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プレキャストコンクリート製品の 耐久性向上に関する研究

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博士論文

プレキャストコンクリート製品の 耐久性向上に関する研究

2020年7月

王 亮

岡 山 大 学 大 学 院

環境生命科学研究科

(2)

要 旨

プレキャ ストコ ンク リート製品 は,設 備の 整った工場 で部材 を製 造すること で,天 候に左右さ れるこ とな く製造でき ,また 促進 養生などに よって 製造 効率を高め ること が可能であ る。一 方で ,一般的な 促進養 生で 用いられて いる蒸 気養 生は,強度 発現を 早めること が出来 る反 面,製品の 耐久性 低下 が懸念され ている 。公 共投資予算 の増額 が難しい財 政状況 のた め,今後, 建設さ れる 構造物には ,高い 耐久 性も求めら れてい る。本研究 では, プレ キャストコ ンクリ ート 製品の耐久 性向上 を目 指し,一般 的に広 く用いられ ている コン クリートお よび今 後活 用が期待さ れる新 材料 に関して, 使用材 料,配合, 製造方 法が コンクリー トの品 質に 与える影響 の検討 を行 った。

プレキャス トコン クリ ート製品工 場で一 般的 に広く用い られて いる コンクリー トを 対象に行っ た研究 では ,材料およ び養生 方法 がコンクリ ートの 品質 への影響に 関する 実験を行っ た。高 い温 度で蒸気養 生を行 うと ,凍結融解 抵抗性 ,ス ケーリング に対す る抵抗性, 塩化物 イオ ン浸透抵抗 性が低 下す る。とくに ,塩化 物イ オン浸透性 につい ては,いず れのポ ルト ランドセメ ントを 用い た場合にも ,80℃ で養 生した場合 には,

見掛けの拡 散係数 が著 しく大きく なった 。一 方で,高炉 セメン トを 用いた場合 には,

スケーリン グに対 する 抵抗性は小 さくな るが ,凍結融解 抵抗性 ,塩 化物イオン 浸透性 に対しては ,ポルト ラン ドセメント の場合 より も養生温度 による 影響 は小さい。また,

粗骨材に関 しては ,JIS A 5005の規格 を満足す る砕石を用 い,AE剤に よって 5%以上 の空気量を 確保し た場 合でも,十 分な耐 久性 指数やスケ ーリン グに 対する抵抗 性が得 られない砕 石があ る。 このような 砕石は ,砕 石そのもの を塩水 中で 凍結と融解 を繰り 返したり, 硫酸ナ トリ ウムによる 骨材の 安定 性試験方法 におい て, 浸漬と乾燥 の繰り 返 し を ,JIS 規 格 で 定 め ら れ た 回 数 を 超 えて繰り 返 し た り し た ときの 損 傷 状 況 で 評 価 することが 可能で ある 。

高炉スラグ 細骨材 を用 いたコンク リート は, 塩化物イオ ン浸透 抵抗 性,凍結融 解抵 抗性,化学 抵抗性 に優 れる。高炉 スラグ 細骨 材を細骨材 の全量 に用 い,試験室 および 実機でコン クリー トを 製造し,品 質の確 認を 行った。高 炉スラ グ細 骨材を用い たコン クリートは ,一般 的な コンクリー トと同 様に 問題なく製 品を製 造で きること, 普通コ ンクリート と比べ て, 塩害,凍害 に対し て, 高い抵抗性 を示す こと を確認した 。

さらに,セ メント を用 いず大量の フライ アッ シュを用い て製造 され るジオポリ マー について, 製造方 法, 配合設計法 ,耐硫 酸性 および凍結 融解抵 抗性 を確認した 。製造 時には,練 混ぜ直 後の 温度管理が 必要で ある こと,一般 のコン クリ ートと同じ ように 水結合材比 で強度 管理 が可能なこ と,高 い耐 硫酸性を示 すこと を確 認した。

(3)

目 次

第1 章 序 論

1.1 本研究の背景 ··· 1

1.2 本研究 の目的 ··· 2

1.3 本論文 の構成 ··· 3

第2 章 プレキャストコンクリート製品の現状と課題 2.1 プレ キャス トコン クリート製 品の変 遷 ··· 6

2.2 社会 資本の 老朽化 ··· 8

2.3 コン クリー ト構造 の劣化要因 ··· 9

2.4 プレ キャス トコン クリート製 品の品 質 ··· 14

2.5 高炉 スラグ 細骨材 を用いたコ ンクリ ート ··· 16

2.6 ジオ ポリマ ー硬化 体 ··· 30

第3 章 プレキャストコンクリートの品質 3.1 概 説 ··· 36

3.2 セメ ントの 種類及 び養生温度 がコン クリ ートの品質 に与え る影 響 ··· 37

3.2.1 実験概要 ··· 37

(1) 使用材 料及び 配合 ··· 37

(2) 養生方 法 ··· 37

(3) 試験方 法 ··· 38

3.2.2 実験結果 及び考 察 ··· 41

(1) 圧縮強 度 ··· 41

(2) 凍結融 解抵抗 性 ··· 50

(3) スケー リング ··· 56

(4) 乾燥収 縮 ··· 60

(5) 水分浸 透性 ··· 67

(6) 塩化物 イオン 浸透 性 ··· 76

3.3 粗骨 材の種 類がコ ンクリート の品質 に与 える影響 ··· 84

3.3.1 実験概要 ··· 84

(1) 使用材 料及び 配合 ··· 84

(4)

(2) 養生方 法 ··· 87

(3) 試験方 法 ··· 87

3.3.2 実験結果 及び考 察 ··· 89

(1) 粗骨材 の種類 の違 いが耐凍害 性に与 える 影響 ··· 89

a) 圧 縮強度及 び静弾 性係数 ··· 89

b) 耐 凍害性 ··· 92

(2) 粗骨材 に付着 する 微粒分量が 耐凍害 性に 与える影響 ··· 101

a) 圧 縮強度及 び静弾 性係数 ··· 101

b) 耐 凍害性 ··· 105

3.4 本章 のまと め ··· 114

第4 章 高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートのプレキャストコンクリート製 品への適用 4.1 概 説 ··· 117

4.2 試験 室で作 製した コンクリー トの品 質 ··· 117

4.2.1 使用材料 及び配 合 ··· 117

4.2.2 実験結果 ··· 118

4.3 実機 で製造 したコ ンクリート の品質 ··· 124

4.3.1 使用材料 及び配 合 ··· 124

4.3.2 養生方法 ··· 124

4.3.3 実験方法 ··· 126

4.3.4 実験結果 ··· 127

4.4 本章 のまと め ··· 134

第5 章 ジオポリマーの配合設計,養生方法及び劣化抵抗性の検討 5.1 概 説 ··· 135

5.2 モル タル実 験 ··· 135

5.2.1 使用材料 及び配 合 ··· 135

5.2.2 練混ぜ及 び養生 方法 ··· 138

5.2.3 試験方法 ··· 138

5.3 コン クリー ト実験 ··· 138

5.3.1 使用材料 及び配 合 ··· 138

5.3.2 練混ぜ及 び養生 方法 ··· 140

(5)

5.3.3 試験方法 ··· 140

5.4 実験 結果及 び考察 ··· 142

5.4.1 養生温度 の決定 ··· 142

5.4.2 高炉スラ グ微粉 末及び高炉 スラグ 細骨材による圧 縮強度 への 影響 ···· 142

5.4.3 NaOH混合液の 温 度,練り温 度及び 加温時間による 圧縮強度へ の影響 ··· 143

5.4.4 アルカリ 水比に よる圧縮強 度への 影響 ··· 143

5.4.5 配合にお ける粉 体の影響 ··· 143

5.4.6 ジオポリ マーモ ルタルの耐 硫酸性 ··· 144

5.4.7 ジオポリ マーコ ンクリート の耐硫 酸性 ··· 145

5.4.8 ジオポリ マーコ ンクリート の乾燥 収縮ひずみ ··· 145

5.4.9 溶解法に よるジ オポリマー コンク リートの 凍結融解抵 抗性へ の影 響 ··· 145

5.4.10 単位水量 による ジオポリマ ーコン クリ ートの 凍結融解抵 抗性へ の影 響 ··· 146

5.5 本章 のまとめ ··· 160

第6章 結 論 ··· 162

(6)

1 第1章 序 論

1.1 本研究の背景

コンクリ -ト構 造物 は,図 1.1-1 に示 すよ うに主にレ ディー ミク ストコンク リート を用いた場 所打ち コン クリートに よる構 造物 と,プレキ ャスト (以 降,PCa と記す)

コンクリ- ト部材 によ る構造物に 大別さ れる 。場所打ち コンク リー トによる構 造物の 場合には, プラン トで コンクリー トが練 混ぜ ・製造され ,工事 現場 で打込み, 成型,

養生が所定 の材齢 まで 行われてか ら供用 され る。これに 対して ,PCa コンクリ- ト部 材による構 造物の 場合 には,工事 現場付 近の ヤードまた は工場 で製 作された( 工場製 品)のちに ,構造 部材 として構造 物に組 み込 まれる。工 場製品 (以 降,PCa 製品と記 す)は,製 品工場 でコ ンクリート を練混 ぜ・ 製造し,型 枠内へ 打込 み,成型さ れ,蒸 気養生等の 促進養 生を 経て,材 齢 1日で 脱型 される。そ の後, 所定 の材齢まで 工場内 で養生が行 われて から ,施工現場 へ搬送 し, 製品同士を 組立・ 連接 してから供 用され る。また,PCa 製品 は 成形方法の 種類, 構造 別の種類 の 2つ に分類 される。成 形方法 は主に,振動締固 め( 棒状振動機 ,振動 台,型枠振動機 ),加 圧締固 め,振動・加圧 締 固め( 即時脱型 ),遠心 力締固め ,ロー ル転圧 締固め ,高温高 圧蒸気 養生がある 。構 造 別には,無筋コン クリ ート(URC),鉄筋コ ンクリート(RC),プレ ストレスト コンク リート(PC)に分けら れる1 )

日本では ,PCa 製品 が最初に使 用され たの は,1887 年(明 治 20 年)頃に築 造され た横浜港や 小樽港 の防 波堤工事で ある。1914 年(大正 14 年) にな ってから, 工場で 本格的に生 産され るよ うになった 。1950 年には鉄筋コン クリー ト管 として JISA5302 が,遠心力 鉄筋コ ンク リート管と して JISA5303が,制定 された 。経 済の高度成 長期に なると大型 ボック スカ ルバートや シール ドト ンネルのセ グメン ト, 各種水路用 矢板や フリューム ,舗 装用イン ターロッキ ングな どの JIS製 品,大型橋梁 の PCaセグメン ト,

高層建築用 各種製 品な どが製造さ れるよ うに なった。1990年代 に入 ると経済の 低迷な どでJIS全体 の抜本 的 な見直しが 行われ た。 現在,PCa製品の JIS規格は 2004年に 大 改正が行わ れ施行 され た。この改 正によ って ,PCa 製品の使用者に とっては JIS 適合 製品利用の 自由度 が高 められ,製 造者に とっ ては顧客の ニーズ に対 応しやすく なり,

より多くの 製品開 発が 容易となっ た。

一方,北欧を 中心と し たPCa製品の利用率は ,20~50%に 対して,日本のPCa製品 の利用率 は 14.8%と極 めて低いの である 。そ の原因の一 つは,PCa 製品に対し て学協 会は重視し ていな いこ とが挙げら れる。 また 工事発注時 におけ る積 算方法も一 つの原 因と考えら れる。 しか し,場所打 ちと比 較し ,PCa 製品はまだ割高 感があるこ とも事

(7)

2

実であり, 業界を 上げ てコストを 下げる 努力 を取組むべ きであ る2 )

2015 年 12 月に 国土 交通省は, 建設現 場に おける生産 性を向 上さ せ,魅力あ る建設 産業育成を 目指し て「i-Construction 委員 会」を設置し,取組 みを進 め ている。その 主 な取組みの 一つと して ,コンクリ ート工 の規 格の標準化 等によ る全 体最適の導 入が掲 げられてい る。PCa 製品は,施工 現場で コン クリートの 養生を 必要 としないた め,工 期短縮や省 力化が 期待 される。さ らに, 型枠 や各部材の 規格を 標準 化し,プレ キャス ト化するこ とで生 産性 向上を目指 してお り, 今後,PCa 製品が,イ ンフラ整備 におい て大いに活 用され るこ とが期待さ れてい る3 )

図 1.1-1 コンクリート構造物

1.2 本研究の目的

PCa 製品の製造工程で 行われる蒸 気養生 が,コンクリー トの緻 密性 を変化させ るこ とで,製品 の耐久 性に 影響を及ぼ すので はな いか,とい った指 摘が ある。現在 ,土木 学会の「コ ンクリ ート 標準示方書 」や各 種の 規準等では ,PCa 製品について, 養生条 件や環境条 件を考 慮し て耐久性に 関する 照査 を行うこと として いる 。住吉らに より,

前置き時間 の不足 は, コンクリー ト組織 の緻 密さを欠如 させ, ひび 割れや耐久 性の低 下を起こす ことが 解明 された 4 )。また, 丸山 らにより, 前置き 時間 が十分に取 れない 場合でも, 蒸気温 度の 昇温速度を 緩やか にす ることで, コンク リー トの細孔量 に不具 合を引き起 こさな いこ と,前置き 時間を 十分 長くとるこ とで, 昇温 速度を高く しても 細孔量に不 具合を 引き 起こさない ことが 解明 された 5 )。このよ うに ,蒸気養生 の条件 の違いが, コンク リー トの性能に 与える 影響 に関して, 多くの 研究 がなされ, 様々な 知見を得て 来たが ,ま だ未解明な 部分も 多く ,現在も盛 んに蒸 気養 生がコンク リート

(8)

3 に与える影 響に関 して の研究が行 われて いる 。

コンクリ ートの 配合 において, 一般に ,粗 骨材は全体 積のう ち約 4割を占め ,コン クリートの 内部構 成要 素(練混ぜ 水,結 合材 ,細骨材, 粗骨材 及び 空気)のう ち最大 である。そ のため ,粗 骨材の品質 は,コ ンク リートの性 能に大 きな 影響を与え ること が考えられ る。骨材の 耐凍害性に 関して は,JIS A 1122「硫 酸ナトリ ウムによる 骨材の 安定試験方 法」に よっ て得られる 安定性 損失 質量百分率 によっ て評 価するのが 一般的 となってい る。こ の試 験方法では ,硫酸 ナト リウムが結 晶化す る際 の膨張圧を 凍結融 解作用によ る膨張 圧に 見立てて, 凍結融 解作 用に対する 抵抗性 を評 価する。し かし,

実際の凍結 融解に よる 作用とは異 なるた め,試験によっ て得ら れる 結果と ,JIS A 1148

「コンクリ ートの 凍結 融解抵抗性 試験方 法」 によって得 られる 結果 とが,必ず しも良 い対応を示 すとは 限ら ない。ま た,粗 骨材に付 着する微粒 分に関 して は,JIS A 1103「骨 材の微粒分 量試験 」に よって評価 してい るが ,微粒分量 がコン クリ ートの性能 に及ぼ す影響に関 して, 特に 耐凍害性に 関する 検討 はまだ少な いのが 現状 である。

高耐久 性 PCa製品として,高炉ス ラグ細 骨 材(以降,BFSと記す )を用いた PCa製 品が挙げら れる 6 )。BFS の反応 性に着目 し, 凍結融解抵 抗性お よび 海水や凍結 防止剤 などによる 塩害と 凍結 融解の複合 劣化に 対す る抵抗性の 向上,硫酸劣 化抵抗性の 向上,

乾燥収縮の 低減な どが できるとし ている 。製 鐵工場の周 辺地域 では 材料を容易 に入手 ができるが ,BFSを用 いた高耐久 性 PCa製品の普及が課 題とな って いる。

ジオポリ マーは ,1978 年にフラ ンスの 化学者ダビトビ ッツが 提唱 した用語で あり,

セメントク リンカ ーを 使用せず,非晶質 のケイ 酸アルミニ ウムを 主成 分とした原 料(活 性フィラー )とアル カリ 溶液(アル カリ金属 のケイ酸塩,炭 酸塩, 水酸 化物の水溶 液の 少 な く と も 1 種 類 )と の 縮 重 合 反 応 で 非 晶 質 ポ リ マ ー が 生 成 し 硬 化 し た も の で あ る 。 同じ構造物 を建設 した 場合,セメ ントと比 較し て約80% の CO2排出量 を削減でき ると の報告もあ り,次世 代 のコンクリ ートの バイ ンダーとな りうる 可能 性を有して いる7)。 本研究で は,高 温常 圧蒸気養生 し,工 場で 製作した PCa製品をメ インの対象 に,製 品に使用さ れるセ メン トの種類, 養生方 法お よび粗骨材 が,コ ンク リートの品 質に及 ぼす影響に 関して 実験 を行い,PCa 製品を製 造するため の養生 方法 および粗骨 材につ いて検討を 行った。 ま た,BFSを用い たコン クリートは ,コンク リ ートの耐久 性を向 上させるこ とが可 能で あることが 示され てい るため ,PCa 製品工場の 原材料を使 用し,

BFS を用い た PCa 製品 の実機実験 を実施 し,試験室で製 作し た BFS コンクリー トの 品質を比較 し,高 耐久 性プレキャ ストコ ンク リートの品 質につ いて 確認した。 更に,

新材料とし て注目 され ているセメ ントを 使用 しないジオ ポリマ ーモ ルタル及び コンク リートの圧 縮強度 ,耐 硫酸性,凍 結融解 抵抗 性を検討し た。

(9)

4 1.3 本論文の構成

本論文は ,全6章で 構成されて いる。 以下 にその構成 を示す 。

・第1章「 序論」では ,本研究の 背景, 目的 および論文 の構成 につ いて述べた 。

・第 2 章「プレ キャス トコンクリ ート製 品の 現状と課題 」では ,PCa 製品の 変遷,コ ンクリート の劣化 原因 に関する従 来の研 究,PCa 製品の品質に 影響を 及ぼす製造 過程 や材料の影 響に関 する 従来の研究 および ジオ ポリマーに 関する 従来 の研究につ いて述 べた。

・第 3 章「プレ キャス トコンクリ ートの 品質 」では,PCa 製品の 製 造に用いら れる蒸 気養生の最 高温度 ,養 生期間及び セメン ト種 別がコンク リート の品 質への影響 につい て,さらに 産地や 物性 値の異なる 骨材を 用い たコンクリ ートの 圧縮 強度および 耐凍害 性について 実験を 行い ,その成果 を述べ た。

・第4章 「高炉ス ラグ 細骨材を用 いたコ ンク リートのプ レキャ スト コンクリー ト製品 への適用」では,試 験 室で BFSコンク リート を作製し,品質の 確認 を行い,更 に実機 で BFSコン クリー トを 用いた PCa製品 を作製し,品質を 確認し ,そ の成果を述 べた。

・第5章「ジオ ポリマ ーの配合設 計,養生 方法 と劣化抵抗 性の検 討」では,ジ オポリ マ ーモルタル を基準 にし て,配合と 練り方 法を 変え,溶解 法を用 いて 実験を行い ,さら にコンクリ ート実 験も 行い,ジオ ポリマ ーモ ルタルとコ ンクリ ート の圧縮強度 ,耐硫 酸性,凍結 融解抵 抗性 などを検討 し,そ の成 果を述べた 。

・第6章「 結論」では ,本研究で 得られ た結 果の要約を 行い, 本論 文の結論と した。

(10)

5 参考文献

1) 日本コンク リート 工学 会 HP,月刊 コンクリ ート技術,2016年 4月 号

2) 日本コンク リート 工学 協会:「プレ キャストコ ンクリート 製品の 設計 と利用研究

委員会」報 告書,pp.2-14,2009年 8月

3) 土 木 学 会 : コ ン ク リ ー ト 構 造 物 に お け る品 質 を 確 保 し た 生 産 性 向 上 に 関 す る 提

案,コンク リート ライ ブラリー,No. 148,2016. 12

4) 住 吉 宏 等 : コ ン ク リ ー ト の 組 織 や 物 性 にお よ ぼ す 蒸 気 養 生 の 影 響 , セ メ ン ト 技

術年報,Vol.35,pp.290-293,1981.12

5) 丸 山 晃 平 等 : 蒸 気 養 生 条 件 が 相 違 す る コン ク リ ー ト 製 品 の 強 度 特 性 お よ び 細 孔

構造に関す る研究 ,コ ンクリート 工学年 次論 文集,Vol.33,No2,pp.571-576,2011

6) 土 木 学 会 : 高 炉 ス ラ グ 細 骨 材 を 用 い た プレ キ ャ ス ト コ ン ク リ ー ト 製 品 の 設 計 ・

製造・施工 指針(案), コンクリー トライ ブラ リー,第 155 号,2019.3

7) 日 本 コ ン ク リ ー ト 工 学 会 : 建 設 分 野 へ のジ オ ポ リ マ ー 技 術 の 適 用 に 関 す る 研 究

委員会報告 書,2017

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6

第2章 プレキャストコンクリート製品の現状と課題

2.1 プレキャストコンクリート製品の変遷

日本では ,プレ キャ ストコンク リート 製品 (以降,PCa 製品と記 す)が最初 に使用 されたのは ,1887 年( 明治 20 年 )頃に 築造 された横浜 港や小 樽港 の防波堤工 事であ る。特に小 樽港工 事で は,材料品 質の長 期経 年変化を調 査する ため に100年 にわたる 試験供試体 が作製 され たことは有 名な話 であ る。工場で 本格的 に生 産されるよ うにな ったのは1914年( 大 正 14 年) になって から ,鉄筋コン クリー ト管 やポールの 製造が 開始された 。大正 から 昭和の初め にかけ て, 鉄筋コンク リート 管,U 字溝,マンホー ル,コンク リート 柱, ポール,杭 ,ブロ ック などの製品 が生産 され ,社会基盤 の整備 に使用され ている 。PCa 製品の利用 が盛んに なるのを受 けて基 準類 も整備され ,1937 年(昭和 12 年 )に JIS の前身であ る日本 標準 規格に JES354「下水 道 用鉄筋コン クリ ート管」が 初めて 制定 された。1949 年( 昭 和 24 年) には工 業標 準化法が制 定され , 1950 年に は鉄筋コ ンク リート管と して JISA5302 が,遠 心力鉄筋 コン クリート管 とし てJISA5303が制定 され た。

経済の高 度成長 期に なると種々 の基礎 的研 究や品質管 理・製 造技術 の開発がな され,

その成果を ベース にこ れまで製造 されて きた 製品に加え て大型 ボッ クスカルバ ートや シールドト ンネル のセ グメント, 各種水 路用 矢板やフリ ューム ,舗 装用インタ ーロッ キングなど の JIS製品 ,大型橋梁 の PCa セグメント,高 層建築 用各 種製品など が製造 されるよう になっ た。1990 年代に 入ると 経済 の低迷と建 設予算 の縮 小の中で規 格重視 の傾向は次 第に薄 れて いった。一 方,そ のこ ろには,経 済のグ ロー バル化から 各種規 格の ISOへの 整合化 が 求められ ,JIS全体 の抜 本的な見直 しが行 われ た。PCa製品 JIS は2004年に大改 正が行 われた。そ れまで PCa製品の JISは 21 製品ご との個別仕 様規 定であった が,5 種類 の基本規格 群及び 3 種 類の性能規 定型構 造別 製品規格群 として 階層化・整 理され た。 この改正に よって ,PCa 製品の使用 者にと っ ては JIS 適 合製品 利用の自由 度が高 めら れ,製造者 にとっ ては 仕様規定に 縛られ るこ となく開発 した製 品が JIS 適合品と して 認定され, 顧客の ニー ズに対応し やすく なり ,より多く の製品 開発が容易 になっ た。 しかし,耐 久性能 に関 して表 2.1-1 に示 す性 能の代替み なし仕 様である水 セメン ト比 ,空気量, かぶり 等を 規定するに 留まっ てき た1 )

工場から 現場へ の運 搬を前提と してい るPCa製品は ,薄肉 断面で か ぶりに余裕 をも たせること ができ ない 。このよう なこと から ,多様な製 品の設 計に 土木学会示 方書に 規定されて いる現 場打 ち部材と同 様な内 容の 性能照査方 法を一 律に 適用するに は無理

である。表 2.1-2に示 す ように,製品の種 類,形状規模 ,供用予 定期 間に応じた 耐久設

(12)

7 計の考え方 の区分 を提 案された 2 )

一方,北欧を 中心と し たPCa製品の利用率は ,20~50%に 対して,日本のPCa製品 の利用率 は 14.8%と極 めて低いの である 。そ の原因の一 つは,PCa 製品に対し て学協 会は重視し ていな いこ とが挙げら れる。 また 工事発注時 におけ る積 算方法も一 つの原 因と考えら れる。 しか し,場所打 ちと比 較し ,PCa 製品はまだ割高 感があるこ とも事 実であり, 業界を 上げ てコストを 下げる 努力 を取り組む べきで ある 3 )

表2.1-1 耐久性能の代替みなし仕様

水セメント比の上限値 URC:65% RC:55% PC:45%

空気量 凍害のおそれがある場合 ,型枠投入時:4.5%

ひび割れ 0.2mm

かぶりの最小値 土木学会 示方書に規定 の最小値

※URC: 無 筋 コ ン ク リ ー ト,RC: 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト,PC: プ レス ト レ ス トコ ンク リ ー ト

表2.1-2 コンクリート製品の設計区分の目安

設計区分 みなし仕様 耐久性設計

性能明示型

耐久性設 性能協議型設計

JISとの関連 Ⅰ類またⅡ類その他類 似製 品 その他の製品

説 明

比較的小型の製品 で供用期間が短い もの

比較的大型の製品 で供用期間が長い もの

小型の製品で 供用期間が短 いもの

大型の製品で 供用期間が長 いもの

設計耐用年数 20年を基準 40年以上を原則 10~50年以上

主な性能照査方法

耐久性 性能代替仕様 劣化モデルによる

購入者と製造者との協議 に ひび割れ 曲げひび割れ耐力計算 よる

終 局 終局曲げ耐力計算

(13)

8 2.2 社会資本の老朽化

2.2.1 社会資本ストックの経年的劣化

日本の社 会資本 は,経済の発展 と共に 急激 に拡大した 。しか し,図2.2-1に示 すとお り高度経済 成長期 に集 中的に整備 された 日本 の社会資本 は,今 後急 速に老朽化 が進ん でいる。具 体的に は, 建設後 50 年以上 経過 する社会資 本の老 朽化 の割合は,2013 年 とその 20 年後の 2033年で比較す ると,約 73 万橋の内,橋長 2m以上 の道路橋で は約 18%から 約67%に ,約 1 万本のト ンネルで は 約 20%か ら約50%に,約 1 万箇 所の河川 管理施設で は約25%か ら約 64%に,総延長 約 45 万kmの下水 道管き ょでは約 2%から 約 24%に ,約5 千施設 の港湾岸壁 では 約 8%か ら約 58%になる 。社会 資本の老朽 化割 合は,急増 する4)

2.2.2 自動車台数の増加と貨物車両の大型化

日本では ,1950年代 後半から高 度経済 成長 が始まり,国民所 得の 増加ととも に自家 用乗用車の 普及, いわ ゆるモータ リゼー ショ ンが急速に 進んだ 。1955 年度で 16 万台 ほどだった 乗用車 の保 有台数は ,図 2.2-2に示すとおり 1972年度 で は 100万台 を突破 し,今なお 線形的 に増 加を続け,2019年度に は 6,100万台 となっ た 5 )。こ の保有 台数 は,我が国 の国 民 2.1 人に対し て 1 台の割合 であり,世 界第 5位の 多さであ る 6 )。 一 方,貨物車 の保有 台数 も経済成長 に合わ せて 線形的に増 加して いた が,1990 年以降,

平成時代に 入ると バブ ル経済終焉 とその 後の 長期にわた る景気 低迷 の影響で軟 調に推 移している 。

貨物車につ いても ,経 済のグロー バル化 や産 業構造の変 化が進 み, トラックお よび トレーラの 車両総 重量 の規制緩和 措置が 講じ られるよう になっ た。 具体的には ,1993 年 に 軸 距 と 車 両 全 長 に あ わ せ て ト レ ー ラ の 総 重 量 が 最 大 28t ま で 緩 和 さ れ た こ と , 1998 年には ISO 国際 海上コンテ ナのフ ル積 載トレーラ の運行 が認 められるよ うにな ったこと ,2003年には 車両総重 量 36tを上限 としてトレ ーラに よる 分割可能な 積載物 の輸送が特 例 8車 種に 限り認めら れたこ と, さらにバン 型等セ ミト レーラをけ ん引す るトラクタ の駆動 軸重 が 10tから 11.5tに緩和 され,車両 総重量お よ び長さ等の 制限に ついても緩 和され たこ と,などが 挙げら れる 。つまり, 自動車 の台 数増加と貨 物車の 大型化に伴 う重量 化が 併発したこ とにな る。

道路橋にお けるRC床 版は,交通 量の増大 に よる疲労の 累積や 大型 車両の重量 増加,

経年的な劣 化,設 計的 背景などの 影響に 加え ,路面から の浸水 によ る凍結融解 作用や 凍結防止剤 の主成 分で ある NaCl が引き 起こす鉄筋腐食 など様 々な 要因が複合 して多 様な劣化を 引き起 こし ている。

(14)

9

図 2.2-1 建設後 50年が経過する社会資本の割合

図 2.2-2 自動車保有台数の推移

2.3 コンクリート構造物の劣化要因 2.3.1 凍害による劣化

コンクリ ート構 造物 における代 表的な 劣化 要因の一つ として「 凍害 」が挙げら れる。

一般に凍害 とはコ ンク リート中の 自由水 や, 吸水率の大 きい骨 材の 水分が凍結 融解作 0

10 20 30 40 50 60 70 80

2013年 2023年 2033年

建設後50年以上経過割合%

道路橋 トンネル

河川管理施設(水門等)

下水道管きょ 港湾岸壁

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000

1960年 1970年 1980年 1990年 2000年 2010年 2020年

自動車保有台数(万台) 乗用車

貨物車 合計

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10

用を繰り返 し受け るこ とによって クラッ クが 生じたり, 表層部 が剥 離したりし て,表 層に近い部 分から 破壊 し,次第に 劣化し てい く現象をい う。水 が拘 束のない自 由な状 態で凍結し た場合 ,そ の膨張率 は9%と いわれ ている 。コンク リート は凍結によ って膨 張変形する が,そ の凍 結が融解し た場合 でも ,塑性変形 と組織 の破 壊により変 形が原 型まで復元 しない ため ,コンクリ ート内 部に 膨張が残留 する。 膨張 が残留する と給水 が大きくな り,新 たな 水の供給が あると ,次 の凍結融解 作用に よっ てさらに大 きな残 留膨張を生 じる。 凍結 融解の繰返 しによ って 積み重ねら れた残 留膨 張の圧力が 原因と なり,ポッ プアウ トや ひび割れな どの損 傷が 生じる。

凍害によ る劣化 現象 として,ス ケーリ ング ,ポップア ウトが ある 。スケーリ ングと は,コンク リート 表面 が水で濡れ ている 場合 ,膨張圧や 移動圧 によ る凍害に先 行して 表面層が剥 離する 現象 のことであ る。ポ ップ アウトとは ,多孔 質で 吸水性の高 い粘土 塊や軟石を 多く含 む骨 材が,骨材 中の水 分の 凍結により 膨張し ,骨 材表面のモ ルタル 層を剥落さ せる現 象を いう。

凍害に関 しては ,古 くから研究 が行わ れ, これまでに 様々な 知見 を得ている 。凍結 融解抵抗性 を高め る方 法として,代表的 なも のとしては ,AE剤を用 いた AEコンクリ ートがある 。AE 剤を 用いないプ レーン コン クリートで も 1〜2%の 空気泡を含 むが,

これはエン トラッ プド エア(巻き 込み空 気) と呼ばれ, 比較的 粗大 でいびつな 形状の ものを多く 含んで いる 。これ に対して ,AE剤 によってコ ンクリ ート に連行され る空気 泡はエント レイン ドエ ア(連行空 気)と 呼ば れる。エン トレイ ンド エアはきれ いな球 状をしてお りそれ ぞれ が独立した 空気泡 であ る。気泡の 粒径は 10〜200μ と極めて 微 細で,その 数はコ ンク リート 1m3中に数 千億個と言われ ている 。図 2.3-1 の模式 図で (1) は通常 の状態を 表 す。(2) は コンクリ ート 表面の温度 が下が り,表面に近い 所の水 分が凍結し た状態 だが ,水の凍結 による 膨張 圧力は内部 に向か う。 近くに気泡 がある と,未凍結 水を介し て この圧力を 逃がす こと ができる。さらに,(3) (4) と水分 の凍結 が内部に進 行して も同 様の現象が 繰り返 され ,コンクリ ートは 膨張 圧による破 壊を免 れる。この ように ,コ ンクリート 中の連 行空 気泡は自由 水の凍 結に よる大きな 膨張圧 を緩和する 働きを する ため,凍結 融解の 繰返 し作用に対 する抵 抗性 が飛躍的に 増大す る。また, 水・セ メン ト比を小さ くする こと もコンクリ ートの 耐久 性を高める 上で効 果があるが ,凍結 融解 抵抗性につ いては 連行 空気の有無 が支配 的で ある。ただ し,空 気 量 は 多 け れ ば 多 いほど よ い と い う こ と ではない 。 空 気 量 2%以 下で は 耐 凍 害 性 の 改 善効果はほ とんど なく ,また6%を超 えると 強 度低下や乾 燥収縮 が大 きくなるた め,空 気量の目標 値は一 般的 な普通コン クリー トで は4〜7%を標準と して いる。

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11

図 2.3-1 凍結防止機構の模式図 7 )

2.3.2 塩害による劣化

塩害とは ,コン クリ ート中の鋼 材(鉄 筋やPC鋼材など)が,塩 分の 作用によっ て腐 食し,腐食 に伴う 膨張 圧によって ,コン クリ ートのひび 割れや 剥離 ,鋼材の断 面現象 などが起こ り,コ ンク リート構造 物の耐 久性 ,使用性, 美観な どの 性能が低下 する劣 化 現 象 で あ る 。 塩 害 に よ る 劣 化 が 生 じ た 構 造 物の 一 例 を ,写 真2.3-1に 示 す 。 鉄 筋 は , コ ン ク リ ー ト の 強 ア ル カ リ 環 境 下 に お い て , その 表 面 が ,厚 さ3nm程 度の 水 和 酸 化 物

(γFe2O3・nH2O)から 成る不動態 皮膜に 覆わ れており,腐 食から 保 護されてい る。し かし,コン クリー トの 中性化や塩 害によ って ,鉄筋表面 の不動 態が 破壊される と,鉄 筋表面に局 部電池 が形 成され,次 のような 反 応が生じて ,陽極領 域 から鉄イオ ン(Fe2

) が遊離し ,鉄筋 の 腐食が進行 する。

陽極反応 アノード反応 :Fe → Fe + 2e (2.3-1)

陰極反応 カソード反応 :O + H O + 4e → 4OH (2.3-2)

更に,陽極領域 で生じ た鉄イオン は,陰極領 域で生じた 水酸化 物イ オン(4OH-)と 反応し,次 のよう な反 応を生じて ,赤錆 が生 成される。

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2Fe + OH → 2Fe(OH) (2.3-3)

2Fe(OH) +1

2O + H O → 2Fe(OH) (2.3-4)

2Fe(OH) → Fe O + 3H O (2.3-5)

又は, 2Fe(OH) → 2FeOOH + 2H O (2.3-6)

鉄筋腐食に よって 生じ る錆は鉄筋 よりも 体積 が大きいた め,コ ンク リート内で 体積膨 張が生じる 。これ によ り,コンク リート に引 張力がはた らき, ひび 割れを生じ る可能 性がある。

高度経済 成長の 時代 の構造物に ついて は崩 落が起きて おり, これ らは川産骨 材資源 の乏しい地 域など で十 分に洗浄・ 脱塩が 行わ れていない 海産骨 材を 使用したた めでは ないかと指 摘され てい る。また, 海から の飛 来塩分や塩 化物イ オン を含む凍結 防止剤 の散布など により ,建 設後に侵入 するも のも ある。これ に対し て,1986年に塩 化物総 量規制が設 けられ ,ま た,減水剤 の使用 によ るコンクリ ート構 造の 緻密化,防 錆剤に よる鉄筋の 保護, コン クリート表 面への 塗装 ,表面仕上 げなど 建設 後に侵入す る塩害 への対策も 進んで いる 。

写真2.3-1 塩害による劣化が生じた構造物

2.3.3 中性化による劣化

コンクリ ートは ,水 とセメント が水和 反応 を起こすこ とで強 度を 持つ。水和 反応が 起こる際に ,水 酸化カ ルシウム(Ca(OH)2)が生成される 。水 酸化ナ トリウムは ,ア ル カリ性の物 質であ り, これにより コンク リー ト内部はア ルカリ 性状 態となる。 高アル

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カリ環境下 にある 鉄筋 表面には, 不動態 皮膜 が形成され る。コ ンク リート内部 の鉄筋 も同様で, コンク リー トのアルカ リによ り不 動態被膜を 形成し ,そ れにより, 錆を防 ぐことが可 能であ る。

コンクリ ート内 部は ,pHが 12~13と強アル カリ性であ るが ,ここ に大気中の 二酸化 炭素(CO2)が 侵入する ことにより ,水酸化カ ルシウム等 のセメ ント 水和物と炭 酸化反 応を起こす ことに よっ て細孔溶液の pH を低 下させる。 この現 象を 中性化とい う。pH が概ね 11 より 低くな ると不 動態被 膜は破 壊 され,鉄筋が 腐食環 境 下に置 かれる こと になる。不 動態被 膜が 破壊された 後の鉄 筋腐 食の進行は ,塩害 の節(2.3.2)で 述べた とおりであ る。鉄 筋が 腐食すると 腐食箇 所の 体積が膨張 し,そ の膨 張圧によっ てコン クリートに ひび割 れが 発生する。 そのひ び割 れを通じて 水分, 酸素 などの劣化 因子の 供給が容易 になる こと により,さ らに鉄 筋腐 食が促進さ れ,コ ンク リートはく 離やは く落,鉄 筋の断 面減少 を生じ,構造物 の耐久 性能,耐荷 性能が 低下し ていく。大気中 の 二酸化炭素 濃度は 年々 増加の傾向 を示し てお り,それに 加えて 自動 車等の排気 ガス中 の亜硫酸ガ ス(SOx),それを含ん だ酸性 雨などもコンク リート を中 性化させる 原因と るため,さ らに中 性化 に対して耐 久性の 高い コンクリー トが求 めら れている。

2.3.4 乾燥収縮による劣化

無載荷の コンク リー トが乾燥の ために その 内部の湿度 (含水 率) が低下し, それに 伴って体積 が減少 する ことを乾燥 収縮と いう 。コンクリ ートの 乾燥 収縮に影響 を及ぼ す要因は数 多くあ るが ,乾燥収縮 の生成 機構 を論ずる際 に最も 重要 な要因は, コンク リートの含 水率や それ を取り巻く 環境の 湿度 等であると 言われ てい る。すなわ ち,乾 燥状態にお けるコ ンク リートの水 分の挙 動が 重要な要因 である 。

一般に, コンク リー ト中の水分 は,そ の存 在形態によ って次 に示 す4種類 に分類さ れる。

科学的結合 水:セ メン トの水和反 応によ って 生じる反応 性生物 の結 合水

ゲ ル 水:セ メン トゲル内部 に含ま れているゲル粒 子間の 間隙 に吸着して いる水

毛 細 管 水 :水 和物 で埋められ ずに残 った セメント粒 子の間 隙( 毛細管間隙 ) の水

遊 離 水:骨 材お よびコンク リート 中の比較的大き な間隙 中に 存在する水

乾燥収縮 は,コ ンク リート中の 水分が 逸散 することに 起因す ると 言われてい るが,

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14

上記の 4種類の水 分の うち,乾燥 収縮に 直接 影響を及ぼ すのは ゲル 水であると 言われ ている。

無拘束の コンク リー トにおいて 乾燥収 縮が 生じること は体積 が減 少するのみ である が,コンク リート に何 らかの拘束 力が働 いて いる場合, 収縮す るこ とにより引 張力が 加わり,そ こにひ び割 れが生じる 。ひび 割れ が直接コン クリー ト構 造物の性能 低下に 繋がること は少な いが ,ひび割れ から水 分や 塩分が侵入 するこ とで 鋼材の腐食 等を引 き起こし, 構造物 の性 能低下をも たらす 。コ ンクリート の乾燥 収縮 に関する研 究は,

これまで数 多くの 研究 者によって なされ ,現 在もなお, その問 題の 提起および 議論が 活発になさ れてい る。

2.4 プレキャストコンクリート製品の品質

2.4.1 プレキャストコンクリート製品の製造工程および特徴

プレキャ ストコ ンク リート製品 は,製 造設 備の整えら れた工 場に よって製造 される コンクリー ト製品(以 降,PCa製品と記す )で ある。PCa製品の製 作フ ローを ,図 2.4−1 に示す。こ れらの 工程 は,一般に 屋内で 行わ れるため, 日射や 降雨 による天候 の影響 を受けにく く,工 程や 品質を損な うこと が少 ない。さら に,こ れら の作業は, 製品の 種類・形状 ごとに熟 練工 のグループ が繰り 返し 製造を行う ため,作 業の ミスが少な く,

品質が安定 しやす い。 また,PCa 製品は,出荷される段 階で, すで に養生が完 了しお り,現場で の養生 を行 う必要がな いため ,工 期短縮が求 められ る土 木・建築工 事等で の活躍が期 待され てい る。

図 2.4-2 に示 すよう に,PCa 製品の製造 工 場において は,生 産性 を向上させ る目的 で,蒸気養 生が行 われ ることが多 い。こ の蒸 気養生の条 件(前 置き 時間,蒸気 最高温 度, 最 高 温 度 の 保 持 時間 等 ) は , 工 場 に よ り異 な るが , こ れ ら の 設定 が コ ン ク リ ー ト の性能に及 ぼす影 響は 大きいと考 える。 耐久 性の高いコ ンクリ ート 製品が求め られる 中,蒸気養 生の条 件が コンクリー トの性 能に 与える影響 に関す る研 究は,過去 に多く 取り組まれ ており ,様 々な知見が 得られ てい る。既往の 研究に より 得られた知 見を,

つぎ(2.4.2)にま とめ る。

2.4.2 蒸気養生条件の違いがコンクリートの性能に与える影響

PCa 製品の製造工場 に おいては,図 2.4-2 に 示すように ,生産 性を 向上させる 目的 で,一般 に,蒸気養生 が行われる 。蒸 気養生 を行う際に 決める べき 条件は,(1) コン ク リー トの 打 ち込 みか ら 蒸気 養生 開 始ま での 前 置き 時間 ,(2) 蒸気 温 度の 昇温 速 度,(3) 最高温度,(4) 最高温 度 の保持時間,(5) 冷却速 度等が挙げ られる。一 般に,蒸気養 生

(20)

15

を行った場 合,標 準養 生を行った コンク リー トに比べ, 長期強 度が 低下するこ と,耐 久性が低下 する傾 向に あることは 知られ てい る。住吉ら により,前置 き時間の不 足は,

コンクリー ト組織 の緻 密さを欠如 させ, ひび 割れや耐久 性の低 下を 起こすこと が解明 された 9 )。また, 丸山 らにより, 前置き 時間 が十分に取 れない 場合 でも,蒸気 温度の 昇温速度を 緩やか にす ることで, コンク リー トの細孔量 に不具 合を 引き起こさ ないこ と,前置き 時間を 十分 長くとるこ とで, 昇温 速度を高く しても 細孔 量に不具合 を引き 起こさない ことが 解明 された1 0 )。この ように ,蒸気養生の 条件の 違 いがコンク リート の性能に与 える影 響に 関して,多 くの研 究が なされ,様 々な知 見を 得て来たが ,まだ 未解明な部 分も多 く, 現在も盛ん に蒸気 養生 がコンクリ ートに 与え る影響に関 しての 研究が行わ れてい る。

図2.4-1 PCa製品の製作フロー8 )

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図 2.4-2 蒸気養生の工程

2.5 高炉スラグ細骨材を用いたコンクリート 11) 2.5.1 高炉スラグ

(1) 鉄鋼 スラグの 種類 および発生 量

鉄鋼スラ グは, 鉄や 鋼の製造工 程で副 産物 として生成 される 。鉄 鋼スラグは ,鉄鉱 石から銑鉄 を製造 する 際に発生す る高炉 スラ グと,銑鉄 からリ ン, 炭素などを 除去し 鋼を製造す る際に 発生 する製鋼ス ラグに 大別 される。高 炉の製 鉄工 程で 1,000kg の銑 鉄がつくり 出され ると き,約300kgの高 炉ス ラグが副産 物とし て生 成される。 また,

転炉や電気 炉の製 鋼工 程で 1,000kg の粗 鋼が つくり出さ れると き, 約 100kg の製鋼ス ラグが副産 物とし て生 成される。 鉄鋼ス ラグ の分類を,図2.5-1に 示 す。

高 炉 ス ラ グ は , 銑 鉄 を 製 造 す る 高 炉 で 約 1,500℃の 高 温 で 溶 融 さ れ た 鉄 鉱 石 の 鉄 以 外の成分と ,石灰 石や コークスの 中の灰 の一 部が一緒に 分離回 収さ れたもので ある。

また,約 1,500℃の 溶融 状態の高炉 スラグ は,冷却方法に よって 徐冷 スラグと水 砕スラ

グに大別さ れる。 製鋼 スラグは, 高炉で 作り 出される銑 鉄を, ミル スケール, 鉄鉱石 および生石 灰を副 原料 に,転炉で 精錬す る工 程で生成す る転炉 系ス ラグと,合 金鉄お よび生石灰 を副原 料に ,スクラッ プを電 気炉 で精錬する 際に生 成す る電気炉系 スラグ に大別され る。

鉄鋼スラ グの国 内で の年間使用 量は毎 年約 3,500 万ト ンであ る。 鉄鋼スラグ の成分

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17

は,天然の 岩石や 土や 砂とほぼ同 等であ り, 有害物質を 含まず 工業 製品として 安定し ている。鉄 鋼スラ グは 特徴に応じ てセメ ント の原料,路 盤材, コン クリート用 骨材等 の製品に加 工され 主に 土木建築分 野で広 く利 用されてい る。

鉄鋼スラ グは天 然の 岩石や海砂 ・川砂 の代 替材として 使用さ れ天 然資源の節 約とな る。また, セメン トの 原料として 活用す るこ とにより, 燃料の 節約 と二酸化炭 素の発 生が抑制さ れるこ とか ら,鉄鋼ス ラグ製 品は ,環境への 負荷を 低減 させるリサ イクル 資材として ますま す脚 光を浴びて いる。 そし て,さらな る可能 性が 模索され積 極的な 用途開発が 促進さ れて いる。

図 2.5-1 鉄鋼スラグの種類

(2) 高炉ス ラグの 特徴 と用途

高炉から 排出さ れた スラグは,約 1,500℃の溶融状態に あり,そ の 冷却方法に よって 徐冷スラグ と水砕 スラ グに分類さ れる。 徐冷 スラグは, 溶融ス ラグ を冷却ヤー ドに流 し込み,自 然放冷 と適 度の散水に より徐 冷処 理すること で,結 晶質 で岩石状の スラグ となる。水 砕スラ グは ,溶融スラ グに加 圧水 を噴射する など急 激に 冷却処理す ること により,ガ ラス質 で粒 状のスラグ となる 。表 2.5-1 に高炉 スラグ の化 学成分の一 例を 示す。

表 2.5-1 高炉スラグの化学成分

SiO2 CaO Al2O3 T-Fe MgO S MnO TiO2

33.8 42.0 14.4 0.3 6.7 0.8 0.3 1.0

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18 a) 高炉徐冷ス ラグ

高炉徐冷ス ラグの 外観 は,表面は 粗面, 気孔 があり,角 張って いる 。粒子密度 は天 然砕石より もやや 小さ い(絶乾 密度:2.2〜2.6g/cm3)。これ は凝固の 過程 で発生する ガス が逃げ切れ ずスラ グ中 に残ってし まうた めで あり,空隙 を多く 含み吸 水率はやや 高い。

高炉徐冷ス ラグは 溶融 状態のスラ グを冷 却ヤ ードなどに 放流す る際 の層厚や散 水など による冷却 方法に よっ て密度や吸 水率な どの 物理特性が 変化す るた め,一定の 範囲で 製鉄所間,製造ロッ ト間 のばらつき が存在 する。高炉徐冷ス ラグの 化学 組成は一般 に,

CaOおよび SiO2の 2成 分を主成分 として いる。特に自然界 の土や 石の 成分に比べ 石灰 の含有が多 く,そ の他 には Al2O3,MgO などが含まれる 。高炉 徐冷 スラグは,Na2O, K2O等を ほとん ど含ま ないため, コンクリ ート構造物の ひび割 れや 崩壊の原因 となる アルカリ骨 材反応 を抑 制する。ま た,CaO,SiO2,MgOを 含んでい るため,珪 酸石灰 肥料(ケ イカル)とな る。スラグが水 と接触 する と微量のCaOや SiO2が 溶け出し ,ス ラ グ 表 面 に 緻 密 な 水 和 物 を 形 成 す る(水 硬 性)。 さら に ア ル カ リ 性 の 雰 囲 気 の も と で は , Al2O3 も加わ った水和 物を形成し ,スラ グ粒 子をつなぐ 結合材 とな って固結す る(潜在 水硬性)。以上の ような 性質を持っ ている こと から,道路 用路盤材 ,コンクリー ト用粗 骨材,セメ ントク リン カー原料(粘土 代替), 稲作用肥料 などの 利用 がなされて いる。

b) 高炉水 砕スラグ

高炉水砕 スラグ の粒 子はガラス 質であ り, 形状も凹凸 が激し く角 張った形状 をして いる。また ,密度 等の 物性はスラ グ温度 ,冷 却水量,水 圧をコ ント ロールする ことに より,軟質 で軽い もの と,硬質で 重いも のを 造り分ける ことが でき る。硬質の ものは コンクリー ト用細 骨材 として用い られる のが 一般的であ り,軟 質の ものは土木 用に用 いられる。 高炉水 砕ス ラグはガラ ス質で ある ため,活性 が強く ,ア ルカリ性水 溶液の もとでは水 和物を 生成 して硬化す る性質 があ る。これを 潜在水 硬性 といい,高 炉水砕 スラグの大 きな特 徴と なっている 。

高炉水砕ス ラグで は, 溶融スラグ が急激 に冷 却され,結 晶を生 成す る時間的余 裕が ないため,図 2.5-2 に 示すような ガラス 構造 となってい る。こ こに アルカリ刺 激が存 在すると ,網目 構造が 切断され ,網目 構造中 に包含され ていたCaO,SiO2,Al2O3な ど に よ り , ポ ル ト ラ ン ド セ メ ン ト と 同 様 の 水 和 反応 が 起 こ り ,CaO-SiO2-H2O 系 お よ び CaO-Al2O3-H2O 系の水 和物が生じ て固結 する 。これが潜 在水硬 性で ある。高炉 水砕ス ラグ単体で 固結す るた めには,次 のよう な条 件が揃うこ とが必 要と されている 。

・ 高炉水砕ス ラグ層 に適 度の水分が 存在す る。

・ 高炉水砕ス ラグ層 があ る程度の密 度に保 たれ ている。

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19

・ 高炉水砕ス ラグ層 の間 隙水がアル カリ性(pH11程度)に保たれ ている 。

一般に粒子 がガラ ス質 の場合では ,塩基 度(CaO/SiO2)が大き いほど水 硬性が高い 。 高炉水砕ス ラグは 他に ,塩化物を 含まな い, 非アルカリ 骨材反 応な どの性質が ある。

これらの性 質より ,高 炉セメント 原料, コン クリート用 細骨材 ,珪 酸石灰肥料 などと して利用さ れてい る。

図 2.5−2 高炉水砕スラグの網目構造

2.5.2 高炉スラグ細骨材

(1) 高炉 スラグ細 骨材 の種類およ び特徴 と用途

高炉スラ グ細骨 材( 以降,BFSと記 す)は,水砕スラ グを磨 鉱機 等で粒径を 整えた 後,ふるい を用いて 粒度 調整を行い ,必要に 応じて固結防止 剤を添 加し て製造され る。

BFSは,JIS A 5011-1:2018(コン クリー トスラグ骨材-第 1部:高 炉ス ラグ骨材)では , 粒度によっ て表 2.5−2に示す 4 区分に 分類さ れる。一般 のコン クリ ートでは,BFS は 天然細骨材 や砕砂 等の 普通細骨材 と混合 して 使用される ことが 多い 。混合使用 される 主な目的は ,細骨 材の 粒度調整, 品質の 改善 ,環境負荷 の低減 等が 挙げられて いる。

BFS を 単独で使 用する 場合,BFS5,BFS2.5,BFS1.2 が用い られる 。BFS5-0.3 につい ては,細目 の普通細 骨 材と混合使 用を想 定し て製造され ている もの である。BFSを 単 独使用する と,エン ト ラップトエ アが増 加す る傾向があ る。使用 す る BFS によって 配 合設計等で 留意す る必 要がある。

表 2.5-2 BFSの分類

区 分 粒の大きさの範囲(mm) 記 号

5mm高 炉 ス ラ グ 細 骨 材 5以下 BFS5

2.5mm高 炉 ス ラ グ 細 骨 材 2.5以下 BFS2.5

1.2mm高 炉 ス ラ グ 細 骨 材 1.2以下 BFS1.2

50.3高 炉 ス ラグ 細 骨 材 5〜0.3 BFS5-0.3

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20

(2) 高炉 スラグ細 骨材 を用いたコ ンクリ ート の特徴

高炉スラ グ細骨 材は ,JIS A 5011-1 に その 規格が制定 されて おり ,1983年 に建築学 会から設計 施工指 針(案)が出さ れてい た。その 後1993年 に土木学 会か ら「高炉スラ グ 骨材コンク リート 施工 指針」が出 版され た。こ の10 年の 間にコン クリ ートの環境 負荷 低減や資源 の有効 活用 に関する関 心の高 まり から,高炉 スラグ 細骨 材を用いた コンク リートの研 究が数 多く なされて来 た。本 来, 高炉スラグ 細骨材 は, 資源の有効 利用や 地球環境の 観点か ら普 通骨材の代 替品と して 使われてい たが, これ までの研究 によっ て,高い 耐久性 を持つ ことが示さ れた 。例え ば,AE剤を用 いること なく高い耐 凍害性 が得られる こと, 乾燥 収縮ひずみ が小さ くな ること,塩 化物イ オン の浸透を抑 制でき ること硫酸 に対し て強 い抵抗性を 持つこ と等 が示された 。

2.5.3 プレキャスト製品の製造工場で製造した BFS コンクリートの性能および品 質11)

高炉スラグ 細骨材 を用 いたコンク リート は, 塩化物イオ ンの浸 透性 が抑制され るこ と,耐 硫酸性が 向上す ること ,AE剤を用い ることなく凍 結融解 抵抗 性が得られ ること 等,コンク リート の耐 久性を向上 させる こと が可能であ ること が示 されている 。 試験室で 製造す るコ ンクリート は,通 常,打 ち込み後,1日間型 枠内 で養生を行 い,

脱型後は, 十分な 期間 ,20℃の水 中で養 生を 行うことが 可能で ある 。それに対 し,プ レキャスト コンク リー ト製品の製 造工場 など で実機によ って製 造さ れるコンク リート は,通常,生産効率 を向 上させる目 的で蒸 気養 生が行われ ,脱型 後の 湿潤養生期 間は,

試験室で製 造した コン クリートに 比べ短 い。配 合が同じで あって も,蒸 気養生を行 い,

湿潤養生期 間の短 い条 件で製造さ れるコ ンク リートの品 質は, 試験 室で得られ たもの と同等であ るとは 限ら ない。

既往の研 究にお いて ,実際のコ ンクリ ート 製品の製造 工場で 製品 に打設され たコン クリートか ら供試 体を 採取し,そ のコンク リ ートを用い ,BFSコン クリートの 耐凍害 性に関して 検討を 行っ た。その結 果を, つぎ に示す。

図 2.5-3 は,製 品打 設時に採取 したコ ンク リート供試 体の耐 久性 指数の変動 を示し

ている。図 中の○は, 製品打設時 に採取 した コンクリー ト供試 体の 耐久性指数 を示し ている。こ の図よ り, 高炉スラグ 細骨材 を用 いたもので あって も, 実際の製品 工場で の打設では ,実験室 とは 異なり,凍 結融解抵 抗性にばらつき が見ら れる ことがわか る。

このままで は,高 炉ス ラグ細骨材 を用い た高 耐久性コン クリー トの 実用化には 至らな いため,つ ぎは, コン クリート製 品の凍 結融 解抵抗性が ばらつ く原 因となり得 る要因 について検 討を行 う。

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図2.5-4 は,粗骨材自 体 に,凍結 融解作用 を与 えた場合の ,粗骨 材の 質量残存率 を示 している。 図中の○,□および△ は,そ れぞ れ,砂岩砕 石 A,B お よび粘板岩 の結果 を示してい る。こ の図 から,粗骨 材の中 には ,凍結融解 作用に よっ て,その粗 骨材自 体が劣化し てしま うも のがあるこ とが確 認で きる。粗骨 材は, 配合 において容 積で約 4 割程度を 占めて おり ,骨材自身 の凍結 融解 に対する抵 抗生は コン クリートの 凍結融 解抵抗性に 大きな 影響 をもたらす 。高炉 スラ グ細骨材お よび高 炉ス ラグ微粉末 を用い た場合であ っても ,こ の図に示す 粘板岩 のよ うな粗骨材 を用い てい る場合には ,コン クリートに 十分な 凍結 融解抵抗性 を持た せる ことは難し いと思 われ る。

図2.5-5 は,図 2.5-3の青色の破 線で示 した 期間に製品 打設時 に採 取したコン クリー ト供試体の 耐久性 指数 を示してい る。この 期間 の供試体に 関して,いず れの供試体 も,

試験開始時 材齢を 56日 としており ,試験 開始 まで蒸気養 生後現 場水 中養生を 13日間 行っている 。この 期間 に注目した 理由は ,同 じ配合,同 じ養生 条件 でコンクリ ート製 品の打設を 行った 場合 でも,耐久 性指数 に, 明らかな差 が生じ てい るからであ る。ま た,この期 間の配 合に おいて,粗 骨材に 粘板 岩砕石は用 いてい ない 。この図か ら,供 試体No.10 以 降,耐久 性指数が 60を下回 っていることが 確認で きる 。さらに,図 2.5- 3と見比べ ること で,この期間を 境に,以後 ,耐久性指 数が60 を下 回るものが ほとん どであるこ とも確 認で きる。

図2.5-6 は,図 2.5-5に 示した供試 体に用 いた 粗骨材の表 面に付 着し ている微粒 分の 量を調べた 結果で ある。図中の○お よび□は,それぞれ最大 寸法が,20mmお よび 15mm の砂岩砕石 の表面 に付 着している 微粒分 の量 を示してい る。こ の図 から,最大 寸法が 20mm の 砂岩砕石 にお いて,表面 に付着 して いる微粒分 の量が 供試 体 No.10 以降多く なっている ことが 確認 できる。高 炉スラ グ細 骨材および 高炉ス ラグ 微粉末を用 いたコ ンクリート は,高 炉ス ラグが反応 するこ とに より,コン クリー ト中 のモルタル 部と粗 骨材の界面 がより 密実 になること により ,凍 結融解抵抗 性を発 揮す る。そのた め,粗 骨材自体の 表面に 微粒 分が多く存 在する 場合 ,モルタル 部と粗 骨材 の界面に空 隙がで き,そこに 侵入し た水 の凍結融解 作用に より ,耐久性指 数が低 下し た可能性が あると 推測できる 。

図 2.5-7 は ,図 2.5-5 に 示した供試 体の打 設時 の外気温を 示して いる 。図中の●は,

製品打設時 の外気 温を 示している 。この 図か ら,耐久性 指数が60を 下回ってい る頃よ り,打設時 の外気 温が20℃以下と なって いる ことがわか る。

図2.4-8 は,図 2.4-5お よび図 2.5-7に示した 供試体の打設 時の外 気温 と耐久性指 数 の関係を示 してい る。 図中の○は ,製品 打設 時に採取し たコン クリ ート供試体 の耐久 性指数を示 してい る。 この図から ,製品 の打 設時の外気 温が高 くな るにつれて ,耐久

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22 性指数も大 きくな る傾 向が確認で きる。

図 2.5-9 お よび図 2.5-10 は,モ ルタル打 設時の外気温と ,製品 打設 時に用いた 高炉 スラグ細骨 材を使 用し て打設した サイコ ロ小 片の質量残 存率の 関係 を示してい る。図 2.5-9は,試 験開始時 材 齢を7日 とした 供試体 ,図 2.5-10は,試験 開 始時材齢 を 14 日 とした供試 体の結 果を 示している 。いず れの 供試体も, 試験開 始ま で現場水中 養生を 行っている 。図中 の△ および□は ,それ ぞれ ,試験開始 から凍 結融 解サイクル を 7サ イクル作用 させた 時点 のサイコロ 小片の 質量 残存率を示 してい る。 いずれの試 験開始 時材齢にお いても,打設 時の気温が 高いほ ど,質量残存率も 高くな る傾 向が見られ る。

また,試験 開始時 材齢 を長くする ことで ,そ の傾向が顕 著に見 られ る。サイコ ロ小片 の結果から も,打 設時 の外気温が コンク リー トの凍結融 解抵抗 性に 影響するこ とが確 認できる。 ただし ,打 設時の外気 温だけ でな く,養生中 の水温 もサ イコロ小片 の質量 残存率に影 響を与 えて いる可能性 がある ため ,養生中の 温度を 振り 分けて,検 討を行 った。

図2.5-11,図2.5-12およ び図2.5-13は,結合材に普通ポルト ランド セメ ントを用い , 細骨材に高 炉スラ グ細 骨材を用い たサイ コロ 小片の質量 残存率 に, 試験開始時 材齢が 与える影響 を示し てい る。図 2.5-11から図 2.5-13は ,それ ぞれ,打設 から脱型ま での 気中養生お よび試 験開 始までの水 中養生 を5℃,20℃お よび35℃で 行った供試 体の結 果を示して いる。 図中 の△,□お よび○は,それぞれ試 験開始 時材 齢を,7日 ,14 日 および 28 日とした 供試 体の結果を 示して いる 。養生温度 を5℃ とした ものは,試 験開 始時材齢を 長くし ても ,凍結融解 抵抗性 の改 善が見られ ない。養生 温度を20℃および 35℃とした ものは ,い ずれも試験 開始時 材齢 を長くする ことで ,凍 結融解抵抗 性の改 善が見られ る。打 設時 の外気温で はなく ,養 生中の温度 が,サ イコ ロ小片の凍 結融解 抵抗性に大 きく影 響を 与えている ことが 確認 できる。

図2.5-14,図2.5-15およ び図2.5-16は,結合材に普通ポルト ランド セメ ントを用い , 細骨材に高 炉スラ グ細 骨材を用い たサイ コロ 小片の質量 残存率 に, 養生温度が 与える 影響を示し ている 。図 2.5-14 から図 2.5-16は ,それぞ れ,試 験開始 時材齢を 7日,14 日および28日とし た供 試体の結果 を示し ている。図中の■,○およ び●は,そ れぞれ 打設から試 験開始 まで の全ての養 生温度を 5℃,20℃および 35℃と した供試体 の結果 を示してい る。試 験開 始時材齢 を 7日と した ものに関し て,い ずれ の供試体も ,凍結 融解抵抗性 に差は ほと んど見られ ていな い。 試験開始時 材齢を 14 日としたも のに関 して,養生 温度 を 5℃および 20℃とした ものは,凍結融 解抵抗 性に ほとんど差 は見ら れないが,養生温 度を35としたも のは,凍結融 解抵抗性の 改善が 見ら れる。試験 開始 時材齢を28日とし たも のに関して ,養生 温度を高くする ごとに ,凍 結融解抵抗 性の改

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善が見られ る。こ れら の図からも ,養生 中の 温度が,サ イコロ 小片 の凍結融解 抵抗性 に大きく影 響を与 えて いるという 傾向が 確認 できる。ま た,そ の傾 向は,養生 期間が 長くなるほ ど,顕 著に 現れること も確認 でき る。

図2.5-3 高炉スラグ細骨材および高炉スラグ微粉末を用いたコンクリート製品の

耐久性指数の変動

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24

図2.5-4 粗骨材の凍結融解抵抗性

図2.5-5 図 2.5-3 に示す青色破線区間のコンクリートの耐久性指数の変動

90 92 94 96 98 100

0 10 20 30 40 50 60

質 量 残 存

率 ( % )

サイクル数(回)

砂岩砕石

A

砂岩砕石

B

粘板岩

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25

図 2.5-6 コントに用いた砂岩砕石の表面に付着する微粒分量

図2.5-7 コンクリート打設時の外気温

0.00 0.50 1.00 1.50

1 3 5 7 9 11 13 15 17

供試体No.

粗 骨 材 ノ ロ 付 着 量 ( % )

砂岩砕石(

G15

) 砂岩砕石(

G20

)

15 20 25 30 35

1 3 5 7 9 11 13 15 17

供試体No.

打 設 時 の 外 気 温 ( ℃ )

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図2.5-8 耐久性指数と外気温の関係

図 2.5-9 質量残存率と外気温の関係(試験開始時材齢:7 日)

0 20 40 60 80 100 120

16 18 20 22 24 26 28 30

耐 久 性 指 数

打設時の外気温(℃)

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図 2.5-10 質量残存率と外気温の関係(試験開始時材齢:14 日)

図 2.5-11 材齢が質量残存率に与える影響(養生温度:水中養生(5℃))

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図 2.5-12 材齢が質量残存率に与える影響(養生温度:水中養生(20℃))

図 2.5-13 材齢が質量残存率に与える影響(養生温度:水中養生(35℃))

(34)

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図 2.5-14 養生温度が質量残存率に与える影響(試験開始時材齢:7 日水中養生)

図2.5-15 養生温度が質量残存率に与える影響(試験開始時材齢:14 日水中養生)

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図2.5-16 養生温度が質量残存率に与える影響(試験開始時材齢:28 日水中養生)

2.6 ジオポリマー硬化体 2.6.1 定義と反応機構

ジオポリマ ーとは ,1978 年にフラ ンスの 化学者ダビトビ ッツが 提唱 した用語で あり,

セメントク リンカ ーを 使用せず,非晶質 のケイ 酸アルミニ ウムを 主成 分とした原 料(活 性フィラー )とアル カリ 溶液(アル カリ金属 のケイ酸塩,炭 酸塩, 水酸 化物の水溶 液の 少 な く と も 1 種 類 )と の 縮 重 合 反 応 で 非 晶 質 ポ リ マ ー が 生 成 し 硬 化 し た も の で あ る 。 同じ構造物 を建設 した 場合,セメ ントと比 較し て約80% の CO2排出量 が削減でき ると の報告もあ り,次 世代 のコンクリ ートの バイ ンダーとな りうる 可能 性を有して いる。

また産業副 産物の フラ イアッシュ や高炉 スラ グ微粉末を 用いる 場合 が多く,資 源の有 効利用の観 点から も, ジオポリマ ーは環 境に 優しい新技 術であ ると 考えられる 。

図 2.6-1 にフライ アッ シュからで きるジ オポ リマーの反 応メカ ニズ ムを示す。 活性

フィラーに メタカ オリ ンやフライ アッシ ュを 用いた場合 ,強い アル カリ成分に よって 活性フィラ ーから ケイ 酸イオンが 溶出す る。 ここで,活 性フィ ラー から同様に 溶出し たアルミン 酸イオ ンと ,ケイ酸塩 イオン が縮 重合反応す ること で, アルミノケ イ酸塩 の組織が形 成され る。 この組織に ナトリ ウム イオンやカ リウム イオ ンが取り込 まれた ものがケイ 素・ア ルミ ニウム系活 性フィ ラー のジオポリ マー硬 化体 の構造とな る。ま た,高炉ス ラグ微 粉末 を活性フィ ラーと した 場合は,高 炉スラ グ微 粉末によ る Ca 成

図 2.5-11   材齢が質量残存率に与える影響(養生温度:水中養生(5℃))
図 2.5-13   材齢が質量残存率に与える影響(養生温度:水中養生(35℃))
図 2.5-15   養生温度が質量残存率に与える影響(試験開始時材齢:14 日水中養生)
図 2.6-4   ジオポリマーコンクリートの強度
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参照

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