はじめに 我々は,1984 年に初めて耳鼻咽喉科,脳外科, 形成外科のチーム医療による前頭蓋底腫瘍の根治切 除と再建による治療を開始し現在に至っている。チ ーム医療によって,それまで不可能であった頭蓋底 に浸潤した悪性腫瘍の根治手術が可能となり,5 年 生存 率 は 5% 以 下 か ら 約 60% と 飛 躍 的 に 向 上 し た1)。チーム医療存続のためには関連各科の信頼関 係が重要であることは言うまでもないが,我々形成 外科医すなわち再建側としては,いかに安全で確実 な再建を提供するかということに留意し続けてき た。現在当施設では,頭蓋底の再建手技はその安全 性の確立とともに標準化され,頭蓋底に及ぶ顔面多 発外傷や先天異常に対しても応用されている2,3)。 本論では,前頭蓋底の再建において安全性を高め るため,すなわちいかに感染を回避し最小限にとど めるかについての我々の手技と考え方について述べ る。 Ⅰ. 再建材料 頭蓋底再建の是非は,生命にかかわる。よって, 安全で確実な再建が行われることが不可欠である。 また,頭蓋底の再建は,腫瘍切除医の頭蓋腔側から のアプローチ(脳外科医),鼻腔側からのアプロー チ(耳鼻科医),そして再建外科医による再建とい う一連のチーム医療の一環として行われる。したが って,その再建手技はシンプルかつ低侵襲で短時間 に行われることが求められる。以上の点で我々は, 再建材料は有茎の局所皮弁である側頭筋骨膜弁と前 頭 筋 骨 膜 弁 が 最 適 か つ 最 善 で あ る と 考 え て い る2∼8)。これらの局所皮弁は術野の展開と同時に簡 便に挙上し準備されるため手術時間の短縮や侵襲の 軽減という点で非常に有利である。当然,これらの 局所皮弁が組織量としての不足,腫瘍の浸潤,放射 境界領域
前頭蓋底の再建術式の標準化と外傷への応用
りき まる ひで あき きよ かわ けん すけ力 丸 英 明
清 川 兼 輔
前頭蓋底の再建において,有茎の局所皮弁である側頭筋骨膜弁と前頭筋骨膜弁は大変有用な再建材料 である。これらの再建材料の解剖と血行を熟知して局所皮弁として適切に用いることで,前頭蓋底の再 建術式はその安全性が高まり標準化された。したがって,当施設では外傷や先天異常の症例に対しても 応用している。 前頭蓋底の再建とは,硬膜欠損部を watertight に再建すること及び頭蓋腔と鼻・副鼻腔を確実に遮断 することである。硬膜欠損部の再建には,薄くしなやかで血行を有する側頭筋骨膜弁が最適かつ最善で ある。側頭筋骨膜弁が血行を有することで,術後早期に硬膜欠損部が watertight となり鼻腔からの逆行 性感染に対する強力なバリアーとなる。したがって,たとえ頭蓋底に感染が生じたとしても局所感染に 留まり髄膜炎や脳膿瘍などの重篤な合併症は回避される。また,前頭筋骨膜弁の筋体の部分で頭蓋腔と 鼻・副鼻腔との確実な遮断を行う。前頭蓋底に骨移植を行う場合は,前頭筋骨膜弁より頭蓋腔側に移植 を行うことで移植骨が鼻腔側に露出しないことに留意する。前頭蓋底の再建手技を外傷に応用する場合 には,篩骨蜂巣の削除と蝶形骨洞の開窓による鼻腔側へのドレナージが再建を成功させるうえで大変重 要である。 本術式を用いて 53 例の前頭蓋底再建を行った。5 例に頭蓋底の局所感染を認めたが局所のデブリー ドマンと洗浄処置によって治癒した。全例で髄膜炎や脳膿瘍などの重篤な合併症は認めなかった。キーワード:頭蓋底再建,側頭筋骨膜弁(temporal musculo―pericranial flap),前頭筋骨膜弁(frontal musculo―
pericranial flap)
線の影響,複数回の手術などで使用できない場合に は,遊離筋(皮)弁(主に腹直筋皮弁)を選択する (表 1)8)。しかし,多くの場合これらの局所皮弁で 十分に再建が可能である。 1. 術野の展開と再建材料の準備 頭皮上に両側冠状切開(A)と両側側頭筋骨膜弁 (B)及び前頭筋骨膜弁(C)のデザインを同時に行 う。十分な幅(10cm 程度)の側頭筋骨膜弁を採取 するため,両側冠状切開のデザインは頭頂より後方 のラインで両側耳前部に至るように行う。また整容 的にも,両側冠状切開はより後方で行った方が術後 の瘢痕が目立ちにくい。前頭筋骨膜弁のデザイン は,両側眉毛上部の前頭筋の全幅を茎とし頭頂部に 向かって行う。その長さは,前頭蓋底後方まで十分 に被覆できる長さ(約 10∼12cm)とする(図 1)。 冠状切開から前方に向かって頭皮の剥離を行う。側 頭筋骨膜弁の部分は帽状腱膜直下で鋭的に剝離を行 い,その下層にある loose areolar tissue を損傷しな いように留意する(図 2)。頭皮の剥離が前頭筋骨 膜弁の点線のデザインに達したら,頭皮の点線のデ ザインに沿って骨膜に切開を加えそこから眼窩に至 るまで骨膜下に剥離を進める。これによって,側頭 筋骨膜弁が頭蓋骨上に,前頭筋骨膜弁が剥離挙上し た頭皮側に温存された状態となる。なお,頭皮の剥 離操作において顔面神経の側頭枝は帽状腱膜より表 層を走行しているため損傷されることはない。 次に,頭蓋骨上に温存した側頭筋骨膜弁の正中と 後縁に切開を行いそれらを両側の側頭部に向かって 図 3 挙上した両側側頭筋骨膜弁(矢印) 図 1 両側冠状切開(A),側頭筋骨膜弁(B),前頭 筋骨膜弁(C)のデザイン 図 2 頭皮の剝離
帽状腱膜直下で loose areolar tissue が骨膜上に温存 されるようにメスで鋭的に剝離する。
骨膜下で(側頭筋の部分は筋体直下で)頬骨弓の手 前まで剥離し,左右の側頭筋骨膜弁をそれぞれ挙上 する(図 3)。挙上した側頭筋骨膜弁は生理食塩水 を含んだガーゼに包んで,乾燥から保護する。これ らの操作によって,再建材料が準備されるとともに 前頭骨全体が広く展開される。続いて,広めの両側 前頭開頭を行った後 supraorbital bar を骨切りして 除去することで,前頭蓋底のほぼ全域が術野として 広く展開される(図 4)。 2. 側頭筋骨膜弁について 側頭筋骨膜弁は,側頭筋に連続した薄くしなやか な頭頂部の骨膜弁である。頭頂部正中で二分され左 右 2 枚の骨膜弁が利用可能である(図 3)。側頭筋 骨膜弁は,①血行を有するため watertight な硬膜の 再建が確実に行える,②再建部位に隣接し術野の展 開とともに容易に挙上可能である,③薄くしなやか で適度な強度を有する,④十分な広さを採取可能で ある,⑤採取部の犠牲が整容面も含めて最小限であ るなど,多くの利点を有する8)。そのため,硬膜の 再建において最善かつ理想的な再建材料といえる。 一側の側頭筋骨膜弁によって前頭蓋底の約 2/3 の 範囲の硬膜欠損部の再建が可能である。 血行は,深側頭動脈の血流が側頭筋を介して骨膜 上の loose areolar tissue と骨膜を一体として栄養す ることで保たれる(図 5)。すなわち,側頭筋骨膜 弁は骨膜上の loose areolar tissue の血流がその血行 を安定させるうえで大変重要である。よって,術野 展開時の頭皮剝離の際は,先に述べた 如 く loose areolar tissueが骨膜上に温存されるように帽状腱 膜直下で鋭的に剝離する(図 2)。また,側頭筋の 起始部(temporal line)から約 2cm の範囲に側頭 筋と loose areolar tissue との血行の net work があ
(a)広く展開された術野 (b)切除された supraorbital bar と前頭骨骨弁
図 4 前頭蓋底腫瘍はすでに切除されている
る(図 5)9)。側頭筋骨膜弁を再建に使用する際は側 頭筋膜を側頭筋から剝離して受動するが,必ずこの 2cmの幅の部分の loose areolar tissue と側頭筋膜を 側頭筋骨膜弁側に温存した状態で挙上することが極 めて重要である。これによって,側頭筋から骨膜弁 への深側頭動脈の血流が維持される。
3. 前頭筋骨膜弁について
前頭筋骨膜弁は,pericranium10)(骨膜とその表層 の loose areolar tissue)を前頭筋とともに挙上した flapである。筋体を有するため pericranium のみで 挙上した前方茎の pericranial flap10,11)(骨膜弁)に 比して血行の点で非常に優れる。この筋体の部分に よって前頭蓋底の約 80% の範囲の頭蓋腔と鼻・副 鼻腔の確実な遮断が可能である7,12)。筋体を含まな い前方茎の pericranial flap は,部分壊死を生じる場 合もあり血行的には不安定である7)。 前頭筋骨膜弁の栄養血管は眼窩上動脈及び滑車上 動脈であるが,前者は pericranium と前頭筋の双方 を,後者は前頭部皮膚の正中部分を主に栄養してお り,前者が優位である6,12)。両側冠状切開による術 野展開の際に前頭部頭皮に温存しておき,再建の際 に前頭部頭皮から剝離して使用する(図 6)。その 際,これらの栄養血管を損傷しないことに留意す る。 Ⅱ. 前頭蓋底の再建 前頭蓋底の再建とは,硬膜欠損部を watertight に 再建すること及び頭蓋腔と鼻・副鼻腔を確実に遮断 することである。その最大の目的は,鼻・副鼻腔か ら頭蓋内への逆行性感染を予防し脳実質への感染を 阻止することである。そのため硬膜の再建には血行 を有する側頭筋骨膜弁を用いる。大腿筋膜などの血 行を有さない自家組織と比較して血行を有する側頭 筋骨膜弁は早期に欠損部周囲の硬膜と癒合するため watertightな硬膜欠損部の修復がより早期に完成す る。その結果,万が一頭蓋内に感染が生じたとして も硬膜内腔や脳実質への感染の波及は避けられる。 また,血行を有するためそれ自体が細菌に対するバ リアーとなって感染に対する抵抗性を発揮する。 頭蓋腔と鼻・副鼻腔の遮断には,その欠損範囲が 篩骨篩板の前方 2/3 程度(約 2×2cm2 )までの場合 にはもう一側の側頭筋骨膜弁で,欠損の大きさがそ れ以上で篩骨篩板の全域から眼窩上壁に至る場合に はより安定した血行を有する前頭筋骨膜弁を用いる (表 1)8)。すなわち,前頭蓋底の欠損範囲が広い場 合や眼摘などで頭蓋底が露出する場合には,前頭筋 骨膜弁の感染に強い筋体の部分で頭蓋腔と鼻・副鼻 腔また眼窩上壁とともに眼摘がなされている場合に は外部とを確実に遮断する。 1. 側頭筋骨膜弁による硬膜の再建 術野展開の際に挙上した側頭筋骨膜弁を用いる。 その茎の部分(側頭筋)は,先に述べたように側頭 筋から骨膜弁への血行を確保するため側頭筋起始部 から 2cm 下方のラインで側頭筋膜に切開を加え, それより下方の側頭筋と筋膜を剥離して分離する (図 5)4,7)。これによって,茎の部分の自由度が増 し,側頭筋骨膜弁の前頭蓋底への移動が行いやすく なる。また,側頭筋膜(浅葉と深葉)が側頭部に温 存されることで,側頭部の陥凹変形が最小限に留め 図 7 側頭筋骨膜弁による硬膜欠損部の再建(模式図) 側頭筋骨膜弁を欠損部周囲の硬膜に広く重ねて接触面 積を広くとる。 図 6 挙上した前頭筋骨膜弁(矢印)
られる。 側頭筋骨膜弁を硬膜欠損部周囲の残存硬膜との接 触面積を広くとって疎に縫着する。この際,血行の 長軸方向に平行に糸をかけまた疎に縫着すること で,筋骨膜弁と欠損部周囲の硬膜の血行を阻害しな いことが重要である(図 7,8)4,7,8)。通常,術後 4∼ 5日間(最大 7 日間)は硬膜外腔に留置したドレー ンからの髄液の漏出を認めるが,血行を有する側頭 筋骨膜弁は 4 日目頃には欠損部周囲の硬膜と癒合す るため watertight となり,髄液の漏出は完全に止ま る7)。よって spinal drainage は行わず,早期に脳が 膨らむことで硬膜外腔の骨弁の間の死腔が消失する ことを優先する。側頭筋骨膜弁が使用できない場合 は,前頭筋骨膜弁を同様に用いる。いずれの筋骨膜 弁も使用できない場合は,大腿筋膜を用いる。ただ し,大腿筋膜は血行を有していないため,その上を 筋弁などの血行の豊富な組織で必ず被覆する。 2. 頭蓋腔と鼻・副鼻腔の遮断 頭蓋底の欠損範囲が篩骨篩板前方 2/3 程度の場 合は,側頭筋骨膜弁を用いる。側頭筋骨膜弁を側方 から前頭蓋底に敷き込み,欠損部周囲の骨に広く overlapさせる。この際,欠損部周囲の骨に小孔を 数カ所あけて flap を骨に縫合固定する。また,こ の程度の広さの欠損では骨移植の必要はない。 頭蓋底の欠損範囲が篩骨師板前方 2/3 を越えそ の全域から蝶形骨洞や眼窩上壁(眼摘を含む)に至 る場合は,前頭筋骨膜弁を用いる(図 6)。前頭筋 骨膜弁は,supraorbital bar の下方から前頭蓋底に 敷き込む(図 9)。この際,supraorbital bar の下縁 を削って前頭筋骨膜弁の通るスペースを作製し,前 頭筋骨膜弁の pedicle が圧迫されないように十分に 配慮する。骨切りによって一旦遊離した supraorbital barは,前頭筋骨膜弁上に位置することで鼻・副鼻 腔に露出しないため,感染の危険性が軽減され手術 の安全性がさらに高まる。前頭筋骨膜弁を,側頭筋 骨膜弁と同様に欠損部周囲の骨に広く overlap さ せ,前頭蓋底欠損部周囲の骨に小孔をあけそこに縫 (a)硬膜欠損部,脳実質が露出してい る(矢印) (b)右側 頭 筋 骨 膜 弁(矢 印)に よ っ て硬膜欠損部を再建した所見 図 8 側頭筋骨膜弁による硬膜欠損部の再建 図 9 前頭蓋底の再建(模式図) A:側頭筋骨膜弁,B:前頭筋骨膜弁,C:supraorbi-tal bar,D:移植骨,E:前頭洞の頭蓋腔化,F:外傷 症例における篩骨洞蜂巣の削除と蝶形骨洞の開窓
合固定する。この際,前頭筋骨膜弁の鼻副鼻腔側に 露出した部分には,可及的に網状分層植皮を行い, 創の早期上皮化を図る。頭蓋底の骨欠損範囲が広い 場合には,脳を支える目的で骨移植を行う。特に, 眼窩上壁が広く欠損する場合には,拍動性眼球突出 を生じる恐れがあるため骨移植を行った方が良い。 骨移植は,前頭筋骨膜弁上で骨欠損部を橋渡しする ように行う(図 9)。移植骨は,開頭した際の前頭 骨骨弁から内板を採取して用いる。移植した骨は, 鼻・副鼻腔に露出すると感染の原因となるため決し て鼻・副鼻腔に露出させてはならない。眼窩内側壁 の欠損を合併している場合には,腸骨を用いて再建 する。腸骨は海綿骨であるため生着しやすく,眼窩 内側壁に移植することで鼻・副鼻腔に露出しても感 染の原因にはなりにくい。 3. 閉頭と術後管理 前頭部を頭蓋腔化するために,前頭骨骨弁と su-praorbital barの前頭洞後壁及び前頭洞粘膜を完全 に削除し同部をサージカルバーなどで丁寧に削る (図 9)。前頭骨骨弁と supraorbital bar を元の部位 に戻しプレートもしくはワイヤーで固定する。この 際,硬膜欠損部の再建と頭蓋底の遮断に用いた側頭 筋骨膜弁や前頭筋骨膜弁の pedicle の部分を圧迫し ないように骨弁の同部の辺縁を十分に削っておくこ とが重要である(図 10)。閉鎖式硬膜外用ドレーン を,硬膜外に 1 本,皮下に 3 本留置し創を閉鎖す る。陰圧ドレーンは,髄液を吸引する恐れがあるた め用いない(図 10)。閉鎖式ドレーンのバックは頭 の高さよりやや低い位置におき,軽い陰圧がかかる ようにする。閉創後は,頭部全体を綿花などで軽く 織からの浸出液の貯留を防止するため 1 週間程度留 置する。 Ⅲ. 外傷に対する応用 我々は,1992 年以降本法を脳挫傷や髄液瘻を認 める前頭蓋底の損傷を伴う頭部顔面多発外傷にも応 用してきた2)。このような外傷例では,治療が遅れ ると鼻・副鼻腔側からの逆行性感染によって髄膜炎 や脳膿瘍を生じ致命的となる可能性が高くなる。ま た,軽度の髄液鼻瘻であっても数年後から 10 数年 後に髄膜炎を発症し繰り返す可能性もある14)。基本 的手技は前述の如くであるが,外傷症例に応用する 際に注意すべき点について述べる。 1. 術野の展開 前述の如く術野の展開とともに flap を挙上し温 存する。大きめの両側前頭開頭を行い硬膜と前頭蓋 底の損傷部位を確認するが,篩骨篩板の部分を剝離 する際に嗅神経を切断せざるを得ない。このように 損傷が頭蓋底に及び髄液鼻瘻を生じている症例で は,嗅覚の異常すなわち嗅神経の損傷を約 80% に 認めるとの報告15)もあり,救命のためには残りの 20 %程度の症例の嗅覚の犠牲はやむを得ないと考えて いる。広い術野で硬膜の損傷部位を十分に確認し, 外傷に伴う異物や小骨片などを十分にデブリードマ ンし洗浄する。 2. 篩骨洞根本術と前頭洞 頭蓋腔側の篩骨篩板の部分から鼻腔側に向かって 篩骨蜂巣の削除を行い,篩骨洞と蝶形骨洞を十分に 開放し鼻腔へのドレナージをつける(図 9)。この 理由は,術後に鼻・副鼻腔に生じた感染が頭蓋底に 波及するのを予防するためであり,また仮に頭蓋底 に何らかの感染が生じたとしても,それが頭蓋内や 硬膜内腔に波及し重篤な合併症に至るのを予防する ためである。我々は,これまで外傷の症例で頭蓋底 に移植した骨に感染が生じた症例を 2 例経験してい 図 10 閉頭 A,B:骨を削って十分なスペースを確保した側頭筋 骨膜弁の挿入部,C:硬膜外腔に留置したドレーン
るが,硬膜が側頭筋骨膜弁によって watertight に再 建されており,また鼻腔へのドレナージが十分に効 いていたため,局所感染に留まり重篤な合併症には 至らなかった。これら 2 症例は,創部のデブリード マンと洗浄処置によって治癒した。 Ⅳ. 症例及び結果 前頭蓋底の腫瘍切除に伴う頭蓋底再建を 28 例施 行した。全例で髄膜炎や脳膿瘍などの重篤な合併症 は生じなかった。重症の糖尿病の 1 例に局所感染を 認めたが局所のデブリードマンと洗浄によって治癒 した。 外傷による前頭蓋底の損傷に対する頭蓋底の再建 を 25 例に施行した。局所感染を初期の 4 例に認め た。1 例は,頭蓋底に移植した頭蓋骨内板が鼻腔に 露出していたことが原因であり手技的な問題であっ た。また,もう 1 例はアレルギー性鼻炎による頻回 の咳によって頭蓋底に移植した骨片が感染したこと が原因であった。他の 2 例は,脳の膨らみが不良で 硬膜外腔に死腔を生じたことが原因であった。4 例 とも,移植骨の除去もしくは頭蓋骨骨片の除去と洗 浄処置によって感染は治癒し,髄膜炎や脳膿瘍など の重篤な合併症は認めなかった。 全例で感染が硬膜内腔に波及し重篤な合併症を生 じた症例はなかった。 (症例提示) 26歳男性。交通外傷によって前頭骨骨折,脳挫 傷,前頭蓋底骨折,le Fort I 型上顎骨骨折,左頬骨 骨折を受傷した(図 11a,b,c)。受傷後 3 日目に 頭蓋内血腫除去,硬膜再建,前頭蓋底再建および顔 (a) (b) (c) (e) (d) (f) 図 11 脳挫傷を伴う前頭蓋底骨折に顔面多発骨折を合併した外傷症例 (a,b)術前 3D―CT,(c)術前 CT 前額断,(d)術後 3D―CT,(e)術後 CT 前額断,矢印:篩骨蜂巣 が削除され鼻腔へのドレナージが広く確保されている,(f)術後正面像
最小限となる。また,血行を有する側頭筋骨膜弁に よって硬膜欠損部は watertight に再建され感染が硬 膜内腔や脳実質に波及することがなく重篤な合併症 は回避される。再建の成功のポイントは,局所皮弁 を局所皮弁として基本に忠実に正しく取り扱うこと (血行形態の熟知,愛護的な操作,無理な緊張をか けないこと,ねじらないことなど)である。 参 考 文 献 1) 平野 実:頭頸部腫瘍に対する頭蓋底外科,前 頭開頭下の手術.日耳鼻 94:343―350,1991. 2) Kiyokawa K, Tai Y, Yanaga H, Inoue Y,
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Summary
STANDARDIZATION OF THEMETHODS OF THE
RECONSTRUCTION OF THEANTERIORSKULLBASE AND THEAPPLICATION TO THESKULLBASEINJURY
Hideaki Rikimaru, PhD, MD Kensuke Kiyokawa, PhD, MD
Department of Plastic and Reconstructive Surgery and Maxillofacial Surgery,
Kurume University School of Medicine
In reconstruction of the anterior skull base, it is im-portant to repair the dural defect to be a watertight, and to surely intercept between the cranial cavity and the nasal or para―nasal cavity. The temporal musculo― pericranial flap that is the local flap with the blood circu-lation is the most useful reconstructive material for the dural defect. In the interception between the cranial cavity and the nasal or para―nasal cavity, the frontal musculo―pericranial flap is used. The reconstructive method became safe by using these flaps. Therefore, it
was standardized and adapted to the skull base injury in our institution.
We performed this reconstructive method on 53 cases after the resection of the tumor of the anterior skull base and the skull base injury. The local infection was developed in 5 cases and they were all healed by de-bridement and irrigation. None of the patients
devel-oped severe complication including liquorrhea, meningi-tis, or brain abscess. This method using these local flap was very safe and effective.
Key words:reconstruction of the skullbase,
tempo-ral musculo― pericranial flap, frontal musculo―pericranial flap