東日本大震災に対する国土地理院の取り組み
Actions of GSI in Response to the Great East Japan Earthquake
企画部 仲井博之・永山 透・林 保・津久井 誠・瀬川秀樹・秋山一弥
1・松本 哲
2Planning Department Hiroyuki NAKAI, Toru NAGAYAMA, Tamotsu HAYASHI,
Makoto TSUKUI, Hideki SEGAWA, Kazuya AKIYAMA and Satoshi MATSUMOTO
要 旨 国土地理院は,平成 23 年(2011 年)東北地方太 平洋沖地震(以下,「東北地方太平洋沖地震」という.) 発生と同時に非常体制に入り,直ちに院長を本部長 とする東北地方太平洋沖地震災害対策本部(以下, 「本部」という.)を設置した.国土地理院本院(茨 城県つくば市)や東北地方測量部(宮城県仙台市) では,この地震によって,庁舎の構造物には大きな 被害は無かったものの,停電や通信障害が発生した. その様な状況下での初動対応,本部の運営と活動方 針の決定,国土交通本省(以下,「本省」という.) を始めとする関係行政機関からの要請に応じた地理 空間情報の提供,リエゾンや国土地理院緊急災害対 策派遣隊(以下,「TEC-FORCE」という.)の派遣など 国土地理院の人的・物的資源を集中的に投入すると ともに,これまでに経験したことのない最大限の災 害対策活動を実施した.本稿では,初動の活動を中 心に上記の取り組みについて報告する. 1.東日本大震災の概要 1.1 東北地方太平洋沖地震の概要 東北地方太平洋沖地震の本震は,2011 年3月 11 日 14 時 46 分に宮城県牡鹿半島の東南東約 130km 付 近の深さ 24km を震源として発生した(気象庁,2011). この地震は,プレート境界域で発生した海溝型地震 で,震源域は岩手県沖から茨城県沖にかけて南北に 約 400km,東西に約 150km と広範囲に及び,モーメ ントマグニチュード 9.0 は国内観測史上最大である とともに,全世界でも 1900 年以降4番目の巨大地震 であった(USGS,2011).この地震により,宮城県栗 原市で最大震度7を記録したほか,宮城県,福島県, 茨城県,栃木県の広範囲で震度6強の強い揺れを観 測するとともに,東北地方太平洋側で波高 10m以上, 遡上高 40m以上にもなる大津波が発生した. 1.2 被害の状況 本震によって発生した大規模津波は,東北地方か ら関東地方の太平洋沿岸に甚大な被害をもたらした. 死者と行方不明者の合計は,19,447 名(2011 年 11 月 29 日現在)となっている.大半は岩手・宮城・福 島の3県が占めるが,9割以上が津波による被災で, 沿岸部の多くの建築物は津波で流出・倒壊した(写 真-1(A)).また,岩手県から福島県にかけた沿岸 部では,大きいところで1mもの地盤沈下が発生し, 三陸沿岸を中心に浸入した海水が引かず,浸水被害 が長期化し復興上深刻な問題となっている. 千葉県や茨城県でも,軟弱地盤上の埋立地を中心 に液状化現象が多くの場所で発生し,随所で建築物 の傾斜,断水,ガス供給の停止,水田への土砂の堆 積などの被害が生じた.特に東京湾と利根川下流で の被害(写真-1(B))が目立ち,千葉県浦安市な どの東京湾沿岸の軟弱地盤では埋設物が損壊した. 東京電力福島第一原子力発電所では,地震の揺れ で送電線の切断・ショート・倒壊や変電所などの各 設備が故障し,起動していた非常用発電機と原子炉 がその後に襲った津波で停止に陥り,大量の放射性 物質の放出を伴う過去最悪の原子力事故に発展し, 周辺住民は長期の避難を今も強いられている. (A) (B) 写真-1 被害の状況 (A) 宮城県石巻市の被害状況(2011 年3月 16 日撮影) (B) 茨城県潮来市の電信柱の傾き(2011 年5月 16 日撮 影) 2.観測施設の主な被害の状況 国土地理院の観測施設も,大津波によって被害を 受けた.GPS 連続観測施設のうち,電子基準点「田 老」(岩手県宮古市)と「名取」(宮城県名取市)は, 津波の浸水により架台本体が腐食し,連続観測に支 障が生じた(大島ほか,2011).地殻変動観測施設「S 相馬」(福島県南相馬市)は,架台本体が倒壊し,完 全に観測機能が失われた(写真-2). 被災した3点は,今回の津波浸水域から外れた場 所で既存の位置近傍へ再設置することになった. 験潮場は,地震発生直後から相馬験潮場(福島県 相馬市)と油壺験潮場(神奈川県三浦市)のデータ が取得できなくなった.相馬験潮場は,施設の基礎 現所属:1(財)砂防・地すべり技術センター 2総務部
(A) (B) 写真-2 観測施設の被害の状況 (A) 電子基準点「名取」に津波が到達した痕跡(2011 年3月 16 日撮影) (B) 地殻変動観測施設「S相馬」は観測施設本体が倒壊 して基礎のみ残る.(2011 年4月 19 日撮影) 部分が津波により破壊されており観測井戸を残して 建築物が流出した(写真-3).油壺験潮場は,海面 に浮かべる浮標と機器とを結ぶワイヤーが外れたこ とが原因であった.加えて,潮位データは現地で保 存されていたものの,12 日 12 時 50 分まで北海道・ 東北地方の6箇所の験潮場と本院間の IP-VPN 回線 が不通となり,潮位データを取得できない状況が続 いた.相馬験潮場は,相馬港の復旧状況を待って再 建に着手する予定である. 写真-3 相馬験潮場の被害の状況 相馬験潮場中央には傾斜した観測井戸のみ残 る.(2011 年4月 19 日撮影) 3.国土地理院の対応 3.1 国土地理院災害対策本部の設置 国土地理院は,地震発生と同時に非常体制に入る とともに,本部を設置した.15 時 10 分に第1回災 害対策本部会議(以下,「本部会議」という.)を開 催し,施設の被害状況などの調査と初動対応方針を 確認した.同日の 17 時と 19 時に開催された第2回, 第3回の本部会議では,測地部からは陸域観測技術 衛星「だいち」の合成開口レーダーでの観測予定, 測地観測センターからは験潮場での津波検知と GPS 連続観測システム(GEONET)での解析状況,測図部 (同年4月1日「基本図情報部」に改組)からは防 災・測量用航空機「くにかぜⅢ」(以下,「くにかぜ Ⅲ」という.)が定期点検中であることから緊急撮影 協定に基づく測量会社との連絡に着手していること, など具体的な初動対応が報告された. 翌 12 日から 15 日は,災害対策活動状況及び本省 緊急災害対策(以下,「本省緊対」という.)本部会 議の開催に対応して本部会議を1日に2回から4回 実施し,各部・センターからの活動報告と方針を議 論した.測地部からは基準点成果改定連絡会で審議 された東北地方から関東・甲信越地方に至る基準点 測量成果の公表停止,測図部からは空中写真撮影の 進捗状況と画像データの公開・提供の手順,地理調 査部(同年4月1日「応用地理部」に改組)からは 空中写真を用いた津波浸水域の判読と図化,地理空 間情報部からは関係行政機関への地図の提供と関連 ホームページの開設,測地観測センターからは電子 基準点の通信の復旧状況と地殻変動解析結果,地理 地殻活動研究センターからは震源断層モデルや地震 時・地震後のすべり分布モデルが報告された. (A) (B) 写真-4 本部会議の状況 (A) 第6回本部会議の様子(2011 年3月 12 日撮影) (B) 3月 15 日 22 時 31 分頃に発生した静岡県東部の 地震における第1回本部会議において本院と地 方測量部を Web 会議システムで結び情報交換する 様子(2011 年3月 16 日撮影) その期間中,12 日には最大震度6強を観測した長 野県・新潟県県境付近の地震(M6.7)及び 15 日に は静岡県東部の地震(M6.4)が発生し,当該地震の 災害対策本部を設置するとともに別途本部会議を開 2 国土地理院時報 2011 No.122
催した.これらの本部会議では,検出された地殻変 動や北陸・中部地方測量部での活動状況について情 報を共有した(写真-4). 3月 16 日から 29 日の間は,本部会議を連日1回 開催した.会議では,「だいち」の観測データから得 られた SAR 干渉解析結果の追加,GEONET 定常解析よ り得られた余効変動の時間変化と空間分布,空中写 真から作成される一連の画像データ(正射写真・モ ザイク写真,正射写真地図)と写真を判読して得ら れる浸水範囲概況図などの更新状況のほか,現地調 査の作業報告から明らかとなった被災地の状況をも とに想定される関係行政機関や被災自治体からの要 望に応えるための応急対策活動について活発に議論 された. 3月 17 日には,地理空間情報の提供を迅速化・効 率化するために地理情報支援班の設置が了承され, 関係行政機関が必要とするデータ提供の窓口として 始動した.加えて,頻発する余震や誘発地震に対し ても適確な初動を行うために電話会議システムを導 入し,深夜・休日などの勤務時間外においても自宅 や出張先などの遠隔地から即座に会議に出席できる 体制を整えた. 3月 30 日には,企画部長を議長として各部・セ ンターの筆頭課長を構成員とする第1回災害対策会 議(以下,「対策会議」という.)を開催した.4月 8日までは,本部会議もしくは対策会議を連日開催 し,災害対策活動報告と新たな活動方針について情 報を共有した.4月7日 23 時 32 分には,最大震度 6強の宮城県沖の地震が発生して,当該地震の本部 設置と本部会議を翌日未明までに3回実施するなど, 余震に対しても迅速に本部運営がなされた. その後も本部会議と対策会議は,国土地理院の活 動の軸足が災害対応から復旧・復興事業にシフトし た5月末まで開催され,本部会議は活動の司令塔と して,対策会議は情報共有の場として機能した. 3.2 関係行政機関との連携 国土地理院は,地震発生当日から本省と内閣官房 にリエゾンとして職員を派遣した.リエゾンは,派 遣先からの要望の伝達,本院との連絡調整,情報収 集及び関係省庁への地理空間情報の提供に携わった. 内閣官房に設置された緊急災害対策本部では,政 府調査団の派遣が決定し,3月 11 日から関東地方測 量部長を政府現地対策本部(宮城県庁)に,翌 12 日には防災地理課長と関東地方測量部防災課長をそ れぞれ福島・岩手県庁の政府現地連絡対策室に派遣 し,現地調査や県の災害対策本部からの要望調査を 行った. 内閣官房においては,発災当日から危機管理セン ターに 24 時間交替体制でリエゾンを1名派遣した. 3月中旬までは,関東地方測量部職員2名が交互に 勤め,それ以降は本院各部・センターから職員を派 遣して,地図,空中写真,浸水範囲概況図,地殻変 動情報等の地理空間情報の受け渡しのほか,地理空 間情報を担当する者の指示に従って,危機管理セン ターが要請する地図作成とデータ提供に関する綿密 な連絡の任務にあたった.特に,福島第一原子力発 電所の事故関連では,原子力発電所を中心とする同 心円及び市町村名・行政界などを地図に強調表示す るといった多様な重ね合わせ作業を取り次ぐための 連絡調整を行った.内閣官房から4月 22 日に計画的 避難区域や緊急時避難準備区域が公表されたのを期 にリエゾンは,翌 23 日までの任務をもって終了した. 本省においては,参事官が発災後直ちに本省防災 センターに参集するとともに,本省緊対本部の情報 整理班として関東地方測量部防災担当職員3名も参 集した.その後,本省内に設置されている東京分室 職員に加えて都内出張中の職員が駆けつけ,本省緊 対本部会議への出席,国土地理院が緊対本部会議に 提出する資料作成,情報収集及び本院との連絡調整 を行った.翌日以降は,発災当日の活動に加えて本 省緊対本部に組織された情報整理班が主として行う 交通ネットワークの復旧状況を示す復旧状況図の作 成,本省内部部局や関係省庁から寄せられた地理空 間情報の連絡調整などに従事する要員として,関東 地方測量部と本院からリエゾンを派遣した. リエゾンは,5月9日までの2ヶ月間は,夜間と 昼間にそれぞれ人員を配置して3区分の勤務交替制 で 24 時間対応した.3月中は,6名以上を派遣して 体制を強化したが,地理空間情報提供の要望の減少 や本省緊対本部会議の隔日開催に応じて体制を縮小 し,4月末には1日4人に,大型連休開けの5月 10 日からは 24 時間を解除して1~2人の体制で午後 8時まで,5月 30 日以降は週1回の頻度で月曜日に 交通ネットワークの復旧状況図の更新を行った. 本省緊対本部会議には,主に参事官が出席し,国 土地理院の取り組みを報告した.院長や関東地方測 量部長他の出席もあった.会議に提出した添付資料 のうち,対外的に公表することが適切と判断した資 料は,本省広報課を通じて記者ブリーフィングで発 表するとともに,報道機関に配布して情報提供した. 東京分室は,緊対本部会議や国会対応,本省内部局 や内閣官房をはじめとする関係省庁に情報を提供す る活動拠点として機能した(写真-5). 3.3 国土地理院緊急災害対策派遣隊の活動 3月 14 日の本部会議において TEC-FORCE が了承さ れ,翌日から宮城県庁に設置されている政府現地災 害対策本部に2名を派遣した. TEC-FORCE 第1次隊は,被災自治体や関係行政機
(A) (B) 写真-5 本省緊対本部会議の状況 (A)本省第6回緊対本部会議の様子(2011 年3月 12 日撮 影) (B)情報整理班が電子国土を用いて作成した災害状況図 (2011 年3月 16 日撮影) 関が必要とする地理空間情報を提供するため,電子 国土 Web システムが単体で動作するパソコン,A0 サ イズ対応大判プリンター,カラーレーザプリンター, ハードディスク及び電子媒体の他,宿泊施設不足を 想定した非常食や寝具などを携えた. 被災状況を把握できる空中写真や浸水範囲概況図 などが本院から送付されると,東北地方測量部と TEC-FORCE は,大判プリンターで出力した印刷物や 電子媒体にコピーしたデータを宮城県災害対策本部 をはじめ多くの被災自治体や行政機関に提供した (写真-6). さらに,県の災害対策本部などを通じて被災現場 で復旧業務に携わる機関に提供可能な地理空間情報 を連絡し,ニーズに沿った形式でデータを提供して 災害復旧活動を支援した.また,政府現地対策本部 会議に出席して国土地理院に対する要望を本院に伝 達したほか,被災地の状況を本部会議で報告した. 4月上旬までは,本院職員で基本的に2名体制5 泊6日の行程で前隊と業務を引継ぎながら活動した が,4月中旬以降は,地方測量部次長や防災情報管 理官等も派遣し,地方測量部等も含めた院全体で TEC-FORCE 業務を展開した.情報提供が落ち着き始 めた4月 30 日に出発した第 13 隊の派遣から1名に 縮小し,5月 15 日の第 15 次隊の活動をもって終了 した. 3.4 地理情報支援班の活動 発災当初は,企画部防災担当や各部・センターが 個別に地理空間情報を提供していたが,国土地理院 が整備する空中写真や浸水範囲概況図などの地理空 間情報の提供業務が急増したことを受けて3月 17 日の本部会議で地理情報支援班が組織され,地理空 間情報の提供窓口を一本化した.地理情報支援班は, 企画部,測図部,地理調査部及び地理空間情報部か ら招集された4名で編成された.結成当初は,半日 に5~10 件の情報提供要請及び電話・メールによる 質問対応に追われ,1件の案件が完結しないうちに (A) (B) (C) (D) 写真-6 政府現地災害対策本部の状況 (A)政府現地災害対策本部の様子(2011 年3月 17 日撮影) (B)政府現地災害対策本部で使用された仙台地区のモザ イク画像(2011 年3月 17 日撮影) (C)政府現地災害対策本部で使用された広域災害対策図 (2011 年3月 17 日撮影) (D)宮城県災害対策本部で使用された大判プリンター (2011 年3月 17 日撮影) 次の案件が寄せられるという状態であったが,選任 スタッフの配置により,情報の取り扱い基準や提供 する際の留意点が整理されて,徐々にシステマティ ックな対応が可能となり,地殻変動,空中写真,浸 水範囲概況図及び災害復興計画基図など多くの情報 を各部・センターから収集して一元的に情報を管理 するとともに提供実績も整理した. 地理情報支援班は,国土の変貌や被害状況把握と 被災復興に役立ててもらうため,関係機関からの提 供要望に基づき,各部・センターが整備した情報に ついて情報の取り扱いを整理・明記した上で,必要 な地理空間情報を迅速・確実に提供した. 地理情報支援班からの情報提供は2系統あった. 一つは提供先の潜在的なニーズをくみ取り自主的に 提供したもの,もう一つは相手機関の要望を受けて 提供したものである. 提供手法は,紙に出力したもの,電子データをハ ードディスクなどの媒体に格納して手渡したもの及 び電子メールや大容量ファイル転送システムを用い て電子的に提供したものなど様々である. 3月 11 日から 11 月 25 日までに提供した地理空間 情報の延べ件数は,1,491 件である.提供要請が最 も多いのは浸水範囲概況図であるが,空中写真,正 射写真及び正射写真地図などの空中写真関係も多数 を占めた.震災対応で特別に整備した情報ではない が,地形図や電子国土基本図などのベースマップも 少なからず利用されていることが明らかとなった 4 国土地理院時報 2011 No.122
(表-1). 表-1 地理空間情報提供件数(情報種別) 情報種別 自主的 要請 計 基準点成果 0 7 7 地殻変動データ 0 6 6 ベー スマ ップ 小縮尺地図 38 1 39 20 万分1地勢図 8 0 8 5万分1地形図 33 8 41 2万5千分1地形図 1 11 12 電子国土出力図 3 17 20 旧版地図 0 2 2 広域災害対策図 6 28 34 写真 空中写真 234 73 307 正射写真 195 81 276 斜め写真 0 6 6 正射写真地図 161 59 220 交通関係復旧状況図 2 0 2 浸水範囲概況図 167 175 342 災害復興計画基図 4 12 16 デジタル標高地形図 1 7 8 原発同心円図 2 15 17 5mDEM 0 30 30 MMS 画像 0 2 2 関係機関限定 HP 26 2 28 特注地図 5 20 25 その他 16 27 43 総計 902 589 1491 利用目的別では,被害把握,空間分析,情報共有 及び復旧・復興として広く使われているほか,当初 想定しえなかった現地活動や罹災証明にも用いられ ていることが判明した(表-2). 表-2 地理空間情報提供件数(利用目的別) 利用目的 自主的 要請 計 空間分析 11 67 78 現地活動 2 28 30 情報共有 144 78 222 捜索 0 20 20 被害把握 636 308 944 復旧 3 28 31 復興 103 47 150 物資輸送 0 4 4 補償 2 2 4 罹災証明 0 3 3 防災 0 5 5 総計 901 590 1491 組織別では,全体の9割弱が,政府機関及び地方 公共団体への提供であった(表-3). 表-3 地理空間情報提供件数(組織別) 組織 自主的 要請 計 学校法人 0 1 1 国(政府機関) 139 334 473 国立大学法人 0 17 17 指定公共機関 5 25 30 地方公共団体 758 185 943 民間 0 27 27 総計 902 589 1491 3.5 GPS 観測で得られた地殻変動の検出と断層 モデルの推定 発災後は,東北地方太平洋沿岸部を中心に 300 点 以上の電子基準点や地殻変動観測施設(以下,「GPS 連続観測点」という.)で通常(IP-VPN)回線の通信 に障害が発生し,データ取得ができなくなった.不 通となった GPS 連続観測点では,災害時を想定して 整備した代替通信(携帯電話)回線により約 100 点 のデータ回収に成功した.これらのデータを正常な 通信状況の観測点に加えて地震後3時間分のデータ をもとに解析し,この時点では石巻市に設置されて いる電子基準点「河北」で最大4mの東向きの水平 変動と,70cm の沈降が明らかとなった(水藤ほか, 2011a).この結果は,同日 21 時に開催された地震調 査委員会(臨時会)で報告した. 12 日以降,携帯電話回線でのデータ回収と通常回 線の復旧もあいまって,太平洋沿岸の観測点でも 徐々にデータ回収が進んだが,地殻変動を監視する 上では不十分であった.測地観測センター職員で編 成された現地緊急測量調査班は,13 日深夜に現地に 出発し,東北地方測量部の協力を得ながら岩手県及 び宮城県で観測が停止中の GPS 連続観測点のうち, 余効変動を監視する上で重要となる点を重点的にデ ータ回収と応急復旧を実施した(写真-7(A)).地 殻変動量が大きいと予想された地殻変動観測点「M 牡鹿」(宮城県石巻市)では,太陽光発電装置や衛星 携帯電話を装備する GPS 火山変動リモート観測装置 (REGMOS)と接続して電力と通信を確保することで 連続観測機能を復旧させた(写真-7(B)). 地震後の通信障害でデータ回収ができなかった観 測点の地殻変動量を解明するため,通常回線の通信 が復旧した点,携帯電話回線で回収に成功した点及 び現地の受信機から直接ダウンロードした点のデー タを加えて再解析した.この解析により3月 19 日に は,震源に近い電子基準点「牡鹿」(宮城県石巻市) で東南東方向に 5.3mの水平変動と 1.2mの沈降が
(A) (B) 写真-7 電子基準点等での作業の状況 (A)電子基準点「遠野」での作業の様子(2011 年3月 15 日撮影) (B)地殻変動観測施設「M牡鹿」に REGMOS を接続する作業 の様子(2011 年3月 16 日撮影) 検出された(水藤ほか,2011a). 地震前後の観測点の座標値を用いて推定する,矩 形断層モデル及びすべり分布モデルは,GEONET によ る定常解析に追従して適宜ホームページなどで公開 した. 3月 13 日,地震後にデータ回収に成功した観測点 のみで矩形断層モデル(暫定版)とすべり分布モデ ル(暫定版)を推定し公開した.日本海溝に沿った 断層面2枚で近似した総延長 400km,幅 80~85km の 矩形断層モデルと,震央付近を中心に最大約 25mの すべり分布モデルが推定された.このモデルから岩 手県から茨城県に至る太平洋沿岸で大きな沈降が想 定された(水藤ほか,2011b).暫定版とした理由は, 震央に近い観測点のデータが通信障害により計算に 組み込まれていないこと,GEONET の定常解析の基礎 となる GPS 衛星軌道情報が速報値であること及び地 震後の観測時間が十分でないことから,最終的な解 析結果としていない. GEONET の定常解析から高精度な最終解が算出さ れた4月 22 日には,再度地殻変動量の分析,矩形断 層モデルとすべり分布モデルを推定し,最終版とし て公表した.モデルの最終版は,各観測点の座標値 が高精度に求められていること,通信が途絶してい た観測点や現地でデータ回収した観測点が加わって 点数が格段に増えたことにより信頼性が高められ, 震源域は,南北に約 380km,東西に約 90~130km,最 大すべり量は約 25mと推定された. 3.6 干渉 SAR を用いた地殻変動の把握 国土地理院は,「だいち」(ALOS)に搭載されてい るLバンド合成開口レーダー(PALSAR)の観測デー タを用いて,定常的な SAR 干渉解析から面的に地殻 変動を監視している(山中ほか,2011).本震発生後, 「だいち」を用いた防災利用実証実験の一環として 2008 年3月に設置した「衛星データを用いた地震・ 地盤変動データ流通及び解析グループ」の事務局で ある国土地理院は,直ちに(独)宇宙航空研究開発 機構(以下,「JAXA」という.)に対して東北地方全域 の観測要求を行った.PALSAR による緊急観測は,4 日後の3月 15 日に開始され,5月 12 日に ALOS の運 用が終了するまで続けられた. 北行軌道では4月 18 日に東北地方全域の観測が 終了し,新潟県西部・長野県東部・山梨県・静岡県 東部を結ぶ幅約 70km の帯状区域も観測された.南行 軌道では3つの軌道で観測が実施されたが,東北地 方中央を縦断する区域が観測できなかった. JAXA からデータを取得すると,SAR 干渉解析を実 施して,3月 17 日には震災後初の観測データをもと に解析結果を報道発表し,その後も新たな観測が実 施される毎に随時解析し,ホームページで公開した. 地震に伴う地殻変動は,震央を中心に同心円状に東 北地方から関東・中部地方まで及んでおり,少なく とも南北 600km,東西 200km の範囲で変動縞を確認 できる.また,その変位量は,GPS 解析結果を SAR 干渉画像が表す方向(ALOS の視線方向)に換算した 値と整合し,牡鹿半島先端で約4mの変動を捉えた. 本震後には,東北・関東地方での余震や誘発して 発生したと考えられる中規模地震が頻発した.本震 による大局的な地殻変動の中に見られる局所的な干 渉縞は,3月 12 日に発生した長野県・新潟県県境付 近の地震(M6.7),19 日に発生した茨城県北部の地 震(M6.1)及び4月 11 日に発生した福島県浜通りの 地震(M7.0)によると思われる内陸で発生した地震 の地殻変動を検出した. 3.7 基準点測量成果の停止と成果改定 電子基準点の観測データにより東北地方から関 東・甲信越地方にかけての広い範囲で顕著な地殻変 動が明らかになったため,3月 14 日,東京の島しょ を除いた東北・関東地方の全都県と新潟県・長野県・ 山梨県に及ぶ1都 15 県の電子基準点・三角点の測量 成果を停止した.水準点の停止は,電子基準点デー タから上下変動量が数 cm 以上となる東北から南関 東地方に至る地域とした.加えて,電子基準点 438 点の改定成果を公表した5月 31 日にも北陸3県(富 山県・石川県・福井県)と岐阜県の三角点成果を停 止した(檜山ほか,2011).測量成果を停止した基準 点総数は,電子基準点 438 点,三角点約 44,000 点, 水準点約 1,400 点に及び,全基準点総数の 35%以上 が対象となった. 被災地の復旧・復興事業の実施のためには,震災 後の測量成果を早急に提供する必要があり,国土地 理院に対して測量計画機関等から改定成果の早期公 表の要望が寄せられた.特に電子基準点成果は,後 続の三角点の改測や改算,航空レーザ撮影の際に利 用されるため,緊急性が高かった.しかし,長期に わたる余効変動により測量成果を改定しても位置が 6 国土地理院時報 2011 No.122
変動して測量成果を再停止することにならないよう, 余効変動量が小さく,将来においても安定した測量 成果を提供する時期を検討する必要があった.また, 新成果算出にあたって,地殻変動の影響や測量成果 を改定しない地域(成果非停止地域)との境界で相 対精度2ppm 以内を確保するための調整を加えるな ど不整合が生じないよう考慮しなければならなかっ た. 電子基準点成果の改定は,地震の影響を受けてい ない海外のVLBI観測局との国際共同観測から求めら れたVLBIつくば局の座標値にGPS-VLBIコロケーショ ン測量(GPS観測局とVLBI観測局間の正確な相対位置 関係を取得するために行う測量)の成果とGEONET定 常解析結果を組み合わせて計算することを基本とし, 5月31日に成果を公表した. 同日には,三角点約 1,900 点と水準点約 1,900 点 で基準点の改測作業を開始し,改測を実施いない三 角点の成果は,電子基準点成果と GPS 測量を実施し た三角点約 1,900 点の改測成果から点ごとに補正パ ラメータを算出して求めた.10 月 31 日にその測量 結果を取りまとめ,三角点約 43,300 点と水準点約 1,900 点の改定成果を公表した.また,改定点の成 果を含めた全国の測量成果を「測地成果 2011」と呼 称することにした.測量法施行令で規定している日 本経緯度原点及び日本水準原点の測量成果について は,位置や高さが変動したことから,測量の正確さ を確保するため,測量作業を実施し,原点数値を改 正し,10 月 21 日に公布・施行された. 3.8 被災地の空中写真撮影と災害復興計画基図 の整備 東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津 波による甚大な被災状況を把握することを目的に, 太平洋沿岸部を中心に空中写真を緊急撮影すること が3月 11 日の第1回本部会議で決定した.緊急撮影 は,「くにかぜⅢ」が震災前日から3月末まで航空法 に定める定期点検中であったこと,各地の被災状況 が甚大で地域が広範囲であると予測できたことから, 2005 年3月に(財)日本測量調査技術協会と締結し た「災害時における緊急撮影に関する協定書」に基 づいて協定に加盟する民間測量会社に発注して実施 することになった(長谷川ほか,2011).撮影範囲は, 本省緊対本部や東北地方整備局からの優先順位付き の要望及び本部長の指示をもとに本部会議で決定し た.緊急撮影対応可能な会社のリストからカメラの 装備状況を判断し,デジタルカメラを使用する会社 を沿岸部に,フィルムカメラを使用する会社を山間 部に配置して撮影範囲を区割りした.4月1日以降 は,定期点検が終了した「くにかぜⅢ」を運用して 直営による未撮影地区を補完する撮影を機動的に実 施した. 山間部の撮影を除き,沿岸部の撮影を担当した協 定各社は,撮影後のデジタル画像処理,標定図作成 に加えて,正射画像生成,ハードディスクへの格納 とプリント出力までを一連の作業として実施し,撮 影した日の翌日には東京分室に納品した.これらの 空中写真は,デジタルデータと印刷物を本省各部局, 地方整備局,内閣官房,内閣府,防衛省のほか,政 府現地対策本部や被災した県や市町村に提供した. データ提供と並行して,背景となる電子国土基本図 (地図情報)と一致するように空中写真を回転処理 した画像を直ちにホームページに掲載した.その後, 写真をつなぎ合わせ主要な地物や地名が入ったモザ イク写真,電子国土基本図(地図情報)の注記と重 ね合わせた正射写真地図など,作成する画像の処理 状況に応じてホームページに載せる画像を随時差し 替えや追加をしてコンテンツを充実した. 4月には,緊急撮影の対象外であった茨城県につ いては,被害が大きい沿岸部の写真を民間企業から 著作権とともに買い取り,4月にホームページに掲 載した. 5月には,地図作成を目的とする垂直写真よりも 被災地の状況を立体的に捉えることができる斜め写 真を被害が大きい地域を対象として「くにかぜⅢ」 で撮影し,撮影方向を付してホームページで公開し た.加えて,関係機関の要望に応えるように,高解 像度画像をダウンロードできるサイトを別に立ち上 げた. 被災地の空中写真撮影作業が一通り完了すると, 次は被災地における復旧・復興事業を推進するため に , 青森 県八 戸 市か ら福 島 県い わき 市 に至 る約 5,100km2の沿岸地域において,公共事業で共通して 利用可能な空中写真情報と災害復興計画基図を整備 することとなった.縮尺 1/2,500 の災害復興計画基 図は,撮影縮尺を 1/8,000 として,5月から空中写 真撮影を開始して得られた正射画像をもとに作成し た.なお,福島第一原子力発電所事故で設定された 警戒区域内は,衛星画像を用いて整備した. 災害復興計画基図は,対象とする全自治体からの 調査をもとに,流出した家屋やがれき等により遮蔽 された道路縁も表現した迅速図と,公共測量作業規 定の準則に準じた都市計画図に相当する図の2通り の図面を作成・提供した. 7月以降は,作成した基図を随時被災自治体及び 関係機関へ提供した. 3.9 浸水範囲概況図とデジタル標高地形図の作 成 内閣官房から津波の浸水域の特定に関する要請に 応えるため,浸水範囲概況図の作成が3月 12 日の本
部会議で決定し,撮影した空中写真を入手するまで に表現方法や作成手順を検討した(渡辺,2011).大 量の空中写真を迅速に判読しなければならないこと から,実体視から判読する通常の方法ではなく,単 写真から判読する効率的な方法を採用して数値化す ることにした.最初の判読作業は,12 日に撮影した 写真を 13 日午後から開始し翌日朝に終了した.13 日撮影分も同様に繰り返して,2日間で判読した写 真は,約 1,900 枚に達した.14 日には,浸水範囲概 況図は,東北地方測量部や陸上自衛隊を通じて政府 現地対策本部をはじめ公的関係機関に空中写真とと もに順次配布された.3月 18 日には,それまでに作 成した青森県八戸市から福島県相馬市に至る浸水範 囲概況図をもとに市区町村別の浸水範囲面積を集計 し,概算値を記者発表した.概算値とした理由は, 石巻市以北に未撮影地域が残っており浸水範囲の全 体を捉えていないことによる. 3月 19 日に撮影した写真についても翌日に判読 を行い,浸水範囲概況図の追加とともに,市区町村 別毎の浸水範囲面積を更新して 23 日にホームペー ジに掲載した.3月 28 日は津波浸水域の土地利用別 面積を,翌日は浸水域の土地利用図をホームページ で公開した.その後も空中写真撮影の進捗に合わせ て3月 24 日,4月4日に更新した.4月 18 日には, 津波の被害が想定される青森県六ケ所村から千葉県 一宮町までの全ての海岸域について,概況図,津波 浸水面積及び土地利用別分類を最終版として公開し た.これまでに公開した浸水範囲概況図は,縮尺 1/100,000 での公開であったが,再判読,現地での 確認及び縮尺の大きい地図の要望が寄せられたため, 6 月 30 日に精度の限界を示した上で縮尺2万5千分 1地形図に重ね合わせて公開した. 判読に用いた画像は,青森県から福島県までは国 土地理院が撮影した空中写真,原発事故に伴う飛行 制限域は人工衛星画像,茨城県は民間企業から購入 した空中写真,千葉県内の一宮町以北の区域は千葉 県が撮影した空中写真である.総浸水面積は,山の 手線内側面積の約9倍に相当する 561km2に達し,そ のうち仙台平野を擁する宮城県が 327km2と半分以上 を占めた.市区町村別では石巻市が最大の浸水面積 (73km2)となった. また,国土地理院は,地震による沿岸域の沈降や 津波で改変した地形を捉えるために,航空レーザ測 量を実施し高精度な標高データを取得し,数値標高 モデルの作成及びデジタル標高地形図を整備してい る.整備したデータは,被災地の復旧・復興計画に 活用できるように関係機関へ順次提供している. 3.10 地理空間情報の提供 国土地理院は,緊急時に必要な地図を関係機関に 迅速かつ的確に提供するため,(財)日本地図センタ ー(以下,「JMC」という.)と「災害用常備地図の保 管業務」や「地図の運搬業務及び地図等の刊行業務」 などを取り交わし,24 時間対応可能な体制を確立し ている(大塚,2011).3月 11 日,JMC は取り交わ しに基づき,100 万分1日本Ⅰ・Ⅱ, 50 万分1地方 図「関東甲信越」以東の図面,20 万分1地勢図,青 森県から茨城県に至る太平洋側区域の2万5千分1 地形図など異なる4種類の紙地図約 1,500 枚を内閣 官房,内閣府及び本省防災センターに搬入した.翌 12 日にも,JMC に対し本省道路局に2万5千分1地 形図の納入と,被災地に提供するための2万5千分 1地形図を陸上自衛隊東立川駐屯地まで搬入するこ とを指示した.15 日には,本省道路局から5万分1 地形図の追加要請にも対応し JMC が搬入した. 地図の電子データは,ホームページに「平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震関連(後に「東 日本大震災関連情報」に変更)」ページを構築し,20 万分1地勢図や2万5千分1電子国土基本図のダウ ンロードを関係機関に情報提供した.2万5千分1 地形図サイトの利用にはパスワードを設定し,地方 自治体向けに限定した. 被災地を緊急撮影した空中写真は,電子国土 Web システムを活用して撮影日ごとにその整備範囲が判 るようなインターフェースを用意して画像を公開し た.その後,引き続き行われた撮影に対しても,順 次単写真から正射写真への処理を待って,シームレ スな正射写真を追加公開した.代表的な被災地区に ついては,震災前後の写真,地図と震災後の写真及 び撮影日の異なる被災後の写真を左右に配置して, それらを動的に比較できる仕組みを構築し,被災に よる変貌が容易に判るように工夫した. 3月 22 日には,東北地方整備局や岩手,宮城,福 島の各県及び東日本高速道路(株)と連携し,東北 地方道路規制情報集約マップを開設し,道路規制状 況の情報提供に一翼を担った. 地理空間情報は,主に4つの方法でデータが提供 された.一点目は陸上自衛隊が被災地に物資輸送す る便を利用する方法,二点目は東北地方測量部と TEC-FORCE により岩手,宮城,福島の各県の災害対 策本部に地理空間情報の提供について周知を図り, 要望に応じて政府現地対策本部に持ち込んだプリン ターから出力した印刷図や電子媒体にコピーしたデ ータを直接手渡す方法,三点目は地理情報支援班を 通じた提供方法,四点目はホームページから発信し, インターネットを通じた一般への情報提供方法であ る.国土地理院のホームページアクセス数は,発災 以降の3ヶ月間は,前年比約2倍で推移しており, 増加分は東日本大震災関連によるものと推測される. 8 国土地理院時報 2011 No.122
4.評価と課題 国土地理院は,これまでに地震,火山活動,風水 害への災害対応を経験してきたが,東日本大震災は 以下の点で過去に発生した災害と大きく異なった. (1)1900 年以降4番目の巨大地震により顕著な地 殻変動が発生し,基準点成果の改定方法と公表時 期の判断を迫られたこと. (2)地震に伴い発生した大津波により,被災地が 海岸沿いの広い範囲に及んだこと. (3)本院が被災し,関係機関と本院間の通信障害 により地理空間情報提供業務に影響が生じたこ と. (4)原子力災害が発生した中で,初めての災害対 応を行ったこと. (5)地理空間情報の膨大なニーズに対応するため 新たな体制整備が求められたこと. これらの点について,迅速かつ適切な対応を迫ら れながら得た教訓や評価及び課題について報告する. (1)地震による地殻変動の様相を明らかにするに は,電子基準点などの観測データを平時と同様に回 収することに尽きる.通常回線が寸断された観測点 では,回線断を想定して整備した代替回線によりデ ータが回収でき,通信二重化の成果が現れた.しか し,代替回線でも通信できない観測点では,停電に よって受信機のメモリやバッテリーの容量不足が原 因で地震後の貴重な観測データが欠測となったとこ ろも少なからずあった.その対策として,バッテリ ーの 72 時間対応やソーラーパネルを設置など電子 基準点の改造を行っている. 電子基準点によって明らかとなった東北・関東地 方から北陸・中部地方まで及んだ地殻変動をもとに 基準点測量成果の公表は,これまでの地震災害と同 様に速やかに停止した.測量成果は,電子基準点が 余効変動速度の低下と復旧・復興事業への必要性の 頃合いを見計らって5月 31 日に改定され,追随して 改測した三角点と水準点が 10 月 31 日に改定された. しかし,測量成果の停止範囲の妥当性や成果停止区 域と非停止区域の境界における整合性の確保や計算 手法について課題が残った. (2)大津波による被災の全貌を捉える方法として 空中写真撮影は有効だった.定期点検中の「くにか ぜⅢ」に替わり,「災害時における緊急撮影に関する 協定書」に基づき機動的な対応により,翌日から撮 影を実施した.空中写真から津波の浸水範囲を判読 した浸水範囲概況図を,空中写真とセットで関係機 関や被災自治体に提供することができた.一方,優 先順位を踏まえた空中写真撮影のニーズや合理的な 写真解像度の見極め,浸水範囲概況図作成にあたっ ての空中写真判読の基準と現地調査結果の反映につ いて,改善の余地がある. (3)本院では停電と同時に通信網が寸断され,電 子メールの送受信やホームページが停止するなど通 信手段が限られた.それにより,被災状況に関する 情報収集や他機関への連絡手段が限られ,初動時の 地理空間情報の提供や関係機関への情報提供などが 遅れたことが課題となった.本院は,非常用発電設 備の強化など冗長性を高める対策を検討している. (4)原子力災害により,航空機や車両での進入が 規制された区域への対策として,浸水範囲概況図や 災害復興計画基図の作成において人工衛星画像の有 用性が挙げられる.また,内閣官房からの要請に対 応して計画的避難区域と緊急時避難準備区域を表し た地図の作成は,内閣官房に派遣されたリエゾンや 本院関連部署が連携して取り組んだ成果である. (5)地図,空中写真及び浸水範囲概況図などの多 数の要望に迅速・確実に応えるために,本部に地理 情報支援班を設置して提供窓口を一本化した.政府 現地災害対策本部に派遣された TEC-FORCE と東北地 方測量部が連携して,必要な地理空間情報を直接提 供したことは初の取り組みである.また,本省防災 センターや内閣官房にリエゾンを派遣して関係行政 機関との連絡体制を強化した.しかし,膨大なデー タを迅速に提供する手段の確立や,地理空間情報を 利用するユーザーのニーズが多様化しており,それ に対応するための方針と体制の整備が今後の課題で ある. 5.まとめ 国土地理院は,東日本大震災の災害対応で得た教 訓と浮き彫りになった課題をもとに,防災業務計画, 災害対策要領,本院が被災したことを想定した業務 継続計画を改定作業中である(2011 年 12 月現在). 今後発生が予想される東海地震やそれと連動して 起こると想定される東南海・南海地震をはじめ,火 山活動.風水害に対して万全な体制を備えることが, 災害対策基本法の指定行政機関としての責務である. 職員は,防災意識の高揚と災害対応能力の向上を図 るため研鑽することを通じて万全の準備を整える所 存である.
参 考 文 献 気象庁:http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/2011_03_11_tohoku/index.html(accessed 30 Nov.2011). USGS:http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/world/10_largest_world.php(accessed 30 Nov.2011). 水藤尚,西村卓也,小沢慎三郎,小林知勝,飛田幹男,今給黎哲郎,原慎一郎,矢来博司,矢萩智裕,木村 久夫,川本智司(2011):GEONET による平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震に伴う地震時の地殻変 動と震源断層モデル,国土地理院時報,122,29-37. 水藤尚,西村卓也,小沢慎三郎,飛田幹男,原慎一郎,矢来博司,矢萩智裕,木村久夫,川本智司(2011): GEONET による平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震に引き続いて発生している余効変動と余効すべ りモデル,国土地理院時報,122,39-46. 山中雅之,野口優子,鈴木啓,宮原伐折羅,石原操,小林知勝,飛田幹男(2011):衛星合成開レーダーを用 いた平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動の検出,国土地理院時報,122,47-54 檜山洋平,山際敦史,川原敏雄,岩田昭雄,福﨑順洋,東海林靖,佐藤雄大,湯通堂亨,佐々木利行,重松 宏実,山尾裕美,犬飼孝明,大滝三夫,小門研亮,栗原忍,木村勲,堤隆司,矢萩智裕,古屋有希子,影 山勇雄,川元智司,山口和典,辻宏道,松村正一(2011):平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震に 伴う基準点測量成果の改定,国土地理院時報,122,55-78. 長谷川裕之,斎藤勘一,高橋広典,首藤隆夫,甲斐納,廣田三成,柴原充,畠山裕司,根本正美,大野裕幸, 石関隆幸(2011):東日本大震災に対する基本図情報部の取り組み,国土地理院時報,122,79-89. 渡辺信之・中島秀敏・吉岡貢・長谷川学(2011):東日本大震災に対する応用地理部の取り組み,122,91-96. 大島健一,三浦優司,影山勇雄,古屋有希子,矢萩智裕,丸山一司(2011):平成 23 年(2011 年)東北地方 太平洋沖地震による GPS 観測施設・験潮場の被災状況及び復旧対応,122,113-125. 大塚康弘,明野和彦,勝田啓介(2011):東日本大震災に対する地理空間情報部の取り組み,122,163-167. 国土地理院(2011):東日本大震災 国土地理院の災害対応記録集. 10 国土地理院時報 2011 No.122
東日本大震災に対する東北地方測量部の取り組み
Responses of Tohoku Regional Survey Department of GSI
to the Great East Japan Earthquake
東北地方測量部 嵯峨 諭
Tohoku Regional Survey Department Satoshi SAGA
要 旨 平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震(以 下,「東北地方太平洋沖地震」という.)における地 震発生直後の東北地方測量部(以下,「当部」という.) の状況や関係行政機関及び被災自治体への地理空間 情報の提供,現地調査への対応,緊急災害現地対策 本部への対応及び,平成 23 年度災害復旧に伴う補正 予算で整備・提供した地理空間情報等についての取 り組みを紹介する. 1.はじめに 東北地方太平洋沖地震では東北地方測量部のある 仙台市宮城野区五輪において震度6強の揺れが観測 された.幸い当部の職員には怪我はなく全員無事で あったが停電,断水,都市ガスの停止等ライフライ ンは完全に途絶した中で,災害対応に当たった. 2.当部の対応 2.1 地震発生直後の当部の状況 当部がある仙台第三合同庁舎は 2009 年4月に耐震 工事(免震工事)を完了していた.そのため東北地 方太平洋沖地震において相当な揺れがあったにもか かわらず建物及び事務室に大きな被害はなかった. しかし,地震発生の直後から停電となりパソコンや インターネットが使用できなくなり,通信手段とし て使えるものは電話と国土交通省の専用回線(マイ クロ)のみであった.当部では地震発生直後の 14 時 50 分に地方災害対策本部を設置した.15 時に庁舎管 理室から待避指示が出され,部長,次長,地理空間 情報管理官,防災情報管理官,管理課長,測量課長 以外の職員は一時屋外へ待避した.庁舎に残った職 員は仙台管区気象台,携帯ラジオ及び携帯電話のワ ンセグにより災害情報の収集に努めた.その後,庁 舎に被害がないことが確認され約 45 分後に屋外待避 が解除された.16 時から第1回地方災害対策本部会 議を開催し職員家族等の安否確認,地図在庫,現地 調査機材等の確認を行った.また,停電の復旧の目 途がわからない状況であったことから非常電源を確 保している仙台管区気象台の協力によりパソコンの 稼働に必要な電力の供給を受けた.18 時から地図出 力の準備を開始し,21 時 30 分から電子国土を活用し た地図の出力を行い関係行政機関及び被災自治体へ 地理空間情報を提供すための活動を開始した.3月 12 日,13 日は休日であったが 24 時間対応可能な体 制をとった. 2.2 関係行政機関及び被災自治体への地理空間 情報の提供状況 地方測量部の災害対応の一つは被災地の行政機関 に対する地理空間情報の提供である.その提供につ いても地震発生直後に必要とする地理空間情報,災 害情報を把握する段階で必要とする地理空間情報, 復旧・復興のための地理空間情報と時間の経過とと もに変化していく.そのことは,別表の地理空間情 報の提供一覧からも伺える.別表には東北地方太平 洋沖地震に関連して当部から 11 月 17 日までに提供 した地理空間情報及び提供先をまとめた. また,当部では広域簡易オルソ地図画像を独自に 編集し作成した(図-1,2).広域簡易オルソ地 図画像は,測図部(同年4月1日「基本図情報部」 へ改組)が作成した簡易正射地図画像を,行政機関 や被災自治体等が利用しやすい形に編集したもので, 作成した地域は表-1のとおりである. 東北地方太平洋沖地震発生当初,被災自治体への 地理空間情報の提供は,郵便等を用いた送付手段が 途絶えたことから現地調査の際等に直接提供を行っ た. 3月 22 日から 24 日の現地調査の際にオルソ地図 画像・広域簡易オルソ地図画像を提供した市町は次 のとおりである. 岩手県岩泉町災害対策本部,宮古市災害対策本部, 山田町災害対策本部,大槌町災害対策本部,釜石市 災害対策本部,大船渡市災害対策本部,陸前高田市 災害対策本部. また,当部から比較的近距離の下記の被災自治体 についても3月 22 日から 25 日の間に直接提供を行 った. 仙台市,山元町,亘理町,岩沼市,名取市,東松 島市,松島町,気仙沼市,南三陸町,女川町,石巻 市,利府町,七ヶ浜町,塩竃市,多賀城市,福島県 相馬市,新地町.
表-1 広域簡易オルソ地図画像作成一覧 作成 日 作成地域 縮尺 用紙 サイ ズ 3/18 三陸北地区 中部 25000 A0 3/18 三陸北地区 南部 25000 A0 3/18 三陸北地区 北部 25000 A0 3/18 石巻地区 25000 A0 3/18 仙台地区 南部 25000 A0 3/18 仙台地区 北部 25000 A0 3/18 仙台地区 仙台市 25000 A1 3/18 仙台地区 名取市・岩沼市 25000 A1 3/18 仙台地区 亘理町・山元町 25000 A1 3/19 仙台東部地区 25000 A0 3/19 三陸南地区 中部 25000 A0 3/19 三陸南地区 南部 25000 A0 3/19 三陸南地区 北部 25000 A0 3/19 女川町 16500 A0 3/19 仙台湾地区 南部 25000 A0 3/19 仙台湾地区 北部 25000 A0 3/19 仙台地区 相馬市・新地町 25000 A1 3/19 仙台地区 南相馬市 25000 A1 3/23 三陸海岸地区 松島 25000 A0 3/23 三陸海岸地区 西部 25000 A0 3/23 三陸海岸地区 唐桑 25000 A0 3/23 三陸海岸地区 南部 25000 A0 3/23 三陸海岸地区 北部 25000 A0 3/23 三陸海岸地区 多賀城市・塩竃 市・松島町 25000 A1 4/4 三陸南地区 気仙沼市 5000 A0 4/4 三陸南地区 気仙沼市 25000 A1 4/7 三陸南地区 釜石市 5000 A0 4/7 三陸南地区 釜石市 25000 A1 4/7 三陸海岸2地区 山田町 5000 A0 4/7 三陸海岸2地区 山田町 25000 A1 4/7 三陸南地区 大船渡市 5000 A0 4/7 三陸南地区 大船渡市 25000 A1 4/7 三陸南地区 大槌町 5000 A0 4/7 三陸南地区 大槌町 25000 A1 4/7 三陸南地区 陸前高田市 5000 A0 4/7 三陸南地区 陸前高田市 25000 A1 4/8 三陸海岸2地区 久慈市 5000 A0 4/8 三陸海岸2地区 久慈市 25000 A1 4/8 三陸海岸2地区 宮古市 5000 A0 4/8 三陸海岸2地区 宮古市 25000 A1 作成 日 作成地域 縮尺 用紙 サイ ズ 4/8 三陸南地区 南三陸町 5000 A0 4/8 三陸南地区 南三陸町 25000 A1 4/13 三陸南地区 石巻市・東松島 市 10000 A0 4/13 三陸南地区 石巻市・東松島 市 25000 A1 4/13 三陸南地区 石巻市・旧河北 町 25000 A1 12 国土地理院時報 2011 No.122
図-2 広域簡易オルソ地図画像 三陸南地区南三陸町の一部 (用紙サイズ A0 出力 1/5000) 2.3 現地調査の実施状況 2.3.1 電子基準点の調査及びデータの回収 当部では,地震発生直後より通信回線が途絶し, データの取得できなくなった電子基準点等 12 点の 調査及びデータ回収を測地観測センターと共同で行 った(図-3). 3月 14 日に 960549(矢本),020918(河北),950176 (涌谷),15 日に 960550(牡鹿)(写真-1),940036 (女川)の電子基準点についてソーラーパネル設置 のための事前調査を実施した. 22 日から 24 日にかけては,950175(志津川), 950162(岩泉1),020906(田老),950171(大船 渡),07S065(S大船渡),02P205(P大船渡)の 6点について現地調査及びデータの回収を行った. 22 日に 950175(志津川)の電子基準点についてデ ータ回収及び傾斜測定を行った(写真-2), 23 日に 950162(岩泉1)の電子基準点データ回収 及び傾斜測定,020906(田老)の電子基準点のデー タ回収を行った(写真-3,4). 図-3 電子基準点調査点 14 国土地理院時報 2011 No.122
24 日に 07S065(S大船渡)の電子基準点の傾斜測 定,950171(大船渡)の電子基準点のデータ回収及 び傾斜測定,02P205(P大船渡)のデータ回収(受 信機浸水のためデータカードを回収)を行った. 4月 11 日に 940037(利府)の電子基準点の傾斜 測定及び受信機格納庫内部の確認と周辺調査を実施 した. 写真-1 電子基準点 960550(牡鹿) 写真-2 電子基準点 950175(志津川)傾斜測定 写真-3 電子基準点 020906(田老) 写真-4 電子基準点 020906(田老)収納箱内 2.3.2 気象庁検潮所への標高取り付け観測 気象庁から東北地方太平洋沖地震に伴い大きく 地盤沈下した大船渡検潮所,仙台港検潮所について, 標高取り付け観測の協力依頼が測地部にあった.両 験潮場の標高取り付け観測を当部が実施することと なり,大船渡検潮所は3月 30 日から 31 日,仙台港 検潮所は3月 30 日にいずれも1班2名体制で実施 した. 大船渡検潮所の標高取り付け観測に当たっては, 標高取り付け箇所を確認するため気象庁職員と合流 して GPS 測量機の観測点を選定し,GPS 観測を2時 間行った.さらに GPS 観測点から大船渡検潮所間を 二等水準測量により取り付け観測を実施した(写真 -5,6).仙台港検潮所標高取り付け観測に当た っても気象庁職員と合流した.観測点は1級水準点 を選定し GPS 観測を2時間行った.この1級水準点 より仙台港検潮所間を二等水準測量により取り付け 観測を実施した. 写真-5 大船渡検潮所標高取り付け観測(GPS)
写真-6 大船渡検潮所標高取り付け観測 (二等水準測量) 2.3.3 地盤沈下調査 電子基準点の解析結果から,東北地方の太平洋沿 岸地域において顕著な地盤沈下が確認された.測地 部と当部との合同観測班で,当該地域の詳細な地盤 沈下を把握することを目的として,太平洋沿岸地域 の一部の基準点において,GPS 観測を行った.当部 からは2名が参加した.結果については4月 14 日東 北地方太平洋沖地震に伴う地盤沈下調査結果として 公表された.また,別途2班を編制し4月9日,10 日の2日間,亘理地区2点,相馬地区2点,石巻地 区2点,東松島地区2点で観測を実施した(図-4). 観測データは測地部に報告した.結果は(表-3) のとおりである.また,4月8日,仙台航空局から の依頼で仙台空港の公共基準点3点において1班2 名で GPS 観測及び地盤沈下調査を行った. 図-4 当部による地盤沈下調査地区 表-3 地盤沈下調査結果一覧 市町村名 変動量 (cm) 点名 基準点種別 石巻市 -78 5631 一等水準点 石巻市 -67 根岸堤 四等三角点 東松島市 -43 5667 一等水準点 東松島市 -38 寺山 二等三角点 亘理町 -20 5560 一等水準点 岩沼市 -47 玉浦 三等三角点 相馬市 -23 附 27 験潮場附属 水準点 相馬市 -29 南城 四等三角点 写真-7 地盤沈下調査の観測(一等水準点 5667) 2.4 緊急災害現地対策本部への対応 緊急災害現地対策本部(宮城県庁内)への国土地 理院緊急災害対策派遣隊(以下,「TEC-FORCE」とい う.)の派遣は5月 13 日の第 71 回緊急災害現地対 策本部会議まで行われた.その後当部が事務を引き 継ぎ5月 16 日の第 72 回から8月2日の第 100 回の 緊急災害現地対策本部会議まで出席し,現場のニー ズに沿った地理空間情報の提供を行うとともに災害 情報の収集を行った. 緊急災害現地対策本部会議では,「東日本大震災に よる被災地域の斜め写真を公開」,「電子基準点の測量 成果の改定等について」「平成 23 年(2011 年)6月 23 日6時 51 分頃の岩手県沖を震源とする地震に伴う地殻 変動について」等の情報提供を行った. 2.5 地理空間情報提供窓口の設置とニーズ等の 調査 国土地理院は平成 23 年度災害復旧に伴う補正予 算により,東日本大震災の復旧・復興を支援するた めの事業として測地基準点の復旧測量,高精度標高 16 国土地理院時報 2011 No.122
データ整備,災害復興計画基図緊急調査等を実施し た.当部では,各事業の成果である地理空間情報に ついて利用者である自治体等のニーズ・要望を各事 業の成果である地理空間情報の概要,完成予定時期 等を示し直接聞き取り調査を行った.調査は5月 12 日から6月3日にかけて青森県,岩手県,宮城県, 福島県及び太平洋沿岸の被災自治体 32 市町村並び に東北地方整備局,東北農政局で実施した.その際, 国土地理院から提供する各事業の成果である地理空 間情報の提供先窓口を決定した.また,当部の担当 窓口は防災情報管理官とした.各自治体からの要望 は特に災害復興計画基図緊急調査で作成する災害復 興計画基図に関するものであった.主な要望は復興 計画の策定に活用したいということで遅くとも9月 末までの提供,提供データの形式を DM 形式だけでな く CAD で使用できる形式での提供,また,測地基準 点の改測についても出来るだけ早く測量成果を提供 してほしいとのことであった.これらの調査結果は, 本院の担当部署に報告した.また,各自治体からの 要望についての回答はその後の地理空間情報提供の 際等に別途行った.しかし,災害復興計画基図の全 域完成が空中写真撮影の遅れなどにより 10 月末で あったことから十分要望に応えられなかった.自治 体からは提供時期に関する問い合わせが寄せられた ため,作業の進捗情報等のきめ細やかな提供につい て今後検討する必要がある. 3.まとめ 東北地方太平洋沖地震は我が国の観測史上最大の 地震であった.津波による被害も甚大であった.当 部は,この被災地域を管轄し,また被災地に位置し ていたことから関係行政機関及び被災自治体への地 理空間情報の提供や現地調査の拠点として活動した. 特に,平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震の 経験から,広域簡易オルソ地図画像を作成し関係災 対本部等に提供し,初動時の災害対応の活動を支援 した.今後とも利用者の立場になって考え,必要と される地理空間情報の提供に務めていきたい. 最後に,この度の東日本大震災で犠牲となられた 方々とそのご遺族に対しまして,心より哀悼の意を 表します.また,負傷された方々をはじめ被災者の 方々に,心からお見舞いを申し上げます. 参 考 文 献 直井貴之,菅原友恵,本嶋裕介(2008):平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震に伴う東北地方測量部の 取り組み-初動時における地理情報の提供-,国土地理院時報,117,3-6.
(別表) 地理空間情報の提供一覧 月日 提供先 名称 3 月 12 日 東北地方整備局災対室 1/2.5 万地形図(沿岸地域一式) 1/5 万出力地形図(沿岸地域) 1/3 万出力地形図(吾妻連峰) 広域災害対策図 陰影段彩図(東北地方) 仙台平野陰影段彩図 活断層図パンフレット 3 月 13 日 緊急災害現地対策本部 単写真サンプル 宮城県全体図,1/20 万,1/10 万出力図 広域災害対策図 自衛隊 宮城県全体図,1/20 万,1/10 万出力図 広域災害対策図 3 月 14 日 宮城県災害対策本部 石巻地区空中写真 5 コース分 緊急災害現地対策本部 空中写真(3/12,3/13 撮影分) 宮城県全体図(1/20 万) 空中写真,1/2.5 万(4 図) 空中写真全コース 石巻地区空中写真 5 コース分 仙台管区気象台 広域災害対策図と仙台市内 1/2.5 万 東北地方整備局 宮城県全体図(1/20 万) 消防庁 多賀城市産業道路タンクローリー横転付近空中写真 多賀城市内 1/2.5 万 3 月 15 日 岩手県災害対策本部 浸水範囲概況図 緊急災害現地対策本部消防庁 東北農政局災害対策本部 自衛隊 宮城県災害対策本部 空中写真デジタルデータ 国交省現地事務局 東北地整道路・河川部 仙台管区気象台地震火山課 自衛隊 宮城県環境部環境施設課 東北農政局災害対策本部 浸水範囲概況図 18 国土地理院時報 2011 No.122
月日 提供先 名称 3 月 16 日 政府現地連絡対策室(福島) 空中写真 福島原発を中心とした同心円の地図(広域災害対策図) 浸水範囲概況図 福島県災害対策本部 空中写真 福島原発を中心とした同心円の地図(広域災害対策図)広域災害対策 図とデジタルデータ 浸水範囲概況図 緊急災害現地対策本部 浸水範囲概況図(出力図)とデジタルデータ 福島原発を中心とした同心円の地図(広域災害対策図) 3 月 17 日 政府現地連絡対策室(岩手) 空中写真とデジタルデータ モザイク写真とデジタルデータ 浸水範囲概況図(岩手県版) 緊急災害現地対策本部 デジタル標高地形図(5m)メッシュ 3 月 18 日 緊急災害現地対策本部 広域簡易オルソ地図画像(仙台地区) 広域簡易オルソ地図画像(石巻) 宮城県災害対策本部 広域簡易オルソ地図画像(仙台地区) 広域簡易オルソ地図画像(石巻) オルソ画像(ロゴ入り) 東北農政局 オルソ画像(ロゴ入り) 3 月 19 日 岩手県災害対策本部 広域簡易オルソ地図画像(三陸北(北,中,南)) 広域簡易オルソ地図画像(三陸南(北,中)) オルソ画像(ロゴ入り) 岩手現地連絡対策室 広域簡易オルソ地図画像(三陸北(北,中,南)) 広域簡易オルソ地図画像(三陸南(北,中)) 東北地方整備局 広域簡易オルソ地図画像(沿岸域) オルソ画像(ロゴ入り) デジタル標高地形図 空中写真(栗駒山東部,西部) 緊急災害現地対策本部 広域簡易オルソ地図画像(石巻) 広域簡易オルソ地図画像(仙台地区)
月日 提供先 名称 3 月 20 日 仙台市災害対策本部 広域簡易オルソ画像(仙台地区中央部) 地震前後の写真データ 仙台地域デジタル標高地形図(5m)メッシュ 緊急災害現地対策本部 オルソ画像のインデックス 政府現地連絡対策室(福島) 広域簡易オルソ地図画像(仙台湾地区南部,北部) 福島県災害対策本部 広域簡易オルソ地図画像(仙台湾地区南部,北部) 地震前後の空中写真データ 東松島市災害対策本部 広域簡易オルソ地図画像(石巻地区) 電子国土基本図(A0 版 1/2.5 万分) オルソ画像データ(高解像度) 空中写真データ(3 月 19 日撮影分) 緊急災害現地対策本部 モザイク写真(3 月 19 日撮影分) 電子国土基本図(1/2.5 万出力図メッシュ入り) 3 月 21 日 緊急災害現地対策本部 広域簡易オルソ地図画像(仙台湾地区南部,北部) 広域簡易オルソ地図画像(全地区 12 面分のデジタルデータ) 東北農政局 空中写真データ(3 月 19 日撮影分) オルソ(3 月 19 日作成)5 地区 3 月 22 日 山元町,亘理町,岩沼市,名取 市 正射写真 広域簡易オルソ地図画像(仙台湾南部) 宮古市,釜石市,山田町,大船 渡市,陸前高田市,岩泉町,大 槌町 正射写真 広域簡易オルソ地図画像(三陸北,三陸南) 3 月 23 日 仙台市災害対策本部 オルソ地図画像 浸水範囲概況図 3 月 24 日 新地町災害対策本部 オルソ地図画像 浸水範囲概況図 広域簡易オルソ地図画像(仙台地区 相馬市・新地町) 相馬市災害対策本部 オルソ地図画像 浸水範囲概況図 広域簡易オルソ地図画像(仙台地区 相馬市・新地町) 現地災害対策本部 広域簡易オルソ地図画像((三陸海岸西,南,北)唐桑) 東松島市 浸水範囲概況図 広域簡易オルソ地図画像 精密標高地形データ(5mDEM) 松島町 オルソ地図画像 浸水範囲概況図 広域簡易オルソ地図画像 精密標高地形データ(5mDEM) 東北地方整備局 オルソ地図画像 浸水範囲概況図 オルソ画像 20 国土地理院時報 2011 No.122
月日 提供先 名称 3 月 25 日 気仙沼市,南三陸町,女川町, 石巻市,利府町,七ヶ浜町, 塩竃市,多賀城市 オルソ画像及びデータ 浸水範囲概況図 3 月 28 日 仙台市環境対策課 浸水範囲概況図データ(shp) 3 月 29 日 名取市政策企画課 浸水範囲概況図及びデータ(shp) オルソ画像 女川町災害対策本部 広域簡易オルソ地図画像(A0 1/16500) 自衛隊 宮城県全域の浸水範囲概況図(A0) 東北地方整備局道路二課 1/5 万地形図の出力図(A0 19 面) 浸水範囲概要図 3 月 30 日 仙台市情報政策課 オルソ画像 浸水範囲概況図 オルソ地図画像 宮城県防災砂防課 海岸 3D データ(宮城県)と航空レーザ(仙台北部 5m データ) 東北地方整備局道路二課 浸水範囲概況図データ(shp,pdf) 宮城県災害対策本部 広域簡易オルソ地図画像(全面) 4 月 1 日 JAXA防災利用システム室 岩手大学地域連携推進センタ ー 3/12,3/13 のオルソ画像(高解像度),オルソ地図画像,広域簡易オ ルソ地図画像(A0 21 面) 水土里ネットみやぎ オルソ画像,オルソ地図画像 日本赤十字社宮城県支部 浸水範囲概況図 広域簡易オルソ地図画像 広域災害対策図(宮城県) 4 月 5 日 宮古市災害対策本部 オルソ地図画像 浸水範囲概況図 オルソ画像 広域簡易オルソ地図画像 4 月 6 日 釜石市災害対策本部 大船渡市災害対策本部 陸前高田市災害対策本部 オルソ地図画像 オルソ画像 浸水範囲概況図 広域簡易オルソ地図画像 政府現地連絡対策室(岩手) オルソ画像 浸水範囲概況図 オルソ地図画像 広域簡易オルソ地図画像 広域災害対策図(岩手県) 岩手県災害対策本部 浸水範囲概況図 オルソ地図画像 広域簡易オルソ地図画像 広域災害対策図(岩手県)