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ROCKY NOTE 妊婦とインフルエンザ : 予防接種と抗インフルエンザ薬 (110107) 28 週の妊婦さんに インフルエンザの予防接種を受けた方が良いのか質問された 何と答えるべきか ちょっと前までは

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Academic year: 2021

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妊婦とインフルエンザ:予防接種と抗インフルエンザ薬(110107)

28 週の妊婦さんに、インフルエンザの予防接種を受けた方が良いのか質問された。何と答える べきか。ちょっと前までは、お決まりの「有益な場合のみ」接種するということで、むしろ否定的な意 見もあったような気がする。現在ではかなり対応が異なってきていると思うので、これを機会に勉 強し直してみる。 まず、妊婦へのワクチン接種は有効とする論文 1)を読んでみる。 ●PECO

P:340 mothers (during pregnancy in Bangladesh、A total of 340 women in the third trimester of pregnancy who met the inclusion criteria agreed to participate in the study.)

E:inactivated influenza vaccine (influenza-vaccine group)

C:23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine (control group)

O:Subjects with febrile respiratory illness were assessed clinically, and ill infants were tested for influenza antigens. We estimated the incidence of illness, incidence rate ratios, and vaccine effectiveness. (The primary outcome in infants was the first episode of laboratory-confirmed influenza before 24 weeks of age.)

つまり、妊娠第 3 期の妊婦さんに対して、不活化インフルエンザワクチンを接種すると、23 価肺 炎球菌ワクチンを接種する場合と比較して、出産後 6 週までの児のインフルエンザが減少するか どうかを検討した研究であることが分かる。 一般に、児へのインフルエンザの予防接種は 6 ヵ月以降に推奨されている。それまでは母親か らの免疫の移行に期待するというわけだ。 ちなみに、妊娠第 3 期とは大体 27 週以降のことを言うようだ。

(2)

●妥当か

抄録中に randomized の記載があり、本文中に Intention-totreat analysis was performed on the outcome data.とある。このまま読み進めていく。 ●結果 結果は以下の通り、検査で確定した児のインフルエンザを減らすと言う結果であった。 RRR:1-(6/881)/(16/870)=0.63 63% ARR: (16/870)-(6/881)=0.0116 人 (1 ヵ月)→0.0695 人(6 ヵ月) NNT:1/ARR=14.4 人(6 ヵ月) つまり、約 14 人の妊婦さんが予防接種を受けると、1 人の児のインフルエンザが予防できると言 うことになる。もちろんこの数値は検査で確定したインフルエンザだけの数値なので、熱を伴う呼 吸器疾患で計算するとさらに効果は大きく見積もることができる。 RRR:1-(110/881)/(153/870)=0.29 29% ARR:(153/870)-(110/881)=0.051 人(1 ヵ月)→0.306 人(6 ヵ月) NNT:1/ARR=3.3 人(6 ヵ月) つまり、約 3 人の妊婦さんが予防接種を受けると、1 人の児の発熱を伴う呼吸器疾患を予防でき るということができる。同じような考え方で、妊婦さん自身にも予防効果が認められている。

Among infants of mothers who received influenza vaccine, there were fewer cases of laboratory-confirmed influenza than among infants in the control group (6 cases and 16 cases, respectively), with a vaccine effectiveness of 63% (95% confidence interval [CI], 5 to 85). Respiratory illness with fever occurred in 110 infants in the influenza-vaccine group and 153 infants in the control group, with a vaccine effectiveness of 29% (95% CI, 7 to 46). Among the mothers, there was a reduction in the rate of respiratory illness with fever of 36% (95% CI, 4 to 57).

(3)

(参考文献 1 より引用)

上記の論文の結果から、妊婦さんは全員予防接種してもいいような気がするが、気になるのは 妊娠の時期である。つまり、この論文では妊娠第 3 期の妊婦が対象になっているが、それ以外で はどうなのだろうか。一般には第 2~3 trimester の妊婦には予防接種が勧められてきた歴史的な 経緯があるわけだが、当然第 1 trimester ではどうなのか気になる。

CDC のレポート 2)では“Because of the increased risk for influenza-related complications, women who will be pregnant during the influenza season should be vaccinated. Vaccination can occur in any trimester.”と記載されており、全ての妊婦さんに対して予防接種をするよう方針が変 更されている。

最近の論文 3)でも、first trimester に関するデータが不十分であることが指摘されてはいるもの の、利益と不利益のバランスを考えると、全ての妊婦に予防接種を行うことを支持している内容 だ。

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Data on influenza vaccine safety in pregnancy are inadequate, but the few published studies report no serious side-effects in women or their infants, including no indication of harm from vaccination in the first trimester. National policies differ widely, mainly because of the limited data available, particularly on vaccination in the first trimester.

また、予防接種とはちょっと話がずれてしまうが、日本で first trimester に抗ウイルス薬を服用し た患者の観察研究があるが、この場合、催奇形性が増加すると言うデータは無く、重症化が予想 されるような場合には時期を気にせず治療を開始した方がいいと思う。

In these 90 cases, there was 1 malformation (1.1%), which is within the incidence of major malformations in general population (1%–3%).

(参考文献 4 より引用) 妊婦さんに関しては産科の主治医と連携をすることが必要だが、国内の一般的な方針ということ で、産婦人科学会のポリシー5)を理解しておくことは重要と思う。詳細な内容についてはホームペ ージの確認をすることとして、特に大事そうなところをまとめてみる。  分娩前後に母親が感染した場合の対応については昨シーズンと大きく異なっている。  妊婦へのインフルエンザワクチンに関しては安全性と有効性が証明されている。  昨シーズンの新型インフルエンザワクチンに関しても、妊婦における重篤な副作用報告はな かった。  チメロサール等の保存剤が含まれていても安全性に問題はないことが証明されている。  インフルエンザワクチンでは重篤なアナフィラキシーショックが 100 万人当たり 2〜3 人に起こ ることが報告されており、卵アレルギーのある方ではその危険が高い可能性がある。  発熱があり、周囲の状況からインフルエンザが疑われる場合には、「できるだけ早い(可能で

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あれば、症状出現後 48 時間以内)タミフル服用開始が重症化防止 に有効である」ことを伝 える。  妊婦から妊婦への感染防止という観点から「接触が避けられる環境」下での診療を勧める。  インフルエンザ感染が確認されたら、ただちにタミフル投与を考慮する。妊婦には、「発症後 48 時間以内のタミフル服用開始(確認検査結果を待たず)が重症化防止に重要」と伝える。  妊婦がインフルエンザ患者と濃厚接触した場合、抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレ ンザ)の予防的投与(10 日間)を行う。  昨シーズン、多数の妊婦(推定で 4 万人程度)が抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)を服 用しましたが、胎児に問題があったとの報告はない。  感染している(感染した)母親が授乳することは可能であり、原則、母乳栄養を行う。 今回の症例の場合どのような対応をとったかというと、念のため産科の主治医には一度確認を してから接種しましょうと言うことにした。総論として、妊婦さんの予防接種は感染予防のために受 けるべきという考え方が変わったわけではないが、地域全体での方針、産婦人科医の方針という のも無視できない。電話一本、ちょっとしたあいさつ、そういうことがなんとなく無用なトラブルを未 然に防ぐことも多い。今後は、感染症に関する専門医との連携も増えていくかもしれない。 参考文献

1. Zaman K, Roy E, Arifeen SE, Rahman M, Raqib R, Wilson E, Omer SB, Shahid NS, Breiman RF, Steinhoff MC. Effectiveness of maternal influenza immunization in mothers and infants. N Engl J Med. 2008 Oct 9;359(15):1555-64.

2. Harper SA, Fukuda K, Uyeki TM, Cox NJ, Bridges CB; Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP), Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Prevention and control of influenza. Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR Recomm Rep. 2005 Jul 29;54(RR-8):1-40.

3. Mak TK, Mangtani P, Leese J, Watson JM, Pfeifer D. Influenza vaccination in pregnancy: current evidence and selected national policies. Lancet Infect Dis. 2008 Jan;8(1):44-52. 4. Tanaka T, Nakajima K, Murashima A, Garcia-Bournissen F, Koren G, Ito S. Safety of

neuraminidase inhibitors against novel influenza A (H1N1) in pregnant and breastfeeding women. CMAJ. 2009 Jul 7;181(1-2):55-8.

5. 日本産科婦人科学会「妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対してのインフルエンザに

対する対応 Q&A」(平成 22 年 12 月 22 日)

参照

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