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2. 研究成果 乳児の視覚のパフォーマンスに関する U 字型変化の発見 人間の視覚系は多数のモジュールから構成されていると考えられている 例えば 視覚刺激は 形 色 動きのような特徴に一度分解され それぞれが特定のモジュールで処理されると考えられている それならば モジュールは生得的に存在するのか

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Academic year: 2021

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赤ちゃんの脳におけるモジュールの分化と統合

多 賀 厳太郎

1.研究のねらい

人間の運動、知覚、言語、認知などの特定の機能の生成には、大脳の局在した領域の活動が関 連しているという知見が蓄積されてきた。このことは大脳が多数の機能的モジュールの集合体として 捉えられることを示唆している。しかし、個々のモジュールは他のモジュールと完全に独立に働くのか、 それとも強く相互作用しているのか。多数のモジュールが同時に働くときにはどのように個体としての 統合が成立するのだろうか。こうした脳の基本的な機構はまだ明らかになっていない。さらにいえば、 モジュールありきという仮定そのものは本当に正しいだろうか。モジュール的な機構があるにしても、モ ジュール自体はどのようにしてできるのだろうか。こうした脳の「モジュール性」は、未解決問題なので ある。 人間が持つもう一つの重要な側面は、身体を通じて環境と動的に相互作用するという点である。 環境も身体も脳も、それぞれ固有のダイナミクスに従って刻々と変化する動的システムとして捉えられ る。一般に、非線形非平衡状態にある動的システムは、自己組織的に時空間秩序を形成することが 知られている。こうしたダイナミックな「身体性」が、脳の「モジュール性」とどのように関連しているかと いう問題は、人間というシステムの動作原理を理解する上で本質的である。 私は、このような問題を解決する手がかりの一つは赤ちゃんにあると考えた。つまり、人間という極 めて複雑なシステムが作られていく過程を詳しく観察することで、基本的な動作原理が見えてくるの ではないか。しかし、赤ちゃんは極めて研究が難しい対象である。成人のように特定の課題を理解し て遂行してもらうことは不可能だからである。したがって、研究方法としては行動観察に頼るしかない。 それでも、新生児の行動は「タブララサ(白紙)」の状態ではなく、従来考えられていたよりはるかに複 雑であることが近年の研究で明らかになってきている。さらに、生後数カ月の間には特徴的な発達の 変化があることも明らかになりつつある。しかし、そうした行動の初期発達過程で、脳がどのように形成 され機能するのかということは、ほとんどわかっていない。なぜなら、赤ちゃんが物を見たり聞いたりし ている自然な状態での脳活動を計測する手法が存在しなかったからである。 本研究では、生後数カ月の間に起こる行動の動的な変化の実体を明らかにし、その過程での脳の 発達を新しい非侵襲脳機能計測技術を導入して可視化することを目的とした。特に、近年開発され た光トポグラフィー(近赤外分光法)を用いて、覚醒した乳児の脳のイメージングを行うことに世界で 初めて成功した。この成果は、人間の「モジュール性」と「身体性」の理解へ向けての第一歩になると 考えられる。

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2.研究成果

●乳児の視覚のパフォーマンスに関する U 字型変化の発見

人間の視覚系は多数のモジュールから構成されていると考えられている。例えば、視覚刺激は、 形、色、動きのような特徴に一度分解され、それぞれが特定のモジュールで処理されると考えられて いる。それならば、モジュールは生得的に存在するのか、それとも生後だんだんと作られるのか。もし モジュールが生得的であれば、相互作用も初めからあるのかどうか。そこで、乳児の視覚系における 色と形の組み合わせの知覚の発達過程を調べた。図1に示すような視覚刺激への注視時間を測定 し、馴化脱馴化法を用いた実験を行ったところ、1ヶ月児は2個の同時に提示された図形の色と形の 組み合わせを識別できるが、2ヶ月児で識別の成績が低下し、3ヶ月児で再び良い識別を示すように なるという U 字型の発達変化が明らかになった。また、3ヶ月児には2個の物の間を繰り返しサッカー ドするという1ヶ月児には見られない眼球運動パターンがあること、成績の悪い2ヶ月児には特定の刺 激への非常に長い時間にわたる強制注視が見られることもわかった。このようなパフォーマンスの U 字型変化とそれに伴う眼球運動パターンの変化から、新生児において色と形のモジュールは未分化 であるが故に統合されていて、組み合わせの違いをも識別できる可能性が考えられた。そして、脳の モジュールによる分析的な知覚の発達にともなってバインディング問題が生じて識別が困難になるが、 選択的に注意を移動する機構の発達によってバインディング問題を解決するというシナリオが考えら れた。 図 1 : 色 と形 の組 み合 わせ知 覚 実 験 に関 する成 績 と眼 球 運 動 パターンの月 齢 変 化 0 2 4 6 8 10 1 2 14 16 1 ヶ 月 2 ヶ 月 3 ヶ 月 1回の注視あたりの平均 サッカード数 0 4 8 1 0 1 2 14 18 6 2 1 6 1個の図 形の 平均注視 時間( s) 1 ヶ 月 2 ヶ 月 3 ヶ 月 -5 0 5 10 15 1 ヶ 月 2 ヶ 月 3 ヶ 月 脱馴化(秒) 色と形の新しい 組み合わせ図形 同じ図形 Habituation phase Test phase (novel conjunction of shape and colour)

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● 成 人 における事 象 関 連 光トポグラフィー(近赤外分光法)の確立

ヒトの脳を非侵襲的に計測する方法として、電気的活動を計測する脳波(EEG)、磁場の変化を計 測する脳磁図(MEG)、脳活動にともなう脳血液での代謝の変化を計測する PET、脳活動にともなう脳 血液の酸素化状態の変化を計測する機能的磁気共鳴画像(fMRI)などがある。EEG や MEG は神経 活動の時間的応答を、PET や fMRI は脳の機能に応じた空間的な局在性を示してきた。特に、1990 年代になって進歩した fMRI は、現在では標準的な脳機能計測法として用いられているが、頭部を厳 密に固定することが必要であるため、覚醒した乳児への適用は困難であった。一方、1993年に、脳 の局所的な活動にともなう脳血液の酸素化状態の変化、すなわち酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘ モグロビンの変化を、近赤外分光法(NIRS)を用いて計測できることが報告された。さらに、日立製作 所のグループは、これを多チャンネルに拡張して、大脳皮質表面の脳機能イメージング法(光トポグ ラフィー)を開発した。光トポグラフィーは、頭皮上に数cm間隔で配置した光ファイバーから生体に無 害な近赤外線を照射・検出するだけで大脳皮質表面の活動の時空間パターンを得ることができ、頭 部の強い拘束を必要としないために乳児に適用可能な唯一の方法であると考えられた。そこで、本 研究はこの手法を初めて乳児に適用して、ものを見たり聞いたりしている乳児の大脳皮質の状態を 可視化することを試みた。 しかし、光トポグラフィーは新しい脳機能計測法であり、成人でもどのような信号が計測できるのか はまだわかっていないことも多い。これまで、刺激30秒、休止30秒の繰り返しのようなブロックデザイ ンが多く使われてきたが、乳児は長い刺激に耐えることができないので、短い事象に関連した応答を 計測する手法を確立する必要がある。そこで、成人の後頭葉に24チャンネルのプローブを装着し、8 Hz で反転する黒白のチェッカーボードを視覚刺激として与えた時の応答を詳しく調べた。図2のよう に 、 繰 り 返 し 提 示 さ れ た 刺 激 に 対 し て 、 特 定 の チ ャ ン ネ ル で 酸 素 化 / 脱 酸 素 化 ヘ モ グ ロ ビ ン ([oxy-Hb]/[deoxy-Hb])の一定した時間応答が得られた。特に、1秒以下の短い間隔の刺激に対し ても、15秒程度の間に増加してもとのレベルにもどるインパルス応答が再現性よく得られることが明ら かになった。 図 2 : 成人における後頭葉視覚野の動的応答と機能的イメージング [o x y -H b ] [d eo x y -H b ]

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[oxy-Hb]の変化の SN 比が良いことから、各チャンネルで得られた[oxy-Hb]の時系列から、活動の 空間的パターンを推定する手法の確立を試みた。各チャンネルで、刺激に対する一定した時間応答 の有無を分散分析によって調べ、得られた統計値について2次元のスプライン補完を行うことで、応 答の空間的パターンを推定した。図2に示すように、左右の視覚関連領域の活動がきれにマッピング される。 さらに、48チャンネルのプローブを用いて、運動視に特異的な応答を調べるための動く同心円パ ターンやバイオロジカルモーション、立体視を調べるためのランダムドットステレオグラム、聴覚反応を 調べるための、純音、音声など様々な視聴覚刺激について検討を行った。その結果、視覚野、MT 野、側頭連合野、聴覚連合野などの領野が、刺激に応じて特定のパターンの応答を示すことが明ら かになった。このことは、光トポグラフィーが大脳皮質表面の機能的局在性を検出するのに有効であ ることを示している。

● 睡眠時の乳児の脳の自発的活動の月齢変化と新生児における刺激応答

光トポグラフィーを乳児へ適用する第一歩として、自然睡眠時の計測を行った。その結果、自発的 な活動には月齢に応じて興味深い変化があること、光刺激に対する後頭葉の応答が新生児でも見ら れることを発見した。 新生児と成人とでは頭の大きさも異なり、近赤外線の強度や光ファイバーの間隔の最適な値もわ からない。そこで、近赤外線の強度については、成人用の1/10から1/2の強度、光ファイバーの 間隔については、1.5〜2センチに調整した乳児専用のプローブを用いた。また、頭部の不快感をで きるだけ軽減させるようにプローブを帽子のように装着できるように工夫した。新生児の計測に関して は、東京女子医科大学小西行郎教授のグループの協力を得て行った。 受胎後40週の未熟児、満期で出生した生後7日以内の新生児、1ヶ月児、2〜3ヶ月児の自然睡 眠中の後頭葉は、それぞれ異なる時空間パターンでゆらいでいることがわかった。特に、[oxy-Hb]と [deoxy-Hb]の 位 相 差 を分 析 す る と 、生 後 1 ヶ 月 ご ろ に 大 きな 変 化 の あ る こ と が 明 らか に 案 っ た 。 [oxy-Hb]と[deoxy-Hb]とが一定の位相差を保ってゆらぐ傾向は、1ヶ月ごろ一度消失し、2ヶ月に再 び現れるという、月齢に応じた U 字型の変化が存在することがわかった。この現象は、神経回路網の 局所的回路、すなわちモジュール的な機構の分化と統合の過程を反映している可能性があり興味深 い。 また、生後7日以内の新生児に、3秒間のフラッシュ光を瞼の上から当てて、後頭葉での応答の有 無を計測した。その結果、成人とほぼ同様な時間スケールでの[oxy-Hb]の事象関連応答が得られた。 これは、出生後早い時期から、光に対して後頭葉が選択的に応答し、脳血流の局所的な調節もなさ れていることを示している。このことは、麻酔による睡眠中の新生児の fMRI による計測でもすでに確 かめられている。しかし、睡眠中に瞼の上から与えられた視覚刺激は明度の変化の情報しか持って いないので、機能的な視覚の発達を明らかにするには、覚醒時の計測が不可欠である。現在、聴覚 刺激に対しても同様な応答が得られるかどうかについて検討中である。

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● 覚醒時の乳児の機能的脳イメージング

本研究での最大の成果は、覚醒している乳児の脳活動のイメージングを光トポグラフィーで行うの に成功したことである。2002年9月末までに、東京大学本郷キャンパスの近隣に在住の生後1—7ヶ 月の乳児の保護者80人に、ボランティアとして協力して頂き、乳児がコンピューターディスプレイ上に 提示された視覚刺激を注視したり、スピーカーから流した音声刺激を聴いたりしているときの脳活動 の計測を行った。図3に示すように、プローブは帽子をかぶるように簡単に装着できるように工夫した。 ただ、乳児は体や頭を頻繁に動かすため、プローブの位置が計測途中にずれて、モーションアーチ ファクトのために信号がうまくとれないケースが多かった。特に、脳血液の酸素化状態の応答は、ある 事象に対して少なくとも15秒程度かかるので、その間できる限り一定の条件で乳児を刺激にひきつ けておく必要があった。これまでに、約4種類の実験パラダイムを試み、そのうち2種類のものについ て、データを得ることができた。 図 3 : 光トポグラフィーによる覚醒した乳児の脳機能計測 (a) 視覚刺激に対する後頭葉の機能的イメージング 覚醒している生後2ヶ月から4ヶ月の20人について、後頭葉と前頭葉に、4センチ四方で12チャン ネルのプローブを装着した。保護者には被験児を膝の上に抱いて被験児が最も楽な姿勢をとるよう にしてもらった。視覚野の活動を計測するための標準的な方法は、チェッカーボードの白黒の模様を 8ヘルツ程度の周波数で反転させるような刺激を一定時間加えた状態と、何も提示しないレスト状態 との間で信号の変化を調べるというものである。しかし、長い刺激時間や何も提示しないレスト状態で 覚醒した乳児を静かにさせることはほとんど不可能である。そこで、乳児の非常に強い興味を引くが、 輝度が小さく視覚野に大きな信号の変化を及ばさないような視覚刺激を提示し、これをじっと注視す る状態をレスト状態とした。さらに、強い興味を持続させるため、ブリンクの周波数にあわせて試行の たびにランダムにピッチの変わるビープ音をならした。テスト刺激としては、4ヘルツで反転する全画 面のチェッカーボードを 3.2 秒間提示した。ただし、レスト刺激もテスト刺激もより乳児の興味を引きつ けるように刺激の切り替えにあわせてビープ音を鳴らした。また、ビープ音の変化による反応がないか どうかをチェックするために、レスト期間中にビープ音だけが変化する 3.2 秒のコントロール刺激を挿 入した。

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7人(2ヶ月2人、3ヶ月2人、4ヶ月2人)から得られたデータを解析に用いた。他の13人のデータは、 プローブ装着により機嫌が悪くなって泣く、頭の動きが大きくて信号がとれないなどの理由で解析か ら除外された。各チャンネルの時系列からトレンドを除き、刺激開始後から15秒間に一定したパター ンの応答が繰り返し得られたかどうかについて分散分析法により統計値を求めた。その結果、7名中 6人で後頭葉のチャンネルで、[oxy-Hb]の有意な変化(p<0.001)が見られた。[deoxy-Hb]については、 [oxy-Hb]の変化が大きかった3人について、同じチャンネルで有意な変化が見られた。この場合、刺 激後に、[oxy-Hb]が増加し、[deoxy-Hb]が減少するというパターンを示し、成人で見られるパターン と類似していた。ビープ音の変化に対しては、チェッカーボードと同様な変化は見られなかった。 図4は、[oxy-Hb]の応答に関する統計値から得られた空間的マッピングである。a は2ヶ月児、b は 4ヶ月児のデータを示している。いずれも、後頭葉の局所的な場所で強い活動が見られるが、前頭葉 には目立った活動がないことを示している。この結果から、生後2ヶ月の乳児の視覚野が成人と同じ ように視覚刺激の輝度の変化に対して反応し、それにともなう脳血液の酸素化状態の変化が生じると 結論づけられる。このように、覚醒した生後2ヶ月から4ヶ月の乳児で脳の機能的マッピングが可能で あることが初めて示された。 図 4 : 覚醒した乳児のチェッカーボード刺激に対する後頭葉と前頭葉の機能的マッピング

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(b) 聴覚刺激に対する側頭葉の機能的イメージング 覚醒している生後1ヶ月から7ヶ月の20人について、左右の側頭葉に、12チャンネルのプローブを 装着した。聴覚刺激は女性の声で、親密度の低い4モーラの日本語の単語をランダムに3つつなげ たものであり、刺激時間は約3秒間である。この刺激が15秒おきにスピーカーから与えられたが、試 行ごとに単語列は異なるものとした。一方、聴覚刺激と非同期に、21秒おきに、チェッカーボードパタ ーンリバーサルが3秒間提示され、それ以外の間は、輝度が低くサイズは小さいが、乳児の興味をひ くと考えられる図形を提示した。 5人(2ヶ月1人、3ヶ月1人、5ヶ月2人)から得られたデータを解析に用いた。聴覚刺激に対する応 答について統計解析の結果、5人とも、[oxy-Hb]に関して有意な変化(p<0.001)の見られるチャンネ ルがあった。また、チェッカーボード刺激に対する応答はほとんど認められなかった。図5は、それぞ れ生後2ヶ月(a)と4ヶ月(b)の聴覚応答に対する空間的マッピングを示している。成人に関しては一般 に言語野の左半球優位性が知られているが、(b)の被験児のように明らかに右側が優位な場合も見ら れた。ただ、サンプル数がまだ不足しているために、ここで用いた刺激への応答の半球優位性に対 する結論をだすことはできない。いずれにせよ、覚醒している生後2—5ヶ月の乳児の側頭葉が、聴 覚刺激に対するはっきりとした応答を示すことが明らかになった。 図 5 : 覚醒した乳児の聴覚刺激に対する側頭葉の機能的マッピング

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3.今後の展開

脳のモジュール性の問題に赤ちゃんの発達過程から切り込もうという試みを紹介した。本研究では、 まず乳児の知覚の行動実験の結果から、生後2ヶ月前後の U 字型変化が、大脳皮質の発達の重要 な側面を反映しているという仮説をたてた。(図6参照)視覚系内のモジュールだけでなく、異なる知 覚モダリティーどうしの分化と統合や、運動と知覚の統合などにおいても、U 字型変化が見られること があり、その機構の解明は発達の原理を明らかにする上で重要だと考えられる。しかし、これまでには 赤ちゃんの脳を直接調べる良い方法論が存在しなかった。そこで、本研究では、発達過程で起きて いる大脳皮質の変化を光トポグラフィーで可視化するという試みを行った。その結果、少なくとも生後 2ヶ月という早い時期から、後頭葉は視覚刺激に対する、側頭葉は音声刺激に対する、選択的な応 答を示すことが明らかになった。しかし、この結果は覚醒した乳児の脳活動を測ることができるという 証明の第一歩に過ぎない。今後は、このような成果を土台にして、脳のモジュール機構の分化と統合 のメカニズムに本格的に迫りたいと考えている。特に、視覚と聴覚の異種感覚情報の分化と統合の 発達機構について研究を重点的に進める。そのためには、少なくとも、後頭葉、前頭葉、側頭葉など 脳の広い領域を同時にカバーでき、しかも、信号の安定性を損なうモーションアーチファクトを押さえ るなどの技術的問題も解決しなければならない。 図 6 : U 字型発達仮説

U 字型発達

モジ ュー ルの 分化 モジ ュー ルの 統合

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4.成果リスト

乳児期の視覚系におけるバインディング問題

1. G.Taga, T.Ikejiri, T.Tachibana, S.Shimojo, A. Soeda, K.Takeuchi, Y.Konishi: Dynamic changes in development of visual feature binding in early infancy. Proc. Int. Conf. Infant Studies, 2000

2. G.Taga, T.Ikejiri, T.Tachibana, S.Shimojo, A.Soeda, K.Takeuchi, Y.Konishi: Visual feature binding in early infancy. Perception, 31, 273-286, 2002

3. 多賀厳太郎:眼球運動と知覚の初期発達、児童心理学の進歩、41: 243-261, 2002

光トポグラフィーによる乳児の脳機能計測

1. G. Taga, Y. Konishi, A. Maki, T. Tachibana, M. Fujiwara and H. Koizumi: Spontaneous oscillation of oxy- and deoxy- hemoglobin changes with a phase difference throughout the occipital cortex of newborn infants observed using non-invasive optical topography, Neuroscience Lett, 282, 101-104, 2000

2. G. Taga, Y. Konishi, A. Maki, T. Tachibana, M. Fujiwara, H. Koizumi: Spectroscopic analysis of hemo-dynamics in human infants, Pacifichem, Hawaii USA, 2000

3. G.Taga, Y. Konishi: Dynamical Complexity of Early Development of Motion and Perception: From Behavioral to Brain Imaging Studies, Proc. Int. Conf. Development of Mind, Tokyo, 22-24, 2000 4. G. Taga, K. Asakawa, A. Maki, Y. Konishi, H. Koizumi: Early development of spontaneous

hemo-dynamics and visual response of the occipital cortex observed using optical topography, SNCC Conference, Neuroimaging in developing brain, order and disorder, Okayama Japan, 2001 5. G. Taga, K. Asakawa, A. Maki, Y. Konishi, H. Koizumi: Functional imaging of visual cortex of

awake infants using optical topography, International Conference on Infant Studies, Toronto, Canada, 2002

6. G. Taga, K. Asakawa, A. Maki, Y. Konishi and H. Koizumi: Infant brain mapping by event-related functional near-infrared-spectroscopy, International Conference on Functional Mapping of the Human Brain, Sendai, Sa18, 2002

7. G. Taga, K. Asakawa, A. Maki, Y. Konishi and H. Koizumi: Brain imaging in awake infants by event-related functional Near-Infrared-Spectroscopy (submitted)

8. 多賀厳太郎、小西行郎、牧敦、立花達史、藤原倫行、小泉英明: 光トポグラフィーによる新生児の 脳血流変化の観測。脳の科学 22: 1305-1309, 2000

乳児の運動発達、U 字型発達、その他

1. G.Taga, R.Takaya, Y.Konishi: Complexity of spontaneous movements in early infancy. Proc. Int. Conf. Infant Studies, Brighton, UK, 2000

2. G.Taga: Nonlinear dynamics of the human motor control - real-time and anticipatory adaptation of locomotion and development of movements -. Proc. Int. Symp. Adaptive Motion of Animals and

(10)

Machines, Montreal, Canada, 2000

3. G. Taga, R. Takaya, Y. Konishi, H. Takeshita, S. Itakura, T. Matsuzawa: The 1/3 power law in spontaneous movements of limbs of human and chimpanzee infants for the first few months of age, Neuroscience Research, Sppl 24, S33, 2000

4. A. de Rugy, G. Taga, G. Montagne, M.J. Buekers, M. Laurent: Perception-action coupling model for human locomotor pointing, Biological Cybernetics, 87, 141-150, 2002

5. 多賀厳太郎: 赤ちゃんの発達のダイナミクスと身体性。「Bit 別冊 身体性とコンピュータ」(岡田美智 男、三嶋博之、佐々木正人編)、共立出版、133-145, 2000 6. 多賀厳太郎: 振動子の結合系と歩行運動、「脳科学大辞典」(甘利俊一、外山敬介編)朝倉書店、 632-635, 2000 7. 多賀厳太郎: 発育発達と運動の制御、「運動の神経科学」(西野仁雄、柳原大編集)、NAP, 177-186, 2000 8. 小西行郎、多賀厳太郎、高谷理恵子: 生後二ヶ月の革命、「育つ・学ぶ・癒す 脳図鑑21」(小泉英 明編)工作舎、96-111, 2001 9. 多賀厳太郎: 複雑系としての小児の発達、医学のあゆみ、197: 855-858, 2001 10. 多賀厳太郎: 自発運動の初期発達、総合リハビリテーション、29: 797-801, 2001 11. 多賀厳太郎: 視覚誘導歩行における脳神経系・身体・環境の動的カップリング、システム/制御/ 情報、46: 9-14, 2002 12. 多賀厳太郎: 運動と知覚の初期発達、バイオメカニズム学会誌、26: 3-6, 2002 13. 多賀厳太郎: ヒトの行動と脳の発達における U 字型変化、数理科学、467: 72-78, 2002

著 書

1. 多賀厳太郎:脳と身体の動的デザイン:運動・知覚の非線形力学と発達、金子書房、2002

参照

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