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光反応の教科書的理解を刷新 重原子含有分子で直接S0→Tn 遷移を実証

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Academic year: 2021

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2020 年 3 月 11 日 国立大学法人 千葉大学 物質に光を照射すると、分子内部でエネルギーが遷移し構造が変化します。この「光反応」を 用いて様々な物質を創製する技術が注目されています。千葉大学大学院薬学研究院 根本哲宏 教 授及び中島誠也 助教の研究グループは、可視光を照射したヨウ素含有分子において、これまで見 過ごされてきた電子遷移である「S0→Tn」という機構が実際に進行していることを実証しました。 さらに、ヨウ素含有分子以外の重原子含有分子においても、 一見 吸収できないはずの光で直接 的な S0→Tnへの遷移によって光反応が起きることを証明しました。この研究成果は、2020 年 3 月 9 日に独化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に公開されまし た。 ■ 研究の背景 宇宙空間から無限に降り注ぐ太陽光は、地球上の有 限な化石資源に依存しないエネルギー源です。近年で はその光エネルギーの中でも特に、取り扱いが容易で 安全な可視光を利用した物質創製技術が注目され、研 究開発が進められています。こうした技術では、光を エネルギー源として物質に起こる光反応をうまくコ ントロールして、狙い通りに物質の構造の変化を引き 起こすことが重要です。 しかし、近年、重原子の一つであるヨウ素を含有す る分子が、本来分子が吸収できないはずの可視光によ って光反応を起こしているという「 」が存在してい ました(図 1)。物質の光反応を完全に理解しコントロールするには、光反応を引き起こすメカニ ズムを更に詳細に調査し、この を解明することが求められていました。 光反応のメカニズムとして、これまでの教科書的な理解では、分子が光を吸収すると、原子 核の周りの電子が移動し、分子の状態は吸収前の基底状態 S0から、吸収後には S0→Sn→S1→T1 という順序で遷移し、T1の状態から光反応が進行することが知られていました(図 2)。本研究 チームは、これまで見過ごされていた遷移経路である直接「S0→Tn」遷移に注目し[1]、ヨウ素含 有分子が可視光によって光反応を起こす背景には、「S0→Tn」遷移が働いているという仮説を立 てました(図 3)。

重原子含有分子で直接 S

0

→T

n

遷移を実証

光反応の教科書的理解を刷新

450 nm I O O O O O Ph :なぜ吸収しない光で反応が進行するのか? 450 nmの光で反応が進行する 光反応 Sn S1 S0 T1 S0 →Sn遷移 S0 → Tn 遷移 Tn 仮説:進行しないとみなされている 直接的なS0→Tn遷移によって反応が 進行しているのでは?? ヨウ素含有分子 図 1 ヨウ素含有分子の光吸収

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■ 研究成果1- ヨウ素含有分子における直接 S0→Tn遷移を証明 直接「S0→Tn」遷移を観測•証明すべく、研究グループ はまず、ヨウ素含有分子に対して光に関する様々な物 理的特性を測定しました。吸収波長や蛍光発光、りん光 発光などを詳しく調査したところ、S0→Tn遷移が進行し ていることを実証し、当該分子におけるこの遷移の進 行を発光特性の測定によって初めて証明することに成 功しました。 ■ 研究成果2- 重原子含有分子で直接 S0→Tn 遷移に よって光反応が進行 S0→Tn遷移を引き起こす光は、一見すると分子が吸収 できない光のように観測されます(図 4 左)。そこで、 同研究グループは、ヨウ素含有分子以外の重原子含有分子[2]においても S0→Tn遷移によって光反 応が進行するのかを確かめるため、化学的な検証を行いました。その結果、ヨウ素(I)だけでな く、臭素(Br)やビスマス(Bi)といった重原子含有分子においても適用される一般的な現象とし て、一見吸収できない光をエネルギー源として、光反応に特有なラジカル反応が進行することが 明らかになりました(図 4 右)。 これらの結果から、上述の の答えは 直接的な S0→Tn遷移 であることを物理実験的にも化 学実験的にも証明することができ、本仮説が立証されました。 図2 光反応のメカニズムに関する教科書的な理解 ●は一つの電子を表し、矢印はスピンの向きのイメージを表す。赤い部分は最初に電子が入っている軌道、青は 最初に電子が入っていない軌道をそれぞれ表す。 光反応 Sn S1 S0 T1 S0 →Sn遷移 S0 → Tn遷移 Tn 仮説:進行しないとみなされている 直接的なS0→Tn遷移によって反応が 進行しているのでは?? 図 3 重原子含有分子における光反応のエネルギ ー遷移についての仮説

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■ 研究者のコメント 今回の研究を主導した中島誠也 助教は、次のように述べています。「今回の研究成果は、教科 書の内容を刷新する画期的な発見です。技術的な応用面では、これまで光反応に用いられてきた 紫外線は様々な分子を破壊し、反応の制御が困難でしたが、可視光による「直接 S0→Tn遷移」を 用いて反応条件をコントロールできるようになります。紫外線は、我々の皮膚や目にも有害であ り、紫外線照射装置自体も特殊かつ高温を発生する危険な側面もありますが、可視光はより安全 で、低エネルギーであるという利点があります。今後、様々な研究分野においてこの光反応の古 くて新しい機構を用いることで、新たな分子デザインや反応デザインにつながることが期待でき ます」 ■ 研究プロジェクトについて 本研究は、科学研究費助成事業(18K14863)、平成30年度ヨウ素学会研究助成、2019 年度笹 川研究助成(2019−3004)、千葉大学グローバルプロミネント研究基幹の支援により遂行されま した。 また、本研究は東京大学大学院薬学系研究科•理化学研究所 内山真伸 教授、及び理化学研究所 村中厚哉 博士との共同研究であり、ソフト分子活性化研究センター、千葉ヨウ素資源イノベーシ ョンセンターにおける研究プロジェクトの 1 つです。 ■ 論文情報

Ÿ 論文タイトル:A Direct S0→Tn Transition in the Photoreaction of Heavy-Atom-Containing Molecules

Ÿ 雑誌名:Angewandte Chemie International Edition Ÿ DOI:https://doi.org/10.1002/ange.201915181 一見 吸収できない光を用いて光反応を検証 光の波長 (nm) I(O2CR)2 O I Cl O I O O O I CF3 X O I N3 O N Ph I O O I Br Bi その結果、、、様々な分子で直接S0→Tn遷移による光反応が進行! ヨウ素以外の重原子含有分子にも適用される一般的な現象であることも証明された! 図 4 重原子含有分子の光吸収(左)と重原子含有分子の化学式(右)

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■ 用語解説 [1] 見過ごされていた遷移経路「S0→T1」 光反応において、S0から S1や Snを経ることなく直接的に Tnへ遷移が進行することは、1960 年代 から観察されてはいたものの、 S0→Sn遷移よりも圧倒的(およそ 1 億倍!)に進行しにくいこと から、これまで見過ごされていた遷移経路となっていました。 [2] 重原子含有分子 水素や炭素、窒素、酸素などの軽い元素と比較し、重い元素を含有する分子。臭素やヨウ素、ビ スマスなど、周期表で下に位置する元素が重原子として挙げられます。 水素や炭素、窒素、酸素などの軽い元素と比較し、重い元素を含有する分子。臭素やヨウ素、ビ スマスなど、周期表で下に位置する元素が重原子として挙げられます。や炭素、窒素、酸素など の軽い元素と比較し、重い元素を含有する分子。臭素やヨウ素、ビスマスなど、周期表で下に位 置する元素が重原子として挙げられます。 件に関するお問い合わせ 〈研究に関すること〉 千葉大学大学院薬学研究院 根本哲宏(教授) TEL: 043-226-2920 メール:[email protected] 中島誠也(助教) TEL: 043-226-2921 メール: [email protected] 〈報道担当〉 千葉大学亥鼻地区事務部総務課企画係 白崎 TEL:043-226-2921 メール:[email protected]

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