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Microsoft Word - 第10回 物権法 - 二重譲渡論[第2版].docx

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2018/06/18 民法入門・第 10 回

物権法 − 二重譲渡論

吉原知志 [email protected] https://yoshiharacivillaw.wordpress.com/

0.今日は何を勉強するの? - 復習と今日のテーマ

・権利は移転することができる。しかし、権利は目に見えないので、「私Y は X から権利を譲り受けた!」と主張しても、そのままではそれが本当かわからな い。Z が Y が権利者だと信じて Y と取引してみたら Y は無権利者だったとい うのでは、安心して物を買うことができない。誰でもこのような Z になりう るというのでは、経済取引は安全感を欠いて大幅に縮小してしまう。本日は、 権利の移転に関する技術的な解釈問題を見ていきたい。 (1) パターンⅠ:善意の第三者の保護 (2) パターンⅡ:対抗要件制度による解決 キーワード:第三者、対抗問題

Ⅰ.【パターンⅠ】流通の途中でつっかえたケース

X

Y

Z

土地甲

売買契約 売買契約 所有権の移転 所有権の移転 無効・取消し 債権法の世界 物権法の世界

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(1)「何人も自己がもつ以上のものを与えることはできない」 ・民法 176 条は、所有権の移転は意思表示(契約)のみによってできると定め ていた。これは、Z が所有権を取得するためには、それまでの流通過程での譲渡 (…→X→Y→Z)が全て有効であることを要する、ということを意味する。 ケース1 以下の話で、スタートは全てX が土地甲の所有者である。 (1) X は借金を重ね、甲を差し押さえられてしまうことを嫌がり、友人の A と通 謀して甲を借金取りから隠すために A に登記を移転してしまった。しかし、A は登記が移ってきたのをいいことに、X を裏切って、事情を知らない Y に所有 者のふりをして甲を売却してしまった。〔94 条 2 項;虚偽表示の第三者〕 (2) X は、A に「この土地には不発弾が埋まっている。私に譲渡してしまいなさ い。」と言われて驚き、A に安い値段で甲を譲渡してしまった。後で X は A に騙 されたことに気づき、契約を取り消したが、A は事情を知らない Y に甲を売却 してしまっていた。〔96 条 3 項;詐欺の第三者〕 (3) X は、A に甲を売ったが、代金支払期日までに A は代金を支払わなかった。 そこで、X は A に催告した上で売買契約を解除した(541 条)。しかし、A は解 除される前に既にY に甲を売ってしまっていた。〔545 条 1 項ただし書;解除の 第三者〕 それぞれ、甲の所有者のままであると考える X が、同じく甲の所有者と考え るY に対して甲の所有権確認請求をした。 ・(1)虚偽表示の効果は、意思表示の無効である(94 条 1 項)。無効は法的に最 初から何もなかったことを意味するので、所有権移転の根拠となる意思表示 もなかったこととなり、X は相変わらず甲の所有者のままである。

- 「何人も自己がもつ以上のものを与えることはできない Nemo plus iuris ad alium transferre potest, quam ipse habet.」:所有者でない A は、Y に所 有権を与えることはできない。当たり前のことを言い表したローマの法格言。

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れれば遡及的に意思表示は無効(遡及効)となる(121 条)。(3)債務不履行の 効果には解除権の付与があり、解除権行使によって契約はなかったことにな る。つまり、いずれの事例も、Y に所有権が移る前段階の X→A の所有権移転 がなかったことになるので、Y は所有権を取得できないことになる。 (2)善意の第三者の保護 ・しかし、XA 間の事情を知らない(善意の)Y からは、納得のいく帰結ではな い。前主ぜ ん し ゅの抱えるトラブルによって安易に所有権の取得が覆されては取引の 安全が害されるので、民法は第三者保護規定を置いてY を保護している。 ☆第三者 このように、XA 間を当事者とする法律関係に対して、自らの法 的な地位が依存している者Y を法律学では「第三者」(当事者2人に対して 3人目の登場人物)と呼んでいる。 ☆対抗 94 条 2 項は、「無効は、善意の第三者に対抗することができない」 と書いている。「対抗」という言葉には、次のような配慮がある。XA 間の売 買契約は無効であってこの評価は動かない。しかし、善意の第三者 Y は、 XA 間の契約が有効でないと困る。このように一定の法律効果(ここでは契 約が無効であること)について利害関係が矛盾する者(ここでは第三者 Y) に対してその法律効果を主張できない場合、「対抗できない」と表現する。 したがって、Y の方から XA 間の契約は無効だと認めてしまうことは可能で ある。 発展 条文を見比べると、(3)解除の場面では善意は要求されていない。これは、虚偽表示や詐欺の 場面であれば、事情を知っていればそもそもそれに利害関係をもつべきでないが、解除は、解除権が 行使されるかは X の気分次第であって、解除原因(債務不履行)があることを知っているだけで権 利取得を否定する必要はないからである。端的に、X が勝手に行う解除で Y を害してはならないと する考え方がここにはある。 (3)見えないものを見えるようにする努力 - 不動産登記制度 ・そもそも Y が、A が所有者であると間違えたのは、権利の所在が目に見えな いからである。不動産については不動産登記簿があり、現在の不動産所有者が 誰であるかを見えるように配慮されている。

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・不動産登記簿は、一つ一つの不動産ごとに物理的状況を表示した表題部と、権 利関係を表示した権利部から構成される(資料頁参照)。権利部はさらに①「甲 区(所有権に関する登記)」と②「乙区(所有権以外の権利に関する登記)」に 分かれており、①を見れば今の所有者が誰であるかは見てわかる。 → このように日本の不動産登記簿は物ごとに権利関係を表示するので物的 編成主義と呼ばれる(権利者単位で権利の取得・譲渡の経緯をまとめていく人 的編成主義と呼ばれるやり方もある)。 ・所有権を移転したことを表示するためにはどのようにするか。権利に関する 登記の申請は、登記権利者と登記義務者が共同してしなければならない(共同 申請主義:不動産登記法 60 条)。登記されることで不利益を受けるのが登記 義務者、利益を受けるのが登記権利者である。登記義務者が共同申請に応じな い場合は、登記請求権に基づいて訴えて勝訴判決を得て、判決による登記を申 請すればよい(63 条)。 注意! ここからわかるように、権利の移転が登記されるのは、当事者が申 請した場合のみである。ケース1のようにX→A の譲渡が(1)無効だったり(2) 取り消されたり(3)解除されたりした場合も、自動的に A から X に移転登記が されるのではなく、X が登記を戻すために申請をしなければならない。このた め、A に所有権がないのに登記だけ残っていて、Y がこれを信用してしまう状 況が生じる。 ・税金、手数料、手間の関係で共同申請が滞ることが多い。そのような場合には、 仮登記をしておくことが有用である。仮登記をしておけば、後で本登記をする ことで、仮登記時点での順位を保全することができる(順位保全効:106 条)。 仮登記をすることができるのは、登記原因となる権利移転の効力が既に生じ ているが書類など手続の準備が整わない場合か(1 号仮登記)、権利移転の効 力がこれから発生する場合(2 号仮登記)である(105 条)。 (4)登記への信頼ではだめなのか? ・善意の第三者保護規定で保護しているのは、第三者 Y の XA 間の契約が有効 であること(問題がないこと)への信頼である。XA 間の契約が無効であるこ

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とをY に対抗できないことの結果として、Y が所有者になったにすぎない。 頭の片隅に 法律学では、頻繁に「善意」「悪意」の問題が登場する。その度に気をつけ てほしいのは、「何に対する認識か」ということ。 ・せっかく登記制度があるならば、登記を信用して取引をした者は所有権を取 得する(このような取得方法を善意取得と呼ぶ)と定めておけばよさそうであ る。しかし、日本の民法はそうしていない。登記を信頼して譲渡を受けた者は 所有権を取得できるとする登記の効力を公信力と呼ぶが、日本の民法では登 記の公信力を認めていない。 ・登記に公信力を認めれば不動産取引が簡単になりそうだが、その分、第三者Y が善意取得してしまうことで、本来の所有者 X は所有権を奪われてしまうこ とになる。このような重大な効果を認めるためには、不動産登記簿がある程度 正確に所有権の所在を反映している必要がある。しかし、日本では不動産所有 権は意思表示で簡単に移転することができ、登記の移転は所有権移転の要件 とはされていないので、日本の不動産登記簿は正確性が法的に担保されてい ない。 参考 登記の公信力を明文の規定(独民892 条)を置いて認めるドイツ法では、そもそも不動産所有権 の移転方法が日本と異なる(後で解説)。ドイツでは、基本的に登記を移転しないと所有権も移転しない 仕組みになっている。 (5)94 条 2 項の類推適用とその限界 ・結局、A に所有権が移ってきていると信じた Y が保護されるためには、94 条 2 項その他ケース1で見た条文に該当する必要がある。しかし、これらの条文 も適用範囲はそれほど広くない。 ケース2-1 A は、交際していた X の実印を勝手に持ち出して土地甲の登記を自分に移して しまった。その後、X は、A の勝手な行動に気付き怒ったが、結局めんどうくさ いので登記を戻さないでいた。さらにその後、A はお金に困り、事情を知らない Y に甲を売却してしまった。X は Y から甲を返してもらえるか。

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→ ケース2-1 では、X は何も意思表示をしていない。ぱっと見、ケース1(1) の事案に似ているが、X は何もしていないので、虚偽「表示」すらなく、X か ら所有権は微動だにしていないはずである。 ・しかし、① A に所有権移転登記があることから、Y が XA 間で有効に甲の所 有権移転がされたと信じてしまった信頼があることは、ケース1(1)と変わら ない。さらに、② X は、意思表示はしていないとはいえ、A に残った登記を そのまま放置しており、X には帰責性がある。この①②の事情は虚偽表示がさ れたのと共通の事情といえる。そこで、判例(最判昭和45 年 9 月 22 日民集 24 巻 10 号 1424 頁[百選Ⅰ21 事件])は、このようなケースで 94 条 2 項を 類推適用して、Y は有効に所有権を取得できるとした。 → 「94 条 2 項の類推適用」を駆使すれば、実質的に登記に公信力を認めたの と同じ状況を実現できるのではないか? ケース2-2 不動産業者A は、X との間で A の代金支払いと引換えに土地甲を譲渡する契約 を締結した。A は、X に「譲渡には地目変更の手続が必要」と言いくるめて甲の 権利証、白紙委任状、印鑑登録証明書を交付させた。A は、これらの書類を用い て代金を支払わないまま甲の移転登記手続を果たし、A に所有権があると信頼 したY に甲を譲渡してしまった。X は Y から甲を返してもらえるか。 ・最高裁は、ケース2-2 のような事例で、Y の保護を否定した(最判平成 15 年 6 月 13 日判時 1831 号 99 頁)。Y が A の登記を信頼した点(①)はケース1 (1)・ケース2-1 と変わらないが、X の帰責性(②)を見ると、騙されて書類 を渡しただけの本件では A を所有者とする外観作出への寄与がそれほど強か ったわけではない。最高裁は、このような X についてまで所有権の剥奪を認 めることは酷だと判断した。 → やはり登記の公信力はやすやすと認められるものではない。 ☆ 類推適用の方法について、必ず第4回のレジュメを確認!!!

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Ⅱ.【パターンⅡ】二重譲渡

ケース3 A は、土地甲の所有者である。X は土地甲をほしいと考え、A に購入の話を持ち かけ、売買契約が成立した。しかし、X が移転登記手続をしないまま放置してい たところ、Y が土地甲を購入しようと考え、A に面会を求めた。Y は、登記がま だA に残っていることに気付き、A に X より高い代金で働きかけ、結局 A は Y とも売買契約を締結し、登記を Y に移してしまった。X は、既に甲に建物を建 てて住み始めていて、そろそろ登記を移そうと考えていたところだった。 X の Y に対する所有権確認請求は認められるか。 (1)問題の所在 - 対抗要件制度の必要性 ・A は X に所有権を移転した。民法 176 条は意思表示のみによって所有権が移 転するとしているから、X は所有者となる。しかし、X が登記しないままでい ると、外からは所有者が変わったことはわからない。第三者Y がまだ A に所 有権があると考えてA と交渉してしまう可能性がある。そこで、民法 177 条 は、X は登記を備えない限り第三者に対して自らの所有権取得を対抗できな いとした。 ・民法176 条と 177 条を合わせて、意思主義+対抗要件主義システムと呼ばれ る。これは一見してわかりにくく、登記の移転によって所有権が移転する形式 主義の方が簡明にも思える。ドイツ法は形式主義を採る。日本民法の起草者 は、古くからの日本の不動産譲渡の慣行を重視し、フランス法の意思主義+対 抗要件主義を採用した。

A

X

Y

売買契約① 売買契約② 所有権の移転① 所有権の移転②? 登記

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所有権の移転方法 登記の意義 フランス法 意思主義 対抗要件主義 ドイツ法 形式主義 効力要件主義 (2)物権と債権のことわり- 二重契約は OK、されど所有権は1つ… ・変な話だが、「A と X の売買契約」、「A と Y の売買契約」は両立する。A が X と Y それぞれに対して「甲を移転する債務」を負うだけであり、A がどちら かに履行すれば、もう片方が履行不能となって損害賠償の問題となる。 発展1 日本の民法は、A が甲の所有権をもっていなくても「甲を売る契約」を結べることを前提に している。560 条が「他人物売買」を規定しており、売主は真の所有者から所有権を調達してきて買 主に渡す義務を負う。 発展 2 二重契約は、一つの物をめぐって争う場面以外でも生じる。例えば、タレントが同じ時間の 番組収録に出演する契約を 2 つのテレビ局とした場合。どちらかに出演すればどちらかには出演で きないが、これも契約が無効になるのではなく、出演できなかった方の損害賠償の問題となる。 ・しかし、所有権は一物一権原則で甲につき 1 つしか成り立たないから、A か ら譲り受けた者はX か Y かいずれかのみである。この決着をつけるのが対抗 要件制度ということになる。すなわち、先に登記を備えた者が自らの所有権取 得を第三者に対抗できるのである(本件ではY)。 発展 ちなみに、いい加減な契約をしてしまった結果、売ってしまって自分の物でないはずの甲につ いてX か Y に損をさせてしまった A は、横領罪という刑事犯にはなる。刑法各論Ⅰで少し触れる。 (3)177 条のふしぎ ・ここまでの説明をふりかえってみて、よく考えてほしい。同じ A から所有権 移転を受けたX と Y のうち先に登記を具備した方が勝つというが、ケース3 を見ると、まずAX 間で売買契約(第一契約)が結ばれ、次に AY 間で売買契 約(第二契約)が結ばれている。176 条の意思主義の原則からすれば、第一契 約で所有権はX に移転しており、第二契約の時点では A は無権利者ではない か。無権利者から所有権を譲り受けることはできないのではないか。

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●不完全物権変動説(我妻栄) 不動産物権変動は、登記が具備されるまで完全ではなく、第一譲渡は、第二 条との登記が具備されることで無効に確定する。 〔批判〕登記を所有権移転の要件と解するのは形式主義となる。 ●否認説(石田文次郎、末弘厳太郎、舟橋諄一) 第一譲渡は有効だが、177 条は第三者が登記を具備することで第一譲渡の 効力を否認する権利を認めた規定と解釈する。 〔批判〕第二譲渡は、第一譲渡を認識してされるとは限らないので、否認権 が行使されないまま Y が所有者となり、177 条の理解と矛盾する。 ●法定効果説(鈴木禄弥) 177 条は、第一譲受人に登記を促すことを目的とした規定であり、それ以上 の説明は不要である。 〔批判〕法解釈学の役割は、妥当な結論を法的構成によって論理的に根拠付 けるところにある。法定効果説では説明の放棄となる。 ●公信力説(篠塚昭次、半田正夫、石田喜久夫、米倉明) 177 条は、登記の公信力を定めた条文と解釈する。第二譲受人が甲を善意取 得することで、第一譲渡は無効となる。 〔批判〕177 条は第三者の善意・悪意を不問としている。日本民法に登記 の公信力を定めた条文はない。 (4)177 条の限定解釈の必要性 - 背信的悪意者排除説 ・177 条の性質をどのように説明するにしても、法定効果説が指摘するように 177 条が登記を怠った X への制裁として先に登記を具備した Y を勝たせる規 定であることは間違いない(自由競争論)。 ・しかし、第一譲渡によって原則として X に所有権は移転しているのであり、 このことを知らないままA と第二契約を結んだ Y であれば確かに保護に値す るが、知ってわざわざ第二契約を結びにきたY まで保護する必要があるのか。 177 条は第三者の主観的要件を定めていないので、そのままでは悪意の Y ま で保護されることになる。 ← 公信力説のねらい。

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・判例は、当初は 177 条の文言を素直に(善意・悪意を問わず)淡々と適用し ていた(善意悪意不問説)。しかし、議論の進展を受けて明治の判例(大連判 明治41 年 12 月 15 日民録 14 輯 1301 頁)以来認められていた「登記の欠缺 を主張するにつき正当な利益を有しない第三者」を次第に拡大させていく。 ・しかし、善意悪意不問説の論者たちは、次のように反論した。177 条は、立法 の手違いで悪意者を排除しなかったのではなく、あえて悪意者でも所有権を 取得する道を拓いた規定である。なぜなら、177 条の基礎にあるのは自由競争 の論理であって、所有権を取得した者は先に登記を得るべく努力すればよい のである、と。 ・議論が進展を見せた結果、最高裁判所は、昭和40 年代に背信的悪意者排除説 を採用した(嚆矢は、最判昭和40 年 12 月 21 日民集 19 巻 9 号 2221 頁)。こ れは、単に第一契約の存在を知っているだけの Y は排除せず、悪意に加えて 信義則に反するような態様で第二契約を締結した者を第三者から排除する、 との法理である。 参考 判例に決定的な影響を与えたのは、物権法の権威であった舟橋諄一の2度の改 説である。舟橋は、善意悪意不問説から、悪意者を原則として排除しつつ例外的に信 義則に反する者を排除する説、そして最後に背信的悪意者排除説を導いた(『物権法』 183-184 頁)。 (5)学説のさらなる展開 ・判例の背信的悪意者排除説に対しては、単なる悪意と背信的悪意の区別が難 しく判断基準として機能していないとの批判があり、さらにそもそも 177 条 の説明も放置されたままであったため、学説はさらに 177 条の理解を深めて いる。 ・時間があれば… 近時の判例は、背信的悪意者の枠組みは維持しつつ、一見し て「悪意」とは言えないような事案にまで「背信的悪意者」概念を適用してい る(最判平成10 年 2 月 13 日民集 52 巻 1 号 65 頁[百選Ⅰ63 事件]、最判平 成18 年 1 月 17 日民集 60 巻 1 号 27 頁[百選Ⅰ60 事件])。

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