• 検索結果がありません。

E・ランゲツサー「消えざる印」について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "E・ランゲツサー「消えざる印」について"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)E・ランゲツサー「消えざる印」について 磯 Uber. E.. Langg註ssers. Kampf. Thema,. das. zwischen. Gott. Sie. hat,. eigenartige,. die Dichterin Es. dem laL3t.. wird. Guten, Aber. ihrem.Werke. E. Langgasser. in. es. ihren. pantheistische Welt. mythischen Vordergrund. Vielmehr. verloren.. und. Satan. einer. berubt. fr也heren. beides. mit erstaunlicher Dichterin Manichaismus. das. Satanische. man. kann. auch. das. aufs. dem. helle. auBerste. Werken zur. in. Obgleich. der. mit. und. ist der. au8erzeitliche Kampf ihrer mit. stellt diesen. Rezeptivitat. gestellt die Dynamik. ist,. behandelt. groL3en. Siegel=. lsomi. Roman. etwas. elenlentaren, Gedanke in den dab. man. wie. Sh6taro. diesem. in. 郎. unauslと;schliche. in. Technik. meisterhaften dar. position. 太. =Das. Von. Das. 昭. 見. deutlich Natur. diesem diese. ist,. verwickelten. und Roman. Kom-. kann, sehen die Neigung der. eine zur. christliche. Eigentdmlichkeit. geht nicht dieses Werkes darauf, und Spannung Kdhnheit zusammensetzt. miteinander mit vorg′eworfen, weil sie das- Base. G6ttlichen Licht. und. allzu kiihn die Erwartung. gegennberstehen der Freude. in. nicht也bersehen.. 「恐ろしい周囲の情勢と魂の苦しみのうちに書上げた私のロマンは,非常に大きな,そ して二つとないものになりました。けれども,もうベルリソにはこれを受け入れてくれる 精神的な余地がありません。ベルリソはすでに死んでいます。….」1)この作品が完成され. た1945年の秋に,ランゲツサーは夫に宛ててこう害いている.. 1936年以来,半ユダヤ人. という理由で国家著作局からすべての活動を禁止され,さらに44年から強制労働にかり だされていた彼女は,極度の窮迫と疲労困暦のうちに,数年来書き続けて来たこの大作を 完成させたのであった。翌年この作品が出版されると,終戦の混乱のうちに,全く精神的 なものへの志向を失っていたドイツ市民,ことに多くの詩人作家たちの心をゆすぶり,同. 時に,この作品に対してはたちまち賞讃と非難の声が集中された。それはこの作品が,色 々な意味でドイツ国民の精神史的主要課題を内容としており,しかもきわめて独白な形式 とスタイルをもつものだったからである。その内容は,一言にして言えば,悪魔に誘惑さ れて堕落する人間と,神の恩寵によるその救いといった「ファウスト」的テーマを中心に したものであるが,ドイツ文学史のうちに幾度かくり返し用いられてきたこのテーマを,. 現代ヨーロッパの精神情況の底を流れる人間学的(anthropologisch)な問題を通った地点 においてとらえているところにこの作品の意義がある.ランゲッサーについて人間学的と いう場合,勿論それはP.クローデル(P.. Claudel)やG.グリーン(G.. Greene)やE..

(2) 磯. 34. 昭. 見. 太. 郎. ウォー(E. Waugh)などについて言われるのと同一の意味であり,ただ人間にとって内 在的な問題だ桝こ限られるのではなく,むしろKosmosにおける人間そのものの定位, その実存的意義の追究が問題なのである.従ってこの作品に語られているのは,人間の魂 にひそむ善と悪の対立,乃至は神的なものと悪魔的なものとの葛藤といった問題をこえて, 人間をめぐり,そこを戦場とする神と悪魔(Satan)そのものの戦いである。彼女の描き出 すサタンは, des. Urbild. 「すべての悪の原像」2)(das. alles. B6sen) 「陪闇の暗闇」. Dunkel. (das. Dunkels)であり,憎悪,憤怒,怨恨,靖忌,嫉妬,淫乱,魔術等すべての悪の根源. である.このサタンと神との闘争がランゲッサー本来の作家的資質である独特な手法とダ イナミックなStilで措かれる時,作品は,非常な,時にはやりきれないほどの迫力をも ってくる。 ランゲッサーは,多くの批評家,文学史家によってシュールレアリズムの詩人の中に加. えられているが8),対象に向う. Perspektiveの特異性と,そこから生ずるきわめて個性 S.アンドレス. 的な手法と文体は,現代のドイツ文学には一寸比較すべき作家がいない。. (Stefan Andres)の作品なども非常に迫力にみち,文体はぎらぎらしたものを持っている が,彼の場合そこには多分にラテン的な,地中海的な明るさがある。これに反してラング ッサーには,常に秘教的,魔術的とも言うべき薄気味悪さがつきまとっている。これは処 (Proserpina, Welt einesKindes, 1932)に串いてすでにはつき 女作「プロゼルピーナ」 りとあらわれている.この作品は,作者の少女時代を思わせる子供と,外の世界,ことに 自然との出会いを主題にしたものであるが,そこに描かれているのは,作者の思い出でも なければ,外界との出会いによって子供の中にひき起される心理過程でもない,子供の. 姿をかりて語られる一位の異教的神話の世界である。たえずくり返される自然の変態の描 写,思い出,夢,隠愉,象徴などがもつれ合って進むうちに,対象は次第に明確な形を失 って薄酷いヴェールに包まれ,その後に原初的な自然そのものの顔,自然の原像が浮び上 る。陪い衝動的なカをおびた地の霊が影の国からやってくる。そこにはもはや時間もなく,. 従って物語の進展もない。このような傾向は「沼地を通る道」. (DerGangdurchdasRied. 1936)にあっても変らない。話の筋ほ極度に酸味であり,相変らず異様なJb象,隠喰,負 敬,記憶,観念連合,エピソードなどが積み重ねられ,全体は意識的にぼやかされている。. 「プロゼルピーナ」と同年に発表された「悪魔の三幅対祭壇画」 1932)では, und. der. 「憎悪と陰謀と淫乱の苔」. (Ein. Buch. von. dem. (Triptychon Had. und. dem. des. Teufels. B6rsenspiel. Unzucht)という副題が示すように,鞄の霊ははつきり悪霊の風貌を帯び,人間の. 暗い激情,ことに性のそれと結びついてくる.いずれにせよ,ラングッサーの作家として. の出発は,目然に対する異教的,汎神論的な感覚を土台に,現象の背後にあるElement 〔もつともこれは,彼女がただ感覚だけを煉 の世界を把握しようとするところにあった。 りに創作したという意味ではない。感覚で捉えた素材を用いてその背後の世界に入ろうと する際の彼女の態度は冷静な観察と思索にみちているo上述の作品の中で,一見無秩序と 混乱の連続としか思えないものも,よくみると実はその各部分が緊密なつながりをもち, 綿密な計算の上に立っていることがわかる。いわばこの手法は自然把糎のための一つの試.

(3) E・ラソゲッサ-. 35. 「消えざる印」について. みなのである。〕 さて, Elementの世界にひそむ悪霊は,ラングッサーにとって,やがてキリスト教的. 世界観の中に存在する悪魔とその影を重ねて来る。と同時に,彼女の作品には,神の恩寵 (Gnade. Gottes)による救いの問題が前面にあらわれ,人間をめぐる神と悪魔との対立,. 闘争が壮大なテーマとなる。. 「沼地を通る道」から「消えざる印」. (1946年)まで十年の-だ. たりがあるが,最初に述べたように詩人の生活には社会的にも個人的にも色々な苦難がふ りかかつている。この間の体験が彼女の思想に与えた影響は小さいものではなかったであ ろう。 G.シュトルツ(G.. Storz)はこの変化の最大のものは,時間(Zeit)の意義が彼女の. 思想にあらわれたことだろう4)と言っているが,この指摘は正しい。. (「消えざる印」は超. 時空的な小説と言えるかもしれない,しかしそれは作者の思想の中で時間が決定的な意味 をもつに至ったということとは問題が別である)そしてこれは,ランゲッサーが,はじめ てキリスト教的作家として登場し,無時間的なElementの世界から,時間的なキリスト 教的人間救済の問題に入ったことを意味する。なぜならキリスト教における救済の問題は,. あくまで時間において,すなわち救済史として考えられているからである。こうして彼女 の作品の中心には人間が立つことになる。とは言っても,この作品と前の作品との問に断 絶があるというわけではない。前の諸作を毘くpantbeistiscbな自然感覚は依然としてこ の作品を流れている。そして正にそれ故に,かえって異常な緊張と迫力を生み出している. と言えるのである。彼女においては恩寵と自然という関係は,聖トマス的神学のそれと完 全に一致しているわけでほない.むしろランゲッサーの特徴はキリスト教と異教的. Pan. の世界とを驚くべきSpannungをもって結びつけたところにある。 この作品の中心に立つのは,ベルフォンテーヌというユダヤ人で,彼は七年前カトリック. 教徒であった妻エリ-ザベトと結婚をするた糾こ洗礼(Taufe)の秘蹟(Sakrament)を受 けているo (Das unaus16schliche Siegelという題名はこの秘蹟をあらわしている)彼は勿 論自由意志でこの秘蹟を受けたのであるが,決して積極的な信仰をもっているわけではな い。彼はライン・-ッセソ地方の小都市で立派な商人として生酒し,人々の尊敬を受けて 7年前受洗の日に出会ったひとり いる。話は1914年3月のある日ベルフォソテーヌが, の盲人を待っているところから始まる.読者は最初から,一位独特な自然描写,主人公の. 内的独自,回想などがかもし出す異様な雰囲気の中にひきこまれる。この小説を読む際に, われわれはその時問的配列に充分注意することを要求される。なぜなら,話は1914年の 出来事を中心としてはいるが,途中で1925年あるいは1944年において行われる会話, 回想などに移され,また一方1914年に行われる出来事の中にも絶えず回想や,時には未. 来に対するVisionなどがでてくるからである。その移行の仕方はきわめて突然であり, 何の脈絡もないように見える。また空間的にも,ライン・-ッセン地方を中心としなが. ら,何度かパリ,およびゼソリスというフランスの小都市に舞台が移されている。こうし た複雑な構成はラングッサーの最も得意とするところで,一見ばらばらな各章には,相互 にそれをつなぐものがかくされており,話の進行に?れてすべてがベルフォンテーヌを中. 心に集っていることがわかつてくる。例えば,上述の不思議な盲人の素姓は,第一部第五.

(4) 36. 磯. 見. 昭. 太. 郎. 章,パリで二人の男の間に交わされる聖ベルナデックについての会話の中ではじめて明ら かにされ(この場合も作者ははつきりそれを述べているわけではない),同時にこれは第三 (盲人はblinder Glaube 部の終章でベルフォンテーヌの辿る運命の象徴となっている。 呼ばれ,第一部の最初のところで死んでしまったことがわかるが,この津名は作品全体に とって重要な意味をもつ。). 一見善良な市民生酒を送っているベルフォンテ-ヌの精神の内部には,すでに何とも知 れぬ不安と虚無の影がきざしはじめている。過激な無神論,ニヒリズム,啓蒙的合理主義 などの化身と見られる富くじ売りや花火製造人など,悪魔的な人物が彼のまわりにあらわ れる。彼は,市の主だった人物で構成されている美食家の集り"Runde"に出席するが, これも「呪われた者」の巣である。ランゲッサーがここで用いる自然描写,情況描写に は,きわめて薄気味の惑い,デモ-ニシュな迫力がある。 (der Rasen). ….er. mit. Speeren. glahenden Flecke. zitternde Baschen. SChweren,. weile. und. im. ....Eine Nacken. hatte,. von. Sii8e der. seinem. warf; zu. ein. Mittagsstunde und. zu. die. wabrend drangte. feiner. verdichten. Neugier. ausfleischlicher. Dunst. den zu. allmahlich die. sammeln,. runde・. schien. ganz. und. geistiger. und. Sonne. Trauer. aus. Langer-. zu. gleichen. ist….5). w61fische und. Frdhlingsgras si°h. Mengen,. Blattwerk. verwucherte. entgegenzuw61ken,. Sattigung,. gro8e. verdunstete. das. weiche. schrecklichen. gemischt. und. durch das. auf. unten. von. Jener. Teilen. trank. glitt. Welle, etwas. R仏cken. gldhend. und. langsamer herunter.. -. weich, als die. le仁kte ihn erste,. welcbe. (Belfontaine) Gully. fldchtig. ausgeschickt. -6). 以上は一例に過ぎないが,このような描写が積み重ねられて行き,次第にベルフォンテ ーヌの内的荒廃と惑魔の出現が予感されてくる。彼は,この町の貧しい,しかし神秘家的. な風貌をもつ司祭マティアス(彼は悪魔の出現を予感しているように見える)との会話に おいて,はつきり信仰を否定するoついに本当の悪魔があらわれるoそれは,かつてベル. フォンテーヌが/く.)で生活していた青年時代の先生で,い割まブドウ酒出張販売人になつ ているト1)シュールことグランピエールである.ベルフォンテーヌは彼の手中におち,読 われて′<リヘ行くo. この時戦争が勃発し,彼は抑留されてフランスにとどまる.以上のよ. うな貢が進む間に,. ′ミリで行なわれる二人の男の聖ベルナデッタに関する会話(第三章), ゼソリス(フランスの小都市)で二人の僧侶の間に交されるベルフォンテーヌに関する追 想(第六章,時は1926年),支那から帰ったばかりの宣教師ルシアン・べノワの「リジュ ーの聖テレジア」についての院想(第六章の終り)などが挿入されている。第二部では, ベルフォンテーヌはゼソリスの市民となづているが,終章になるまであらわれてこない. 第一章はゼソリスの教会堂の上で一人の役僧と将校の間に交される「世界劇場」(Welttbeater)についての会話で始まる(時は1914年9月)。ここでランゲッサーはドノソ・ コルテス(DonosoCortes)の古い文書をかりて,柿,世界,国家,人間,自然などについ.

(5) 37. E・ラソグッサー「消えざる印」について. ての彼女の思想を長いページにわたって述べている。それはほとんど哲学乃至は神学の論 文に近く,小説の構成上きわめて大胆な試みである.世界史を終末論的(apokalyptisch) にながめ,そこに生起する一切を救済史の問題としてとらえているこの部分は作品全体の 思想的土台であるo次の章および第四章は,宣教師べノワとの恋に被れた女性ホルテンゼ と少女ズゼッテとの同性愛,ズゼッテの父親の貯計に陥ったホルテンゼの自殺事件が描か れる。ここでほ,ランゲッサーが,いろいろな恵のうちで特に重要視している性の倒錯が 取扱われている。二人の女の同性愛ばかりでなく,ホルチンゼの父親ボンマルシェの彼女. に対する異常な態度の描写には悪魔的執陳を感じさせるものがある(時は1917年).第三 章には1944年にべノワが回想する1914年萌のリジュ-のカルメル会の様子が述べられ る.第二部の終りに再び登場したベルフォンテー和まやがて堕落した女ズゼヅテと結解す る(1925年)。第三部では再びベルフォンテーヌが話の中心に戻る。彼は比較的平穏な生 晴を送り,教会に対しても立派な教徒として振舞っている。しかし内面はさらに悪化し, やがて来るべき破局を予感させる。再び悪魔があらわれる.それはグランピエール,そし. て終りにはズゼッテとの肉慾に陥ちた船員である。悪魔は最後にはもはや単なる誘惑老で はなく,実際の暴力をもった殺人強盗者としてベルフォンテーヌの家に押入る。ズゼッテ. は死ぬ。悪魔との最後の出会において,突然天から神の恩寵が下ってベルフォンテーヌは 悪の世界から目ざめる。この場面の描写は多くの批評家から現代ドイツ散文中の白眉と賞 讃されている。 Eine. Blitze. und. Stille lieL3 Belfontaine. p16tzliche setzten. unvermittelt ihre. zur也ckgenommen Dieses ze. Verstummen. zwisch声n. 血ber das. Au8en leise. grillenhaft. war. Wasser. 1ung,. die. ihn. Zuruf. 〟Der. drangen: t6nte. ibm. Worte, und. ein. und. es. ab‥.. die. ein. Zuruf,. groL3e. in. ihm. die. Donner. Brust. Regen. verstummte.. eines. Engels. ricbtenden. ‥.. diese. Stille Sehr. zerbrach.. Gerausche:....,. ‥.Ist gestorben, Yon seins丘el ringsum trafenL. aus‥. entsetzlich,. Innen. und. tot.〟.. Dann. so. in. wie. nnd. Beschaftigung. Der. erbeben.. damn Pan. nach,. und. h6rte. unendlicher gestorben. die. da月 die Gren-. vollkommen,. deutlich. aus. ist. so. ungeheure. Herr Ferne. Belfontaine. Der. Laute, Pan. groL3e. Magie. ist Da-. seines. ‥. Befehl; der. ein. Befehl,. Neugeburt. war・.. der. Verwandlung;. Lazarus!. Komm. Verwandheraus!7). 数カ月後,ベルフォンテーヌはこの町を去ってドイツ-帰り,やがて人々から忘れ去ら れてしまう。七年後,ポーランドの描虜収容所に一人のユダヤ人の老人が見出される.彼 は数人のユダヤ人キリスト教徒と共に,番人を買収してそこを脱出する。しかし仲間は病 気のためにみんな死んでしまい,彼はただ一人西の方-向って行く。人々は彼を〟Vater Lazarus''と呼んで,救いの賜物と目覚めのカリスマを受けた人だと考える.彼は次第に 貧しくなり,しまいに「祈る乞食」. die. (betender Bettler)となってドイツ-向うo. 以上ごく概略の筋を見てもわかるように,べ/レフオンテ-ヌはキリスト教神学の立場か ら捉えられたファウストであり,人間存在そのものInkarnationである。この小説では.

(6) 38. 磯. 見・昭. 太. 郎. 人物の個性や心理は全く問題になっておらず,ただ神とサタンとの間に人間をめぐって行 われる戦いと,そこで人間の救済がいかに成就されるかが主題なのである。従ってこの. 作品は文学史的に見て,中世の宗教劇やダンテの神曲やさらにはギリシャ悲劇などの古典 につながるものであり,ことにその構成, 手法の点を考えると中世の宗教劇との類似性が 指摘される.クワ-デルにしてもベルナノスにしても,現代のキ1)スト数的作家は,人間 実存の問題をとり上げる際に,その作品がみな必然的に古典的色合を帯びてくるが,ラソ ゲッサーの場合には,その自然感覚の異教性ゆえに,さらに複雑であり,言ってみればバ ロック的な印象を与える。彼女はしばしばそのグノーシス的(gnostisch)乃至マニケイズ ム的(manichaistisch)な異端性を指摘されている8)。たしかに,この作品の中には,あま りに神と悪魔の対立を強く打ち出しすぎている点,性に対して悪の比重をおきすぎる点が あることは否定できない。しかし悪魔がどれほど邪悪であっても,結局は無力なものであ. り,惑は虚無(Nicbts)にすぎないことを彼女が作品の多くの箇所で示している点も見逃 してはならないだろう。. ランゲッサーは,世界および人間の悪魔的な面の描写にかけてはすばらしい才能を示し ているが,神の恩寵や救済,希望,自然の明るい面を表現する場合には,抽象的,図式的 になる欠点をもっている。作品の途中に挿入されている長々しい議論,内的独自などは, 大胆な試みとはいえいささかロマンの範囲を超えてしまっているし,抽象的な問題を述べ る際の彼女の文章は,堂々とはしているが,英雄主義的な臭みを持たないではない。これ は1920年から40年代の激動する時代に作家としての成熟をとげた彼女が,自己の思想を 語るに余りにも性急であらざるを得なかったためかも知れない。. ともあれ,この作品ほ現代ドイツ文学における問題作の一つであり,多くの読者,文学 者に与えた影響は決して小さなものではなかった。彼女ほ,感動して手紙を寄せたある読. 「自分の問題として」読まれたことを感謝し,これ. 者に,この作品が``existentiell''に,. (ランゲッサー. こそ白分が執筆中いつもひそかに願っていたことなのだ,と語っている9)0 研究第一部) 言主. 1). E.. Langgasser:. ‥. 2) 3) 4). W.. Grenzmann:. Dichtung. W.. Grenzmann:. Deutscbe. 5) 6) 7). Das. 8) 9). H.. G.. Storz:. berauschende. ‥soviel. S. 131.. 1954,. Christliche. Bonn, 1957. und Graube, Dicbtung der Gegewart,. Dichter Siegel,. unaus16schliche S. 46.. Verg孟nglichkeit,. der. Gegenwart,. Hamburg,. 1953.. Briefe,. 1926-1950.. S. 238.. Frankfurt/M. Heiderberg,. 1955.. 1953.. S. 359.その他. S. 368.. S. 7-8.. Ebenda,. Ebenda, E.. Briefe. S. 552. Holthusen: 1926-1950,. Der. unbebanste S. 180.. Menscb,. Miincben・. Hamburg,. 1952・. S・ 176・その他.

(7)

参照

関連したドキュメント

印象形成におけるピアスが与える影響について 佐藤 唯一 (有馬 淑子ゼミ) 問 題 どのようにすれば我々は、他者によい印象を与 えられるだろうか。つまりどうすれば人に良く見 られるか。このような研究は、印象形成として行 われてきた。我々が誰かに初めて出会う時、その 相手が持つ顔や身体の特徴などの情報を意識した としてもしなくとも処理し第一印象を形成してい

Heaterは,面会に対する基本的前提について次のように述べてい

しか し, これを以 って情報が人煩 亡 き後に残 るとす ることはで きない。 タイムカプ セルに封 じ込めた物品等は,たんなるモ

ないのである.ある消費財の品質がそれまで信じられていたより劣る危険性が

 音楽を聴くことは,聴覚が正常のものであれば誰れにでもできるし,程度の差はあれ,それによって

安定したこの一家も否応無く狂乱の状況の中に条件づけられるe最初ブPtクターはメアリに対して,狂信的な騒

10 「技能工芸学」について考える

繋がっていた。クシャン朝下の西北インド・北インドは、パルティアの拾頭もあってバクトリ