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期 20: 33-37 (2011) Cαrcinological Society 0 1 Japan左右が逆転したニントクイバラガニについて
A case o f reversed a s y m m e t r y in a d e e p sea k i n g c r a b
,
Lithodes nintokuae柳 本 卓
lTakashi Y a n a g i m o t o
A B S T R A C T : Six reversed asymmetry in Lithodes nintokuae were collected from the North Pacific Sea-mounts area. The appearance rate of th巴m was less than
1 %. From the results of biological measurements and se-quencing analysis of mitochondrial C O I region, reversed asymmetry individuals were almost same as normal indi-viduals besides aspect of reversed asymme廿y. The distri-bution of reversed asymrnetry individuals were limited in the Northem area, it se巴m s that there are an戸hing
relationship between environmental factors and their dis-tribution.
K e y Words: Lithodes nintokuae, a reversed asymme汀y, the North Pacific Seamounts area, C O I
圃 は じ め に 水産上,重要な漁獲物であるタラバガニ科は, 見すると鈎脚が 2 本と歩脚が 6 本しか見られないこ と右鉛脚が左鉛脚に比べて大きいこと,雌の場合 は腹肢が腹側からみて右側に存在するという特徴か らホンヤドカ リ科と強い類縁関係が提唱されてきた (渡部, 1996). Cunningham et al. (1992)は,塩基配 列分析の結果などから,タラバガニ科はホンヤドカ リ科と共通した祖先を持ち, 1300-2600 万年前に 分化したと報告している このようにタラバガニ科 J ( 独) 水産総合研究センター中央水産研究所 干236-8648 横浜市金沢区福浦 2- 12-4
National Research Institute of Fisheries Science, 2-12-4 Fukuura, Kanazawa, Yokobama, Kanagawa 236-8648, Japan E-mail: [email protected] の外部形態の特徴は,進化的な特徴として知られて いる. しかし近年,このような特徴を持たないタ ラバガニ科が数例ではあるが報告されている 例え ば , ハ ナ サ キ ガ ニ Paralithodes brev伊es (倉田, 1959) ,タラバガニ P. camtschaticus (本尾, 2002, 2003) ,イガグ リガニ Paralomis hystrix (本尾 ・豊 田, 2006),エゾイバラガニ P. multispina,コフキ エゾイバラガニ P. japonica (渡部, 1996),イバラ ガニ科の一種 Lithodes maja (Zaklan, 2000) などが 報告されている. しかしながら ,渡 部 ( 1996) の報 告 以外は,自然界での出現頻度がどの程度なのか が,報告されていない このような個体が自然界で どの程度出現するのかを検討することは,単なる外 部形態異常であるのか,何らかの生態的な意義を持 つのかを推測するのに役立つ情報になり得る 中部北太平洋に南北に散在する海山群には多種多 様な甲殻類が分布し( 酒井, 1978),タラパガニ科 のニントクイバラガニ Lithodes nintokuae も多数分 布している ( 鈴木 ・高橋,1977). ニン トクイバラ ガニは北緯 46 度付近の神武海山から北緯 21 度のハ ワイ島周辺の深海域に分布している (Oawson
&
Yaldwyn, 1985). 2006年か ら 2008 年にかけて水産 庁が行ったカニかご調査で多数のニントクイバラガ ニが採集され, その中にタラバガニ科特有の特徴を 持たない,すなわち腹部が左右逆転している雌の個 体が採集された. 本報告では,タラバガニ科の特徴 を持たない個体の採集記録をまとめ,外部形態と O N Aを調べることにより,本当にニントクイバラ ガニと同種であるか,外部形態異常個体であるかを 検討した 日本事被頬学会何l(JOrII
3 3. 材 料 と 方 法 2006- 2008年に北西太平洋海山海域において水 産庁漁業調査船開洋丸で大型ベントスの分布を調べ るため,カニか ご調査が行われた. カニかごは日本 海西部海域においてベニズワイガニ漁で用いられて いるのと同じものを使用した (渡部 ・山崎, 1999) 餌はサンマを用いた 採集されたニン トクイバラガ ニと左右逆転しているニントクイバラガニの個体数 を調べた 左右逆転していたニン トクイバ ラガニ 5 個体を冷凍して持ち帰 った. また ,正常なニン トク イバラガニ雌15個体も冷凍して持 ち帰っ た. 研究 室 に て 解 凍 し 本 尾 (2002,2003 ) や 本 尾 ・豊 田 (2006) に従って,甲幅,鉛脚の掌節長,掌節高, 指節長を測定した. サンプル情報をT able 1に示す. 測定した各部位を甲幅で割ることにより,部位長比 を求めた また,カニの脚部の筋肉組織を摘出し, Qucik Gene (富士フィルム ) を用いてD N A を抽出 した.
Folmer et al. (1994)
の
L C 0 1 4 9 0 (5'-ggtcaacaaatcata aagatattgg-3') とH C 0 2 1 9 8 (5'ーtaaacttcagggtgaccaaaaaatca-3') のプラ イマーを 用いて, m t D N AのC O I領
域を P C R法に よっ て 増 幅 し た サ ー マ ル サ イ ク ラーにはG e n e A m p P C R System 9700 (Applied Bio-systems) を,TaqPolymerase にはTakara E X TaqTM H S (Takara) を用いた P C Rの反応条件は94 t 2分 加熱した後, 9 4 t 3 0秒,5 5 t 3 0秒, 7 2 t 2分を 30
サイクル行った後,最後に72'Cで7分加熱した
P C Rの反応溶液は, d NTPs 50 nmol, 各 プ ラ イ マ
-25 pmol, 付 属 の buff巴r 2.5μ1, Taq polymerase 2.5 units,粗全D N A溶液 を含む25μ! とした 1.5% ア ガロースゲル (Takara,NuSieve3・1) 電気泳動によっ て増幅産物の確認を行った後, E x o・SapIT (アマ
シャムファルマシア) により精製を行った 精製し
たP C R産物 をテンプレートとして, Big D y e Termi-nator Kit Ver3.1 (Applied Biosystems) を用いて シー ケンス反応を行った. シーケンス反応には, P C R で用いたのと同じプライマーを用いた シーケンス 反 応 物 を 蛍 光 シ ー ケ ン サ - A BI31 3 0 X L CApplied Biosystems) にて電気泳動を行い,塩基配列を決定 した インタ ーネ ッ ト上の遺伝子相向性検索ソフト B L A S Tによって,塩基配列がどのような種と近い かを検討した
Table 1. Sample information of normal and reversed asymmetries of deep sea king crab
Sample Type Sampling date Sampling Seamount Carapace width (mm) Sex Clutch
Abnormal 2008/6/30 Jimmu 114.58 Female Eggs
Abnormal 2008/6/30 Jimmu 109.76 Female Eggs
Abnormal 2008/6/30 Jimmu 94.32 Female Eggs
Abnormal 200817/6 Suiko 93 .98 Female Eggs
Abnormal 200817/6 Suiko 89.07 Female Eggs
N ormal 2008/6/30 Jimmu 85.32 Female N o egg
Normal 2008/6/30 Jimmu 113.09 F e male Eggs
Normal 2008/6/30 Jimmu 101.95 Female Eggs
Normal 2008/6/30 Jimmu 97.41 Female Eggs
Normal 2008/6/30 五m m u 94.79 Female Eggs
Normal 2008/6/30 Jimmu 78.87 Female N o egg
Normal 2008/6/30 Jimmu 97.22 Female Eggs
Normal 2008/6/30 Jimmu 100.56 Female Eggs
Normal 2008/6/30 Jimmu 90.49 Female Eggs
Normal 2008/6/30 Jimmu 93.21 Female Eggs
Normal 2008/6/30 Jimmu 106.45 Female Eggs
Normal 2008/6/30 Jimmu 86.19 Female N o egg
Normal 2008/6/30 Jimmu 82.35 Female N o egg
Normal 2008/6/30 Jimmu 104.48 Female Eggs
N ormal 2008/6/30 五m m u 90.1 2 Female Eggs
Abnormal: A reversed asymme町of deep sea king crab. 3 4
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叩r20(2011)45
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K n l c n
35
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。
200 400kmFig. 1. Seamount names and sampling sites of Lithodes nintokuae.
X indicate survey positions,ム indicate locations that Litho伽 nintokuaew e閃 collected,
0
indicate number ofreversed asymme仕yof Lithodes nintokuae.
. 結 果 体 が 左 右 逆 転 し て い た 左 右 が 逆 転 し て い た 個 体
は,北緯46度付近の神武海山で4個体,北緯44度
3年間の調査で960個体のニントクイバラガニが 30分付近の推古海山で i個体,北緯40度付近の仁 採集された. その中で,ニントクイバラガニ雌6個 徳海山でl個体,の計6個体であった (Fig. 1) 左
A)
B)
Fig.2. Ventral views of normal and a reversed asymme町 ofLithodω nintokua ,
A) Normal, B) A reversed asymmetry
右逆転していた個体の割合は全体で0.625% とな り,雌における割合は 0.894% であった 。1 %にも ならない非常に低い出現率であった. しかし 6 個体中. 4個体がl回のカニかご調査で採集されて い た こ と , ま た , 分 布 が 北 の 方 に 偏 り が あ っ た (Fig. 1) 調査船上で撮影した左右が逆転していたニントク イバラガニと正常なニントクイバラガニの腹面の写 真を Fig.2に示す A とB の腹部では,左右逆転し ているのが明らかであった (Fig. 2). 測定した正常個体と左右逆転個体の甲幅に対す る,鉛脚の掌節長と掌節高の割合をFig.3 に示す 正常個体は雄ほど顕著で・はないが,右鈎脚が大きい 傾向があったが,左右逆転個体は左鈎脚が大きかっ た 正常個体の右紺脚の掌節長と掌節高を甲幅長で 割った値と左右逆転個体の左錯脚の掌節長と掌節高 を甲幅長で割った値をt検定により平均値の比較を 行 っ た . し か し こ れ ら に 有 意 な 差 は な か っ た (P > O.05) 単純に,左右が逆転していると いうこ とが推測された 左右逆転した5個体のm t D N A C O I領域の塩基配
A)
62 60 g 58s
:
56 54 U 52B)
50 48 20 安 15き
、10 、s
:
にコ 5。
Fig.3. Ratios of chela width and chela length per carapace w idth of norm al and a reversed asymmetry of
Lithodes nintokua.
A) Chela width/C arapac巴width,B) Chela length/
C arapace width. Vertical bars indicate the standard deviations 列から. 2つのハプロタイプが得られた B L A S T . 考 察 による相向性の高い塩基配列を探索したところ, D N Aデータベ ースに 登録されているニン トクイパ 一般的に,種内変異が少なく種間変異が大きいと ラガニのA B 3 7 5 142 とA B 3 7 5 1 4 9と同 じであった 言 われている m t D N AのC O I領域で( 松井・小池,
36
I
Can
偶r20(2011)
1998) . 左右逆転個体と正常個体の塩基配列が同じ であったことから,これらの個体がニントクイバラガニであると改めて再確認できた 遺伝的に異なっ ていないが,左右が対照的に異な っているというこ とから,これらの個体は形態異常であ ったと考えら れた 左右逆転しているニントクイバラガニはすべて雌 であった左右逆転している雄は存在しないように 考えられるが,雄の場合,単純にま甘脚の大きさで判 断するしかない ところが,タラバガニ科の場合 鈎脚が魚類の捕食や漁業によって失われて,主甘脚が 再生したという可能性もある. そのため,大量のサ ンプルを扱う漁業調査などでは雄の左右逆転個体を 見つけるのは難しいのかもしれない 一方,左右逆転していた雌はすべて抱卵してお り,繁殖機能についても問題はないと推測された 単なる,形態異常というだけであって,機能的には 問題ないのではないかと推測された. 本海域において,ニントクイバラガニを本格的に 狙 った漁業はなく,たまたま混獲される程度と考え られる (F A O,2008) そのため,左右逆転個体の出 現頻度は,限りなく自然状態下での頻度として考え ても問題がないと考えられた 出現頻度は非常に低 いが,その分布は北側の海域のみと偏りがあるた め,何らかの影響があるのかもしれない 今後,海 洋環境データとの突き合わせによって,検討してい く必要があると考えられる. 圃 謝 辞 本研究で用いたニン トクイバラガニの採集に御協 力して頂いた水産庁関洋丸の船長,ならびに乗組員 の皆さまに厚くお礼申しあげる 本研究は水産庁委 託事業費国際資源調査費で行われた. 左右が逆転したニントクイバラガニ . 文 献
Cunningham, C. w ., Blackstone, N . w., & Buss, L. w .,
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i
羊, 2002 左右が逆転したタラバガニ. Cancer, 11 : ]] - 13 . 本 尾 洋,2003 左右が逆転したタラバガニの再記3
主 C ancer,12: 23-25. 本尾i
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