米国の遺伝子組換え農作物・食品の現状
2004 年 3 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
03-IAD 食品産業高度化 9は じ め に 本 報 告 書 は 、「 米 国 の 遺 伝 子 組 換 え 農 作 物・食 品 の 現 状(2002 年 3 月 )」の 続 編 と し て 、 米 国 に お け る 遺 伝 子 組 換 え 作 物 の 2003 年 の 生 産 の 状 況 、 規 制 の 見 直 し の 動 き な ど に つ い て の 調 査 結 果 を 取 り ま と め た も の で あ る 。 便 宜 の た め 、 ウ ェ ブ サ イ ト か ら ア ク セ ス 可 能 な 情 報 に つ い て は 、 ア ド レ ス を 記 し て お い た 。 ま た 、 作 物 の 品 種 、 病 害 虫 な ど 、 和 訳 が 不 明 の 場 合 は 、 英 文 の ま ま 記 し た 。 本 報 告 書 で は 、 面 積 に つ い て は エ ー カ ー 、 収 穫 量 に つ い て は ブ ッ シ ェ ル を そ れ ぞ れ 用 い て い る 。 そ れ ぞ れ の 換 算 係 数 は 以 下 の と お り で あ る 。 1 エ ー カ ー = 0.404686 ヘ ク タ ー ル 1 ブ ッ シ ェ ル = 27.216 キ ロ グ ラ ム ( 大 豆 ) 25.401 キ ロ グ ラ ム ( ト ウ モ ロ コ シ ) 関 係 各 位 の ご 参 考 に な れ ば 幸 い で あ る 。 2004 年 3 月 日 本 貿 易 振 興 機 構 ( ジ ェ ト ロ ) 産 業 技 術 ・ 農 水 産 部
目 次
Ⅰ 遺伝子組換え作物の作付状況 ...1 1 米国における遺伝子組換え作物の作付状況...1 2 米国における遺伝子組換え作物の作付面積の今後の見通し...3 3 世界における遺伝子組換え作物の作付状況...3 (1)遺伝子組換え作物の作付面積の推移 ...4 (2)国別生産面積 ...4 (3)作物別生産面積 ...6 (4)特徴別生産面積 ...7 (5)生産全体に占める割合 ...7 Ⅱ 規制見直しのその後の状況 ...9 1 規制の概要...9 (1)USDAの規制 ...9 (2)FDAの規制 ...10 (3)EPAの規制 ...14 2 規制の見直し等の動き...15 (1)USDAによる規制の見直し ...15 (2)FDAによる規制の見直し ...22 (3)EPAによる規制の見直し ...24 Ⅲ 新種の開発等に関する状況 ...30 1 行政に対する届出等の状況...30 2 ラウンドアップレディ小麦をめぐる動き...34 (1)モンサント社の見解 ...34 (2)生産者の反応 ...36 Ⅳ 消費者の意識 ...38 1 IFICによる調査...38 2 ギャラップによる調査...45 3 ピュー・イニシアチブ・オン・フード・アンド・バイオテクノロジーによる調査...47 4 まとめ...50 Ⅴ 遺伝子組換え作物をめぐる主な海外の動き ...52 1 米国、遺伝子組換え作物の承認モラトリアムでEUをWTOに提訴...52 2 ブラジルにおける遺伝子組換え大豆の栽培承認をめぐる問題...53 Ⅵ おわりに ...55 (参考資料)関係ウェブサイト一覧 ...56Ⅰ 遺伝子組換え作物の作付状況
1 米国における遺伝子組換え作物の作付状況 米国農務省(USDA)の全国農業統計局(NASS)によれば、2003 年、全作付面積に対して遺 伝子組換え作物が占める割合は、大豆が81%(昨年は 75%)、アップランド綿花が 73%(昨年は 71%)、 トウモロコシが40%(昨年は 34%)であった。本調査は、2003 年 6 月第 1 週および第 2 週に、全米 の約 7 万 7,000 の農場経営者を対象とする主要作物の作付面積の調査の一環として行われたもので、 実際の作付を踏まえたものである。調査対象となった3 種類のすべての作物について前年と比べて遺 伝子組換え作物の作付比率が増加する見通しとなった(図Ⅰ-1)。 (図Ⅰ-1) 遺伝子組換え作物作付割合の推移 73 81 75 68 54 71 69 61 40 34 26 25 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 2000 2001 2002 2003 年 % 大豆 アップランド綿花 トウモロコシ この調査では、作物ごとに州別の割合も明らかにされている(表Ⅰ-1)。 大豆についてみると、タイプはすべて除草剤耐性のものであり、主要生産州のすべての州において作 付割合は前年に比べ増加した。主要生産州のうち、8 割以上の州は、サウスダコタ(91%)、ミシシッ ピ(89%)、インディアナ(88%)、カンザス(87%)、ネブラスカ(86%)、アーカンソー(84%)、 アイオワ(84%)、ウイスコンシン(84%)、ミズーリ(83%)の 9 州だが、主要生産州すべての州に おいて70%以上の作付比率となっており、遺伝子組換え作物の定着ぶりがうかがえる。また、アップランド綿花についてみると、除草剤耐性のものが中心であるが、殺虫成分をもつもの、 両者の特徴が組み込まれたものが増加している。アーカンソー(95%)、ジョージア(93%)、ノース カロライナ(93%)、ミシシッピ(92%)、ルイジアナ(91%)において 9 割を超えるものの、作付面 積の約4 割を占めるテキサス州において 53%にとどまっている。 トウモロコシについては、害虫抵抗性を有する Bt トウモロコシ(殺虫成分である Bt(Bacillus Thuringiensis)を自ら発生するトウモロコシ)が中心である。地域差が大きく、サウスダコタ(75%)、 ネブラスカ(52%)、ミネソタ(53%)、カンザス(47%)、アイオワ(45%)で 4 割を超えた一方で、 オハイオ(9%)、インディアナ(16%)では 2 割を切っている。これは、遺伝子組換えトウモロコシ が標的とする害虫であるアワノメイガが西の乾燥した地域ほど発生しやすく、害虫が発生する可能性 と種子代とを勘案して農家が導入を決定しているからである。 (表Ⅰ-1) 2003 年産の遺伝子組換え作物の占める割合(単位:1,000 エーカー、%) 全作付 面積 害虫に 抵抗力 除草剤 耐性 害虫抵抗かつ 除草剤耐性 合計 合計 73,653 -(-) 81(75) -(-) 81(75) イリノイ 10,600 -(-) 77(71) -(-) 77(71) アイオワ 10,400 -(-) 84(75) -(-) 84(75) ミネソタ 7,600 -(-) 79(71) -(-) 79(71) インディアナ 5,400 -(-) 88(83) -(-) 88(83) 大豆 ミズーリ 4,950 -(-) 83(72) -(-) 83(72) 合計 79,066 25(22) 11(9) 4(2) 40(34) アイオワ 12,400 33(31) 8(7) 4(3) 45(41) イリノイ 11,100 23(18) 4(3) 1(1) 28(22) ネブラスカ 8,000 36(34) 11(9) 5(4) 52(46) ミネソタ 7,100 31(29) 15(11) 7(4) 53(44) トウモロコシ インディアナ 5,700 8(7) 7(6) 1(-) 16(13) 合計 13,748 14(13) 36(32) 27(22) 73(71) テキサス 5,800 8(7) 39(40) 6(4) 53(51) ジョージア 1,400 14(8) 32(55) 47(30) 93(93) ミシシッピ 1,120 15(19) 16(22) 61(47) 92(88) アーカンソー 950 24(27) 25(37) 46(26) 95(90) ア ッ プ ラ ン ド 綿 花 ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 850 16(14) 29(27) 48(45) 93(86) (出所)「Acreage」米国農務省 (注)1 州は、作付面積の上位5州を挙げている。 2 ( )内は、2002 年の作付割合。
2 米国における遺伝子組換え作物の作付面積の今後の見通し 大豆については、遺伝子組換えの作付比率が8 割を超え、飽和状態に近づいてきたと考えてよいだ ろう。 一方、トウモロコシについては、2003 年に導入されたコーン・ルート・ワーム(小さな甲虫(Beetle) の幼虫。トウモロコシの根を食べ、収量が大幅に減少する。)に耐性のある遺伝子組換えトウモロコシ が話題になっている。 今までの Bt トウモロコシは、アワノメイガを標的としたものであったため、害虫が発生する可能 性が高い乾燥した西の地域に利用が偏っていた。これに対して、コーン・ルート・ワームは、アワノ メイガと違って発生地域に偏りはなく、全地域的な問題である。また、コーン・ルート・ワームは、 根に巣くう害虫であるため、農薬で駆除するのは効率が悪く、大量の農薬散布を必要とする。このた め、生産者は、農薬散布とともに、トウモロコシと大豆を輪作することによって、コーン・ルート・ ワームの発生を抑える努力をしてきた。大豆を輪作するのは地力を増進させるためでもあるが、地味 が豊かな地域でも、大豆を植えることによって、春になって卵からかえったコーン・ルート・ワーム が餌を食べられない状態を作り、そこで被害の発生を食い止めるようにしてきた。 新しく導入されたBt トウモロコシは、その根を食べたコーン・ルート・ワームが Bt によって駆除 されるため、非常に効果的である。種子代が在来種に比べ多少高くても、農薬代を節約できる上、収 量も伸びることが期待できるため、経済的にもペイすると判断する生産者が多いものと思われる。ま た、自らの健康や環境面を考慮しても、農薬散布を抑えられるコーン・ルート・ワーム耐性の Bt ト ウモロコシは、大変に魅力的である。地味が豊かな地域であれば、従来の隔年のローテーションから、 トウモロコシ2 年、大豆 1 年のローテーションに切り替えることも可能となってくる。 米国の農家の行動は保守的であるが、コーン・ルート・ワーム耐性の Bt トウモロコシの効果を目 の当たりにするにつれ、導入しようとする生産者は増加するものと思われる。このため、今後数年間 のうちに、遺伝子組換えの作付比率がかなり増加する可能性がある上、大豆からトウモロコシへの生 産の転換が図られることによって、トウモロコシ、大豆をめぐる生産事情が大きく変化する可能性を 秘めている。 大豆、トウモロコシともに遺伝子組換えのものの比率が上がってきたことから、今後、非遺伝子組 換えへのプレミアムの上昇や量的確保が困難になっていくことが懸念される。 3 世界における遺伝子組換え作物の作付状況 開発途上国への遺伝子組換え作物の普及を目的とする組織であるISAAA(International Service for the Acquisition of Agri-Biotech Applications )が、世界の遺伝子組換え作物の生産に関 するデータを公表している。ISAAAは、公的および私的セクターの拠出により運営されている非
営利団体で、米国、ヨーロッパ、アフリカなどにセンターを有する。ISAAAに関する情報は、 www.isaaa.org から入手可能である。なお、2003 年の数値については、暫定値である。 これによれば、遺伝子組換え作物に関する国際的な議論の高まりをよそに、作付面積は急伸を続け ている。 (1)遺伝子組換え作物の作付面積の推移 2003 年における世界の遺伝子組換え作物の作付面積は、6,770 万ヘクタールと見通されており、前 年比で15%増加した。この見通しの中では、2003 年に公式に遺伝子組換え作物の栽培が認められた ブラジルの面積を控えめに300 万ヘクタールと見通しており、最終的な作付面積は、これよりもかな り増加するものと考えられる。これは、中国(9 億 5,600 万ヘクタール)や米国(9 億 8,100 万ヘク タール)の国土面積の約7%に相当する面積であり、英国(2,440 万ヘクタール)の 3 倍近くに相当 する面積である。 (図Ⅱ-2)世界の遺伝子組換え作物の作付面積の推移(単位:100 万ヘクタール) 44.2 67.7 58.7 52.6 39.9 27.8 11 1.7 0 10 20 30 40 50 60 70 80 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 (出所)ISAAA (2)国別生産面積 遺伝子組換え作物の商業生産を行っている国は、1996 年の 6 カ国から、1998 年には 9 カ国、1999 年には12 カ国に達し、2003 年は 1996 年の 3 倍の 18 カ国となった。 遺伝子組換え作物の生産は主に先進国で行われているが、発展途上国の面積の占める割合が着実に
増加している点が注目される。1997 年には発展途上国が占める割合は 14%だったが、2000 年には 20%を超え、2003 年には 30%を占めるに至った。2003 年に発展途上国の面積が大きく増加した理由 の一つは、ブラジルの面積を加えたことであるが、中国、アルゼンチン、南アフリカ、インドにおい ても高い伸びを示している。 (表Ⅰ-2)先進国と発展途上国別の遺伝子組換え作物の作付面積(単位:100 万ヘクタール) 2002 年 2003 年 増減 先進国 42.7 47.3 4.6(11%) 発展途上国 16.0 20.4 4.0(28%) (出所)ISAAA 国別に面積を見ると、米国(63%;4,280 万ヘクタール)、アルゼンチン(21%;1,390 万ヘクター ル)、カナダ(6%;440 万ヘクタール)、ブラジル(4%;300 万ヘクタール)、中国(4%;280 万ヘ クタール)、南アフリカ(1%;40 万ヘクタール)の 6 カ国で全体の 99%を占めている。 ブラジルの300 万ヘクタールの見通しは控えめのもので、最終的にはこれよりもかなり増加するも のと考えられている。ブラジルでは非公式にこれまでも遺伝子組換え大豆が栽培されていたと言われ ている。 中国の増加は、Bt 綿花の面積増によるもので、Bt 綿花は中国の綿花の作付面積の 58%を占めてい る。南アフリカは、特に食用のトウモロコシの増加により、作付面積が増加している。 (表Ⅰ-3)国別遺伝子組換え作物作付面積(単位:100 万ヘクタール、%) 国名 2002 年 2003 年 シェア アメリカ 39.0 42.8 63 アルゼンチン 13.5 13.9 21 カナダ 3.5 4.4 6 ブラジル - 3.0 4 中国 2.1 2.8 4 南アフリカ 0.3 0.4 1 オーストラリア 0.1 0.1 <1 インド <0.1 0.1 <1 ルーマニア <0.1 <0.1 <1 ウルグアイ <0.1 <0.1 <1 スペイン <0.1 <0.1 <1 メキシコ <0.1 <0.1 <1 フィリピン - <0.1 <1
コロンビア <0.1 <0.1 -- ブルガリア <0.1 <0.1 <1 ホンジュラス <0.1 <0.1 <1 ドイツ <0.1 <0.1 <1 インドネシア <0.1 <0.1 <1 (出所)ISAAA (注)<0.1 は 10 万ヘクタール未満、<1 は 1%未満 主要国における増加の内容を見ると、以下のとおりである。 ・米 国: 大豆とトウモロコシが増加。綿花は国際価格の低迷により減少。 ・アルゼンチン: トウモロコシは40%増加。大豆も引き続き増加し遺伝子組換えが 占める割合はほぼ100%近くに。 ・カ ナ ダ: カノーラが干ばつの被害から回復したことに伴い、遺伝子組換えの作付 も増加。トウモロコシおよび大豆も増加。 ・中 国: Bt 綿花の面積が 33%増加。 ・南アフリカ: トウモロコシ、綿花、大豆で40 万ヘクタールの増加。 ・イ ン ド: 2002 年から Bt 綿花の栽培が開始(約 5 万ヘクタール)され、2003 年には約 10 万ヘ クタールに増加。 (3)作物別生産面積 作物別に面積を見ると、大豆が4,140 万ヘクタール(61%)、トウモロコシが 1,550 万ヘクタール (23%)、綿花が 720 万ヘクタール(11%)、カノーラが 360 万ヘクタール(5%)で、これら4作物 でほとんどを占めている。 遺伝子組換え大豆はすべて除草剤耐性のものであり、2002 年に比べて 490 万ヘクタール増加(13% 増)した。米国で遺伝子組換え大豆の作付比率が80%に達したことやブラジルが公式に遺伝子組換え 大豆の栽培を認めたことが大きい。アルゼンチンでは、遺伝子組換え大豆の作付比率は98%に達した と報告されている。また、ルーマニアとウルグアイで遺伝子組換え大豆の栽培が開始されている。 遺伝子組換えトウモロコシについては、2002 年に比べて 310 万ヘクタール増加し、前年比 25%増 と高い伸びを示した。増加のほとんどは米国での増加によるものだが、カナダ、アルゼンチン、南ア フリカ、スペインでも増加しているほか、ホンジュラス、フィリピン、ウルグアイで初めて栽培が行 われた。 遺伝子組換え綿花については、前年比40 万ヘクタール増(6%増)となった。国際価格の低迷によ り綿花全体の栽培面積が低迷したため、遺伝子組換えの面積の増加も他の作物に比べ小幅なものにと どまっている。中国では、70 万ヘクタール増加し、前年比で 33%増加したが、米国で 2002 年に比べ
約5%減少したほか、オーストラリアでは昨年とほぼ同じ面積だった。 遺伝子組換えカノーラについては、カナダでの増加から、60 万ヘクタール増加(20%増)した。カ ナダでは、カノーラ全体の作付面積470 万ヘクタールのうち、319 万ヘクタールが遺伝子組換えだっ た。 (表Ⅰ-4)作物別の遺伝子組換え作物作付面積(単位:100 万ヘクタール) 作物名 2002 年 2003 年 増減 大豆 36.5(62%) 41.4(61%) 4.9(29%) トウモロコシ 12.4(21%) 15.5(23%) 3.1(25%) 綿花 6.8(12%) 7.2(11%) 0.4(6%) カノーラ 3.0(5%) 3.6(5%) 0.6(20%) (出所)ISAAA (4)特徴別生産面積 1996 年以来一貫して除草剤耐性が圧倒的な割合を占めている。除草剤耐性は、大豆、トウモロコシ および綿花で開発されており、これが全体の73%(4,970 万ヘクタール)を占めている。これに対し、 Bt は 18%(1,220 万ヘクタール)であり、綿花とトウモロコシで開発されている除草剤耐性と Bt の 両方の特徴をもつものは9%となっている。Bt 単体のものと除草剤耐性と Bt の両方の特徴をもつも のが大幅に増加した点が注目される。Bt トウモロコシの増加の多くは米国におけるものだが、アルゼ ンチン、南アフリカ、スペインでも面積が増加している。 (表Ⅰ-5)特徴別の遺伝子組換え作物作付面積(単位:100 万ヘクタール) 特徴 2002 年 2003 年 増減 除草剤耐性 44.2(75%) 49.7(73%) 5.5(12%) 害虫に抵抗力(Bt) 10.1(17%) 12.2(18%) 2.1(20%) Bt かつ除草剤耐性 4.4(8%) 5.8(9%) 1.4(32%) ウイルス耐性その他 <0.1(<1%) <0.1(<1%) <0.1(--) (出所)ISAAA (注)<0.1 は 10 万ヘクタール未満、<1 は 1%未満 (5)生産全体に占める割合 大豆については、世界の作付総面積(7,600 万ヘクタール)の 55%(4,140 万ヘクタール)が遺伝 子組換えとなった。綿花については、同(3,400 万ヘクタール)の 21%(720 万ヘクタール)が遺伝
子組換えとなった。 カノーラは、2002 年の 12%から増加し、2003 年には世界の作付総面積(2,200 万ヘクタール)の 16%(360 万ヘクタール)が遺伝子組換えとなった。トウモロコシも、同様に、2002 年の 9%から増 加し、2003 年には同(1 億 4,000 万ヘクタール)の 11%(1,550 万ヘクタール)が遺伝子組換えとな った。 (図Ⅰ-3)作物別の遺伝子組換え作物のシェア(単位:100 万ヘクタール) 41.4 15.5 34.6 26.8 18.4 124.5 3.6 7.2 0 20 40 60 80 100 120 140 160 大豆 綿花 カノーラ トウモロコシ 非遺伝子組換え 遺伝子組換え (出所)ISAAA ISAAAでは、EUで行われている議論などにかかわらず、世界の遺伝子組換え作物の作付面積 や栽培する農家数は2004 年以降も増加しつづけると予測している。今後 5 年間に世界全体で遺伝子 組換え作物の作付面積は1 億ヘクタールに増加し、25 カ国以上で 1,000 万人の生産者が遺伝子組換え 作物の生産を行うようになると予測している。
Ⅱ 規制見直しのその後の状況
1 規制の概要
遺伝子組換え作物については、農務省(USDA)、環境保護庁(EPA)、健康福祉省食品医薬 品局(FDA)の3 省庁により規制が行われている。
この3省庁の関係は 86 年に出された「バイオテクノロジーの規制に関する調整された枠組み」 (Coordinated Framework for the Regulation of Biotechnology )に基づいており、おおむね次の とおりである。
①
USDAは、作物に対する害虫、雑草、病害の拡大の防止の観点から、作物そのものについて 規制を行う。②
EPAは、農薬の規制、農薬残留限度の設定、新たな微生物などを所管する立場から、作物お よび農薬について規制を行う。③
FDAは、食品・食品添加物、家畜用飼料、医薬品などの安全性について所管する立場から、 作物について規制を行う。 したがって、具体的な品目に応じて、例をあげると以下のような関係となる。 ・「食用・飼料用」のBt 作物 → USDA・EPA・FDA ・非「食用・飼料用」のBt 作物 → USDA・EPA ・「食用・飼料用」の除草剤耐性作物 → USDA・FDA(EPAは除草剤そのものを規制) ・非「食用・飼料用」の除草剤耐性作物 → USDA(EPAは除草剤そのものを規制) ・油成分を変更した食用作物(高オレイン酸大豆など)→ USDA・FDA ・色を変化させた花(非食用)→ USDA ・汚染を分解する土壌細菌 → EPA 現在の3省庁による規制は以下のとおりである。 (1)USDAの規制USDAにおいては、動植物検疫局(APHIS、Animal and Plant Health Inspection Service) が病気や害虫の拡大防止という観点から、連邦植物病害虫法(Federal Plant Pest Act)および規則 7 CFR 340(87 年 7 月発効)により規制を行っている。 規制の対象となる生物は、
①
植物に病気を感染させるか、その他の被害を与えるバクテリアやウィルス、菌類、害虫などの 病害に関する遺伝子を用いて作られた遺伝子組換えによる生物②
分類困難な生物を用いた遺伝子組換えによる生物③
担当部局が規制が必要であると判断した遺伝子組換えによる生物で、米国内への輸入、州境を超えた移動および環境への放出(野外実験)が規制される。
7 CFR 340 に基づく手続としては、「許可(Permit)」、「届出(Notification)」、「除外申請(Petition for Deregulation)」がある。 米国内への輸入、州境を超えた移動および環境への放出(野外実験)のいずれについても、許可 を要するのが原則であるが、 93 年 3 月、審査の経験が蓄積されたことを踏まえ、特に案件の多か ったトウモロコシ、綿花、ジャガイモ、大豆、タバコ、トマトの6 種類について、届出により、移 動・環境への放出ができることとされた。さらに、97 年 5 月には、有害雑草のリスト(7 CFR 360) にのっておらず、かつ、環境への放出については、対象地域で雑草とみなされていない植物につい て、一定の条件の下で、届出による移動・環境への放出を認めることとされた。 許可、届出のいずれも、個々の案件ごとであり、州境を超えた移動や野外実験の1 件 1 件につい て申請する必要があるため、規制対象のままでは、事実上、市場での販売が困難である。このため、 93 年 3 月、APHISは規制対象からの除外に関する手続を定めた。本手続によると、除外申請は、 規制対象の作物が従来の作物に比べて環境に大きなリスクを与えるものではないことなどの情報・ データを添えて申請し、APHISは官報に公示、一般からのコメントを受けた上で、認めるか否 かを決定する。決定に先立って、環境に関するアセスメントが行われる。さらに、97 年 5 月には、 申請件数の増加を踏まえ、すでに除外申請が認められている作物に類似した作物については、官報 に公示することにより、除外を認めることができることとされた。 (2)FDAの規制 FDAは、食品および飼料の安全性の確保という観点から、連邦食品・医薬品・化粧品法(FF DCA、Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)に基づき、規制を行っている。遺伝子組換え作 物についての基本的な方針は、92 年 5 月に官報公示された「新たな作物品種から作られた食品につ いての方針の表明」に明らかにされている。 規制の対象となるものは、食品および飼料で、装飾用の花などは、およそ規制対象とならない。
①
規制の基本的考え方 FDAは、規制の基本的考え方について、食品・飼料の安全性は、製品の特徴から判断されるべ きであって、新しい技術が使われたという事実から判断されるべきではないという立場を取り、遺 伝子組換え作物についても従来の品種交配により作られた新種の作物と同様の取扱いをする旨明ら かにしている。したがって、遺伝子組換え作物は、作物が作られたプロセスではなく、作物自体の 安全性・毒性・アレルギーを引き起こす可能性に着目して評価される。②
食品としての規制 一般的に、果実、野菜、穀物のようにすでに長期間にわたり消費に供されている自然食品については、販売前の許可は不要である。販売後公衆の健康に危険があることが判明した場合には、FD Aは当該食品を市場から取り除くことができる。遺伝子組換え作物であるトウモロコシ、ジャガイ モ、大豆などは「長期間にわたり消費に供されている自然食品」であることから、「食品」として販 売の事前許可は必要とされない。
③
食品添加物としての規制 食品に意図的に加えられるものは食品添加物であり、「一般的に安全と認められるもの」(GRA S、Generally Recognized As Safe)でない限り、FDAの審査および許可の対象となる。GRA Sか否かについては、FDAは申請を受け、審査・確認する。 これまで開発された遺伝子組換え作物は、新たなDNAが加えられ、結果としてタンパク質を発 生するものである。 したがって、食品添加物として規制の対象となりうるのは、DNAとタンパク質になるが、DNA 自体は、全ての食品に存在していることから、GRASとみなされる。 タンパク質については、通常は消化・代謝されるため、化学物質のように安全性の問題は生じない。 これまでのところ、新たに作物に導入されたタンパク質としては、農薬成分(Bt)と酵素がある。 Bt については、EPAにより規制されており、市場販売以前に承認を得ている。酵素については、 GRASとされている。 このため、これまでの遺伝子組換え作物は、食品添加物として規制されていない。④
協議のプロセス、 遺伝子組換え作物について、許可が必要か否か作物の開発者側から見て不明な場合もあること、 許可が不要としても商品化に当たって何らかのFDAの「お墨付き」が必要であることなどから、 FDAとの協議を行うプロセスが、92 年の方針および 97 年 10 月の「新たな作物品種から作られ た食品についての協議プロセスに関するガイダンス」 で示されている(図Ⅱ-1)。 これらの協議のプロセスにおいて、FDAは、開発者により集められたデータの包括的な 科学 的審査を行うのではなく、商品化に当たって、法的規制を必要とする未解明な点がある否かを検討 する。このような未解明な点としては、作物の毒性の増加、栄養分の吸収の阻害、重要な栄養分の 減少、アレルギーを引き起こす性質(アレルゲン性)、許可されていない食品添加物の存在などがあ げられる。 協議は開発当初からの初期協議、販売の前段階で行われる最終協議の2 段階に分けられる。最終 協議の結果は、①さらなる質問はなく、協議を終了するか、②遺伝子組換えによる食品がFFDC Aの食品添加物の規定の適用を受けるか、③表示の問題のように他の規制上の問題はないかという 点を明確にした上で、開発業者に示される。⑤
表示に関する規制FFDCAにより、表示が義務付けられる事項が定められるともに、表示は真実であり、誤解を 与えるものであってはならないとされている。また、食品には、共通の一般的な名前が与えられる とともに、表示は食品あるいは食品の利用がもたらす結果に関する表現に本質的な情報を明らかに しなければならないこととされている。 したがって、FDAは、「遺伝子組換え」であることを理由とする表示は必要ないが、遺伝子組換 えにより開発された食品の構成が、従来のものと明らかに異なる場合は特別の表示が必要としてい る。
(図Ⅱ-1)FDAによる新品種の安全性評価 はい いいえ いいえ はい いいえ はい 受け入れ いいえ られない はい はい いいえ いいえ はい はい いいえ 問題ない 問題ない 予想外または 意図しない効果 予期したまたは 意図した効果 安全性評価: 受け手作物 安全性評価: 供与体(類) 安全性評価: 導入されたタン パク質 安全性評価: 新規あるいは改変さ れた炭水化物、脂肪 あるいは油 ア レ ル ギ ー を引き起 こ す も の で ないこと が証明されているか ア レ ル ギ ー を引き起 こ す も の で ないこと が証明されているか 通常でない成分あるい は毒性成分を含むか? 食餌の主要栄養分また は消化性に影響を与え るか? 新品種の毒性に 安全性の懸念は ないか? アレルゲンの試験 および表示につき FDAと協議 アレルゲンの試験 および表示につき FDAと協議 毒性の報告があるか、 生 物 学 的 機 能に安全 性の懸念があるか? FDAと協議 新品種内の重要な栄養分 の濃度および生物学的な 要素は受け手の作物の 通 常 の 範 囲 内 の も の か? FDAと協議 人間や動物の食餌中 の主要成分であるか
(3)EPAの規制
EPAにおいては、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA、Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act)に基づき、農薬を出す作物および微生物の規制を、FFDCAに基づき農薬 の残留限度の規制を、有毒物質抑制法(TSCA、Toxic Substances Control Act) に基づき、微生 物に関する規制を行っている。 ① FIFRAによる規制 FIFRAにより、農薬は販売・流通に先だってEPAに登録が必要とされている。 登録されていない農薬について、EPAは、試験的使用の許可(EUP、Experimantal Use Permits)を行うことができる。このような許可は、10 エーカー以上の土地または 1 エーカー以上 の水面を含む大規模な試験につき出されるのが通常である。 従来、このレベルよりも小さな規模の試験については、一定の条件の下、許可は必要とされてい なかったが、94 年 1 月、EPAは、小規模の試験に関し規則の整備を行っている。 新規則の下で、EPAへの通知制度を設け、「意図的に組み換えられた遺伝形質の導入により農薬 性が強化されまたは与えられた」微生物農薬の小規模な試験については通知が必要であることとさ れた。 ② FDCAによる規制 FFDCAにより、食品および飼料は、農薬化学物質の残留が残留限度の範囲内であるか、残留 限度の規制から免除されていない限り、販売できない。 農薬化学物質を残留限度の規制の免除は、当該免除が「安全」であると場合のみに可能となる。 残留限度の設定は、免除同様、当該残留限度が「安全」である場合にのみに可能となる。 ③ TSCAによる規制 産業用の酵素や他の特別な化学物質の生産、農業上の作業(バイオ肥料など)、科学的な汚染物質 の環境中での分解などの用途に用いられる「新たな」微生物の商業的使用、研究開発のための試験 が規制対象となる。 米国内で、微生物を商業上の目的で使用する者は、「微生物商業活動通知」(MCAN、Microbial Commercial Activity Notice)をEPAに提出する。 微生物の商業目的の研究開発のため環境中で 試験を行うものは、「TSCA試験放出申請」(TERA、TSCA Experimental Release Application Microbial Commercial Activity Notice)をEPAに提出する。
④ 規制の見直しの提案
EPAは、94 年 11 月、Bt 作物など、自ら農薬を発生する作物(作物農薬 Plant-Pesticide )の 特殊性にかんがみ、FIFRAとFFDCAの規制の見直しを提案している。
おいて、生きている作物の中で生産される農薬性のある物質およびその物質の生産のために必要な 遺伝的形質」と定義している。 一般的に、FIFRAの下では、新たな環境への露出や標的としない生物への負の影響を与える 可能性が大きい作物農薬を規制している。このため、見直し案では、受け手の作物と他花受精の可 能な(sexually compatible)作物から得られる作物農薬については、元となる作物が同様の遺伝形 質を持ち、それらから作られたものが新たな環境・食餌面での接触を引き起こす可能性が低いこと から、FIFRAのほとんどの規制から除外とすることとしている。また、ウィルスに感染しない ようある種のタンパク質(ウィルスコート・タンパク質)を発出する新作物も、既存の作物中にす でにこのようなタンパク質が存在することから規制から除外される。さらに、標的となる病害では なく作物そのものに作用し病害から保護するもの(表皮のロウをより厚くすることにより害虫に食 べられないようにするなど)も規制から除外することとされている。 FFDCAの規制の見直し案では、受け手の作物と他花受精の可能な作物から得られる作物農薬、 ウィルスコート・タンパク質に加えて、作物農薬を産出する核酸(ヌクレイン酸)についても、幅 広く食品中に含まれ悪影響が認められないことから、残留限度の規制から免除することとしている。 2 規制の見直し等の動き (1)USDAによる規制の見直し ア 組織の見直し USDAによる見直しの一つとして挙げられるのは、組織の改編である。 遺伝子組換え作物の規制については、動植物検査局(APHIS)の植物保護・検疫(Plant Protection and Quarantine)と獣医サービス(Veterinary Services)の両ユニットが分担して行っ ていたが、2002 年 8 月、両ユニットの遺伝子組換え作物の規制などに関する部門を統合し、バイ オテクノロジー規制サービス(BRS、Biotechnology Regulatory Services)というユニットを新 設している。 その後、2003 年 10 月には、BRS内に規制の実効性を担保するためのユニットを新設している。 イ 野外実験などについての規制強化 2002 年以後にUSDAが進めている見直しの大きなものとしては、野外実験などについての規制 強化がある。背景としては、近年、産業用・薬品用など、従来はあまり見られなかった食品以外の 用途への遺伝子組換え技術の導入が進んできており、従来の規制のままでは技術の進展に対応でき なくなるおそれがあるということがある。現に、2002 年には、医薬品用に開発中の遺伝子組換えト ウモロコシが大豆に混入するという事件(参考1)が起きている。
(参考1)大豆に医薬品向けの遺伝子組換えトウモロコシが混入
APHISは、2002 年 11 月 13 日、主として医薬品向けの遺伝子組換え作物を開発してい るプロディジーン社(本社:テキサス州)を連邦植物保護法(the Federal Plant Protection Act) 違反で調査中であると発表した。 APHISによれば、同年10 月の検査の際、2001 年に遺伝子組換えトウモロコシの野外実 験に使用されたネブラスカ州の大豆の圃場で、トウモロコシが自生しているのを発見した。こ れは、野外実験の許可の条件に違反するため、APHISは、プロディジーン社に対して、ト ウモロコシを取り除くよう指導した。しかしながら、トウモロコシがすべて取り除かれる前に、 大豆が収穫されてしまったため、APHISは、この大豆が貯蔵されているネブラスカ州の貯 蔵施設を差し押さえ、人間や動物のフードチェーンに入り込まないようにした。FDAがプロ ディジーン社と協議した結果、混入が指摘された大豆50 万ブッシェル(1 ブッシェル=27.216 キログラム)は、同社が購入することとなった。購入費用は、2 万ドル(1 ドル=約 122 円) を超えると見込まれ、同社はバイオディーゼル用として転売することにより損失の補填を図る と見られている。 また、APHISは、同年9 月に、プロディジーン社がアイオワ州でも許可条件に違反した ことを発見したとしている。アイオワ州では、2001 年に野外実験を実施した大豆の圃場と、 同年のシーズン当初に圃場から取り除かれたトウモロコシを積んでいた場所から、自生するト ウモロコシが見つかった。APHISの要求に基づき、その監督の下、プロディジーン社は、 野外実験圃場の周辺の155 エーカー(1エーカー=約 0.4 ヘクタール)のトウモロコシを焼却 処分にした。 APHISは、FDAと協力の上、プロディジーン社の許可違反状況について調査を進め、 どのような法的措置をとるか決定するとしている。 アメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)、アメリカ大豆協会(A SA)、全国トウモロコシ生産者協会(NCGA)の 3 農業団体は、今回の事件を受け、バイ オテクノロジーを利用して医薬品や産業用の作物の開発を支持していくことを再確認した。今 回のような違反事例が出たことを残念としながら、今回のAPHISが取った行動は現行の規 制制度がうまく機能したことを明らかにしたとし、食品供給の安全性を損なうことなく、医薬 品などのための遺伝子組換えという新技術を導入できると確信しているとしている。 環境保護団体は、遺伝子組換え作物の野外実験に対する批判の声を強めている。環境保護団 体の「憂慮する科学者の連合」(Union of Concerned Scientists)は、プレスリリースの中で、 背の低い大豆の中に生えたトウモロコシを取り除くことさえできない企業が、医薬品をコーン フレークに入り込まないようにするというより複雑なプロセスを実行できるとは信じられな いと批判した。そして、強固で透明性の高い規制システムを構築するまで、USDAは医薬品 や産業用の遺伝子組換え作物の野外実験や生産を最低 1 年以上モラトリアムにすべきだと主 張した。 また、食料品店等の団体であるグローサリー・マニュファクチュアラーズ・オブ・アメリカ (GMA)は、科学と連邦政府による規制が、遺伝子組換え作物によって生成されるタンパク 質などの物質を食品や飼料の供給体制から分離することを保証するまで、医薬品用の遺伝子組 換え作物については、バイオテクノロジー企業は非食用の作物を使用するよう研究を進めてい くべきだと主張した。また、全国食品加工業協会(National Food Processors Association)は、 バイオテクノロジー企業による自主規制ではなく、連邦政府による規制が必要であると主張し た。これまで、これらの食品産業団体は、遺伝子組換え技術の食品への応用については賛成し てきたが、医薬品向けの遺伝子組換え作物についてはスターリンク・コーンのときのように食 品のリコールを招きかねないことから、反対に回った形である。 医薬品向けの遺伝子組換え作物の取扱いについては、バイオテクノロジー企業の団体である BIOがトウモロコシなどの中西部地域での作付けのモラトリアムの方針を10 月に発表した ばかりであるが、食用作物への混入という懸念が早くも現実のものとなってしまった。幸い、 今回は、フードチェーンに載ることは防ぐことができたが、規制のあり方を含めどのような管 理が必要か、今回の事件をきっかけに議論が高まるものと思われる。
以下、USDAの規制見直しとそれに関連する動きを順次挙げていく。
① 全国研究会議が政府の遺伝子組換え作物規制に関する報告書を発表
2002 年 2 月 21 日、全国研究会議(National Research Council)は、「遺伝子組換え作物の環境へ の影響:規制の範囲と適切性」(Environmental Effects of Transgenic Plants: The Scope and Adequacy of Regulation)と題する報告書を発表した。
全国研究会議は、全国科学アカデミー(National Academy of Science)および全国工学アカデミ ー(National Academy of Engineering)の主要な実動部門であり、政府や議会に対する科学的・技術 的なアドバイスをするための民間・非営利の機関である。 報告書は、新しい遺伝子組換え作物の商業利用の前に、潜在的な環境への影響に関するより厳し い検討をするとともに、検討のプロセスにもっと国民が含まれるようにすることや、環境に関する テストやモニタリングが遺伝子組換え作物が商業化された後も続けられるべきであると勧告してい る。 遺伝子組換え作物の新種開発のための野外実験を行う際には原則として動植物検疫局(APHI S)に届出をすれば足りるが、この仕組みは検討のプロセスを合理化する上で非常に重要であり、 詳細な調査はリスクの可能性があるとされたときに限ってすれば足りるとした。しかしながら、届 出のプロセスが開発者側のデータに頼っており、公的かつ独立した科学的な情報がないこと、そし て野外実験の面積に何ら制限がない点を問題とした。 また、遺伝子組換え作物の新種の商業化に当たっては、規制からの除外申請が必要となり、AP HISは官報に環境影響評価のデータを載せて 60 日間のコメント期間を設けるが、実際にコメン トがなされたことはほとんどなかったとしている。 このため、報告書は、届出や規制からの除外に当たっては、APHISは官報の使用にとどまら ず、広く外部の科学的な意見や国民からの意見を求めるべきであるとするとともに、規制方針を変 える前には科学諮問グループに諮るべきであるとしている。 また、殺虫成分を生成するように遺伝子組換えされた作物については、標的でない生物に害を与 える危険性があるとともに害虫がその殺虫成分に抵抗を持つ可能性があるが、これらの点に関する APHISによる環境影響評価は一般的に表面的であるとしている。このため、APHISとして より厳格な分析を行うか、同様のリスク評価を行っている環境保護庁(EPA)に完全に委ねるべ きだとしている。 さらに、APHISでは規制からの除外の後、商業化後の環境への影響に関するモニタリングが 実施されていない点も問題であるとしている。計画的なモニタリングなしには、環境面での被害が 起こらないことを保証することができないからである。商業化前の試験では探知できなかったよう
な環境への影響や標的でない生物への打撃が大規模な作付けによって引き起こされる可能性がある ことから、商業化後のモニタリングが行われるべきであるとしている。 なお、報告書は、遺伝子組換え作物に対する規制の強化を謳う一方で、現行の規制はその他の農 業産品に対する規制よりは厳しいことを認めている。また、遺伝子組換え技術により開発された品 種と自然交配により開発された品種の間で環境へのリスクが異なるとは認められないとした。 この報告書について、バイオテクノロジー企業を代表するBIO(Biotechnology Industry Organization)は、報告書のいくつかの言葉や勧告には 100%同意できるわけではないが、「報告 書は現行システムを非難するものではなく、優れた業績を上げているすばらしい規制システムであ ることを証明するものである」とのプレスリリースを発表した。また、現行システムは報告書の多 くの勧告を十分に取り入れるだけ柔軟にできており、さらに良いものとなっていくだろうと述べた。 これに対し、遺伝子組換えに反対する消費者団体等が行っている活動である「遺伝子組換え警報」 (Genetically Engineered Food Alert)は、報告書は「現行の遺伝子組換え作物に対する規制は弱 く不適切である」との2 年間にわたる「警報」の主張を裏付けるものであるとのプレスリリースを 発表した。また、USDAに対して、関係機関がさらに徹底した調査をし、規制を強化するまで、 新規の野外実験や商業化のための規制からの除外のモラトリアムを宣言するように求めるとしてい る。 ② 薬品、産業用遺伝子組換え作物の野外実験への許可条件を強化 2003 年 3 月 6 日、APHISは、薬品や産業用の遺伝子組換え作物(PMPs: Plant-made Pharmaceuticals)について、野外実験の許可に際して課している条件を 2003 年産から強化する旨 を発表した。具体的な内容は、3 月 10 日、官報(Federal Register)に「Proposed Rules(規則の 提案)」の一つとして掲載された。 官報は、http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=2003_register&docid=fr10 mr03-7.pdf から閲覧可能である。 主な変更点は、以下のとおりである。 a)野外実験場の周辺の休耕地(Fallow zone)を周囲 25 フィートから最低 50 フィートに拡大する。 b)野外実験場およびその周辺の休耕地については、翌年の食用・飼料用の作物の作付けを制限する。 今までは、同種の作物の作付けのみが禁止されていた。 c)ハーベスター、プランターは、PMPsには専用のものを使用する。トラクターなどについては、 APHISの承認を受けた手続に基づき、野外実験場での使用後は特別に洗浄する。今までは、 すべての農業機械は、野外実験場で適切な洗浄をすれば足りた。 d)開発者は種子のクリーニング、乾燥について手続を定め、APHISの承認を受けなければなら
ない。今までは、作物の生産方法についてプロトコルの提出を求めるだけだった。 e)従事者が許可条件を遵守できるようにトレーニングプログラムを作成し、APHISの承認を受 けなければならない。今までは、従事者に適切な指示を出すとともに、実行できる能力を持った 人材を配置すれば足りた。 f)トウモロコシについては、周囲のトウモロコシとの交配を防ぐため、周囲 1 マイルにトウモロコ シが作付けされないようにする。今までは、0.5 マイル離れていれば足り、0.5~1 マイル以内に ついては、21 日以上作付けがずれていれば作付可能だった。 g)APHISによる立入検査数を増加する。今までは、生育期に 1 回というのが目標であったが、 すべての野外実験場につき、最低1 回は立入検査の実施することとし、その時期も生産上重要な 時期に実施(作付け前は場所の選定が適切か、作付け期には機械のクリーニングが適切に行われ ているかなどといった観点から実施。このほかに実施時期としては、生育期、収穫期、収穫後な どが挙げられている。)することとする。 これらの許可条件の強化に関する提案のほかに、①透明性を高め、関心を持つ団体や国民に公開 する情報を増やすためにどのような方策が取れるか、②野外実験の適切な制限のため、その手続が 根拠とする科学的データや技術的な原理を含め、他にどのような選択肢が考えられるか、③条件が 遵守されるよう、例えば第三者機関による監査など、どのような方法やアプローチを採るべきか、 の3 点について、意見を募集している。 食料品店等の団体であるグローサリー・マニュファクチュアラーズ・オブ・アメリカ(GMA) は、今回の提案を「第一歩に過ぎない」とし、規制の枠組みが確立するまでは新たな野外実験を許 可すべきではないと主張している。また、企業が非食用の作物を使って薬品を開発することが実用 的でないことを示すまでは、トウモロコシなど食用・飼料用の作物を薬品向けに使うことは認めら れるべきではないとしている。
消費者団体の食品安全センター(The Center for Food Safety)は、PMPsは、屋内のみで、 かつ、食用や飼料用でない作物についてのみ開発が認められるべきであるとして、「USDAの新た な規制は弱すぎる」と批判している。 遺伝子組換え技術の食品への適用については、少なくとも業界団体は食品業界も含め賛成であっ たが、PMPsについては、PMPsがフードチェーンに入り込むことによってリコール騒動が起 きる第2 のスターリンクコーン問題が発生することを恐れ、食品業界は慎重な姿勢を取っている。 ③ 産業用遺伝子組換え作物の野外実験について許可制に移行 2003 年 8 月 6 日、APHISは、従来は原則届出制としていた産業用の遺伝子組換え作物の野 外実験について、許可制に移行する暫定規則を発表した。
遺伝子組換え作物の米国内への輸入、州境を超えた移動および環境への放出(野外実験)につい ては、許可を必要とするのが原則であるが、93 年以降、審査の経験が蓄積されたものに限り、一定 の条件の下に届出制で足りることとされている。93 年に規則が改正された際、産業用遺伝子組換え 作物として想定されていたのは、油分を多く含む植物などであるが、このようなものについてはA PHISに審査の経験が蓄積されていたため、原則として届出で野外実験などが可能とされた。こ れに対し、医薬品用遺伝子組換え作物については、審査の経験が豊富でない上、科学的知見もそれ 程多く得られていなかったことから、引き続き許可を要することとされていた。 APHISが許可制への変更に踏み切った背景には、最近の産業用遺伝子組換え作物の野外実験 などに関する届出件数の増加がある。93 年から 2001 年までの間のこれらの届出はわずか 10 件に 過ぎなかったが、2003 年になってから暫定規則の発表までにすでに 5 件の申請が提出されている。 また、今後、洗剤用や紙生産のためのものなど従来想定されていたものとは異なるタイプの遺伝子 組換え作物の開発が予想されることから、一つ一つの案件を慎重に取り扱う必要が出てきているこ とも理由の一つである。 暫定規則に対する反応は、一般的に肯定的である。 バイオテクノロジー企業が構成する団体であるBIOは、暫定規則の制定を支持するとともに、 「消費者や関係団体が、硬直した規制体制の下ではなく、バイオテクロノジーの傘の下で常に生ま れ続ける発明という新しく変わりゆく分野を予測し、変化に対応できる能力を兼ね備えた柔軟な規 制体制の下で、バイオテクノロジー企業は運営していると自信を持つことが非常に重要なことであ る」とするプレスリリースを発表した。 産業用や薬品用の遺伝子組換え作物に対してやや慎重な姿勢を取ってきた全国食品加工業者協会 も、暫定規則を、植物から作られる産業用成分の政府による監督と封じ込め管理のよい第一歩であ るとしている。食品産業は、食品や飼料を汚染から守るため、今回の動きを支持しつつも、より強 力な監督が必要であるとしている。全国トウモロコシ生産者協会も食用・飼料用のトウモロコシか ら産業用のトウモロコシを隔離するための条件を課すことが大変重要であるとしている。 これに対して、消費者団体や環境団体からは、透明性の点において不十分との声が聞こえる。企 業秘密への配慮から、今回の暫定規則では開発中の遺伝子組換え作物の種類や目的、野外実験の場 所などを公表することを求めていないが、これは消費者の知る権利を害するものであると批判して いる。 暫定規則は同年8 月 6 日から有効となり、2004 年 12 月 31 日までで失効することとなっている。 なお、暫定規則の掲載された官報は、http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname= 2003_register&docid=fr06au03-3.pdf で参照可能である。
④ 遺伝子組換え作物に関する規制の見直しを提案 2004 年 1 月 22 日、APHISは、現在の遺伝子組換え作物の米国内への輸入、州境を超えた移 動および環境への放出(野外実験)についての規制の見直しを提案した。 今回のAPHISの提案は、許可制と届出制を組み合わせた現行システムを見直そうというもの である。APHISが目指しているのは、リスクに基づいてあらかじめ設定したレベルに基づいた 許可制のシステムと、長期間でのモニタリングを前提とする規制緩和である。今回の提案は、この ようなシステム変更の提案のために必要な情報や意見の提出を国民に求めるものである。 APHISが意見を求めているのは、主に以下の項目である。 -現在APHISは病害虫発生のリスクの観点から審査を行っているが、これを雑草発生のリスク の観点や天敵として利用するために開発された遺伝子組換え生物まで拡大することについて -野外実験の規制を①低リスクの作物、②未知の病気、雑草のリスクを有する作物、③薬用、産業 用など食用でない作物といったカテゴリーに分けて行うことについて -小さな問題ではあるが未解決の事項がある場合に、それを規制しながら商品化を認めることにつ いて -薬用、産業用など食用でない作物についての環境評価、許可条件について -薬用、産業用など食用でない作物を、政府の監視の下に閉鎖された環境で開発する場合の新たな 規制システムを設けることについて -審査を終了していない遺伝子組換え作物が、偶発的に低レベルで他の商業的作物や食品、飼料、 種子などに混入する場合の規制について 本提案は1 月 23 日に官報に掲載され(官報は、http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc. cgi?dbname=2004_register&docid=fr23ja04-11.pdf から参照可能である。)、APHISは、3 月 2 3 日まで意見を受け付けた上で、それに検討を加え、新たな仕組みについての提案(環境影響提言 (EIS、Environmental Impact Statement))を行う予定である。
バイオテクノロジー企業が構成する団体であるBIOは、「USDAが国民に(遺伝子組換え作物 の審査に参加する)機会を豊富に与え、審査をオープンで透明性のあるものにしようとしているこ とを支持する」と、今回の提案に賛成するプレスリリースを発表した。 一方、遺伝子組換え技術に対して批判的な環境団体や消費者団体も、環境影響評価の考え方はか ねてから主張してきたことであることから、今回の提案を一応は歓迎している。しかし、一般にシ ステムの見直しには長期間を要することとそれが必ずしも規制強化にはつながらないことを警戒し ている。 USDAでは、今年中にEISの案を発表したいとしている。遺伝子組換え技術に対する賛成派、 反対派いずれにとっても、本格的な論戦は案が発表されてからであり、最終化されるまでには更に
年月が必要である。 (2)FDAによる規制の見直し 2000年1月17日、FDAは、遺伝子組換え作物の事前届出に関する規則と表示についてのガイド ラインを発表した。 前者は、現在FDAが行っている事前協議の仕組みを正式な届出という仕組みにいわば格上げす るものであり、内容が実質的に変化するものではない。また、後者は、あくまでもガイドラインで あり、遺伝子組換え作物の表示を義務付けるものではない。 なお、規則案およびガイドラインは、http://www.cfsan.fda.gov/~lrd/biotechm.htmlから参照可能 である. ア.販売前の届出を義務付け
規則案(Premarket Notice Concerning Bioengineered Foods)では、バイオ技術を用いた食品・ 飼料(Bioengineered Foods)の販売の120日前に、FDAに対し届出を行うことを義務付けている。 また、規則では、届出に先立って、安全性、栄養面その他の規制に関する問題を確認、議論する ために、FDAと協議を行うことを推薦している。バイオ技術を用いた食品・飼料用でない作物で も、食品・飼料に混入する可能性があるものについては、協議を行うことが奨励される。 届け出では、開発の方法、挿入された遺伝子が抗生物質に対する耐性を持つ場合についての議論、 食品中に導入または組み換えられた物質のアレルゲン性その他安全面での情報・データ、当該食品 とこれに対応する従来の食品との比較などの情報を提供しなければならない。 FDAは120日以内に、届出について、「評価を延期する」、「届出者の見解の基礎とならない」、「現 段階で質問はない」、「届出者が取り下げた」のいずれかの回答を行う。延期は120日以内とされる。 「基礎とならない」との回答に関らず、販売を行った場合、FDAは、当該食品の法的な位置付け を検討の上、検査・公表・押収などの措置を講ずる。 届出が行われたことおよび提出された情報は公表が原則とされ、その対象外とするためには届出 者が営業上の秘密であることを証明しなければならない。FDAの届出の評価、回答についても公 表される。事前協議を行っていること、それに当たって提出された情報も同様である。 イ.遺伝子組換え作物不使用の表示 上記規則案とは別に、「食品がバイオ技術を用いて開発されたか否かを示す任意の表示のガイドラ イン」(Guidance for Industry: Voluntary Labeling Indicating Whether Foods Have or Have Not Been Developed Using Bioengineering)と題する案が発表された。
このガイドラインでは、「表示は真実であり、誤解を与えるものであってはならない」とするFF DCAの規定(403条(a)(1))に基づき、遺伝子組換え作物を含む食品、含まない食品の任意の表示 につき検討を行っている。 まず、消費者フォーカスグループに対し調査を行った結果として、Genetically Modified Organismの頭文字をとった遺伝子組換え作物、あるいはGMという言葉については、消費者にバ イオ技術を指す言葉として理解がされていないとしている。 また、遺伝子組換え作物フリーという表現については、 ・従来の交配技術によるものも" genetically modified"の一つであり、不正確である、 ・種子やヨーグルトを除き、ほとんどの食品は生物体(Organism)でなく、誤解を与える、 ・「フリー」との表示については「0%である」と消費者に受け取られるが、実際はバイオ技術を用 いた物質が偶発的(adventitious)に存在することもありうる として、不適当であるとしている。 「フリー」と表示するためには、その定義、どの程度までバイオ技術を用いた物質の存在が許容 されるかの基準が必要となるが、現在多くの食品について少量の混入の検出は不可能であり、FD Aとして「フリー」の基準の作成についての情報は持ち合わせていないとしている。したがって、 FDAとしては、「フリー」との表示を行わないか、「0%である」ということを意味しない文脈で 用いることを薦めている。 なお、このガイドライン案は、あくまでもガイドラインであり、ガイドラインで適切ではないと された表現を使用したことをもって直ちに何らかの処分の対象になるわけではない。しかしながら、 FDAに照会したところ、例えば、ガイドラインで使用することが適切ではないとされている「free」 という表現を使った場合に、その食品から遺伝子組換え作物が材料として検出されたときには、不 当表示に当たり、FFDCA403 条(a)(1)に違反するものとして取り扱われることとなるとしている。 以上を踏まえて、バイオ技術を用いていない食品・材料についての表示の例として、次のような ものをあげている。 「バイオテクノロジーを用いて生産された材料を用いていない。」 「この油は遺伝子を操作(genetically engineered)されていない大豆から製造されている。」 「このトマトの生産者はバイオテクノロジーを用いて開発された種子を作付けていない。」 また、バイオ技術を用いていない食品が、その他の食品より優れている、安全である、高品質で あるということを示唆する表現は誤解を与えるものとされる。 このほか、一部の材料がバイオ技術を用いていないとの表示が食品全体がバイオ技術を用いてい ないと受け取られる場合、いまだバイオ技術が開発・販売されていない作物についてバイオ技術を 用いていないとする表示は、誤解を与えるものとされる。
製造業者は、表示が真実で誤解を与えるものでないことを証明する必要がある。 証明に当たっては、生鮮食料品のように試験方法が確立している場合にはこれによるべきである が、油のように試験方法のない加工食品の場合には食品の供給元を区別して文書で証明することが 重要であるとされる。 また、バイオ技術を用いた食品とその他の食品を分別するためには特別の取扱いが適当であり、 製造者は分別の過程を証明するための記録を保持すべきであるとされる。その際、農家、穀物業者、 その他の生産・流通過程の関係者から、証明または宣誓書をとることが適切な場合もある。 ウ.その後の動き FDAでは、規則案については2001 年 4 月 3 日まで、ガイドライン案については同年 3 月 13 日までコメントを受け付けたが、2004 年 2 月末の時点では、まだ最終案は発表されていない。 2003 年 6 月 17 日に実施された下院農業委員会の公聴会において、FDAのクロウフォード副コ ミッショナーは、これらの提案について、以下のように答弁している。 「コメント受付の期間は終了し、現在FDAは、受領した大量のコメントの評価をしているとこ ろである。規則とガイドラインの提案は、政策や法的な問題点を引き起こすものではあるが、国民 の健康という点では根本的な問題を投げかけるものではない。現在実施されている任意の協議プロ セスはよく機能している。」 (「現在の協議プロセスは任意であるにもかかわらず、企業は常に協議しているのか」との質問に 対して) 「我々は、それが事実であると信じている。協議をしていない企業は見られない。また、そのよ うな企業が出てくるとは思えない。」 (「それが事実だとすれば、なぜFDAは事前協議を義務化しないのか」との質問に対して) 「我々は提案した規則案に対してコメントを受け取っている。提案されたのは、2 年と少し前の ことである。期限までに115,000 のコメントを受け取り、現在評価中である。しかしながら、現行 のシステムはよく機能しており、また、義務化すべき国民の健康上の理由もないため、FDAにと って、規則の最終化は、現時点で高い優先順位ではない。」 FDAが規制の見直しに積極的でない理由には、規則案、ガイドライン案ともに、前政権である クリントン大統領の下で提案されたものであることもあるだろう。当分の間、見直し案が最終化さ れる見込みはなさそうである。 (3)EPAによる規制の見直し 2001 年 1 月 17 日、EPAは、FIFRAおよびFFDCAに基づき Bt 作物など自ら農薬を発 生する作物を規制する規則を発表した。その後、EPAは大統領選後の人事異動に伴いこれを取り
下げ、7 月 19 日に同様の規制を実施する規則を発表した。 Bt 作物などは、その発生する農薬成分にかんがみ、これまでもFIFRA・FFDCAにより規 制を受けていたが、今回の新規則は現行の規制・科学的評価のシステムをより明確化するものと位 置付けられている。 新規則では、Bt など作物自らが発生する農薬について、従来用いられていた「作物農薬」 (Plant-Pesticide)から「作物内保護物質」(PIPs、Plant-Incorporated Protectants)に名称 を変更している。 今回の規則では、他花受精可能な作物の間で得られる作物内保護物質のうち、従来の品種交配に よるもののみ、FIFRA・FFDCAの規制から除外されることとされた。ただし、マイナスの 影響が発見された場合には報告の義務を課されることとなる。また、農薬成分を発生する核酸(ヌ クレイン酸)については、FFDCAによる残留限度の規制から免除されることとされた。 94年の提案のうち、 ① 他花受精の可能な作物の間で遺伝子組換えにより得られる作物内保護物質 ② 作物そのものに影響(作物に作用して厚いロウ状の表皮を形成させるなど)を与える作物内保 護物質 ③ ウィルスコート・タンパク質 については、さらに一般のコメントを求めることとされ、結論が出されていない。 これらの点については、2000年4月の全国科学アカデミーの報告書(参考2)においても、規制か らカテゴリーとして除外するのは適当でないとされていた。 EPAは、この科学アカデミーの報告書に対する意見も含めて、30 日間一般からの意見を受け付 けるとしていたが、その後、検討を深めるため、提出期限をさらに延長し、2001 年 9 月 19 日まで 意見を受け付けることとした。 EPAの新規則はhttp://www.epa.gov/scipoly/new.htm から入手可能である。 EPAでは、9~12 カ月で規則を発表するとしていたが、2004 年 2 月末現在、新たな規則案は 発表されていない。