Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
臨床社会歯科学実習
Author(s)
平田, 創一郎; 田代, 宗嗣
Journal
歯科学報, 119(3): 189-191
URL
http://hdl.handle.net/10130/4929
Right
Description
カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説
はじめに
社会歯科学とは,歯科保健・医療に関わる社会現
象を分析・評価し,現状の社会制度に対し必要な提
言を行うことを目的としている。歯学部においては
基礎系に分類されているが,医学部において社会医
学は公衆衛生学や法医学などと併せて,臨床系,基
礎系とは別に社会系として分類されている。
さて,Stern の神殿モデル(図1)は医療者に求め
られるプロフェッショナリズムを図示したものであ
る1)
。土台となる部分の一番基礎にあるのが臨床能
力(医学的知識)であり,その次にコミュニケーショ
ン技術,さらにその次に倫理的および法的解釈が積
み上げられている。そのコミュニケーション技術,
倫理的および法的解釈の本学における教育につい
て,コミュニケーション学,社会歯科学および歯科
医療管理学(社会保障制度,医療倫理)を担当してい
るのが,社会歯科学講座である。
多くの学生は,当たり前のことだが社会的経験が
不足している。通常,保護者の扶養に入っており,
一般的な日常生活における社会的な知識について
は,常識すら生活の上で必要とされない。また,健
康な者がほとんどであり,医療や福祉のサービスを
あまり必要としないため,これらのサービスに接す
る機会も乏しい。社会歯科学が単なる教科書上の知
識として兎角捉えられやすいのも致し方ないところ
であろう。しかし,せっかくの知識も現実のものと
結びつけられなければ役に立たないどころか,記憶
にとどめることすら困難である。具体的には,第5
学年であればほぼ全員が加入している国民年金につ
いての知識を持っていなかったり,市川市にある「市
川市保健センター」が,地域保健法に規定される市
町村が設置することができる住民サービスの出先機
関である「市町村保健センター」であることが認識
できなかったりするようでは,大きな問題である。
ましてや,わが国の制度下において歯科医師とし
て適切かつ効率的な歯科医療を提供するためには,
単に知識を持っているだけではなく,それを実行す
る態度も身につけなければならない。一斉講義では,
態度の修得は極めて困難である。
そこで当講座では,市川総合病院での登院実習期
間にオーラルメディシン・口腔外科学講座から半日
いただいて『臨床社会歯科学実習』を平成24年度か
ら実施している。総合病院である強みを生かし,院
内に掲示されている様々な法律や制度に係る多数の
掲示物等と,教科書で学んだ知識とを結びつけるこ
とで,知識の強化とその知識を用いる態度の涵養を
目標としている。本稿では3回にわたり,代表的な
学修内容を写真とともに紹介する。
病院の看板
まず病院の敷地の一番表には,いわゆる「看板」
(図2)が掲げられている。この看板は医療法上,広
告に該当し,以下のように規定されている(下線は
筆者追記)。
第六条の五 何人も,医業若しくは歯科医業又は病
院若しくは診療所に関して,文書その他いかなる
方法によるを問わず,広告その他の医療を受ける
者を誘引するための手段としての表示(以下この
節において単に「広告」という。)をする場合に
は,虚偽の広告をしてはならない。
(第2項 略)
3 第一項に規定する場合において,次に掲げる事
項以外の広告がされても医療を受ける者による医
療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少な
い場合として厚生労働省令で定める場合を除いて
は,次に掲げる事項以外の広告をしてはならない。
二 診療科名
三 当該病院又は診療所の名称,電話番号及び所
在の場所を表示する事項並びに当該病院又は診
療所の管理者の氏名
四 診療日若しくは診療時間又は予約による診療
の実施の有無 (一部抜粋)
普段,駅のホームや電車・バスの車内で何気なく
目にしている医療機関の広告に限らず,病院の看板
であっても法の規制を受けている。ただしこの何気
なく,が一番の難敵であり,実習時に学生に病院の
看板を見たことがあるか尋ねると,ほとんどの学生
が毎日通っているにもかかわらず,見たことがない
と答えるのが常である。
院内掲示
院内掲示しなければならない事項も,医療法で規
定されている。
第十四条の二 病院又は診療所の管理者は,厚生労
働省令の定めるところにより,当該病院又は診療
所に関し次に掲げる事項を当該病院又は診療所内
に見やすいよう掲示しなければならない。
一 管理者の氏名
二 診療に従事する医師又は歯科医師の氏名
三 医師又は歯科医師の診療日及び診療時間
四 前三号に掲げるもののほか,厚生労働省令で
定める事項(筆者追記:建物の内部に関する案
内(病院の場合に限る。))
病院の玄関を入ると管理 者(病 院 長)の 氏 名(図
3),その横には病院の案内(図4−1),もう一つ
自動ドアを入ると外来案内図(図4−2)が掲示され
ている。ここで広告である看板と院内掲示で,表示
されている診療科名が異なることもポイントであ
る。そして再診受付機の後ろには外来診療担当医表
(図5)(上記二,三号に相当)が掲示されている。文
字情報だけでは実際に何を指しているのかよくわか
らない好例である。
文 献
1)大生 定 義:プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ リ ズ ム 総 論,京 府 医 大
誌,120:395−402,2011.
190
― 26 ―
臨床社会歯科学実習
平 田 創 一 郎,田 代 宗 嗣
東京歯科大学社会歯科学講座
図1 Stern の神殿モデル 図2 病院の看板
医療法により記載事項・内容に広告規制を受ける。
図4−1 病院の案内
図3 管理者の氏名
図5 外来診療担当医表
診療に従事する医師または歯科医師の氏名とその
診療日および診療時間であるが,頻繁に変わること
を考慮してか,診療科長名と異なり簡単に A3用
紙一枚に印刷されたものが掲示されている。
図4−2 外来案内図
医療法第十四条の二第四項に規
定される厚生労働省令で定める事
項が病院の案内である。病院の場
合に限り,診療所では掲示の義務
はない。
191
― 27 ―