<論
文題 目
>
「法教育」 を視 点 に した小学校社会科授 業構成論研 究
2013年
兵庫教育大学大学院
学校教育研究科
教育内容・方法開発専攻
認識形成系教育 コース
M12134J
計倉
康和
次
目序
章
研究の 目的 と方法………
3
第
1節
問題 の所在 と研究の 目的………
・………
3
第
2節
研究の対象 と方法………・………¨……… ……叫…………
6
第 I章
社会科 における 「法教育」の現状 と意義………。
………。
第
1節
社会科における 「法教育」の現状
"…
………・………
1
「法教育」が求められる背景…・…………・………・………
2
「法教育」の歴史的変遷………。
…………。
…… …・………
(1)
「法教育」一社会科教育の研究 と実践…… ………・・・…… ……
(2)
「司法教育」一法律家団体……… ………… …卜
……
,…………・
(3)
「司法教育」一司法制度改革審議会意見書………。
…・
(4)
全国法教育ネ ッ トワーク……Ⅲ
"…
……… ……… ……… ………
(5)
関東弁護士連合会……… ………
'…。
(6)
法教育研究会………
,¨………・……… …・…
'第
2節
社会科における 「法教育」の意義………・………・………
1
小学校学習指導要領 における「法教育J… …………・……… …。
…。
2「
小学校における法教育の実践状況に関す る調査研究」報告書の結果か ら…
3
小学校社会科における「法教育」の意義・…・………
第Ⅱ章
「法教育」を視点にした小学校社会科授業構成論………・……
23
第
1節
「法教育
Jを視点にした小学校社会科授業構成の類型化の視点…………・……
23
第
2節
「法教育」を視点にした小学校社会科授業構成の類型………
`…………・……
26
1
「法教育」を視′
点にした小学校社会科授業構成の類型結果………
26
2
「法教育」を視点にした小学校社会科授業構成の性格………・……
29
(1)
法・法原理理解型小学校社会科授業構成の性格…………
1………… …
29
(2)
法のリフレクション型小学校社会科授業構成の性格…… ……… ………
29
(3)
法批判型小学校社会科授業構成の性格………・…… …・………・………
29
(4)
社会参加・ トラブル解決型小学校社会科授業構成の性格……… …
,……
30
3
「法教育」を視点にした小学校社会科授業構成の特性 と課題…・……… ¨
35
8 8 8 9 0 0 0 1 1 1 4 4 5 7 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1第Ⅲ章
「法教育」を視点にした小学校社会科授業モデル開発………・……
38
第
1節
小学校社会科授業モデル開発の視′
点………。
………
38
第
2節
小学校社会科授業モデル開発………
40
1
単元の知識 目標の作成………
仰
(1)第
3学
年単元 「工場の仕事 一三木金物のひみつ一」の知識 目標 。
…・………
40
(2)第
6学
年単元 「天下統一 と二木合戦」の知識 目標………・………・……
46
(3)第
6学
年単元「三木市の未来を考 えよう」の知識 目標…・………・………
50
2
単元展開の概要………・………¨………
58
(1)第
3学
年単元 「工場の仕事一三木金物のひみつ 一」の展開の概要……。
……
58
(2)第
6学
年単元 「天下統一 と三木合戦」の展開の概要………。
………・……
62
(3)第
6学
年単元 「三本市の未来を考 えよ う」の展開の概要………
68
3
主な資料………・…………・………・………。
……
71
第
3節
小学校社会科授業モデル開発の成果 と課題………
83
終
章
研究の意義 と課題…・……・………・………・………
86
第
1節
研究の意義………¨………。
………
"…
…・……
86
第
2節
今後の課題¨
"…………・………
87
「法教育」を視点にした小学校社会科授業実践事例集………・……… …………
88
資料及び参考文献………・………・………
。
…… 118
謝 辞 … …
・ … …… … …… ……… … …… …… … … …… ……… ………… ……… …120
‐2‐序 章
研 究 の 目的 と方 法
第1節
問 題 の 所 在 と研 究 の 目 的21世
紀 は,公
的 な決 定 に市 民 が参 加 す る時代 で あ る。 これ は言 い 換 え る と,適
正 な結 論 に達 す る責任 の負 担 を市 民 一 人 一 人 が背 負 わ な けれ ば な らない とい うこ とで,「 裁 判員 制 度 」 は そ の典 型 で あ る。 この 「裁 判 員 制 度 」 をは じめ とす る司法 制 度 改 革 の流 れ は,1999(平
成11)年
7月 , 司法 制 度 改 革 審 議 会 が 内 閣 に設 置 され た こ とに始 ま る。2001(平
成13)年
に公 表 され た 同審 議 会 意 見 書 で は,「国 民 の期 待 に応 え る司法 制 度 」,「 司法 制 度 を支 え る法 曹 の在 り方 」, そ して,「国 民 的 基盤 の確 立 」が 三 本 の柱 と して掲 げ られ る。 この 「国 民 的 基盤 の確 立」の 条 件 整 備 と して 「司法 教 育 の充 実」が うた われ,「学 校 教 育 等 にお け る司法 に関す る学習 機 会 を充 実 させ る こ とが 望 まれ る。 この た め,教
育 関係 者 や 法 曹 関係 者 が積 極 的役 割 を果 た す こ とが 求 め られ る。」 と明記 され た の で あ る(D。 これ を受 けて,法
務 省 に よ る「法 教 育Jの
取 組 が本 格 的 に ス ター トす る。2003(平
成 15) 年 7月 に発 足 した 法 教 育研 究 会 で あ る。 学校 教 育等 にお け る司法 及 び法 に 関す る教 育 に つ い て調 査 ・ 研 究 ・ 検 討 を行 うこ とを 目的 と した この機 関 は,教
育研 究者,中
学校 教 員,弁
護 士,司
法 書 士,最
高裁 判 所,法
務 省,文
部 科 学 省 の担 当 官 らに よ つて構 成 され,3年
間 の議 論 を経 て2004(平
成16)年
11月,報
告 書 が提 出 され る0)。 この報 告 書 に よ る と,「 法 教 育 」 とは ,「 法 律 専 門 家 で は な い一 般 の人 々 が,法
や 司法 制 度,こ
れ らの基礎 に な つて い る価 値 を理 解 し,法
的 な もの の考 え方 を身 に付 け るた めの教 育Jを
意 味 し,「 法 律 専 門家 で な い一 般 の人 々 が対 象 」 で ,「 法 律 の 条 文 や 制 度 を覚 える知 識 型 の教 育 で は な く,法
や ル ‐ ル の 背 景 に あ る価 値 観 や 司 法 制 度 の機 能,意
義 を考 え る思 考 型 の教 育 で あ る こ と」,「 社 会 に参 加 す る こ との重 要性 を意 識 付 け る社 会 参 加型 の教 育 で あ る こ と」 に特 色 が あ る と して い る(3)。 橋 本 康 弘 は,こ
の 日本 版 「法 教 育 」 の 定義 は,従
前 の憲 法 条 文 教 育・ 判 例 教 育 とい っ た 法 的 事 実 教 育 だ けで は な く,法 的価 値 ,法 的 技 能 を射 程 に教 育 内容 を想 定 した もの で あ り, 従 前 の 法 に 関す る学 習 にお け る教 育 内容 を広 範 化 す る考 え方 で あ つ た と述 べ てい る(0。 そ して,こ
の 定 義 に そ つ て法 教 育 研 究 会 か ら,「 ル ール づ く り」,「 私 法 と消 費 者 保 護 」, 「憲 法 の意義 」)「 司法 」 の 四つ の授 業例 が作成 され るが,い
ず れ も 中学 校 社会 (公 民的 分 野)に
該 当す る もので あ る。 法 教 育 研 究 会 の活 動 終 了後,2005(平
成17年
)5月
に法 務 省 が 立 ち上 げた の が,法
教 育推 進 協 議 会 で あ る。この法 教 育 推 進 協 議 会 に よつ て,新た に小 学 校 で の 三 つ の授 業例「も め ご との解 決 と国 民 の 司法参 加0ル
ー ル づ く り」,「 情 報 化 社 会 を生 き る∼ 情報 の 受 け手・ 送 り手 と して ∼ 」,「 友 だ ち同 士 の け ん か とそ の解 決 」 が 開発 され る。)。 協 議 会 は これ らの 具 体 的 な教材 を作 成 す る作 業 を通 じて,小
学 校 に お け る 「法 教 育 」 の在 り方 につ い て,以
下 の 点 を確 認 して い る(6)。 第 一 に
,小
学 校 教 育 にお い て は,「法 教 育 」の理 念 に沿 つ た 多様 な授 業 を工 夫す る こ とが 比 較 的容 易 で あ る こ と。 第 二 に,小
学 校 段 階 で は,ご
く身 近 な 問題 につ い て役 割 演 技 を行 うこ とに よ り,高
い 学 習 効 果 を期 待 で き る こ と。 第 二 に,生
活 や 遊 び の 中で のル ー ル 作 りや,友
達 同 士 で の トラブ ル が発 生 した 時 の解 決 策 を題 材 と して,「法 教 育 」の観 点 を取 り入 れ た学 習 を行 う機 会 が相 当多 い と考 え られ る こ とで あ る。 これ らの こ とは,小
学校 に お け る 「法 教 育 」 が持 つ 大 き な 可 能 性 を示 唆 して い る。 ま た,平
成20年
版 学習 指 導 要領 にお い て 「法 教 育 」 は,社
会 科,公
民 科,道
徳,特
別 活 動 な ど多様 な領 域 で 学習 す る こ とが 可 能 とな り,中
で も社 会科,公
民 科 はそ の 中心 とな つ て い る(つ。 小 学 校 で は,第
304学
年 で 「地域 の人 々 の 生 活 に とつて 必 要 な飲 料 水,電
気,ガ
ス の確 保 や 廃 棄 物 の処 理 」,「地 域 社 会 にお け る災害及 び事 故 の防止 」の 中 で,「地 域 の社 会 生 活 を営 む 上 で 大 切 な法 や き ま りにつ い て 扱 う」こ とが 取 り入 れ られ ,第6学
年 で, 我 が 国 の 「政 治 の働 き」 の学 習 の 中 で 「国会 と内 閣 と裁判 所 の三 権 相 互 の 関係,国
民 の 司 法 参 加 」が扱 われ る よ うに な るな ど,小
学 校 教 育 に お いて社 会 科 は,「法 教 育 」の 中 心的 な 役 割 を果 た して い る。'
「法教 育 」 と最 も関連 が深 く重 要 で あ る教科 が社 会 科 で あ る こ とは,社
会 科 の 学 習 の 中 で 子 どもが た く さん の法 と出会 うこ とか ら も明 白で あ る。 例 えば,中
学 年 で は,商
店街 や コ ン ビニ,ス
,パ
ー マ ー ケ ッ トで働 く人 々 につ い て 学 習 す る。 も ち ろん,法
自体 の理解 を 目標 に は して い ない が,そ
こに は食 品衛 生 法 や 大 規 模 小 売 店 舗 法 な どの法 が,密
接 に関 わ つ て い る。 ま た,第
6学
年 の歴 史 学 習 で は,十
七条 の憲法,徳
政 令,刀
狩 令 な どが,さ
ら に,政
治 学 習 で は,
日本 国憲 法 が登 場 す る。 しか しな が ら,2012(平
成24)年
11月,法
務省 発 表 の 「小 学 校 にお け る法 教 育 の実 践 状 況 に 関す る調 査 研 究 」報 告 書(3)に よ る と,2011(平
成23)年
度 の 「法 教 育 に関 す る学 習 指 導 の状 況 」 と して,各
教科 等 にお け る法 教 育 の充 実 度 を調 査 した 結 果,「 とて も充 実 させ る」,「い く らか充 実 させ る」 と肯 定 的 に答 えた学校 の割 合 は,社
会 科 は36.4%,生
活科 は48.6%,家
庭 科 は27.3%,体
育 科 は49,4%,道
徳 は 54・8%,特
別 活 動 は51.2%と
なつ て い る。 充 実 度 が 高 い の は道 徳,特
別 活 動 で,「法 教 育 」を実 践 して い く上 で,中
心 的 な役 割 を果 たす 教 科 と考 え られ て い る社 会 科 の 充 実 度 は低 く,内
容 も学 習 指 導 要 領 に示 され た もの を 忠 実 に行 つて い る こ とが分 か る。 充 実 させ た 内容 も,日
本 国 憲 法 に 関す る ものが 多 く,小
学校 社 会 科 に お け る 「法 教 育 」=憲
法 学 習 とい う従 前 の法 的 事 実 教 育 が 依 然 と して実施 さ れ て い る こ とが うか が え る。 ま た,法
教 育 の推 進 体 制 に 関す る意 見 で は,時
間 数 の不 足 を訴 え る意 見 が最 も多 く,人
権 教 育 や 環 境 教 育,防
災教 育,そ
して,キ
ヤ リア教 育 等 々 の い わ ゆ る課 題 教 育 の 要 請 に よ る,慢
性 的 な時 間数 不 足 に悩 む 学 校 現 場 の実 態 が 浮 き彫 りに され て い る。 さ らに,小
学 校 の 「法 教 育 」 に 関す る考 え方 や 内容 が わ か らない,あ
るい は,回
答 者 に よ つて様 々 な捉 え ‐4‐方 が な され て い る現 状 と,「 法 教 育 」 を 「規 範 意識 向 上 の た め の教 育 」 や ,「 学校 や 教 育 問 題 の法 的 対 応 を理 解 す るた め の 教 育 」 と捉 えて い る様 子 が 読 み取 れ る0)。 つ ま り
,法
的 価 値,法
的 技 能 を射 程 に教 育 内容 を想 定 した 日本 版 「法 教 育 」 の定 義 は,ま
だ小 学 校 の教 育 現 場 に浸 透 して お らず,社
会 科 にお い て も,ど
の よ うに 「法 教 育 」 を取 り入 れ て い くか が 明確 に され て い な い こ とが分 か る。 本 研 究 で は,ま
ず,社
会 科 にお け る 「法 教 育 」 の意 義 を明 らか にす る。 そ して,先
行 授 業 実 践 を も とに,小
学 校 社 会 科 にお け る 「法 教 育 」 を取 り入 れ る際 の問題 点 を明 らか にす る。 さ らに,第
3学
年 の地域 学 習 か ら第6学
年 の歴 史 学習0政
治 学 習 と系 統 的 に位 置づ け た社 会 科授 業 モ デ ル を 開発 す る こ とを 目的 とす る。第
2節
研 究 の対 象 と方 法
本研究は
,「法教育」を視点に した小学校社会科授業モデルの開発 を行 うことを 目的とし
て い る。 第 一 に,社
会 科 にお け る 「法 教 育 」 の現 状 をふ ま えた上 で,社
会 科 に 「法 教 育Jを
取 り 入 れ る意 義 を明 らか にす る。 第 二 に,小
学校 社 会 科 にお け る 「法 教 育 」 関連 の 先 行 授 業 実 践 の 分析 を行 う。 分 析 フ レ ー ム ワー クの視 点 を設 定 し,そ
れ を も とに 問題 点 を 明 らか にす る。 第 二 に,実
践 の類型 化 に よつて明 らか にな つた問題 点か ら,「法教 育Jを
視 点 に した小 学 校 社会科授 業 モデル を開発 す る。 ‐6・【言主】
(1)司法制 度 改革審議会『 司法制度 改革 審議会意 見書
-21世
紀 の 日本 を支 え る司法 制度 ―』 ,2001年
,9∼
12頁
,112頁
。司法制 度改革審議 会 意 見書 の全文 は,ホ
ー ムペ ー ジ上 に公 開 され てい るので参 照 され たい。http:〃www,kantei.goojp′ jp/sihou80idOノreport‐dex.htllll
(2)法教 育研 究会『 法教育研究会報告書 我 が国 にお ける法 教 育の普及 。発 展 を 目指 して 一 新 た な時代 の公正 な社会 の担 い手 をは ぐくむた め に一』
,2004年
。法 教 育研 究 会 の報 告 書全 文,参
考資料,議
事録 等 は,法
務省 ホー ムペ ー ジ上 に公 開 され て い るので参 照 され た い。 http:〃www,mojogo.jp/shingilノkanbou_houkyo_indexohtml
(3)前掲書。),2頁
。 に)橋本康 弘 「『 法教育』 の現 状 と課題 一官 と民 の取組 に着 日 して 一」『 総合 法律支 援論叢 』 第2号
,2013年
,2頁
。 (5)法務 省 ホー ムペ ー ジには,小
学生 に対す る 「法教 育J教
材 が掲載 され て い るの で参照 さ れ たい。 http:〃www.mOj.go.jp/shingilノkanbou_houkyo_kyougikai_index,html
(6)前掲 ホー ムペ ー ジ(5)。 (7)前掲 書●),4頁
. 0)法務省『「小学校 にお ける法教育の実践状 況 に関す る調査研 究」報告書』,2012年
。 0)前掲書 “),49頁
。第
I章
社 会 科 にお け る 「法教育 」の現状 と意 義
第
1節
社会科 にお け る 「法教 育」 の現状
「法教育」が求 め られ る背景
日本 に お け る 「法 教 育 」 の定 義 を示 した 法 教 育研 究 会 報 告書 が 提 出 され て か ら,約
10
年 が経 と うと して い る(1)。 この 間,2009(平
成21)年
5月 に は 「裁 判 員 制 度Jが
開始 し, 「法教 育」 関連 の研 究 や授 業実 践 は盛 ん に な り,ま
す ます 日本 の 学 校 教 育 にお い て 「法 教 育 」 の 必 要 性・ 重要 性 が 叫 ばれ つ つ あ る。 なぜ,今
「法 教 育」 が 求 め られ て い るの だ ろ うか 。 そ の背 景 と して,最
初 に挙 げ られ る の が,1990年
代 以 降 の一 連 の構 造 改 革 の動 きに よ る 「司法 制 度 改 革Jで
あ る。冷 戦 構 造 の 崩 壊,世
界 単 一 市場 の 出現 な どの グ ロー バ ル 化 の急 進 展,経
済 の急 速 な発 展,社
会 の大 き な変 容 は,
日本 に構 造 改 革 とい う転 換 を もた らす 。 この改 革 は,許
認 可 の 撤廃・ 縮 小,省
庁 の統 廃 合,官
業 の 民 営 化 の徹 底,国
と地方 の権 限・ 財 源 等 の再 配 分 な ど各分 野 で行 わ れ る よ うに な る。 司法 分 野 にお い て も例 外 で は な く,法
に基 づ く公 正 な紛 争 解 決 を迅 速 に行 うた め の改 革 が行 われ,法
や 司法 を利 用 す るだ けで な く,「裁 判 員 制 度 」に 典型 的 にみ られ る よ うに,司法 を支 え るた め に能 動 的 に参 加 す る こ とが求 め られ る よ うに な つた の で あ る。 かつ て,我
が 国 に も,国
民 が 司法 参 加 した 時期 が あ る。司法 制 度 の近代 化 の 目的 の も と, 大 正 デ モ ク ラ シァ運 動 の影 響 を受 け,1923(大
正12)年
に公 布,1928(昭
和3)年
に施 行 され た 「陪 審 員 法 」 に基 づ く 「陪 審 制 度 」 で あ る。 しか し,は
じめて 国 民 の 司 法 参加 を 実 現 した この 「陪 審制 度 」は,戦
争 の激 化 な どの理 由で1943(昭
和18)年
に停 止 され る。 戦 後,我
が 国 にお け る国民 の 司 法参 加 の復 活 は,司
法制 度 改 革 の最 大 の 課題 とな る。 そ して,様
々 な議 論 を重 ね つた結 果,1999(平
成11)年
7月
の 司 法 制 度 改 革 審 議 会 の設 置 を契 機 に,2004(平
成16)年
5月
に は 「裁 判員 の参加 す る刑 事 裁 判 に 関 す る法 律 」 が公 布 され,つ
い に,2009(平
成21)年
5月21日
,「 裁 判 員 制 度 」 が 導 入 され る。 この 国 民 の 司法 参 加 を促 す 「裁 判 員 制 度 」 の導 入 は,将
来 裁 判 員 とな る 可能性 を有す る 中学・ 高 校 生 に対す る 「法教 育 」 の 必 要 性 を促 し,こ
の教 育 が 緊 急 を要 す る課 題 と して 捉 え られ る。 結 果,「裁判 員 制度 」実 施 前 後 の 「法 教 育 」実践 の 多 くは,内
容・ 方 法 が模 擬 裁 判 に集 中 し,あ
た か も「法 教 育 」とは「裁 判 員 教 育 と して の 法 学 習 」 とい うよ うに認 識 され て い る。 江 澤 和 雄 は,上
記 の 「裁 判 員 制 度 」導 入 に代 表 され る 「司法 制 度 改 革 」以外 に,「青少 年 非 行 と法 意 識 の現 状 の 問題 」,「学 校 安 全 か らの要請 」,「学校 内 の教 員 の体罰 等 に係 る問題 」, F消費者 問題 の増加 と消 費者 教 育 の必 要性Jと
い う四つ の観 点 か ら も,「法 教 育 」が求 め ら れ る背 景 を述 べ て い る("。イ 日本 の 「法 教 育 」 の先 行 モ デ ル で あ るア メ リカ に お け る法 教 育 の 目的 の 一 つ が
,青
少 年 ‐8‐犯 罪 の増 加 ・ 深 刻 化 に伴 う青少 年 非 行 の 防 止 に あ る こ とか ら
,
日本 の 「法 教 育」 に お い て も同様 の期 待 が 向 け られ て い る こ と,近
年 多 発 す る学校 に お け る侵 入・ 殺 傷 事件 や 児童 生 徒 間 の い じめ等 に係 る学校 ・ 教 員 の危 機 対 応 が 「法 常識 」 に欠如 した もの が多 い状 況 で あ る こ と,学
校 内 で の教 師 に よ る体罰 問題 につ いて 法 的 対応 の取 組 を積 極 的 に行 う事 例 が 出 て きた こ と,消 費 者 問題 が増 加 して き た こ とに よ る消費 者 教 育 の 必 要 性 が 出 て きた こ とも, 「法教 育」 が 求 め られ る背 景 と して あ げて い る。 この よ うに ,「 法 教 育 」 が 求 め られ て い る背 景 に は ,「 法 化 社 会 」 に我 が 国 が急 速 に進 展 した こ とが考 え られ る。「法化 社 会 」とは「法 的 な 関係 を基 盤 と して 成 立す る社 会 」で あ り, 「この よ うな社 会 で は,法
律 家 のみ な らず 市 民 に も,法
に 関す る資 質 を身 に付 け る こ とが 求 め られ る」 の で あ る(3)。 近 年,コ
ンプ ライ ア ンスや 組 織・ 企 業 の ガ バ ナ ンス が 重 要視 さ れ て きた の は,現
代 社 会 の 「法 化社 会 」 化 が背 景 とな つて い るか らで あ る。 「法 教 育 」 が求 め られ てい るの は,こ
の よ うな大 きな社 会 や 時 代 の転 換 が背 景 となつ て い る。2
「法 教 育 」 の 歴 史 的 変 遷 日本 にお ける 「法教 育 」 の主 な動 き をま とめ る と,表
1の
通 りとな る。 表1
日本 にお け る 「法教 育 」 の主 な動 き 年 月 主 な 動 き1993(平
成1998(平
成5)年
5月 年 年 10) 11月 7月 10月 6月 3月 3月1999(平
成 11)2001(平
成 13)2002(平
成 14)2003(平
成 15) 年 年 年 7月2004(平
成16)年
11月2005(平
成 17)2008(平
成 20)2009(平
成 21)2012(平
成 24) 年5月
年3月
年5月
年 11月 日本 弁護 士 連 合 会 第42回
総 会 「司 法 に 関 す る教 育 の充 実 を決 め る決 議 」 日本 弁護 士連 合 会 「司法 改 革 ビジ ョン ー市 民 に身 近 で信 頼 され る 司法 を め ざ して 一」 内 閣 に 司法制 度 改 革 審 議 会 設 置 日本 司法 書 士 会 連 合 会 「求 め られ る司法 の た め に 」 司法 制 度 改 革 審 議 会 最 終 意 見書 司法 制 度 改 革 推 進 計 画 閣 議 決 定 中央 教 育審議会答 申「新 しい時代 にふ さわ しい教 育基本 法 と教 育 振 興基本計 画 の在 り方 につ いて」 法務省 に法教 育研 究 会発 足 『 法 教 育研 究 会報 告書 我 が国 にお け る法教育 の普及0発
展 を 目 指 して 一新 た な時 代 の 自由かつ 公 正 な社 会 の担 い 手 を は ぐぐむ ため に一』 法教 育推進 協 議会発 足 小学校 学習 指 導要 領 告示 裁判 員制 度 開始 法務省『「小 学校 にお ける法教育 の実践状 況 に関す る調 査研究 」 報 告書 』 出典:前
掲 書(",98頁
を も とに筆 者 作 成北 川 善 英 は
,現
在 の 「法 教 育 」 の歴 史 的背 景 を,
目的・ 内 容 別 に 二つ の潮 流 に 区別 して い る(4)。 以 下 に そ の概 要 を示 す 。(1)「
法 教 育 」 一社 会 科 教 育 の研 究 と実 践1990年
代 前 半 か ら,社
会 科 教 育研 究 者 と初 等 中等 教 育 教 員 に よ つて研 究・ 実 践 され て きた 「法 教 育Jで
あ る。 この 「法 教 育 」 は,江
日勇 治 (筑 波 大 学 教授)に
よつ て,ア
メ リカ の 法 教 育 カ リキ ュ ラムや 単元・ 授 業 レベ ル が 紹 介 され た こ とか ら始 ま る6)。 江 日勇 治 は,現
代 社 会 が 「法 化 社 会 」,と
りわ け私 人 間 で の 「権 利 衝 突 が今 ま で 以 上 に想 定 され る社 会 」で あ る とい う 現 状認 識 か ら,従
来 の法 に 関す る教 育 の 限 界 を示 し,ア
メ リカ の法 教 育 を参 照 しつ つ, 「い ろい ろな法 に関す る内容 の学 習 や教 育 が連 携 な しに分 散 して い る実 態 を解 消す る」 よ うな 「 日本 型 法 教 育 カ リキ ュ ラム の 開 発 」を提 唱 す る。 そ して,法
教 育 の 目的 を,「 自 由で 公 正 な社 会 にお け る公 民 … …に 固有 で あ る『 法 の担 い 手』 と して の資 質 … …を育成 す る こ と」 と され て い る。)6(2)「
司 法 教 育 」 一法 律 家 団 体1990年
代 前 半 か ら,法
律 家 団 体 に よつ て提 起0推
進 され て き た 司法 教 育 で あ る。1993(平
成5)年
5月 の 日本 弁 護 士会 連 合会・ 定期 総 会 決 議『 司法 に 関す る教 育 の充 実 を求 め る決 議 』 (0は,学
校 教 育0社
会 教 育 にお け る 「司法 及 び 人権 に つ い て の教育 」 の充 実 を訴 え,司
法 教 育 の具 体 的 内容 と して,司
法 の役 割,司
法 制度・ 裁 判 手 続 の概 要 と利 用 の仕 方,基
本 的 人権 をは じめ とす る諸権利 につ い て の正確 な知 識,弁
護 十制度 と 弁 護 士 の果 たす 役 割 につ い て の基 礎 知識 をあ げ て い る。1999(平
成11)年
10月
の 日本 司法 書 士会 連 合 会 の『 求 め られ る司法 のた め に』 (め は ,「 (市 場)競
争 原 理 の支 配す る社 会 」 で は,消
費者・ 事 業者 は 生活 や 取 引 を め ぐる紛 争 に否 応 な く さ らされ る こ とに な る とい う現 状認 識 に立 ち,国
民 が紛 争 解 決 の た めに 司 法 制 度 や 裁 判 手続 の利 用 の仕 方 につ い て の最低 限 の知 識 を備 えて い る こ とが必 要 で あ る と して 司法 教 育 の充 実 を訴 え,義
務 教 育 にお け る 司法 教 育 の 内容 を あ げ て い る。 この法 律 家 団 体 に よ る 司法 教 育 は,人
権 お よび 司法 制 度 ・ 裁 判 手続 に つ い て の基礎 知 識 に 関す る学 習 を内容 と した もの で あ る。(3)「
司法 教 育 」 ― 司法 制 度 改 革 審 議 会 意 見 書 司法 制 度 改 革 の一 環 と して提 起 され た 司法 教 育 で あ る。2001(平
成13)年
6月
の 司法 制 度 改 革 審 議 会 意 見 書 は,司
法 制 度 改 革 の必 要 性 の根 九 を,「事後 監視0救
済型社 会へ の転 換 」に伴 う「司法 の役 割 の重 要性 が飛躍的 に増大 す る」ところに求 め,「司法制度 改革 の二つ柱 」―「国 民の期 待 に応 え る司法 制度 の構築 (制 度 的基盤 の整備)」・「司法制度 を支 え る法 曹 の在 り方 (人的基盤 の拡充)」 。「国 民的基盤 の確 立 (国民 の司法参加)」 一 の第 二 の柱 のた めの条件整 備 と して 「司法 教 育の充実」を 提 起す る。そ して,司
法教 育 の 目的 を「国 民の統 治 客体意 識 か ら統治 主体意識 へ の転換J ‐10‐と し
,学
校 教 育・ 社 会 教 育 な どにお け る 「司法 の 仕 組 み や 働 き に 関す る国 民 の 学 習機 会 の充 実 」 を あ げて い る(9)。 この 司 法 教 育 の 内容 は,「 司 法 の仕 組 み や 働 き」 に 限定 され た もの で あ る。 さ らに,北
川 善英 は,上
記 二 つ の潮 流 が,そ
の後,以
下 の よ うに展 開 した こ とを述べ て い る(10)。(4)全
国法 教 育 ネ ッ トワー ク2000(平
成12)年
に,第
1の
潮 流 (法 教 育)と
第2の
潮 流 (司法 教 育)の
中心的 な 担 い手 に よつ て設 立 され た の が,全
国法 教 育ネ ッ トワー ク で あ る。 構 成 メ ンバ ー は,社
会 科 教 育学研 究者,初
等 中等 教 育 学 校 教 員,弁
護 士 な どの 法 律 実務 家 か ら構 成 され,初
等 中等 教 育 に お け る 「法 教 育 」 の充 実・ 発 展 を 目的 と した研 究・ 教 育 実 践 の た め の組 織 で あ る。 この組 織 は,「行 政 に よ る事 前 規 制 か ら司法 に よ る事 後 的 救 済を 重 視 す る方 向 へ 」と社 会 の あ り方 は 変 化 した が,市
民 が様 々 な トラブル や 紛争 に巻 き込 まれ て も 「正 当 に紛 争 を解 決 す る方 法を 見 つ け る こ とが で きず,泣
き寝 入 りせ ぎ るを え な い 」 こ とを指 摘 し, そ の原 因 の一 つ と して,「 中等 教 育 以 下 の学 校 教 育 にお い て ,自 分 の基本 的 人権 や 権利 を 守 る方 法 を教 え られ て い ない,と
い う問題 」に着 日 し,「 緊 急 の課 題 」 と して 「子 どもた ち に,自
分 の 人権 や 権 利 を守 るた め に必 要 な,最
低 限 の法 的知 識 や 法 的 思考 能 力 を身 に つ け させ る こ と」 を提 起す る(10。(5)関
東 弁 護 士会 連 合 会 第2の
潮 流 (司法 教 育)の
中か ら,第
1の
潮 流 (法 教 育)の
影 響 を受 けて 「法 教育 」 へ と発 展 した の が,2002(平
成14)年
に刊 行 され た 関 東 弁 護 士会 連 合 会 編『 法 教 育 一21世
紀 を生 き る子 どもた ち の た め に』 で あ る。 同書 は,「法 教 育 」の 目的 を 「自律 的 主 体 的 に 自己 の善 き生 き方 を 目指 し,法
を その た め の もの と理 解 し活 用 す る」市 民,「法 の支 配 の理 念 に根 ざ した,自
由で 公 正 な 社 会 を実 現 す る」市 民 の 育成 に求 め,そ
うした 市 民 に必要 な資 質 を 「法 的 資 質 」 と して捉 え,「法 的 知識 」・「法 的 思 考 や 法 的 参 加 の技 能 」・「法や 法 の基礎 に あ る価 値 に従 つて行 動 す る と い う態 度 育成 」とい う三側 面 をそ の 内容 と して い る。さ らに,「法 教 育 」を「消費 者 教 育 」。 「人 権 教 育 」。「司法 教 育」 を包 摂 す る もの を して位 置 づ けて い る(12)。(6)法
教 育研 究 会 司法 制 度 改 革 審 議 会 意 見 書 を うけ て,2003(平
成15)年
に法 務省 内 に設 置 され た の が法 教 育 研 究 会 で あ る。2004(平
成16)年
に は報 告 書 が公 表・ 刊 行 され て い る(10。 こ の組 織 は,法
務 省・ 文 部科 学省・ 最 高 裁 判 所 か ら各1名
の ほ か,第
1の
潮 流 か らの4名
と,第
2の
潮 流 か らの2名
を含 む15名
の委員 で 構 成 され,委
員 構 成 上 は三 つ の潮流 の 「合流Jで
あ る。報 告書 で は,「法 教 育 」の 必要 性 を
,諸
改 革 に よ つて 生 じる紛 争 を 「法 に基づ い て公 正 に解 決 す る必 要 」,国
際 化 の進 展 に よ る「多 様 な文 化 的背 景 や価 値 観 を持 った人 々 の間 の 交 渉 が 日常化 して い くこ とに よ つて,今
ま で 以 上 に透 明 なル ー ル に よ る紛 争解 決 が求 め られ る こ と」,「 国 民 が 法 や 司 法 を利 用 す るだ けで な く,司
法 を支 え るた め に能 動 的 に参 加 す る こ とが 求 め られ て い る こ と」 に求 め て い る(14)。 また ,「 法 教 育 」 の 目的 と して ,「 自律 的 か つ 責 任 あ る主 体 と して,自
由 で公 正 な社 会 の運 営 に参 加 す るた め に必 要 な資 質 や 能 力 を養 」うこ と,「 日常 生 活 にお い て も十 分 な 法 意 識 を持 つ て行 動 し,法
を主 体 的 に利 用 で き る力 を養 うJこ
とが提 示 され てい る。 さ ら に,「法 教 育 」 を 「法 律 専 門家 で ない=般
の 人 々 が,法
や 司法 制 度,こ
れ らの基 礎 にな っ て い る価 値 を理解 し,法
的 な もの の考 え方 を身 に付 け るた め の教 育 」と定義 し,「法律 の 条 文 を覚 え る知識 型 の教 育 で は な く,法 や ル ー ル の 背 景 に あ る価 値 観 や 司法 制 度 の機 能, 意 義 を考 え る思 考型 の教 育 … …,社
会 に参 加 す る こ との 重 要性 を意 識 付 け る社 会 参加 型 の教 育 」 を強 調 す る(1め。 この法 教 育研 究 会 の下 に,法
教 育 教材 作 成 部 会 が設 置 され,当
時 の学 習 指 導 要領 に対 応 した 四つ の授 業 例 を作成 す る。四 つ の授 業 例 とは,「ル ー ル づ く り」,「 私 法 と消 費者 保 護 」,「 憲 法 の意 義 」,「 司法 」 に 関す る もの で あ る(10。 この組 織 の活 動 が 終 了す る と,法
務 省 は2005(平
成17)年
5月
に,法
教 育 推 進協議 会 を立 ち上 げ る(1つ。 この組 織 は,新
た に小 学校 や 中学校,高
等 学 校 で の授 業 開 発 を行 う な ど,現
在 も活 動 を継 続 中で あ る。1990年
代 か ら,こ れ ま で の 日本 にお け る「法 教 育 」の展 開 を ま とめ た の が ,図1で
あ る。 日本 に お け る 「法 教 育 」の研 究 は,1990年
代 前 半 か ら社 会 科 教 育研 究 者 に よ る「法教 育 」 研 究 と法 律 家 団 体 に よ る 「司 法 教 育 」 が 中心 とな つ て い る。 いず れ も民 間 レベ ル の取組 で あ る。 民 間 レベ ル の取 組 にや や 遅 れ た もの の,官
と して の 取 組 は,2001(平
成13)年
の 司法 制 度 改 革 審 議 会 意 見 書 が契 機 とな り始 ま る。 日本 にお け る「法 教 育 」は 当初 は,「司 法 出典:前
掲 書 0)を も とに筆 者 作 成 図1
日本 にお け る 「法 教 育 」 の 展 開 12‐ 年 代 取 組19901「 代
20004「 代
2010イ
■代官
の
取
組
法 教 育推 進 協 議 会民
間
の
取
組
(5)関東 弁 護 士 連 合 会教 育 」 色 の強 い 内容 で あ った こ とが うか が え る。 さ らに
,司
法 制 度 改 革審 議 会 意 見 書 を うけ て,2003(平
成15)年
に法 務 省 に 設 置 され た法 教 育研 究 会 に は,そ
れ ま で の研 究0実
lltの先 駆 者 が結 集 し,作
成 され た報 告 書 に よ つ て,日
本 の 「法 教 育 」 の基盤 が 出来 上 が っ た とい え る。 ところが,前
述 した よ うに報 告 書 に よつ て 四つ の授 業 例 が示 され て い る が,い
ず れ も 中 学 校 社 会 科 公 民 的分 野 にお け る もの に と どま り,小 学 校 に お け る授 業 例 は示 され て い ない 。 現在 活 動 を継 続 中で あ る法 教 育推 進 協議 会 にお い て,2008(平
成21)年
8月
に 「小 学 生 を対象 と した法 教 育 教 材 例 の 作成 につ い て 」 が公 表 され,そ
こで,以
下 三 っ の 教 材例 が 示 され て い る(13)。 一 つ 日は,憲
法 の意 義 及 び 司法 に か か わ る もの と して,第
6学
年 を対 象 と した 「もめ ご との解 決 と国 民 の 司法 参 カロ・ ル ー ル づ く り」 に関す る教 材 例,二
つ 目は,憲
法 の 意 義 に か か わ る もの と して,第
5学
年 を対 象 と した 「情 報 化 社 会 を生 き る∼ 情報 の 受 け手・ 送 り手 と して ∼Jに
関す る教 材 例,三
つ 日は 司法 (特に 民 事 司法)に
か か わ る もの と して,高
学 年 を対象 と した 「友 だ ち同 士 の けん か とそ の解 決 」 に関す る教材 例 で あ る。 それ ぞれ の教 材 例 を実施 す る教 科 等 は,十
つ 日は第6学
年 の社 会 科,総
合 的 な学 習 の 時 間,特
別 活 動 を 横 断 した単 元 構 成,二
つ 日は第5学
年 の社 会 科,二
つ 日は 第6学
年 の特 別 活 動 とな つて お り,「法 教 育 」を実 施 す るに あた つ て,学
校 ・ 学 級 の 実 態 と,学
習 内容 の 力 点 に応 じて,柔
軟 に対 応 す る こ とを促 して い る。 民 間 レベ ル か らス ター トした 日本 で の 「法 教 育 」 研 究 は,司
法制 度 改 革 審 議 会 意 見書 を 契機 と して,法
教 育研 究 会 設 置 以 降急 速 に進 展 して きた が,小
学校 社 会 科 にお け る研 究 に 関 して は,ま
だ まだ不 明確 な部 分 が 多 く,研
究課 題 が 山積 してい る のが 現 状 で あ る。第
2節
社 会 科 に お け る 「法 教 育Jの
意 義1
小 学 校 学 習 指 導 要 領 に お け る 「法 教 育 」 現行 の小 学校 学習指導 要領 の方 向性 を提 言 した の は,2007(平
成19)年
1月17日
の 中 教審答 申 「幼 稚 園,小
学校,中
学校,高
等学校及 び特別支 援学校 の学習指導 要領 等 の改 善 につい て」(以下 「改善答 申」 とい う)で
あ る(19)。 この改善答 申で は,小
学校社 会科 にお け る改善 の基本 的 な方 向 を,「我 が 国の歴 史や文 化 を大切 に し,日 本 人 と しての 自覚 を もつ よ うにす る とともに,持続 可能 な社 会 の実 現 な ど, よ りよい社会 の形成 に参画す る資質や 能力 の基礎 を培 うこ とを重視 して改 善 を図 る」 とな つてい る(20)。 さらに,「 法教 育」 に関 して は,「社会 生活 を営む 上で大 切 なル ールや 法 お よび経済 に関 す る基礎 とな る内容 の充実 を図 る」 こ ととな つて い る(21)。 こ うした改 善答 申を受 けて,改
善 され た現行 の学 習指導 要領 。2)にお け る小学校 社会科 関 連 の 「法教 育 」 の概 要 を示 した のが表2で
あ る。 表2
学 習 指 導 要 領 に お け る 「法 教 育 」(小学 校 社 会 科 関連) 学 年 内 容 内容 の取扱 い 第 3・ 4学 年(3)「
地 域 の 人 々 の 生 活 に と つ て 必 要 な 飲 料 水,電
気,ガ
ス の 確 保 や 廃 棄 物 の 処 理 」 「内容(3)にか か わ つて,地
域 の社 会 生 活 を営 む 上で 大 切 な法 や き ま りにつ い て扱 うもの とす る。」 (具体 例) 「廃 棄 物 の処 理 」 にか か わ る,ご
み の 出 し方 や 集 積 所 な どに 関す る き ま りや,資
源 の 再利 用 や 生 活 ツト 水 の適 正 な処 理 な どに 関す る法 を取 り扱 う。(4)「
地域 社 会 にお け る災 害 及 び 事 故 の 防 止 」 「内容(0に
か か わ つて,地
域 の社 会 生 活 を営 む 上 で 大切 な法 や きま りにつ い て扱 うもの とす る。」 (具体例)
` 「事故 の 防止 」 にか か わ る,登
下校 の きま りや 交通 事 故 の 防止 な どに 関す る法 や き ま りを取 り上 げ る。 第6学
年 (2)「我 が国 の政 治 の働 き」 「国会 と内閣 と裁 判所 の 三権 相 互 の 関連 」 に つ いて も扱 うよ うにす る。 「国 民 の 司法 参 加 」 に つ い て も扱 うよ うにす る。 (具体 例) 裁 判 員 制 度 を 取 り上 げ る。 出典:前
掲 書 。 "を も とに筆 者 作成 ‐14,現 行 の学 習 指 導 要領 に お い て 「法 教 育 」 が 実 施 可 能 な学 年 と して
,第
3・4学
年 と第6
学 年 が あ げ られ て い る。 第 3・4学
年 で は,い
わ ゆ る地 域 学 習 に お い て,地
域 の社 会 生 活 を営 む 上 で大 切 な法 や きま りを扱 うこ とに な つて い る。 こ こで は,自
分 た ち の身 近 な生 活 に法 や きま りが 存在 す る こ と,法
や き ま りを守 る こ とが,健
康 で安 全 な生 活 や 良好 な生 活 環境 の維 持 と向 上 を図 る上 で大 切 で あ る こ とに気 付 か せ る こ とをね らい と して い る。 第6学
年 で は,政
治 学 習 にお い て ,「 国会 と内 閣 と裁判 所 の三 権 相 互 の 関連 」 と 「国 民 の 司法 参 加 」の 二 つ の 内容 を扱 うこ とにな つ て い る。前者 で は,「国会 」,「内 閣」,「裁 判所 」 の それ ぞれ が持 つ 三 権 を取 り上 げ,こ
の三権 の そ れ ぞれ 大 切 な働 きや 相 互 の 関連 につ い て の理 解 を,後
者 で は,裁
判 員 制 度 を取 り上 げ,法
律 に基 づ い て行 わ れ る裁 判や 国 民 との か か わ りにつ い て 関心 を もつ こ とをね らい と して い る。 今 回 の学 習 指 導 要領 改訂 に よ つて,小
学 校 社 会 科 にお け る 「法 教 育 」 に 関す る 内容 は 明 らか に な つ て い るが,表
2の
よ うに 非 常 に限 定 され た もの で あ る こ とに つ いて,物
足 りな さが あ る。 もち ろん,す
べ て の 内容 を 「法 教 育 」 に結 び付 け る こ とを主 張 してい るわ けで は ない が,第
5学
年 に お け る内容 と,第
6学
年 にお け る歴 史 学 習 で の 内容 とに関 連 付 け ら れ て い ない こ とに課 題 が あ る。 第5学
年 で は産 業 学 習 が 中心 で,農
業 に お い て は 「TPP問
題 」や 「牛 肉偽装 問 題 」に お け る 「牛 肉 トレー サ ビ リテ ィ法 」,漁
業 にお い て は 「200海
里 問題 」(国連 海 洋法 条 約),工
業 にお け る 自動 車 生 産 の 学 習 で は,「エ コカ ー 減税 」,「グ リー ン化 税 制 」な ど とい うよ うに, 非 常 に法 関連 の 内容 が 多 い。 また,第
6学
年 の歴 史 学 習 にお い て も,既
に序 章 で述 べ た よ うに,た
く さん の法 が登 場 す る。 これ ま で に も,法
か ら当時 の社 会 的 状 況・ 背 景 を考 えた り,そ
の 法 の有 効 性 を検 証 した りす る 「法 教 育 」 の実 践 は 開 発 され て い る。 つ ま り,学
習 指 導 要 領 に は明 記 され て い な い が,第
5学
年 の産 業 学 習や 第6学
年 の歴 史 学 習 にお い て も,「 法 教 育 」 を視 点 に した授 業 を実 践 す る こ とは可 能 で あ る。2「
小 学 校 に お け る 法 教 育 の 実 践 状 況 に 関 す る 調 査 研 究 」 報 告 書 の 結 果 か ら 実 際 に現 在 の小 学校 現 場 で は,ど
の よ うに 「法 教 育 」 が 実 践 され て い るので あ ろ うか。 現 行 の学 習 指 導要 領 が 完全 実 施 され た2011(平
成23)年
度 に お い て,小
学校 の 「法 教 育」が どの程 度 実 施 され て い るの か,また そ れ が,ど
の よ うに行 わ れ て い る のか を確 認 し, 実 践 的 な 問題 点 等 を含 めて,現
在 の状 況 を把 握 す るた め に,法
務 省 が 「小 学校 に お け る法 教 育 の 実 践 状 況 に 関す る調 査 研 究 」 を実施 してい る。 調 査 内容 は,「学 校 に 関す る こ と」,「法 教 育 に関す る学 習 指 導 の 状 況 」,「法 律 家 や 関係 各 機 関 との連 携 の状 況 」,「 法 務 省 が推 進 す る法 教 育 に 関す る こ と」,「 法教 育 推 進 に 向 けた 取 り組 み へ の ご意 見・ ご要 望 」 の五 項 目で あ り,そ
の結 果 が,2012(平
成24)年
11月 報 告 書 と して公 表 され て い る(20。表
3
各 教 科 等 の 充実 度 社 会 科 生 活 科 家 庭 科 体 育科 道 徳 特 別 活 動1.と
て も充実 させ る5,5%
12.4%
3.3%
12.5%
12,4%
9.9%
2。 い く らか 充 実 させ る30,9%
36.2%
24.0%
36.9%
42.4%
41.3%
計36.4%
48.6%
27.3%
49.4%
54.8%
51.2%
出典:前
掲 書00,28頁
を も とに筆 者 作成 まず,調
査 内容 「法 教 育 に 関す る学 習 指 導 の状 況 」 で の各 教科 等 の 充実 度 は,表
3の
通 りで あ る。 社 会 科 で は ,「 とて も充実 させ る」,「 い く らか 充 実 させ る」 の二 項 目を合 わせ た 割合 が,36.4%で
,家
庭 科 に次 いで低 い値 を示 して い る。 報 告書 に よ る と,社
会 科 の充実 度 が低 か つた理 由 と して,「社 会 科 で は従 来 か ら政 治 や 日本 国 憲 法 を扱 って い た経 緯 が あ る」こ とか ら,基
本 的 に学 習 指 導 要 領 に示 され た 内容 通 りに 実 施 され て い るた め と考 え られ て い る。 今 回 か ら学 習 指 導 要領 で 「法 教 育 」 は学 習す る こ とが 可 能 に な っ た に もか か わ らず,数
値 が低 い の は,や
は り 「法 教 育 」 とい うもの の認 識 ・ 認 知 度 の低 さの現 れ で あ る。 次 に,調
査 内 容 「法 教 育推 進 に 向 け た取 り組 み へ の ご意 見・ ご要 望 」 の 【推 進 体 制 に 関 す る こ と】で は ,「 時 間数 の不 足 」 とい う回 答 が最 も多 い。 特 に 「〇 〇教 育 」(人権,消
費 者,情
報,国
際理 解,環
境,金
融,租
税,防
災,キ
ャ リア,福
祉,食
育 等 々)の
要 請 が, 学校 に個 別 に持 ち込 まれ る こ とへ の意 見 が 日立 っ て い る。具 体 的 な 要 望 で は,「文 科 省 と連 携 し,小
学校 の実 態 に即 した 内容 を考 えて ほ しい 」,「 各 省 庁 を横 断 した 総 合 的 な観 点 か ら 重 点 化・ 構 造 化 を図 つ て ほ しいJな
どが あ が つて い る。 筆 者 も二 十 数 年 間 の小 学 校 現場 の経 験 か ら,こ
の 意 見 に は共 感 で き る と ころが あ る。 特 に小 学 校 教 育 は,リ
アル タイ ム で そ の 当時 の社会 的 な要請 を受 けや す い傾 向 が あ る。 例 え ば,1995(平
成7)年
の 「阪神 淡 路 大 震 災 」以 降 の 防 災教 育 の学校 現 場 へ の 積 極 的 推 進や, 学 校 内へ の不 審 者 侵 入 事 件 続 発 に よ る安 全 教 育 の 見 直 し,さ
らに は 産 地 偽 装 問題 で食 の安 全 を揺 るが した事 件 以 降 の食 育 ブー ム等,そ
の例 を挙 げ る と枚 挙 に い とま が ない 。 さ らに,「脱 ゆ と り」を掲 げ た 現 行 の学 習 指 導 要領 が実施 され て ま もない この時 期 に,新
た に 「法 教 育 」 とい う 「とつつ き に くい 印 象 」 を持 つ 教 育 が導 入 され る とな る と,拒
否 反 応 を示 す 教 師 は多 い の で は な い だ ろ うか。 この調 査 内容 の結 果 を,報
告 書 で は,全
体 的 に小 学校 の 「法 教 育 」 に 関 す る考 え方や 内 容 が理 解 され て い なか つた り,あ るい は様 々 な捉 え方 が な され て い た りす る こ と,「法教 育 」 を 「規 範 意識 向上 の た め の教 育 」 や ,「 学 校 や 教 育 問題 の 法 的対 応 を理解 す るた め の教 育 」 と捉 えて い る様 子 が読 み 取れ る こ とを指 摘 してい る。う。 つ ま り,現
場 の教 師 た ち にお い て,「法 教 育 」とい うもの が 一般 的 に定着 してお らず,「法 教 育 」 へ の認 識 ・ 認 知 が非 常 に 多様 で あ る こ とが,こ
の結 果 か ら も分 か る。 ‐16‐小 学校社 会科 にお け る 「法 教育」 の意義
今 回 の 学 習 指 導 要 領 か ら,様
々 な科 目・ 分 野 で 「法 教 育 」 が 取 り入 れ られ る よ うに な つ た こ とか ら も,学
校 教 育 にお け る 「法 教 育 」 の 重 要 性 は 明 らか で あ る。 現行 の学 習 指 導 要 領 の方 向性 を提 言 した2007(平
成19)年
の 中教 審 改 善答 申で は,現
代 社 会 を 「事 前 規 制 社 会 か ら事 後 チ ェ ック社 会 へ の転 換 が 行 われ て お り,金
融 の 自由化, 労働 法 制 の 弾 力 化 な ど社 会 経 済 の 各 分 野 で の規 制 緩 和 や 司法 制 度 改 革 な どの 制 度 改 革 が進 ん で い る」 と認 識 し,「 この よ うな社 会 にお い て,自
己責任 を果 た し,他
者 と切 磋 琢 磨 しつ つ 一 定 の役 割 を果 たす た め に は,基
礎 的・ 基 本 的 な知 識・ 技 能 の 習 得 や それ らを活 用 して 課 題 を見 出 し,解
決 す るた め の思 考 力 0判 断 力・表 現 力 等 が必 要 で あ る」(25)と 述 べ て い る。 一方,法
教 育研 究会 報 告 書 に よ る と,「 法 教 育 」 のね らい は ,「 個 人 の 尊 厳 や 法 の支 配 な どの憲 法 及 び 法 の基 本 原 理 を十 分 に理 解 させ,自
律 的 か つ 責任 あ る主 体 と して,自
由 で公 正 な社 会 の運 営 に参 加 す るた め に必 要 な資 質 や 能 力 を養 い,ま
た,法
が 日常 生 活 にお い て 身 近 な もの で あ る こ とを理 解 させ,
日常 生 活 にお い て も十 分 な法 知 識 を持 つて行 動 し,法
を主 体 的 に利 用 で き る力 を養 うこ と」 。6)と して ぃ る。 大 杉 昭英 は,こ
の 改 善答 申 と法 教 育研 究 会 報 告 書 に着 日 し,学
校 教 育 にお い て の 「法 教 育 」 を展 開 す る意 義 の大 き さを指 摘 して い る(27)。 上 記 「法 教 育 」 の ね らい を ,「 法 に 関す る知識,と
りわ け憲 法 や 法 の基 本 原 理 を理 解 させ る と と もに,そ
れ を利 用 で き る力 を養 う こ と」 と解 釈 し,改
善 答 申 も報 告 書 も基 礎・ 基 本 的 な 知識 の 習 得 と活 用 を重 視 して お り, 「法 教 育」 は そ の知識 に法 とい う具 体 的 な 内容 を付 与 して い るの で あ り,新
教 育課 程 の趣 旨 を実 現 す る もの で あ る と述 べ て い る。 出 典 :前 掲 書(27)の 図 を も と に 筆 者 作 成 「 法 教 育Jの
展 開 生 活 科 ・ 体 育・ 特 別 活 動①ルールについての学習
1公
平 な 第 二 者 と し て │1公
正 に判 断 す る経 験│
② ル ール に基づ い て身 のまわ りの トラブル の解 決方 法 に つ いて考 え る学習 体 験 的 な学 習 領 域 (小学校 低 ∼ 中学 年)③民法
,刑
法
,憲
法の基本的な
こつ い歴壺蓄鉦
l
④ 法 に基 づ い て 法 的 紛 争 の解 決 (裁判 に よ る解 決 及 び 裁 判 以 外 の 紛 争 解 決)方
法 に つ い て 概 念 的 な学 習 領 域 (小学 校 高 学 年・ 中学 図 2法 教 育研 究 会 報 告 書 で 示 され た 「法 教 育 」 の 四つ の学習 領 域 に
,児
童 生 徒 の発 達段 階 を 加 味 した 「法 教 育」 の 展 開 を示 した の が,図
2の
「法 教 育Jの
展 開 で あ る。 図 中左 側 の体 験 的 な学 習 領 域 で は,法
の本 質 を学 ぶ と と も に,法
(ル ー ル)に
従 つて ト ラブル の解 決 方 法 を学 習 す る こ とを通 して,法
(ル ー ル)の
意 義 を学ぶ 。 この領 域 を担 う の は,生
活 科 ・ 体 育 。特別 活 動 な ど と して い る。 図 中右 側 の概 念 的 な学 習領 域 は,体
験 的 な学 習領 域 で体 験 した 内容 を概 念 化 し法 的 に 考 え る領 域 で,こ
こで は 民法,刑
法,憲
法 の 基本 的 な 考 え方 な どを身 に付 け,法
に 基 づ く紛 争 解 決 の方 法 につ い て 学 ぶ 。 公 平 な第 二者 と して公 正 に判 断す る経 験 は,例
えば模 擬裁 判 を実施 す るな ど紛 争 処 理 を実 際 に体 験 す る こ とを意 味す る。 この概 念 的 な 学 習領 域 を主 に 担 うの が,社
会 科 で あ る と して い る。 この よ うな小 学校 社 会 科 にお け る 「法 教 育 」 の展 開 は,「単 に記 述 的 知 識 を暗記 す るた め の授 業 で は な く,日
に 見 え る社 会 的 事 物0事
象 を手 が か りに,学
習者 が教 材 を媒 介 に しな が ら,自
分 の経 験 を生 か し,判
断や 推 理 の思 考 を働 か せ なが ら,社
会 的 事 象 を関連 させ た り,関
連 づ け た り して,社
会 的 意 味 を考 えな が ら,
日 に は見 え な い社 会 の シ ステ ム を理 解 す る。」 。めとい う社 会 科 授 業 の 目的 と合 致 して い る。 「法 は社 会 を映す鏡 で あ る」 とよ くい われ るよ うに,「法Jか
ら社 会 が 成 立 して い る,あ
るい は成 立 して い た社 会 の様 子 が分 か る。 社 会 の シス テ ム を理解 す る こ とが社 会 科 授 業 の 目的 で あ るな らば,
地 域 学 習 や 産 業 学 習,そ
して歴 史 学習 にお い て 「法 教 育」を視 点 に し た授 業 を構 成 し実 践 す る こ とで そ の 目的を 凄 成 で き るので は な い だ ろ うか 。 一 般 的 に 「法 」 とい うと,我
々 は 「難 しい 」,「 とつつ き に くい 」,「 弁護 士 にお任 せJと
い うイ メー ジ を持 ち が ちで あ る。つ ま り,「法 」とは 自分 とは遠 い存 在 と感 じて い る こ とが 多 い の で あ る。 しか しな が ら,実
際 に は「法 」とは,さ ま ざま な社 会 生活 の 中で我 々 とか か わ つ てお り, 自分 とは非 常 に身 近 な存 在 で あ る。 この こ とを,小
学 生 段 階 の子 ど もた ち に感 じさせ る こ とが必 要 で あ ろ う。 そ の た め に は,ま
ず,中
学 年 の 地 域 学 習 か ら 「法 教 育 」 を視 点 に した授 業 を構 成・ 実 践 し,「 法 」 に慣 れ 親 しませ る こ とが重 要 で あ る。「法 」 と 自分 との 間 の距離 が案 外 近 い こ と を実感 させ るの で あ る。 次 に,現
行 指 導 要領 に は記 載 され て い な い が,高
学 年 の 産 業 学 習 にお い て も 「法 教 育 」 を視 点 に した授 業 を構 成 。実 践 す る こ とに よつて,法
的 セ ンス を磨 かせ,「法 」が 作 られ た 背 景や そ の有 効 性 を考 え させ る よ うにす る。 前述 した よ うに,産
業 学 習 に は,法
関連 の 内 容 が 非 常 に豊 富 で あ る。 そ して,小
学 校 社会 科 の総 決 算 と もい え る高 学 年 の歴 史 学 習 。政 治 学 習 にお い て,そ
れ ま で培 つて きた 法 的 セ ンス を活 か し,歴
史 上存在 した 法 に つ いて,そ
の 当 時 の社 会 的背 景 をベ ー ス に評 価 した り,現
代 社 会 で 話 題 に な って い る事例 や,身
近 で起 こ つて い る問題 に つ い て,積
極 的 に考 え させ た りす る よ うにす る。 さ らに,こ
の 中学年 か ら高 学 年 で 学 習 す る内容 に 関連 性 ・ 反復 (スパ イ ラル)性
を持 た せ る こ とに よ つ て,単
な る記 述 的 知 識 の獲 得 だけ で な く,説
明力 の あ る概 念 的知 識 の獲 得 が 可 能 とな り得 る。 そ して,こ
の こ とは 同 時 に 「社 会 科 授 業 の多 くが概 念 を学 ぶ とい うよ ‐18・りも
,事
実 を学 ぶ こ とに重 点 が 置 か れ て い る こ とが あ る。」(20と ぃ ぅ現 状 を打 破 す る手 が か り とな り得 るの で は な い だ ろ うか。 以 上,小
学 校 社 会 科 にお け る 「法 教 育 」 の展 開 を図 で表 した の が,図
3で
あ る。「法 的 セ ンス 」 を
図3
小 学 校 社 会 科 にお け る 「法 教 育 」 の展 開活用す る
「法 」 に慣 れ
概 念 的知識
﹃
臓
菫
育
﹂
0
儡
慮
「法的センス」を
身 に付 け る
筆 者 作 成【
書
主】
(1)法教 育研 究 会『 法 教 育研 究 会 報 告 書 我 が 国 にお け る法 教 育 の 普 及 。発 展 を 目指 して 一 新 た な 時代 の公 正 な社 会 の担 い 手 をは ぐ くむ た め に 一』,2004年
。 。)江澤 和雄 「学 校 教 育 と『 法 教 育』」『 レフ ァ レン ス 』 平成17年
10月
号,2005年 ,94頁
∼96頁
。 (3)磯 山恭 子 「諸 外 国 の社 会 系 教 科 に お け る法 の教 育 の展 開 」『 ジ ュ リス ト』1266号
,2004
年,62頁
。 (の北 川 善 英 「『 法 教 育 』 の現 状 と法律 学 」『 立命 館 法 学 』506号
,2008年
,68頁
∼71頁
。 (め江 口勇 治 「社 会 科 にお け る『 法 教 育 』 の重 要 性 一 ア メ リカ社 会 科 にお け る『 法 教 育』 の 検 討 を通 して 」日本 社 会 科 教 育学 会『 社 会 科 教 育研 究 』第68号
,1993年 ,1頁
∼17頁
。 (6)江 日勇 治 「法 教 育 の理 論 一 日本 型 法 教 育 の 素描 」『 法 教 育 の可 能 性 』,現
代 人 文 社,2001
年,14頁
∼22頁
。 (7)『司 法 に 関す る教 育 の充実 を求 め る決 議 』 の全 文 は,ホ
ー ムペ ー ジ上 に公 開 され て い る の で参 照 され た い。http:ノ/www.nichibenren,or.jpノ activityノdocumentノ assembly_resolutionryearノ
1993/1993
_1.htIIlll
(3)『求 め られ る司法 の た め に』 の 内容 は
,ホ
ー ムペ ー ジ上 に公 開 され て い るので 参 照 され た い。http〃www,shihO…8hOShioo■・jpノwebノactivitiesノopnionノreforЩ
_111014.html
(9)司法 制 度 改 革 審 議 会 意 見 書 の全 文 は
,ホ
ー ムペ ー ジ上 に公 開 され て い る ので参 照 され た い 。http〃www.kantei.go.jpttp/SihOuseidoノ reportノikensyo/iken.htIEll
(10)前掲 書
(4),71頁
∼74頁
。(11)全国法 教育ネ ッ トワー クの活動 は
,ホ
ー ムペー ジ上 に公 開 され て い るので参照 されたい。 http〃www.jnlre,co mノ(1の関東 弁護 士 会 連 合 会 編『 法 教 育
-21世
紀 を生 き る子 ど もた ち の た め に』 現代 人 文社, 2002三年1, 13Jヨ ー 18]ヨ, 206]ヨ。 (13)同掲 書(1)。 (14)同掲 書(1),1頁
。 (15)同掲 書(1),2頁
。 (16)同掲 書(1),18頁
。 (17)法 教 育推 進 協 議 会 研 究 会 の報 告 書 全 文,参
考 資 料,議
事 録 等 は,法
務 省 ホー ムペ ー ジ上 に公 開 され て い るの で参 照 され た い。http:ノ/www.moj.go.jpノshingilノ
kanbou_houkyo_kyougikai_index.html
(18)前掲 ホ ー ムペ ー ジ(17)。 (19)中央 教 育審 議 会 答 申 「幼稚 園
,小
学 校,中
学校,高
等 学 校 及 び 特 別支 援 学校 の 学 習指 導 要 領 の改 善 につ いて 」,2007年
。 (20)前掲 書(19),79頁
。 (21)前掲 書(19),80頁
。0"文
部 科 学省 「小 学校 学 習 指 導 要領 」,2008年
。 。め法務省『「小 学校 にお ける法 教 育 の実 践状 況 に関 す る調 査 研 究 」 報 告書 』,2012年
。 (24)前掲 書 。3),49頁
。 (25)前掲 書(19),8頁
。 。の前掲 書(1),13頁
。 (27)大杉 昭 英「学 校 教 育 か ら見 た 法 教 育 の課 題 と展 望 」『 ジ ュ リス ト』1353号
,有
斐 閣,2008
年,36頁
。。め開浩 和『 情 報読解 力形 成 に関わ る社 会科 授 業構 成 論』 風 間書房
,2009年
,69頁
∼70
頁 。(29)前掲 書