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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 (理 学 )市 川 紀美雄 学 位論 文 題名

  /IOLECULAR IVIOTIONS IN NETWORK POLYIVIERS

( 架 橋体 高 分 子の 分子 運動)

学位論文内容の要旨

  本学位論文は、いくっかの架橋体高分子の構造と物性を誘電分散測定や動的粘弾性測定などにより分子運 動の観点から研究した結果について記述したものであり、全6章からなる。第1章及び第2章では、ポリエ ーテルをぺースとしたポリウレタン系架橋体の分子鎖の運動性を誘電分散や固体高分解能NMRなどの測定 結果にもとづぃて議論する。第3章と4章では、上記架橋体のLi塩混合体のイオン伝導機構を、複素インピ

―ダンス測定、固体高分解能NMR測定、動的粘弾性測定、FT‑RAMAN測定の結果にもとづき、高分子/Li間 相互作用の観点から調べた結果について述べる。第5章では、ポリウレタンを主たる構造とするマイクロカ プセルの動的粘弾性測定結果について述べ、第6章では本論文の結論を示す。

1.三次元架橋体の誘電分散による研究(第1章)

  ポリプロピレンオキサイド(以下PPOと略す)を三官能のフェニルイソシアナートで架橋した膜について誘 電測定を行なった。その周波数分散にはニつの緩和ピークが見られた。このスベクトルをHavriliak‑Negamiの 式を用いて解析して、2つの緩和に分離し、誘電バラメ―夕を求めた。その結果、高周波数側の緩和強度は 膜中のエ―テル酸素の濃度に、低周波数側の緩和強度はウレタン基濃度に、それぞれ比例することがわかっ た。高周波数側の緩和はPPO分子鎖の工一テル酸素の電気双極子による緩和であり、低周波数側の緩和はウ レタン基の電気双極子による緩和であることが結論された。以上の結果から、本架橋体高分子は、架橋点近 傍と架橋点間の分子鎖とで異なる緩和時間を有することが明らかとなった。

2, 側 鎖 型 ポ リ エ チ レ ン オ キ サ イ ド か ら な る 架 橋 体 の 分 子 運 動 に 関 す る 研 究 ( 第2章 )   標題の架橋体についての誘電測定では、主分散の外に高周波数側に小さな分散が見られ、主分散は半値幅 が5ケタもあるブロードなものであることがわかった。エチレンオキサイド炭素のNMRのTlpの温度依存性 を測定した。それは明瞭な極小を示し、これより求められた緩和時間の値は、誘電分散での緩和時間と一致 した。また、エチレンオキサイド炭素の磁化の減衰プロファイルは、緩和温度より低温側では2つの緩和時 間で表わされ、また高温側では1つの緩和時間で表わされることから、低温側での速い緩和時間の要素はエ チレンオキサイドの側鎖によるものと推定され、誘電分散の測定結果とも矛盾しない。誘電分散に見られた 高 周 波 数 側 の 小 さ な 緩 和 は 、 ポ リ エ チ レ ン オ キ サ イ ド に 見 ら れ る 愉 散 と 推 定 さ れ た 。

3.LiCl04をド―プした架橋体のイオン伝導についての研究(第3章)

  PPOを3官能イソシアナ―トで架橋した膜にLiCl04をド―プした試料は高いイオン伝導度を示し、複素イン ピーダンススベクトルにはニつ以上の緩和が認めらた。Coleの式を用いて緩和バラメータを求めた。高周波 数側緩和強度は架橋点間の分子量が大きい程大きいことがわかった。更にLi‑NMRの測定から得たLiの緩和 時間は、高周波数側緩和に対応することが判明した。以上の結果から、本イオン伝導体に認められたニつの

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緩和は、低周波数側が ウレタン基と相互作用じたLi‑イオンの運動によるもの であり、高周波数側はPOユニツ トと 相互 作 用し たも ので あると推定された。また 、PPO鎖の部分と架橋点近傍 は異なる分子運動性を有す る ことが動的粘弾性測定 などの結果から推定された 。

4.LiCl04をド―プした架橋体 のFT‑RAMAN分光による研究( 第4章)

  本 章に おい ては 、 第3章 で用 い た試 料に つい てFI'‑RAMAN測定を行なっ た結果が述べられている。極 めて 良 好なスベクトルが得られ、 以下のことがわかった。

  200‑300caf1に見 られるD‑LAMバンドのイオン 添加による高波数側へのシ フトは架橋体においても明確 に観 測 され、同バンドの半値幅の 変化も認められた。更に360cm‥,500cm. ̄及び1200cm‑1付近と1500cn1付近の吸 収 はイオン添加により吸収波 数と吸収強度が変化すること がわかった。

  本 論 で は 、 架 橋 体 とPPO鎖 と の ち が い に つ い て 、LiCI04と の 相 互 作 用 の 観 点 か ら 議 論 し た 。

5. ポ リ ウ レ タ ン ー ウ レ ア 構 造 を 有 す る マ イ ク ロ カ プ セ ル の 動 的 粘 弾 性 測 定 ( 第 5章 )   多価イ ソシアナ―トと水との重合と により得られたマイクロカ プセル壁Iよアモルファスな膜である。これ ら のカ プセル分散 液を平滑な紙の上に塗布乾燥 させたものを試料として動 的粘弾性を測定し、カプセル 壁の ガラス転 移を観測した。ガラス転移温 度卩尠の異なる壁形成材料 と極性の異なる芯形成材料(オイル)を用い て いく っか の マイ クロ カプ セル を 調製 した 。カ プ セル 壁Tgは、壁形成材 料と芯オイルの組み合わせに よっ て変化し 、オイルによる可塑化効果の ちがいを示した。また、ガ ラス転移領域は、芯オイル量に依存せず―→

定 であ り、 か つ芯 オイ ルの 導入 でも変化しな かった。また、WLF式のパラ メー夕一Cl,C2はともにある 一定 の オイ ル量以上で 一定の値になることがわかっ た。更に、走査電顕観察か らは、マイクロカプセルはあ る一 定のオイ ル量以上でcore/shell構造を 形成することがわかり、WLFバラメー夕一CいC2のオイル量依存性は、マ イ ク ロ カ プ セ ル のcore/Shell構 造 の 発 現 に よ り 説 明 す る こ と が で き る と 考 え ら れ る 。

6.結語(第6章 )

  第1章 では 、 誘電 分散 の測 定 により架橋点近傍と架 橋点間の分子鎖の運動が異 なることを示した。更にア

´レカリ土類金 属塩を含んだ上記架橋体でも 、イオンの運動は架橋点近傍と架橋点間の分子鎖の運動に支配さ れていることを 示した(第3章、第4章)。以 上の結果は、本研究で扱った比較的架橋密度の高い系では、分子 鎖 の運 動が 均一 では な いこ とを 明確に示している。 第5章では、架橋密度の高い 膜構造を有するマイクロカ プ セル 壁の粘弾性特性を 測定する方法を考案した。そ の結果、本測定法によルマ イクロカプセルの壁膜物性 が 得ら れ、芯オイルによ る可塑性やマイクロカプセル のモルフオロジカルな変化 を考慮することで説明でき ることを明らか にした。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 助教授

引地 長田 佐々木

学 位 論 文 題 名

邦男 義仁 直樹

 MOLECULAR IVIOTIONS IN NETWORK POLYMERS

( 架橋 体 高 分 子の分 子運動)

  本 論 文 は 、 い く っ か の 架 橋 体 高 分 子 の 構 造 と 物 性 を 誘 電 分 散 測 定 や 動 的粘 弾 性 測定 な ど に よ り 分 子 運 動 の 観 点 か ら 研 究 し た 結 果 に つ い て 記 述 し た も の で あ り 、 全6章 か ら な る 。   第1章 で は 、 ポ リ プ ロ ピ レ ン オ キ シ ド を3官 能 の フ ェ ニ ル イ ソ シ ア ナ ー ト で 架 橋 し た 高 分 子 に っ い て の 誘 電 測 定 に よ る 研 究 を ま と め た も の で あ る 。 周 波 数 分 散 に2つ の 緩 和 ピ ー ク が 見 ら れ た 。 こ の ス ベ ク ト ル をHavriliak‑Negamiの 式 を 用 い て 解 析 し て 、緩 和 パ ラメ ― タ を 求 め た 。 そ の 結 果 、 高 周 波 数 側 の 緩 和 強 度 は エ ― テ ル 酸 素 の 濃 度 に 、 低周 波 数 側の 緩 和 強 度 は ウ レ タ ン 基 濃 度 に そ れ ぞ れ 比 例 す る こ と を 見 出 し 、 前 者 は ポ リ プ ロピ レ ン オキ シ ド 分 子 鎖 の エ ー テ ル 酸 素 の 電 気 双 極 子 に よ る 緩 和 で あ り 、 後 者 は ウ レ タ ン 基の 電 気 双極 子 に よ る 緩 和 で あ る と 結 論 し た 。 架 橋 体 高 分 子 の 架 橋 点 近 傍 と 架 橋 点 間 の 分 子鎖 は 異 なる 運 動 を す る こ と を は じ め て 実 験 的 に 明 ら か に し た 。

  第2章 で は 、 分 岐 ポ リ エ チ レ ン オ キ シ ド を べ ー ス に し た 架 橋 体 に つ い て の エ チ レ ン オ キ シ ド 炭 素 のNMRn。 の 温 度 依 存 性 を 測 定 し た 。 そ れ は 明 瞭 な 極 小 を 示 し 、 求 め ら れ た 緩 和 時 間 の 値 は 、 誘 電 分 散 で の 緩 和 時 間 と 一 致 し た 。 ま た 、 エ チ レ ン オ キ シ ド 炭素 の 磁 化の 減 衰 は 、 低 温 側 で2っ の 緩 和 時 間 で 表 わ さ れ 、 ま た 高 温 側 で は1つ の 緩 和 時 間 で 表 わ さ れ る こ と か ら 、 低 温 側 で の 速 い 緩 和 時 間 の 要 素 は エ チ レ ン オ キ シ ド の 分 岐 鎖 に よる も の と推 定 し た 。

  第 3章 で は 、 ポ リ プ ロ ピ レ ン オ キ シ ド を3官 能 イ ソ シ ア ナ ― ト で 架 橋 し た 高 分 子 に LiCl04を ド ー プ し て 、 高 い イ オ ン 伝 導 性 を 示 す 試 料 を 作 っ た 。 複 素 イ ン ピ ー ダ ン ス に は2

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つ以上の緩和が認めらた。高周波数側の緩和強度は架橋点間の分子量が大きい程大きいこ とを見出した。更に7L̲NMR の測定から得た7L1 の緩和時間は、高周波数側緩和に対応す ることを明らかにした。以上の結果から、2 つの緩和は、低周波数側がウレタン基と相互 作用したLi+ イオンの運動によるものであり、高周波数側はポリプロピレンオキシド部分 と相互作用したものであると推定している。

   第 4 章においては、第3 章で用いた試料にっいてFT‑ ラマン測定を行なった結果にっい て述べられている。イオン添加によるD‑LAM バンドの高波数側へのシフトが架橋体にお い て も 明 確 に 観 測 さ れ 、 LiCl04 と の 相 互 作 用 の 観 点 か ら 議 論 し て い る 。    第5 章では、多価イソシアナートと水との重合とにより得られた架橋体のマイクロカプ セル壁の動的粘弾性を測定する方法を考案して、マイクロカプセルにおけるコアノシェル 構造と物性の関係を研究する手法を確立した。第6 章では本論文の結論が述べられている。

   本論文は、架橋体高分子の分子運動を種々の方法で詳細に研究して、架橋点近傍と架橋

点間の分子鎖の運動が異なることをはじめて実験的に明らかにしたもので、その成果は高

く評価される。参考論文はいずれも本論文に関係深いものである。審査員一同は申請者が

博士(理学)の学位を得る充分な資格があると認めた。

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