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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 )   高 玉 孝 平

学 位 論 文 題 名

IechanlSmSOftheSurfaCe― layerWindreSponSetothe     GulfStreaminaregionalatmOSpheriCmodel     ( 領 域 大 気 モ デ ル 中 の 湾 流 に 対 す る 表 層 風 応 答 メ カ ニ ズ ム )

学位論文内容の要旨

  近年の高解像度の衛星観測や数値計算は,全球で強い海流にともなう海面水 温前線が海上風速を能動的に変化させていることを明らかにした.風速の変化 は収束や回転を通じて,高い雲や降水,海洋上部の水輸送などに寄与している と考えられている.こうした海面水温前線に対する大気応答メカニズムはいく っか提案されているが,特に前線の前後における大気安定度の差にともなう上 空からの運動量供給の変化に注目した鉛直混合メカニズムと,前線の前後にお ける大気温度の差にともなう気圧勾配カの変化に注目した気圧調整メカニズム が主要なものとして知られている,

  数値モデルの出カを用いた運動方程式の診断は,海面水温前線に対する表面 付近の大気応答メカニズムを理解するための重要なツールである.伝統的な診 断手法はある高度における運動方程式を用い,圧力勾配力項や鉛直摩擦項,運 動量の水平移流項,コリオリ項の大きさを評価するものであった.鉛直混合メ カニズムは,鉛直摩擦項が表層風を加速させるときには能動的な役割を担い,

反対に減速させるときには受動的な役割を担っている,すなわちダンピングと して作用すると判断されていた.しかしながら,このような診断手法には、二 つのメカニズムを定量的に評価する上で深刻な問題がある.たとえば,熱帯の 海面水温前線にともなう表層風速の強化・弱化が,主として鉛直混合メカニズ ムによって説明できる場合,すなわち上空からの運動量輸送による加速と表面 摩擦によるダンピングが主たるバランスを形成している場合を考える,このと き伝統的な診断手法では,運動量の下方輸送と表面摩擦がお互いに打ち消しあ うので,正味の鉛直摩擦項の大きさによって鉛直混合メカニズムの寄与を評価 することはできない,

  この伝統的な診断手法に見られる問題を解決するため,我々は表層風を診断 するための新しい手法を開発した.この手法では,表層にあたる海面から100m までを鉛直積分した運動量収支を評価することにより,鉛直摩擦の持っニっの 役割を明示的に分離することができる,さらに,表面摩擦が鉛直積分運動量に 比例すると仮定することにより,表層風の収束と回転を,圧力勾配カと関係し た成分,運動量輸送の下方輸送と関係した成分,運動量の水平移流と関係した 成分の線形足し合わせとして表現することができる.この診断手法をハワイ大 学国際太平洋研究センターが開発した領域大気モデルによるメキシコ湾流域の 5年間積分の出カに適用した,

  湾流域の大部分で収束・発散のほとんどは圧力調整メカニズムによって生じ

(2)

ていることが明らかになった.鉛直混合メカニズムが収束・発散に寄与するの は,Grand Banks周辺だけである,一方,湾流上の強い反時計回りの風の回転 は大部分が鉛直混合メカニズムによって生じている.圧力調整メカニズムは湾 流上で反時計回りの,北側で時計回りの回転を形成しているが,その寄与は小 さい.

  この結果は海面水温前線に対する背景風の向きと,コリオリカに対する表面 摩擦カの大きさによって説明できる.圧力調整メカニズムは風向きと無関係に 収束・発散と回転を生じさせるが,表面摩擦カの影響が大きいほど収束をより 強く生じさせる.一方,鉛直混合メカニズムは,風が海面水温前線に交わる領 域では収束・発散に寄与し,前線に沿う領域では反時計回りの回転に寄与する.

今回のシミュレーションにおいて,湾流域における海面摩擦係数はコリオリ係 数よりも2倍程度 大きく,Grand Banks周辺を除いて背景風は海面温度前線 に沿うように吹いていた.そのため,収束・発散の大部分は圧力調整メカニズ ムによって,回転の大部分は鉛直混合メカニズムによって生じる,こうした解 釈が,高解像度の再解析データを用いて診断された黒潮続流やブラジル‐マルビ ナス海流,アガラス反転流に対する表層風応答とも一致することが確認された.

(3)

学位論文審査の要旨 主査   教授   見延庄士郎 副 査    教 授    日 置 幸介 副査   准教授    稲津   將 副査   准教授    谷本陽一      ( 環 境 科 学 院 )

学 位 論 文 題 名

Mechanisms of the surface − layer wind response to the     Gulf Stream inaregional atmospheric model      (領域大気モデル中の湾流に対する表層風応答メカニズム)

博士学位論文審査等の結果について(報告)

  近年の高解像度の衛星観測や数値計算は,全球で強い海流にともなう海面水温前線が海ヒ風速を能 動的に変化させていることを明らかにした.風速の変化はその収束や回転を通じて,高い雲や降水に,

また海洋を駆動する上で,一定の役割をはたしていると考えられている.こうした海面水温前線に対 する大気応答メカニズムは複数提案されているが,特に前線の前後における大気安定度の変化にとも なう上空からの運動量供給の変化に注目した鉛直混合メカニズムと,前線の前後における大気温度の 変化 にともな う気圧 勾配カ に注目 した気 圧調整 メカニ ズムと が主要な ものと して知られている.

  本研究でば毎洋表面付近の風速,およびその水平収束・発散と回転について,これらのメカニズム を明確に弁別できる,新しい診断手法を開発した.この手法では,鉛直混合の持つニつの役割,すな わち上空からの運動量の輸送と表面摩擦による減速効果を明示的に分離し,さらに表面摩擦が鉛直積 分運動量に比例すると仮定することで,表層風速を圧力勾配カと関係した成分,運動量の下方輸送と 関係した成分,運動量の水平移流と関係した成分の線形足し合わせとして表現することができる.こ の 診 断 手 法 を 領 域 大 気 モ デ ル に 実 装 し , メ キ シ コ 湾 流 域 の5年 間 積 分の 出 カ に 適用 し た .   診断結果から,メキシコ湾流域において圧力調整メカニズムと鉛直混合メカニズムは,異なる役割 を担っていることが明らかになった,メキシコ湾流が東向きの部分での収束・発散のほとんどは圧力 調整メカニズムによって生じている.一方,湾流上の強い反時計回りの風の回転は大部分が鉛直混合 メカニズムによって生じている,この違いを海面水温前線の向きと一般風の向きから統一的に説明す ることにも成功した.

  これらの成果は,海洋がどのように大気に影響するかという長年の問題に,大きな貢献をしたもの と高く評価できる.よって,本論文の著者は,北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格ある ものと認める.

参照

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