• 検索結果がありません。

進が図られ 当該競争促進効果が 再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものである場合において 必要な範囲及び必要な期間に限り 認められる とし その例として フリーライダー問題 の解消等を挙げている 再販売価格の拘束は ブランド内の価格競争を制限することから不公正な取

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "進が図られ 当該競争促進効果が 再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものである場合において 必要な範囲及び必要な期間に限り 認められる とし その例として フリーライダー問題 の解消等を挙げている 再販売価格の拘束は ブランド内の価格競争を制限することから不公正な取"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

第8回公益財団法人公正取引協会主催「独占禁止法研究会(平成27年度)」 -和光堂事件(再販)、セブン・イレブン事件福岡地判(拘束)- I 再販売価格の拘束 独禁法は、2条9項4号において、再販売価格の拘束を法定の不公正な取引方法の1類 型として定めている。 2条9項4号は、「自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、 次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。 イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその 他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。 ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方 をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販 売価格の自由な決定を拘束させること。」と定める。 再販売価格の拘束は、従来、不公正な取引方法の旧一般指定12項に定められていたが、 平成21年独禁法改正により、課徴金の対象とされたことに伴い(10年以内の累積違反 の場合に課徴金の対象となる。20条の5。)、上記のように法定化された。 再販売価格の拘束に対する公取委の執行方針は、従来から、流通・取引慣行ガイドライ ン(以下、「ガイドライン」という。)「第2部 流通分野における取引に関する独占禁 止法上の指針」(以下、「第2部」という。)に示されてきた。ガイドラインは、日本市場 の閉鎖性・排他性を問う日米構造問題協議を受け平成3年7月11日に公表され、再販売 価格の拘束については、23条(旧24条の2)に定める適用除外(指定再販(現在指定 されている商品はない。)、法定再販(著作物))の場合を除き、不公正な取引方法とし て原則違法とされてきた。その後、平成27年3月末、公表後20年以上が経過し、日本 市場にも大きな変化がみられるとしてガイドラインの見直しを求める規制改革会議(平2 6・6・13)・閣議決定(平26・6・24)を受け、一部改正が行われた。再販売価格 の拘束を不公正な取引方法として原則違法とすること自体には変更はなかったが、その理 由を明記するとともに、新たに、例外的に、「フリーライダー問題」の解消などを通じ、 競争促進効果が生じブランド間競争が促進される場合には「正当な理由」が認められ適法 となり得ることを認めた。また、流通調査が、再販売価格の拘束との関係において、独禁 法上、通常、問題とはならないことも明らかにした。 改正後のガイドライン第2部「2 再販売価格の拘束」では、まず、「(1)メーカー が流通業者の販売価格(再販売価格)を拘束することは、原則として不公正な取引方法に 該当し、違法となる(独禁法2条9項4号「(再販売価格の拘束)」)。すなわち、再販売 価格の拘束は、流通業者間の価格競争(ブランド内の価格競争)を減少・消滅させること になることから、通常、競争阻害効果が大きく、原則として公正な競争を阻害するおそれ のある行為である。このため、独禁法においては、メーカーが、流通業者に対して、『正 当な理由』がないのに再販売価格の拘束を行うことは、不公正な取引方法として違法とな ると規定されている。換言すれば、再販売価格の拘束が行われる場合であっても、『正当 な理由』がある場合には例外的に違法とはならない。」とする。つぎに、「(2)『正当な 理由』は、メーカーによる自社商品の再販売価格の拘束によって実際に競争促進効果が生 じブランド間競争が促進され、それによって当該商品の需要が増大し、消費者の利益の増

(2)

進が図られ、当該競争促進効果が、再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方 法によっては生じ得ないものである場合において、必要な範囲及び必要な期間に限り、認 められる。」とし、その例として、「フリーライダー問題」の解消等を挙げている。再販 売価格の拘束は、ブランド内の価格競争を制限することから不公正な取引方法として原則 違法であるが、例外的にブランド間競争の促進効果が認められる場合に「正当な理由」が 認められ違法とならないことがあり得ることを認めている。 そして、ガイドラインは、「(3)再販売価格の拘束の有無は、メーカーの何らかの人 為的手段によって、流通業者がメーカーの示した価格で販売することについての実効性が 確保されていると認められるかどうかで判断される。次のような場合には、『流通業者が メーカーの示した価格で販売することについての実効性が確保されている』と判断される、 と述べる。①文書によるか口頭によるかを問わず、メーカーと流通業者との間の合意によ って、メーカーの示した価格で販売するようにさせている場合・・・②メーカーの示した 価格で販売しない場合に経済上の不利益を課し、又は課すことを示唆する等、何らかの人 為的手段を用いることによって、当該価格で販売するようにさせている場合。」この部分 は、改正前のガイドラインと変更はない。 さらに、ガイドラインは、「3 流通調査」では、「メーカーが単に自社の商品を取り 扱う流通業者の実際の販売価格、販売先等の調査(「流通調査」)を行うことは、当該メ ーカーの示した価格で販売しない場合に当該流通業者に対して出荷停止等の経済上の不利 益を課す、又は課す旨を通知・示唆する等の流通業者の販売価格に関する制限を伴うもの でない限り、通常、問題とはならない。」ことを明らかにしている。 公取委が、平成10年以降、再販売価格の拘束を不公正な取引方法ついて正式に立件し た事件は、1~2年に1件程度であり、平成10年-ナイキジャパン(スポーズシューズ)、 平成11年-日本ハム(ソーセージ「シャウエッセン」)、平成12年-ウェルネット(ア ンピュール安眠枕)、平成13年-サンデン(FF 式石油ストーブ(北海道地区))・SCE (プレイステーション用ゲームソフト)、平成14年-スキューバプロ・アジア(ダイビ ング用品)、平成16年-グリーングループ(ミネラルウォーター「日田天領水」)、平 成18年-日産化学工業(除草剤)、平成20年-ハマナカ(手編み毛糸)、平成24年 -アディダスジャパン(スポーズシューズ)である。また、公取委は、平成27年3月1 7日、アウトドア用品のコールマンジャパンに再販売価格の拘束の疑いで立入検査を行っ たといわれる(日経平27・3・17夕刊)。 なお、2条9項4号が定める再販売価格の拘束は、自社商品の再販売価格の拘束に限ら れており、他社商品の流通業者の販売価格の拘束(後掲福岡地判)、特許権者による実施 権者の特許製品の販売価格の拘束(知財ガイドライン第4-4-(3))、映画配給会社 による映画館の入場料の拘束(20世紀フォックス事件平15・11・25勧告審決審決 集50・389)、DVD 製作者によるレンタル店のレンタル料の拘束などは、不公正な取 引方法の一般指定12項が定める拘束条件付取引として規制されることになる。 II 和光堂事件(再販)最判昭50・7・10民集29・6・888、判時781・21 1 事案の概要 和光堂は三協乳業の製造する育児用粉ミルクを一手に販売する事業者であるが、昭和3

(3)

9年6、7月ごろ、従来から行われていた小売段階の安売りを防止するために、新銘柄の レーベンスミルク A 新製品と新生児ミルクレーベンス N について、それぞれ次のような内 容を主要内容とする販売方針を決定、実施した。(1)卸売業者に対し、指定卸売価格を 守ること、および指定小売価格の遵守を誓約した登録小売業者以外の者とは取引しないこ とを要請し、実施させるとともに、(2)この要請、実施を担保するために、卸売業者の マージンを通常よりも著しく圧縮しあるいは零にし、これに代えて、販売方針に対する協 力度に応じてリベートの形で後払いする。 これに対し、公取委は、当該行為は、卸売業者と小売業者との取引を拘束する条件をつ けて、卸売業者と取引しているものであって、独禁法旧2条7項4号に基づき不公正な取 引方法の旧一般指定8(その後旧一般指定13項となり、現在は一般指定12項に当たる。) が定める拘束条件付取引に該当すると判断し、(i)育児用粉ミルクに関する卸・小売価格維 持のための販売方針を破棄すること、(ii)卸売業者に対するリベートの支払いにあたり、再 販売価格維持の要請に対する協力度を算定の基準としてはならないこと、を主要内容とす る排除措置を命ずる審判審決を行った(公取委審決昭43・10・11審決集15・98)。 和光堂は、審決取消訴訟を提起したが、東京高裁も審決を支持する判決を下した(東京高 判昭46・7・17)ことから、上告した。 本件と同時期に、森永乳業の製造する育児用粉ミルクを一手に販売する森永商事、明治 乳業の製造する育児用粉ミルクを一手に販売する明治商事も、それぞれ、並行的に類似す る再販売価格を維持する行為を行っていたが、公取委は、これらの行為に対しても、独禁 法19条が禁止する不公正な取引方法の旧一般指定8に該当するとする審判審決を下した (公取委審決昭43・10・11審決集15・67、84)。このうち、明治商事は、審 決取消訴訟を提起したが、東京高裁も審決に支持する判決を下した(東京高判昭46・7 ・17)ことから、上告している。 なお、不公正な取引方法として拘束条件付取引を定める旧一般指定8は、「正当な理由 がないのに、相手方とこれに物資、資金その他の経済上の利益を供給する者との取引、も しくは相手方とこれから物資、資金その他の経済上の利益の供給を受ける者との取引また は相手方とその競争者との関係を拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」 と定めていた。 2 検討 本判決は(1日違いで判決された明治商事事件最判昭50・7・11民集29・6・9 51も同旨である。)、再販売価格の拘束がどのような場合に独禁法19条が禁止する不 公正な取引方法に該当することになるのかを明らかにしたものであり、今日においてもそ の先例的価値は失われていない。ガイドラインも基本的に本判決に従ってきたし、現在も 従っているようにみえる。 まず行為要件としての拘束については、本判決は、必ずしもその取引条件に従うことが 契約上の義務として定められていることを要せず、それに従わない場合に経済上なんらか の不利益を伴うことにより現実にその実効性が確保されていれば足りると判示している。 ガイドライン第2部「第一 再販売価格維持行為」「2 再販売価格の拘束」(3)は、 拘束の有無は、メーカーの何らかの人為的手段によって、流通業者がメーカーの示した価

(4)

格で販売することについての実効性が確保されていると認められるかどうかで判断される とした上で、①文書によるか口頭によるかを問わず、メーカーと流通業者との間の合意に よって、メーカーの示した価格で販売するようにさせている場合、②メーカーの示した価 格で販売しない場合に経済上の不利益を課し、又は課すことを示唆する等、何らかの人為 的手段を用いることによって、当該価格で販売するようにさせている場合には、流通業者 がメーカーの示した価格で販売することについての実効性が確保されていると判断される と述べている。拘束の要件について、本判決とガイドラインとでほとんど違いがないよう にもみえるが、ガイドラインの方が本判決より広範囲ないし緩やかに満たされることを示 しているようにもみえる。 なお、ガイドラインは、メーカーが設定する希望小売価格や建値は、流通業者に対し単 なる参考として示されているものである限りは、それ自体は問題となるものではない。し かし、推奨価格、参考価格、希望価格、助言価格にとどまるか、拘束価格になるのかの区 分は、必ずしも判然とはしておらず、この区分の問題はケース・バイ・ケースということ にならざるを得ない問題として残されることになる。 つぎに「正当な理由がないの」の要件、すなわち公正競争阻害性の要件ついては、本判 決は、再販売価格の拘束はブランド内の価格競争(特定メーカーの商品を取り扱う販売業 者間の価格競争)を制限することから、公正競争阻害性を有し、独禁法19条が禁止する 不公正な取引方法として原則違法となることを明らかにしている。ガイドラインも基本的 に本判決に従っているようにみえる。改正後のガイドラインは、再販売価格の拘束の公正 競争阻害性を流通業者間の価格競争(ブランド内の価格競争)の減少・消滅に求めること を明示している。しかし、改正前のガイドラインは、再販価格の拘束が原則として不公正 な取引方法に該当し違法であることは明らかにしていたが、その理由については明示して おらず、再販売価格の拘束は、事業活動の最も基本となる競争手段に制約を加えるもので あるから不公正な取引方法として原則違法であるとし、相手方事業者の販売価格を拘束す ることそれ自体に公正競争阻害性ないし違法性の根拠を求めていたようにもみえた。その 痕跡は、改正後のガイドラインにもなお残されている。「第3部 総代理店に関する独禁 法上の指針」「第二総代理店契約の中で規定される主要な事項」「1 独禁法上問題とな る場合」「(2) 再販売価格の拘束」では、供給業者が契約対象商品について、総代理 店(国内市場全域を対象とする一手販売権を付与される一事業者)の販売価格を制限する ことが不公正な取引方法として原則違法であることが示されており、再販売価格の拘束の 公正競争阻害性はブランド内の価格競争の制限ではなく、価格の拘束自体に求められてい るようにみえるからである。 もっとも、本判決は、再販売価格の拘束の公正競争阻害性をブランド内の価格競争の制 限に求めているのではなく、市場全体における競争、すなわちブランド間の価格競争の減 殺に求めていると捉えるべきであり、本判決の調査官解説(佐藤繁・法曹時報29・4・ 718)もそのように捉えているとする読み方もある(金井=川濱=泉水編著『独占禁止 法』[第5版]328頁)。本件の育児用粉ミルク市場は、4社しかなく高度に寡占的であ り、しかも製品差別化が進んでおり、ブランド間競争が十分機能していない市場であった ことから、このような市場において、3社が並行的に再販売価格の拘束を行えば、ブラン ド間の価格競争の回避効果が認められることになる。したがって、本件事例においては上

(5)

記のような読み方が成立する余地がある。再販売価格の拘束の公正競争阻害性をブランド 間の価格競争の回避効果に求めるべきであるという私のような立場(例えば、「流通・取 引慣行ガイドラインの見直しと新たな課題」公正取引73号2、6~7頁。)によれば、 本判決は事例判決であって、本件事例においては結論的には妥当であったということにな る。しかし、本判決は、単なる事例判決ではなく、再販売価格の拘束の公正競争阻害性に 係る解釈論を一般論として示したものと捉えるのが多数の捉え方であり、ガイドラインも そのような捉え方に立っている。 一方、改正ガイドラインは、再販売価格の拘束にあっても、ブランド間の競争促進効果 が認められる場合には、「正当が理由」があり違法とならないことがあり得ることを明示 している。しかし、このことは、実務的にはリップサービスにとどまり重要な意味を持た ないもののようにみえる。「正当な理由」が認められる場合として、「フリーライダー問 題」の解消等を通じ、実際に競争促進効果が生じてブランド間競争が促進され、それによ って当該商品の需要が増大し、消費者の利益の増進が図られ、当該競争促進効果が、当該 再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものである 場合を例示しているが、このような要件を満たすことは実際上極めて困難であるようにみ えるからである。 もっとも、再販売価格の拘束においても、ブランド間競争の促進効果が認められる一定 の場合に「正当な理由」が認められ違法とならないことを明示したことは、理論的には重 要な意味を持つかもしれない。ガイドラインは、再販売価格の拘束の公正競争阻害性を、 一方では①ブランド内の価格競争の回避効果(ブランド内の価格競争の減少・消滅)に求 めながら、他方では②ブランド間の競争促進効果が認められる場合に「正当な理由」が認 められる、すなわち公正競争阻害性が認められないことを述べているが、①と②との関係 が問題となる。①にいうブランド内の価格競争の回避効果と比較衡量するのであれば、同 じブランド内の競争促進効果でなければならないのではないのか、ブランド内の価格競争 の回避効果と②にいうブランド間の競争促進効果との比較衡量は、そもそも論理的に可能 であるのか、また、実際に可能であるのかという問題もある。また、②の場合に「正当な 理由」を認めるということは、再販売価格の拘束の公正競争阻害性は、結局ブランド間競 争に及ぼす効果に求めるべきであることを示しているのはないかなどという疑問もでてく る。いずれにせよ、改正ガイドラインは、本判決を超えることになるものとみられる。 III セブン-イレブン事件(拘束)福岡地判平23・9・15判時2133・80 1 事案の概要 セブン-イレブン・ジャパンを本部とするコンビニエンスストアの加盟店であった X は、 平成9年1月4日、セブン-イレブン・ジャパンとコンビニエンスストアの加盟店基本契 約を締結し、店舗を経営していたが、その後、平成20年1月10日、店舗を閉店した。 X は、平成16年ころ、売上商品原価に廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれている ことに気付き、利益を上げるためにはどうしたらよいかを検討した結果、値下げ販売をす ることにした。そこで、X が、平成16年11月に、本部に対し翌12月から値下げ販売 を開始すると通知したところ、本部の地域マネージャー(以下、「DM」という。)が X の店 舗に来店し、X に対し、値下げ販売を止めるように指導するなどしたため、X は、同月か

(6)

らの値下げをやめ、平成17年1月から一部のデイリー商品(弁当、おにぎり、サンドウ イッチ)に限ってクーポンによる値下げを開始した。これは、陳列している商品のうち、 3時間後に販売期限が到来し、廃棄することとなる商品にのみ割引クーポンを添付し、顧 客から3割値引きした代金を受領するというものであった。それ以降、本部の DM が毎週 のように X の店舗に来店し、値下げ販売をやめるように指導した。平成19年11月1日 に本部の DM、オペレーション・フィールド・カウンセラー及びリクルート担当者が、X の 店舗に来店し、X に対し、値下げ販売をやめるよう強く指導するとともに、それに応じな い場合には、加盟店契約の解除ないし解約等の不利益な取扱いをすることも検討する旨を 示唆した。 2 検討 本判決は、コンビニエンスストアの本部(以下、「本部」とのみいう。)の加盟店に対 する値引き販売の制限について、独禁法19条が禁止する不公正な取引方法の旧一般指定 13項(現一般指定12項)が定める拘束条件付取引に該当し、民法709条にいう不法 行為を構成すると判示した。 加盟店が販売する商品が本部の販売したものであれば、再販売価格の拘束(旧一般指定 12項、現在であれば2条9項4号)の問題であったが、本件で加盟店が販売する商品は 本部以外の第三者が販売したものであったことから、拘束条件付取引の問題として取り扱 われた。しかし、ブランド内の価格競争の制限効果の認定はなく、特定の相手方加盟店の 販売価格を拘束したこと自体で拘束条件付取引に該当すると判断している。 「フランチャイズ・システムに関する独禁法上の考え方」(平14・4・24公取委最 新改正平23・6・23)。以下、「ガイドライン」という。)「3 フランチャイズ契約 締結後の本部と加盟者との取引について」では、「(1)優越的地位の濫用」(見切り販 売の制限)において、「廃棄ロス原価を含む売上総利益がロイヤリティの算定の基礎とな る場合において、本部が加盟者に対して、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する 商品等の見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること。」が 優越的地位の濫用に該当することを示し、「(3)販売価格の拘束」において、「販売価 格については統一的営業・消費者の選択基準の明示の観点から、必要に応じて希望価格の 提示は許容される。しかし、加盟者が地域市場の実情に応じて販売価格を設定しなければ ならない場合や売れ残り商品等について値下げして販売しなければならない場合などもあ ることから、本部が加盟者に商品を供給している場合、加盟者の販売価格(再販売価格) を拘束することは、原則として独禁法2条9項4号(再販売価格の拘束)に該当する。ま た、本部が加盟者に商品を直接供給していない場合であっても、加盟者が供給する商品又 は役務の価格を不当に拘束する場合は、一般指定12項(拘束条件付取引)に該当するこ ととなり、これについては、地域市場の状況、本部の加盟者への関与の状況等を総合勘案 して判断される。」と述べる。 したがって、ガイドラインによれば、本部による加盟店の値下げ販売の制限は、独禁法 上、不公正な取引方法として、再販売価格の拘束(2条9項4号。本件当時は旧一般指定 12項)、拘束条件付取引(一般指定12項。本件当時は旧一般指定13項)又は優越的 地位の濫用(2条9項5号。本件当時は旧一般指定14項)に該当するかが問われること

(7)

になる。 他方、本件の福岡高裁判決平25・3・28判時2209・34は、加盟店に商品の販 売価格の決定権があることが本件加盟店契約に明記されていることから、販売価格につい ての加盟店の自由な決定を妨害することは、独禁法違反につき検討するまでもなく、本件 契約に違反する債務不履行になり、また、不法行為をも構成するということができると判 示した上で、本件行為は、本件加盟店契約に基づく助言、指導の範囲内の行為であり、加 盟店の価格決定権を侵害する行為であるとはいえないと結論付け、本判決を取り消す判決 を行っている。 本判決は、本部が、加盟店に値下げ販売をやめるように強く指導したり、指導に応じな い場合には、加盟店契約の解除ないし解約等の不利益な取扱いを検討する旨を示唆したと いう事実認定に基づき、本部が加盟店の商品の販売価格の自由な決定を拘束したものと判 示している。これに対し、本件の福岡高裁判決は、「本契約前文、1条及び28条によれ ば、本部と加盟店は、本部が培ってきた経営ノウハウを活用して、統一性のある同一事業 イメージのもとにコンビニエンスストアを開店し、相協力することを約し、本部は、加盟 店に最も効果的と判断される標準的小売価格を開示するだけでなく、担当者を派遣して、 店舗・品ぞろえ・商品の陳列・販売の状況を観察させ、助言、指導を行い、また経営上生 じた諸問題の解決に協力するなどの助言、指導を行うこととされ、それが本部の義務とさ れている。また、本件契約の定めを通覧すれば、本契約においては、本部と加盟店は、コ ンビニエンスストア・チェーンとして、統一性のある同一事業イメージを構築するため、 相協力すべきであり、加盟店においても『セブン-イレブン』というのれんの無形的価値 を享受する上で、可能な限り、これを損なうことなく、事業活動を行うべきこととされて いることがうかがえる。そうすると、本部が、本部の推奨価格以外の価格で商品を販売し ようとする加盟店に対し、その販売による影響や長年の経験に照らして店舗経営上の不利 があると判断していることを伝え、これを中止するように求めたとしても、それが直ちに 販売価格の強制であるとか自由な意思決定の妨害であるとみるのは相当ではなく、本件契 約に基づく上記の助言、指導の範囲であれば、許される。」と判示し、本部の本件契約に 基づく加盟店に対する指導助言義務を強調し、本件では、本部は、加盟店に対し、デイリ ー商品の見切り販売によって、店舗の経営状況が改善しているか否か、加盟店にとって経 営状況の改善のための最良の方法は何かという観点から、必要なデータを示すなどして、 発注量の見直し、デイリー商品の見切り販売の方法や程度の見直しについて助言、指導を 行ったもので、これが強制や自由な意思決定の妨害になったことを認めることはできない と結論付けている。本件の福岡高裁判決と同趣旨に基づく判決がすでに東京地判平24・ 10・18判タ1389・212において出されていた。もっとも、本件の福岡高裁判決 が出されたのと同じ日に福岡地判平25・3・28判時2209・49は、類似の事件に おいて、再び、本件福岡地判と同趣旨の判決を下している。 ところで、セブン-イレブンが加盟店によるデイリー商品の見切り販売を制限したこと について、不公正な取引方法の優越的地位の濫用に該当するとした公取委の排除措置命令 (平21・6・22審決集56(第2分冊)・6)が出されているが、本件は、これより 前の事件であり、公取委の排除措置命令への言及はない。これに対し、この排除措置命令 が確定した後には、独禁法25条に基づくか否かにかかわらず、加盟店はこの排除措置命

(8)

令を利用して本部に対する損害賠償請求訴訟が提起されている。しかし、公取委の確定排 除措置命令があるからといって、一律に損害賠償請求が認容されるのではなく、原告とな った加盟店ごとに本部の行為が助言、指導の範囲を超え強制や自由な意思決定の妨害にな ったか否かが個別具体的に認定され、その結論は、各事案の個別の事実認定と評価によっ て異なっている。東京高判平25・8・30判時2209・10は、確定排除措置命令に いう違反行為に当たるか否かを個別具体的に検討の上本件行為の一部がこれに当たるとし て請求を一部認容している。これに対し、東京高判平26・5・30判タ1403・29 9は、公取委の確定排除措置命令の事実上の推定を認めず、個別に違反行為の有無を判断 し、違反行為を否定している。東京地判平24・10・18判タ1389・212は、独 禁法25条訴訟ではないが、公取委の確定排除措置命令を踏まえた上で、それにもかかわ らず、本件では、見切り販売の中止要請に関し指導・助言の域を超えないよう注意してい たとして、違反行為の存在を否定している。 なお、本件では、損害の立証が困難であるとして、民訴法248条が利用されている。請 求の一部を認容した前掲東京高判平25・8・30は、「見切り販売の妨害行為がなけれ ば回避できたであろう損害、具体的には、①ある時期以降に見切り販売を行った場合の利 益から②ある時期以降も見切り販売を行わなかった利益を控除した額の損害を被らせたも のであるが、一定の仮定に基づく推論が不可欠である上、多くの諸要素が複雑に絡み合っ て相互に影響し合うものであり、①及び②を証拠に基づき具体的に認定することは極めて 困難であるといわざるを得ず、損害が生じたことは認められるものの、損害の性質上、そ の額を立証することが困難であるから、民訴法248条に基づき相当な損害額を認定すべ きであるとし、損害額の算定が困難であるにもかかわらず、被告に損害賠償義務を負わせ る以上、当該賠償額の算定に当たってはある程度謙抑的かつ控え目に認定することが避け られない。」と判示している。また、請求の一部を認容した前掲福岡地判平25・3・2 8は、「価格決定権を侵害されたこと自体を損害としてとらえた上で、これを算定するの が著しく困難であるとして民訴法248条に基づいて損害額の算定をすべきであって、・ ・・損害を算定するに当たっては、・・・価格決定権の侵害態様及び侵害期間、また、そ の間生じたデイリー商品に係る廃棄ロス、さらには、各原告の経営姿勢など諸般の事情を 考慮して、これを認定すべきである。」と判示している。本件のような値下げ販売ないし 見切り販売の制限に基づく損害額の認定は、算定の根拠をある程度の合理的に説明した上 で民訴法248条に基づき裁量認定せざるを得ないものとみられる。

参照

関連したドキュメント

等 におい て も各作 業段 階での拘 束状態 の確認 が必 要で ある... University

このように資本主義経済における競争の作用を二つに分けたうえで, 『資本

他方、今後も政策要因が物価の上昇を抑制する。2022 年 10 月期の輸入小麦の政府売渡価格 は、物価高対策の一環として、2022 年 4 月期から価格が据え置かれることとなった。また岸田

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

と言っても、事例ごとに意味がかなり異なるのは、子どもの性格が異なることと同じである。その

トリガーを 1%とする、デジタル・オプションの価格設定を算出している。具体的には、クー ポン 1.00%の固定利付債の価格 94 円 83.5 銭に合わせて、パー発行になるように、オプション

一定の取引分野の競争の実質的要件が要件となっておらず︑ 表現はないと思われ︑ (昭和五 0 年七

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ