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第 35 回岡山県臨床細胞学会のご案内 ( 第 1 次 ) 第 35 回岡山県臨床細胞学会を下記の通り開催いたしますので, ご案内申し上げます. 記 1. 期 日 : 平成 27 年 7 月 11 日 ( 土 ) 2. 会 場 : 川崎医科大学現代医学教育博物館 2 階 3. 学会事務局 : 701

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会     告 会     則 第34回日本臨床細胞学会岡山県支部会プログラム 1 巻  頭  言 原     著  細胞転写法の検討 持田 洋利 7  LBCにおける出現細胞数減少機序の解明 宮本 朋幸 11  当施設におけるASC-US症例の追跡調査と細胞像の検討 松本 智穂 14 症     例  悪性リンパ腫と鑑別困難であった乳房内リンパ節の1例 小林 江利 19  子宮内膜細胞診を契機に発見できた胃原発の印環細胞癌の一例 高田 由貴 23  70歳代男性に発症した乳腺浸潤性微小乳頭癌の一例 増田 雅史 27  EUS-FNAで経験した高齢男性の膵

  Solid Pseudopapillary Neoplasmの1例 實平 悦子 31  IgG4関連リンパ節症の1例 高須賀博久 36  髄膜腫を疑われた Rosai-Dorfman disease の一例 今井みどり 42 抄     録  上皮内腺癌における核分裂像 山本 弘基 46 総     説  婦人科腫瘍と分子遺伝学:診断的アプローチを中心に 河内 茂人 47  子宮頸部扁平上皮癌の撲滅をめざして   −病理学の立場から− 元井  信 52 議  事  録 63 会 計 報 告 65 役 員 名 簿 66 編 集 後 記 66 事務局よりお知らせ 67 目     次

岡山県臨床細胞学会誌

VOL. 33 2014

岡 山 細 胞 学 会 誌

発行者

発行日  

岡山県臨床細胞学会

平 成 26 年 12 月 1 日

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第35回岡山県臨床細胞学会のご案内(第1次) 第35回岡山県臨床細胞学会を下記の通り開催いたしますので,ご案内申し上げます. 記 1.期   日:  平成27年7月11日(土) 2.会   場:  川崎医科大学 現代医学教育博物館2階 3.学会事務局:  〒701-0192 倉敷市松島577       川崎医科大学病理学2内       第35回岡山県臨床細胞学会       事務局担当:村上広子       TEL:086-462-1111(内25508)       FAX:086-462-1153(直通)       E-mail:pathology2@med.kawasaki-m.ac.jp 4.プログラム:  1)一般演題:       2)講  演:       特別講演「呼吸器の細胞診(仮題)」       奈良県立医科大学病理診断学講座        教授 大林 千穂 先生 5.一般演題応募: 平成27年5月下旬ごろ締切り        第35回岡山県臨床細胞学会        会長  鹿股 直樹

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第1章 名     称 第 1 条 本会は岡山県臨床細胞学会と称する. 第2章 目的および事業 第 2 条 本会は岡山県における臨床細胞学の発展と普及を図ることを目的とする. 第 3 条 本会は前条の目的を達成するために次の事業を行なう. 1.総会および学術集会の開催 2.その他目的達成のため必要な事業 第 4 条 本会の事務局は川崎医科大学病理学2教室に置く. 第3章 会     員 第 5 条 本会の会員は公益社団法人日本臨床細胞学会会員で,原則として岡山県に在住又は県内 に勤務し,本会の目的に賛同するものとする. 第 6 条 事情により公益社団法人日本臨床細胞学会に加入できないが,岡山県臨床細胞学会に入 会を希望する者は準会員とする. 第4章 役     員 第 7 条 本会に会長1名,幹事若干名および監事2名の役員を置く. 第 8 条 会長は幹事の互選によって定められ本会を主宰しこれを代表する. 第 9 条 幹事および監事は会員の互選によって定められる. 第 10 条 役員の任期は2年とする.但し再任を妨げない. 第5章 会     議 第 11 条 総会および学術集会は原則として年1回開催する.総会の運営は会長が主宰する. 第 12 条 会長は随時必要に応じて役員会を召集する. 第6章 会     計 第 13 条 本会の経費は会費および寄付金を以て当てる. 第7章 会 則 の 変 更 第 14 条 会則の変更は役員会で決定し,総会に報告する.  細     則 1)本会則は昭和56年10月25日から実施する. 2)会費は年間3,000円とする. 3)会費納入の催促状を送付しても1年間会費未納の場合退会とみなす. 4)退会希望者は退会希望年の前年度中に事務局へ連絡する. 5)退会時に会費完納でなければ退会を認めない. 改定 昭和63年6月18日 改定 平成02年6月30日 改定 平成15年6月28日 改定 平成16年4月24日 改定 平成18年7月08日 改定 平成21年7月25日 改定 平成22年7月17日

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改訂 平成25年7月6日 改訂 平成26年7月5日

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【参加者の皆様へ】

・カジュアルな服装でお越しください.

・受付開始は12時30分です.

・会費として,当日500円を申し受けます.

・車でお越しの方には受付にて駐車券をお渡しします.

・学術集会のCTクレジット単位は,JSC:10単位,IAC:4単位です.

【演者の皆様へ】

・一般演題は,発表7分,討論3分です.時間厳守でお願いします.

・その他詳細につきましては,別途メールにてお送りしています「演者の皆様へのお

知らせとお願い」をご参照ください.

【役員の皆様へ】

・当日11時45分より倉敷中央病院第5会議室(大原記念ホール隣)において,拡大委

員会を開催します.

第34回日本臨床細胞学会岡山県支部会

プログラム

日 時:平成26年7月5日(土曜日)13時20分〜17時30分

会 場:倉敷中央病院 大原記念ホール

      倉敷市美和1-1-1

      Tel:086-422-0210(代表)

会 長:倉敷成人病センター 病理診断科 石原 真理子

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プ ロ グ ラ ム

  開会の辞 【第1群】(13:20 〜 13:50)  座長:大森 昌子(岡山大学病院 病理診断科)  1.リンパ腫と鑑別困難であった乳房内リンパ節の1例   川崎医科大学附属病院 病院病理部1),川崎医科大学病理学12),同病理学23)   ○小林 江利(CT)1),荒木 豊子(CT)1),米  亮祐(CT)1),鐵原 拓雄(CT)1),    秋山  隆(MD)2),鹿股 直樹(MD)3),森谷 卓也(MD)3)  2.子宮内膜細胞診を契機に発見できた印環細胞癌の一例   倉敷成人病センター 病理診断科1),岡山大学病院 病理診断科2),広島市民病院 病理診断科3)   ○高田 由貴(CT)1),石原真理子(CT)1),蔵重  亮(CT)1),小渕 喜枝(CT)1),    瀬島 雅子(CT)1),林 佳代子(CT)1),穂並 聖子(CT)1),國友 忠義(MD)1),    大森 昌子(MD)2),市村 浩一(MD)3)  3.70代男性に発症した乳腺浸潤性微小乳頭癌の1例   岡山赤十字病院 病理部   ○増田 雅史(MT),齋藤利江子(CT),林  栄子(CT),林  敦志(CT),    小原 明子(CT),高橋 友香(MD),大原 信哉(MD) 【第2群】(13:50 〜 14:40)  座長:藤田  勝(岡山大学病院 病理診断科)  4.細胞転写法の検討   倉敷芸術科学大学大学院 産業科学技術研究科分子細胞病理学系1),   倉敷芸術科学大学 生命科学部生命医科学科2),加計学園細胞病理学研究所3)   ○持田 洋利(CT)1),三宅 康之(PhD)1,2,3),森  康浩(PhD)2,3),宮本 朋幸(CT)2,3),    矢口 貴博(PhD)1,2,3),薬師寺宏匡(BS)2),大野 節代(MS)2,3),坂口 卓也(PhD)1,2,3)  5.パターン認識を用いた子宮頸部細胞自動分類に関する研究   倉敷芸術科学大学大学院 産業科学技術研究科分子細胞病理学系1),   倉敷芸術科学大学 生命科学部生命医科学科2),加計学園細胞病理学研究所3)   ○大澤幸希光(MT)1),井川 奥義(CT)1),森  康浩(PhD)2,3),宮本 朋幸(CT)2,3),    矢口 貴博(PhD)1,2,3),薬師寺宏匡(BS)2),大野 節代(MS)2,3),三宅 康之(PhD)1,2,3),    坂口 卓也(PhD)1,2,3) 2

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 6.LBC標本作製過程における癌細胞消失に関する解析   倉敷芸術科学大学大学院 産業科学技術研究科分子細胞病理学系1),   倉敷芸術科学大学 生命科学部生命医科学科2),加計学園細胞病理学研究所3)   ○高木 翔士(CT)1),宮本 朋幸(CT)2,3),森  康浩(PhD)2,3),矢口 貴博(PhD)1,2,3),    薬師寺宏匡(BS)2,3),大野 節代(MS)2,3),三宅 康之(PhD)1,2,3),坂口 卓也(PhD)1,2,3)  7.当施設におけるASC-US症例の追跡調査と細胞像の検討   西日本病理研究所   ○松本 智穂(CT),真田 拓史(CT),岡本 哲夫(CT),徳田 清香(CT)  8.上皮内腺癌における核分裂像   岡山済生会総合病院 中央検査科1),国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科2),   帝京大学医学部付属病院 病理診断科3)   ○山本 弘基(CT)1),佐々木直志(CT)2),吉田  裕(MD)2),吉田 正行(MD)2),    笹島ゆう子(MD)3) 【第3群】(14:40 〜 15:10)  座長:能登原憲司(倉敷中央病院 病理診断科)  9.EUS-FNAで経験した高齢男性の膵Solid Pseudopapillary Neoplasmの1例   公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院    臨床検査技術部 病理検査室1),同病理診断科2)   ○實平 悦子(CT)1),香田 浩美(CT)1),原田 美香(CT)1),小寺 明美(CT)1),    和田 裕貴(CT)1),中村 香織(CT)1),堀田真智子(MD)2),藤澤 真義(MD)2),    能登原憲司(MD)2)  10.IgG4関連リンパ節症の1例   川崎医科大学附属川崎病院 病理部1),川崎医科大学附属川崎病院 病理科2)   ○高須賀博久(CT)1),畠   榮(CT)1),成富 真理(CT)1),日野 寛子(CT)1),    物部 泰昌(MD)2)  11.髄膜腫を疑われた Rosai-Dorfman disease の一例   岡山大学病院 病理診断科   ○今井みどり(CT),藤田  勝(CT),松岡 博美(CT),井上 博文(CT),    濵田 香菜(CT),田中 健大(MD),市村 浩一(MD),柳井 広之(MD) ◎ 休 憩(15:10 〜 15:30) ◎ 総 会(15:30 〜 16:00)

(8)

【講 演】(16:00 〜 17:30)  座長:石原真理子(倉敷成人病センター 病理診断科)  特別講演「婦人科腫瘍と分子遺伝学:診断的アプローチを中心に」(60分)          山口大学大学院医学系研究科分子病理学         河 内 茂 人 先生  教育講演「子宮頸部扁平上皮癌の撲滅をめざしてー病理の立場からー」(30分)          元井病理・細胞診断所         元 井   信 先生   閉会の辞 4

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形態学とは,生き物の姿・形からその本質を探ろうとする試みである.古来,人々 は生物の形態に意味を見出し,時にはそれをパターン化して共通項を引き出す「形態 分類学」を発展させた.形態分類は,形態学の祖とも言うべき古典的な学問体系であ るが,近年,この分野にも分子生物学的な手法が導入され,遺伝子をもとにしたより 根源的な意味での分類が確立しようとしている.もはや,形が似ているからと言って, 同じ種類の生物であると断言するわけにはいかない時代である. 細胞診も,形態分類学の一分野としてとらえることができた時代があった.いや, もちろん,細胞診の根本が形態に依存する限り,それはこれからも続いていくことで はある.けれど一方では,細胞の形態を追いかけ続けるわれわれの足元にも,新しい 時代の波が確実に押し寄せている.標本の中にちりばめられた様々な細胞.役割に応 じて変化した細胞の形態.形態とは,すなわち結果にほかならない.そして結果には 必ず原因が存在する.なぜその形態を取らなければならなかったのか.分子生物学は その答えをわれわれに与えてくれるのかもしれない. リチャード・ドーキンスは,著書「生物=生存機械論(原題:The Selfish Gene)」で, 生物(細胞と言い換えてもよい)は遺伝子の乗り物に過ぎないと説いた.遺伝子は常 にセルフィッシュ(利己的)であり,自らのコピーを増やすことだけを目的として存 在する.細胞はそれを乗せて移動させ拡散させるための機械である,と.遺伝子の利 己的性質とその振る舞いが真実であるなら,ドーキンスの指摘するとおり,それまで 説明のつかなかった生物学上の様々な事象,さらに言えば人間を含めた動物の不可思 議な行動までもが鮮やかに謎解きされる.では,われわれは毎日,ただただ遺伝子の 乗り物を眺めているだけなのだろうか.そう考えると,なにやら細胞診が無機的なも のに思えてくる. 染色された細胞を眺めながら,そこにある種の美しさを感じるのは私だけではない だろう.細胞は美しい.正常細胞であろうと,癌細胞であろうと.時としてわれわれ は細胞の形態に,単に「遺伝子を運ぶ機械」では説明しきれない美的深淵を垣間見る. だからこそ細胞のことをもっと知りたいと思う.その思いこそ,センス・オブ・ワン ダーにほかならない.尽きぬ好奇心,そして美意識――ことによると,われわれの形 態学に対する原動力はそんなところにあるのではないか. さあ,今日もセンス・オブ・ワンダーを探しながら,美意識を胸に細胞診を始めよ う. 岡山県臨床細胞学会 副会長 

藤 田   勝

巻 頭 言

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原  著

 岡山県臨床細胞学会 Ⅰ.緒   言 細胞転写法は細胞診標本や組織標本を他のスライド ガラスに移す方法であり,1983年にBrownが壊れた組 織標本の修復法として報告した1).現在では,1枚の 標本から複数の標本を作製できる方法として,細胞診 断 学 に お け る 免 疫 学 的 検 索 やin situ hybridization (ISH) 法などに応用されている2〜4).このように,現 在までに細胞転写法の応用方法や迅速化については 様々な検討がされてきたが,用いる封入剤はマウント クイック2)やマリノール4,5),エンテランニュー6)など 報告者により異なる.現在,これら以外にも多種多様 な疎水性封入剤が市販されているが,封入剤による相 違については十分に検討されていない.そこで,細胞 転写法に最適な疎水性封入剤を選別するために,カ バーガラスの剥離条件と時間,封入剤の種類と濃度, 細胞転写率について検討した. Ⅱ.対象および方法 カバーガラスの剥離条件と時間の検討 対象として,マリノール 750 で封入後3週間保存 したラット肝臓のHE染色組織標本40枚を用いた.こ れらの標本のうち半数の20枚には,ダイヤモンドカッ ター(H&H 超硬オイルガラス切り TC-15,三共コー ポレーション) にて24mm × 40mm カバーガラスの 長軸方向に約40mmの直線状の傷を等間隔で4本付け た.カバーガラスに傷がある標本とない標本の各5枚 ずつを室温,37℃,50℃,70℃の温度別のキシレンに  背景 細胞転写法は同一標本から複数の標本を作製する方法であり,細胞診標本による免疫細胞化 学染色において多くの施設で用いられている.細胞転写法に用いる疎水性封入剤としてマリノールが 多く報告されているが,現在多種多様の疎水性封入剤が市販されており,細胞転写法に最適な封入剤 を検討する必要性が考えられた.  目的 細胞転写法に最適な封入剤を選別するために,カバーガラスの剥離条件と時間,封入剤の種 類と濃度,細胞転写率について検討した.  結果 カバーガラスの剥離は,カバーガラスに傷をつけ,温度を付加することで迅速化が可能であっ た.封入剤の種類と濃度および細胞転写率は,封入剤によって細胞転写に最適な濃度が異なり,マリ ノール550の原液および2倍希釈液,マリノール750の原液および2倍希釈液,マウントクイックの原 液,HSRの原液および2倍希釈液,エンテランニューの原液において細胞転写率が高かった.  結語 封入剤によって細胞転写に可否があり,細胞転写法を施行する場合には適した疎水性封入剤 を選択する必要があると考えられた.  Key Words:Cell transfer technique, Cytology, Hydrophobic mounting agent 

細胞転写法の検討

持田 洋利

1)

,三宅 康之

1, 2, 3)

,森  康浩

2, 3)

,宮本 朋幸

2, 3)

,矢口 貴博

1, 2, 3)

薬師寺 宏匡

2)

,大野 節代

2, 3)

,坂口 卓也

1, 2, 3) 倉敷芸術科学大学大学院 産業科学技術研究科 分子細胞病理学系1),倉敷芸術科学大学 生命科学部 生命医科学科2) 加計学園 細胞病理学研究所3)

Hirotoshi MOCHIDA1),C.T., Yasuyuki MIYAKE1,2,3),PhD., Michihiro 

MORI2,3),PhD., Tomoyuki MIYAMOTO2,3),C.T.,I.A.C., Takahiro 

YAGUCHI1,2,3),PhD., Hiromasa YAKUSHIJI2),BS., Setsuyo 

OHNO2,3),MS., Takuya SAKAGUCHI1,2,3),PhD. Graduate School of Science and Industrial Technology, Department  of Chemical Technology, Kurashiki University of Science and  the Arts1) Department of Medical Life Science, College of Life Science,  Kurashiki University of Science and the Arts2) Kake Institute of Cytopathology3)   論文別刷請求先 〒712-8505 倉敷市連島町西浦2640番地       倉敷芸術科学大学 生命科学部 生命医科学科       三宅 康之       Phone:086-440-1161

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浸し,1時間毎にカバーガラスの剥離の有無を確認し た.今回は組織の損傷を防ぐために,自然剥離に要し た時間とした. 封入剤の種類と濃度および細胞転写率の検討 対象として,マリノールで封入後3週間保存した ラット肝臓(約20×25mm) のHE染色組織標本126枚 を用いた.カバーガラスに傷を付け,70℃のキシレン に4時間浸してカバーガラスを剥離した後,マリノー ル550(武藤化学株式会社) の原液および2倍希釈液, マリノール750(武藤化学株式会社) の原液および2 倍希釈液,マウントクイック(大道産業株式会社) の 原液,HSR(シスメックス株式会社) の原液および2 倍希釈液,エンテランニュー(MERCK MILLIPORE)  の原液および2倍希釈液,MGK-S(松浪硝子工業) の 原液および2倍希釈液をそれぞれ各10枚ずつに1mL 塗布してパラフィン伸展器(ホットプレート式) で 42℃にて一晩硬化させた後,42℃の恒温槽(ウォーター バス式) にて2時間軟化させて剥離し,転写した.希 釈液にはキシレンを用い,硬化した封入剤および組織 が破れずに剥離し,他方のスライドガラスへ貼り付け られた場合を転写成功とした. また,エンテランニューの原液および2倍希釈液は 塗布後の乾燥が早かったため,MGK-Sの原液および 2倍希釈液については粘度が高く十分に伸長しなかっ たため,スライドガラス上に載る限界量であった 1.5mLを塗布して各4枚ずつ再検討した. Ⅲ.結   果 カバーガラスの剥離条件と時間の検討 カバーガラスに傷がない場合,室温で平均72時間(最 短68時間,最長76時間),37℃で平均32時間(最短30 時間,最長34時間),50℃で平均22時間(最短20時間, 最長24時間),70℃で平均14時間(最短13時間,最長 15時間)をカバーガラスの剥離に要した.一方,カバー ガラスに傷がある場合,室温で平均24時間(最短23時 間,最長25時間),37℃で平均13時間(最短12時間, 最長14時間),50℃で平均4時間(最短3時間,最長 5時間),70℃で平均3.5時間(最短3時間,最長4時間) をカバーガラスの剥離に要した(図1). 封入剤の種類と濃度および細胞転写率の検討 転写成功率はそれぞれマリノール550の原液で100% 図1.カバーガラス剥離までの所要時間

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9 VOL. 33 2014 (10/10),マリノール550の2倍希釈液で100%(10/10), マリノール750の原液で100%(10/10),マリノール 750の2倍希釈液で100%(10/10),マウントクイック の原液で100%(10/10),HSRの原液で100%(10/10), HSRの2倍希釈液で100%(10/10),エンテランニュー の原液で90%(9/10),エンテランニューの2倍希釈 液 で30%( 3/10),MGK-Sの 原 液 で 0%( 0/10), MGK-Sの2倍希釈液で0%(0/10)であった(写真1, 2,表1). また,1.5mL塗布した再検討症例では,転写成功率 はそれぞれエンテランニューの原液で100%(4/4), エ ン テ ラ ン ニ ュ ー の 2 倍 希 釈 液 で25%( 1/4), MGK-Sの原液で0%(0/4),MGK-Sの2倍希釈液 で0%(0/4)であった(表1). Ⅳ.考   察 カバーガラスを迅速に剥離するにはカバーガラスに ダイヤモンドカッターで傷を付けて,70℃に加温した キシレンにて行うことが良いと考えられた.伊藤らも 加温したキシレンを用いることやカバーガラスに傷を つけることなどで迅速化が可能であることを報告して 写真1.細胞転写失敗例(MGK-Sの原液) 粘度が強く,表面は固まるが内部が硬化せず,剥離できない. スライドガラスから組織と硬化した封入剤が綺麗に剥離した.写真2.細胞転写成功例(HSRの2倍希釈液) 封入剤 (mL)塗布量 細胞転写成功率(%) 付       記 マリノール550 原液 1.0 100(10/10) 細胞転写に適していると考えられる. マリノール550 2倍希釈液 1.0 100(10/10) スライドガラス上で硬化した際に表面が波打っていたが,細胞転写に 適していると考えられる. マリノール750 原液 1.0 100(10/10) 細胞転写に適していると考えられる. マリノール750 2倍希釈液 1.0 100(10/10) 原液に比較してスライドガラスから容易に剥離し,細胞転写に適して いると考えられる. マウントクイック 原液 1.0 100(10/10) 細胞転写に適していると考えられる. HSR 原液 1.0 100(10/10) 細胞転写に適していると考えられる. HSR 2倍希釈液 1.0 100(10/10) 細胞転写に適していると考えられる. エンテランニュー 原液 1.0  90( 9/10) スライドガラスへの塗布時に乾燥が早く,硬化後に綺麗に剥離できな い例があった. 1.5 100( 4/ 4) 細胞転写に適していると考えられる. エンテランニュー 2倍希釈液 1.0  30( 3/10) 原液に比較してスライドガラスへの塗布時により早く乾燥し,硬化後 の剥離が困難であった. 1.5  25( 1/ 4) 薄く伸展するため,剥離時に破れやすい. MGK-S 原液 1.0   0( 0/10) 粘稠性が高く,スライドガラス上で十分に伸展しなかった. 1.5   0( 0/10) スライドガラス上での伸展性に乏しく,硬化しなかった. MGK-S 2倍希釈液 1.0   0( 0/10) 粘稠性が高く,スライドガラス上で十分に伸展しなかった. 1.5   0( 0/10) スライドガラス上での伸展性に乏しく,硬化しなかった. 表1.封入剤別の細胞転写成功率

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いる5).迅速にカバーガラスを剥離することで,細胞 転写後の免疫学的検索やISH法などへスムーズに移行 でき,臨床への応用も容易になると考えられる.しか し,キシレンを加温することで気化が促されるため, 空調や健康の管理にも注意を要したい. また,封入剤として一般的に用いられるマリノール に加え,種々の疎水性封入剤による細胞転写の可否に ついて検討した.マリノール,マウントクイック, HSR原液を用いた場合,またマリノール,HSRについ てはキシレンにて2倍希釈液にしても細胞転写率は 100%であった.封入剤を希釈して用いることで経済 的費用の面以外にも,封入剤を塗布後に適度な時間で 硬化し,スライドガラスからの剥離も容易に行えるた め,手技や時間の面でも利点があると思われた.一方 で,エンテランニューやMGK-Sを用いた場合には細 胞転写が行えなかった.スライドガラスに塗布した際 に,表面の乾燥が過度に早いことや粘度が高く十分に 伸長しないことが原因である.これらの封入剤や新規 の封入剤を細胞転写法に用いる場合には,封入剤の希 釈法あるいは粘度や硬化温度の調節を十分に検討する 必要があると考えられた. Ⅴ.結   語 カバーガラスを剥離するには,カバーガラスに傷を 付け,キシレンを加温することが有効だと考えられた. また,細胞転写法に有用である疎水性封入剤はマリ ノール,マウントクイック,HSRであることが明らか になった. 今回の我々の検討が,細胞転写法を施行する上での 封入剤の選択の一助となれば幸いである. 文 献 1) Brown, G.G. Salvaging sections from broken slides: Some  modifications to the DIATEX method and a new use to  the technique sectioning aid kit. Technique History Q.  1983;2:1-3. 2) 廣川満良,有安早苗,鐵原拓雄,岩知道伸久,鞍津輪優子. マウントクイック封入剤を用いた細胞転写法の免疫組織化 学および電子顕微鏡的検索への応用.日臨細胞誌.1995; 34:1236-1237. 3) 廣川満良,岩知道伸久,有安早苗.組織細胞科学(日本組 織細胞化学会 編).東京.学際企画.2003:213-217. 4) 大野綾子,喜納勝成,岡崎哲也,小谷津純一,石和久.マ リノール封入剤を用いた細胞転写法 免疫組織化学的検索 およびISH法への応用.日臨細胞誌.1996;35:657-658. 5) 伊藤仁,宮嶋葉子,長村義之,堤寛.迅速細胞転写の検討. 日臨細胞会誌.2002;41:302-303. 6) 金子千之,舟橋正範.エンテランニュウ封入剤を用いての 細胞転写法 細胞診領域への応用.臨床検査.2000;44(4): 454.

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11

原  著

 岡山県臨床細胞学会 Ⅰ.緒   言 我々は以前,市販されている2社(A社,B社)の液 状化細胞診(liquid-based cytology; LBC)法において, 保存液中の細胞数と標本に出現する細胞数を解析した 結果,両社とも算出した理論値よりも出現細胞が少な いことを報告した1).また,A社はB社に比し,複数 枚の標本を作製した場合に,標的となる細胞が標本上 に出現しない場合があることも確認している.今回 我々は,LBC標本作製過程における出現細胞数減少機 序を明らかにすることを目的とし,培養細胞剥離法の 違いによる出現細胞数の変化及び両社の標本作製過程 において廃棄する上清中に含まれる細胞数を解析した ので報告する. Ⅱ.対象および方法 トリプシンまたはセルスクレーパーを用いて子宮頸 癌培養細胞株HeLa (RIKEN BRC, RCB0007)を培養 皿より剥離した後に1×105個計数し,両社の専用バ イアルにて固定した.固定後の材料は両社のプロトコ ルに従い標本を作製した(表1).さらに,標本作製 過程で廃棄する上清(表1下線)も回収し,同様に標 本を作製した.塗抹標本はパパニコロウ染色の後に出 現細胞数を計数し,細胞剥離法及び標本作製法間につ い て 比 較 し た. 統 計 学 的 解 析 に はMann Whitney  U-testを用い,p値が0.05未満の群間に有意差があるも のとした. Ⅲ.結   果 トリプシンにより剥離した細胞とセルススクレー パーにより剥離した細胞を比較したところ,A社・非 婦人科,B社ではトリプシン剥離検体で有意に多く細 胞を認めたものの,A社・婦人科用では全体的に出現 細胞が減少し,トリプシン剥離検体は出現細胞数が有 意に少なかった(図1①, 2).A社・婦人科の標本作  背景 我々は以前,2社のliquid-based cytology (LBC)法を比較したところ,A社では出現細胞数 がB社に比し著しく減少することを報告した.そこで今回は,出現細胞数減少の機序を明らかにする ことを目的とした.  結果 標本作製において廃棄する遠心上清を回収し,新たに標本を作製したところ,A社の遠心上 清から作製した標本上に比較的多くの細胞を認めた.  結語 A社の標本作製法においては,炎症細胞を除去する操作で標的となる細胞を消失する可能性 が示された.  Key words:liquid-based cytology, cultured cells, comparison examination

LBCにおける出現細胞数減少機序の解明

宮本 朋幸

1, 2)

,高木 翔士

3)

,森  康浩

1, 2)

,薬師寺 宏匡

1, 2)

,矢口 貴博

1, 2, 3)

大野 節代

1, 2)

,三宅 康之

1, 2, 3)

,坂口 卓也

1, 2, 3)

,大野 英治

4) 倉敷芸術科学大学生命科学部生命医科学科1),加計学園細胞病理学研究所2) 倉敷芸術科学大学大学院産業科学技術研究科分子細胞病理学系3),九州保健福祉大学4) Tomoyuki MIYAMOTO,C.T.,I.A.C.1,2), Shoji TAKAGI,C.T.3), 

Michihiro MORI,PhD1,2), Hiromasa YAKUSHIJI,BS1,2), Takahiro 

Y A G U C H I , P h D1 , 2 , 3 ),   S e t s u y o   O H N O , M S1 , 2 ),   Y a s u y u k i  M I Y A K E , P h D1 , 2 , 3 ),   T a k u y a   S A K A G U C H I , P h D1 , 2 , 3 ),   E i j i  OHNO,PhD1,2,3) Department of Medical Life Science, College of Life Science,  Kurashiki University of Science and the Arts1) Kake Institute of Cytopathology2) Graduate School of Science and Industrial Technology, Department  of Chemical Technology, Kurashiki University of Science and  the Arts3) College of Medical Life Science, Kyushu University of Health and  Welfare4)   別刷請求先 〒712-8505 倉敷市連島町西浦2640番地         倉敷芸術科学大学生命科学部生命医科学科         宮本 朋幸         Phone:086-440-1099

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製過程のどの段階で細胞が消失しているのかを明らか にするために,標本作製の各段階の上清を回収し,新 たに標本を作製したところ,1回目および2回目の遠 心後の上清に比較的多くの細胞を認めたものの,B社 では,上清中に認める細胞は少なく,標本作製最終段 階でガラス上から廃棄する液中に細胞を認めた(図1 ②). Ⅳ.考   察 以前の報告にて,A社・婦人科用作製法にて出現細 胞数の減少がみられたことから,細胞剥離に用いるト リプシンが出現細胞数に影響を及ぼしている可能性を 想定したが,A社・非婦人科およびB社では,セルス クレーパーにて機械的に剥離した材料の方が細胞数が 少なかったことから,トリプシンの影響は少ないこと が示唆された.一方,密度勾配により炎症細胞や赤血       A社・婦人科 1 遠心チューブに分離剤を4mL分注. 2 固定液バイアルを撹拌. 3 固定検体を8mL分離剤の上に重層. 4 200G x 2分遠心. 5 上層部を除去. 6 800G x 10分遠心. 7 上清を除去. 8 沈渣に精製水1,250μL(250μL x 5枚分)添加. 9 ミキサーで撹拌. 10 標本1枚あたり、検体約200μLをチャンバー内にサンプ リング(5枚). 11 10分間静置. 12 デカントにて上清除去. 13 エタノール1mL添加. 14 軽く混和. 15 エタノール除去. 16 95%エタノールにて固定. 17 パパニコロウ染色. A社・非婦人科 1 固定検体を600G x 10分遠心. 2 デカントにて上清除去. 3 沈渣に精製水1,250μL(250μL x 5枚分)添加. 4 ミキサーで撹拌. 5 標本1枚あたり、検体約200μLをチャンバー内にサンプ リング(5枚). 6 10分間静置. 7 デカントにて上清除去. 8 エタノール1mL添加. 9 軽く混和. 10 エタノール除去. 11 95%エタノールにて固定. 12 パパニコロウ染色. B社 1 固定液バイアルを撹拌し、800G x 5分遠心. 2 デカントにて上清除去. 3 精製水10mL添加. 4 800G x 5分遠心. 5 デカントにて上清除去. 6 精製水2mL添加. 7 標本1枚あたり、検体300μLをスライドにサンプリング (5枚). 8 10分間静置. 9 エタノールでスライド洗浄. 10 95%エタノールにて固定. 11 パパニコロウ染色. 表1.両社の標本作製法 図1.各社の標本作製法を用いた場合の出現細胞数. ①細胞剥離法間の比較,②標本作製過程における廃液を回収し 新たに作製した標本間の比較.(Ave ± SD)

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13 VOL. 33 2014 球を分離するA社・婦人科用作製法2)では,A社・非 婦人科及びB社に比し,剥離法にかかわらず細胞数が 減少したことから,分離用試薬を用いる工程において 細胞が上清中へ廃棄されていると思慮された.また, 標本作製過程の上清を回収し解析したところ,A社・ 婦人科では遠心上清に多くの細胞が含まれていた.以 上より,A社・婦人科用標本作製法では,炎症細胞や 赤血球を除去する1回目の遠心で標的となる細胞も消 失する可能性が示唆された. 文 献 1) 宮本朋幸,遠藤 南,富安 聡,大野節代,三宅康之,坂 口卓也,大野英治.LBCにおける細胞出現率の定量的解析. 日本臨床細胞学会岡山県支部会.2013;32:12-5. 2) Sweeney BJ, Haq Z, Happel JF, Weinstein B, Schneider  D. Comparison of the effectiveness of two liquid-based  Papanicolaou systems in the handling of adverse limiting  factors, such as excessive blood. Cancer. 2006;108 (1): 27-31. 図2.各社の標本作製法を用いて作製した標本のパパニコロウ染色像.トリプシンを用いても細胞数減少はみられない.(Pap. x20)

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原  著

Ⅰ.は じ め に 当施設では2009年4月よりベセスダシステムと日母 分類を併記し報告している.べセスダシステムの新し いカテゴリーであるASC-USは意義不明な異型扁平上 皮細胞とされており,LSILを疑うも,量的,質的に 定義を満たさないものとされ,その判定は,個々の細 胞に適応されるのではなく検体全体の判断になるた め,明確な細胞像の基準がなく取り扱いに苦慮する場 合がある1) 今回,当施設でASC-USと判定された症例のその後 の追跡調査とHPV感染の有無での細胞像の特徴を検 討したので報告する. Ⅱ.対象と方法 2011年1月から12月に当施設に子宮頸部細胞診とし て提出された53,988件のうちASC-US 954例中,過去 に異常が確認できなかった670件を対象にした. その後の検査結果および年齢分布の特徴を調べた. またHPV陽性でLSIL又はCIN1以上の病変の認められ た症例と,HPV陰性でその後消退した症例で,HPV 感染細胞の特徴所見を中心に再鏡検し,特に注意すべ き細胞像を検討した. Ⅲ.結   果 ASC-USと診断され2014年5月までに検査が行われ たのが確認できたのは461件で,細胞診のみが一番多 く185件(40.1%), 次 に 細 胞 診 とHPV検 査128件 (27.8%),HPV検査115件(24.9%),細胞診と組織診 9件(2.0%),細胞診と組織診とHPV検査9件(2.0%), 組織診とHPV検査8件(1.7%),組織診のみ7件(1.5%) だった. 細胞診で再検が確認できたのは331件でその内訳は,  はじめに 当施設でASC-USと判定された症例の追跡調査とHPV検査で陽性,陰性の細胞像につい て検討したので報告する.  対象と方法 2011年1月〜12月に当施設に提出された53,988件のうち,ASC-USで過去に異常が確 認されなかった670件を対象にし,その後の結果,HPV感染の有無での細胞像について検討した.  結果 細胞診での再検が確認できたのは331件(NILM202件,ASC-US67件,ASC-H6件,LSIL42件, HSIL13件,SCC1件)だった.HPV検査は陽性138件(52.9%),陰性123件(47.1%)だった.また HPV陽性で進展がみられた症例をHPV感染細胞の特徴を中心に再検討した結果,90%以上に認めら れ,特に多くの症例で多核細胞が認められた.  まとめ ASC-USの再検査では約60%で消退,約20%で進展が認められた.HPV陽性で進展した症 例は,90%以上でHPV感染の特徴的所見が認められたが,HPV陰性で消退した症例では低い結果だっ た.LSIL以上の病変ではハイリスクHPVの感染率が高く,HPV感染細胞の特徴は,良性変化との鑑 別で有用であることが確認できた.  Key Words:atypical squamous cells of undertermined significance, human papilloma virus        infection, follow up

当施設におけるASC-US症例の追跡調査と細胞像の検討

松本 智穂

1)

,真田 拓史

1)

,岡本 哲夫

1)

,徳田 清香

1)

,物部 泰昌

2) 西日本病理研究所1),川崎医科大学附属川崎病院病理部2)

Chiho MATSUMOTO1),C.T.,I.A.C., Hiroshi SANADA1),C.T.,I.A.C., 

Tetsuo OKAMOTO1),C.T.,I.A.C., Sayaka TOKUDA1),C.T.,I.A.C., 

Yasumasa MONOBE2),M.D. West Japan Pathology Laboratory1) Kawasaki Medical School attached Kawasaki Hospital, Department  of Pathology2)   論文別刷請求先 〒710-0834 倉敷市笹沖463-1       西日本病理研究所       松本 智穂

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15 VOL. 33 2014 NILM 202件(61%),ASC-US 67件(20.3%),LSIL  42件(12.7%),HSIL 13件(3.9%),ASC-H 6件(1.8%), SCC 1件(0.3%)という結果だった(表1).また, 再検結果での年齢分布を調べた結果,ASC-US,と LSILでは同様な分布が見られ20歳,30歳代が同じよ うに多いことがわかった.HSIL とASC-Hも同じ様な 分布が見られ特に30歳代が占める割合が多く,ASC-US, LSILと比べるとやや年齢が高いことがわかった (図1). 組織診が実施されていたのは33件でその内訳はNo  malignancy: 6 件(18.1%),CIN1:16件(48.6%), CIN2:5件(15.2%),CIN3:6件(18.1%)だった. HPV検査はHPV-DNA同定と,HPVジェノタイプが 実施されていた.HPV-DNA同定はハイブリットキャ プチャー法により中〜高リスク型HPVを検出する検 査で,HPVジェノタイプはマルチプレックスPCR法 にて16型と18型の単独検出,ハイリスクグループ16種, さらにローリスクグループ2種を同時に検出する検査 で あ る. 実 施 さ れ て い た の は261件, 陽 性 は138件 (52.9%),陰性は123件(47.1%)だった(表2).また, HPV検 査 陽 性 症 例 の 年 齢 分 布 は,20歳 代 が68件 (49.3%),30歳 代47件(34.0%),40歳 代11件(8.0%), 10歳代6件(4.3%),50歳代3件(2.2%),60歳代以上 は3件(2.2%)であり,20歳代が全体の約半分を占め る結果だった. 次にHPV検査で陽性28例,陰性28例をHPV感染細 胞所見を中心に再鏡検を行った.HPV感染細胞所見 としてkoilocyte,parakeratocyte,smudged核,多核 結 果 件 % NILM 202   61 ASC-US  67 20.3 ASC-H   6  1.8 LSIL  42 12.7 HSIL  13  3.9 SCC   1  0.3 合 計 331  100 表1.細胞診の再検結果内訳 図1.細胞診再検結果の年齢分布 表2.HPV検査結果の内訳 検査結果 件 % HPV-DNA同定 (中〜高リスク型) -  56 21.5 +  70 26.8 HPVジェノタイプ -  67 25.7 16型   7  2.7 18型   2  0.7 ハイリスク  48 18.4 16+HR   8  3.1 18+HR   2  0.7 16+18   1  0.4 合  計 261  100

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細胞を確認した2).HPV陽性の症例では軽度の核腫大 とコイロサイトーシス様の変化がみとめられた症例 や,軽度の核異型のみられる2核の細胞,オレンジ好 性の小型異型細胞の集塊,核がやや腫大し,クロマチ ンは無構造化,濃染した細胞が確認できた(写真1  a.b.c.d).HPV陰性の症例では円形核でやや腫大した 細胞や,2核細胞,オレンジ好性の小型異型細胞など も確認できた(写真2 a.b.c). HPV陽性でその後進展の見られた症例28件中26件 で特徴的所見が認められた(表3).特に多核細胞は 17件60.7%で確認できた. HPV陰性でその後消退した症例では28件中5件で 確認できたが,ほとんどが多核細胞で,HPV陽性の 症例と比べ,円形核で核形不整はほとんどなく,異型 が弱い傾向があった.またHPV陽性では3核以上の 多核細胞が17件中10件認められたが,HPV陰性では ほとんどが2核細胞であった. Ⅳ.ま と め ASC-USと診断されたその後の運用として,6カ月 以内の細胞診検査またはHPV検査による判定が望ま しいとされている.今回再検査の実施が確認できたの は461件で,HPV検査は全体の56%で実施されており, 日常の診療に定着していることが窺われた. ASC-US症例での再検査では約60%で陰性化し,約 20%で進展が認められ,中等度異形成以上は5%で あった.ASC-USではCIN2かそれ以上の病変が10〜 20%潜んでいるといわれている3)が,今回の調査では やや低い結果であった. HPV検査では50%以上が陽性で,20歳代が一番多 い結果であった. HPV陽 性 で 進 展 が み ら れ た 症 例 の 細 胞 像 で は, 90%以上でHPV感染の特徴的所見が認められた.特 に3核以上の多核細胞,parakeratocyte,クロマチン 写真1.HPV陽性の細胞像(パパニコロウ染色 ×40) a.軽度の核腫大とコイロサイトーシス様の変化 d.軽度に核腫大し,クロマチンは無構造化,濃染した細胞 b.軽度の核異型のみられる多核細胞 c.オレンジ好性の小型異型細胞の集塊

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17 VOL. 33 2014 の無構造化,濃染性の核のみられる細胞は数が少なく てもHPV感染が疑われる.また,ASC-US症例では LSILの一部の細胞を見ている可能性も考えられるの で,二種類以上のHPV感染の特徴が認められる場合 もLSIL以上の病変が潜んでいる可能性が高いため注 意が必要である. HPV陰性で消退した症例ではHPV感染の特徴的所 見の出現率は低く,多核細胞が一番多く認められたが, ほとんどが平面的な2核細胞であり,HPV陽性症例 より核腫大以外の核異型の弱い傾向にあることがわ かった.しかし,一部ではHPV陰性にかかわらず3 核以上の多核細胞,koilocyte様変化の見られる異型細 胞が認められた症例もある(写真3).この症例では ASC-USと診断されて,HPVジェノタイプ検査が行わ れるまで2ヶ月以上の期間が開いており,細胞診と同 一の検体でないため,HPV感染の影響の判断に苦慮 a.円形核で軽度核腫大した細胞 b.軽度に核腫大した2核細胞 c.オレンジ好性の小型異型細胞 写真2.HPV陰性の細胞像(パパニコロウ染色 ×40) 表3.HPV感染所見を対象にした再鏡検の結果 Koilocyte様 変化 parakeratocyte Smudged核 多核細胞 HPV(+) 進展あり 28件 8 (28.5%) (42.9%)12 (50%)14 (60.7%)17 HPV(-) 陰性 28件 1 (3.5%) (3.5%)1 (0%)0 (14.3%)4

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する症例である.ASC-USではこのような症例も存在 することも認識する必要がある. LSIL以上の病変ではHPV感染率の高いことが知ら れているが,ASC-US症例でもHPV感染細胞の特徴を 観察することは良性変化との鑑別の指標になると考え られ,鏡検時に注意が必要である. 文   献 1) Diane Solomon, Ritu nayar, 平井康夫.べセスダシステム 2001アトラス.東京:シュプリンガー・ジャパン株式会社; 2009.67-74 2) 婦人科領域の細胞診.坂本穆彦,細胞診を学ぶ人のために. 2011.149-150 3) The ALTS Group:Results of randomized trial on the  management of cytology interpretations of atypical  squamous  cells of undetermined significance. Am J  Obstet Gynecol 2003;183:1383-1392 写真3.HPV陰性のASC-US細胞像(パパニコロウ染色 ×40) 3核以上の多核細胞,koilocyte様変化の見られる異型細胞

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19

症  例

 岡山県臨床細胞学会 Ⅰ.は じ め に 乳房内リンパ節は報告者によってその頻度は異な  る1〜7)が,その診断には困難な症例もある.今回,わ れわれは穿刺吸引細胞診にて悪性リンパ腫との鑑別が 困難であった乳房内リンパ節の1例を経験したので, 細胞学的所見を中心に報告する. Ⅱ.症 例 症例:60歳代後半,女性 主訴:PET/CTにて乳腺に集積があった. 臨床経過:肺腫瘤の疑いでPET/CTがおこなわれた 際に,乳腺に集積がみられ,当院乳腺甲状腺外科を紹 介受診された.マンモグラフィ(写真1a)と超音波 検査(写真1b)がおこなわれ,左乳房C領域に1.2×0.4 ㎝の腫瘤が認められた.乳腺腫瘍も疑われて,穿刺吸 引細胞診が施行された.細胞診にてクラス分類不可, 鑑別困難とした.後日,針生検がおこなわれ,乳房内 リンパ節と診断された. Ⅲ.細胞学的所見 乳腺穿刺吸引細胞診がおこなわれ,パパニコロウ染 色にて観察した.標本中には,孤立散在性で,成熟リ ンパ球に混ざり,中〜大型のリンパ球がみられた.こ れらの細胞は大小不同があり,個々の細胞はN/C大で, 核は腫大,不整があり,核クロマチンの増量,核小体 も明瞭であった(写真2).悪性リンパ腫との鑑別が 必要と考えられ,鑑別困難とした.針生検診断後,標  背景 悪性リンパ腫と鑑別困難であった乳房内リンパ節を経験したので,細胞学的形態を中心に報 告する.  症例 60歳代後半,女性.PET/CTで乳癌の疑いを指摘され,当院の乳腺甲状腺外科を紹介された. 受診時に穿刺吸引細胞診がおこなわれた.穿刺吸引細胞診標本では蛋白様物質とともに多数のリンパ 球がみられた.これらの細胞は散在性に出現し,核形不整,核クロマチンが増量し,好酸性の核小体 を有していた.悪性リンパ腫との鑑別が困難で異型細胞として報告した.乳腺針生検の所見では,乳 腺上皮は明らかではなく,リンパ球が豊富にみられ,形質細胞や少数の好酸球もみられた.小型リン パ球が優勢であったが,胚中心芽細胞が集簇してみられる部分もあった.免疫染色ではCK AE1/ AE3の陽性細胞はなく,CD3,CD5,CD20,CD79aの陽性細胞が混在した.乳房内リンパ節と診断 された.  考察とまとめ 今回,細胞像を中心に報告した.乳房内リンパ節を経験することは稀にあり,悪性 リンパ腫との鑑別が問題となることがある.確定診断には免疫染色なども必要となる.さらに,画像 を含む臨床所見との十分な対比が必要である.  Key Words:intramammary lymph node,lymph node,fine needle aspiration biopsy,cytology,        case report

悪性リンパ腫と鑑別困難であった乳房内リンパ節の1例

小林 江利

1)

,荒木 豊子

1)

,米  亮祐

1)

,鐵原 拓雄

1)

,秋山  隆

1, 2)

鹿股 直樹

1, 3)

,森谷 卓也

1, 3) 川崎医科大学附属病院 病院病理部1),川崎医科大学病理学12),同病理学23)

Eri KOBAYASHI1),C.T.,I.A.C., Toyoko ARAKI1),C.T.,I.A.C., 

Ryousuke YONE1),C.T.,I.A.C., Takuo KANAHARA1),C.T.,C.M.I.A.C., 

Takashi AKIYAMA1,2),M.D., Naoki KANOMATA1,3),M.D., Takuya 

MORIYA1,3)M.D., M.I.A.C. Department of Pathology, Kawasaki Medical School Hospital1) Department of Pathology 1, Kawasaki Medical School2) Department of Pathology 2, Kawasaki Medical School3)   論文別冊請求先 〒701-0192 岡山県倉敷市松島577       川崎医科大学附属病院 病院病理部       小林 江利

(23)

本を脱色して,CD3とCD20の二重免疫染色を行った (写真3). Ⅳ.組織学的所見 針生検のHE染色では乳腺上皮は明らかではなく, 小型リンパ球が豊富にみられた(写真4).背景には 形質細胞や少量ながら好酸球もみられた.一部に胚中 心芽細胞が集簇してみられる部分もあり,既存のリン パ濾胞と思われた.免疫染色の結果,CK AE1/AE3 の陽性細胞はなく,CD3(写真5a),CD5,CD20, CD79a(写真5b)の陽性細胞が混在するもので,濾 胞ではbcl-2は陰性であった(写真5c).乳房内リンパ 節と診断された. 写真1 1a,マンモグラフィ画像 左乳房C領域に12×4.3mm大の腫瘤が認められた. 1b,超音波画像 外側が低エコーで,中心が高エコーで,ドーナッツ状の境界明瞭な腫瘤が同部位に認められた. 写真2 2a,乳腺穿刺吸引の弱拡大の細胞像(Pap.染色×10) 2b,2c,2d,乳腺穿刺吸引の強拡大の細胞像(Pap.染色×100) 背景はきれいで,成熟リンパ球に混ざり,中〜大型のリンパ球が散在性にみられた.大小不同があり,個々の細胞は N/C大で,核は腫大,核クロマチンは顆粒状で,好酸性の核小体がみられた.

(24)

21 VOL. 33 2014 Ⅴ.考   察 乳房内リンパ節は,組織学的に明瞭な線維性被膜を 有し,リンパ濾胞の形成を伴い,周囲が乳腺組織で囲 まれている8〜9).細胞像は通常のリンパ球と同様であ り,異型性を認めない小型成熟リンパ球を主体とし, 中型リンパ球,免疫芽球など多様なリンパ球が認めら れる9).しかし,低悪性度リンパ腫との鑑別が困難な ことがある.乳房内リンパ節では核片を貪食した tingible body macrophageが散見されることがあり, 出現する細胞がより多彩性に富むことで鑑別が可能と なる場合がある. 発生頻度について,国内での症例報告はあまりな  い1,2)が,国外ではJadusinghは682例のうち5例(7個), (0.7%)3),Eganは乳癌158症例のうち45例,(28%)4) Waldemar Aらは20献体,40乳房のうち3乳房(15個), (7.5%)5)と報告者により異なる.当院では,7年間 で約1960症例の乳腺穿刺細胞診のうち,5症例が乳房 内リンパ節(2.7%),1症例がリンパ腫と診断され, 1症例が鑑別困難で自験例であった. 写真4 4a,乳腺針生検の弱拡大の組織像(HE染色×10)4b,乳腺針生検の強拡大の組織 像(HE染色×100)乳腺上皮細胞は明らかではなく,小型リンパ球が優勢であった. 写真3 パパニコロウ染色後に脱色し二重免疫染色. 茶色がCD3,赤色がCD20.細胞が少し膨化 しているのは賦活操作が原因と思われる. 写真5 乳腺針生検での免疫染色 5a,bcl-2染色×40 5b,CD79a染色 5c,CD3染色×40

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乳房内リンパ節の大きさは1㎝程度であり,発生部 位はC領域に多いといわれている8).自験例では,大 きさは1.2×0.4㎝で,C領域に見られた.また,マン モグラフィでは明瞭な中央部がある卵型の構造で, hilar nitchを伴うことが多く,外側が低エコーになる 8).超音波画像では,低エコー領域の中に高エコーな 部分があるのが特徴といわれている10).自験例では, マンモグラフィでは境界明瞭であったが,hilar nitch はみられなかった.また,超音波では外側が低エコー でその領域の中に高エコーな部分があり,乳房内リン パ節として矛盾しない所見であった. 穿刺吸引細胞診では上皮成分がみられず,リンパ球 が主体となるため悪性リンパ腫と誤診されることがあ る.特に,中細胞型の悪性リンパ腫,びまん性大細胞 性B細胞リンパ腫の胚中心芽細胞型との鑑別が困難な ことが多い.中細胞型の悪性リンパ腫の場合は,軽度 の核のくびれやクロマチンの凝集,核小体などが鑑別 点となる9).また,背景に反応性T細胞の多い,びま ん性大細胞性B細胞リンパ腫では,成熟リンパ球に混 ざり,中〜大型のリンパ球がみられ,それらの細胞は 大小不同があり,個々の細胞はN/C大で,核は腫大, 不整があり,核クロマチンの増量がみられるため,鑑 別が困難である.しかし,核のくびれが不明瞭である 点から鑑別が可能と思われるが,良悪性の判定が困難 な症例も多い.また,良性疾患では乳腺炎,肉芽腫性 乳腺炎等の時に,リンパ球が多数出現し鑑別が必要と 思われる.しかし,乳腺炎ではアポクリン化生細胞, 肉芽腫性乳腺炎では形質細胞,好中球とともに類上皮 細胞,巨細胞の出現することが一助となる.鑑別困難 な場合はパパニコロウ染色を脱色するか,針洗浄液に てシンレイヤーを作製し免疫染色するのも有効と思わ れる.Elanaらはフローサイトメトリーや免疫染色の 併用の有用性を報告している5) Ⅵ.ま と め 60歳代後半女性の乳房内リンパ節について,細胞学 的形態を中心に報告した.細胞観察に際しては,通常 のリンパ球と同様であり,異型性を認めない小型成熟 リンパ球を主体とし,中型リンパ球,免疫芽球など多 様なリンパ球が認められる.しかし,炎症等の病変に より多彩な像を示し,診断が困難なこともある.細胞 像だけでなく,フローサイトメトリーや免疫染色を付 加することが重要と思われる.また,画像などの臨床 所見も合わせた総合判断が必要となる. 謝辞;稿を終えるにあたり,ご指導を賜った川崎医 科大学乳腺甲状腺外科教室,紅林淳一教授ならびに野 村長久講師に深謝致します. 文   献 1) 堀江 靖,猪川嗣朗,堀尾裕俊,原  宏,森  透.乳 腺内リンパ節intramammary lymph node−2症例の報告と 文献的考察−.病理と臨床.1994;12:859-863 2) 大住省三,佐伯俊昭,高嶋成光,万代光一.画像診断によ り検出された乳房内リンパ節の1例.乳癌の臨床.1996; 11:603-606 3) Jadusingh IH,Intramammry lymph nodes.Clinical  Pathology.1992;45:1023-1026 4) Egan RL,McSweeney MB.Intramammary lymph  nodes.Cancer.1983;51:1838-1842 5) Elena V,Immacolata C,Laura VSF,Leda DP,Albina R, Marco P,et al.Fine-Needle Cytology and Flow Cytometry  Assessment of Reactive and Lymphoproliferative Processes  of the Breast.Acta cytologica.2012;56:130-138 6) Pranab D,Aisha Al J,Thasneem A,Sanjay J.Fine  Needle Aspiration Cytology of an Intrammary Reactive  Lymph.Acta cytol.2007;51:119-120 7) Waldemar A,Alan C,John T,Rodney F,Priscilla A, Amy T,et al.Lymph Nodes in the Human Female  Breast:A Review of Their Detection and Significance. HUMAN PATHOLOGY. 2001;32:178-187 8) The Pathology of Axillary and Intramammary Lymph  Nodes.Syed AH,Rosen’s Breast Pathology 4th. Ed.  2013.1256-1258 9) 土屋眞一,カラーアトラス乳腺細胞診.医療科学社; 2000:174-175 10) Gordon PB,Gilks B.Sonographic appearance of normal  intramammary lymph nodes.J Ultrasoind Med.1988;7: 545-548

(26)

23

症  例

 岡山県臨床細胞学会 Ⅰ.は じ め に 胃原発の印環細胞癌が子宮内膜細胞診に出現するこ とはまれである.今回,子宮内膜細胞診が契機となり, 胃原発の印環細胞癌を発見することができた症例を経 験したので報告する. Ⅱ.症 例 症例:50歳代,女性 主訴:特記すべきことなし 家族歴:祖母 乳癌,父 肺癌 健診にて,腹部超音波で右卵巣腫瘍を指摘され当院 受診となった.MRIにて右卵巣線維腫が疑われ,同時 に内膜細胞診が施行された.内膜細胞診では,印環細 胞癌を示唆する所見がみられた.原発検索のため,上 部内視鏡検査が行われたところ,胃体部に浅い潰瘍性 病変が多発していた.生検の結果Group 5と診断された. 全身検索の結果,CTにて両側の卵巣が3cmと軽度の 腫大がみられ(写真1),Krukenberg腫瘍を疑った.そ の他には,原発巣となり得る病変は認められなかった. Ⅲ.細 胞 所 見 内膜細胞がシート状集塊で出現し,それらの内膜細 胞には異型は認められなかった(写真2).正常内膜 細胞の周囲に,異型細胞が散在性や小集塊でみられた (写真3).それらの異型細胞はN/C比が高く,核異型 やクロマチン増量,核小体腫大が認められた(写真4). また,細胞質内の粘液のため核が圧排された細胞がみ られた(写真5).内膜のセルブロックにて,PAS染 色とアルシアンブルー染色を行いどちらも陽性を示し た.以上の結果より,印環細胞癌を疑い,胃等の精査 を依頼した.  背景 今回,子宮内膜細胞診が契機となり,胃原発の印環細胞癌を発見することができた一例を経 験したので報告する.  症例  50歳代女性.健診にて,腹部超音波で右卵巣腫瘍を指摘され当院受診となった.MRIにて 右卵巣線維腫が疑われ,同時に内膜細胞診が施行された.内膜細胞診では,炎症性背景に孤立散在性 の小型腫瘍細胞が少数認められた.N/C比はやや大でクロマチンは細顆粒状に増量していた.また核 は細胞質内の粘液により一側に圧排されており,細胞質内の粘液はPAS染色,アルシアンブルー染色 陽性であった.以上の所見より印環細胞癌が疑われた.原発巣検索のため,上部内視鏡検査が行われ たところ,胃体部に浅い潰瘍性病変が多発していた.その部分から生検を行った結果,粘膜内印環細 胞癌を含む低分化腺癌が存在した.全身検索の結果,他に原発巣となり得る病変は認められなかった.  結論 臨床情報が少ない状況で子宮内膜細胞診にて,胃原発の印環細胞癌の発見ができた貴重な症 例であった.内膜に印環細胞が出現した場合,胃をはじめ他臓器からの転移を視野に入れ,検索する 必要がある.  Key Words:Signet-ring cell carcinoma,Krukenberg tumor,Endmetrium,cytology,        case report

子宮内膜細胞診を契機に発見できた胃原発の印環細胞癌の一例

高田 由貴

1)

,石原 真理子

1)

,蔵重  亮

1)

,小渕 喜枝

1)

,瀬島 雅子

1)

林 佳代子

1)

,穂並 聖子

1)

,大森 昌子

2) 倉敷成人病センター 病理診断科1),岡山大学病院 病理診断科2)

Yuki TAKATA1),C.T., I.A.C., Mariko ISHIHARA1),C.T.,I.A.C., Toru  

KURASHIGE1),C.T.,I.A.C., Yoshie KOBUTI1),C.T.,I.A.C., Masako  

SEJIMA1),C.T.,I.A.C., Kayoko HAYASHI1),C.T.,I.A.C., Masako  

OHMORI2),M.D. Department of Pathology, Kurashiki Medical Center1) Department of Pathology, Okayama University Hospital2)   論文別印請求先 〒710-8522 岡山県倉敷市白楽町250       倉敷成人病センター 病理診断科       高田 由貴

(27)

写真1.卵巣のCT画像.左右ともに3cm大と軽度の腫大を認めた. 写真2.内膜細胞がシート状集塊で出現している. それらの細胞には,異型などは認められなかった. (Pap染色 対物40) 写真3.A:正常内膜細胞の周囲に異型細胞がみられた. (Pap染色 対物40) 写真3.B:異型細胞が小集塊や散在性に出現していた. (Pap染色 対物40)

(28)

25 VOL. 33 2014 Ⅳ.組 織 所 見 胃体部及び胃小弯からの生検では,粘膜内印環細胞 癌を含む低分化腺癌が存在した(写真6).アルシア ンブルー染色とPAS反応を行ったところ,どちらも陽 性を示した.また,D-PAS反応も陽性所見を呈した. 免 疫 染 色 で は,CK7,MUC1,GCDFP-15は 陽 性, CK20,MUC2,MUC5AC,MUC6,mammaglobin, E-cadherin,ER,PgRは陰性であった.内膜のセルブ ロックでも同様の結果を示した. Ⅴ.考   察 内膜に印環細胞が出現し,胃癌発見の契機になった 症例を経験した.免疫染色の結果,内膜細胞診,胃粘 膜生検いずれもCK7陽性,CK20陰性,GCDFP-15陽 性を示した.GCDFP-15は,乳腺浸潤性小葉癌の印環 細胞型で90%陽性を示し乳癌で陽性率が高いが,胃の 印環細胞癌でも5%の症例で陽性になることが報告さ れている1).本症例ではMUC1陽性,MUC5A, MUC6 陰性を示したこと,乳腺浸潤性小葉癌の消化管への転 移の頻度は低くないこと2)より乳癌原発の可能性を考 慮した.外科に乳腺精査を依頼し,乳腺エコー,マン モグラフィーやPETなどで一年以上経過観察を行っ たが,乳腺に原発巣となりうる病変や腋下リンパ節腫 大は認められなかった.一方,胃壁のスキルス様肥厚, 腹腔内リンパ節腫大など臨床的には胃癌として矛盾の な い 所 見 で あ っ た. 以 上 の こ と か ら 胃 原 発 の Krukenberg腫瘍という診断に至った. その他の鑑別診断として組織球や子宮・卵巣原発腫 瘍 と し て,signet-ring stromal tumor,mucinous  carcinoid,mucinous adenocarcinoma, signet-ring cell  variantを考えた.印環細胞癌と組織球の鑑別は,印 環細胞癌ではN/C比が高く核異型やクロマチン増量, 核小体腫大が著明に認められるが,組織球ではこのよ うな所見は認められない. Signet-ring stromal tumorでは,細胞質の空胞化し た印環細胞類似の細胞が多数出現することがある.こ れらの印環細胞類似細胞では細胞質内にPAS陽性粘液 は認められないことから否定的である3).Mucinous  carcinoidは,印環細胞様形態を呈する場合がある4)が, 本 症 例 で はsynaptophysin,chromogranin A,CD56 など神経内分泌マーカーは陰性を示したため鑑別がで きる.画像検査より子宮には異常が認められなかった. 加えて,本症例は卵巣腫瘍が両側性であること,原発 性 に し て は 卵 巣 腫 瘍 の 大 き さ が 小 さ い こ と も Krukenberg腫瘍として合う所見である3) 写真4.N/C比が高く,核異型やクロマチン増量, 核小体腫大を示す異型細胞がみられた. (Pap染色 対物100) 写真5.粘液により核が圧排された細胞がみられた. (Pap染色 対物100) 写真6.粘膜内印環細胞癌を含む低分化腺癌が存在した. (HE染色 対物40)

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Ⅴ.結   語 臨床情報が少ない状況で子宮内膜細胞診にて,胃原 発の印環細胞癌の発見ができた貴重な症例であった. 内膜に印環細胞が出現した場合,胃をはじめ他臓器か らの転移を視野に入れ報告,検索する必要がある.ま た,内膜の構造異型にばかり着目すると見落とす危険 性があるので慎重にスクリーニングする必要がある. 文   献 1) 深山正久,梅村しのぶ,大橋健一,黒田 誠,坂元亨宇, 森永正二郎.診断に役立つ免疫組織化学.病理と臨床臨時 増刊号Vol.25.文光堂.東京:2007;180-181  2) 岩田輝男,森田 勝,仲田庄志,菅谷将一,小野憲司,花 桐武志・ほか.広範な消化管転移を認めた乳腺浸潤性小葉 癌の1例.日消外会誌2005;38:1357-1362 3) 本山悌一,坂本穆彦.腫瘍病理鑑別診断アトラス卵巣腫瘍. 文光堂.東京:2012;204-207 4) 宮地 徹,森脇昭介,桜井幹己.産婦人科病理学診断図鑑. 杏林書院.東京:1981;473

(30)

27

症  例

 岡山県臨床細胞学会 Ⅰ.は じ め に 乳 腺 浸 潤 性 微 小 乳 頭 癌(invasive micropapillary  carcinoma,以下IMPC)は浸潤性乳癌の特殊型に分 類される.今回,男性乳腺に発症したIMPCを経験し たので報告する. Ⅱ.症   例 70歳代男性.胃潰瘍で胃部分切除,間質性肺炎の既 往あり.以前より,女性化乳房を指摘されていた.左 乳房しこりの増大が顕著になったため,当院受診され た.エコー検査では,左乳房E領域に分葉形で,境界 は明瞭,内部エコーは不均一で,嚢胞状の腫瘤が認め られた(写真1).CT検査にて4.7×3.8cmの腫瘤を認 め,マンモグラフィーではカテゴリー4とされた.穿 刺吸引細胞診では「悪性の疑い」とされた.その後, センチネルリンパ節の術中迅速診断,乳房全摘,腋窩 リンパ節廓清が施行された.  背景 乳腺浸潤性微小乳頭癌(invasive micropapillary carcinoma,以下IMPC)は浸潤性乳癌の特 殊型に分類され,高頻度のリンパ節転移がある予後不良な組織型とされる.今回,男性乳腺に発症し たIMPCを経験したので報告する.  症例 70歳代男性.以前より女性化乳房を指摘されていた.左乳房しこりの増大が顕著になったた め当院紹介受診された.穿刺吸引細胞診では,血液成分やヘモジデリンを貪食したマクロファージが 多く,嚢胞状を考える背景に,辺縁が結合性の緩いシート状や重積した集塊を多数認めた.集塊を形 成する細胞はN/C比の低い小型類円形核をもち,軽度の大小不同を伴い,クロマチンは細顆粒状であっ た.また,少数であるが辺縁が細胞質で縁取られた小型球状集塊もみられた.乳房切除標本の腫瘍組 織像は中〜高度の核異型を示す腫瘍細胞が,血管茎を伴わない小さな乳頭状の癌巣を多数形成し micropapillaryパターンを示し浸潤増殖した部分が優位であった.一部浸潤性乳管癌や嚢胞内乳頭癌 などの成分を認め,組織型はIMPCと診断された.  結論 本例では術前の組織型推定は困難であったが,特徴的な集塊が少数でも発見された場合は臨 床に報告する必要があると考えられた.  Key words:Male breast carcinoma,Aspiration cytology,Invasive micropapillary carcinoma  

70歳代男性に発症した乳腺浸潤性微小乳頭癌の一例

増田 雅史,齋藤 利江子,林  栄子,林  敦志,小原 明子,

高橋 友香,大原 信哉

岡山赤十字病院病理部病理診断科 Masafumi MASUDA,M.T., Rieko SAITOU,C.T.,I.A.C., Eiko  HAYASHI,C.T.,I.A.C. Atsushi HAYASHI,C.T.,I.A.C., Akiko  KOHARA,C.T.,I.A.C., Yuka TAKAHASHI,M.D. Nobuya OHARA,  M.D. Japanese Red Cross Okayama Hospital   論文別冊請求先:〒700-8607 岡山市北区青江2-1-1       岡山赤十字病院病理部病理診断科       増田 雅史 (写真1) エコー画像:左乳房領域に境界明瞭な嚢胞状腫瘤がみられる

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平成3