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Computer Simulation in Thermoplastic Injection Molding Takaaki Matsuoka Toyota Central Research and Development Laboratories, Inc. 41-1, Yokomichi, Na

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NIHON REOROJI GAKKAISHI Vol.23, No.4, 207∼216(1995) (c)1995The Society of Rheology, Japan

有功賞受賞講演

Computer Simulation

in Thermoplastic

Injection Molding

Takaaki

Matsuoka

*

Toyota Central Research and Development Laboratories, Inc.

41-1, Yokomichi, Nagakute, Aichi 480-11, Japan

A package of computer programs has been developed for CAE (Computer Aided Engineering) in the

injection molding of thermoplastics.

It consists of mold cooling, polymer melt flow, fiber orientation,

material properties, and stress analysis programs for 3 dimensional thin walled molded parts. They

are integrated by using a common geometric model and are used to predict the quality of molds and

molded parts at the stage of design. This article summarizes the theory and verified results of the

polymer melt flow, fiber orientation, and material properties analyses associated with rheology.

Key Words: Computer simulation/Thermoplastic

injection molding/Polymer melt flow/

Fiber orientation/Material

properties

樹 脂 射 出 成 形 の コ ン ピ ュ ー タ ー シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に 関 す る 研 究

松 岡 孝 明*

(原 稿 受 理:1995年9月14日)

1.緒 言

射 出 成 形CAE(Computer Aided Engineering)は,樹 脂 射 出 成 形分 野 に お い て 製 品 お よび 金 型 の 設 計 段 階 で コ ン ピ ュー タ ー シ ミュ レー シ ョ ンを行 う こ とに よ り,不 具 合 を 予 測 し,対 策 し, 形 状や 成 形 条件 の 最 適 化 を 図 ろ う とす る技術 で,今 や,そ の 有 用 性 は広 く認 め られ て い る.射 出成 形 分 野 に お け る コ ン ピ ュ ー タ ー シ ミュ レー シ ョ ンは,樹 脂 流 動 解 析 か ら始 ま り,1970年 の HarryとParrottに よ る平 板 キ ャ ビ テ ィの 充 て ん 解 析 が 最 初 で あ る1).彼 らは,非 ニ ュ ー トン流 体 の 一 次 元 非 等 温 樹 脂 流 動 を 運 動,連 続,エ ネ ル ギ ー 方 程 式 を 連 立 して 数 値 解 析 した.そ の 後 多 くの研 究 者 に よ っ て半 円 板 キ ャ ビテ ィ2),中 心 ゲ ー トの 円板 キ ャ ビテ ィ3)4),矩 形 キ ャ ビテ ィ5),ホ ッ トラ ンナ ー と コ ール ドラ ンナ ー6)η が 解 析 され た.こ れ まで は一一次 元 の 解 析 で あ る. さ らに,二 次 元 の 複 雑 な キ ャ ビテ ィ形 状 で メル トフ ロ ン トの 進 展 を 含 む樹 脂 流 動 の 解 析 にFAN(Flow Analysis Network)

法8)9),有 限 要 素 法10),コ ン トロ ール ボ リュ ー ム法11)が 適 用 され,実 用 的 な 解 析 が 可 能 に な っ た.樹 脂 流 動 解 析 に 続 い て, 1981年 に は,流 線 に 沿 ってJeffery式 を 積 分 す る こ と に よ り射 出成 形 品 の 繊 維 配 向解 析 が 行 わ れ た12).ま た,速 度 こ う 配 テ ン ソル か ら繊 維 の 向 きが 直 接 に 計 算 され た13). 我 々 は1976年 に 射 出成 形 解 析 の 研 究 に 着 手 し,平 面 展 開 法 に よ りFAN法 を 拡 張 して 三 次 元 形 状 キ ャ ビテ ィを扱 う こ との で き る射 出 成 形 樹 脂 流 動 解 析 プ ロ グ ラ ム を 開発 し,実 用 化 し た 14).そ の後,充 てん不 良 だけでな く,成 形品の そ りな ど品質 面 での 解 析 が 射 出成 形CAEに 求 め られ る よ う にな った.そ こ で は,樹 脂 流 動 解 析 だ け で な く射 出 成 形 プ ロセ ス全 般 にわ た り, 流 動,熱,応 力 な ど広 範 囲 な シ ミュ レー シ ョンが 必 要 にな った. そ こ で,我 々は,平 面 展 開FAN法 に よ る樹 脂 流 動 解 析 を 第 一 世 代 とす れ ば,続 い て第 二 世 代 の 射 出 成 形CAEと して 新 た な 統 合 射 出成 形解 析 プ ロ グ ラ ム群 を 開発 した15).開 発 プ ロ グ ラ ム はFig.1に 示 す よ う に,金 型 冷 却,樹 脂 流 動,繊 維 配 向,材 料 物 性,応 力 そ りの 解 析 プ ロ グ ラム が 一 連 の デ ー タ フ ロ ー を も って 統 合 され,射 出成 形 に まつ わ る,金 型 の 冷 却 ア ンバ ラ ンス, *株式会社豊 田中央研 究所 〒480-11愛 知県愛知郡長 久手町大字長湫字横道41-1

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208 日 本 レ オ ロ ジ ー 学 会 誌 Vol.23 ラ ンナ ー シス テ ム の 流 動 ア ンバ ラ ン ス,シ ョー トシ ョ ッ ト,ウ ェル ド,繊 維 配 向,材 料 物 性 の 異 方 性,成 形 品 の そ りな ど を 予 測 で き る機 能 を 有 して い る. ここ で は,第 二 世 代 の 射 出成 形CAEの 中か ら レオ ロ ジ ー に 深 く関 連 す る充 て ん ・保 圧 過 程 の 樹 脂 流 動 解 析16),繊 維 配 向 解 析17),材 料 物 性 解 析18)に つ い て ま とめ た. 2.樹 脂 流 動 解 析 2・1解 析 対 象 射 出 成 形 過 程 に お け る典 型 的な キ ャ ビ テ ィ内 の 樹 脂 圧 力 の 波 形 をFig.2に 示 す.樹 脂 圧 力 は,充 て ん に よ り樹 脂 が 到 達 した 時 点 で 立 ち上 が り,充 て ん が 進 む と と も に 上 昇 す る.充 て ん が 完 了 す る と保圧 過 程 に 入 り,圧 縮 に よ り樹 脂 圧 力 は急 上 昇 す る. 樹脂 圧 力 は 最 大 に達 した 後,徐 々 に 低 下 す る もの の 高 圧 に ほ ぼ 保 た れ る.こ の 間 に 冷 却 に よ る樹 脂 収 縮 を補 う樹 脂 流 れ が 生 じ て い る.そ の 後,ゲ ー トが 固化 す る こ と(ゲ ー トシー ル)に よ り樹 脂 が キ ャ ビ テ ィに補 充 され な くな り,樹 脂 圧 力 は 減 少 して 0に な る.こ こで は,充 てん が 完 了 す る ま で を 充 て ん 解 析,充 て ん 完 了後 に 樹 脂 圧 力 が 急 上 昇 し始 め て か ら0に な る まで を 保 圧 解析 とす る. 解析 対 象 は,実 際 の 金 型 に多 く見 られ る 円 管 な どの ラ ンナ ー シス テ ム と薄 肉の 三 次 元 形 状 キ ャ ビテ ィで あ る.ラ ン ナ ー シ ス テ ム は,一 次 元 流 れ で キ ャ ビ テ ィの 理 論 を さ ら に簡 単 化 した も の に な るの で,こ こ で は 主 にキ ャ ビテ ィの 二 次 元 流 れ につ い て の 理 論 を 述 べ る.キ ャ ビテ ィ内 の樹 脂 挙 動 は,Fig.3に 示 す よ う にX-Y-Zの 全 体 直 交 座 標 系 で 定 義 され る三 次 元 空 間 でx -y-zの 局 所 直 交座 標 系 で定 義 され る 狭 い す き 間Hの 平 板 間 に お け る非 ニ ュ ー トン流 体 の 非 等 温Hele-Shaw流 れ で あ る とす る.流 れ と してx―y方 向 の 平 面 流 れ を 考 え る.S軸 は そ れ ら を 合 成 した 流れ 方 向 で あ る. 2-2理 論 解 析 で は,以 下 の こ とを 仮 定 す る. (1)慣性 力 と重 力 は 粘 性力 に 比 べ 十 分 に 小 さ い の で 無 視 す る. (2)すき 間 は 十 分 に 狭 いの で 厚 さ方 向 の 流 れ は 無 視 す る. (3)すき 間 は 十 分 に 狭 いの で 流 れ 方 向 の 熱 伝 導 は 無 視 す る. (4)壁面 で の 滑 りは な い も の とす る. (5)樹脂 の 熱 物 性 値 は温 度 に よ らず 一 定 とす る. 成 形 品を 構 成す る任 意 の 平 板 間 の 樹 脂 流 れ は,z軸 を 厚 さ方 向 に 定 め たx-y-zの 局 所 直 交座 標 系 に お い て,以 下 の 運 動 の 式,連 続 の 式,エ ネ ル ギ ー の 式 で 記 述 され る. (1)

(2)

(3)

(4)

こ こ で,Pは 圧 力,τ は せ ん 断 応 力,tは 時 間,uは 速 度, T

Fig.1 Integrated injection molding analysis programs.

Fig.2 Schematic representation of a pressure profile in the cavity during injection molding.

(3)

は 温 度sは 流 れ 方 向 で あ る.材 料 物 性 値 と して,ρ は 密 度 kは 熱 伝 導 率,〃 は 粘 度Cpは 比 熱 で あ る. 2・2・1充 て ん 解 析 充 て ん 解 析 に お い て は,充 てん 中 の 流 れ は 十 分 に発 達 して お り非圧 縮 性 の 準 定 常 流れ で あ る とす る.非 圧 縮 性 で あ るの で 密 度 は一 定 に な り,連 続 の 式(3)は 次 式 に 置 き換 え られ る.

(5)

こ こで,qは 流 量 で あ る.流 量 は 運 動 の 式 を 厚 さ方 向 に 積 分 し て 次 式 で 得 られ る. (6) (7) 4は,次 式 で 定 義 され る等 価 ニ ュ ー トン粘 度19)で あ る.

(8)

こ こで,τwは 固化 層 と 溶 融 層 の 界 面 に お け るせ ん 断 応 力,γ はせ ん 断 速 度(γ=∂us/∂z)で あ る.こ れ らを 式(5)に 代 入 して次 式 を 得 る.

(9)

こ こで,0は 次 式 で 表 され る 定 数 で あ る.

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hは 平 板 間 の 流 動 域 の 厚 さで あ る。 溶 融樹 脂 の 構 成 方 程 式 と して,指 数 則 ア レニ ウ ス 型 の 粘 度 式 を 用 い る. 10gηa=c1+c21qgγa+c3/(T十273)

(11)

こ こで,〃 。は 見 か けの 粘 度,γaは 見 か け の せ ん 断 速 度c1, C2,C3は 流 動 性 試 験 か ら 求 め られ る粘 度 式 の 係 数 で あ る. 真 の 粘 度 η と真 の せ ん 断 速 度 γは,見 か け の 粘 度 と見 か け の せ ん 断速 度 か ら,Rabinowitsch補 正20)に よ り求 め る. 2・2・2保 圧 解 析

保圧解析 では充てん解析 と異 な り,樹 脂の圧縮性を無視 す る

ことはで きない.連 続 の式 と運動 の式か ら保 圧過程 におけ る樹

脂流れの支 配方程 式は次式 にな る.

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(13)

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Aは 樹 脂 の 圧 縮 を,Rは 冷 却 に よ る樹 脂 の 収 縮 を 表す 項 で あ る. AとRを0に す る と,非 圧 縮 性 の 場 合 に な り,充 て ん 解 析 の 流 れ の 式 と 同 じに な る.保 圧 解 析 は,エ ネ ル ギ ーの 式(4)と 流 れ の 式(12)の 支 配 方 程 式 で 表 され る. 樹 脂 の 状 態 方 程 式 と して,Spencer-Gilmoreの 式 お よびTait の 式が よ く知 られ て い るが,こ れ らの 式 は樹 脂 の 溶 融 か ら固 化 に至 る状 態 を 一 つ の 式 で 表 す こ とが で きな い.そ こで,一 つ の 式 で溶 融 か ら固 化 に至 る状 態 を 表 す た め に 次 の 曲 面 多 項 式 を 用 い る.

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こ こ で,npは 圧 力 の次 数 ηTは 温 度 の 次 数,aijは 曲 面 多 項 式 の 係 数 で あ る.こ の 曲 面 多 項 式 に よ る状 態 式(多 項 状 態 式) を 用 い る と,広 範 囲 の 温 度 域 と圧 力 域 に わ た っ て,密 度 を 一 つ の 式 で な め らか に 表 現 で き る と と も に,式(13)と 式(14)に お け る密 度 の圧 力 微 分 お よび 温 度 微 分 を 容 易 に行 う こ とが で き る. 多 項 状 態 式 の 次 数 は,実 験 的 にPρTの 近 似 値 と測 定 値 との 一 致 の具 合 か ら樹 脂 ご とに 決 め られ るが,経 験 的 に圧 力 につ い て は1次,温 度 につ い て は5次 の 近 似 で 両 者 の 間 に よ い一 致 が 得 られ る.こ の 場 合,12係 数 の 多 項 状 態 式 にな るが,そ の 係 数 は 最 小 自乗 法 に よ って 求 め られ る. 2・3数 値 解 法 流 れ の 支 配 方 程 式 の 数値 解 法 に は有 限 要 素 法 を 用 い た.保 圧 解 析 の 流れ の 支 配 方 程 式(12)(充 てん 解 析 で はAとRを0に す る)に ガ ラ ー キ ン法 を 適 用 す る こ と に よ り有 限要 素 方 程 式 が 得 られ る.式 の 展 開 は 文 献21)に 詳 しい の で こ こで は 省 略 す る. 充 て ん 解 析 に お け る境 界 条 件 は,ラ ン ナ ー シ ス テ ム の 入 口節 点 に射 出 流 量 ま た は 射 出 圧 力 を 規 定 値 と して 与 え る.解 析 初 期 は,流 量 規 定 境 界 で 計算 を 始 め,計 算 され る 射 出圧 力 が 圧 力 規 定 値 を 超 え た 場 合 に,圧 力 規 定 境 界 に 切 り換 え る.メ ル トフ ロ ン トは 大 気 に 接 して い る こ とか ら,メ ル トフ ロ ン トに対 応 す る 節 点圧 力 を0と す る.保 圧 解 析 の 場 合 は,充 て ん 完 了 時 の 圧 力 分 布 と温 度 分布 を 初 期 条 件 と して,保 持 圧 力 を ラ ンナ ー シ ス テ ム の 入 口 節 点 に 圧 力 規 定 の境 界 条 件 と して 与 え る. 式(4)の エ ネ ル ギ ー式 に 対 して ク ラ ン ク ・ニ コ ル ソ ン差 分 法 を 適 用 した.結 晶 性 樹 脂 の 場 合,凝 固 す る 際 に潜 熱 が 生 じ る. 潜 熱 を 考 慮 す るた め に,潜 熱 を 凝 固温 度 の 近 傍 で 比 熱 に 置 き換 え て 計 算 す る等 価 比 熱 法22)を 用 い た. メ ル トフ ロ ン トの 計 算 はFAN法 に準 じて 行 っ た.樹 脂 の 充 てん 状 態 に よ り要 素 は 次 の3種 類 に 分 類 で き る. フ ル 要 素:樹 脂 が 完 全 に 充 満 し て い る要 素(fe=1) フ ロ ン ト要 素:樹 脂 が 一 部 流 入 して い る 要 素(0<fe<1) エ ンプ テ ィ要 素:樹 脂 が 未 充 て ん の 要 素(fe=0) こ こ で,feは 各 要 素 ご と の 充 て ん 率(要 素 に 流 入 して い る樹 脂 の 体 積/要 素 の 体 積)で あ る.フ ロ ン ト要 素 とエ ンプ テ ィ要

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素 の境 に 位 置 す る節 点を フ ロ ン ト節 点 と 定 義 す る.フ ロ ン ト節 点 を結 ぶ 線 が,メ ル トフ ロ ン トに 対 応 す る. 充 て ん 解 析 にお け る メ ル トフ ロ ン トの 進行 は,微 小 体 積 の 粒 子 を 定 義 し,要 素 流 量 に 従 い そ の 粒 子 を 要 素 間 で 移 動 させ,要 素 充 て ん 率 の 変 化 か ら要 素 定 義 を 変 更 す る こ と に よ り行 う.こ こ で,フ ロ ン ト要 素 の 充 て ん 率 が1を 超 え た 時 に,そ の フ ロ ン ト要素 を フ ル 要素 に,隣 接 す る エ ンプ テ ィ要 素 を フ ロ ン ト要 素 に 定 義変 更 す る.新 フ ロ ン ト要 素 の 位 置 に よ り新 た な メル トフ ロ ン ト位 置 が 決 め られ る.エ ンプ テ ィ要 素 か ら フ ロ ン ト要 素 に 定 義 変 更 した場 合 に は,噴 水 流 れ を 考 慮 して,上 流 側 フ ル 要 素 の 中心 温 度 を新 フ ロ ン ト要素 の 初 期 温 度 とす る. 樹 脂 流 動 解 析 の 計 算 フ ロ ー チ ャ ー トをFig.4に 示 す.は じめ に,入 力 デ ー タ と して,成 形 品の 形 状 デ ー タ,成 形条 件,樹 脂 物 性値,金 型温 度 分 布 を 読 み 込 む.充 て ん 解 析 に お い て,適 当 な 等 価 ニ ュー トン粘 度 を 初 期 値 に して,圧 力 分 布 を 求 め る.計 算 され た圧 力 分 布 を も と に,各 要 素 ご と にs方 向 に 対 す る圧 力 こ う配,厚 さ方 向 の せ ん 断 応 力 分 布,粘 度 分布,速 度 分 布,せ ん 断 速 度 分 布,そ して 等 価 ニ ュー トン粘 度 を 順 に 計 算 す る.そ の新 しい等 価 ニ ュー トン粘度 を 用 い て,圧 力 分 布 を 再 計 算 す る. この繰 り返 しを 圧 力 分布 が 変 化 しな くな るま で 実 行 す る.次 に 圧 力 分 布 か ら流 量 を 計算 し,メ ル トフ ロ ン トを 進 行 させ る.新 メル トフ ロ ン ト位 置 に お い て,時 刻 を 進 め,温 度 計 算 を行 う. その 後,再 び 圧 力 計 算 を 行 う.メ ル トフ ロ ン ト計算 温度 計算 圧 力 計算 の 繰 り返 しを 充 て ん が 完 了 す る ま で続 け る.充 てん 完 了 に て,充 てん 解 析 か ら保 圧 解 析 に切 り換 え る.保 圧 解 析 で は, 温 度 密 度,粘 度,圧 力 の 計 算 を 順 に実 行 す る.入 口 の 節 点 を 除 く全 節 点 の 圧 力 が0に な っ た 時 に保 圧 完 了 と して,温 度 場 だ け の 冷 却 解 析 を 行 う.時 刻 が 冷 却 時 間 を 超 え る と冷 却 完 了 と し, 解 析 を終 了 す る. 2・4検 証 2・4・1方 法 ポ リプ ロ ピ レ ン製 リブ 付 き平 板 成 形 品 につ い て,樹 脂 流動 解 析 を 行 い,計 算 結 果 を 実 験 結 果 と比 較 した.リ ブ 付 き 平 板 成 形 品金 型 の 流 路 形 状(キ ャ ビテ ィ,ラ ンナ ー シス テ ム な ど の 形状) と要 素 分 割 図 をFig.5に 示 す.リ ブ 付 き平 板 は,一 辺 が100mm で 板 厚3mmの 正 方 形 の 板 に,高 さ6mm,厚 さ2mmの リブ を4本 平 行 に配 置 した も の で あ る.金 型 は ス プ ル ー,ラ ンナ ー,ゲ ー ト, キ ャ ビテ ィか ら構 成 され て お り,サ イ ドゲ ー トの 一個 取 りで あ る.実 験 で は,シ ョー トシ ョッ ト法 に よ りメ ル トフ ロ ン トを観 察 し,ま た 成 形 中 に 金 型 内 の 樹 脂 圧 力 を 測 定 した.計 算 で は, キ ャ ビテ ィ部 を 三 角 形 要 素 で,ラ ンナ ー シ ス テ ム を線 要 素 で モ デ ル 化 した.全 体 の 要 素 数 は255,節 点数 は158で あ る. 計 算 条 件 をTable 1に ま と め て 示 す.粘 度 デ ー タのL/Rは 流 動 性 試 験 で 用 い た キ ャ ピ ラ リー の 長 さ と半 径 との 比 で あ る.L /R=∞ はL/R=10と40の 測 定結 果 か らBagley法 に よ る管 長 補 正 を 行 っ た 後 の 粘 度 を 表 して い る.ゲ ー トな どの 断 面 急 縮 小 部 で は,入 口圧 力 損 失 を考 慮 す る た め,そ の 要 素 寸 法 に 対す るL/ Rの 粘 度 式 をBagley法 に よ りL/R=10と40の 粘 度 式 か ら補 間 して求 め,そ の 粘 度 式 を 計算 に用 い た.ほ か の 要 素 に つ い て は, L/R=∞,す な わ ち管 長 補 正 後 の 粘 度 式 を用 い た.樹 脂 と金 型 との 間 は 接 触 熱 伝 達 境 界 と して 扱 った.た だ し,充 て ん 解 析 中 は 熱 伝 達 係 数 が 無 限 大,す な わ ち 金 型 表 面 温 度 が 樹 脂 表 面 温 度 と等 しい完 全 接 触 境 界 と した.ゲ ー トシ ー ル は,ゲ ー トの 厚 さ 方 向の 中 心 部 の樹 脂 温 度 が,流 動 停 止 温 度 ま で 低 下 した 時 に発 生 す る もの と した.

Fig.4 Flow chart for the flow analysis.

Fig.5 Schematic representation of the geometry of a 4-ribbed square plate and its finite element model with triangular elements.

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松 岡:樹 脂 射 出 成 形 の コ ン ピ ュ ー タ ー シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に 関 す る 研 究 2・4・2結 果 メル トフ ロ ン ト位 置 の 進 行 に つ い て 計 算結 果 と実 験 結 果 を 比 較 してFig.6に 示 す.上 側 の 図 が 計 算 結 果 で,下 側 が 実 験結 果 で あ る.計 算 結 果 は,充 てん 解 析 で 計 算 した 充 て ん 途 中 の 流 量 分 布 を 矢 印 で 示 して い る(流 量 ベ ク トル 分布 図).矢 印 は 流 れ 方 向 と その 長 さ に よ り流 量 の 大 き さを 表す.図 は矢 印 の 中 心 が 要 素 の 中 心 と一 致 す る よ う に 示 され て い る.そ の ため,ゲ ー ト 付 近 の 矢 印 の一 部 が 平 板 の 外 側 に 出て 表 示 され て い る.メ ル ト フ ロ ン トは ゲ ー トか ら半 円状 に広 が り,側 壁 に 到 達 した 後 は 流 れ 方 向 に ほ ぼ一・様 な 速 度 で 進 む.実 験 結 果 は,射 出時 間 を 短 く して 成 形 した シ ョ ー トシ ョ ッ ト品 の 形 状 を 示 し た もの で あ る. メル トフ ロ ン トの 計 算結 果 は,実 験 結 果 と良 く一 致 して い る. ノズ ル 内 お よ び キ ャ ビテ ィ内樹 脂 圧 力 の 実 験 と計 算 結 果 を そ れ ぞれ 記 号 と実 線 で併 せ てFig.7に 示 す.充 て ん 過 程 お よ び 保 圧 過程 の 初 期 に お け る圧 縮 段 階 か ら圧 力 の 保 持 段 階 を 経 て ゲ ー トシー ル す る まで の 範 囲 で は,計 算 結 果 は実 験 結 果 と定 量 的 に よ く一 致 して い る.ゲ ー トシ ール 時 間 は,実 験 の19sに 対 して 計 算 は15sで あ り,約20%の 誤 差 が あ る.ゲ ー トシ ー ル 時 間 の 計 算 値 が 実 験 値 よ り短 い の は,ゲ ー ト部 の 金 型 温 度 の 設 定 値 が 実 験 と異 な るた め と考 え られ る.金 型 の ゲ ー ト部 は,ゲ ー トよ り厚 肉の ラ ンナ ー とキ ャ ビテ ィに 挟 まれ て い る た め に,ゲ ー ト 部 の 樹 脂 か らの 熱 流 入 だけ で な く,ラ ンナ ー や キ ャ ビテ ィ部 の 樹 脂 か らの 熱 流 入 も加 わ り,ま た,狭 い ゲ ー トを 樹 脂 が通 過 す る際 に 発 生 す る摩 擦 熱 に よ って も ゲ ー ト部が 加 熱 され る た め に 局 所 的 に 高 温 にな る.一 方,計 算 で は 金 型 温 度 一 定 と した た め に,ゲ ー ト部 の 金 型 温 度 が 実 際 よ り低 くな り,ゲ ー ト内の 樹 脂 の 冷 却 が 早 ま っ た も の と思 わ れ る.ゲ ー トシ ー ル 後 の キ ャ ビテ ィ内樹 脂 圧 力 降 下 につ い て は,実 験 結 果 と計 算 結 果 との 間 に 大 きな 差 異 が 見 られ る.樹 脂 圧 力 が 低 下 して0に な る 時 間 は,実 験 に対 して 計 算 が 短 く,こ の差 異 は 結 晶化 度 成 形 時 の 型 開 き, ゲ ー トシー ル 後 の ゲ ー ト内樹 脂 の 固体 移 動 な どが 考 慮 され て い な い ため と考 え られ る.

3.繊 維 配向解析 と材 料物性解 析

3・1解

析対 象

繊 維強化樹脂を射 出成形す ると,樹 脂流動 に よ り繊維が 配向

し,こ の繊維配 向に よって材料物 性に異方 性を もた らされ,成

形 品が変 形 した りす る.し たが って,そ りな どの変形 を予 測す

るため には繊維配 向さ らに材 料物 性の予測が必 要 とな る.こ こ

で は,薄 肉の射 出成形 品を対象 に繊 維配 向の予 測お よび繊 維配

向の 解析結 果に基 づ く成形 品の材 料物 性(線 膨 張率 と弾性率)

Table 1 Input data for flow analysis.

Fig. 6 Calculated and experimental melt fronts.

Fig. 7 Compadson between calcu1ated and experin1elltal pIessllre profi1es for the 4-ribbed square plate.

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212 日 本 レ オ ロ ジ ー 学 会 誌 の 予 測 に つ いて 述 べ る. 固 体 粒 子 を 含 む 液 体 は一 般 に 懸 濁 液 と称 され るが,溶 融 状 態 の 繊 維 強 化 樹 脂 も懸 濁 液 とみ な す こ とが で き,懸 濁液 に 関 す る レオ ロ ジ ーの 理 論 を 繊 維 配 向解 析 に 適 用 す る こ と が で き る.懸 濁 液 の 理 論 に は希 薄 系 と濃 厚 系 とが あ り,希 薄 系 で は 粒 子 間の 相 互 作 用 を 無 視 す る こ とが で き るが,濃 厚系 で は無 視 で き な い. 繊 維 懸 濁 液 の 場合,繊 維 同士 の 衝 突 を 考 慮 して,以 下 の よ う に 分 類 され る. Ff<(d/l)2:希 薄 系 (d/l)2<Ff<(d/l):半 濃 厚 系 Ff>(d/l):濃 厚 系 こ こでF'fは 繊 維 の 体 積 分 率,dは 繊 維 の 直 径,lは 長 さ で あ る.さ て,工 業 的 に用 い られ て い る ガ ラ ス 繊 維 強 化 樹 脂 の 繊 維 含 有 率 は重 量 比(重 量分 率)で10∼45%で あ る.一 般 に 含 有 さ れ て い る繊 維 の 直 径 は 約13μm,長 さは 約250μmで あ る.し た が って,体 積 分 率 が0.25%以 下 で は希 薄 系,5.20%以 上 で は 濃 厚 系 懸 濁 液 に分 類 され る.す な わ ち,ガ ラ ス の 比 重 を2.5,樹 脂 の 比 重 を1と す る と,重 量 分 率 に して 希 薄 系 の 上 限値 と 濃 厚 系 の 下 限 値 は それ ぞ れ0.6%と12.1%に な る.し た が って,一 般 の ガ ラ ス繊 維 強化 樹 脂 の 溶 融 体 は 濃 厚 系 懸 濁 液 に 属 す る こ と にな る。 3・2理 論 3・2・1繊 維 配 向 濃 厚 系 懸 濁 液 の 繊 維 配 向 式 と してFolgar-Tuckerモ デ ル23) を 用 い た.繊 維 は 剛 直 で 一 様 な 円 柱 形 状 で あ り,平 面 方 向 の 二 次 元 配 向 を考 え,繊 維 に働 く浮 力 と慣 性 力 は 粘 性 力 に対 して 小 さ く無 視 で き る もの と仮 定す る.計 算 に 用 い る座 標 系 をFig.8 に 示す.樹 脂 流 動 解 析 と 同 じで,x-y-z座 標 は,射 出 成 形 品 の 任 意 の 平 板 上 に,x-yを 平 面 方 向,zを 厚 さ方 向 に と っ た 局 所 直 交 座 標 系 で あ る.繊 維 の 配 向 は,x-y面 内 で繊 維 が x軸 とな す 角 度 φで 定 義す る.こ の 角 度 を 配 向 角 と称 す る.局 所 直 交 座 標 系 に お い て,繊 維 配 向 は次 式 で 記 述 され る.

(16)

こ こで,tは 時 間,vは 速 度 ψは 配 向 分 布 関数,γ は せ ん 断 速 度,CIは 相 互 作 用 係 数 で あ る.式(16)の 右 辺 の 第 一 項 は 繊 維 の 回転 に対 す る繊 維 間 の 相 互 作 用 の効 果 を,第 二項 は 流 体 力 学 的な 効 果 を表 す. 配 向分 布 関数 ψは,あ る角 度 φか ら φ+Δ φま で の 積 分 に よ りその 間 に 配 向す る繊 維 の 確 率 を 表 す.角 度 φの 繊 維 と φ+π の繊 維 は 区 別 で き な く,ま た,0∼ πの 間 にす べ て の 繊 維 が 配 向す る こ とか ら,配 向分 布 関 数 は 以 下 の 条 件 を 満 足 しな け れ ば な ら な い. ψ(φ+π)=ψ(φ)

(17)

(18)

配 向分 布 関 数 か ら次 式 の 配 向 パ ラ メ ー タfpを 定 義 し,配 向 の 度 合 い を 評価 す る. fp=2<cos2φi>-1

(19)

こ こ で,<>は 次 式 で 表 され る期 待 値 で あ る.

(20)

配 向パ ラ メ ー タ は 一1から1の 値 を と り,任 意 の 角 度 φ、に 対 して, fp=-1の 場 合 は,そ の 角 度 の 直 交 方 向 に 完 全 配 向,0は ラ ン ダ ム 配 向,1は 平 行 方 向 に 完 全 配 向 して い る こ とを 意 味 す る. 3・2・2材 料 物 性 材 料物 性 解 析 で は,繊 維 配 向解 析 の 結 果 を 用 い て,弾 性 率 と 線 膨 張 率 お よび それ らの 異 方 性 を 予 測 す る.射 出成 形 品 の 中 に お い て,大 半 の 繊 維 は 成 形 品 表 面 と平 行 な 面 内 で 配 向 して い る. した が って,繊 維 強 化樹 脂 の 射 出 成 形 品 は,繊 維 の 配 向 状 態 が 異 な る多 数 の 単 層 板 が 重 ね られ た 積 層 板 で あ る とみ な す こ とが で き る.そ こで,材 料物 性 解 析 に,積 層 複 合 材 料 の 物 性 を 予 測 す るた め の 積 層 理 論 を 適 用 す る.繊 維 強 化 樹 脂 の 射 出 成 形 品 の 内 部構 造 をFig.9の よ う に モ デル 化 す る.繊 維 配 向の 層構 造 に 対 応 して,仮 想 的 な 単 層 板(以 後,仮 想 単 層 板 と 呼 ぶ)が 積 層 して い る も の とす る.仮 想 単 層 板 の 数 は解 析 にお け る 厚 さ方 向 の 分 割 数 と一 致 させ る.さ らに,各 仮 想 単 層 板 は,そ の 層 の 繊 維 配 向 に 応 じて 多 数 の 一 軸 配 向 板 が 積 層 して い る もの とす る. こ こ で,一 軸 配 向 板 は,板 厚 が0で 連 続 繊 維 が 一 方 向 にす べ て 配 向 して い る板 で あ る.任 意 の 角 度 に 向 い た一 軸配 向 板 の 数 は, 配 向分 布 関 数 か ら求 め られ る確 率 に よ って 決 め られ る. 以 上 の よ うに,成 形 品 は 一 軸 配 向板 が 積 層 した 仮想 単 層 板 が さ らに 積 層 した 複 合 構 造 を して い る と考 え,解 析 を 行 う.解 析 手 順 をFig.10に 示 す.解 析 手 順 は大 き く3段 階 に 分 け られ る. 第1段 階 は 一 軸 配 向 板の 物 性 値 計 算,第2段 階 は 仮想 単 層 板 の

(7)

松 岡:樹 脂 射 出 成 形 の コ ン ピ ュ ン に関 す る研 究 213 物 性 値 計 算,第3段 階 は 成 形 品 の物 性 値 計 算 で あ る.こ こ で の 物 性 値 と は,弾 性率,剛 性 率,線 膨 張 率,ボ ア ソ ン比 で あ る. 最 初 に,樹 脂 の 物 性 値 と繊 維 の 物 性 値 とか ら一 軸 配 向 板 の 物 性 値 を 計 算 す る.こ こ で 弾 性 率 と 剛 性 率 の 計 算 に は次 式 の 修 正 Halpin-Tsai式24)を 用 い る.

(21)

(22)

σ=1+Ff(1-Fc)/Fc2

(23)

こ こ で,砿M紐,Mfお よ びAはTable 2の 組 み 合 わ せ を と る. 線 膨 張 率 はSchapery式25)に よ り 求 め る. (24) αT=(1+υm)αmFm+(1十 υf)αfFf-αLυLT

(25)

ボ ア ソ ン比 は 複 合 則 に よ り求 め る. υLT=υmFm+υfFf (26) 式(21)∼(26)に お い て,Elは 弾 性 率,Gは 剛 性 率,α は線 膨 張 率,〃 は ボ ア ソ ン比 で あ る.添 え 字mは 樹 脂,添 え字fは 繊 維, 添 え 字Lは 繊 維 の 配 向方 向,添 え 字 丁は 配 向 との 直 交 方 向 を 表 す.1は 繊 維 の 長 さ,dは 繊 維 の 直 径Fは 体 積 分 率,F。 は 繊 維 の 最 大 充 て ん 体 積 分 率 で あ る.こ こで はFc=0.85で あ る. 次 に,積 層 理 論 を 適 用 して 各 層 に 対 応 す る仮 想 単 層 板 の 機 械 的 な材 料特 性 を 計 算 す る. (27) (28) こ こで,Ni, Miは 仮想 単 層 板 に 生 じる応 力 の 面 内成 分 と曲 げ 成 分,εj,ζjは 面 内 ひ ず み と厚 さ方 向 中央 面 の 曲率,ΔTは 温 度 差 で あ る.Hpは 仮 想 単 層 板 の 厚 さ で あ る.Sη は 全 体 座 標 系 に お け る一 軸 配 向 板 の 剛 性 マ トリ ッ ク ス,αjは 線 膨 張 率 の ベ ク トル で あ る.繊 維 配 向 解 析 に よ る計 算 結 果 の 配 向 分 布 関 数 を,厚 さ方 向 の 積 分 を 実 施 す る と き に 使 用 す る.単 層 板 座 標 系 にお け る一 軸 配 向 板 の 剛 性 マ トリ ッ クス と線 膨 張 率 の ベ ク ト ル は,繊 維 座 標 系 に お け る 剛 性 マ トリ ッ クス と線 膨 張 率 の ベ ク トル を 座 標 変 換 して 求 め られ る.こ こ で,単 層 板 座 標 系 と は仮 想 単 層 板 上 の 任 意 の 直 交 座 標 系 で あ り,繊 維座 標 系 と は 一 軸 配 向 板 上 で 繊 維 の 配 向 方 向 に座 標 軸 を と っ た座 標 系 で あ る. 最 後 に,仮 想 単 層 板 を 重 ね 合 わ せ て 仮 想 積 層 板 す な わ ち 成 形 品 の物 性 値 を 計 算 す る.仮 想 単 層 板 で 用 い た 積 層 理 論 を,一 軸 配 向板 を 仮 想 単 層 板 に,ま た,仮 想 単 層 板 を 仮 想 積 層 板 に 置 き 換 え て,こ こで 再 び 計算 に 用 い る. 以 上 の 手 順 に よ り,樹 脂 と繊 維 の お の お の の 物 性 値 な らび に 配 向分 布 関 数 か ら,成 形 品 の物 性 値 とそ の 異 方 性 を 直 接 に 計 算 す る. 3・3 検 証 3・3・1 方 法 ガ ラ ス繊 維 強 化 ポ リプ ロ ピ レ ン(GFPP)の 射 出 成 形 平 板 に つ いて 繊 維 配 向 解 析 を 行 った.成 形 品 は,リ ブ付 平 板 の リブ を な く した100×100×3mmの 正 方 形 平 板 で あ る.射 出圧 力36MPa, 射 出 温 度223℃,金 型 温 度41℃ の 条件 で,一 点 サ イ ドゲ ー ト(2 ×4×2mm)に よ り射 出成 形 した.ガ ラ ス繊 維(GF)の 平 均 長 さ は 約500μm,平 均 直 径 は14μmで あ る. は じめ に,樹 脂 流動 解 析 を 行 い,充 て ん 中 の 速 度 分 布 を 計 算 した.樹 脂 流 動 解 析 に よ り,厚 さ 方 向 に平 均 した 速 度 分 布(平 均 速度 分 布)を 時 系 列 に 求 め,デ ー タ フ ァイ ル に 出力 した.次 Fig.9 Laminated plate model of injection molded parts for the prediction

of mechanical properties.

Fig.10 Procedure of calculation of mechanical properties.

(8)

に,平 均 速 度 分 布 を 使 っ て,繊 維 配 向 の 式(16)を 式(17)と 式 (18)の 境 界条 件 下 で差 分 法 に よ り解 き,配 向 分 布 関数 を求 め た. 差 分 法 の 計 算 点 は,0∼180.の 角 度 を5.間 隔 で 分 割 し,36点 と した.角 度 が0と180.に お け る繊 維 配 向 は 同 じで あ るの で,0と 1808の 角 度 で 周 期 境 界 条 件 と し,相 互 作 用 係 数 は0.1と した15). 初期 繊 維 配 向 は,す べ ての 要 素 につ い て ラ ンダ ム 配 向 を 仮 定 し, 代 表 配 向 角 につ い て配 向 パ ラ メ ー タ を 求 め た.代 表 配 向 角 は, 配 向 分布 関 数 が 最 大 にな る 角 度 で あ る. 材 料物 性 解 析 で は,成 形 品 の 厚 さ を10層 に 分 割 し,樹 脂 流 動 解 析 で 各 層 ご との 速 度 分布 を 時 系 列 に 出 力 し,繊 維 配 向 解 析 に よ り,各 層 ご との 配 向 分 布 関 数 を 計 算 し た.各 層 ご と の 配 向 分 布 関数 を 使 って 材 料物 性 解 析 を 行 った.初 期 条 件 と して ゲ ー ト 部 で流 れ 方 向へ の 完 全 配 向 を 仮 定 した.計 算 に用 い た ポ リプ ロ ピ レ ン とガ ラ ス の物 性 値 をTable 3に 示 す.各 層 の 配 向 分 布 関 数 と樹 脂 お よび ガ ラス 繊 維 の 物 性 値 を 用 いて,材 料物 性 解 析 を 行 い,成 形 品 の 弾 性 率 と線 膨 張 率 を 前 節 の 手 順 で 計 算 した. 3・3・2結 果 GFPP (GF:20wt%)平 板 の 樹 脂 流 動 解 析 に よ る充 てん 完 了 時 の 平 均 速 度 分 布 の 計 算 結 果 をFig.11に 示 す.速 度 は 厚 さ方 向 に 平 均 した 速 度(平 均 速 度)で あ る.矢 印 は平 均 速 度 の 大 き さ と方 向 を 表 す.樹 脂 は ゲ ー トよ り速 度 を 減 じな が ら放 射 状 に広 が り,図 の 上 下 壁 面 近 傍 で は壁 面 に 平 行 に流 れ,速 度 を 増 しな が ら最 終 充 て ん 箇 所 に 向 か っ て 流 れ る.こ の よ う な 流 れ は,そ れ ぞ れ 拡 大 流 れ,せ ん 断 流 れ,縮 小 流 れ と して 分 類 で き る. 平 均 速 度 分 布 の 時 間変 化 を も と に繊 維 配 向 解 析 に よ り計 算 し た配 向パ ラ メ ー タ 分 布 をFig.12に 示 す.線 分 の 方 向 は,配 向 分 布 関 数 が 最 大 にな る方 向 を 示 し,線 分 の 長 さ は,そ の 方 向 へ の 配 向 の 強 さ を表 す.繊 維 は ゲ ー ト付 近 で は流 れ に 直 交 し,壁 面 近 傍 で 壁 面 に沿 い,最 終 充 て ん 箇 所 で は流 れ 方 向 に 配 向 す る こ とが 予 測 され て い る.計 算 結 果 は,拡 大 流 れ で は 流 れ に直 交 な 方 向 に繊 維 が 配 向 し,せ ん 断流 れ と縮 小 流 れ に お い て は流 れ 方 向 に繊 維 が 配 向 す る と い う こ と と一 致 して い る.Fig.13は, GFPPに1wt%の 金 属 繊 維(黄 銅,φ0.15×2.5mm)を トレ ー サ と して 混 入 して 成 形 した 平 板 に つ い て,金 属 繊 維 の 配 向 状 態 を観 察 したX線 写 真 で あ る.黒 い線 の 一 本 一 本 が 金 属 繊 維 で, 混 入 したす べ て の 金 属 繊 維 が 写 し 出 され て い る.計 算 結 果 は金 属 繊 維 の 配 向状 態 と定 性 的 に一 致 して い る. 繊 維 含 有 率30wt%のGFPP成 形 品 に つ い て,層 ご と に計 算 した 配 向 分 布 関 数 をFig.14に 示 す.計 算 結 果 は 厚 さ方 向 に 対 称 で あ る た め,図 に は表 面 層 の 第 一 層 か ら中 心 層 の 第 五 層 ま で の 結 果 を 示 す.配 向分 布 関 数 は,5.お き に その 配 向 角 へ の 配 向 分 布 関数 の 大 き さ を 線 分 に して,放 射 状 に 表 す.し た が っ て, 配 向 分 布 関 数 の 表 示 は,各 要 素 ご と に36本 の 線 分 が 重 な り,だ 円 あ るい は ま ゆ形 状 に な る.線 分 の 長 い方 向,す な わ ち,だ 円 の 長 軸 方 向 に配 向確 率 が 高 い.

Table 3 Mechanical properties of polypropylene and glass.

Fig.11 Computed velocity distribution at the end of filling.

Fig.12 Computed orientation parameters.

Fig.13 Photograph of X-ray observation of metal fiber tracers in the square plate.

(9)

松 岡:樹 脂 射 出 成 形 の コ ン ピュ 215 第一 層 の 繊 維 は,配 向 分 布 関 数 の 表 示 形 状 が 円 に近 く,ラ ン ダ ム に 配 向 して い る.第 二 層 で は,繊 維 が ゲ ー トか ら放 射 状 に 配 向 して い る.第 三 層 か ら第 五 層 は,ゲ ー ト付 近 は ゲ ー トを 中 心 と した 円 周 方 向 に,成 形 品 の 端 部 で は 辺 に沿 って繊 維 が 配 向 して お り,中 心 層 ほ ど そ の傾 向 は強 い.繊 維 配 向 の 層構 造 が 計 算 され て い る.厚 さ方 向 の 平 均 速 度 か ら求 め た 配 向パ ラ メ ー タ の 計 算 結 果(Fig.12)は,中 心 層 の 配 向 に 対 応 して い る.こ れ は,Fig.14で 見 られ る よ う に5層 の う ち3層 ま で が 中 心 層 と 同 じよ うな 繊 維 配 向 を して い る こ とか ら,平 均 化 した 場 合 に 多 数 側 の 中 心 層 の 配 向が 代 表 され る も の と思 わ れ る. 層 構 造 の 配 向 分 布 関数 を 入 力 と し,材 料 物 性 解 析 に よ り求 め た弾 性 率 と線 膨 張 率 の 計 算 結 果 をFig.15に 示 す.繊 維 含 有 率 は30wt%,温 度 は100℃ で あ る.計 算 は,図 の 各 位 置 で射 出方 向 と直 交 方 向 の 二 方 向 につ い て 行 った.計 算 結 果 は,上 下 対 称 で あ る の で,下 側 半 分 だ け を 示 した.線 分 の 長 さ に よ って,計 算 値 の 大 き さを 示 して い る.弾 性 率 と線 膨 張 率 の 異 方 性 が 計 算 され て い る.特 に 端 部 付 近 は 顕 著 で あ り,弾 性 率 は端 に 沿 っ た 方 向 に大 き くな る傾 向が 見 られ る.ま た,線 膨 張 率 の 異 方 性 は, 全 体 に弾 性 率 よ り大 き く,場 所 に よ って は射 出方 向 と 直 交 方 向 との 比 が 約1:5に な る部 分 もあ る.特 に 端 部 付 近 で は,弾 性 率 と 同様 に 異 方 性 は 顕 著 とな り,線 膨 張 率 は 端 に沿 った 方 向 に小 さ くな る傾 向 が 見 られ る. これ らの 計 算 結 果 をFig.14の 配 向 分 布 関 数 と比 較 してみ る と, 繊 維 の 配 向 方 向 に 弾 性 率 は 大 き く,線 膨 張 率 は小 さい こ とが 分 か る.ガ ラ ス繊 維 の 弾 性 率 は樹 脂 に比 べ て か な り大 き く,逆 に 線 膨 張 率 は小 さ い こ とか ら,図 の よ う な 異 方 性 が 繊 維 配 向 に起 因 して 生 じて い る もの で あ る.Fig.16は 弾 性 率 と線 膨 張 率 の 実 験結 果 で あ る.計 算結 果 は実 験結 果 と 定 性 的 に一 致 して い る こ とが 分 か る.そ こで,弾 性 率 と線 膨 張 率 の 計 算 値 と 実 験 値 と を 相 関 図 に してFig.17に 示 す.縦 軸 と横 軸 は 同 じ 目盛 りで あ る の で,計 算 値 と 実 験 値 が 完 全 に一 致 して い れ ば,両 者 の 関 係 は傾 き1の 直 線(図 中傾 き45.の 線)に な る.結 果 は,若 干 の ば らつ き は あ るが,傾 き1の 直 線 付 近 に デ ー タ が 集 合 して お り, 成 形 品 の 弾 性 率 お よ び線 膨 張 率 を 定 量 的 に も 予 測 で き て い る. Fig.14 Predicted fiber distribution functions in the square plate of 30 wt%

GFPP. The layers from Layer 1 to Layer 5 correspond to regions from surface to center in the thickness direction.

Fig.15 Predicted elastic moduli and thermal expansion coefficients in the square plate of 30 wt% GFPP.

Fig.16 Experimental elastic moduli and thermal expansion coefficients in the square plate of 30 wt% GFPP.

Fig.17 Correlation plots between experimental and calculated results of elastic modulus and thermal expansion coefficient for the square plate of 30 wt% GFPP.

(10)

4.ま と め 樹 脂 流 動 解析 お よび 繊 維 配 向 ・材 料 物 性解 析 は,こ こ で 紹 介 す る こ との で きな か っ た金 型 冷 却 解 析 お よび 応 力 解 析 と と もに 射 出 成 形CAEと して実 際 に製 品 と金 型 の 設 計 の ため に 利 用 さ れ て い る.CAEが 普 及 す る に 従 い,CAEに 対 す る解 析 機 能, 解 析精 度 使 い 勝 手 の 向 上 が 要 望 され,コ ン ピ ュ ー タ ー シ ミュ レー シ ョン に も さ らな る 高 度 化 が 求 め られ て い る.現 在 の 樹 脂 流 動 解 析 は,成 形 品 形 状 の モ デ ル に3次 元 シ ェル を 用 い て 複 雑 な 三 次 元 形 状 を扱 う こ とが で き る が,基 本 的 に は2次 元 の 解 析 で あ る.そ の た め,理 論 的 に解 析 で きな い 問題 もあ り,樹 脂 流 動 解 析 の 三 次 元 化 が 進 め られ て い る26).ま た,繊 維 配 向 解 析 につ い て も,粒 子 シ ミュ レー シ ョ ン法 と 呼ぶ 新 しい 計 算 方 法 が 提 案 され27),流 動 場 に お け る繊 維 配 向 解 析28)だ け で な く,希 薄 系 お よび 濃 厚 系 繊 維 懸 濁 液 の レオ ロ ジ ー特 性 の 解 析29)30)に も 適用 され て い る. コ ン ピ ュー タ ー シ ミュ レー シ ョ ン は,CAEと い う工 学 的 な 価 値 だ け で な く,学 問的 に も新 しい 研 究 ア プ ロ ー チ と して レオ ロ ジー の研 究 に 寄 与 で き る 時代 に きて お り,計 算 レオ ロ ジ ー と い う分 野 が発 展 す る こ と を 期待 して い る.

本研 究 を 進 め る に 際 して,終 始 ご指 導,ご 鞭 撻 を い た だ き ま した 株 式会 社 豊 田 中央 研 究所 の 上 垣 外 修 己博 士,倉 内 紀 雄 博 士, 高 橋 秀 郎 博 士,共 同研 究 者 で あ る井 上 良 徳 氏,山 本 智 氏,ほ か 関 係者 な らび に 関係 会社 の 各 位 に深 く感 謝 い た します 。

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参照

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