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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 楊    淑

学 位 論 文 題 名

Formation of porous anodic oxide films on valve metals in phosphate‑glycerol electrolytes at elevated temperatures      (高温リン酸塩含有グリセリン溶液中におけるバルブ金属多孔質      アノード酸化皮膜の生成に関する研究)

学位論文内容の要旨

  金属の アノー ド酸 化は, アルミ ニウム やマ グネシ ウム教 どの軽 金属の 表面 処理法 としてこれまで 広く工 業的に 利用さ れて きた。 一方で ,2000年 以降ナ ノテク ノロ ジーを 用いた 各種最 先端デバイス の重要 性が認 識され ると ,規貝U配 列した ナノポ ーラス 酸化膜 を自 己組織化により形成できるアノー ド酸化 法は様 々教ナ ノ材 料やナ ノデ′ ヾイス を創出する先端技術のーつとしても認識されるように教 り,現 在世界 中で活 発を 研究が 展開さ れてい る。従来,自己規則化ナノポーラス酸化膜の形成はアル ミナ皮 膜に限 定され てい たが,1999年に 希薄フ ッ化水 素酸中 にお いてナ ノポー ラスチ タニア膜の形 成が報 告され て以降 ,フ ッ化物 系の電 解液を 用いた ナノ ポーラ スおよ びナノ チュ ープ状のポーラス 皮膜の 形成が 様々教 金属 上で実 現され ている 。この よう をナノ 構造酸 化膜は 機能 性膜として様々教 応用が 期待さ れてい るが ,フッ 化物系 電解液 で生成 する アノー ド酸化 膜はフ ッ化 物イオンを多く含 み,密 着性に 劣る毅 ど課 題があ る。一 方で, 最近見出された高温リン酸塩含有グリセリン電解液は,

電解液 成分を ほとん ど含 ま橡い アノー ド酸化 皮膜を 形成 できる てとが 報告さ れ. そのポアサイズは 10 nm程 度と小 さく ,フッ 化物系 電解液 とは異 教る 特性を 持った ナノポーラス酸化膜が形成でき,注 目され ている 。しか し教 がら, この電 解液を 用いたアノード酸化皮膜に関する研究はまだ少なく,そ の生成 挙動, 生成機 構お よぴナ ノ構造 の形態 制御法について明らかにすることは,金属表面の機能化 や新し い機能 性ナノ 材料 の創製 という 点で重 要であ る。 本研究 では, 高温リ ン酸 塩含有グリセリン 電解 液 中 で 生 成す る ア ノ ー ド酸 化 皮膜 の機能 性膜と して の潜在 性を明 らかに するこ とを 目的と し て,二 オプ, アルミ ニウ ムおよ びマグ ネシウ ムをアノード酸化し,アノード酸化皮膜の生成挙動と生 成 機 構 に つ い て 調 べ る と と も に , そ の 形 態 制 御 と 表 面 機 能 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。 本 論 文 は , 第1章 か ら 第8章 ま で で 構 成 さ れ て お り , 以 下 に 各 章 の 概 要 を 記 す 。   第1章 では ,金 属の アノー ド酸化 および アノー ド酸 化皮膜 に関す るこれ まで の研究 動向を 概説す るとと もに, 高温リ ン酸 塩グリ セリン 電解液 を用い たア ノード 酸化で 得られ る酸 化膜の特徴と可能 性につ いて述 ベ,本 論文 の目的 および 構成に ついて 記し た。

  第2章 では .高 温リ ン酸塩 含有グ リセリ ン電解 液を 用いて ニオブ をアノ ード 酸化し たとき にマイ クロコ ーン状 の表面 形態 をした ポーラ ス酸化 膜が形 成す ること を述ベ ,その 形成 機構とその皮膜形 態を検 討した 結果に つい て記載 した。 二オプ のアノード酸イヒ初期にはアモルフアス構造のナノポー ラスア ノード 酸化皮 膜が 生成し ,その 後ポー ラス層下部のバリヤー層で結晶性酸化物が核発生する。

その結 晶性酸 化物が 円錐 状に成 長する ととも に,初 期に 生成し たアモ ルフア ス酸 化物が電解液中で     ―86―

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優先的 に化学 溶解 するこ とでマ クロコ ーン状 表面 形態を 持った ポーラ ス酸 化膜が 得られるという生 成モデ ルを提 案し た。ま た,マ イクロ コーン 表面 は枝分 かれし たナノ ファ イバ状 の形態をしている が,皮 膜内部 では ,一般 的誼ア ノード 酸化皮 膜特有のシリンダー状ナノポアが多数素地方向ヘ成長し ている ことを 透過 電子顕 微鏡観 察から 示した 。

  第3章 お よぴ 第4章 に おい て , マ イクロ コーン 状ニオ プアノ ード 酸化皮 膜の生 成に及 ばす 電解液 温度, 電解液 中の 水分量 および アノー ド酸化 電圧 の影響 につい て検討 を行 った。 マイクロコーンの 形 態 は , 電 解 液 温 度 を428Kか ら453Kの 温 度 範 囲 で変 え て も 変 化し 教 い こ と を明 ら か に す る と ともに ,初期 に 生成す るアモ ルフん ス酸化 物の化学溶解速度は電解液温度を上昇させることにより 大きく 極り,453Kでは ,45 minと いう 比較的 短いア ノード 酸化 時間で マイク ロコー ン表面を得るこ とがで きるこ とを 示した 。一方 ,電解 液中の 水分 量とア ノード 酸化電 圧は マイク ロコーンの形態に 大きく 影響し ,水 分量が 大きい ほどマ イクロ コー ンのサ イズが 小さく 教り ,コー ンの先端角が小さ く毅 っ た 。 ア ノ ード 酸 化 電 圧 を10Vか ら15Vま で 上昇 さ せ た と きは , 先 端 角 を変 える こと顔 く,

コーン サイズ が小 さく教 ること を明ら かにし た。 結晶性 酸化物 の核発 生と その膜 厚方向および膜厚 と垂直 方向へ の結 晶性酸 化物の 成長速 度の関 係か ら形態 の水分 量およ びア ノード 酸化電圧依存性に ついて 検討を 行っ た。

  第5章 で は, マイク ロコー ン状ニ オプア ノー ド酸化 皮膜の 表面濡 れ性 につい て検討 を行っ た。表 面の濡 れ性を 制御 するに は,表 面の化 学組成 のみ教らず表面形態の制御が重要であり,階層的社表面 粗さを 持った 表面 が超撥 水およ び超撥 油表面 の実 現に有 効とさ れてい る。 本章で は,コーン状の階 層構造 を持っ たア ノード 酸化皮 膜は超 親水性 ・超 親油性 を示す が,フ ッ素 化アル キルリン酸塩で表 面をコ ーティ ング すると ,水に 対する 動的接 触角 が175°と極 めて高く,前進接触角と後退接触角の 差が2゜ と 小さ く教る こと を明ら かにし ,この マイ クロコ ーン表 面が水 を弾く 表面 として 適した 形 態であ ること を示 した。 また, 接触角 はコー ンサイズが大きいほど,および先端角が小さいほど大き く 顔 る こ と を 明 ら か に し ,C恥sic・Baxtermodelに し た が っ て こ の 傾 向 を 説 明 し た 。   第6章 で は, 高温リ ン酸塩 含有グ リセリ ン電 解液中 におけ るアル ミニ ウムの アノー ド酸化 皮膜の 生成挙 動を調 べた 。酸性 水溶液 中にお いて, 電解 液によ って電 場誘起 粘性 流動ま たは電場加速溶解 によっ てポー ラス 皮膜成 長が起 こるこ とが報 告さ れてい る。今 研究で 用い た高温 電解液中でもポア 底部の パリヤ ー層 酸化物 のポア 底部か らポア 壁方 向への 電場誘 起粘性 流動 が起き ていることを示唆 する 実 験 結 果 を 得る と と も に ,電 解液 中の水 分量 が皮膜 生成速 度へ及 ばす影 響を 明らか にした 。   第7章 で は, マグネ シウム のアノ ード酸 化を 行った 。マグ ネシウ ムお よびそ のアノ ード酸 化皮膜 はこ の 電 解 液 中 で高 い 反 応 性 を示 し,KMgP04を生 成す ること を明ら かにし た。ア ノー ド酸化 皮膜 自身も りン酸 塩を 多く含 み,ア ルミニ ウムや ニオプをどとは,皮膜生成挙動は大きく異社るてとがわ かった 。

  第8章では ,本論 文の 総括を 行った 。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

主 査    教 授    幅 崎 浩 樹 副 査    教 授    安 住 和 久 副 査    准 教 授    伏 見 公 志

学 位 論 文 題 名

Formation of porous anodic oxide films on valve metals in phosphate‑glycerol electrolytes at elevated temperatures      (高温リン酸塩含有グリセリン溶液中におけるバルブ金属多孔質      アノード酸化皮膜の生成に関する研究)

  金属の アノード酸化は,ア ルミニウムやマグ ネシウムをどの軽 金属の表面処理法としてこれまで 広く工業 的に利用されてきた 。一方で.2000年 以降ナノテクノロ ジーを用いた各種最先端デバイス の重要性 が認識されると,規 則配列したナノポ ーラス酸化膜を自 己組織化により形成できるアノー ド酸化法 は様々をナノ材料や ナノデバイスを創 出する先端技術の ーっとしても認識されるようにを り,現在 世界中で活発教研究 が展開されている。従来,自己規則化ナノポーラス酸化膜の形成はアル ミナ皮膜 に限定されていたが ,1999年に希薄フ ッ化水素酸中にお いてナノポーラスチタニア膜の形 成が報告 されて以降,フッ化 物系の電解液を用 いたナノポーラス およびナノチューブ状のポーラス 皮膜の形 成が様々を金属上で 実現されている。 このようをナノ構 造酸化膜は機能性膜として様々を 応用が期 待されているが,フ ッ化物系電解液で 生成するアノード 酸化膜はフッ化物イオンを多く含 み,密着 性に劣る誼ど課題が ある。一方で,最近見出された高温リン酸塩含有グリセリン電解液は,

電解液成 分をほとんど含ま誼 いアノード酸化皮 膜を形成できるこ とが報告され,そのポアサイズは 10 nm程度と小さく ,フッ化物系電解 液とは異をる特性を 持ったナノポーラス酸化膜が形成でき,注 目されて いる。しかしをがら ,この電解液を用いたアノード酸化皮膜に関する研究はまだ少をく,そ の生成挙 動,生成機構および ナノ構造の形態制御法について明らかにすることは,金属表面の機能化 や新しい 機能性ナノ材料の創 製という点で重要 である。本研究で は,高温リン酸塩含有グリセリン 電 解液 中で 生 成す るア ノ ード酸化皮膜 の機能性膜として の潜在性を明らか にすることを目的と し て,ニオ プ,アルミニウムお よびマグネシウムをアノード酸化し,アノード酸化皮膜の生成挙動と生 成 機 構 に つ い て 調 べ る と と も に , そ の 形 態 制 御 と 表 面 機 能 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。   本 論 文 は , 第1章 か ら 第8章 ま で で 構 成 さ れ て お り , 以 下 に 各 章 の 概 要 を 記 す 。   第1章では,金属 のアノード酸化およ びアノード酸化皮 膜に関するこれま での研究動向を概説 す るととも に,高温リン酸塩グ リセリン電解液を 用いたアノード酸 化で得られる酸化膜の特徴と可能 性につい て述ベ,本論文の目 的および構成につ いて記した。

  第2章では,高温 リン酸塩含有グリセ リン電解液を用い てニオブをアノー ド酸化したときにマ イ クロコー ン状の表面形態をし たポーラス酸化膜 が形成することを 述ベ,その形成機構とその皮膜形 態を検討 した結果について記 載した。ニオブの アノード酸化初期 にはアモルファス構造のナノポー ラスアノ ード酸化皮膜が生成 し,その後ポーラス層下部のバリヤー層で結晶性酸化物が核発生する。

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そ の結晶 性酸化 物が 円錐状 に成長 すると とも に,初 期に生 成した アモルフんス酸化物が電解液中で 優 先的に 化学溶 解す ること でマク ロコー ン状 表面形 態を持 ったポ ーラス酸化膜が得られるという生 成 モデル を提案 した 。また,マイクロコーン表面は枝分かれしたナノファイ′ヾ状の形態をしている が ,皮膜 内部で は, 一般的社アノード酸化皮膜特有のシリンダー状ナノポアが多数素地方向へ成長し て いるこ とを透 過電 子顕微 鏡観察 から示 した 。

  第3章お よ び第4章に おい て.マ イクロ コーン 状ニ オブア ノード 酸化皮 膜の生 成に 及ぼす 電解液 温 度,電 解液中 の水 分量お よびア ノード 酸化 電圧の 影響に ついて 検討を行った。マイクロコーンの 形 態 は . 電 解 液 温 度 を428Kから453Kの 温 度 範 囲 で 変え て も 変 化 しを い こ と を 明ら か に す る と と もに, 初期に 生成 するア モルフ アス酸 化物 の化学 溶解速 度は電 解液温度を上昇させることにより 大 きくを り,453Kでは,45 minと いう比 較的短 いアノ ード酸 化時 間でマイクロコーン表面を得るこ と ができ ること を示 した。 一方. 電解液 中の 水分量 とアノ ード酸 化電圧はマイクロコーンの形態に 大 きく影 響し, 水分 量が大 きいほ どマイ クロ コーン のサイ ズが小 さく春り,コーンの先端角が小さ く を っ た 。 アノ ー ド 酸 化 電圧 を10Vか ら15Vまで 上 昇 さ せた ときは ,先 端角を 変える ことを く,

コ ーンサ イズが 小さ くをる ことを 明らか にし た。結 晶性酸 化物の 核発生とその膜厚方向および膜厚 と 垂直方 向への 結晶 性酸化 物の成 長速度 の関 係から 形態の 水分量 およびアノード酸化電圧依存性に つ いて検 討を行 った 。

  第5章 では, マイ クロコ ーン状 ニオブ アノー ド酸 化皮膜 の表面 濡れ性 につ いて検 討を行った。表 面 の濡れ 性を制 御す るには,表面の化学組成のみをらず表面形態の制御が重要であり,階層的を表面 粗 さを持 った表 面が 超撥水 および 超撥油 表面 の実現 に有効 とされ ている。本章では,コーン状の階 層 構造を 持った アノ ード酸 化皮膜 は超親 水性 ・超親 油性を 示すが ,フツ素化アルキルリン酸塩で表 面 をコー ティン グす ると, 水に対 する動 的接 触角が175゜と極めて高く,前進接触角と後退接触角の 差 が2゜程度 と小さ くをる こと を明ら かにし ,この マイ クロコ ーン表 面が水 を弾く 表面 として適し た 形態で あるこ とを 示した。また,接触角はコーンサイズが大きいほど,および先端角が小さいほど 大 き く を る こ と を 明 ら か に し ,Cassie‑Baxter mo(lelに し たが っ て こ の 傾向 を 説 明 し た。

  第6章 では, 高温 リン酸 塩含有 グリセ リン電 解液 中にお けるア ルミニ ウム のアノ ード酸化皮膜の 生 成挙動 を調べ た。 酸性水 溶液中 におい て, 電解液 によっ て電場 誘起粘性流動または電場加速溶解 に よって ポーラ ス皮 膜成長 が起こ ること が報 告され ている 。今研 究で用いた高温電解液中でもポア 底 部のバ リヤー 層酸 化物の ポア底 部から ポア 壁方向 への電 場誘起 粘性流動が起きていることを示唆 す る 実 験 結 果を得 るとと もに, 電解液 中の 水分量 が皮膜 生成速 度ヘ 及ばす 影響を 明らか にした 。   第7章 では, マグ ネシウ ムのア ノード 酸化を 行っ た。マ グネシ ウムお よび そのア ノード酸化皮膜 は こ の 電 解 液中 で 高 い 反 応性 を 示 し,KM卿4を生成 するこ とを 明らか にした 。アノ ード 酸化皮 膜 自 身もり ン酸塩 を多 く含み,アルミニウムやニオプをどとは,皮膜生成挙動は大きく異をることがわ か った。

  第8章 では, 本論 文の総 括を行 った。

  こ れを 要する に,著 者は新 奇極電 解液 である 高温リ ン酸塩 含有 グリセリン溶液を用いてナノ・マ イ クロ構 造を制 御し たアノ ード酸 化膜の 形成 に成功 すると ともに ,その皮膜成長に関する重要を知 見 を得る に至っ た。 これら の成果 は金属 の表 面処理 および 電気化 学ナノテクノロジー分野の進展に 大 いに寄 与する もの である。よって,著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があ る ものと 認める 。

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