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切花生産における共選共販組織の 情報共有機能に関する経済分析

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 棧 敷 孝 浩

学 位 論 文 題 名

切花生産における共選共販組織の 情報共有機能に関する経済分析

学位論文内容の要旨

本 論文の目的は,切花の共選共販組織が,品質情報及び技術情報の不完全性を解消し,高品 質な種苗の導入及び高品質な切花のロット確保の実現にいかに寄与するかを,北海道内の産地 を対象として経済学的に分析することである。

切 花産地が市場評価を得るためには,高品質な切花のロット確保,及び消費者の嗜好に合せ た新品目の逐次導入が求められる。そのため産地は,他産地に遅れなぃように需要のトレンド に合った新品目・品種を選択・導入し,その生産技術をいち早く習得するという,生産面の対 応が特に重要となる。しかし,農家には,新たに導入する種苗の品質に関する情報(以下,「品 質情報」)や切花の生産技術に関する情報(以下,「技術情報」)は十分にない。これら情報の 不完全性を解消する手段として有効なのが共選共販組織である。共選共販組織自体は販売組織 であるが,新品目の導入と高品質な切花のロット確保,生産面での品質情報及び技術情報の不 完全性を解消する機能を包含していると考えられる。

  第2章で は,北海 道の切 花生産の動向と販売組織の変遷を,1992年までの生産の拡大期と 1993年以降の停滞期に大別し,近年の変化を明らかにした。北海道の切花生産は,水田転作 作物として導入されて以来,カーネーション・宿根カスミソウといった洋花を主軸に,道外移 出 により急成長をとげた。ところが,1993年以降,頭打ちの状態にある。また,カーネーシ ヨン・宿根カスミソウが横ばぃ・減少し,他の洋花品目の割合が増加している。共選を行って い る出荷団 体は,1995年には4〜5割前後 にまで増 加して いる。しかし,その割合は全国平 均よりも低く,かっ,1団体当たりの出荷量も少ない。道外移出量及び移出割合が高い宿根カ スミソウでさえ,最大の競合地域である福島県と比較すると,共選を行う出荷団体の割合,1 団体当たり出荷量は大きく下回っている。

  第3章では,道外移出の主要品目である宿根カスミソウを対象として,草苅モデル(二段階 支出配分モデル)を適用し,卸売市場における地域問(北海道,福島県,その他府県)の品質 格差を考慮した需要分析を行い,各地域の需要構造及びその代替関係を明らかにした。さらに,

宿根カスミソウの供給量の変化が,北海道及び福島県の価格と数量に与える影響を分析した。

  分析の結果,地域ごとの代替関係はそれぞれ異なり,卸売市場では各地域問の品質格差を認 識していることが明らかとなった。また,福島県が供給量を増加させた場合,販売額は増加す るが,北海道では品質格差のために販売額の減少が予測される。

  道外移出の主要品目である宿根カスミソウは,供給量を増加させても販売額の減少が予測さ れるため,今後産地としては,市場で高く評価される新品目・品種の導入が必要である。福島 県と北海道を比較すると,その販売体制が大きく違う。すなわち,共選共販体制の確立が北海 道の切花の品質評価を高めるために有効となる可能性が高い。新品目・品種を導入する際に,

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競合地域の出現や一般的に切花のライフサイクルが短いといった理由から,高品質な切花生産 のためには早期の技術習得が重要になる。

  第4章では,ゲーム理論を適用し,品質情報不完全性下の切花種苗取引において,共選共販 産地が品質情報の探索行動を通して,高品質な種苗を購買する上でどのような要因から有利と なるのかを,個選共販産地との比較により明らかにした。分析の対象品目としてカーネーショ ンを取り上げ,カーネーション生産額が,道内,1,2位であり,出荷形態が異なる当別町(共 選共販)と月形町(個選共販)において実態調査を実施した。

  調査 結果は,共選共販産地が高品質な種苗を購買する上で有利となる要因として,@種苗 購入における産地の組織化,◎共選共販産地内での品質情報の共有,◎産地内で同一の品質の 種苗購入が可能,@継続的取引関係の構築,が重要であることが示す。特に,継続的取引関係 は,共選共販産地の方が構築しやすい。当別町では,共選共販体制の確立による卸売市場への 安定供給と,組織内における生産技術の高位平準化を目指した情報交流が活発に行われている。

種苗会社は,種苗の安定供給が可能であり,技術的に信頼できる農家に対して,農家の新しく 導入する種苗の品質情報をより多く与えるインセンティブを持つ。すなわち種苗会社の供給し た種苗が,卸売市場で高い評価を得ることは自身の評判にっながり,将来的に自己の種苗の安 定的な需要にっながる。

  当別 町と月形町の比較分析から,共選共販産地は,個選共販産地に比べて品質探索費用を 節 約 す る こ と が で き , 高 品 質 な 種 苗 を 購 入 す る 可 能 性 が 高 い こ と が 示 さ れ た 。   第5章で は,ベイ ズ・ルー ルで拡 張したtarget‑inputモデルを適用し,新品目の生産にお いて最適投入量に関する情報の不完全性が,、共選共販組織内の情報交流による農家の学習によ り 減 少 し , 収 量 を 増 加 さ せ る 効 果 を 計 量 経 済 学 に よ ・ っ て 明 ら か に し た 。   分析の対象産地は,共選共販体制の下で,デルフイニュームを生産する三石町である。三石 町は1995年以降急速に生産量が増加した新興産地であり,共選共販組織内において,生産技 術に関する情報交流がフオーマル,インフオーマルな形で積極的に行われている。デルフイニ ユームの生産技術に関する情報交流は,主に,@かん水の最適投入量,◎農薬と肥料の最適投 入量,にっいて行われ,この積極的な情報交流が切花の最適生産技術の達成に寄与している。

  単収の増加を指標とする学習効果を組み込んだモデルを定式化し,計測した結果,産地内の 情報交流による学習が,自己の作付経験からの学習とほぼ同等の効果を与え,学習効果は時間 とともに逓減することが明らかになった。さらに,同一の共選共販品目を生産する農家が多い 場合,農家間における情報交流が活発になり,最適投入量の早期達成により高品質な切花の口 ット確保を実現することを明らかにした。以上,本論文では共選共販組織が,産地内農家問の 活発な情報交流を通じて,市場で高い評価を得る生産地を形成することに寄与することを実証 した。すなわち,@高品質な種苗の獲得,◎高い技術水準の早期達成,が共選共販組織によっ て促進される。

  切花生産の場合には,常に需要の変化に合わせた新品種・品目を導入し,かっ他産地との競 合に対応するために高い生産技術を早期に確立することが求められる。一方,農業生産の特質 として,新規に導入する種苗の品質に関して不確実性が伴う。また土壌・気候条件の影響を強 く受けるため,同じ作目であっても地域によって生産技術が異なるという特質を有する。共選 共販体制が確立されている場合,農家間の情報交流が積極的に行われる結果,産地内農家の技 術の早期高位平準化が達成され,結果として種苗の品質に関する不確実性が減少する。このよ うに,農業生産においては種苗の品質や生産技術の「情報」が決定的に重要となるが,共選共 販体制は,産地内農家の「情報」の共有により,市場動向に合わせた販売・生産対応を可能と する。したがって,販売対応を目的とする共選共販組織は,「情報」共有の特質を備えている ため に,学 習効果を 通じて生 産にお ける情報 の不完 全性に対 応する有効な組織と言える。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    長南史男 副査    教授    出村克彦 副査   助教授   近藤   巧

学 位 論 文 題 名

切花生産における共選共販組織の 情報共有機能に関する経済分析

本 論 文 は 図9, 表28を 含 み , 総 頁 数97頁 ,6章 か ら な る 和 文 論 文 で あ る 。 別 に7編 の 参 考 論 文 が 添 え ら れ て い る 。

  切 花 は , 北 海 道 で は 水 田 転 作 作 物 と し て 導 入 さ れ , カ ー ネ ー シ ョ ン ・ 宿 根 カ ス ミ ソ ウ と い っ た 洋 花 を 主 軸 に 急 成 長 を と げ た 。 切 花 産 地 が 市 場 評 価 を 得 る た め に は , 高 品 質 な 切 花 の ロ ッ ト 確 保 , 及 び 消 費 者 の 嗜 好 に 合 せ た 新 品 目 の 逐 次 導 入 が 求 め ら れ る 。 そ の た め 産 地 で は , 他 産 地 に 遅 れ な い よ う に 需 要 の ト レ ン ド に 合 っ た 新 品 目 ・ 新 品 種 を 選 択 し , そ の 生 産 技 術 を い ち 早 く 習 得 す る こ と が 重 要 と な る 。 し か し な が ら , 新 た に 導 入 す る 種 苗 の 品 質 情 報 や 生 産 の た め の 技 術 情 報 は , 農 家 に と っ て 不 完 全 な も の で あ る 。 こ れ を 解 消 す る の が 共 選 共 販 組 織 の 情 報 共 有 機 能 で あ る 。 本 論 文 で は , 切 花 の 共 選 共 販 組 織 が , 品 質 情 報 及 び 技 術 情 報 の 不 完 全 性 を 解 消 し , 高 品 質 な 種 苗 の 導 入 及 び 高 品 質 な 切 花 の ロ ッ ト 確 保 の 実 現 に い か に 寄 与 す る か を , 北 海 道 内 の 産 地 を 調 査 対 象 と し て 実 証 的 に 経 済 分 析 し て い る 。 分 析 結 果 の 概 要 は 以 下 の よ う で あ る 。

  1. 切 花 生 産 に お け る 共 選 共 販 組 織 の 役 割

北 海 道 の 切 花 生 産 の 動 向 と 販 売 組 織 の 変 遷 を ,1992年 ま で の 生 産 拡 大 期 と 1993年 以 降 の 停 滞 期 に 大 別 し , 分 析 し た 。 北 海 道 で 共 選 を 行 っ て い る 出 荷 団 体 の 割 合 は ,1995年 に は4〜5割 に 増 加 し た が , 全 国 平 均 よ り も 低 く , か つ , 1団 体 当 た り の 出 荷 量 も 少 な い 。 道 外 移 出 量 が 多 い 宿 根 カ ス ミ ソ ウ で さ え , 最 大 の 競 合 地 域 で あ る 福 島 県 と 比 較 す る と , 共 選 を 行 う 出 荷 団 体 の 割 合 ,1団 体 当 た り 出 荷 量 と も に 大 き く 下 回 っ て い る 。

  二 段 階 支 出 配 分 モ デ ル に よ っ て , 卸 売 市 場 に お ける 地域 問( 北海 道, 福島 県,

そ の 他 府 県 ) の 品 質 格 差 を 考 慮 し た 宿 根 カ ス ミ ソ ウ の 需 要 関 数 を 推 計 し , 地 域 ご と の 代 替 関 係 を 明 ら か に し た 。 福 島 県 が 供 給 量 を 増 加 さ せ た 場 合 , 北 海 道 で は 品 質 格 差 の た め に 販 売 額 の 減 少 が 予 測 さ れ , 市 場 で 高 く 評 価 さ れ る 新 品 目 ・

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新品種導入の必要性と,共選共販組織の生産対応の有効性を示した。

  2.

種苗の品質情報の不完全性と情報探索行動

  

市場で高く評価されるためには,高品質な種苗の購入が必須条件である。そ して,種苗の購入に際して,どのようにして情報の不完全性を減少させること ができるかが重要になる。切花種苗取引における品質情報の探索行動を,グー ム理論を適用して考察した。この考察にもとづき、カーネーション生産額が道 内1 位の共選共販産地の当別町と,第

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位の個選共販産地の月形町において比 較実態調査を実施した。その結果,共選共販産地は,種苗購入における産地の 組織化,共選共販産地内での品質情報の共有,産地内での同品質の種苗購入,

継続的取引関係構築の4 点において,高品質な種苗を購買する上で有利である ことが明らかにされた。特に継続的取引関係の構築によって,共選共販産地で は,品質探索費用を節約することができ,種苗会社にとっても自社の供給した 種 苗 が 切 花 市 場 で 高 い 評 価 を 得 る こ と が 需 要 の 拡 大 に っ な が る 。

  3

.共選共販組織における農家の学習効果

  

共選共販組織の確立している地域では,卸売市場への安定供給と,組織内に おける生産技術の高位平準化を目指した情報交流が活発に行われている。三石 町では共選共販組織の下で,1995 年以降急速にデルフイニューム生産量が増 加した。デルフイニュームの生産技術に関する情報交流は,最適かん水量,農 薬と肥料の最適投入量について主に行われている。

  

ベイズ・ルールで拡張したtarget‑input モデルを適用し,学習効果を組み込 んだモデルを定式化し,三石町におけるデルフイニュームの単収モデルを計測 した。結果は産地内の情報交流による学習が,自己の作付経験による学習とほ ぼ同等の効果を与え,学習効果は時間とともに逓減することを示した。さらに,

同一の共選共販品目を生産する農家が多い場合,農家問における情報交流が活 発になり,最適投入量の早期達成により高品質な切花のロット確保を実現する ことを明らかにした。

  

以上,本論文では切花生産における高品質種苗の獲得と高技術水準の早期達 成が共選共販組織によって促進されることを明らかにした。本来,販売組織と して発展してきた共選共販組織は,農家問で情報共有の特質を備えるが故に,

学習効果によって生産技術情報の不完全性にも対応できると結論している。こ れは、共選共販組織の機能に関する新たな分析結果であり,その研究成果は学 術的に高く評価される。

  

よって,審査員一同は,桟敷孝浩が博士(農学)の学位を受けるのに十分な 資格を有すると認めた。

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参照

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