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1.問題の所在 1.1.児童の安全に関係する犯罪学理論 近年,小学生児童が,屋外で,面識のない人に 殺傷されるなどの事件が大きな社会問題となった. 2005 年には全通学路の緊急点検,学校安全ボラン ティアの充実など緊急対策 6 項目を含む「犯罪から 子どもを守るための対策」(内閣官房,2005)が策 定され,公的機関や保護者,地域住民による対策が 行われるようになった. 犯罪学理論には,犯罪者の個人属性ではなく,犯 罪が起きる状況や機会に注目する考え方があり,一 般に犯罪機会論といわれている. 犯罪機会論のうち有力な日常活動理論(Cohen & Felson, 1979) で は,「 動 機 づ け ら れ た 犯 罪 者 (motivated offender)」,「ふさわしい犯行対象(suitable

target)」,「能力を持った守り手の不在(absence of capable guardian)」という 3 条件が同じ時空間に収 束すると,犯罪機会が発生すると考える. 日常活動理論を屋外での児童の防犯対策に適用す ると,犯罪機会は,屋外を移動する児童が,悪意を 持った犯罪者に遭遇し,そこに,事態を止められる 第三者が存在しない場面だと考えることができる. 犯罪機会を削減する方策は,児童の単独行動場面を 減らすと同時に,屋外で行動する児童に対して,「能 力を持った守り手」を配置することだといえよう. 具体的には,一般市民が通常の生活の中で自然に 児童に目が行き届く自然監視の確保に加え,防犯活 動の参加者を人為的に配置することができる.この ような,防犯活動による人為的な監視のための人的 資源を本研究では防犯資源と考える. 日常活動理論に基づいて児童の防犯対策を立案す るには,児童の空間行動を把握し,限られた防犯資 源を適切に配置することが求められる.このため, 測位技術の活用が求められる.

GPS による小学生児童の日常行動の測定

-兵庫県神戸市の公立小学校を例にして- 島田貴仁 *・齊藤知範 *・ 雨宮 護 **・菊池城治 *・畑 倫子 ***・原田 豊 *

Measuring routine activities of elementary school children using GPS

An example at an public elementary school in a Kobe, Japan. −

Takahito SHIMADA*, Tomonori SAITOH*, Mamoru AMEMIYA**,

George KIKUCHI*, Tomoko HATA*** and Yutaka HARADA*

Abstract: This paper examined routine activities of elementary school children using GPS. Sixty

students aged 7-8 and 10-11 in one elementary school participated in the experiment to track their after-school trips for 14 days. Questionnaire were concurrently filled by parents to ask destinations and companions of children’s trip. Individual trips other than group-home-to-trips (such as going to/from playground, visiting friends, attending private tutoring) were twice as long as school-home trips that much crime prevention efforts were currently paid. The frequency and length of the indi-vidual trips were examined by grade of subject, type of destination and companion. Routine activity theory was introduced to discuss policy implications in applying tracking technologies in safety of children.

Keywords: 日常活動理論(routine activity theory),GPS,小学生(elementary school children)

* 正会員 科学警察研究所犯罪行動科学部

    〒 277-0882 千葉県柏市柏の葉 6-3-1 E-mail:[email protected] ** 正会員 東京大学空間情報科学研究センター

*** 非会員 日本大学文理学部 GIS−理論と応用

Theory and Applications of GIS, 2010, Vol. 18, No.2, pp.85-91

【研究・技術ノート】

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1.2.就学児童の日常行動と防犯対策の問題点 図 1 は,就学児童の放課後行動の概念図を示して いる.児童は,学校を出て自宅に向かい,帰宅後に, 公園,友人宅,塾・習い事など目的に応じて外出し, 最後に自宅に戻る.学童保育など学校から直接自宅 に戻らない例外はあるが,概ね下校(①)と,帰宅 した後の外出(②∼⑥)に分けることができる. 図1.就学児童の放課後行動の概念図 現状の児童の安全に対する防犯対策は,ともすれ ば下校に傾きがちであり,帰宅後外出に対する関心 は必ずしも高くない.1.1節で述べた緊急対策や 学校での対策(文部科学省,2005)も登下校時が主 たる対象になっており,地域住民の防犯ボランティ ア活動でも,午前 8 時,午後 3 時に通学路に立つと いう「83 運動」が中心になっている.全国の防犯 ボランティア団体のうち 76.8%が通学路で活動をし ているのに対し,通学路以外で活動をしているのは 39.1% にとどまる(警察庁生活安全企画課,2009). しかし,小学生児童を対象に軽微な犯罪被害を尋 ねた調査では,被害の多くは下校よりも遅い時間帯 に発生していた(科学警察研究所犯罪予防研究室, 2008).また,公立小学校 5 校の小学生児童約 2,000 名のある1日の放課後行動を大判の紙地図を用いて 調査したところ,帰宅後の外出での移動距離は,下 校時の移動距離の約 2 倍であることが示された(島 田,2009). このように,犯罪被害と空間行動の両面から,児 童の防犯対策は,下校時よりも帰宅後外出に注目す べきことが示唆される.帰宅後外出は,その目的地 や頻度が児童によって異なるため,実証的な分析を 蓄積させる必要がある. 紙地図へ行動経路を記入させる調査は,回答者の 空間認知能力や記述能力に大きく依存する上,作業 負担が大きく,日常的に繰り返される行動の把握は 困難である.また,紙地図の範囲外の行動は測定不 可能となる.このため,本研究では一般用の GPS 携帯電話を利用し,日常行動を調査する. 1.3.測位技術を活用した日常行動調査 GPS を児童の日常行動の把握に用いた例には, 疫学的見地から有害物質への暴露を検討した例 (Elgethun et al., 2007)や,屋外の移動自由と健康と の関連に着目した英国の CAPABLE プロジェクト (Mackett et al., 2007)がある.これらは GPS による 測位と,パーソントリップ調査を援用した日誌を併 用することで,長期間にわたる児童の日常行動を系 統的に捉えている.一方,日本では韓ほか(2008), 湯川ほか(2008)が滋賀県長浜市の小学校で大規模 な調査を行い,屋外での遊びや滞留行動を分析して いるが,被験者あたりで 1 日の測定に留まり,反復 的な日常行動の把握までは至っていない. 1.4.本研究の目的 本研究では,小学校低学年(2 年生)・高学年(5 年生)の児童を対象に,GPS と冊子による日常行 動調査を行う.まず,下校時と帰宅後外出を比較し, 紙地図調査で得られた知見を再確認する.次に,帰 宅後外出の頻度と距離を属性別に検討する. 低学年児童は高学年児童よりも犯罪への対処能力 が劣ると考えられ,防犯対策を考える上でより配慮 が必要である.また,日常活動理論に照らすと,児 童単独での移動は,大人が同伴する移動よりも脆弱 であり危険性が高い.さらに,児童の帰宅後外出は, 塾や習い事,公園や友人宅での遊び,買い物などさ まざまな目的で行われていることが考えられ,防犯 面での課題も異なってくる可能性がある.このため, 本研究では行動の属性として学年,同伴者,目的地 に注目する.

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2.方法 2.1.調査参加者と時期 兵庫県神戸市内の公立小学校 1 校で,2006 年 11 ∼ 12 月の 4 週間に実施した.2 年生と 5 年生の各 30 名とその保護者が参加した.GPS の台数と調査 実施上の制約で,時期を 2 時期に分け,前半 2 週間 に 2 年生,後半 2 週間に 5 年生の調査を行った. 2.2.調査用具 調 査 で は 測 位 の た め に GPS 携 帯 電 話(AU・ W41S)と,日常行動を記録するために冊子(A5 版, 8 ページ)を使用した. 測位は,GPS による単独測位と,携帯電話基地 局を基準とした測位を併用した.測位間隔は 15 秒 間隔であった.参加児童の負担を考慮し,トリップ ごとの測位開始・終了の打刻は省略し,サーバの設 定により児童の下校時から最後の目的地から帰宅す るまでを連続的に測位した. 保護者に対しては,各日の学校の出欠と,放課後 の立ち寄り先の種類とその移動時の同伴者を記録す るように求めた.回答者が冊子に記録した立ち寄り 先間の移動 1 回を 1 トリップと定義した.同伴者に ついては,なしの場合は「単独」,友人・きょうだ いのみの場合は「子ども同伴」,同伴者に両親・祖 父母・その他の大人を 1 人以上含む場合は「大人同 伴」とした. 2.3.GIS によるデータ化 本研究では,連続的に測位を行ったため,連続的 な測位結果から滞在と移動とを判別し,冊子で得た トリップの属性データと対応づける必要がある.こ のため,GPS の測位記録から 1 トリップが 1 フィー チャとなるラインを生成した. 調査では 60 名に対して休日を含む 14 日間の計 840 人日分を測定したが,本研究では課業のある平 日の防犯対策に主たる興味があるため,休日,課外 活動,欠席を除いた登校日 535 人日分に着目した. この中から,電源の入れ忘れ,置き忘れ,機器故障 などの理由で終日測定が不可能だった 77 人日を除 いた 458 人日 1385 トリップを作業の対象とした. 滞在地点の多くは屋内であり GPS の測位誤差は 大きくなるが,測位点は真の滞在地点を中心に確率 的に分布するものと考えられる.このため,測位点 に対してカーネル密度推定法(バンド幅 50m,セル サイズ 10m)を施し,密度サーフェスを生成した. 密度サーフェス,冊子の外出先の記録,GPS の時 間情報の三者を突合し目視で立ち寄り先を判定し, 立ち寄り間の移動の測位点をもとに図 2 のようにラ インデータを生成した.ジオメトリ演算によりライ ンの長さを取得し,トリップ長を示す属性データと して格納した. 本研究では,校区内での児童の防犯対策の指針と するため,自家用車や公共交通機関による遠方への 移動は分析から除外した.具体的には,校区および 校区に隣接する駅を中心に 1km バッファを発生さ せ,その範囲内で完結するトリップのみを収集した. 図 2 ある参加者の測位点と判読結果の例

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3.結果と考察 3.1.GIS によるトリップデータの生成 分析対象とした 1385 トリップのうち,162 トリッ プは,機器の電源切れや置き忘れなどの理由で,冊 子に対応する測位点との対応が取れなかった.78 トリップは,測位はできていたが,滞在時間が短い ため滞在地点の判読ができなかった.88 トリップ は,測位はできていたが分析区域外へ移動していた ため除外した.この結果,最終的に 1057 トリップ を使用した. 3.2.下校時と帰宅後外出の比較 トリップ長が得られた 1057 トリップの基礎統計 量を表 2 に,ヒストグラムを図 3 に示す.下校時ト リップは平均値,中央値がほぼ一致しているが,帰 宅後外出トリップは右に裾が長い分布であり,平均 値は中央値を上回っている.下校時は学校と自宅と を結ぶのに対し,帰宅後外出ではより遠くへ移動す る場合があることが伺える. 調査期間内に発生したトリップ長の合計であるト リップ延長は,屋外での犯罪被害リスクへの暴露量 ともいえ,必要な防犯資源の指標と考えることがで きる.下校時は約 201km,帰宅後外出は約 417km であり,帰宅後外出は下校時のおよそ 2 倍となった. この結果は,紙地図による調査結果と整合しており, 帰宅後外出には下校時より多くの防犯資源が割り当 てられる必要があることを示している. 3.3.帰宅後外出の基礎統計 表 3 に帰宅後外出の 642 トリップの基礎統計量を 学年別,同伴者別,目的地別に示す. 学年別にみると,5 年生は 2 年生よりもトリップ 数は 1 割以上多く,トリップ長も 1 割以上長かった. この結果,5 年生のトリップ延長は 2 年生に比べ約 3 割長くなっていた. 同伴者別にみると,単独,子ども同伴の移動は, 大人同伴時よりもトリップ長は短かった.この結果 は,単独や子どものみでは遠くに行かないよう大人 の教示が行きとどいている,または,遠くへの移動 には大人が付き添うようにしていると解釈でき,防 犯面では好ましい結果だといえる.しかし,トリッ プ延長のうち単独移動は 24%,子ども同伴の移動 は 28% をそれぞれ占め,帰宅後外出の半分以上は 大人が同伴していない状況で行われていることも明 下校時 帰宅後外出 トリップ数(回) 415 642 トリップ長(m) 平均値 483.4 649.5 中央値 494.0 598.1 S.D. 217.2 370.3 合計 200607 416976 (m) 表 2 下校時・帰宅後外出時トリップの基礎統計量 表 3 帰宅後外出トリップの属性別基礎統計量 図 3 下校時と帰宅後外出のトリップ長のヒストグラム 500 1000 1500 2000 トリップ長 0 20 40 60 下校 帰宅後外出 500 1000 1500 2000 トリップ長 (m) (m) 回数 延長 Mean Median S.D. (回) (m) (m) (m) (km) 学年別 2年生 299 603 579 321 180.3 5年生 343 690 616 405 236.7 同伴者別 単独 169 597 566 343 100.9 子ども同伴 196 602 562 336 117.9 大人同伴 241 702 623 413 169.3 目的地別 塾・習い事 276 669 574 371 184.7 友人宅 91 560 567 323 50.9 公園・広場 83 587 522 367 48.7 店舗 70 759 708 431 53.2 スポーツ 39 648 636 344 25.3 病院 23 866 874 413 19.9 親戚宅 17 602 678 245 10.2 児童館 18 453 255 311 8.2 学童保育 5 750 751 153 3.7 その他 20 610 602 317 12.2 合計 642 649 598 370 417.0 1回あたり

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らかになった.目的地別にみると,トリップの回数・ 延長ともに,塾・習い事が全体の約 4 割を占めた. 次いで,友人宅,公園・広場,店舗がそれぞれ約 1 割を占めた.1 回あたりのトリップの中央値は児童 館(255m)が最も短く,病院(874m)が最も長かっ た.回数が多い塾・習い事,友人宅,公園・広場で は,1 回あたり約 500 ∼ 600 mを移動していた. 3.4.属性による帰宅後外出の相違 本節では,トリップ数,トリップ長,トリップ延 長をそれぞれ指標として,学年や同伴者による帰宅 後外出の違いを検討する. まず,学年・同伴者別のトリップ数を図 4 に示 す.カイ二乗検定の結果,両者の間には有意な連関 が見られた(χ2 = 30.8, df = 2, p < .01).単独・子ど も同伴のトリップは 2 年生では全体の半分以下だっ たが,5 年生では 7 割ほどを占めている.逆に,2 年生では半数以上を占めていた大人同伴のトリップ は,5 年生では 3 割ほどに減少している. 次に,学年・同伴者別のトリップ長の平均値を図 5 に示す.合わせてトリップ長を従属変数に,学年, 同伴者を独立変数においた 2 要因分散分析を行っ た. 学年の主効果は有意(F(1,600)=11.34, p<.01)で あり,5 年生は 2 年生よりも長距離を移動していた. ま た, 同 伴 者 の 主 効 果 も 有 意(F(2,600)=9.71, p<.01)であり,ボンフェローニの方法による下位 検定の結果,大人が同伴する移動は,他 2 者よりも 有意に長かった. 両 者 の 交 互 作 用 効 果 も 有 意(F(2,600)=3.87, p<.05)であり,下位検定の結果,5 年生の大人同 伴の移動は 2 年生のそれに比べて有意に長く,5 年 生の単独・子ども同伴の移動と比べても有意に長 かった.この交互作用効果は,高学年では,遠くの 目的地に限って大人が同伴しているからだと考えら れる. 図 6 に学年・同伴者別のトリップ延長とその空間 範囲を示す.2 年生では単独(36.1km)・子ども同 伴(42.0km)の移動は,大人同伴のトリップ(96.3km) に比べ,移動量は小さく,その空間範囲も限定され ている.これに対し,5 年生では単独移動(64.8km), 子 ど も 同 伴 の 移 動(76.8km)は大人同伴の移動 (73.0km)とほぼ同等にまで拡大しており,その空 間範囲も大きくなっている.低学年から高学年にな るにつれ,子どものみでの行動範囲が拡大している ことが示唆される. 図 7 に学年別・主要目的地別のトリップ延長を示 す.2 年生・5 年生ともに移動量が最も大きい目的 地は塾・習い事であり全体の 4 割を占める.2 年生 では公園・広場が,5 年生では店舗がそれに次ぐ. 本研究で扱った移動の中で,防犯面で最も脆弱だ と思われる 2 年生の単独移動はその約半分が塾・習 い事,約 2 割が友人宅,15% が公園・広場に起因 していた.また,5 年生では店舗を目的とする単独 移動・子ども同伴のトリップが新たに発生していた. これらは 2 年生では見られなかったものであり,子 どものみで移動・滞在する場所が,低学年と高学年 で異なることが示唆される. 以上を総合して,低学年と高学年の帰宅後外出の 相違をまとめる.まず,子どものみでの移動総量は 高学年になると倍増していたが,その原因は移動機 会の増加であり,1 回あたりの移動距離はさほど変 図 4 学年・同伴者別のトリップ数(単位:回) 図 5 学年・同伴者別のトリップ長(単位:m) 【審査用原稿用紙】 5/10 長ともに,塾・習い事が全体の約4割を占めた.次 いで,友人宅,公園・広場,店舗がそれぞれ約1割 を占めた.1回あたりのトリップの中央値は児童館 (255m)が最も短く,病院(874m)が最も長かっ た.回数が多い塾・習い事,友人宅,公園・広場で は,1回あたり約500~600mを移動していた. 3.4.属性による帰宅後外出の相違 本節では,トリップ数,トリップ長,トリップ延 長をそれぞれ指標として,学年や同伴者による帰宅 後外出の違いを検討する. まず,学年・同伴者別のトリップ数を図4に示す. カイ二乗検定の結果,両者の間には有意な連関が見 られた(χ2=30.8, df=2, p<.01).単独・子ども同伴の トリップは2年生では全体の半分以下だったが,5 年生では7割ほどを占めている.逆に,2年生で全 体の半数以上を占めていた大人同伴のトリップは, 5年生では3割ほどに減少している. 次に,学年・同伴者別のトリップ長の平均値を図 5に示す.合わせてトリップ長を従属変数に,学年, 同伴者を独立変数においた2要因分散分析を行った. 2年生/単独 /36.1km 2年生/子ども同伴/42.0km 2年生/大人同伴/96.3km 5年生/単独/64.8km 5年生/子ども同伴/76.0km 5年生/大人同伴/73.0km 図6.学年・同伴者別のトリップ延長とその空間範囲 図4.学年・同伴者別のトリップ数(単位:回) 図5.学年・同伴者別のトリップ長(単位:m)

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化していなかった.ただし,空間範囲は広がってお り,高学年児童は,低学年の時には足を向けなかっ た場所に,子どものみで出かけていることが示唆さ れる.目的地別にみると,塾・習い事や店舗を目的 とした子どものみの移動が増加していた. 一方,大人同伴の移動総量は,高学年になると減 少していたが,その原因は移動機会が半減したこと であり,1回あたりの移動距離は長くなっていた. 目的地別にみると低学年で多かった公園への付き添 いが高学年ではほとんどなくなっていた. 4.まとめ 本研究では,兵庫県神戸市の公立小学校 1 校に在 籍する小学生児童 60 名を対象に,GPS と日記を併 用した空間行動調査を 2 週間にわたり実施した.そ の結果,①現行防犯対策が主眼とする下校時よりも, 帰宅後外出の方が移動総量は大きい,②帰宅後外出 の半分以上は大人が同伴していない状況で行われて いる,③高学年での単独移動は,低学年に比べてそ の回数が増えるが,1 回あたりの距離は変わらない, といった結果が明らかになった. 本研究で示した子どもの日常の空間行動の測定に より,限られた防犯資源を通学路に限らず子どもの 単独移動が多い場所など必要な場所に適切に配分す ることが期待される.具体的には,今回のような空 間行動調査を学校単位で実施し,明らかになった単 【審査用原稿用紙】 5/10 長ともに,塾・習い事が全体の約4割を占めた.次 いで,友人宅,公園・広場,店舗がそれぞれ約1割 を占めた.1回あたりのトリップの中央値は児童館 (255m)が最も短く,病院(874m)が最も長かっ た.回数が多い塾・習い事,友人宅,公園・広場で は,1回あたり約500~600mを移動していた. 3.4.属性による帰宅後外出の相違 本節では,トリップ数,トリップ長,トリップ延 長をそれぞれ指標として,学年や同伴者による帰宅 後外出の違いを検討する. まず,学年・同伴者別のトリップ数を図4に示す. カイ二乗検定の結果,両者の間には有意な連関が見 られた(χ2=30.8, df=2, p<.01).単独・子ども同伴の トリップは2年生では全体の半分以下だったが,5 年生では7割ほどを占めている.逆に,2年生で全 体の半数以上を占めていた大人同伴のトリップは, 5年生では3割ほどに減少している. 次に,学年・同伴者別のトリップ長の平均値を図 5に示す.合わせてトリップ長を従属変数に,学年, 同伴者を独立変数においた2要因分散分析を行った. 2年生/単独 /36.1km 2年生/子ども同伴/42.0km 2年生/大人同伴/96.3km 5年生/単独/64.8km 5年生/子ども同伴/76.0km 5年生/大人同伴/73.0km 図6.学年・同伴者別のトリップ延長とその空間範囲 図4.学年・同伴者別のトリップ数(単位:回) 図5.学年・同伴者別のトリップ長(単位:m) 図 6 学年・同伴者別のトリップ延長とその空間範囲 【審査用原稿用紙】 6/10 学年の主効果は有意(F(1, 600)=11.34, p<.01)であり, 5年生は2年生よりも長距離を移動していた. ま た , 同 伴 者 の 主 効 果 も 有 意 (F(2,600)=9.71, p<.01)であり,ボンフェローニの方法による下位検 定の結果,大人が同伴する移動は,他2者よりも有 意に長かった. 両者の交互作用効果も有意(F(2,600)=3.87, p<.05) であり,下位検定の結果,5年生の大人同伴の移動 は2年生のそれに比べて有意に長く,5年生の単 独・子ども同伴の移動と比べても有意に長かった. この交互作用効果は,高学年では,遠くの目的地に 限って大人が同伴しているからだと考えられる. 図6に学年・同伴者別のトリップ延長とその空間 範囲を示す.2年生では単独(36.1km)・子ども同 伴(42.0km)の移動は,大人同伴のトリップ(96.3km) に比べ,移動量は小さく,その空間範囲も限定され ている.これに対し,5年生では単独移動(64.8km), 子ども同伴の移動(76.8km)は大人同伴の移動73.0km)とほぼ同等にまで拡大しており,その空 間範囲も大きくなっている.低学年から高学年にな るにつれ,子どものみでの行動範囲が拡大している ことが示唆される. 図7に学年別・主要目的地別のトリップ延長を示 す.2年生・5年生ともに移動量が最も大きい目的 地は塾・習い事であり全体の4割を占める.2年生 では公園・広場が,5年生では店舗がそれに次ぐ. 本研究で扱った移動の中で,防犯面で最も脆弱だ と思われる2年生の単独移動はその約半分が塾・習 い事,約2割が友人宅,15%が公園・広場に起因し ていた.また,5年生では店舗を目的とする単独移 動・子ども同伴のトリップが新たに発生していた. これらは2年生では見られなかったものであり,子 どものみで移動・滞在する場所が,低学年と高学年 で異なることが示唆される. 以上を総合して,低学年と高学年の帰宅後外出の 相違をまとめる.まず,子どものみでの移動総量は 高学年になると倍増していたが,その原因は移動機 会の増加であり,1回あたりの移動距離はさほど変 化していなかった.ただし,空間範囲は広がってお り,高学年児童は,低学年の時には足を向けなかっ た場所に,子どものみで出かけていることが示唆さ れる.目的地別にみると,塾・習い事や店舗を目的 とした子どものみの移動が増加していた. 一方,大人同伴の移動総量は,高学年になると減 少していたが,その原因は移動機会が半減したこと であり,1回あたりの移動距離は長くなっていた. 目的地別にみると低学年で多かった公園への付き添 いが高学年ではほとんどなくなっていた. �.��� 本研究では,兵庫県神戸市の公立小学校1校に在 籍する小学生児童を対象に,GPS と日記を併用した 空間行動調査を2週間にわたり実施した.その結果, ①現行防犯対策が主眼とする下校時よりも,帰宅後 外出の方が移動総量は大きい,②帰宅後外出の半分 以上は大人が同伴していない状況で行われている, ③高学年での単独移動は,低学年に比べてその回数 が増えるが,1回あたりの距離は変わらない,とい った結果が明らかになった. 本研究で示した子どもの日常の空間行動の測定 により,限られた防犯資源を通学路に限らず子ども の単独移動が多い場所など必要な場所に適切に配分 することが期待される.具体的には,今回のような 空間行動調査を学校単位で実施し,明らかになった 単独での行動場所に対する大人の見守りを強化する, 公園や塾といった同一場所からの帰宅を組織化し, 大人がつきそうといったことが考えられる.また, 長期的には,公園や児童館などの遊び場や,塾・習 図7.主要目的地別のトリップ延長 (左:2年生,右:5年生, 単位:km)図 7 主要目的地別のトリップ延長 (左:2 年生,右:5 年生,単位:km)

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独での行動場所に対する大人の見守りを強化する, 公園や塾といった同一場所からの帰宅を組織化し, 大人がつきそうといったことが考えられる.また, 長期的には,公園や児童館などの遊び場や,塾・習 い事など子どもの利用施設を集積させることで,児 童単独での移動を削減できる可能性がある. 現在の児童の安全のための測位技術の多くは,保 護者が子どもの位置を知るといった個人単位のシス テムで運用されている.一方,集団で行う防犯対策 は,まち歩きによる危険場所の点検や地域安全マッ プ作成など空間情報に関連するものは多いが,これ まで測位技術はあまり用いられていなかった.測位 技術を用いて防犯対策を適切に誘導することで,犯 罪機会を削減することが可能になると思われる. 最後に本研究の限界を述べる.まず GPS は安価 で操作が簡単だが,遮蔽物などによる測位不能や, 屋内 / 屋外,移動 / 滞留の識別が困難である.本研 究でも分析対象トリップの約 5%は,測位ができて いたが判読ができなかった.また,本研究では,参 加者の負担を考慮し連続的に測位を行い,測位デー タと属性データとを目視判読で対応づけたが,目視 判読では対応づけの精度や現実場面での応用可能性 での限界は大きい.解決法として,トリップの開始・ 終了時に参加者が測位データにマークを入れる仕組 み,または,連続測位データを事後的にトリップご とに自動分割する仕組みが求められる. 子どもの空間行動は,環境要因や社会要因に大き な影響を受ける.今回は都市部の小学校で実施した が,もちろん他地区では必ずしも本研究の知見が適 用できるとは限らない.防犯対策も画一的に行うべ きではなく,地域実情に沿って行うべきであり,そ のために測位技術の有効活用が期待される. 謝辞 日常行動調査に参加された児童と保護者の皆様に 感謝いたします.また,本調査は科学技術振興調整 費「電子タグによる測位と安全・安心の確保」の一 環で実施し,GPS ログ判読ツールは社会技術研究 開発プロジェクト「子どもの被害の測定と防犯活動 の実証的基盤の確立」の一環で ESRI ジャパン(株) から提供されました.記して感謝いたします. 参考文献 科学警察研究所犯罪予防研究室(2008)『小学生児 童の日常生活と犯罪被害』,科学警察研究所. 韓宇寧ほか (2008)GPS を用いた長浜市における小 学生の放課後の屋外行動 その 1「日本建築学会大 会学術講演梗概集(中国)」,865-866. 警察庁生活安全企画課(2009)平成 20 年 12 月末現 在における自主防犯活動を行う地域住民・ボラン テ ィ ア.〈http://www.npa.go.jp/safetylife/ seianki55/ news/doc/ 1236665677.pdf.〉 島田貴仁(2009)子どもの被害調査と日常活動調査 −その必要性と,社会実装のための試み−「犯罪 と非行」,162,86-106. 内閣官房(2005)犯罪から子どもを守るための対策. 〈http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo/kettei/ 051220taisaku.pdf〉 文部科学省(2005),登下校時における幼児児童生 徒の安全確保について.〈http://www.mext.go.jp/b_ menu /houdou/ 17/12/05120900/001/001/001.pdf.〉 湯川晃平ほか(2008)GPS を用いた長浜市におけ る小学生の放課後の屋外行動 その 2「日本建築学 会大会学術講演梗概集(中国)」,867-868. Cohen, L. E. and Felson, M.(1979). Social change

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参照

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