東 京 農 業 大 学
学 位 論 文
凍 結 保 存 に よ る ウ シ 受 精 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 低 下 と 品 質
管 理 機 構 を 介 し た 回 復
Effect of activation of mitochondrial quality control on
mitochondrial functions and embryo quality following slow
freezing
2020
年
福 岡 県 農 林 業 総 合 試 験 場
林
武 司
論 文 題 目 凍 結 保 存 に よ る ウ シ 受 精 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 低 下 と 品 質 管 理 機 構 を 介 し た 回 復 博 士 学 位 論 文 目 次 第 一 章 緒 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 第 二 章 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 が 緩 慢 凍 結 し た ウ シ 受 精 胚 に お け る ミ ト コ ン ド リ ア と 融 解 後 の 胚 発 生 に 及 ぼ す 影 響 第 一 節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 第 二 節 材 料 お よ び 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 第 三 節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・15 第 四 節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・24 第 三 章 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 凍 結 前 処 理 が 融 解 後 の ウ シ 受 精 胚 品 質 お よ び ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 に 及 ぼ す 影 響 第 一 節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・27 第 二 節 材 料 お よ び 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・29 第 三 節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・38 第 四 節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・46
第 一 章 緒 論 わ が 国 に お け る 畜 産 農 家 の 飼 養 戸 数 は 、 高 齢 化 等 に 起 因 す る 事 業 継 続 の 困 難 さ か ら 減 少 が 続 い て い る 。 一 方 で 飼 養 頭 数 は 近 年 横 ば い で 推 移 し て お り 、 一 戸 当 た り の 飼 養 頭 数 の 増 加 が 進 ん で い る 。 牛 枝 肉 卸 売 り 価 格 は 景 気 の 低 迷 等 を 背 景 と し て 、 平 成 19 年 度 以 降 和 牛 去 勢 牛 肉 を 中 心 に 価 格 が 低 下 し た が 、 平 成 23 年 度 以 降 は 上 昇 に 転 じ 、 生 産 量 の 減 少 を 背 景 に 黒 毛 和 牛 枝 肉 単 価 は 平 成 28 年 度 に 過 去 最 高 水 準 ま で 高 騰 し た 。平 成 29 年 度 以 降 は 最 高 水 準 を 下 回 っ て は い る も の の 、 依 然 と し て 高 価 格 で 推 移 し て い る 。 一 方 で 高 い 枝 肉 価 格 に も 関 わ ら ず 畜 産 農 家 の 経 営 収 支 は 低 く 、 経 営 状 況 と し て は 苦 し い 局 面 に あ る 。 こ の 背 景 に は 、 繁 殖 雌 牛 の 減 少 に 伴 う 肥 育 素 牛 の 不 足 と そ れ に よ る 素 牛 価 格 の 高 騰 が あ る 。 肥 育 素 牛 価 格 は 上 昇 を つ づ け て お り 平 成20年 度 の351千 円 か ら 平 成28年 度 に は 851千 円 と 8年 間 で 約 2.4 倍 も 増 加 し た 。繁 殖 雌 牛 頭 数 が 上 昇 に 転 じ た 後 も 依 然 と し て 高 水 準 で 推 移 し て お り 、 黒 毛 子 牛 の 生 産 力 向 上 に よ る 素 牛 価 格 の 適 正 化 は わ が 国 の 畜 産 業 に お け る 喫 緊 の 課 題 で あ る 。 乳 用 種 へ の 黒 毛 和 種 受 精 胚 の 移 植 は 、 産 子 に よ る 酪 農 家 の 副 収 入 に な る と と も に 、 黒 毛 和 種 子 牛 の 生 産 を 増 や す 有 効 な 手 段 と し て 期 待 さ れ て い る 。 牛 受 精 胚 の 移 植 は わ が 国 で は 杉 江 ら に よ っ て は じ め て 報 告 さ れ 、 そ の 移 植 数 は 年 々 増 加 し 、 平 成 30年 度 で は 年 間 4万 7080 頭 、 わ が 国 の 黒 毛 子 牛 の 9.7%を 生 産 す る ま で 普 及 し た 技 術 で あ る ( 大 呂.2019)。 畜 産 分 野 に お い て 受 精 胚 移 植 は 遺 伝 的 改 良 や 、 長 期 不 受 胎 対 策 に 有 効 な 技 術 で あ る が 、移 植 可 能 な 胚 の ス テ ー ジ は 限 ら れ て お り 、
受 胚 牛 側 の 発 情 同 期 化 が 不 可 欠 で あ る 。 移 植 適 期 の レ シ ピ エ ン ト が 準 備 で き な い 場 合 は 保 存 が 必 要 と な る た め 、 胚 の 凍 結 保 存 は 胚 移 植 技 術 を 活 用 す る う え で 必 須 の 技 術 で あ る 。 凍 結 保 存 は 受 精 胚 の 長 期 保 存 、 長 距 離 輸 送 を 可 能 に し 、 利 便 性 の 面 で は 新 鮮 胚 に 比 べ 極 め て 活 用 の 幅 が 広 く 重 要 な 技 術 で あ る 。 ウ シ 胚 の 凍 結 保 存 は 現 場 で の 取 り 回 し が 容 易 で あ る が 、 一 方 で 凍 結 受 精 胚 の 受 胎 率 は 新 鮮 胚 に 比 べ て 低 い(農 林 水 産 省 HP)。こ の 原 因 と し て 凍 結 保 存 時 の 損 傷 が 融 解 後 の 胚 品 質 を 低 下 さ せ 、 受 胎 率 の 低 下 を 招 い て い る と 考 え ら れ る 。 こ の 凍 結 由 来 の 受 精 胚 品 質 の 低 下 の 主 要 因 と し て ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 の 低 下 が あ げ ら れ る (Do et al.2017、Hayashi et al. 2019)。 ヒ ト 卵 子 に お い て 、 ミ ト コ ン ド リ ア 数 は 卵 子 の 質 を 決 め る 大 き な 要 因 で あ り 、 受 精 し た 卵 子 と 非 受 精 卵 子 を 比 較 す る と 受 精 卵 子 の ミ ト コ ン ド リ ア 含 量 が 多 い こ と が 報 告 さ れ て い る(Santos et al.2006)。 さ ら に ミ ト コ ン ド リ ア の 主 要 な 機 能 の 一 つ に ATP合 成 が あ り 、 卵 子 で は ATP 含 量 が 高 い 方 が 発 育 性 に 優 れ て い る と い う 報 告 が あ る(Van et al.1995、Stojkovic et al. 2001)。 凍 結 に よ る ミ ト コ ン ド リ ア の 障 害 は 電 子 顕 微 鏡 に よ っ て 観 察 さ れ て お り (Gualtieri et al. 2009, Dai et al. 2015)、 ヒ ツ ジ 胚 を 用 い た 検 討 で は 、 凍 結 に よ り ミ ト コ ン ド リ ア 形 状 が 膨 化 状 態 に あ る こ と が 報 告 さ れ て い る (Dalcin et al.2013, Moussa et al.2014)。 ま た 凍 結 に よ る ミ ト コ ン ド リ ア ゲ ノ ム や 核 ゲ ノ ム
め ら れ 、 移 植 に よ り 産 子 が 得 ら れ る こ と か ら 、 凍 結 に よ り う け た 損 傷 は 、 そ の 後 の 発 育 過 程 で 回 復 す る と 考 え ら れ る 。 し か し な が ら 、 凍 結 融 解 後 の 胚 内 ミ ト コ ン ド リ ア が ど の よ う に 増 減 し 、 質 を 変 化 さ せ 、 受 精 胚 の 恒 常 性 の 維 持 に 関 与 す る の か は 明 ら か に さ れ て い な い 。 ミ ト コ ン ド リ ア が 障 害 を 受 け る と 、 品 質 管 理 機 構 が 活 性 化 し 、 ダ メ ー ジ を 受 け た ミ ト コ ン ド リ ア は 除 去 さ れ る(Campello et al.2014)。 細 胞 を 用 い た 実 験 で は ミ ト コ ン ド リ ア の 膜 電 位 を 喪 失 さ せ る と 細 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア は 小 さ く 分 割 し 、 そ の 後 、細 胞 中 ミ ト コ ン ド リ ア 数 の 減 少 が 認 め ら れ る(Lyamzaev et al. 2008)。こ れ ら の 機 序 は 大 変 複 雑 で は あ る が 、よ く 知 ら れ て い る も の で は 膜 電 位 が 低 下 す る と 、 PINK1 が 外 膜 に 蓄 積 し こ こ に 誘 導 さ れ た PARKIN が ユ ビ キ チ ン 化 を 促 し 、 蛋 白 分 解 が 誘 導 さ れ る 経 路 、 損 傷 を 受 け た ミ ト コ ン ド リ ア が オ ー ト フ ァ ジ ー を 介 し て 分解されるマイトファジーの経路が示されている(Koyano et al.2014, Shiba-Fukushima et al. 2012)。 細 胞 中 で の ミ ト コ ン ド リ ア 動 態 を リ ア ル タ イ ム で 観 察 す る に は 高 度 な 細 胞 工 学 が 必 要 で あ る が 、 簡 易 に こ れ を モ ニ タ リ ン グ す る 指 標 と し て 、 細 胞 外 DNAが あ る 。Kansaku ら は (2017) 細 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア に 障 害 を 与 え た 場 合 、 細 胞 培 養 し た 培 地 中 に 放 出 さ れ る ミ ト コ ン ド リ ア ゲ ノ ム 由 来 の 細 胞 外 DNA が 増 減 す る こ と か ら 細 胞 内 で の ミ ト コ ン ド リ ア の 動 態 を 追 跡 で き る こ と を 示 し て い る 。 こ れ ら の 報 告 か ら 胚 内 ミ ト コ ン ド リ ア の 、 凍 結 後 の 動 的 変 化 を 従 来 の 方 法 で 観 察 す る の に 加 え て 、ミ ト コ ン ド リ ア に 由 来 す る 細 胞 外 DNA で 評 価 す る こ と が 出 来 る と 考 え る 。 豚 の 卵 子 を 用 い た 研 究 で は 、卵 子 を ミ ト コ ン ド リ ア 膜 電 位 の 脱 分 極 剤(CCCP) で 処 理 す る と ATPが 減 少 す る が 、そ の 後 卵 子 の 発 育 能 力 が 回 復 し 発 生 能 力 に 影 響
し な い (Itami et al. 2015)。 こ の と き 卵 子 内 で は ミ ト コ ン ド リ ア の DNA複 製 が
活 性 化 し 、TFAM 活 性 の 上 昇 が 観 察 さ れ 、 さ ら に SIRT1と リ ン 酸 化 AMPKの 発
現 量 が 増 え る 事 が 報 告 さ れ て い る 。 SIRT1 は ヒ ス ト ン の 脱 ア セ チ ル 酵 素 で あ り 、多 く の タ ン パ ク 質 の 制 御 に か か わ っ て い る 。SIRT1 は そ の 主 要 な タ ー ゲ ッ ト で あ る PGC1α や そ の 下 流 の TFAM を 介 し て ミ ト コ ン ド リ ア 合 成 を 司 る 重 要 な 制 御 因 子 で あ る (Vendramin et al. 2017)。こ の SIRT1 を 活 性 化 さ せ る 物 質 と し て 代 表 的 な も の が レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で あ る 。 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル は ブ ド ウ や 桑 、 ナ ッ ツ の 皮 な ど に 含 ま れ て い る フ ラ ボ ノ イ ド で あ り 、 そ の 処 理 の 手 軽 さ や 効 果 の 範 囲 か ら 非 常 に 多 く の 研 究 が お こ な わ れ て い る 。 そ の 効 果 は 細 胞 の 代 謝 や 炎 症 抑 制 等 幅 広 く 、 特 に 抗 老 化 の 効 果 が 期 待 さ れ て 利 用 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル の 作 用 メ カ ニ ズ ム は す べ て が 明 ら か に な っ て い る わ け で は な く 、 不 明 な 点 も 多 い 。SIRT1ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス で は レ ス ベ ラ ト ロ ー ル の 効 果 が 消 失 す る こ と か ら (Price et al. 2012)、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル が SIRT1 を 介 し て 働 い て い る 説 が 有 力 視 さ れ て い る が 、SIRT1 の N末 端 部 分 に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 結 合 部 位 が あ り 、こ の 部 分 の 変 異 に よ り レ ス ベ ラ ト ロ ー ル が 機 能 し な く な る こ と か ら (Hubbard et al. 2013)、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル が 直 接 SIRT1 に 働 き か け て い る と 考 え ら れ て い る 。 ま た 、cAMP 依 存 的 な AMPKの 活 性 化 と そ れ に 伴 うNAD+ の 増 加 が 間 接 的 にSIRT1 の 活 性 化 を も た ら
る 試 み は 増 加 し て き て お り 、 繁 殖 分 野 で の 応 用 も 期 待 さ れ て い る 。 レ ス ベ ラ ト ロ
ー ル を マ ウ ス に 給 餌 す る と 加 齢 に よ る 卵 子 の 質 や 量 的 低 下 が 抑 制 さ れ る こ と が 報
告 さ れ て い る (Liu et al. 2013)。 ま た 、 ブ タ 卵 子 を レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 す る
と 卵 子 内 の ミ ト コ ン ド リ ア 活 性 が 上 昇 し 、ミ ト コ ン ド リ ア の 分 解 と 合 成 が 上 昇 し 、
胚 発 育 が 改 善 す る (Sato et al. 2014)。 こ の 効 果 は SIRT1阻 害 剤 で あ る EX527
で 処 理 す る こ と に よ り 失 わ れ る こ と か ら 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 に よ り SIRT1 の 活 性 化 が 起 こ り 卵 子 内 の ミ ト コ ン ド リ ア 合 成 と 分 解 を 促 進 し 、 結 果 と し て 卵 子 の 質 を 改 善 し た と 考 え ら れ る 。Gaviriaら(2019) は ウ シ 初 期 胚 へ の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 添 加 に よ り 活 性 酸 素 の 生 産 を 減 少 さ せ 、 活 性 ミ ト コ ン ド リ ア の 増 加 を 抑 制 す る こ と が で き る と 報 告 し て い る 。 本 研 究 で は ウ シ 胚 を 用 い 、 凍 結 保 存 が 胚 に 与 え る 影 響 や レ ス ベ ラ ト ロ ー ル が 受 精 胚 に 及 ぼ す 影 響 の 解 明 を 主 眼 と し な が ら 、 畜 産 現 場 で の 応 用 を 視 野 に 入 れ 各 試 験 を 設 定 し た 。 1 ) ウ シ の 初 期 胚 盤 胞 を 緩 慢 凍 結 し 、 凍 結 保 存 が 受 精 胚 に 及 ぼ す ダ メ ー ジ を 調 べ る と と も に 融 解 後 に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 添 加 培 地 で 培 養 す る こ と に よ り 、 受 精 胚 の 生 存 性 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 調 べ た 。 2 ) さ ら に ウ シ や ヒ ト に お い て 胚 移 植 の 現 場 で は 、 凍 結 胚 は 融 解 後 培 養 を 行 わ ず 速 や か に 移 植 に 用 い ら れ て い る 。 そ の た め 、 凍 結 融 解 後 長 時 間 の 培 養 時 間 を 必 要 と す る 方 法 で は 、 畜 産 現 場 で の 応 用 が 難 し く 、 胚 移 植 の 成 績 改 善 に 貢 献 す る こ と が で き な い 。 そ こ で 、 凍 結 前 に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 を 行 い あ ら か じ め SIRT1活 性 を 上 昇 さ せ た 後 、凍 結 保 存 を 行 う こ と で 、融 解 後 の 受 精 胚 の 品 質 を 改 善 し う る か を 調 べ た 。 こ れ ら の 研 究 に よ り レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 用 い て 凍 結 に 起 因 す る 障 害 か ら 品 質 管 理 機 構 を 介 し ミ ト コ ン ド リ ア の 回 復 を 促 し 、 融 解 胚 の 質 を 改 善 す る こ と で 、 移 植
第 二 章 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 が 緩 慢 凍 結 し た ウ シ 受 精 胚 に お け る ミ ト コ ン ド リ ア と 融 解 後 の 胚 発 生 に お よ ぼ す 影 響 第 1 節 緒 言 ウ シ 受 精 胚 の 凍 結 保 存 技 術 は 、 ウ シ 胚 を 畜 産 現 場 で 広 範 囲 に 利 用 す る た め に 極 め て 重 要 な 技 術 で あ る 。 一 方 で 、 こ の 技 術 に は 未 解 決 の 問 題 が あ り 、 融 解 さ れ た 胚 の 生 存 性 が 低 下 す る こ と が 報 告 さ れ て い る(Dalcin et al. 2013、 Moussa et al. 2014)。 そ の た め 、 凍 結 胚 の 生 存 率 は 新 鮮 胚 と 比 べ て 未 だ に 低 い の が 現 状 で あ る (Do et al. 2017)。 凍 結 に よ る 受 精 胚 の 品 質 低 下 の 潜 在 的 要 因 の 一 つ と し て ミ ト コ ン ド リ ア の 機 能 障 害 が あ げ ら れ る 。凍 結 融 解 胚 は ATP含 量 が 非 凍 結 胚 に 比 べ て 低 い こ と が 報 告 さ れ て お り 、 凍 結 に よ る ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 低 下 が 受 精 胚 の 品 質 を 低 下 さ せ て い る 一 因 と 考 え ら れ る (Hayashi et al. 2018)。 さ ら に 新 鮮 胚 に お い て も ATPが 低 い と 胚 の 発 達 能 力 が 低 い 報 告 も あ る (Brevini et al. 2005)。 凍 結 に よ る ミ ト コ ン ド リ ア の 形 態 的 な 変 化 に つ い て は 、 電 子 顕 微 鏡 検 査 に よ る 観 察 で 、凍 結 解 凍 卵 母 細 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア 膜 損 傷 や(Gualtieri et al. 2009, Dai et al. 2015)、 ミ ト コ ン ド リ ア の 膨 化 が 報 告 さ れ て い あ る (Dalcin et al. 2013)。 こ れ ら の 報 告 か ら 、 凍 結 保 存 す る こ と で 受 精 胚 の 生 存 性 に 重 要 な ミ ト コ ン ド リ ア の 量 と 質 の 低 下 が 誘 起 さ れ て い る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 凍 結 保 存 に よ っ て 誘 発 さ れ た 損 傷 ミ ト コ ン ド リ ア の 回 復 は 、 凍 結 融 解 後 の 受 精 胚 の 生 存 率 を 改 善 す る た め の 対 策 に な り う る 。た だ し 、細 胞 内 ミ ト コ ン ド リ ア の 維 持 に は 、分 解 、生 合 成 、融 合 、 分 裂 等 の 複 数 の 過 程 が 存 在 す る た め 、 胚 内 の ミ ト コ ン ド リ ア 動 態 や 質 を リ ア ル タ
イ ム に 観 察 す る こ と は 困 難 で あ る(Sato et al. 2014, Youle et al. 2012)。Hara ら(2018) は レ ス ベ ラ ト ロ ー ル が 凍 結 融 解 し た ウ シ 8 細 胞 期 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア の 合 成 と 分 解 を 介 し て 胚 の 質 を 回 復 さ せ た こ と を 報 告 し て い る 。 こ の 報 告 で は 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル に よ っ て 誘 発 さ れ る ミ ト コ ン ド リ ア の 分 解 と 合 成 は 、 胚 の 使 用 済 み 培 養 液 中 の ミ ト コ ン ド リ ア ゲ ノ ム に 由 来 す る 細 胞 外 DNA( ミ ト コ ン ド リ ア 無 細 胞 DNA; mt-cfDNA)の 増 加 と し て 反 映 さ れ る こ と を 示 し た 。レ ス ベ ラ ト ロ ー ル( trans-3,5,4'-ト リ ヒ ド ロ キ シ ス チ ル ベ ン ) は 、 ブ ド ウ 、 ピ ー ナ ッ ツ 、 ベ リ ー な ど の 多 く の 植 物 種 に 含 ま れ る フ ァ イ ト ア レ キ シ ン で あ り 、 ミ ト コ ン ド リ ア の 恒 常 性 お よ び 他 の 細 胞 プ ロ セ ス の 調 節 に 重 要 な 役 割 を 果 た す 、 ク ラ ス III ヒ ス ト ン 脱 ア セ チ ル 化 酵 素
で あ る SIRT1の 活 性 化 因 子 で あ る (Gomes et al. 2013)。 本 研 究 で は 、 レ ス ベ ラ ト
ロ ー ル が 凍 結 融 解 ウ シ 胚 盤 胞 の 生 存 性 に 及 ぼ す 影 響 を 調 査 し 、 従 来 の ミ ト コ ン ド
リ ア の 指 標 に 加 え て 、 使 用 済 み 培 地 中 の mt-cfDNA を 検 証 す る こ と に よ り 凍 結 後
第 二 節 材 料 お よ び 方 法
1) 試 薬 、 培 地 お よ び 培 養 条 件
特 に 明 記 し な い 限 り 、 す べ て の 試 薬 は 、Sigma-Aldrich( 米 国 ミ ズ ー リ 州 セ ン
ト ル イ ス ) か ら 購 入 し た 。 Medium 199(12340-030、Gibco、Grand Island、 NY、USA)、5% ウ シ 胎 児 血 清 (FCS)(15K116、Nichirei Bioscience Inc.、 東 京 、 日 本 )、100IU / mlペ ニ シ リ ン 、 お よ び 100 µg / ml ス ト レ プ ト マ イ シ ン を 添 加 し 、 卵 母 細 胞 の 成 熟 に 使 用 し た 。 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル ( 富 士 フ イ ル ム 和 光 純 薬 株 式 会 社 、 大 阪 、 日 本 ) を エ タ ノ ー ル (99.5% ) で 2000 倍 に 希 釈 し て 、 使 用 濃 度 0.5 µM( ス ト ッ ク 溶 液 の 濃 度 、1 mM) と し て 使 用 し た 。 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル の 使 用 濃 度 に つ い て は 、 既 報 の 胚 盤 胞 の 研 究 に 基 づ き 選 択 し た (Abe et al. 2017, Hayashi et al. 2018)。 試 験 に お い て 、 対 照 区 で は 試 験 区 と 同 量 の エ タ ノ ー ル (99.5%) を 媒 剤 と し て 培 地 に 添 加 し た ( 最 終 濃 度 :1/2000)。 体 外 受 精 培 地 と し て 、5mM カ フ ェ イ ン 、5mM テ オ フ ェ リ ン お よ び 10%BSA を 添 加 し て BO液 を 用 い た(Brackett et al. 1975)。体 外 培 養 後 6 日 間 は グ ル コ ー ス を 除 い た 修 正 199 培 地 (Mori et al.2012) に 10%FCSを 加 え て 用 い た 。6 日 目 で 10%FCSを 添 加 し た M199 に 培 地 交 換 を 行 っ た 。 気 相 条 件 は CO2:3%、O2:10%、N2:87%で 温 度 は 38℃ 、 湿 度 は 最 高 湿 度 で 培 養 し た 。 2) 卵 巣 お よ び 卵 子 採 取 ウ シ 卵 巣 は 地 域 の 食 肉 セ ン タ ー か ら PBS 中 に 保 管 し 、25℃ で 維 持 し て 3 時 間 以 内 で 研 究 室 に 運 び 入 れ た 。 卵 子 卵 丘 細 胞 複 合 体 (COCs) は 18G の 針 を 装 着 し
た シ リ ン ジ を 用 い 、3~8 ㎜ の 卵 胞 か ら 吸 引 採 集 し た 。 3) 体 外 受 精 お よ び 発 生 COCs を 成 熟 培 地 内 で 20 時 間 成 熟 培 養 後 、BO培 地 ド ロ ッ プ 内 へ 移 動 さ せ た の ち 、 凍 結 融 解 精 液 を 用 い 5時 間 媒 精 し た 。 そ の 後 胚 盤 胞 を 、10%FCSを 添 加 し た グ ル コ ー ス フ リ ー の 修 正 199 で 培 養 し た 。 媒 精 か ら 2 日 後 、8~16 細 胞 期 の 受 精 胚 を 包 む 卵 丘 細 胞 を ピ ペ ッ テ ィ ン グ で 除 去 し た 。 さ ら に 6日 後 、 グ ル コ ー ス フ リ ー の 修 正 199 か ら 、10%FCS添 加 199に 培 地 交 換 を 行 っ た 。受 精 胚 は IETS の マ ニ ュ ア ル(Robertson et al.1998)に 従 い 分 類 し 、 1 ~2 グ レ ー ド の も の の み 試 験 に 用 い た 。 4) 受 精 胚 の 凍 結 保 存 と 融 解 受 精 胚 は 20%NBCS を 含 む PBS で 洗 浄 後 、 凍 結 液 (5% ethylene glycol, 6% propylene glycol, 0.1 M sucrose and 4 mg/ml BSA in PBS) に 移 動 さ せ た 。 受 精 胚 は 凍 結 液 に 移 し た 後 、0.25mlス ト ロ ー(IMV technologies, L’Aigle, France)内 に 封 入 し 、
常 温 (20-25℃ ) で 15 分 平 衡 さ せ た 。 そ の 後 、 −7℃ の エ タ ノ ー ル を 充 填 し た プ ロ
グ ラ ム フ リ ー ザ ー (Fujihira industry Co. Ltd, Tokyo, Japan) に 入 れ 、 液 体 窒 素 で 冷
胚 の 生 死 に つ い て 形 態 学 的 に 判 断 し た 。
6)ATP 含 量 の 測 定
個 々 の 受 精 胚 の ATP 含 量 に つ い て は 、 ル シ フ ェ リ ン - ル シ フ ェ ラ ー ゼ 反 応 に よ
っ て 生 成 さ れ る 発 光 を 基 に 測 定 し た 。試 薬 は ATP Assay Kit(TOYO B-Net CO., Ltd., Tokyo, Japan)を 用 い 発 光 は ル ミ ノ メ ー タ ー を 用 い て 、 測 定 し た(Spark Control, Tecan Japan Co., Ltd., Kanagawa, Japan)。
7) 胚 盤 胞 お よ び 使 用 培 地 か ら の DNA 抽 出
受 精 胚 の DNAに つ い て 、6µlの 融 解 溶 液(20 mM Tris, 0.4 mg/ml proteinase K, 0.9% Nonidet P-40, and 0.9% Tween 20)内 で 55℃ 、30 分 間 培 養 後 、98℃ で 5分 間 培 養 す る こ と で 抽 出 し た 。凍 結 融 解 胚 は 、試 験 区 は エ タ ノ ー ル で 融 解 し た 0.5µMレ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 添 加 し 、 対 象 区 で は 溶 媒 で あ る エ タ ノ ー ル の み(0µM レ ス ベ ラ ト ロ ー ル)を 添 加 し た 5%FCS含 有 6µlド ロ ッ プ の M199 で 1 日 培 養 し た 。さ ら に 、新 鮮 胚 を エ タ ノ ー ル の み を 添 加 し た 同 様 の 5%FCS 含 有 6µl ド ロ ッ プ の M199 で 培 養 し た 。 培 養 後 、 胚 盤 胞 の 生 存 率 を 実 体 顕 微 鏡 で 調 べ 、 生 存 胚 の 胚 盤 胞 の 使 用 済 み 培 地 を DNA 抽 出 の た め に 収 集 し た 。受 精 胚 の 使 用 済 み 培 地 か ら DNA を 取 得 す る た め に 、6 µl の 培 地 を 等 量 6 µlの 2×mtDNA抽 出 バ ッ フ ァ ー (40 mM Tris、 0.8 mg / mlプ ロ テ イ ナ ー ゼ K、1.8%Nonidet P-40、 お よ び 1.8%Tween 20) と 混 合 し 、55°Cで 30 分 間 培 養 し た 後 、98°Cで 5分 間 培 養 し た 。
8)培地および胚盤胞におけるミトコンドリア DNA(mtDNA)コピー数の定量化 mtDNA コ ピ ー 数 (Mt数 ) は 、Corbett Rotor Gene 6000リ ア ル タ イ ム ロ ー タ リ ー ア ナ ラ イ ザ ー (Corbett Research、 シ ド ニ ー 、 オ ー ス ト ラ リ ア ) を 使 用 し た
リ ア ル タ イ ム PCR 方 法 で 測 定 し た 。 リ ア ル タ イ ム PCR は 、95°C で 3 分 間 の 初
期 解 離 反 応 を 行 っ た 後 、98℃ で 5秒 、59℃ で 11秒 を 1 サ イ ク ル と し 、40 サ イ ク
ル 繰 り 返 し た 。 プ ラ イ マ ー セ ッ ト は 、Primer-BLAST を 使 用 し て 設 計 し た
(NC_006853.1、Forward:5'-GTAACCGCACACGCATTTGT-3 '、Reverse: 5'-GGAATGAGGGAGGGAGGAGT-3'、 短 い 配 列 :5858〜6014、157 bp)。Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を 使 用 し て プ ラ ス ミ ド ベ ク タ ー に ク ロ ー ニ ン グ さ れ た PCR 産 物 を 外 部 標 準 と し て 連 続 希 釈 し 、 各 ア ッ セ イ に お け る 標 準 曲 線 を 作 成 し た 。 ま た 使 用 前 に PCR 産 物 は シ ー ク エ ン ス に よ っ て 確 認 し た 。 9)MtDNA 完 全 性 の 分 析 新 鮮 胚 ( 非 凍 結 保 存 胚 、n = 5) お よ び 凍 結 融 解 胚 ( 融 解 直 後 、n = 5) を 24µl の DNA 抽 出 バ ッ フ ァ ー に 移 し 、上 記 と 同 様 に 胚 盤 胞 か ら DNA を 抽 出 し た 。さ ら に MtDNAの 2 つ の 異 な る 対 象 配 列 を 基 設 計 し た プ ラ イ マ ー セ ッ ト を 用 い て リ ア
ル (6 µl) を リ ア ル タ イ ム PCR に 使 用 し た 。 ま た 、 測 定 は 二 回 行 い そ の 平 均 CT 値 を 決 定 し 、 相 対 Mt数 の 予 測 に 使 用 し た 。 新 鮮 ( 非 凍 結 ) 胚 の 平 均 Mt 数 を 1.0 と し 、 式 2fresh-CT / 2frozen-CTを 使 用 し て 、 凍 結 胚 の 相 対 Mt 数 を 決 定 し た 。 長 鎖 ミ ト コ ン ド リ ア 配 列 を 標 的 と す るPCRは 、95℃ で10分 間 の 初 期 解 離 反 応 に 続 い て 、 95℃ で 20 秒 間 、59℃ で 30 秒 、お よ び 72℃ で 3分 を 40 サ イ ク ル 行 っ た 。短 鎖 ミ ト コ ン ド リ ア 配 列 を 標 的 と す る PCR の プ ロ グ ラ ム は 、胚 の Mt 数 を 測 定 し た も の と 同 様 の も の を 使 用 し た 。 ミ ト コ ン ド リ ア ゲ ノ ム の 完 全 性 分 析 は 合 計 80 個 の 胚 盤 胞 (16 回 実 施 ) を 用 い て 各 実 験 グ ル ー プ ( 新 鮮 ま た は 緩 慢 凍 結 お よ び 融 解 胚 ) で 実 施 し た 。 10) 免 疫 染 色 胚 盤 胞 は 4%パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド 内 で 1 晩 固 定 し 、 既 報 の 免 疫 測 定 を 実 施 し
た(Sato et al., 2014)。 一 次 抗 体 は 、rabbit polyclonal anti-SIRT1 (1:200; Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)ま た は mouse monoclonal anti-double-strand DNA (dsDNA) (1:200; Abcom, Cambridge, UK)の い ず れ か を 使 用 し た 。 二 次 抗 体 は anti-rabbit IgG (H+L) (F (ab')2 fragment, Alexa Fluor 555 Conjugate; 1:1000; Cell Signaling Technology Inc., Beverly, MA) も し く は goat anti-mouse IgG Alexa Fluor 488 conjugate (1:500; Cell Signaling Technology Inc. ,Tokyo, Japan)を そ れ ぞ れ 使 用 し た 。 そ の 後 胚 を DAPI(4′,6-diamidino-2-phenylindole)入 り 退 色 防 止 剤(ProLongTM Gold, Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)と 共 に ス ラ イ ド ガ ラ ス 上 で 封 入 し た 。Leica Application Suite Advanced Fluorescence(LAS AF)ソ フ ト ウ ェ ア(Leica、Wetzlar、 Germany) を 搭 載 し た 、Leica DMI 6000B 顕 微 鏡 で 胚 を 観 察 し た 。SIRT1発 現 を
調 べ る た め に 、 胚 盤 胞 全 体 の 画 像 を 取 り 込 み 、 発 現 レ ベ ル を DAPI 染 色 に よ り 決
定 さ れ た 胚 盤 胞 の 総 細 胞 数 で 割 っ た 。 胚 盤 胞 の dsDNA の 画 像 を 取 得 す る た め に 、
各 胚 の 最 大 径 領 域 ( 赤 道 面 ) を 5つ の 0.03 µm 厚 の ス ラ イ ス で 撮 影 し 立 体 画 像 を
構 築 し た 。 画 像 処 理 は 、3D deconvolution software(Leica、Wetzlar、 ド イ ツ ) を 使
用 し て 処 理 し た 。 さ ら に 各 実 験 に つ い て 、 一 次 抗 体 な し で 染 色 さ れ た ネ ガ テ ィ ブ コ ン ト ロ ー ル 胚 の 非 特 異 的 蛍 光 強 度 も 調 べ 、 す べ て の 測 定 値 か ら 引 い た 。 蛍 光 強 度 は 、 蛍 光 顕 微 鏡 ( ラ イ カ ) で 観 察 さ れ 、ImageJ ソ フ ト ウ ェ ア (NIH) を 使 用 し て 定 量 化 し た 。 11) 統 計 解 析 本 試 験 で 得 ら れ た デ ー タ に つ い て 、2 つ の グ ル ー プ 内 の デ ー タ の 比 較 は 、 ス チ ュ ー デ ン ト の t 検 定 を 使 用 し た 。3 つ の グ ル ー プ 間 の デ ー タ は 、one-way ANOVA
の 後 に Tukey’s Post Hoc Test を 使 用 し て 分 析 し た 。 分 析 の 前 に 、 発 生 率 は ア ー ク
サ イ ン 変 換 し た 。 胚 の 生 存 率 は カ イ 二 乗 検 定 を 行 っ た 。 す べ て の 統 計 処 理 に お い
第 三 節 結 果
凍 結 融 解 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 に 対 す る 緩 慢 凍 結 の 影 響 を 評 価 す る た め に 、
こ れ ら の 胚 の ATP 含 有 量 を 測 定 し た と こ ろ 、融 解 後 に 有 意 に 低 下 す る こ と が 分 か
っ た(Fig. 1-A; 2.17 ± 0.16 vs. 0.94 ± 0.07 pM, P < 0.05)。 さ ら に 、mtDNA の 凍 結 保
存 に よ る 損 傷 の 頻 度 は 短 い ミ ト コ ン ド リ ア シ ー ケ ン ス よ り も 長 い ミ ト コ ン ド リ ア
シ ー ケ ン ス の 方 が 高 い と い う 前 提 で 、 リ ア ル タ イ ム PCR に よ り mtDNA 完 全 性 を
調 査 し た 。短 い シ ー ケ ン ス を 対 象 と し た リ ア ル タ イ ム PCRに よ っ て 明 ら か に な っ
た 凍 結 融 解 胚 に 対 す る 新 鮮 胚 の Mt 数 の 比 率 は 、 新 鮮 胚 と 凍 結 融 解 胚 で 差 は 見 ら
れ な か っ た (Fig. 1-B;Fresh; 1±0.07 vs Frozen; 1.15±0.09)。 長 い ミ ト コ ン ド リ ア シ
ー ケ ン ス を 対 象 と す る リ ア ル タ イ ム PCR に よ っ て 決 定 さ れ た 比 率 は 、凍 結 融 解 胚
で は 有 意 に 低 か っ た(Fig. 1-C; Fresh 1.0 ± 0.15, Frozen; 0.39 ± 0.06, P < 0.05)。 さ ら
に 、 凍 結 融 解 胚 の Mt 数 の 比 率 ( 長 い シ ー ケ ン ス/短 い シ ー ケ ン ス ) で も 有 意 に 低
か っ た(Fig. 1-D, Fresh 1.0 ± 0.27, Frozen; 0.31 ± 0.08, P < 0.05)。 次 に 、 胚 盤 胞 の 細
胞 質 に 存 在 す る 二 本 鎖 DNA(dsDNA)に 対 す る 凍 結 保 存 の 影 響 を 免 疫 染 色 に よ り 調 べ た 。Fig.2に み ら れ る よ う に 、非 凍 結 状 態(新 鮮 胚)で 観 察 さ れ た 胚 盤 胞(A)と 比 較 し て 凍 結 融 解 し た 胚 盤 胞(B)は 、 胚 の 内 部 に 多 く の 凝 集 し た dsDNA が あ り 、 さ ら に 胚 表 面 お よ び 透 明 帯 に も 付 着 し た dsDNA が 観 察 さ れ た 。ま た 凍 結 融 解 し た 胚 盤 胞 を 24 時 間 培 養 す る と 、生 存 胚 の mtDNAコ ピ ー 数 は 新 鮮 胚 よ り も 凍 結 融 解 胚 で 有 意 に 少 な か っ た(Fig.3)。 凍 結 融 解 し た 胚 盤 胞 を 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル (0(対 照)ま た は0.5 µM)を 添 加 し た 培 地 で1日 間 培 養 し た と こ ろ 、レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 は 、 胚 盤 胞 に お け る SIRT1 の 発 現 レ ベ ル を 1.58 倍 増 加 さ せ た (Fig.4)。1 日 間 培 養 後
Figure1.凍 結 融 解 胚 盤 胞 の ATP 含 量 お よ び ミ ト コ ン ド リ ア 完 全 性 に 対 す る 凍 結 保 存 の 影 響 A) 新 鮮 お よ び 凍 結 融 解 胚 盤 胞 ( 解 凍 後 30 分 ) の ATP 含 有 量 (pM) を 測 定 し た 。 B-C)短 鎖 お よ び 長 鎖 ミ ト コ ン ド リ ア 配 列 を 標 的 と す る リ ア ル タ イ ム PCR に よ り 予 測 さ れ る 相 対 Mt数 。 新 鮮 胚 を 1.0と し た 相 対 値 を 示 す 。 D)Mt 数 の 比 率 ( 長 鎖 シ ー ケ ン ス を タ ー ゲ ッ ト と す る リ ア ル タ イ ム PCR に よ っ て 予 測 さ れ るMt数/短 鎖 シ ー ケ ン ス を タ ー ゲ ッ ト と す る リ ア ル タ イ ムPCRに よ っ て 予 測 さ れ る Mt数 ) N.は 検 査 さ れ た 胚 の 数 を 表 し 、 デ ー タ は 平 均 ± 標 準 誤 差 と し て 表 示 し た 。 ab; 異 な る a-b 間 は P<0.05で 有 意 差 あ り
Figure 2. 融 解 直 後 の 胚 盤 胞 dsDNA に お け る 凍 結 保 存 の 影 響 A) 新 鮮 胚
B) 凍 結 融 解 胚 の 代 表 的 な 写 真
緑 色 は dsDNAを 表 し 、 青 色 は 核 を 表 す 。
Figure3. 胚 盤 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 に 対 す る 凍 結 保 存 の 影 響 新 鮮 ま た は 凍 結 融 解 し た 胚 盤 胞 を 24 時 間 培 養 し 、 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 を 調 べ た 。
N.は 検 査 さ れ た 胚 の 数 を 表 し 、 デ ー タ は 平 均 ± 標 準 誤 差 と し て 表 示 し た 。 ab; 異 な る a-b 間 は P<0.05 で 有 意 差 あ り
Figure4. 胚 盤 胞 に お け る SIRT1 発 現 レ ベ ル 差 と 代 表 的 な 写 真 A) 未 処 理 胚 の 発 現 レ ベ ル を 1.0 と 定 義 し た 場 合 の SIRT1 の 相 対 発 現 レ ベ ル 。 B-C)レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 ま た は 未 処 理 条 件 下 で 24 時 間 培 養 し た 凍 結 融 解 胚 で の SIRT1発 現 の 写 真 。 N.は 検 査 さ れ た 胚 の 数 を 表 し 、 デ ー タ は 平 均 ± 標 準 誤 差 と し て 示 し た 。 ab; 異 な る a-b 間 は P<0.05で 有 意 差 あ り
の 生 存 率 は 対 照 群 よ り レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 し た 胚 盤 胞 の 方 が 大 き か っ た が
(Table 1;52.3% vs. 68.2%, respectively, P < 0.05)、一 方 で 胚 盤 胞 の 総 細 胞 数 は 処 理 間 で 差 は み ら れ な か っ た 。ま た 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 は 、 融 解 胚 の ATP 含 有 量 を
有 意 に 減 少 さ せ た (Fig.5-A;1.31±0.1 vs. 1.08±0.08、P <0.05) が 、 融 解 後 の 胚
盤胞の MtDNA コピー数は、レスベラトロールと対照群で同等であった (Fig.5-B;Mt-DNA copy number 281,008 ± 51,019 vs. 209,600 ± 29,834, P = 0.23)。
新 鮮 胚 ( 非 凍 結 保 存 ) は 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル の ス ト ッ ク 溶 媒(エ タ ノ ー ル)の み を 含 む 6 µlド ロ ッ プ で 個 別 に 培 養 し 、 凍 結 融 解 胚 は 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル ま た は 溶 媒 の み を 含 む 6 µl ド ロ ッ プ で 個 別 に 培 養 し た 。1日 間 培 養 後 、 形 態 的 に 胚 盤 胞 の 生 存 率 を 決 定 し 、生 存 し た 胚 盤 胞 が あ っ た ド ロ ッ プ 培 地( 使 用 済 み 培 地 サ ン プ ル ) を そ れ ぞ れ 収 集 し 、 合 計 17個 の 使 用 済 み 培 地 サ ン プ ル を 使 用 し て 、mt-cfDNA 含 有 量 を 測 定 し た 。新 鮮 胚 の 使 用 済 み 培 地 の mt-cfDNA 含 有 量 は 、6µl 培 養 液 あ た り 152.6±35.4 で あ り 、 凍 結 融 解 胚 で は 、6µl 培 養 液 あ た り 325.7±78.9 に 増 加 し た (Fig.6)。 た だ し 、 こ の 二 つ の グ ル ー プ 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 一 方 で 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 を 行 っ た 胚 の 使 用 済 み 培 地 中 の mt-cfDNA 量 は 新 鮮 胚 に 比 べ 有 意 に 高 く な っ た (Fig.5;732.7±176.7、P<0.05)。
Figure5. レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 ま た は 無 処 理 で 培 養 し た 凍 結 融 解 胚 の ATP 含 有 量 と MtDNA 数 。 凍 結 胚 盤 胞 を 融 解 し 、媒 体 ま た は 0.5 µMレ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 含 む 培 地 で 24 時 間 培 養 し 、 そ の 後 胚 の ATP(A) お よ び ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 (B) を 測 定 し た 。 N.は 検 査 さ れ た 胚 の 数 を 表 し 、 デ ー タ は 平 均 ± 標 準 誤 差 と し て 示 し た 。 ab; 異 な る a-b 間 は P<0.05で 有 意 差 あ り
Figure6. 胚 盤 胞 の 使 用 済 み 培 地 中 のmt-cfDNA 量 に 対 す る レ ス ベ ラ ト ロ ー ル の 効 果 新 鮮 胚 お よ び 凍 結 融 解 胚 に つ い て レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 含 有 培 地 で 1日 間 培 養 し た 。 胚 が 形 態 学 的 に 生 存 可 能 で あ っ た 培 地 の ミ ト コ ン ド リ ア 無 細 胞DNA(mt-cfDNA) を 調 べ た 。 N.は 検 査 さ れ た 胚 の 数 を 表 し 、 デ ー タ は 平 均 ± 標 準 誤 差 と し て 示 し た 。 ab; 異 な る a-b 間 は P<0.05で 有 意 差 あ り
第 四 節 考 察 本 研 究 で は 、 胚 盤 胞 の 凍 結 保 存 に よ り 、 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 と ゲ ノ ム の 完 全 性 が 低 下 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。さ ら に 凍 結 融 解 後 24時 間 の 胚 盤 胞 で は 新 鮮 胚 に 比 べ て ミ ト コ ン ド リ ア 数(Mt数)の 減 少 が 認 め ら れ た 。レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 は Mt 数 と ATP 含 有 量 の 減 少 を ひ き お こ し 、 そ の 後 品 質 管 理 機 構 に よ る ミ ト コ ン ド リ ア の 除 去 を 活 性 化 さ せ 融 解 胚 の 生 存 性 を 向 上 さ せ た 。 ま た こ の 除 去 は 融 解 後 の 生 存 胚 盤 胞 の 使 用 済 み 培 地 内 の mt-cfDNA の 増 加 と い う 形 で 観 察 さ れ た 。 凍 結 処 理 は 、融 解 卵 子 や 胚 盤 胞 の 発 生 能 力 や ATP含 量 が 低 下 す る こ と か ら 、胚
盤 胞 に 負 の 影 響 を も た ら す こ と は 広 く 知 ら れ て い る(Shi et al. 2007; Zhang et al. 2009; Dai et al. 2015; Chen et al. 2016)。Zhao ら (2011) は 融 解 後 の ATP 含 有 量 は 、 ガ ラ ス 化 融 解 し た ウ シ 卵 母 細 胞 で は 低 か っ た と 報 告 し た 。 本 試 験 で も 凍 結 融 解 後 の 胚 盤 胞 は 、 新 鮮 胚 よ り も ATP 含 量 が 低 く 、こ れ ら の 報 告 と 一 致 し た 。さ ら に 、凍 結 融 解 胚 の ATP含 有 量 は 、同 じ 条 件 下 で 調 べ た 新 鮮 胚 と 比 較 し て 、24時 間 の 培 養 後 も ま だ 低 か っ た (1.31 pM、Figure5-A)。 さ ら に 、 凍 結 融 解 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア コ ピ ー 数 も 新 鮮 胚 と 比 較 し て 低 く(Fig. 3)、 こ れ ら の 結 果 は 、 凍 結 保 存 が 胚 盤 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア の 機 能 を 低 下 さ せ る こ と を 示 唆 し て い る 。 ま た 電 子 顕 微 鏡 に よ る 観 察 で は 、 凍 結 保 存 が ミ ト コ ン ド リ ア の 形 態 に 影 響 を 与 え る こ と が 明 ら か
(Rothfuss et al. 2010)に お い て も 同 様 の 論 理 で 用 い て い る 。凍 結 胚 に お い て ミ ト コ ン ド リ ア の 長 い 配 列 を タ ー ゲ ッ ト に し た リ ア ル タ イ ム PCR に よ り 決 定 さ れ た Mt数 は 少 な く な り 、短 い 配 列 で は 新 鮮 胚 と 大 き な 違 い は 観 察 さ れ ず 、両 者 の 比 は mtDNA 損 傷 の た め PCR が 効 率 よ く 増 え な か っ た 方 が 凍 結 胚 で あ る 事 を 示 唆 し て お り 、 ミ ト コ ン ド リ ア の ゲ ノ ム の 障 害 頻 度 が 凍 結 胚 の ほ う が 高 い こ と を 示 し て い る 。 さ ら に 免 疫 染 色 に よ り 、 細 胞 質 内 お よ び 凍 結 融 解 胚 の 表 面 上 に 凝 集 し た dsDNA が 明 ら か に な っ た 。 こ の こ と は 小 さ く 断 片 化 さ れ た DNA が 凍 結 胚 の 細 胞 質 に 存 在 す る こ と を 示 し て お り 、 凍 結 保 存 が 細 胞 小 器 官 と DNA の 完 全 性 を 損 な う 事 を 示 唆 し て い る 。 損 傷 し た ミ ト コ ン ド リ ア の 分 解 は 細 胞 内 の 恒 常 性 を 維 持 す
る た め に 必 要 で あ る(Wu et al. 2011, Mc Lelland et al. 2014)。 そ れ ゆ え 、 融 解 胚 盤
胞 で は 、 損 傷 し た ミ ト コ ン ド リ ア は 融 解 後 の 培 養 中 に 除 去 さ れ る と 考 え ら れ る 。 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル は 、SIRT1 の 強 力 な 活 性 化 因 子 で あ り 、 細 胞 の 恒 常 性 の 調 節 と 維 持 に 必 要 な ミ ト コ ン ド リ ア の 品 質 を 高 め る こ と が で き る(Price et al. 2012, Sosulski et al. 2015)。ブ タ 卵 母 細 胞 で は 、体 外 成 熟 培 地 に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 添 加 す る と 、 卵 母 細 胞 の 発 育 能 力 が 向 上 し 、SIRT1 の 活 性 化 を 通 じ て ミ ト コ ン ド リ ア の 分 解 と 生 合 成 が 促 進 さ れ る(Sato et al. 2014)。 一 方 で 他 の 報 告 で は 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル は ガ ラ ス 化 さ れ た ブ タ 卵 母 細 胞 の 発 達 能 力 を 改 善 し た が 、 作 用 メ カ ニ ズ ム は 不 明 と し て い る(Santos et al. 2018)。 本 研 究 で は 、 凍 結 融 解 後 の 胚 培 養 液 に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 添 加 す る と 、SIRT1 の 発 現 レ ベ ル が 向 上 し 、 融 解 後 の 胚 盤 胞 生 存 率 が 向 上 し た 。興 味 深 い こ と に 、凍 結 融 解 胚 を レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 す る と 、ATP 含 有 量 が 大 幅 に 減 少 し 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 非 処 理 ( 対 照 群 ) の 胚 盤 胞 と 比 較 し て Mt数 が 減 少 し た が 、胚 盤 胞 の 総 細 胞 数 は 両 方 の 場 合 で 差 は 認 め ら れ な か っ た 。割
球 数 に 比 較 し て Mt 数 が 少 な い こ と は 、 胚 盤 胞 か ら の ミ ト コ ン ド リ ア が 除 去 さ れ た 可 能 性 を 支 持 す る と 考 え ら れ る 。 大 型 動 物 に お け る 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア 量 を 継 時 的 に 観 察 す る こ と は 困 難 で あ る が 、 使 用 済 み 培 地 に mt-cfDNA が 存 在 す る こ と は 、 ミ ト コ ン ド リ ア 変 性 の 有 用 な マ ー カ ー で あ る と 報 告 さ れ て い る(Hara et al. 2018)。我 々 の 仮 説 ど お り 、レ ス ベ ラ ト ロ ー ル と 共 に 培 養 し た 胚 盤 胞 の 使 用 済 み 培 地 で 、mt-cfDNA 含 有 量 が 高 い こ と が 分 か っ た 。 顆 粒 膜 細 胞 を ミ ト コ ン ド リ ア の 脱 共 役 剤 で 処 理 す る と 、 細 胞 は 細 胞 死 を 伴 わ ず に 培 地 中 に よ り 多 く の mt-cfDNA を 分 泌 し た こ と が 報 告 さ れ て い る(Kansaku et al. 2018)。 し た が っ て 、 胚 盤 胞 中 の mtDNAの 減 少 と 同 時 に 観 察 さ れ る 培 地 で の mt-cfDNAの 増 加 は 、レ ス ベ ラ ト ロ ー ル が ミ ト コ ン ド リ ア の 分 解 を 促 進 し 、 培 地 に mt-DNA を 分 泌 し た こ と を 示 唆 し て い る と 考 え ら れ る 。 た だ し 、 割 球 か ら の mtDNA 分 泌 の メ カ ニ ズ ム は ま だ 不 明 で あ り 、 今 後 の 研 究 で 対 処 す る 必 要 が あ る 。
第 三 章 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 凍 結 前 処 理 が 融 解 後 の ウ シ 受 精 胚 品 質 お よ び ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 に 及 ぼ す 影 響 第 一 節 緒 言 前 章 に お い て 、 凍 結 融 解 後 の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 に よ り 受 精 胚 に お け る SIRT1 の 発 現 が 促 進 さ れ 、損 傷 ミ ト コ ン ド リ ア の 排 出 と 共 に 融 解 胚 の 生 存 性 が 向 上 し た こ と を 明 ら か に し た 。 し か し 、 畜 産 現 場 や ヒ ト の 不 妊 治 療 現 場 で は 、 凍 結 胚 は 融 解 後 速 や か に レ シ ピ エ ン ト へ 移 植 す る こ と が 一 般 的 で あ り 、 融 解 後 に 長 時 間 培 養 処 理 を 行 う こ と は 難 し く 、 現 場 で の 応 用 が 即 可 能 な 技 術 で あ る と は 言 え な い 。 そ こ で 、 本 試 験 で は 現 場 で の 応 用 を 視 野 に 入 れ 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 し SIRT1の 活 性 を あ ら か じ め 上 昇 し て か ら 凍 結 す る 手 順 で 、融 解 後 の ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 お よ び 胚 の 品 質 が 改 善 で き る の か を 検 証 し た 。 Itami ら(2015)は ブ タ 卵 母 細 胞 を ミ ト コ ン ド リ ア 脱 共 役 剤(CCCP)で 処 理 し て 人 為 的 に ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 障 害 を 起 こ す と 、 ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 が 増 え TFAM 発 現 が 上 昇 し た こ と か ら ミ ト コ ン ド リ ア の 新 規 合 成 が 誘 発 さ れ た と 報 告 し て い る 。さ ら に 、ブ タ 卵 母 細 胞 を SIRT1 の 活 性 化 因 子 で あ る レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 す る と 、 ミ ト コ ン ド リ ア の 合 成 と 分 解 が 亢 進 さ れ 、 卵 子 の 胚 盤 胞 期 胚 へ の 発 生 が 改 善 し た(Sato et al. 2014)。 さ ら に ウ シ を 用 い た 研 究 で は 、 卵 母 細 胞 の 発 育 培 地 や 培 養 成 熟 培 地 へ の レ ベ ラ ト ロ ー ル 添 加 は 、 卵 母 細 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 と 体 外 発 育 を 改 善 し 、 成 熟 培 地 で は 卵 子 の ミ ト コ ン ド リ ア 数 や 受 精 率 を 改 善 す る こ と が 示 さ れ て い る(Sugiyama et al. 2015、Takeo et al. 2014)。 こ れ ら の
報 告 か ら 、凍 結 保 存 前 の SIRT1の 亢 進 処 理 は 、ミ ト コ ン ド リ ア の 凍 結 損 傷 か ら の
胚 の 回 復 を 補 助 し 、 凍 結 融 解 胚 の 受 胎 率 を 改 善 す る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る 。
こ れ ら の こ と か ら 凍 結 保 存 前 に 胚 を レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 前 処 理 し 、 そ の 後 凍 結
融 解 の 胚 の 生 存 率 、 ミ ト コ ン ド リ ア 数 、 お よ び 受 胎 率 に 対 す る 処 理 の 影 響 を 調 べ
第 二 節 材 料 お よ び 方 法
1) 試 薬 、 培 地 お よ び 培 養 条 件
特 に 記 載 の な い 限 り 、 す べ て の 薬 物 は Sigma Chemical Co.( 米 国 セ ン ト ル イ
ス )か ら 購 入 し た 。 体 外 成 熟 に は 、5% ウ シ 胎 児 血 清(FCS、55301105、Moregate Biotech、 オ ー ス ト ラ リ ア ) を 添 加 し た 培 地 199(GIBCO、Invitrogen) を 使 用 し た 。 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル( 和 光 純 薬 工 業 株 式 会 社 、大 阪 、日 本 )は エ タ ノ ー ル に
融 解 し 、 最 終 濃 度 が 1000 倍 と な る よ う に 希 釈 し た 。 各 実 験 で は 、 対 照 区 に 試 験
区 と 同 じ 量 の エ タ ノ ー ル を 加 え た 。IVF 培 地 と し て Brackett and Oliphant(BO) (Brackett et al. 1975)培 地 を 使 用 し た 。 BO 培 地 に は 、5 mM caffeine、5 mM Theophylline、お よ び 10%Fatty acid-free BSA を 添 加 し 、 受 精 後 6 日 間 、胚 を 10%FCS、100 IU / ml ペ ニ シ リ ン 、 お よ び 100 µg / ml ス ト レ プ ト マ イ シ ン を 含 み 、 グ ル コ ー ス を 除 い た m-199 培 地 (Mori et al. 2012)で 培 養 し た 。 受 精 胚 は 6
日 齢 (IVF=0日 ) で 、 培 地 は 199 に 10%FCSを 添 加 し た も の (IVC 培 地 ) に 変
更 し た 。培 養 中 の イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 の 気 相 条 件 は 、IVM、IVF、IVC に お い て 、 3%CO2、10%O2、87%N2、 温 度 は 38℃ と し た 。 2) 卵 巣 お よ び 卵 子 採 取 卵 巣 は 地 元 の 食 肉 処 理 場 で 収 集 さ れ 、抗 生 物 質 を 含 む 25℃ の リ ン 酸 緩 衝 生 理 食 塩 水 内 で 保 管 し 、3 時 間 以 内 に 研 究 室 に 運 ば れ た も の を 用 い た 。 卵 丘 卵 母 細 胞 複 合 体 (COCs) は 、18G針 を シ リ ン ジ に 装 着 し 、 卵 胞 か ら 吸 引 し 収 集 し た 。 3) 体 外 成 熟 、 受 精 、 発 生 培 養
COCs は IVM培 地 で 20 時 間 成 熟 し (4well-dish:50 COCs / 500 µl)、 そ の 後 COCsを BO培 地 (50 COCs /ド ロ ッ プ ) の 100 µlド ロ ッ プ で 凍 結 融 解 し た 精 子 と 共 培 養 し た 。媒 精 時 間 は 5 時 間 と し 、そ の 後 COCs を 無 グ ル コ ー ス IVC 培 地 に 移 し た (4well-dish: 50胚/ 500 µl)。 媒 精 か ら 2日 後 、 受 精 胚 を ピ ペ ッ テ ィ ン グ で 周 囲 の 卵 丘 細 胞 か ら 剥 が し 、続 い て 顆 粒 膜 細 胞 シ ー ト 上 で 共 培 養 し た 。 培 養 6 日 目 (IVF = 0日 目 ) に 、 培 養 培 地 を 無 グ ル コ ー ス IVC培 地 か ら 10%FCSお よ び 抗 生 物 質 を 含 む TCM-199(GIBCO Invitrogen) に 変 更 し た 。 4) 過 剰 排 卵 処 置 と 受 精 胚 の 回 収 過 剰 排 卵 処 置 に つ い て Fig.7 に 示 し た 。 正 常 な 黄 体 を 有 す る 黒 毛 和 種 雌 牛 に 1.55 gの プ ロ ゲ ス テ ロ ン を 含 む 膣 内 留 置 型 プ ロ ジ ェ ス テ ロ ン 製 剤(PRID)(PRID DELTA、CEVA Salud Animal、 バ ル セ ロ ナ 、 ス ペ イ ン ) を 挿 入 し た 。 PRID 挿 入 日 を 0日 と 定 義 し 、6日 目 か ら FSH( 合 計 18 AU、 ア ン ト リ ン 、 東 京 、 共 立 、
東 京 )を 3日 間 漸 減 投 与 し た 。 8日 目 の 朝 に 、PGF2α(d-ク ロ プ ロ ス テ ノ ー ル 、
ダ ル マ ジ ン 、 共 立 、 東 京 、 日 本 ) を 投 与 し 、 そ の 8 時 間 後 に PRID を 除 去 し た 。 10 日 目 、PGF2α 投 与 か ら 56 時 間 後 に GnRH(Buserelin、Estmal、Intervet、 大 阪 、 日 本 ) を 投 与 し 、 さ ら に そ の 8 時 間 後 に 人 工 授 精 を 実 施 し た 。 子 宮 内 の
胚 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA数 は 、Rotor-Gene 6500 リ ア ル タ イ ム ロ ー タ リ ー ア ナ ラ イ ザ ー (Corbett Research、 シ ド ニ ー 、 オ ー ス ト ラ リ ア ) を 使 用 し て 、 一 部 修 正 を 加 え て 実 施 し た(Takeo et al. 2013)。 手 法 と し て 、 各 胚 を 6 µlの 溶 解 バ ッ フ ァ ー (20 mM Tris、0.4 mg / ml プ ロ テ イ ナ ー ゼ K、0.9%Nonidet-40、0.9% Tween 20) で 55°C で 30 分 間 、 続 い て 5分 間 95°C を 保 持 し た 。PCRプ ラ イ マ ー は 5'-ATTTACAGCAATATGCGCCC-3 ' お よ び
5'-AAAAGGCGTGGGTACAGATG-3'で あ り 、 酵 素 は SsoAdvancedTM Universal SYBR Green mix(Bio-rad、Hercules CA、 米 国 ) を 用 い た 。 PCRは 、95℃ で 3分 間 の 初 期 変 性 を 行 っ た 後 、98℃ で 5秒 間 、59℃ で 11秒 間 を 40 サ イ ク ル 行 っ た 。 SYBR Green 蛍 光 は 、 各 伸 長 ス テ ッ プ の 終 わ り に 測 定 し た 。 外 部 標 準 の コ
ピ ー を 表 す 10 倍 連 続 希 釈 を 使 用 し て 、 実 行 ご と に 標 準 曲 線 を 作 成 し た 。 使 用 し
た 外 部 標 準 は 、Zero Blunt TOPO PCRク ロ ー ニ ン グ キ ッ ト(Invitrogen、Carlsbad、 CA、USA)、 ベ ク タ ー に ク ロ ー ニ ン グ さ れ た 対 応 す る 遺 伝 子 の PCR 産 物 を 用 い た 。 ベ ク タ ー は 使 用 前 に シ ー ケ ン ス に よ っ て 挿 入 PCR 配 列 を 確 認 し た 。
Figure 7. 過 剰 排 卵 処 置 と 受 精 胚 回 収 の プ ロ グ ラ ム
膣 内 留 置 型 プ ロ ジ ェ ス テ ロ ン 製 剤 (PRID; PRID TEIZO, Ceva Santé Animale, Libourne, France)挿 入 時 を Day0と し て 、Day6~8日 間 に FSH (total 18 AU, Antrin, Kyouritsu, Tokyo, Japan)を 漸 減 投 与 し た 。Day8 の 朝 に PGF2
α(Dalmazin, Kyouritsu,
Tokyo, Japan)を 3ml 投 与 し 、 そ の 8 時 間 後 に PRID を 抜 去 し た 。 さ ら に Day10 の 朝 に GnRH を 4ml 投 与 し 、 投 与 か ら 8 時 間 後 に 人 工 授 精 を 行 っ た 。 人 工 授 精 か ら 6.5日 後 非 外 科 的 に 子 宮 洗 浄 を 行 い 、 受 精 胚 を 回 収 し た 。
6) 受 精 胚 に お け る 凍 結 保 存 、 融 解 お よ び 生 存 性
受 精 胚 は 、20%New Born Calf Serum(NBCS、Funacoshi Co. Ltd、Tokyo、 Japan)を 含 む PBSで 洗 浄 し た 後 、 凍 結 保 存 液(5% エ チ レ ン グ リ コ ー ル 、6% プ ロ ピ レ ン グ リ コ ー ル 、0.1 Mス ク ロ ー ス お よ び 4 mg / PBS中 の ml BSA) と 共 に
胚 を 0.25 ml の ス ト ロ ー (IVM Technologies、L'Aigle、 フ ラ ン ス ) に 入 れ 、 室 温
で 15 分 間 維 持 し 、 そ の 後 、 ス ト ロ ー を 緩 慢 凍 結 用 の プ ロ グ ラ ム フ リ ー ザ ー ( 藤 平 工 業 株 式 会 社 、 東 京 、 日 本 ) の ア ル コ ー ル 槽 に セ ッ ト し 、 液 体 窒 素 で 冷 却 し た ピ ン セ ッ ト を 用 い ス ト ロ ー に 植 氷 し た 。 -7℃ で 10 分 間 保 持 し た 後 、 -0.3℃ / minの 速 度 で -30℃ に 冷 却 し 、10 分 間 平 衡 化 し た 後 、液 体 窒 素 内 で 保 管 し た 。融 解 に つ い て 、ス ト ロ ー を 空 気 中 に 10 秒 間 保 持 し 、30℃ の 温 水 に 20秒 間 入 れ 完 全 に 解 凍 さ せ た 後 、胚 を IVC 培 地 で 洗 浄 し 、イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 で 培 養 し た 。解 凍 後24時 間 お よ び48時 間 で 胚 の 生 存 率 お よ び 透 明 帯 か ら 脱 出 し た 胚 の 割 合 を 調 べ た 。 ま た 胚 の 生 存 に つ い て は 、 融 解 後 の 受 精 胚 の 再 拡 張 を も っ て 形 態 的 に 判 断 し た 。 7 ) 免 疫 染 色 胚 盤 胞 の 免 疫 染 色 は 、Shiratsuki ら(2011)に よ っ て 以 前 に 報 告 さ れ た よ う に 実 施 し た 。 受 精 胚 を 4% パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド で 一 晩 固 定 し た 後 、0.25%Triton X‐100 を 含 む PBS (0.2% ポ リ ビ ニ ル ア ル コ ー ル (PVA) を 用 い て 室 温 で 1時 間 透 過 処 理 し た 。そ の 後 、ブ ロ ッ キ ン グ 溶 液(5%BSA、0.1%Tween 20、お よ び 5%
ヤ ギ 血 清 含 有 PBS; Funakoshi、Tokyo、Japan)内 で 1時 間 培 養 し た 。受 精 胚 を 、 SIRT1( ウ サ ギ ポ リ ク ロ ー ナ ル 、1:200;Santa Cruz Biothchnology、Santa Cruz、
CA、USA) に 対 す る 一 次 抗 体 を 用 い 、4℃ で 一 晩 処 理 し た 。 次 に 、 胚 を 二 次 抗 体 ( 抗 ウ サ ギ IgG(H + L)、F(ab ')2 フ ラ グ メ ン ト 、Alexa Fluor 555コ ン ジ ュ
ゲ ー ト 、1:1000、Cell Signaling Technology Inc.、Bevely, MA) と 1 時 間 培 養
し た 。 受 精 胚 を ス ラ イ ド ガ ラ ス 上 に DAPIを 含 む 退 色 防 止 溶 液 で マ ウ ン ト し 、 蛍
光 デ ジ タ ル 顕 微 鏡(BZ-8000; Keyence、Tokyo、Japan:緑 色 蛍 光 、感 度 ISO 200、
曝 露 1/6 秒 、 お よ び 青 色 蛍 光 、 感 度 ISO 200、 露 出 1/2秒 ) を 用 い 胚 の 蛍 光 画 像
を 撮 影 し た 。 上 記 の 手 順 を 使 用 し て 、 一 次 抗 体 を 使 用 せ ず に 陰 性 の 対 照 区 を 設 け
た 。ImageJ ソ フ ト ウ ェ ア (NIH, Bethesda, MD) を 使 用 し て 測 定 し 、 割 球 数 で
除 し 、 蛍 光 強 度 を 求 め た 。 8) 受 精 胚 移 植 凍 結 保 存 胚 は 封 入 さ れ た ス ト ロ ー と 共 に 移 植 前 ま で 液 体 窒 素 内 で 保 管 し 、 移 植 時 に 10 秒 間 室 温 で エ ア ー ソ ー イ ン グ し た 後 、30℃ の 温 湯 に つ け 融 解 し た 。 融 解 胚 を ス ト ロ ー か ら 子 宮 深 部 注 入 器 で あ る YTガ ン( 株 式 会 社 ヤ マ ネ テ ッ ク 、長 野 、 日 本)に 移 動 さ せ た 後 、YTガ ン に セ ッ ト し た 1ml シ リ ン ジ に よ っ て 黄 体 を 有 す る 側 の 子 宮 角 内 へ 注 入 し 移 植 し た 。 レ シ ピ エ ン ト 牛 は 、 発 情 日 か ら 7日 目 に 直 腸 検 査 に よ っ て 黄 体 が 確 認 さ れ た ホ ル ス タ イ ン 雌 牛 と し た 。 ま た レ シ ピ エ ン ト 牛 は 正 常 な 発 情 周 期 を 示 し 、 か つ リ ピ ー ト ブ リ ー ダ ー で は な い も の を 用 い た 。
た 。 受 精 後 2 日 目 に 分 割 胚 (> 4 細 胞 ) を ラ ン ダ ム に 選 択 し 、 分 割 胚 を 0( 対 照 区 )、1 お よ び 10µM レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 含 む IVC 培 地 で 7 日 間 培 養 し 、 そ の 後 胚 盤 胞 へ の 発 生 率 を 調 べ た 。 実 験 は 10 回 実 施 し た 。 試 験 2 短 時 間 の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理(6 時 間 ま た は 24 時 間 )が 胚 の 発 生 率 に 影 響 を 与 え 、SIRT1 発 現 レ ベ ル を 増 加 さ せ る か を 調 べ た 。 授 精 後 6 ま た は 7日 目 に 、 培 地 を 0(対 照 区)ま た は 1µMの レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 含 む IVC 培 地 に 交 換 し 、そ れ ぞ れ 24 時 間 お よ び 6 時 間 培 養 し た 。 処 理 時 間 お よ び レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 の 有 無(0µM、 1µM)で 胚 盤 胞 へ の 発 生 割 合 を 調 査 し た 。 ま た 、 ラ ン ダ ム に 選 択 さ れ た 胚 盤 胞 を 用 い て 、 免 疫 染 色 を 行 い SIRT1の 発 現 を 調 べ た 。 試 験 3 本 実 験 で は 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル の 凍 結 前 処 理 が 、 融 解 後 の 受 精 胚 の 生 存 性 や 品 質 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 調 べ た 。 受 精 胚 は 、 実 験 2で 説 明 し た 同 様 の 方 法 で レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 し た 。 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 後 、 胚 盤 胞 を IETS 標 準 に 基 づ い て 選 択 し 、 凍 結 保 存 後 融 解 し 、 生 存 性 と 透 明 帯 脱 出 率 を 調 査 し た 。 こ の 実 験 に お い て 、IETS 標 準 を 使 用 し て 良 好 な 胚 と し て 試 験 に 用 い ら れ た 胚 盤 胞 の 割 合 は 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 区 と 対 照 区 で 同 程 度 だ っ た (6時 間;対 照 区 :85.7% 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル :84.2% 、24 時 間;対 照 区 :90.6% 、レ ス ベ ラ ト ロ ー ル :87.7% )。 試 験 4
凍 結 保 存 前 後 の 胚 に お け る ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 に 対 す る レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 の 影 響 を 調 べ た 。 受 精 胚 は 実 験 2 と 同 様 に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 を 行 っ た 。 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 後 、 胚 盤 胞 を ラ ン ダ ム に 選 択 し 、 凍 結 保 存 前 お よ び 融 解 後 48時 間 の 胚 盤 胞 を ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 の 測 定 に 用 い た 。 試 験 5 体 外 お よ び 体 内 培 養 で 生 産 さ れ た 胚 盤 胞 に 対 す る レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 が 受 胎 率 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 検 討 し た 。 ド ナ ー 牛 の 体 内 で 生 産 さ れ た 受 精 胚 は 24 時 間 培 養 し た 場 合 、 ほ と ん ど の 胚 は 透 明 帯 か ら 脱 出 し 、 凍 結 保 存 や 胚 移 植 に 適 さ な い (IETS標 準 )。 よ っ て 、 体 内 受 精 胚 は 人 工 授 精 か ら 6.5日 後 に 子 宮 灌 流 に よ っ て 回 収 し 、 イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 で 6 時 間 1µM レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 し た 。 体 外 受 精 胚 は 、媒 精 後 6日 目 か ら 24 時 間 1µMレ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 し た 。 こ れ ら の 胚 を 凍 結 保 存 し て 融 解 し 、黄 体 を 有 す る 卵 巣 側 の 子 宮 角 に 移 植 し た 。 移 植 か ら 40 日 後 、 直 腸 検 診 に よ り 胎 児 膜 の 存 在 に 基 づ い て 受 胎 を 確 認 し た 。 10) 統 計 処 理 胚 盤 胞 形 成 の 割 合 を 、分 散 分 析 後(ANOVA)後 Tukey検 定 を 用 い て 比 較 し た 。ま た 生 存 率 と 透 明 帯 脱 出 率 の 分 析 に は カ イ 二 乗 検 定 を 使 用 し た 。 胚 盤 胞 の SIRT1
乗 検 定 で 分 析 し 、 体 内 胚 と 体 外 胚 を 合 わ せ た 総 受 胎 率 は マ ン テ ル ・ ヘ ン ツ ェ ル 法
第 三 節 結 果 初 期 分 割 胚 を 0、1、お よ び 10µM レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 含 む 培 地 で 培 養 し た 場 合 、 1µMレ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 が 最 も 高 い 発 生 率 と な り 、10µM は 胚 発 生 に 悪 影 響 を お よ ぼ し た(Table2; 0µM: 47.0%, 1 µM: 57.0%, 10 µM: 22.0%, P<0.05). 短 期 間 の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 が 胚 盤 胞 の 発 生 に 影 響 す る か ど う か を 検 討 し た と こ ろ 、24 時 間 と 6時 間 の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 は い ず れ も 胚 発 生 に 影 響 を 与 え ず 、IETS標 準 で 決 定 さ れ た 胚 盤 胞 の 形 態 は グ ル ー プ 間 で 類 似 し て い た 。(Table 3; 24 h; 0µM: 26.5 % vs. 1µM resveratrol: 27.6 %、 6 h: 0µM: 35.8 % vs. 1µM resveratrol: 38.4 %)。 一 方 で 、短 期 間 の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 に よ り 、6時 間 処 理 と 24 時 間 処 理 の 両 方 で SIRT1発 現 レ ベ ル が 大 幅 に 増 加 し た (Fig.8)。 凍 結 融 解 後 、 ほ と ん ど の 受 精 胚 は 形 態 学 的 に 損 傷 が み ら れ ず 、 そ の 割 合 は 2 つ の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 濃 度 (1µMと 0µM) の 間 で 同 程 度 だ っ た 。 た だ し 、 処 理 時 間 (6 お よ び 24 時 間 ) に 関 係 な く 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 前 処 理 を 行 っ た 受 精 胚 は 、 融 解 後48時 間 で の 透 明 帯 脱 出 率 が 有 意 に 向 上 し た(Table 4; 24 h; 0µM: 48.9 % vs. 1µM resveratrol: 70.5 %, 6h; 0µM: 51.9 % vs. 1µM resveratrol: 69.6 %, P< 0.05). レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 は 、 凍 結 前 胚 盤 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 に は 影 響 し な か っ た (Table 5; 24h; 0µM: 737,954 vs. 1µM resveratrol: 725,700、6h;
Figure8.6 時 間 お よ び 24 時 間 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 を 行 っ た 胚 の SIRT1 発 現 A) 免 疫 染 色 さ れ た SIRT1の 発 現 強 度 。 胚 盤 胞 を 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 含 む も し く は 含 ま な い 培 地 で 6 時 間 お よ び 24 時 間 培 養 し た も の 。非 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 を 行 っ た 胚 盤 胞 の 平 均 蛍 光 強 度 を 1.0 と し た 。 B~E)そ れ ぞ れ の 処 理 に お け る 胚 の 代 表 的 な 写 真 。B、D) 受 精 胚 を レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 6 時 間 お よ び 24 時 間 処 理 し た も の 。C,E)受 精 胚 を 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 含 ま な い 培 地 で 6時 間 及 び 24 時 間 処 理 し た も の 。 異 な る 上 付 き 文 字 aと b は 、P <0.05で 有 意 差 あ り 。 A Hayashi et al.(2018)Theriogenology
ー ル 処 理 と 凍 結 保 存 の 間 に 相 互 作 用 は 認 め ら れ な か っ た 。 24 時 間 処 理 胚 で は 、 解 凍 し た 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 は 新 鮮 胚 の そ れ よ り も 低 か っ た (Table5; 0µM: 新 鮮 胚 737,954、 凍 結 融 解 胚 264,730、1µM resveratrol: 新 鮮 胚 725,700、 凍 結 融 解 胚 489,840, P <0.05)、6時 間 の 処 理 時 間 で は ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 の 有 意 な 減 少 は 観 察 さ れ な か っ た 。 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 を 実 際 の 移 植 に 応 用 し た と こ ろ 、 体 内 生 産 胚 を 1µM レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で6時 間 処 理 す る と 、0µM処 理(60.5% )よ り も 高 い 受 胎 率(76.1% ) が 得 ら れ た 。媒 精 後 6日 目 に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 24時 間 処 理 し た 体 外 生 産 胚 は 、 移 植 試 験 を 行 っ た と こ ろ 55.9% の 受 胎 率 と な り 、 こ れ は 0µM 処 理 (41.8% ) よ り も 高 か っ た 。体 外 お よ び 体 内 で 生 成 さ れ た 胚 移 植 は ど ち ら も そ れ 単 独 で 有 意 に 達 し な か っ た が 、 合 計 す る と 無 処 理 胚 (50% ) に 比 べ て レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 胚 (67.5% ) は 有 意 に 高 い 受 胎 率 と な っ た (Table 6; P<0.05)。
第 四 節 考 察 本 研 究 で は レ ス ベ ラ ト ロ ー ル に よ る 胚 盤 胞 の 凍 結 前 処 理 に よ り 、 凍 結 融 解 後 の 胚 の 透 明 帯 脱 出 率 が 高 く な り 、 胚 盤 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア 数 が 増 加 す る こ と を 示 し た 。 さ ら に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 前 処 理 を 行 う こ と で 胚 移 植 後 の 受 胎 率 を 改 善 で き る こ と を 明 ら か に し た も の で あ る 。 高 濃 度(10µM)の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 添 加 は 受 精 胚 の 発 生 に と っ て 有 害 で あ り 、低 濃 度 (1µM) 胚 盤 胞 へ の 発 生 率 を 向 上 さ せ た こ と は 過 去 の 報 告 と 一 致 し て い る (Wang et al. 2014)。 よ っ て 以 降 の 試 験 で は 1µM 濃 度 の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 用 い て 胚 を 処 理 し た 。5日 間 の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 は 胚 盤 胞 の 発 生 を 改 善 さ せ た が 、 6 時 間 や 24 時 間 と い っ た 短 時 間 の レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 で は 無 処 理 胚 と 比 較 し て も 胚 発 生 に 影 響 を 及 ぼ さ な か っ た 。 こ の 結 果 に よ り そ の 後 任 意 に 選 ん だ 胚 に は 発 生 率 の 違 い に よ る バ イ ア ス が 含 ま れ な い と 考 え た 。 従 来 の 報 告 で は 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル は 卵 母 細 胞 と 受 精 胚 の SIRT1発 現 を 増 強 す る た め に 使 用 さ れ て お り 、処 理 時 間 は 1 ~7日 間 と な っ て い る(Takeo et al. 2014, Salzano et al. 2014 )。 今 回 の 試 験 で は 、 驚 く べ き こ と に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 が 6時 間 と 極 め て 短 時 間 で あ っ て も SIRT1 の 発 現 レ ベ ル を 高 め る こ と が 明 ら か に な っ た 。こ の 結 果 に よ り 体 内 受 精 胚 を 用 い た 6時 間 の 凍 結 前 処 理 と い っ た 、 国 内 に お け る 畜 産 現 場 で の 具 体 的 な 利 用 方 法 を 提 示 す る こ と が で き た 。
(Manipalviratn et al. 2011, Bang et al. 2016, Dai et al. 2015)。ま た 、Daiら は 、 マ ウ ス 卵 母 細 胞 で 凍 結 保 存 に よ り ミ ト コ ン ド リ ア の 形 態 変 化 が 起 き る こ と を 示 し て い る(Dai et al. 2015)。 こ れ ら の 報 告 と 同 様 に 、 本 試 験 に お い て も 融 解 し た 胚 盤 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 は 、 新 鮮 胚 の も の よ り 著 し く 少 な い こ と が 確 認 さ れ た 。 こ の 結 果 は 、 凍 結 保 存 が ミ ト コ ン ド リ ア の 完 全 性 ま た は 細 胞 代 謝 に 影 響 を 与 え 、 ミ ト コ ン ド リ ア 数 の 減 少 を 引 き 起 こ し た こ と を 示 唆 し て い る 。 卵 母 細 胞 と 初 期 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア 数 は ド ナ ー 間 で 異 な る こ と が 報 告 さ れ て い る (Takeo et al. 2013)。 本 研 究 で は 実 験 グ ル ー プ 間 で 凍 結 前 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 に 大 き な 差 が 観 察 さ れ た 。 こ れ ら は 2 つ の 実 験 が 異 な る 季 節 に 行 わ れ た た め 、卵 巣 群 の 違 い に よ っ て 引 き 起 こ さ れ た 可 能 性 が あ る と 推 測 し た 。SIRT1 は 、 PGC-1α の 脱 ア セ チ ル 化 と TFAMの 活 性 化 を 介 し て 、ミ ト コ ン ド リ ア の 生 合 成 に おいて主要な役割を果たすことが報告されている(Lagouge et al. 2006, Brenmoehl et al. 2013)。 こ の カ ス ケ ー ド を 刺 激 す る た め 、 ブ タ 卵 母 細 胞 を レ ス ベ ラ ト ロ ー ル で 処 理 す る と 、 ミ ト コ ン ド リ ア の 生 合 成 と 分 解 が 促 進 さ れ 、 ミ ト コ ン ド リ ア 機 能 が 改 善 さ れ た こ と が 報 告 さ れ て い る(Sato et al. 2014)。 本 研 究 で は 凍 結 保 存 前 の 新 鮮 胚 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 は 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 間 で 同 等 だ っ た 。ま た 8細 胞 期 胚 か ら レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 0.5µMを 含 む 培 地 で 5 日 間 処 理 し て も 、 生 産 さ れ た 胚 盤 胞 の ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 は 非 処 理 胚 と 差 が な か っ た と い う 報 告 が あ る (Abe et al. 2017)。 一 方 で 融 解 後 48 時 間 で は 、凍 結 前 に レ ス ベ ラ ト ロ ー ル 処 理 を 行 っ た 区 の 胚 盤 胞 で は 、処 理 時 間 に 関 係 な く 、 ミ ト コ ン ド リ ア DNA コ ピ ー 数 が 増 加 し た 。 さ ら に 、 レ ス ベ ラ ト ロ ー ル の 凍 結 前 処 理 に よ り 、 融 解 し た 胚 盤 胞 の 透 明 帯 脱 出 率 が 向 上 す る こ と を 明 ら