質 などに対する一連の記述で評価が行われている。その後、亜炭廃坑の陥没防止や地盤の安 定化について検討が重ねられ、空洞調査や充填工法に関する技術開発および調査研究が進 められるとともに、尾張炭田や美濃炭田に属する亜炭鉱跡空洞による浅所陥没や地盤沈下 に対応して各地で充填工事が実施されてきた。充填事業が進行するにつれて、多くの知識 と経験を積み重ねるとともに、より良い評価方法が検討されてきた。また、評価項目が充 填現場の状態に応じて修正されたり、さらに加えられたりしている。したがって、いまま で充填工事の中間や完成後にどのように工事の品質評価を表記してきたかを見直すことは、 キラ充填工事の変遷を知ることにもつながる。 平成13 年(2001 年)度に日本充てん協会の規約が改正され、技術委員会が発足し、施 工評価分科会で今までの充填工事の実績が検討され、「充填工事チェックリスト」が作成さ れた。従来、工事報告書の纏めとして充填工事の評価が書かれてきたが、その後は会員各 社が施工する充填工事については施工途中および完了後に工事内容をチェックし、その結 果について会長名による充填工事評価書を出すことになった。「改訂版 空洞充填施工マニ ュアル」(2004 年)には充填工事の技術評価という章が設けられている。昭和 52 年(1977 年)に日本充てん協会が発足してから約 10 年の間は、協会自身が委託を受けて実施して いた評価業務が多く、充填工事による充填効果は勿論、環境質に与えた影響に至るまで、
詳細な調査結果が「充てん」誌上に報告されている。平成12 年(2000 年)頃からは上記 のように、会員会社が実施した工事の内部監査を行っている。 地震時の廃棄地下空洞による地盤災害の問題に対応するためにも充填工事の品質評価の 内容の充実や高度化が必要であり、このことは充填事業における各種調査,充填材料、施 工技術、評価手法等のさらなる検討を必要とするものである。平成28 年(2016 年)5 月 に発刊された「空洞充填調査施工マニュアル(2016)」では、これらのことを考慮して充 填工事評価のための項目を充実させており、より詳細に技術評価を行えるように指導して いる。 なお、このマニュアルには、充填効果のチェックに新しい方法が加えられている。通常、 廃坑に充填材が注入されるとき、充填完了のチェックは観測孔から挿入したセンサーによ り行われるが、最終的に確認ボーリングで充填が完全に行われたことが確認されている。 平成21 年(2009 年)度に、AE モニタリング法を用いた亜炭廃坑充填効果の評価が初め て行われている。AE(アコースティック・エミッション)を利用して亜炭廃坑周辺岩盤の 状態の変化(亀裂や剥離の発生)を観測し、残柱や天盤の安定性のチェックが行われてき た。日進市竹の山南部地区では、住宅下の亜炭空洞の充填工事において、ボーリング孔に AE センサーが設置され、廃坑付近の AE を充填前後の数か月間計測が続けられた。その 結果、充填前の期間においてAE が発生していたが、充填後にはほとんど発生していない ことが確認された。また、岐阜県御嵩町の共和中学校における充填工事においても空洞充 填効果の確認に AE 法が適用された。AE のモニタリングは、その周辺の充填孔から充填 材が順次注入されるに従って行われ、AE の変化が記録され、充填効果の程度が分析され た。その結果、地盤のAE カウントは充填効果を確認する一つの指標となることが明らか にされた。 また、充填施工後には通常チェックボーリングによる充填状態が検証されているが、最 近では、常時微動の変化を計測することにより充填効果をチェックする方法の適用性が現 地実験で検討されている。 平成24 年度から行われた御嵩町の共和中学校における亜炭廃坑危険度調査は、亜炭廃 坑の存在する地域での重要施設の耐震安定性を評価する上で参考になる事例である。平成 20 年度には、敷地全域の廃坑の存在を明らかにするためのボーリング調査が行われ、その 結果をもとに解析的手法で常時の廃坑空洞の危険度について検討された。またその成果を 引用して、東海・東南海連動型地震を想定した地震時の地盤の応答特性と廃坑空洞の危険 度についても検討された。また想定地震をマグニチュード 9.0 の東海・東南海・南海連動 型地震(3連動地震)とし、さらに残柱配列を立体的に反映した3次元地盤モデルを導入 して時刻歴応答解析を行い、これらの結果を総合して亜炭廃坑の危険度と学校施設に与え る被害について判定している。 平成20 年度に行われた2次元解析モデルでの応答特性および残柱の破壊安全率に関す
る検討結果と、平成24 年度の地質構造を反映した3次元地盤解析モデルでの残柱破壊状 況に関する検討結果を総合し、空洞の存在が地震動を増幅させること、また将来巨大地震 が発生した場合、広い範囲で空洞が崩壊して建物が倒壊すると判定されている。 これらの検討における地盤条件の設定では、当地での地盤調査結果と亜炭に関する試験 結果等が適切に考慮されていること、また地震動の設定では、地震に関する最近の知見も 取り入れられていることなどから、妥当な結果が得られていると考えられ、それに対する 判定は適切なものと判断されている。 平成20 年度に地震時における亜炭鉱残柱と天盤の安全性の検討のために、御嵩地区の 廃坑の平均的な断面を考え、有限要素法を用いて残柱と天盤の応力解析が行われている。 亜炭の強度試験結果と劣化条件を考慮し、外力として東海地震・東南海地震による入力地 震動(中央防災会議断層モデルより算定)が用いられている。その結果、劣化による残柱 の強度低下がない場合には、地震で崩壊する可能性は低いと考えられるが、劣化による強 度低下がある場合には、崩壊する可能性が高いことや、空洞が浅い場合には湿潤・乾燥の 繰り返しで強度が低下するために残柱の劣化する速度が速く、同時に地表に近いことによ る地震動の影響を受けやすいことなどから、安全性は低下することが明らかにされた。 次に、最近の充填材に対する調査研究について振り返ってみる。従来より充填材の母材 としては粘土キラと砂キラが用いられてきたが、充填工事の合理化としてコストダウンが 課題になり、充填技術協会でもリサイクル材料の空洞充填への適用性について検討される こととなった。一般に空洞対策には適用性の高い現場条件を考慮して、キラ充填工法、流 動化処理工法、エアーモルタル注入工法、セメントモルタル注入工法などが用いられ、そ れぞれの工法に適した充填材(あるいは投入材)が使用されるが、亜炭空洞のような大中 規模の空洞に対しては充填材としての適用性がかなり制限される。しかし、東海地区では 充填材料にキラを用いているが、各地方における掘削土砂や砕石粉などが充填材料として 利用できれば、空洞充填工事を経済的に進めることができる。そのために、最近、山砂利 生産時の脱水ケーキ(土砂脱水ケーキ)、硬質砂岩や石灰岩の砕石生産時の砕石粉を用いる ことを考えて、それらを母材とする充填材の配合試験、化学試験(溶融試験)や力学試験 が行われている(岩月栄治・坂本昭夫:脱水ケーキおよび砕石粉の空洞充填材料への適用 に関する研究、骨材資源 187 号、2015)。12種類の試料が、空洞充填に実際に用いら れた試料(山砂利や硬質砂岩)ならびに砂キラ・粘土キラ(粘土混じりの微砂)試料と比 較検討され、十分に空洞充填材として利用できることが示されている。 充填工事のコストダウンを実現するのに有効な材料として、あらためて石炭火力発電所 で発生するフライアッシュが考えられている。フライアッシュを利用することはかなり以 前から検討が進められてきたが、今まで行われてきた配合試験、環境安全性試験、流動性 実験などの結果は今後の充填工事に貴重な資料となり得るものと考える。これら一連の試 験は平成15 年度から 22 年度にわたって御嵩地区亜炭廃坑環境対策技術調査会(構成メン
バー:飛島建設(株)名古屋支店、中部電力(株)(土木建築部)、日特建設(株)、太平洋 セメント(株)、冨士開発(株))で行われたものである。フライアッシュを用いる理由は 次のように考えられている。1)キラ充填材による亜炭廃坑充填と同等の充填工事ができ る可能性がある。2)環境安全性と品質を満足する材料を大量に安定して確保できる可能 性がある。3)従来のキラ充填材より流動性が高くなる可能性があり、これにより充填孔 の削減など充填工事費のコストダウンにつながる可能性がある。4)キラよりも安価に入 手できる可能性がある。 平成15 年(2003 年)度にはフライアッシュを用いた充填材(FA 充填材)について、主 に配合試験により充填材としたときの特性から適用性について検討された。平成 17 年度 ~19 年度にはフライアッシュおよび FA 充填材について、主に公定法(46号溶出試験) にもとづいた環境安全性と不溶化効果について調査し、また非公定法(連続バッチ試験) により長期安全性について調査された。さらに、平成 22 年度には粘土キラを主体とした 充填材(キラ充填材)と FA 充填材を用いて、模擬水路による流動実験および配管を用いた 流動実験を行い、キラ充填材と FA 充填材の流動特性の違いについて調査された。 試験の結果から、ある条件の下でフライアッシュを用いた材料が亜炭空洞に対する充填 材として安全にかつ十分な施工性をもって使用できることが明らかになった。しかし、産 業廃棄物という観点で社会に十分に理解されていないことから、今後もさらなる環境安全 性の確認と事業のコストダウンに向けた取り組みが必要であることが確認された。充填技 術協会の技術部会においても今後リサイクル材の充填材への利用に関する研究開発を進め るうえで大いに参考になる。 最近、流動化処理工法による亜炭廃坑跡の充填が行われてきている。平成24 年 11 月に 岐阜県御嵩町において「亜炭鉱廃坑予防充填実証実験」が行われている。空洞内の一部を 矢板で仕切り、パイプ輸送により流動化処理土を注入し、固化後一年かけて周辺の土壌や 水質のモニタリング調査を行い、建設残土を活用する新工法実用化への道を探るとしてい る。空洞内にアプローチすることが可能な状態で流動化処理土の投入が行われている。ま た、平成 27 年度には同町内での道路下の亜炭空洞に対して流動化処理土が使用されてい るが、いずれの場合も利用された充填材や施工方法の検討がどの程度行われているか明ら かでない。一般に地下空間の充填(閉塞)の項目内の適用対象としては廃坑や坑道の充填 が考えられており、また、小規模空洞の充填として路面下空洞、構造物背面の空洞、配管 内部などの工事があるが、流動化処理工法を亜炭廃坑のようにアプローチが困難な地下空 洞の充填処理に利用した例は報告されていない。流動化処理土の標準的な品質管理方法や 用途別品質規定については示されているが、工事中並びに完了後の工事の品質チェックに ついては示されていない。 近い将来、リニア新幹線建設に伴う発生土や災害廃棄物などを処理するのに地下空洞を 利用することが考えられるが、これらが充填材として経済的で施工性の良いものとして使
用できるかが問題である。飛島建設(株)充填工事統括事務所では、先の御嵩町における 流動化処理土による充填工事に疑問を感じ、キラ充填工法と流動化処理工法による亜炭空 洞充填に対する適用性を比較することを考えたが、このことは今後建設発生土を有効に使 用できるかどうかを知るために重要な課題だと思う。キラ充填材については十分に実績が あり、砂キラや粘土キラの性質、充填材としての特性は、配合試験、溶出試験、物理試験 で十分調べられているが、流動化処理土の特性についての知識が十分でないので、両工法 による打設試験を行う前に、愛知工業大学岩月研究室と飛島建設(株)充填工事統括事務 所と共同で、充填材の配合試験や溶出試験が行われている。前回の共同試験では流動化処 理土を意識することなく行われたようだが、今回はキラ充填材と建設発生土の特性の比較 を目的として実験が行われている。キラ充填材は通常用いられている配合のものであり、 流動化処理土は7㎜以下に分級された母材を用い、先の充填に用いられたフロー値をもと に配合されたものが用いられた。 平成28 年 7 月にキラ充填材(端部材)・流動化処理土打設試験が行われている。大型水 槽内での打設試験と気中での打設試験が行われ充填材の堆積する様子や流動拡散する様子 が観察され、堆積後の充填材の形状(広がりや高さ)が計測された。実際の現場で起こっ ていると思われる注入時の充填材の挙動をこれらの実験を通じてある程度理解することが できた。また、キラ材と流動化処理土との違いや、今後も考えていかなければならない課 題をいくつか見つけることができた。 平成28 年 8 月 2 日に「未来への投資を実現する経済対策」について閣議決定された。 東北地方太平洋沖地震以来、地震動に対する地盤の安定性評価や災害防止の方法が色々考 えられてきているが、充填技術協会としても一昨年から南海トラフ巨大地震亜炭鉱跡防災 モデル事業に協力してきている。「未来への投資を実現する経済対策」の中には、「熊本地 震や東北地方太平洋沖地震からの復旧や安全・安心、防災対応の強化」という項目があり、 災害対策の強化・老朽化対策として、南海トラフ巨大地震亜炭鉱跡防災対策事業(経済産 業省)や休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助事業(経済産業省)が挙げられている。岐阜県 御嵩町におけるモデル事業が今後も継続される可能性があると考える。 一般社団法人充填技術協会は、「地盤環境の安全・安心」のため、地下空洞調査・充填技 術の開発に加え、さらに有効な充填材料の開発と産業副産物の利用法の研究を行い、全国 的な地下空洞調査・対策および関連する地盤環境問題解決のための一翼を担っていきたい と考えている。今後とも充填技術協会へのご理解とご支援をお願いしたい。