家政学における生活管理 : 消費者・生活者の視点から
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(2) . 9巻 第2号 北海道教育大学紀要 (自然科学編) 第4. 平 成11年 2 月. 2 49 ion (NaturaI Sci i Journal of Hokkaido Uni ty of Bducat ences)VOI vers . ,No-. February,1999. 家政学における生活管理 - 消費者・生活者の視点から -. 鎌. 田. 浩. 子. 北海道教育大学釧路枝家政教育研究室. A Study on Living M anagement in Home. Econo mlcs :. Viewpoints of Consumer and Prosumer. Hiroko KAA&ATA. H0me Economics Laboratory, Kushiro Campus, ion Hokkaido Uni ty of Bducat vers・. Abstract. The purpose of this study was to. i clear course for l ving managementin the future by analyz‐. ion. The resul lows: ing hi ts were as fol story of home economics and consumer educat I. f Living managementin home economi ‐management and home cs attached importance to sel i l lr isein manegement ving management wi ‐ 工n the future, social and area manegement in l lmLportance‐. f l i i 2 1 iving management ime ti s inportant to analyze l ‐ , rom severa po nts n space and t. は じめ に. 平成元年度告示の学習指導要領おいては小学校で生活科が新設され, 家政学においては, 学部・学科等の 名称か生活科学や生活環境学に改称されるなど, 近年生活という用語が家政学や家庭科教育の周辺領域で活 発に用いられるようになっ た‐ しかし生活という用語は 「生きて活動すること」 という広辞苑の定義では捉 えきれない点が多い‐ 特に家政学においてはこれまで研究対象を家庭生活としてとらえることが多かったが, 生活環境, 生活科学といっ た名称の広がりは, 生活をどのように意義付けたものであろうか. またこれと同 時にこれまでの家庭経営や家庭管理はどのような転換を求められていると考えられるであろうか. そこで本 論では, 家政学における生活管理についてその方法と内容を消費者・生活者の視点から検討するものである.. ) ( 57.
(3) . 160. 1. 鎌. 田 浩 子. 家政学における家庭管理 (1). 家政学と生活学・生活科学. 近年大学において, 家政系学部が, 生活科学部や生活環境学部に名称変更する動きが相次いでいる. しか しこうした現象は, 生活という用語だけが先走り, その内実が明らかでないように思われる. そこで本論で は家政学の名称変更の中で多く用いられている生活科学という用語についてこれまでの議論を中心に考察を 行うこととする. ) ここ では詳細 でき な い が 日 本 家 家 政学 につ い て は, 古 代 ギリ シ ャ にさ かの ぼり各 国で長い歴 史を 持つ1 .. 政学会では 「家政学は, 家庭生活を中心とした人間生活における人と環境との相互作用について, 人的・物 的両面から, 自然・社会・人文の諸科学を基盤として研究し, 生活の向上とともに人類の福祉に貢献する実 ) 一方 生活学と家政学との関連については日本生活学 践的総合的科学」 とその定義を明らかにしている2 . , 会創始者である今和次郎が 「家庭というものにあまりにこだわり過ぎる視界の狭さからとも私は考えて 『家 政学』 という のをやめて, 個人生活をも, 家庭生活をも, また社会生活をも, 一枚にした対象として研究す る 『生活学』 という名目にした方がとも考えてみるのである‐ そうすると社会科との区別がなくなると考え るかも知れないが, 社会科のほうが, 現実と しての事実の研究であって, 生活科は現実の計画をどのように すべきか, という観点から進めていく性格のものと考えればいい. 当然そこで, 社会科学的知識を家庭科, 否, 生活科にそぎいれることによって, 現実の研究生活というものを客観視する力を養い, そこから生活設 ) 計へ と着 目させる よう な 学科 を予 想 したい の である.」 と述 べ て いる3 .. 一方生活科学については, 生活科学部を197 5年にいち早く開設した大阪市立大学の現在のメンバーや卒業 生が著した 「生活科学」 において 「生活科学は, 生活の発展・向上を目的とした生活そのものを主対象とす る実践的応用の学問である. 生活に関わる物資や環境との社会的存在としての人間そのものについて法則や 条件・原理・理想などを研究し, 人類の保護.福祉に貢献する応用的科学であって, ホームエコノミックス ) の広義の定義を継承している」 と定義している4 . しかし, 「家政学と生活科学の研究対象をめぐっ ては<家政学‐家族, 家庭生活>と<生活科学=個人‐ 人間生活>といった一種の二項対立的ないし対照的状況があるかにもみえるが, 他面で, それぞれの概念の 現代的意味での家政学的テクニカル・タームとしての質については, 基本的な点で検討の余地はまだ大きい」 ) と家政学と同様生活科学も同じ道のりを経るのではという考えもある5 . また, 生活科学に関する文献について 「自然科学的生活科学」 と 「総合的社会科学的生活科学」 の二つに 分けて, さらに前者を 「理化学的側面を扱うもの」 と 「自然系領域で更に拡大したもの」 に細分化しその特 質を追求したところ, その結果, いずれも 「自然科学的生活科学の系列」 に入るものであり, 生活諸現象間 の相互関連性や家庭生活と してのまとまった営みには及 ばず, また 「生活科学と何か」 という学としての規 ) 定や説明はなかったとう報告もある6 . しかし家政学について日本家政学会の規定では 「研究対象が 『人間』 だけでもなく 『環境』 だけでもなく, しかも 『両者の相互作用』 という三重のテーマを含」 み 「ばらばらに個別科学的に追求される…」 ため 「総 ) また 「家政という字義」 とのずれを指摘する声は大きい 合科学への努力が必要」 といわれる7 . . こうした動きからも明らかなように, 家政学及び生活科学は相違点があるとされるものの現在の時点では その判断は待たれるところと考えられ, 家政学の流れは生活という用語を用いる方向はやむ終えない動きで はあるがパラダイムの転換が望まれるところと考えられる. (2) 家政学における家庭経営学・家庭管理学・家庭経済学 それでは家庭管理について考える時, これまでの家政学における家庭管理と生活科学や生活環境といった 広がりを持つ中での生活管理はどのように内容が異なっていくのであろうか. ここではま ずその取りかかり ) ( 58.
(4) . 家政学における生活管理. 161. としてこれまでの家庭管理の系譜を追うこととする‐ 一般的に家庭経営学, 家庭管理学, 家庭経済学は混同されがちである. この中にあって家庭経営学は2つ の異なる用い方をされてきたといわれる. ひとつは研究者が独立した1つの領域, あるいは科目名として用 いる場合, もうひとつは文部省が家庭科教育の内容となる一定分野の総称として家庭経営という用語を用い 『家庭経営』 はこれまで 6年告示の 「高等学校学習指導要領 家庭編」 において 「 た場合である. 後者は195 「家庭経理」 として扱ったが, 内容の表現を適切にするため 『家庭経営』 と改めて, 家庭経済と家庭管理を 包含し, さらに両者を総合することとした」 とあり, すなわちここで, 家政学原論, 家庭経済学, 家庭管理 学, 家族関係学を総称する呼び名 として家庭経営学という名称が与えられた‐ そしてこの目的を 「これらの 学習の間に家庭経営と国民経済・国民生活との関係, 消費者の立場と責任, 公民としての権利 と義務, 社会 の進歩に伴う 生活水準の向上等を理解し, 社会の発展をはかって個人の向上に役立つような生活をする態度 ) を養う.」 と 明 ら か に して いる8 .. 987年に生活経営部会と名称変更を行うな ど 近年家庭経営学については, 日本家政学学会家庭経営部会が1 の動きがある‐ これに伴い同部会は名称変更を行う のが望ましい理由を会員 にアンケート調 査したところ 「各大学で進んでいる大学改革のなかで, 会員が科目名変更をする必要に迫られている という 声をきく」 「生 活の単位を<従来の家族中心>から, 多様な生活形態を認めていくことへの生活単位の拡大のなかで, <家 庭>とつけていることにより<狭い考えをしている>という 不当なレッテルがはられ … 」 などがあげら ) れて い た9 . 家 庭管 理 論 につ い て, わ が 国にお ける そ の系 譜 を 追う と, アメ リ カ の Home M anagement を参考に作. られた物資・貨幣・労力・時間の合理的管理を対象としたものと, 家庭経済と家計ぬきの家庭管理を2本立 てにする考えの双方が存在した‐ しかしこれらの関係も家政学が生活という広がりをもってとられられてき 0 ) てい る の と 同様 新 しい視 点 が望 ま れる と ころ である1 .. (3) 家政学と消費者 家政学が, 家庭生活を中心とした人間生活を対象にその生活の向上をめざす実践科学であることは前述し た‐ しかしそこに用いられる生活手段は, わが国においては1955年以降高度大衆消費者時代の到来によって, 家事労働の手を離れ社会労働の産物となったものである‐ すなわち生産と消費の分離が行われたことにより, 家庭生活は生産から消費の立場となり, 消費生活に関する研究は家政学の急務となった‐ 消費生活を行う主 体は消費者である. しかし消費者という用語は生活手段を購入し消費する人ということで生産者と対比され るが, 家政学における消費者は果たしてこの定義付けがあてはまるであろうか. 「消費者といえば, 生産の 側からみた用語という感があり, 消費者を消費する主体, つまり生活する主体からみて, 生活者という用語 1 )しかし生活の向上をめ ざすことが 目的である が, 消費者に代わって用いられるべき」 という論もある1 ‐ , 家政学において消費者という用語を消費者と生産者の対語ととらえることには疑問が持たれる. 2 大学における消費者関連授業の実態. (1) 消費者関連授業の実態 それではこれまで消費者を視点と した教育はどのように展開されてきたであろうか. 消費者教育について は, 生活者教育のひとつの視点としてこれまで小・中・高等学校および生涯学習の一環である社会教育にお いて広く行われているが, ここでは学問領域と関係が深いと考えられる大学におけるその授業の内容につい 2 } て 「全国大学消費者教育講義データ」 の結果をもとに検討したい1 . 本調査は, (財) 消費者教育支援センターが全国の大学及び短期大学のうち, 法学系, 経済.商学系, 農 学系, 家政学系, 文学, 社会学系, 教員養成系の各学部の消費者関連担当教員, および日本消費者教育学会 ( 59).
(5) . 田. 鎌. 162. 浩. 子. 名簿より大学の所属 のある教員計約8 00名あてに1 995年11月に質問紙による郵送アンケ ー ト法により実施し たものである. 質問の内容は消費者関連授業実施の有無, 実施の場合は授業科目名 担当者の専門 授業内 , , 容, 受講者数, 受講者の性別, 開講期間, 単位認定の方法, 授業形態, 授業方法, 評価方法等に及ぶ. 回答 数は, 大学院が国立1 1校 ( 1 3講義) 1 4講義) , 公立1校 (4講義) , 私立6校 ( , 4年制大学が国立36校, 公 立8校, 私立8 5校, 短期大学が公立4校, 私立64校総計20 5校, 講義者数298名, 講義数490であっ た‐ 本調 査は 「消費者教育」 をできる限り広義にとらえる視点から行ったものであるが ここでは特に授業科目およ , びシ ラ バ ス に注 目する こ ととす る.. まず, 回答授業数を学部系列別に4年制の大学についてみると, 国・公立大学においては 経済・商学系 , が最も多く次いで教員養成系, 以下法学系, 農学系, 家政学系, 全学部対象, 文学・社会学系の順であった. これに比べ4年制私立大学は, 経済・商学系家政学系が特に多く, 次いで全学部対象 法学系 文学.社会 , , 学系, 農学系の順であった. さらに短期大学についてみると, 家政学系が特に多く, 経済・商学系 教員養 , 1 3 ) 成系に回答がみられるものの文学.社会学系, 法学系, 農学系からの回答はなかった (図1) .. 2. 0 短期大学 ■4年制私立大学 鴎 4年制国立大学 数字は開語数. 13. 13 … 5 … … … …1. 10. 20. 30. 50. 40 開講数. 60. 70. 80. 90. 0 10 (%). 注)「全国大学消費者教育データ」1 9 9 6より作成. 図1 学部系統別開請授業数. (2) 消費者教育の視点からみた学部別授業内容 これらの授業科目について, 各学部ごとの独自性を明らかにすることを目的と して授業名称およびシラバ スを参考に消費者教育のどの領域に属するかの分類を試みた. 消費者教育の分類については, 日本家庭科教 育学会関東地区会による 「1消費生活と経済社会構造の情報, 2生活理念と生活の価値.水準, 3消費者問 題と対策, 4商品・サービス等の選択.購入と契約, 5環境保全と消費生活」 の5分類, アメリカ消費者教 育リソースセンターによる 「1意思決定 (意思決定に影響を及ぼす原因, 意思決定の過程) 2資源管理 (資. 金管理, 購入, 資源保全) 3市民参加 (消費者保護, 消費者の主張) 」 などがある‐ さらに消費者の権利と してあげられるものにはアメリカのケネディ 大統領の教書による 「1安全を求める権利, 2知らされる権利, 3選ぶ権利, 4意見が届けられる権利」 やこれに 「5教育を受ける権利」 を加えたフォー ド大統領の5の権 利, またC工による8つの権利と5つの責任などがある‐ しかし本論では, 家政学の各論また消費者の権利や責任の各論を追う のではないこと, 大学の単独の学部 (60 ).
(6) . 163. 家政学における生活管理. ではなく, いくつかの学部通して消費者教育を見るという視点から, 広義に消費者教育を捉えたいため, ア メリカの消費者利益に関する大統領委員会による 「学校教育における消費者教育のガイ ドライン」 による4 つの分類 「1個人としての消費者, 2社会の一員としての消費者, 3市場における消費者のニ者択一, 4消 )に基 づ い て検 討す る こと と した な お ここ で の 分析 は こ の4 つ の 領 域 の ど れ の に あ て 1 4 費 者 の権利 と 責任」 .. はまるもののみを対象とし, その他は今後の課題とした. また1つの授業でいくつのもの領域が含まれてい るものものあったが主なもの1つのみを記述した (表1) .. 領 域. ≦た. 法. 学. 系. 経済・商学系. 名. 部. 農. 称. 4 ) 消費者教育(. 個人とし ての消費者 社会の一員としての消費者 市場における消費者. 家政学系 消費科学◎ 消費生活◎ 3 ) 消費者問題( 初等家庭科教育法 生活経営側 2 ( ) 生活経済( 6 ) 生活科学( 3 ) 家庭経済学( 2 ) 生活設計 小学家庭 生活消費学 生活経済 生活情報 生活科学 消費者情報 消費者行政 教員養成系. 学 系. パーソナル・ファイナンス. 協同組合言 ) 論3. 農産政策学 環境経済学 環境科学 生活環境論. 経済法. ) マーケティング謝6. 経済政策論 市場経済論. 2 農業経済学( ) 水産経済学( 2 ) 農産物市場学. 消費者経済( 5 ) 消費者調査法( 4 ) 衣料管理士論. マクロ経済学. 銀行論 商品学. 消費者の権利と責任. 4 消費者法( ). 消費者保護法( 2 ) 製造物責任法( 1 ). 環境法 製造物責任法. 消費者保護・消費. 者法規回 消費者問題( 9 ). 注)( ) 内は開講数、 記入のないものはすべて1 授業名に 「論」 がつかないものがあっ たが一律とした. 表1. 大学 における消 費者教育授業名のガイ ドライン領域別分類. 回答数が多かった家政学系の授業をみる と, 「消費科学」 「消費生活論」 が授業数の上では最も多い‐ これ は衣料管理士の資格取得上必要な科目となっ ているためと考えられる‐ これらのシラバスや使用テキストを 見る と, 繊 維 製 品 の 実験, 衣 料 マー ケ ティ ンクや な どの 内容 も み ら れる が, 訪 問 販 売 と ク レジ ッ トな ど販 売 方法 の 解 説 の み で 終 わ っ て いる も の もいく つ かみ ら れた. しか しそ の多く はシ ラ バス を みる と, 「1消 費者. 問題, 2消費者保護の歴史, 3消費者の権利と責任, 4消費者行政, 5企業の消費者対応, 6商品テスト, 7消費者教育」 のような柱立てをし, 個人としての消費者のみでなく, 社会や市場社会や企業との関わり, 消費者行政や消費者問題をはじめ消費者の権利と責任にふれられているものが多く, 表にはあらわすことが (61).
(7) . 164. 鎌. 田 浩 子. でき な か っ た が5つ の領 域 す べ て を網 羅 してい た.. 次に回答数が多かった経済・商学系の授業をみると, 「マーケティング論」 が最も多く6講義であったが, 一般的な 「経済史」 , 「金融取引法」 でとりあげている という 回答 , 「市場経済論」 や各論としての 「銀行論」 もあった. しかしこれらの内容をみると消費者行動, 消費者心理などマーケティングのターゲッ トとしての 消費者を意識したものが多く, 領域としては 「市場における消費者」 が中心であり, 「パー ソナル・ファイ ナンス」 の中で個人としての消費者にふれたり 「製造物責任法」 や 「環境法」 の中で消費者の権利や責任に ふれられているものも若干みられた. 次に法学系の授業をみると数の上では 「消費者法」 が最も多く, 次に 「消費者保護法」 があげられた. ま た, 「債権法」 , 「製造物責任法」 などの各論の中でも消費者としての立場を認識して 授業が行 , 「商行為法」 なわれていた. これらのことから法学系では消費者について消費者の権利と責任を中心として社会の一員 と しての消費者について授業が展開されていた. さらに農学系の授業をみると 「協同組合論」 が最も多く 「農業経済学」 「水産経済学」 が続いている. 授 業内容をみると, 例え ば 「農業経済学」 では 「農業の生産, 農産物の流通と消費の問題について応用経済学 の立場から講義する」 のように農業生産者と消費者を結ぶ視点が見られ, 領域では 「市場における消費者」 にあたる. また協同組合論では, 社会の一員としての消費者や消費者としての権利 と責任についてふれられ ていた. ここではすべての領域にあてはまることはなかったが, 生活環境, 環境経済等環境を含めた広い視 点の授業行われてきていることがわかった. ・び家庭科担当の教員に調査票を発送したが回答のほとんど 教員養成系の大学については国立では社会科及 は家庭科専攻の教員 からであった. 授業については 「家庭科教育法」 を始めとした家庭科教育に関する科目 や専攻授業としての 「家庭経済学」 や 「生活科学」 に中で教えているというものもあった. またまさに 「消 費者教育」 と銘打った授業が行われていた. これらの内容についてみると5領域の多岐にわたっているもの の, 個人としての消費者を中心とするものが多かった.. (3) 家政系学部が消費者教育を担う役割と課題 以上の結果から消費者に関する授業は, 調査を行った法学・経済・商学・農学・家政学・文学・教育学と あらゆる場面で教えられていることがわかった. しかし, 消費者教育の4つの領域からみると各々 の学問領 域には当然のことながら独自性がみられた. 例え ば同じ食品を扱うにしても家政学の視点からは, 食品を栄 養や価格, 入手のし易さ, 家族・家庭の状況等からどのように購入し食べ, 廃棄物をどのように処理するか までの広範囲が対象となる. しかし他系統の授業では, 食品の生産者や流通業者等の立場を中心とする授業 が中心である. これは基本的な消費者の知識として必要なことではあるが, それらを商品として購入し消費 する消費者の立場になったものとは言い難い. 消費者や生活者についての学習には学際的な取り組みが必要 であることは明らかであるが, これまでの法学部, 経済・商学部の単独の授業ではこれらの展開は難しく, 家政学的な視点が必要であると考えられる. 981年に日本消費者教育学会が設立されたまだ若い学問である. 同学会設立趣 消費者教育は, わが国では1 意書によれば消費者教育は 「消費者が生活の価値を守り, 生活の質を向上させるための自立人間能力を開発 する」 と定義づけられ 「消費者教育は人間の発達段階に応じて, 生涯にわったてシステム的に, また家庭・ 学校.社会・産業等その担い手相互の間の理解と協力と連携のもとにシステム的に行われる必要があります」 5 ) 従って実践科学としての家政学と消費者教育の定義は生活の向上を目指す点に共通点が見 とされている1 . い だされる‐ しかし前述の通り, 消費者という用語では定義しきれない部分が存在するためさらに消費者や 生活者について詳細な検討が必要となる. (6 2 ).
(8) . 家政学における生活管理. 3. 165. これからの家政学における生活管理 (1) 家政学と消費者・生活者. わが国では, 大学において家政学部が生活科学部や生活環境学部などへ名称を変更している‐ この理由と しては, 家政学の対象となる家庭生活の環境条件の変化 (社会の成熟化・社会構造の変化等) により, 21世. 紀の研究教育体制上の課題として①高齢化②情報化③生活技術の高度化 (脱自然化) ④学術の高度化⑤高学 歴化⑥女性の社会進出⑦家族の変貌⑧生活の社会化⑨生活者の意識変化⑩教育的課題と進路などを顧みて変 6 ) 更 が行 わ れた と さ れる1 . 一 方, アメ リ カ 家 政学会 (A mer i iat ion) は, 1995年 アメ リ カ 家 族 ・ 消 can Home Economics Assoc ly and Consumer Sc 費 者 科 学会 (Assoc iat i i on of Fami ences) と名 称 変 更 を行 っ た. 変 更 の 理 由 や. 他の名称案については議事録に詳細に述べられているが, これはこれまでの名称が専門を示さなかっ たため 7 } すなわち日本の家政学会の会員の多くが大学を初め アイデンティティの危機を拡大したためといわれる1 . 諸機 関 の研 究者 である の に対 し, アメ リ カ の 会員 は, 小 ・ 中 ・高 ・ 大学 教 師, エクス テンシ ョ ン・ ワ ーカー,. ヒーブ等の多くの実学型の専門職についたの会員で構成されている. この中にあって今日の名称変更は, 消 費者を中心と考えるというよりむ. しろ会員である企業サイ ドの動きが大きく影響していたといわれ, 逆に消 費者である私たちの生活実践の場としての家庭や家族の姿がみえにくくなったと考えられる. それでは, これまで経済や法学のなかで消費者と してとらえてきた概念は家政学においてどのよう に転換 することが必要であろうか. その一つとして生活者という用語がある‐ 生活者のついての研究はま だ途につ いたばかりであるが, 独立した生活者という用 語は文献では1 960~7 0年代に登場し始め, 家政学では198 0年 代に, 一般の図書では1990年代に急増したという‐ これは家政学においては 『家政学将来構想1 98 4 』 が, 一 8 ) 般には 『生活大国5カ 年計画』 を中心とした生活政策が影響 しているといわれる1 . しかしこれらの定義は暖昧な点が多く, あまりに広義にとらえられているものもある‐ ここで家庭生活を 中心に考えた場合, それは 「生命と生活の再生産」 という営みでとらえることができる. そこではさらに生 活者を 「消費者は経済構造によって規定される用語であるのに対し, 生活者は人間の生活の意識化と生活実 9 } すなわち経済用語で使用される消費者と いう 現の指向を期待する用語である」 ととらえることができる1 . 用語はものを消費する消費者という経済行動を行いながらそれを使用して生活を行う 「生活者」 としての営 みを行っ ているものである‐ 家庭生活を視座とする家政学の視点からはこの側面からの 「生活者」 が大きな 意味を持ち, これまでの家庭管理もこの意味からの生活管理という視点を持つことが重要と考えられる. (2) ホーム エ コノ ミ ス ト と して の生 活 管 理の 現代 的 課題. それでは, これからの家政学における生活管理にはどのような方向が見出されるのであろうか. 家政学の独自性については, 「1家庭生活を中心とし, 家庭生活を営む生活者サイ ドに立つということ , 2家庭生活を構成する多様な側面と, 家庭生活をとりまく環境とを個々にバラバラに切り離すのではなく , トータルなものとしてとらえるということ, 3家庭生活の現実が提起する問題に応 える という 問題解決的‐ 実践的立場に立つということ, 4加えてこれら3つを統一視点でとらえることが, 基本にすえられている‐」 ) しかし前述のとおり家政という字義 による誤解 0 があげられており, これらはいずれも重要な指摘である2 . も 多 い‐. アメリカの家政学の母とよばれるエレン・リチャーズは, 人間と環境との相互作用を研究する 「人間生態 学」 を提 起 し, レイ ク . ブラ シ ツ ド会 議 (1899~1908年) でホーム . エ コノ ミ ッ クス という 用 語を使用 した .. ホーム・エコノミックスは人間を取り巻く物理的環境と社会的存在としての人間の本質について またその , 両 者 の相 互 関係 につ い て 究 明する 学 問 と 定義 し, アメ リ カ 家 政学会 を 発足 させ ている. ホー ム .エ コノ ミ ッ クス につ い て はわ が 国 にお いて も 検討 が行 わ れてお り, こ の用 語 にお い ても こ の 定義 を用 いる こ と は適切 で. ( 6 3).
(9) . 66 1. 鎌. 田 浩 子. あ ろう.. 具体的には例えば, これまで消費者教育といわれているものは, 賢い消費者に代表されるような, ものの 買い方や消費者被害の防止といった生活技能の習得といった現状対応型の受動的な教育が中心であり, 商品 の生産・流通・消費・リサイクル・廃棄といっ たシステムから切り離して消費者をとりあげることが多かっ た. しかし地球規模の環境問題が取り沙汰される昨今これらを切り離すことはもはや困難であり, 社会を構 成する一生活者として, 環境に対しても社会的責任を果たしていける人間の育成していくものでなければな らな ずこ こ にも ホー ム ・ エ コノ ミ ッ クス を視 点 と した生活管 理 が生 き てくる.. 生活管理の範囲としては 「人間の生命と労働力の再生産にかかわる領域」 が考えられるが, こう した消費 者や環境のような具体的な問題を実証的に把握し, 相互関連と本質を明らかにできることが生活管理の目標 であろう. このためにホームエコノミックス と して生活管理をとらえた場合, 時間的, 空間的に把握するこ こがポイントとなる. 時間軸とは, 幼児から高齢期まで人間の後戻りできない一生であり, 空間的とは, 自 己・家庭・地域.社会というひろがりである. そして一人一人の生活者がそれぞれの時間軸と空間軸のなか で主体形成を行う こととなる. 現在家政学は生活環境問題も含めたパラダイムの転換が求められている. こう した状況の中で生活管理は, これまで自己生活管理や, 経済概念が優先された家庭生活管理ではなく, 地域生活管理・社会生活管理な ど 公的生活管理への拡がりを積極的に持つことが重要となる. それはまさに環境を生活の側から改善していく ホーム ・エ コノ ミ ッ ク ス の展 開であり ホーム ・ エ コノ ミ ス トの 課題である.. そしてエレン.リチャーズが述べたように生活者は 「環境を正しい方向に導く」 すなわち環境を生活の側 から積極的に改善していこう とする主体的な社会的展開が望まれる. 今後は人間と して基本的な生命・健康 についての権利を守るための生活管理がますます重要となり, 日々変化する生活環境の中で 「生活の問題に, 自ら身につけた生活技術をより積極的に活用し問題を解決していく実践的な手段体系をもち, かつ実践する 生活者」 の育成が今後の課題といえる. 要 約 本論では, 家政学の歴史的系譜や生活学や生活科学などの隣接領域, また消費者・生活者の視点からこれ からの生活管理の方向を探ろう とした. この結果, 家政学は現在家政という字義にしばられ, 家族・家庭と いうイメー ジが強く現代の家庭生活の実態と合わなくなっている一方, 生活という用語を用いることにより その範囲が際限なく拡がるという矛盾をもつ. このため家政学は私たち の生活環境問題も含めたパラダイム の転換が求められている. これらの転換の方向として, 消費者・生活者の視 点にから検討を行ったところ, 家政学において消費者は, 生活者の一面を捉えたものであり適切な表現とはいえず, 生活者という表現がよ り適切であった. そしてこれをふまえて家政学における生活管理について検討を行ったところ家政学は人間 の一生を時間的に空間的に把握することから始まるが, これまでの生活管理は, 自己生活管理や, 家庭生活 管理が中心であった. しかし今後の生活管理は地域生活管理・社会生活管理など公的生活管理の重要性が増 し, 環境を生活の側から改善していくホームエコノミストとしての社会的展開が課題であると考えられる.. 引用文献 7 1 9 9 0 )5 7一7 1) 日本家政学会編, 家政学事典, 朝倉書店 ( 4 2 ( 1 9 8 )3 1 9 8 4 光生館 家政学将来構想 2) 日本家政学会編, , (64).
(10) . 家政学における生活管理. 167. 4 9 1 7 )4 9 3) 今和次郎, 今和次郎集第5巻・生活学, ドメス出版 ( 1 5 )2 9 9 4) 中根芳一編, 私たちの生活科学, 理工学社 ( )2 9 1 9 9 5 9 2 5) 福田はぎの, 家政学と生活科学は同じかの諸論点, 家政学原論部会報No . , 日本家政学会家政学原論部会 ( 6 1 9 9 4 ) 2 8 6) 宮下美智子, 家政学と生活科学は同じか, 家政学原論部会報No . , 日本家政学会家政学原論部会 ( 0 7) 前掲書5)3 6-4 7 1 9 6 )4 5 1年度改訂版, 教育図書 ( 8) 文部省, 高等学校学習指導要領家庭編, 昭和3 ) ( 1 9 9 6 3 1 号 家庭経営学研究 査 9) 天野寛子, 家庭経営学部会の名称に関するアンケート調 , , 日本家政学会家庭経営学部会 8 9 ) 2-13 1 9 1 0 ) 阿部和子, 家庭生活の経営と管理, 日本家政学会編, 朝倉書店 (. f the Pres 11) J,F.Kennedy,SpeciaI Mes sage to the Congress on Protecting the Consumer lnterest.Public Papers P. 35 1962 )2 ident s(. )3 5 1 9 9 2 ) 伊藤セツ, 消費生活経済学, 光生館 ( 1 2 ) 1 9 9 6 1 3 )(財) 消費者教育支援センター, 全国大学消費者教育講義データ ( 5 4一1 9 9 6 )1 1 0 号 (財) 消費者教育支援センター ( 5 1 4 ) 拙稿, 広範囲な大学で消費者教育関連講義を実施, 消費者教育研究 1 )3 1 9 9 2 0周年記念誌, 日本消費者教育学会 ( ) 日本消費者教育学会創立1 1 5 9 1 9 5 ) 2 9 6 ) 長嶋俊介, 生活環境学への拡充と展望, 家政学原論部会報No 1 . , 日本家政学会家政学原論部会 ( 994 Positioning the Profession for the 21st century i t 17 )The Scottsdale Mee ng:1. 2 7一5 1 9 9 5 )4 2 9 Q 1 8 ) 表真美, 家政学における 「生活」 について, 家政学原論部会報N , 日本家政学会家政学原論部会 ( 3 3一3 3 6 1 9 9 2 )3 1 9 ) 武藤八恵子, 鶴田敦子他, 消費者教育を導入した家庭科の授業, 家政教育社 ( )1 15-117 1986 20 ) 家政学方法論研究会, ホーム・エコノ ミ ッ クス新家政学概論, ドメス 出版 (. 65 ) (.
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