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消化器癌における

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 )    川 俣    太

学 位 論 文 題 名

消化器癌におけるIVIesothelin 発現の分子病理学的検討

学位論文内容の要旨

【背景と目的】 Mesothelin 遺伝子は 71 kDa の前駆体蛋白(Full ー ERC/mesothelin) をコードし ており、これは酵素によって切断され、膜結合型蛋白の40 kDa のC ―ERC/mesothelin と分泌型蛋 白の31 kDa の N ー ERC/mesothelin よりなる。Mesothelin は悪性中皮腫、卵巣癌など多くの癌で発 現が認められ、過去に免疫組織化学染色にて膵癌のMesothelin の高発現が臨床病理学的悪性度と 相関することが報告されている。また、胃癌の免疫組織化学染色にてMesothelin の細胞膜発現 が非細胞膜発現と比較し、有意に予後不良であることが報告され、膜発現型のC ―ERC/mesothelin の発現の増強が癌の悪性度と関わることが示唆された。本研究では、肝外胆管癌、大腸癌の臨床 検体を用いてMesothelin の発現とその局在、病理学的因子との関係を明らかにし、Mesothelin が消化器癌領域の新たなバイオマーカーになりうるか否かについて検討する。また、大腸癌のり ンパ節転移は予後を最も規定する因子のーっであることから、大腸癌細胞株を用いて mesothelin の発現を比較検討し、それぞれの mesothelin の遺伝子(Full 一ERC/mesothelin 、C ーERC/mesothelin 、 N 一ERC/mesothelin) の導入における mesothelin 過剰発現大腸癌細胞株を用いたりンパ管への浸潤 機構についても明らかにする。

【対象と方法】(1 )臨床病理学的検討:北海道大学病院消化器外科I にて施行された2000 年から 2008 年までの肝外胆管癌切除61 症例および 2002 年から2004 年までの大腸癌切除 91 症例を対象 とした。抗Mesothelin 抗体にて免疫組織化学染色を行い、Mesothelin の発現(高発現:腫瘍細 胞の染色割合が 50 %以上もしくは染色強度が2 十以上のものと定義)および局在(細胞膜発現お よび細胞質発現)に着目し、臨床病理学的因子や予後との相関を検討した。(2) 分子病理学的検 討: 5 種類の大腸癌細胞株(WiDr 、LoVo 、CaC02 、 T84 、HCA7) におけるMesothelin の発現を比較 検討した。それぞれのmesothelin 過剰発現プラスミド(Full ―,N ―orC ―ERC/mesothelin) を導 入したmesothelin 高発現大腸癌細胞株 (Full −、N −、C ー、Mock −WiDr) を作成し、リンパ管内皮細 胞 へ の 接 着 能 を adhesion assay に て 浸 潤 能 を invasion assay に て 比 較 検 討 し た 。

【結果】臨床病理学的検討では、肝外胆管癌の Mesothelin 高発現は61 例中29 例(47.5 %)に認 め、Mesothelin 高発現は肝転移(P = 0 .013) と相関を示した。また、Mesothelin の細胞膜発現群 は 61 例中 32 例( 52 .5 %)に認められ、肝転移(P :0 .Q06) および腹膜播腫(P :O . 024) と相関 を示した。予後に関する検討では Mesothelin の細胞膜発現群は、 Mesothelin 非細胞膜発現群と 比 較し て 有 意に 予後が 不良であ り( 5 年生存 率18% 対 29 %、 P =0 . 017) 、多 変量解析 でも Mesothelin の細胞膜発現群が独立した予後不良因子となった(RR2 .964 ,95 %CI ,1 .401 −6 .296 , P =0.0045) 。   大 腸癌にお いては 、 Mesothelin 高発現は、 91 例中 45 例(49 . 5 %)に認め、

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(2)

Mesothelin細 胞 質 発 現 は38例(41,8% 冫 に 認 め ら れ た が 、 ど ち ら も 臨 床 病 理 学 的 因 子 お よ び 予 後 と の 相 関 は 認 め ら れ な か っ た 。 ー 方 、Mesothelinの 細 胞 膜 発 現 は 、34例 (37.4% ) に 認 め ら れ 、 リ ン パ 管 浸 潤(P:O.009)お よ ぴ り ン パ 節 転 移 (P=0,048)と 相 関 を 認 め た 。 さ ら に 予 後 に 関 し て は 、 リ ン パ 節 転 移 陽 性38症 例 に お い て 、Mesothelinの 細 胞 膜 発 現 群 はMesothelin非 細 胞 膜 発 現 群 と 比 較 し 、 有 意 に 予 後 不 良 で あ っ た (P:0. 033)。 分 子 病 理 学 的 検 討 で は 、5種 類 の 大 腸 癌 細 胞 株 に お い て 、 内 在 性 のFullーERC/mesothelinの 発 現 はCaC02細 胞 に の み 高 発 現 が 認 め ら れ た が 、40 kDaのC−ERC/mesothelinの 発 現 は 認 め ら れ な か っ た 。 そ こ でmesothelin高 発 現 大 腸 癌 細 胞 株(Full− 、N― 、C− 、Mock−WiDr)に よ る り ン パ 管 浸 潤 を 比 較 検 討 し た り ン パ 管 接 着 ア ッ セ イ で は 、C‑WiDr (60.0土4.9cells IHPF)お よ びFull‑WiDr (60.6土4.9cells /HPF)は 、 Mock−WiDr (51.1土3.4cells /HPF)と 比 較 し 、 有 意 に り ン パ 管 内 皮 細 胞 へ の 接 着 が 強 か っ た (P く0.01)。 ま た 、 リ ン パ 管 浸 潤 ア ッ セ イ で は 、 特 に 、C−WiDr (614土74 cells /FF)はN―WiDr (430 土31 cells /FF)お よ びMock―WiDr (412土50 cells /FF)と 比 較 し 、 有 意 に り ン パ 管 内 皮 細 胞 へ の 浸 潤 を 認 め た (Pく0. 001)。

【 考 察 】 本 研 究 で は 肝 外 胆 管 癌 に お い てMesothelinの 高 発 現 が 予 後 不 良 で あ る こ と を 示 し 、 さ ら にMesothelin発 現 の 細 胞 内 局 在 ( 細 胞 膜 発 現 お よ び 細 胞 質 発 現 ) が 癌 の 悪 性 度 に 重 要 で あ り 、 よ り 詳 細 な 予 後 を 反 映 す る マ ー カ ー と 成 り う る こ と を 示 し た 。 さ ら に 、 大 腸 癌 に てMesothelinの 細 胞 膜 発 現 が り ン パ 管 浸 潤 や り ン パ 節 転 移 と 相 関 す る こ と を 明 ら か に し 、 む 汀 む り に お い て 細 胞 膜 に 局 在 す るC−ERC/mesothelinが 、 リ ン パ 管 内 皮 細 胞 へ の 接 着 や 浸 潤 を 引 き 起 こ す こ と を 明 ら か に し た 。 近 年Epidermal growth factor receptorやvascular endothelial growth factorに 対 す る 分 子 標 的 治 療 の 有 効 性 が 示 さ れ て い る が 、 分 子 標 的 治 療 薬 の 効 果 の 検 討 に は 、 タ ー ゲ ッ ト 分 子 の 病 理 組 織 学 的 な 細 胞 膜 上 の 発 現 の 評 価 が 重 要 に な っ て い る 。 そ れ は 、 分 子 標 的 治 療 薬 の 標 的 が 、 そ の 細 胞 膜 上 に 存 在 す る 特 定 の 分 子 を タ ー ゲ ッ ト と し て い る か ら で あ る 。 現 在 、 米 国 に て Mesothelinを 分 子 標 的 と し た 臨 床 試 験 が 第II相 試 験 に 入 っ て い る 。 本 研 究 に よ る 検 討 に て C−ERC/mesothelinは 肝 外 胆 管 癌 、 大 腸 癌 に お い て 高 率 に 細 胞 膜 上 に 発 現 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。 ま たC―ERC/mesothelinの 高 発 現 は 臨 床 病 理 学 的 悪 性 度 と 相 関 し 、 大 腸 癌 に お い て は 高 率 に り ン パ 管 浸 潤 を 引 き 起 こ す た め 、C一ERC/mesothelinが 今 後 、 消 化 器 癌 領 域 に お け る 診 断 ・ 治 療 へ の 応 用 が 期 待 さ れ る 新 た な バ イ オ マ ー カ ー と な り う る と 思 わ れ た 。

【 結 論 】 消 化 器 癌 に お い て 今 後 、C―ERC/mesothelinを 分 子 標 的 と し た 新 た な 治 療 の 発 展 が 期 待 さ れ る 。

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(3)

学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教授 教授 教授 教授

平野 武冨 坂本 岩永

学 位 論 文 題 名

   聡 紹信 直哉 敏彦

消化器癌における /Iesothelin 発現の分子病理学的検討

  Mesothelin は40 kDa の細胞膜糖蛋白であり、膵癌、胃癌においてMesothelin の発現が臨床 病理学的に血管浸潤やりンバ管浸潤と相関し、予後不良であることが報告されている。Mesothelin の遺伝子は71 kDa の前駆体蛋白 (Full‑ERC/mesotllelin )をコードしており、これはfurin .like protease によって切断され、glycosyl ‐phosphatidyhnosit01 (GPDanchor による細胞膜結合型蛋 白 の40kDa の C ‐ ERC ′me80thelin と分泌型蛋白の31kDa の N ‐ ERC / mesothelin よりなる。本 研究ではMesotheHn の免疫組織化学染色における細胞内の局在に着目し、肝外胆管癌61 例、大 腸癌91 例にて MesotheliIl 発現を検討したとこ ろ、Mesothehn の細胞膜発現が非細胞膜発現群 と比較し有意に予後不良であることを見出した。また、大腸癌細胞株を使用した分子病理学的検 討にて、細胞膜発現型のmesothehn (C ・ERC ′mesothelin )がりンパ管への接着、浸潤を引き起こ すことを明らかにした。

   発表後、副査の坂本教授から@ Mesothelin と血管内皮細胞を使用した実験結果について、◎

fulin likeprotease の機序について、◎C .ERC ′mesothelin 過剰発現大腸癌細胞株(C ‐WiDr )の Westemblotting に よる70kDa のバンドが検出さ れる理由についての質問がなされた。申請者 は@についてはmesothelin 過剰発現大腸癌細胞株は、血管内皮細胞(HUVEC )との接着や浸潤 能に差を認めなかったこと、◎についてはfurin ‐likeprotease のcleavagesite の報告があるもの の、その機序については内在性のfulin _ 1ikeprotein の発現やcleavagesite のmutation も含めた 検討が今後必要で あること、◎についてはC ・ERC/mesothelin の形質導入により、WiDr 細胞の 内在性のFu11 ・ERC ′Mesothe1 泣(70kDa )がpositivefeedback 機構により発現が増強した可能性が あると回答を行った。

   次に、副査の岩永教授から@ Meosothelin の免疫染色における細胞質発現の評価について、◎

Mesothehn のワクチン療法について、◎Mesothelm ノックアウ卜マウスについての質問がなさ れた。申請者は@については細胞質発現陽性の評価は「細胞質が淡く染色されるものもしくは細 胞質中に穎粒状に染色される部分を認めるもの」としたこと、◎についてはPhaseI のMesothel 血 のワクチン療法(CRS ・20 のの報告において、mesothelin 特異的T 細胞免疫応答が誘導され、治療 効果を認めた症例があること、◎についてはMesothelin ノックアウトマウスがコントロールマウ

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ス と 比 較 し 、 解 剖 学 的 ・ 組 織 学 的 異 常 を 認 め ず 、 さ ら に 成 長 や 繁 殖 に も 異 常 を 認 め な か っ た 事 を 回 答 し て 述 べ た 。

  ま た 、 副 査 の 武 冨 教 授 か ら Mesothelinの プ ロ モ ー タ ー に つ い て 、 ◎ Mesothelinの translocationに つ い て 、 ◎ リ ン バ 管 内 皮 細 胞 のCA125の 発 現 に つ い て の 質 問 が な さ れ た 。 申 請 者 は ◎ のMesothelinの プ ロ モ ー タ ー に つ い て は 未 だ 解 明 さ れ て い な い が 、 文 献 的(Cancer Res.

2007、J Biol Chem. 2011)にMesothelinの 高 発 現 を 認 め る 癌 細 胞 に は20塩 基 のsequence (Conscript, TCTCCACCCACACATTCCTG)が あ り 、 こ の ConscriptはSPl‑like element (TCTCCACCC)とMCAT element (ACATTCCrDを 持 つ と さ れ て い る こ と 、 こ の MCAI`element はtranscription enhancer factor (TEF)‑1 (TEADl)に よ っ て 制 御 さ れ て お り 、TEF‑1の 発 現 が Mesothelinの 過 剰 発 現 に 必 須 で あ る と 報 告 さ れ て い る 事 を 回 答 し た 。 ◎ に つ い て は 、 細 胞 質 に 存 在 す る71 kDaの 前 駆 体 蛋 白(Full‑ERC/mesothelin)がfurm・hkeprotea8eに よ っ て 切 断 さ れ 、 40kDaの 膜 発 現 型 のC‐ERC′mesothelinと な る こ と でMesothelinの 活 性 型 の フ オ ー ム と し て 機 能 し 、 細 胞 の 浸 潤 能 カ や 遊 走 能 カ を 増 加 さ せ 、 癌 の 転 移 を 引 き 起 こ し て い る 可 能 性 が 推 測 さ れ る と 述 べ た 。 ま た 、Beta・catemnが 細 胞 内 の 局 在 を 細 胞 質 か ら 核 内 へ 移 行 す る こ と で 癌 の 悪 性 度 が 変 化 す る よ う に 、Mesothehnに お い て も 細 胞 内 で のtrans10cationに よ り 癌 の 悪 性 度 が 異 な る 可 能 性 が あ る と 付 け 加 え た 。 ◎ に つ い て はMesothelinはCA125な ど の 糖 鎖 と 結 合 す る こ と が 既 に 報 告 さ れ て お り 、 本 研 究 に お い てMesotheHnは り ン バ 管 内 皮 細 胞 の 接 着 や 浸 潤 に 関 与 す る と い う 結 果 が 明 ら か に な っ た が 、 リ ン バ 管 内 皮 細 胞 に お け るCA125の 発 現 に つ い て の 報 告 は 無 く 、 今 後 CA125や 接 着 分 子 で あ る Integr血 等 を 含 め た 検 討 が 必 要 で あ る と 回 答 し た 。   最 後 に 主 査 の 平 野 教 授 か ら ◎ 免 疫 染 色 の 評 価 の 精 度 に つ い て 、 ◎ 代 表 切 片 の 選 定 に つ い て 、 ◎ Mesothehnの 細 胞 膜 お よ び 細 胞 質 の 共 に 発 現 し て い る 症 例 に つ い て 質 問 が な さ れ た 。 申 請 者 は ◎ に つ い て は 染 色 性 の 評 価 は 臨 床 デ 一 夕 情 報 を 持 た な い2人 の 病 理 医 と 共 に 実 施 し た こ と 、 ◎ に つ い て は 、 悪 性 腫 瘍 の 組 織 型 が 混 在 し て い る 場 合 は そ れ ぞ れ の 組 織 型 を 良 好 に 観 察 で き る 代 表 的 な 切 片 を 選 定 し て い る こ と 、 ◎ に つ い て は 免 疫 染 色 に お い て 胆 管 癌23.0% (14′61例 ) 、 大 腸 癌 11.0% (10/91例 ) が 細 胞 膜 お よ び 細 胞 質 に 共 に 発 現 し て い る 症 例 で あ っ た と 回 答 し た 。   い ず れ の 質 問 に 対 し て も 、 申 請 者 はInternationaljournalofoncology誌 に も 発 表 し た 自 ら の 実 験 結 果 や 既 報 の 論 文 等 を 引 用 し 、 適 切 に 回 答 し た 。 本 研 究 の 結 果 、 消 化 器 癌 領 域 に お い て 、 今 後 、 細 胞 膜 発 現 型 のC.ERC′mesothelinを 分 子 標 的 と し た 新 た な 治 療 の 発 展 が 期 待 さ れ た 。 審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 に お け る 研 鑽 や 単 位 取 得 な ど も 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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