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2010年及び2012年臨床分離好気性グラム陰性菌の薬剤感受性サーベイランス

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(1)

〈原 著〉

2010

年及び

2012

年臨床分離好気性グラム陰性菌の

薬剤感受性サーベイランス

阿南直美

1

・山城秀仁

1

・高橋俊司

2

・菅野のぞみ

2

・賀来満夫

3

森兼啓太

4

・高野 操

5

・塩谷譲司

6

・中島啓喜

7

・小野由可

7

藤田信一

8

・千田靖子

8

・稲垣健二

9

・片山孝文

9

・松尾収二

10

河野 久

10

・西 功

11

・草野展周

12

・能勢資子

12

・原 文子

13

田仲祐子

13

・宮本仁志

14

・平松和史

15

・ 原克紀

16

森永芳智

16

・前田士郎

17

・上地幸平

17

・吉田 立

1 1塩野義製薬株式会社創薬疾患研究所 2市立札幌病院 3東北大学病院 4山形大学医学部附属病院 5新潟大学医歯学総合病院 6公益財団法人がん研究会有明病院 7社会福祉法人三井記念病院 8金沢大学附属病院 9独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院 10公益財団法人天理よろづ相談所病院 11大阪大学医学部附属病院 12岡山大学病院 13鳥取大学医学部附属病院 14愛媛大学医学部附属病院 15大分大学医学部附属病院 16長崎大学病院 17琉球大学医学部附属病院 (2018年4月4日受付) 2010年および2012年に全国の17医療施設において種々の臨床材料から分離され た好気性グラム陰性菌18菌属種,2,562株に対する各種抗菌薬のMICを微量液体希 釈法で測定し,抗菌活性を比較検討した。

近年問題視されている腸内細菌科細菌におけるextended spectrum β-lactamase(ESBL) 産生株の検出率は,Escherichia coli,Klebsiella pneumoniae,Klebsiella oxytocaそれぞ

(2)

れ,2010年は10.3%,3.7%,12.1%,2012年は22.5%,4.6%,9.6%であった。1992年よ り2年ごとに実施している感受性サーベイランス試験におけるESBL産生株検出率の経 年変化からは,2008年以降にESBL産生E. coliの増加傾向が示された。また,海外で増 加傾向が報告されているESBL産生K. pneumoniaeは,国内においては2008年の2.6%か ら2012年には4.6%と緩やかな増加傾向であった。ESBL産生 K. oxytocaは2008年の 6.8%から2010年に12.1%へ上昇がみられたが,2012年には9.6%を示した。ESBL産生 菌の増加に伴い,E. coliにおいて,ceftazidime,cefepimeのMIC90がそれぞれ2010年の 2 μg/mL,8 μg/mLから2012年では32 μg/mL,64 μg/mLの値を示した。一方,flomoxef やcefmetazoleについてはESBL産生菌の増加に関わらずMIC90の変動はなかった。 ブドウ糖非醗酵グラム陰性菌においては,ほとんどの抗菌薬に対する感受性は 2008年分離株の感受性測定結果と比較して大きく変化していなかった。注目される

多剤耐性菌の動向として,multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa の検出率は,

2008年の1.1%から2010年には5.8%と上昇したが,2012年には2.4%であった。海外 で問題視されているmultidrug-resistant Acinetobacterは,2010年臨床分離Acinetobacter 属において2株(3.2%)が検出された。

序文

現在,薬剤耐性菌は世界的な問題として注目さ れており,2015年の第68回世界保健機関総会で 採択された薬剤耐性(AMR)に関するグローバ ル・アクション・プランにおいて,加盟各国は 2年以内に薬剤耐性に関する国家行動計画を策定 することを求められていた1)。これを踏まえ,本 邦ではワンヘルス・アプローチの見解から薬剤耐 性対策アクションプランが策定された2)。その対 策の一つとして「動向調査・監視」が挙げられて いる。抗菌薬に対する臨床分離菌株の感受性状況 を継続的に調査することは,感受性動向を把握 し,薬剤耐性菌の拡散を防止する上で重要な情報 に成り得ると考えられる。 我々は 1992 年より隔年で全国から収集した臨 床分離株を対象にした薬剤感受性調査を行い,そ の成績を報告してきた3∼11)。今回,2010年および 2012 年に全国医療施設の各種臨床材料から分離 された好気性グラム陰性菌18菌属種,2,562株に おけるβ-ラクタム系薬(BLs)を中心とした各種 抗菌薬に対する感受性の調査結果を1992 年から の経年変化を交えて報告する。また,近年本邦に おいて検出率が上昇傾向であるextended spectrum β-lactamase(ESBL)産生腸内細菌科細菌や,代替 薬が存在しないことから脅威とされている多剤耐性 菌であるmultidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa (MDRP) 及びmultidrug-resistant Acinetobacter (MDRA)の検出状況,加えて,国内における 検出率は現時点では低いが,他国においては検出 率が高く問題視されている carbapenem-resistant enterobacteriaceae(CRE)の検出頻度についても 報告する。

材料と方法

1)使用抗菌薬 微量液体希釈法による MIC 測定時にはフロー ズンプレート(栄研化学)を使用した。測定した 抗菌薬は,ペニシリン系抗菌薬(PCs)として

(3)

ABPC), piperacillin (PIPC), tazobactam/PIPC

(TAZ/PIPC)を,セフェム系抗菌薬(CEPs)とし て cefazolin(CEZ),cefotiam(CTM),flomoxef (FMOX), latamoxef (LMOX), ceftriaxone (CTRX),ceftazidime(CAZ),cefotaxime(CTX),

cefozopran (CZOP), cefepime (CFPM), SBT/ cefoperazone (SBT/CPZ), cefditoren (CDTR), ceftibuten (CETB), cefcapene (CFPN), cefmetazole(CMZ)を,カルバペネム系抗菌薬 (CBPs)としてdoripenem(DRPM),meropenem (MEPM),imipenem(IPM),panipenem(PAPM), biapenem(BIPM),tebipenem(TBPM)を,モノ バクタム系抗菌薬として aztreonam(AZT)を, アミノグリコシド系抗菌薬(AGs)としてtobramycin (TOB),amikacin(AMK)を,ニューキノロン系 抗 菌 薬(FQs)と し て ciprofloxacin(CPFX), tosufloxacin (TFLX), levofloxacin (LVFX), garenoxacin(GRNX)を,マクロライド系抗菌薬 (MLs)としてazithromycin(AZM)を,その他の 抗菌薬としてcolistin(CL)およびsulfamethoxazole/ trimethoprim(ST)を使用した。なお,TAZ/PIPC はTAZ一定濃度(4 μg/mL)存在下にてPIPC希釈 系列を作製し,MIC等の数値はPIPCの濃度で表 記 し た。ST は 混 合 比 19 : 1 に て,ST の MIC は trimethoprimの濃度で表記した。SBT/ABPCは混 合比 1 : 2 にて,SBT/CPZ は混合比 1 : 1 で混合し, MICの数値は主剤である ABPC, CPZの濃度で表 記した。 各抗菌薬の適応菌種等を参考にし,適宜,菌種 に応じて測定抗菌薬を選択した。 2)使用菌株 全国の17医療施設(Table 1)における日常検査 において,種々の臨床材料から2010年,2012 年 に各々分離された好気性グラム陰性菌の各菌属種 を用いた。各菌株は抗菌薬に対する耐性度を考慮 せずに収集した。各菌株は感受性や分離部位を考 慮せずに収集されかつ重複例を含まず,各医療施 設より各菌種 3–13 株ずつの分与を受けた。各菌 種における検査材料別分離率については Table 2 に 示 す。収 集 後,各 菌 株 は Manual of Clinical

Microbiology Ninth Edition12)および Manual of

Clinical Microbiology 10th Edition13), Clinical

Microbiology Procedures Handbook 3rd Edition14)

に準じた方法で再同定を行い,菌属種名を決定し た後,全18菌属種,2,562株をMIC測定等の実験 に使用した。これら以外にMIC測定の精度管理用 として Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI)の指定株であるEscherichia coli ATCC 25922,

E. coli ATCC 35218, P. aeruginosa ATCC 27853, Haemophilus influenzae ATCC 49247, H. influenzae

ATCC 49766を測定対象菌種や測定培地に準じて 使用した15∼24)。菌株の再同定,薬剤感受性測定お よびH. influenzaeのβ-ラクタマーゼ産生性の確認 は株式会社LSIメディエンスで実施した。 3)抗菌薬感受性試験 MIC は CLSI の推奨法18∼24)に準じた微量液体 希釈法により測定した。Haemophilus属以外の菌 属種およびST以外の抗菌薬に対する感受性測定 は,カチオン濃度を調整したMueller-Hinton broth Table 1. 菌株収集施設(17施設 順不同)

(4)

(CAMHB)を使用した。Haemophilus属の測定に は,Haemophilus test medium(HTM)を使用した 微量液体希釈法で行った。STの測定には,日本化 学療法学会の標準法(微量液体希釈法)25)に準じ, CAMHB に 7.5% 馬溶血液を添加した培地を用い た。感性,中等度耐性,耐性の分類については CLSI判定基準23)に準じた。 4)Haemophilus属分類法について CLSI の分類23)に従い,phenotype 分類として β-lactamase 産 生 性 が 陰 性 か つ ABPC の MIC が

1 μg/mL 以下のものをβ-lactamase negative, ABPC-susceptible H. influenzae; BLNASとし,β-lactamase

産生性が陰性かつABPCのMICが2 μg/mLのもの をβ-lactamase negative, ABPC intermediate H.

influenzae; low-BLNAR, β-lactamase産生性が陰性

か つ ABPC の MIC が 4 μg/mL 以 上 の も の をβ-

lactamase negative, ABPC resistant H. influenzae; BLNAR, β-lactamase 産生性が陽性かつ ABPC の MIC が 4 μg/mL 以上のものをβ-lactamase positive, ABPC-resistant H. influenzae; BLPAR とした。 今

回,low-BLNARについてはBLNARとして集計を 行った。また,インフルエンザ菌遺伝子検出試薬 (湧永製薬)を用い,TEM遺伝子および ftsI遺伝子

変異(pbp3-1, pbp3-2)の検出を行った。これらの 有無により,genotypeとしてgBLNAS, gBLNAR,

gBLPAR, gBLPACR-I, gBLPACR-II の 5 タ イ プ に

分類した26)

5)ESBL産生株スクリーニング試験

E. coli, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Proteus mirabilis の ESBL 産生性の有無について

は,CLSI の M100-27th23)に準じて検査を実施し た。すなわち,CAZ, CTX, AZT, CTRX のいずれ かの MIC が 2 μg/mL 以上を示した菌株について, β-ラクタマーゼ阻害剤併用の効果をもって以下の ように定義した。CAZもしくはCTXのそれぞれ単 剤のときのMICと,clavulanic acid(CVA)4 μg/mL 混合条件下でのMICを比較した場合に,いずれか の薬剤で単剤に比べCVA混合条件下のMICが1/8 以下となる菌株をESBL産生株とした。 6)ESBL産生株のphenotype確認試験

ESBL 産生株と判定した E. coli, K. pneumoniae,

K. oxytoca, P. mirabilis に対し,シカジーニアス®

ESBL遺伝子型検出キット(関東化学)を用い,マ

ニ ュ ア ル に 準 じ て 5 種 類 の ESBL 関 連 遺 伝 子 Table 2. 検査材料別病原性細菌分離率

(5)

(blaCTX-M-1, blaCTX-M-2, blaCTX-M-9, blaTEM, blaSHV

の検出をMultiplex PCR法により検出した。 7)Multilocus sequence typing(MLST)

ESBL産生株と判定されたE. coliに対し,ゲノム 上の7つのhousekeeping遺伝子をそれぞれ増幅し た後,塩基配列を決定した27, 28)。結果はMLSTサイ ト29)を通じてアレルプロファイルを取得し,アレル プロファイルからsequence typeを検索し決定した。 8)倫理的配慮 本試験において使用した臨床分離株は,「医療・ 介護関係者事業者における個人情報の適切な取扱 いのためのガイドライン」を厳守して収集された臨 床分離株であり,患者に関する個人データ等は匿名 化し倫理的に配慮した。臨床分離株の収集に際して 倫理委員会の承認が必要な施設においては,それぞ れ適切に承認を得たのちに菌株の提供を受けた。

結果

1. 腸内細菌科 1)E. coli E. coli 156株(2010年)および173株(2012年)

に対する 29 抗菌薬の MIC range, MIC50, MIC90

Table 3に示した。

(6)

2010 年,2012 年 と も に,CBPs の MIC90

0.25 μg/mL 以 下,CEPs で は FMOX の MIC90

CBPs 同様に 0.25 μg/mL 以下であった。これらの

薬剤以外に,2010年,2012年ともにMIC90が1 μg/

mL 以下を示したのは LMOX および CL であっ

た。一方,2010 年と 2012 年との間で各種 BLs の

MIC90を比較したところ,FMOX, LMOX, SBT/

CPZ, CMZ 及び全ての CBPs について上昇は見ら

Fig. 1. Rates of extended-spectrum β-lactamase(ESBL)-producing Escherichia coli, Klebsiella

pneumoniae, Klebsiella oxytoca and Proteus mirabilis among isolates between 1992 and 2012

Fig. 2. Number of blaCTX-M genes among extented-spectrum β-lactamase (ESBL)-producing

(7)

れなかった。CAZ, CFPM, CETB, AZT について は,2010 年は 2–8 μg/mL の MIC90であったもの の,2012 年は 8–16 倍の MIC90の上昇が確認され た。その他の CEPs については,2008 年に MIC90 が 0.125–0.25 μg/mL を 示 し た CTRX や CZOP は 11),2010年,2012年ともにMIC 90は8 μg/mL以上 を示した。また,FQsに関しては2010年,2012年 ともに CEPs と同程度の MIC range を示し,感性 率は 68.6–70.5% であった。LVFX の MIC が 4 μg/ mL以上のFQs耐性株は2010年は48株(30.8%), 2012年は48株(27.7%)であった。 各収集年のE. coliにおけるESBL産生株の検出 率について確認したところ,ESBL 産生株は, 2010 年 度 は 16 株(10.3%),2012 年 度 は 39 株 (22.5%)認められ,2008年以前から比べると増加 傾向であった(Fig. 1)。このうち,2012年のESBL 産生株(39株)については,そのすべてがCTX-M typeであり,39株中27株がCTX-M-9グループで あった(Fig. 2)。さらに,2012年においては,我々 のこれまでの調査では検出されていなかったCTX-M-8グループのESBL産生E. coliが新たに検出さ れた。また,39株のESBL産生E. coliのうち26株 (66.6%)が世界流行型クローンST131であった。 2)K. pneumoniae K. pneumoniae 82 株(2010 年)お よ び 108 株 (2012年)に対する30抗菌薬の成績をTable 4に示 した。PIPCやTAZ/PIPC, AZMを除く全ての抗菌 Table 4. In vitro susceptibilities of Klebsiella pneumoniae

(8)

薬は,2010年,2012年ともにMIC90が4 μg/mL以 下であった。また,ESBL産生株と判定された菌 株 は,2010 年 は 3 株(3.7%),2012 年 で は 5 株 (4.6%)であり,2008年以前から続いて微増傾向 であった(Fig. 1)。 3)K. oxytoca K. oxytoca 58 株(2010 年)および 94 株(2012 年)に対する30抗菌薬の成績をTable 5に示した。 2010 年,2012 年 と も に CBPs お よ び FMOX, LMOX, CETB, TFLX の MIC90は,0.5 μg/mL 以下

で あ っ た。PIPC, TAZ/PIPC, CEZ, CTM, CTRX,

SBT/CPZでは2010年,2012年ともに32 μg/mL以 上の MIC90であった。CEPs において,2010 年か ら2012年にかけて耐性率が低下した薬剤はCEZ であった。 K. oxytocaにおけるESBL産生株は2008年まで は 0–6.8% を推移していたが,2010 年では 7 株 (12.1%),2012年は9株(9.6%)が検出され,2006 年以降,検出率は増加傾向にあった(Fig. 1)。 4)P. mirabilis P. mirabilis 57株(2010年),86株(2012年)に 対する29抗菌薬の成績をTable 6に示した。2010 年,2012 年ともに,CBPs の MIC90は 0.125–4 μg/ mL で あ っ た。CBPs 以 外 で は FMOX, LMOX,

(9)

CETB, TAZ/PIPC の MIC90は 1 μg/mL 以下であっ た。2008年の報告時11)に 0.063 μg/mLであった CTRX, CTX, CFPMの各MIC90は,2010年株では 64 μg/mL, 2012年株では1 μg/mL以下であった。 ま た,2010 年 に 77.2% で あ っ た CTRX, CTX, CFPM の 感 性 率 は 2012 年 は 90.7–93.0% で あ っ

た。Fig. 1 に示すように,ESBL 産生 P. mirabilis は,2006年に18.8%,2010年に21.1%と一過的に 検出率が上昇する年も見受けられたが,2012年で は8.1%であった。 5)Proteus vulgaris P. vulgaris 59株(2010年),65株(2012年)に 対する29抗菌薬の成績をTable 7に示した。CEPs で は 2010 年,2012 年 と も に CAZ, CTX, CFPM, CDTR, CETB および CFPN の MIC90は 0.25 μg/mL 以下であった。CBPs, FQsは2010年,2012年とも に MIC90は 4 μg/mL 以下であった。2010 年から 2012 年にかけて MIC が変動したものは CTRX で あり,2010年の感性率および耐性率が各々40.7%, 59.3% であったのに対し,2012 年は 90.8%, 9.2% であった。IPM においても,2010 年に 20.3% で あった耐性率は,2012年には3.1%に低下した。 6)Providencia属

Providencia 属として Providencia rettgeri, Providencia stuartii, Providencia alcalifaciens 32

株(2010年),44株(2012年)に対する27抗菌薬 Table 6. In vitro susceptibilities of Proteus mirabilis

(10)

の成績をTable 8に示した。CEPsはいずれの薬剤 も幅広い MIC range を示した。このうち,CETB は 2010 年,2012 年通じて 0.063 μg/mL の MIC90 であった。CBPs では,2010 年に DRPM, MEPM, IPMに対して耐性を示す株(CRE)が2株(6.3%) 確認されたが,2012 年では IPM に対して耐性を 示す1株(4.5%)が認められたのみで,CREは認 められなかった。 7)Morganella morganii M. morganii 55株(2010年),68株(2012年)に 対する 27 抗菌薬の成績を Table 9 に示した。BLs の中では,2010年,2012年ともにCFPMのMIC90 は 0.063 μg/mL, TAZ/PIPC の MIC90は 0.5 μg/mL であった。CBPsにおいて,2010年,2012年とも にMIC90が1 μg/mL以下であった薬剤は,DRPM, MEPM であり,感性率は 100% であった。一方, IPMはMIC90の変動はなかったが,耐性率は2010 年の63.6%から2012年には35.3%となった。FQs では 2010 年に 0.125–2 μg/mL であった MIC90は, 2012 年には 1–8 μg/mL を示し,2010 年から 2012 年のMIC90は4–8倍の上昇であった。 8)Citrobacter属

Citrobacter 属として Citrobacter freundii, Citro-bacter braakii, CitroCitro-bacter werkmanii, CitroCitro-bacter youngaeの54株(2010年),79株(2012年)に対

する26抗菌薬の成績をTable 10に示した。 Table 7. In vitro susceptibilities of Proteus vulgaris

(11)

CBPs お よ び CZOP, CFPM を 除 く BLs で は, 2010 年,2012 年ともに MIC90は 16 μg/mL 以上で

あった。この傾向は 2008 年11)と同様であった。

CBPsでは,2010年,2012年ともにDRPM, MEPM

のMIC90は 0.063 μg/mLであった。一方で,DRPM,

MEPM, IPM に対し耐性であった CRE 株が 2010

年に 1 株検出された。2012 年には DRPM, IPM に 対し耐性を示した株が1株確認された。 9)Enterobacter cloacae E. cloacae 68株(2010年),80株(2012年)に 対する26抗菌薬の成績をTable 11に示した。 CBPs, CZOP, CFPM を除く BLs では,2010 年, 2012 年ともに MIC90は 16 μg/mL 以上であった。 CTRX, CAZ, CTX, CETB, CMZ の 耐 性 率 は 25% 以上であった。CBPsでは,2010年,2012年とも に DRPM, MEPM, BIPM の MIC90は 0.5 μg/mL 以

下であった。DRPM, MEPM, IPM に耐性の CRE は2010年に2株,2012年に1株認められた。 10)Enterobacter aerogenes E. aerogenes 44 株(2010 年),66 株(2012 年) に対する26抗菌薬の成績をTable 12に示した。 CBPsとFQsのMIC90は,2010年,2012年とも に2 μg/mL以下であり,耐性株は見出されなかっ た。一方,CBPs を除く BLs の MIC90は,CZOP, CFPMにおいて1 μg/mL以下であったが,他薬は いずれも4 μg/mL以上であり,CTRX, CAZ, CTX, CETBでは耐性を示す株が 2010 年に 20.5–25.0%, 2012年では13.6–15.2%の割合で認められた。

(12)

11)Serratia marcescens S. marcescens 88株(2010年),103株(2012年) に対する26抗菌薬の成績をTable 13に示した。 CEPs の中では,2010 年,2012 年ともに CAZ, CZOP および CFPM の MIC90は 0.5 μg/mL 以下で あった。FQs では 2012 年に MIC の測定範囲以上 を示す耐性株が1株検出された。また,2010年に おいては,IPMに対し耐性を示す株が3株,IPM およびDRPMに対し耐性を示す株が1株検出され た。2012 年においては DRPM, MEPM, IPM に耐 性を示す株が1株,MEPMのMICが8 μg/mLの株 が1株検出された。

2. Moraxella catarrhalis, Haemophilus属 1)Moraxella catarrhalis M. catarrhalis 51株(2010年),49株(2012年) に対する26抗菌薬の成績をTable 14に示した。 CBPsおよびFQsでは,2010年,2012年通じて MIC90は 0.063 μg/mLであった。また,TAZ/PIPC に お い て も,MIC90は 0.063 μg/mL で あ っ た。 2012 年においては,2010 年には未検出であった AZMに対するMICが >64 μg/mLの耐性株が2株 検出された。 2)H. influenzae H. influenzae 78 株(2010 年),お よ び 94 株

(2012年)について,BLNAS, BLNAR, BLPARの 分類を行ったところ,2010年ではBLNAS 30株, Table 9. In vitro susceptibilities of Morganella morganii

(13)

BLNAR 35株,BLPAR 13株,2012年ではBLNAS 53株,BLNAR 33株,BLPAR 8株であった。

Table 15 に BLNAS, Table 16 に BLNAR, Table 17にBLPARとそれぞれの成績を示した。 H. influenzae 全株に対しては,BLs の感性率の 低下がみられた。特に,BLNAR, BLPARにおける CETB の 感 性 率 は,2010 年 に そ れ ぞ れ 54.3%, 76.9% であったが,2012 年にはそれぞれ 36.4%, 50.0% に 低 下 し た。BLNAS, BLPAR に お け る CBPsやPIPC/TAZの感性率は,概ね100%であっ

た。FQsのMIC90は,BLNAS, BLNAR, BLPARの

いずれに対しても 0.063 μg/mLであった。 H. influenzaeにおけるABPC非感性株(BLNAR + BLPAR)の検出率は,2006年から2010年まで は経年的に増加傾向であったが,2012年では減少 傾向であった。BLNAR単独については,2000年 から2012年まで25–45%の検出率であった(Fig. 3a)。2010 年,2012 年において BLNAS と分類さ れた割合は各々 38.5%, 56.4% であったが,PCR 法により genetic BLNAS と判定された割合は, 2010 年においては 19.0%, 2012 年では 31.9% と, ABPC 感受性による判定より低い検出率を示し (Fig. 3b),ABPC感性と判定された株の約5割の 株に何らかのPBP3変異が存在した。 3)Haemophilus parainfluenzae H. parainfluenzae 30株(2010年),および31株 (2012年)に対する21抗菌薬の成績をTable 18に 示した。 2010年,2012年ともに,CBPsのMIC90は1 μg/ mL以下であり,感性率は100%であった。ABPC の MIC90は 2010 年 に 8 μg/mL, 2012 年 に 2 μg/mL

(14)

であった。ABPCの2008年のMIC90は1 μg/mLで あり,ABPC耐性株も2008年には検出されなかっ たが11),2010年に検出されたABPC耐性株は5株 (16.7%),2012年には3株(9.7%)であった。CEPs の CAZ や CFPM に お い て,2010 年 の MIC90 4–8 μg/mLであったが,2012年は0.125–0.25 μg/mL であった。 3. ブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌 1)P. aeruginosa P. aeruginosa 86株(2010年),123株(2012年) に対する20抗菌薬の成績をTable 19に示した。 P. aeruginosaはいずれのカテゴリーの抗菌薬に 対しても感受性は低かった。中でも 2010 年は 2008年11)と比較すると抗菌薬全般において感受 性の低下が認められ,2010年では,MIC90はほと んどの抗菌薬で32 μg/mL以上であった。2010年, 2012年ともにMIC90が感性を示した薬剤はCL及 びTOBであり,MIC90はいずれも2 μg/mLであっ た。2010 年 に 16–64 μg/mL で あ っ た CBPs の MIC90は,2012年には8–32 μg/mLであった。この 傾 向 は 2010 年 と 2012 年 の 間 に お け る FQs の MIC90においても同様であった。 P. aeruginosaにおける抗菌薬耐性率の経年変化 をTable 20に示した。

IPM, CPFX, AMK の MIC がそれぞれ 16 μg/mL

以上,4 μg/mL以上,64 μg/mL以上である MDRP の検出率は,2010 年に 5.8% であり,2008 年以 前から上昇傾向であったが,2012 年は 2.4% で あ っ た。ま た,各 カ テ ゴ リ ー か ら 選 出 し た P.

aeruginosa に 抗 菌 活 性 を 有 す る 9 剤(DRPM,

MEPM, IPM, CAZ, CFPM, TAZ/PIPC, TOB, AMK,

(15)

CPFX)に対する耐性率を調べたところ,9剤すべ てに耐性を示す株は2002年,2006年,2010年に 各々 1 株で 1% 前後の検出率であった。これら薬 剤の17年間における耐性率の変動は,CBPsの中 では DRPM が最も低く,2010 年では 20.9% の検 出,他の年度では概ね16%以下であった。CBPs 以外では TOB, AMK において,1996 年には 10% 以上であった耐性率が,2004年以降は10%以下, 2012 年には TOB で 4.1%, AMK で 0% であった。 (Table 19, 20) 2)Burkholderia cepacia B. cepacia 20株(2010年),29株(2012年)に 対 す る 15 抗 菌 薬 の 成 績 を Table 21 に 示 し た。 2012年測定結果においてMIC90が8 μg/mLであっ た MEPM や DRPM 以外は,各抗菌薬における MIC90は16 μg/mL以上であった。 3)Stenotrophomonas maltophilia S. maltophilia 49株(2010年)と69株(2012年) に対する18抗菌薬の成績をTable 22に示した。 2010年,2012年ともにMIC90が4 μg/mL以下で あ っ た TFLX を 除 き,BLs, CL, TOB, AMK の MIC90は32 μg/mL以上であった。この傾向は2008 年11)と同様であった。2010 年までは MIC 90 8 μg/mL 以上と耐性域にあった ST が,2012 年の MIC90は 0.5 μg/mL で あ り,耐 性 率 も 2010 年 の 12.2%から2012年の4.3%に低下した。 4)Acinetobacter属 Acinetobacter属43株 (2010年),91株 (2012年) に対する19抗菌薬の成績をTable 23に示した。 Table 12. In vitro susceptibilities of Enterobacter aerogenes

(16)

CBPs の MIC90は 2010 年,2012 年ともに 0.25– 1 μg/mLであり,2008年11)までと同様のMIC 90 あった。CBPsを除くBLsのMIC90は4 μg/mL以上 であった。CLのMIC90は2010年で4 μg/mL, 2012 年で 2 μg/mL であり,各々の年度における CL 耐 性率は,2010 年が 32.6%, 2012 年が 8.8% であっ た。このうち,CLのMICが16 μg/mL以上の株が 2010 年に 1 株(2.3%),2012 年には 4 株(4.3%) 認められた。

考察

我々は,1992年から2008年の隔年で実施して きた過去 9 回3∼11)の調査に引き続き,2010 年, 2012年に全国の17医療施設で各種臨床材料から 分離された好気性グラム陰性菌18菌種属,2,562 株について,各種抗菌薬のMIC測定を行い,各種 抗菌薬における抗菌活性の調査を行った。 本報告では,ESBL産生株の急激な増加と,そ れに伴うE. coliにおけるMIC90の上昇が確認され た。2010年から2012年にかけて,ESBL産生株の 検出率が上昇したE. coliでは,ESBL産生株のス クリーニングに使用する CAZ や AZT の MIC90

ついても16倍以上の変動が認められた。Fig. 2で 示したように,CAZ 分解能の高い CTX-M-9 グ ループの検出率の増加も確認されていることか ら,MIC90の上昇とESBL産生菌の検出率との相 関が示唆された。Fig. 1 に示すように ESBL 産生 E. coli の検出率は 2008 年から 2010 年にかけて 各々 3.8% から 10.3% と,約 2 倍以上の増加であ り,更に,2012年には22.5%と,過去20年間にお いて最も高い値を示した。山口ら30)は,2009年

(17)

臨床分離株において,E. coliで10.4%, K. pneumoniae で 2.5% の ESBL 産生株検出率と報告しており, 我々の 2010 年臨床分離株における ESBL 産生株 検出率と同程度であった。また,Chongら31)も, 2010 年 に ESBL 産 生 E. coli が 10.3%, 2011 年 に 14.3% の検出率であったと報告しており,2010 年以降,本邦における ESBL 産生 E. coli が増加 傾向にあることが伺える。また,ESBL 産生 K. pneumoniaeについては,1992年から2008年を通 じて2%前後の検出率を保っていたが,2010年か ら2012年にかけて上昇傾向に転じていた。 海外の報告では,Luら32)が,2009年から2010 年のアジア環太平洋地域での尿路感染症分離株の 成績において,1,762 株中 28.2% が ESBL 産生株 であったと報告している。この時の本邦周辺各国 におけるESBL産生株の検出率は,ベトナムや中 国が 50% 以上と非常に高く,韓国,台湾等では 15–20%であった。元来,海外において検出され るESBL産生株はTEM型やSHV型が主流であっ たが,近年では本邦同様に CTX-M型の検出頻度 が高くなっている。ESBL産生株の検出率が高い 中国においては,2012年から2013年にかけて収 集された ESBL 産生 E. coli のうち 66.9% が CTX-M-1 typeと報告されている33)。隣国韓国において は,Kimら34)が2008年から2011年に検出された ESBL 産生 E.coli について M-1 および CTX-M-9 type遺伝子保有株が優位に検出されたと報告 している。我々のサーベイランス試験における 2000年から2010年臨床分離株において検出され た E. coli の ESBL 産 生 株 に つ い て は,す べ て CTX-M typeであり35),2010年,2012年について はCTX-M-9 typeが大部分を占め,三好らの報告36)

(18)

とも合致していた。また,我々は世界的流行ク ローンである ST131 が 2010 年 ESBL 産生 E. coli において 63% と半数以上を占めていたことを既 に報告している35)。今回,2012 年に検出された ESBL 産 生 E. coli に お い て も 66.7% が ST131 で あったことから,2010年に引き続き国内において 世界的流行クローンが半数以上を占めており,ま た,近年の国内および周辺各国の CTX-M型遺伝 子保有 ESBL 産生 E.coli の伝播状況に鑑みると, 今後もESBL産生株の検出状況については,その 動向を追跡していく必要があると考えられる。 また,ESBL産生E. coliの多くがFQs耐性を示 す傾向にあることは既に複数の報告があり,動向 が注目される薬剤耐性と言える。2010年,2012年 についても FQs 耐性 E. coli は 30% 前後の検出率 であったが,AMR アクションプランにおいて FQs 耐性 E. coli については 2020 年までに耐性菌 検出率を 25% まで低下させることが設定目標値 と掲げられており,今後も注視する必要があると 考えられる。 H. influenzae に お け る BLNAR に つ い て は, 我々は 2008 年のサーベイランス報告において増 加傾向であると報告した11)。BLNARの検出頻度 は,1996年以降2000年にかけて急激に上昇し7) 2000年に37%を示した以降は,2012年まで35% 前後であった。依然として高い検出率であり,今 後も動向に注意が必要であると考えられる(Fig. 3)。また,PBP3に変異を有する菌株の検出率は 2000 年から 2008 年まで 40–60% 前後で推移して いた11)。今回の検出率は,2010年は81.0%, 2012

Table 15. In vitro susceptibilities of β-lactamase-negative ABPC-susceptible Haemophilus

(19)

年は 68.1% であり,2004 年以降 60% 以上の高い 数値を示した。ABPCに対する感受性での分類と 遺伝子型に基づく分類方法26)の2法間において, BLNAR と gBLNAR の検出率に差が生じた点に ついては,同様の傾向が他の日本国内の臨床分離 株においても報告されている。高倉ら37)も,2009 年 か ら 2010 年 に か け て の BLNAR の 検 出 率 は 62.4%, gBLNAR 及 び gLow-BLNAR の 検 出 頻 度 は72.6%と,遺伝子型で分類した場合のgBLNAR の方が検出頻度は高くなる傾向を報告している。 これらは,BLNAS中にはPBP3に変異が生じ耐性 化の要因を既に有している gBLNAR が存在して いることを示唆しており,ABPCに対し感性を示 しながらABPC耐性化リスクを保有した株が含ま れていると考えられることから,耐性の動向を追 うには両面からの確認が必要であると考えられ る。 P. aeruginosaにおいて,抗緑膿菌活性を有する PCs, CBPs, FQs, AGs, CEPs より 9 剤 (DRPM, MEPM, IPM, CAZ, CFPM, TAZ/PIPC, TOB, AMK, CPFX)を選択し,各薬剤に対する耐性化率の解 析を行った(Table 20)。我々の2008年検出株まで の報告3∼11)では,それぞれ報告当時の基準を用い て耐性化率を算出していたため,今回 2008 年 までの過去の結果についても2012 年に更新され た CLSI の新基準を用いて新たに算出し直した。 MDRP の検出率については,1996 年,2002 年, 2012年と数年おきに5%前後まで検出率が増加す る年度もあるが,概ね2%前後と変動はなかった。 9剤中すべてに耐性を示す株についても,数年ご

Table 16. In vitro susceptibilities of β-lactamase-negative ABPC-resistant Haemophilus

(20)

とに1株ずつ検出される以外は,概ね活性を有す る薬剤が存在する状態であり,各医療施設の緑膿 菌感染症に対する耐性化阻止対策の結果が現れて いると考えられる。 近年海外においては MDRAが増加傾向にある ことが報告されている。MDRAについては,2010 年 に IPM, AMK, CPFX の MIC が そ れ ぞ れ 16 μg/

mL以上,32 μg/mL以上,4 μg/mL以上の検出株が 2株(3.2%)検出されたが,2012年は未検出であっ た38)。また,IPM耐性株については,2010年に3 株(7.0%),2012年に2株(2.2%)の検出に留まっ ており,2008年以前のデータ11)から引き続き,国 内においてMDRAまたはIPM 耐性株の検出率が 上昇している傾向は認められなかった。一方,海 外におけるサーベイランス報告では,韓国で2011 年に検出された Acinetobacter 属の IPM に対する 耐 性 率 は 55.4% で あ っ た39)。中 国 の サ ー ベ イ ランス報告においては,2009 年より IPM 耐性 Acinetobacter 属が急増し,2009 年に 60.4%, 2010 年に 85.2%, 2011 年に 90.8%と高い検出率を示し ている40)。2008年以降,国内において急激に増加 したESBL産生E. coliの世界流行株ST131の検出 と同様に,海外から日本国内への多剤耐性菌の流 入は否定できない状況と考えられる。現時点にお ける日本国内でのAcinetobacter属のCBPs耐性率 や MDRA 検出率は低いものの,今後も注意深く 感受性結果を精査していく必要があると考える。 今回の臨床分離株に対する薬剤感受性サーベイ ランス試験において,注目すべき動向が何点か確 認された。感受性の動向は年々変容し続けるた Table 17. In vitro susceptibilities of β-lactamase-positive ABPC-resistant Haemophilus

(21)

Fig. 3. Rates of phenotype (a) and genotype (b) in clinical strains of Haemophilus influenzae isolated from 2000 to 2012

(22)

Table 18. In vitro susceptibilities of Haemophilus parainfluenzae

(23)

め,このような全国規模の感受性調査は継続的な 実施が重要である。今回の測定結果では,ESBL 産生菌のように増加が認められた例だけではな く,微数ながら耐性株が検出された例も見受けら れ,引き続き注意は必要であり,今後も各医療施 設での薬剤感受性サーベイランスの実施を継続し ていきたいと考えている。 利益相反 著者の阿南直美,山城秀仁,吉田立は塩野義製 Table 20. Rates of antimicrobial resistance in Pseudomonas aeruginosa clinical isolates from

1996 to 2012

(24)

薬株式会社の社員である。著者の賀来満夫は,塩 野義製薬株式会社,ムンディファーマ株式会社, MSD株式会社,第一三共株式会社,大正富山医薬 品株式会社より講演料を,アズビル株式会社より 研究費を,大日本住友製薬株式会社,アステラス 製薬株式会社より奨学寄附金を受けている。他の 著者は申告すべきものはなし。

Table 22. In vitro susceptibilities of Stenotrophomonas maltophilia

(25)

謝辞 本稿を終えるに当たり,臨床分離株薬剤感受性 サーベイランスに使用した菌株の提供に御協力い ただいた名古屋大学医学部附属病院の諸先生方に 深謝致します。 本研究を実施するにあたり,ご協力を賜りまし たシオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社薬 効評価I部門感染症IIグループの皆様に感謝いた します。

引用文献

1 World Health Organization: Global action plan on antimicrobial resistance: http://www.who.int/ antimicrobial-resistance/publications/global-action-plan/en/: 20183月現在 2)厚生労働省:薬剤耐性(AMR)対策につい て:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/ bunya/0000120172.html: 20183月現在 3)佐々木 緊,長野 馨,木村美司,他:種々の 臨床分離株の各種抗菌薬に対する感受性サー ベイランス。Jpn. J. Chemother. 1995; 43: 12– 26. 4)長野 馨,木村美司,東山伊佐夫,地主 豊, 佐々木 緊,吉田 勇:種々の臨床分離株の各 種抗菌薬に対する感受性サーベイランス―その 21994年度分離グラム陰性菌について―。 Jpn. J. Chemother. 1996; 44: 610–25. 5)吉田 勇,長野 馨,木村美司,東山伊佐夫, 佐々木 緊:種々の臨床分離株の各種抗菌薬 に 対 す る 感 受 性 サ ー ベ イ ラ ン ス ― そ の2 1996年度分離グラム陰性菌について―。Jpn. J. Chemother. 1998; 46: 343–62. 6)吉田 勇,東山伊佐夫,木村美司,佐々木緊: 各種抗菌薬に対する臨床分離株の感受性サー ベイランス―その21998年分離グラム陰性 菌―。Jpn. J. Chemother. 2000; 48: 610–32. 7)吉田 勇,杉森義一,東山伊佐夫,木村美司, 山野佳則:各種抗菌薬に対する臨床分離株の 感受性サーベイランス―2000年分離グラム陰 性 菌 に 対 す る 抗 菌 力 ―。Jpn. J. Chemother. 2003; 51: 209–32. 8)吉田 勇,藤村享滋,地主 豊,東山伊佐夫, 杉森義一,山野佳則:各種抗菌薬に対する 2002年臨床分離好気性グラム陰性菌の感受性 サーベイランス。Jpn. J. Chemother. 2006; 54: 355–77. 9)吉田 勇,藤村享滋,伊藤喜久,他:各種抗 菌薬に対する2004年臨床分離好気性グラム陰 性 菌 の 感 受 性 サ ー ベ イ ラ ン ス。Jpn. J. Chemother. 2008; 56: 562–79. 10)吉田 勇,山口高広,伊藤喜久,他:各種抗 菌薬に対する2006年臨床分離好気性グラム陰 性菌の感受性サーベイランス。Jpn. J. Antibiot. 2010; 63: 457–79. 11)吉田 勇,山口高広,工藤礼子,他:各種抗 菌薬に対する2008年臨床分離好気性グラム陰 性菌の感受性サーベイランス。Jpn. J. Antibiot. 2012; 65: 73–96.

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15 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLSI: Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically, Approved Standard-Eighth Edition M07-A8. CLSI, Wayne, PA: 2009.

16 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLSI: Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically, Approved Standard-Ninth Edition M07-A9. CLSI, Wayne, PA: 2012.

17 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLSI: Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically, Approved Standard-Tenth Edition M07-A10. CLSI, Wayne, PA: 2015.

18 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLSI: Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing; Nineteenth Informational Supplement, M100-S19. CLSI,

(26)

Wayne, PA, 2009.

19 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLSI: Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing; Twenty-Second Informational Supplement, M100-S22. CLSI, Wayne, PA, 2012.

20 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLS: Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing; Twenty-Third Informational Supplement, M100-S23. CLSI, Wayne, PA, 2013.

21 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLSI: Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing; Twenty-Forth Informational Supplement, M100-S24. CLSI, Wayne, PA, 2014.

22 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLSI: Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing; Twenty-Fifth informational Supplement, M100-S25. CLSI, Wayne, PA, 2015.

23 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLSI: Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing; Twenty-Seventh informational Supplement, M100-S27. CLSI, Wayne, PA, 2017.

24 Clinical and Laboratory Standards Institute

CLS: Methods for Antimicrobial Dilution and Disk Susceptibility Testing of Infrequently Isolated or Fastidious Bacteria; Approved Guideline-Second Edition, M45-A3. CLSI, Wayne, PA, 2015. 25)日本化学療法学会抗菌薬感受性測定法検討委 員 会 報 告(1989年):微 量 液 体 希 釈 に よ る MIC測定法(微量液体希釈法)―日本化学療法 学会標準法―。Chemotherapy 1990; 38: 102–5. 26)生方公子,千葉菜穂子,小林玲子,長谷川恵 子,紺野昌俊:本邦において1998年から2000 年の間に分離されたHaemophilus influenzae 分子疫学解析 ―肺炎球菌等による市中感染 症研究会収集株のまとめ―。 Jpn. J. Chemother. 2002; 50: 794–804.

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Klebsiella pneumoniae Nosocomial Isolates. J.

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29 All species MLST databases and published schemes: https://pubmlst.org/databases.shtml 30)山口惠三,石井良和,岩田守弘,他:Meropenem

を含む各種注射用抗菌薬に対する2009年臨床 分離株の感受性サーベイランス。Jpn. J. Antibiot. 2011; 64: 53–95.

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(27)

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Antimicrobial susceptibility of clinical isolates of

aerobic Gram-negative bacteria in 2010 and 2012

Naomi Anan

1

, Hidenori Yamashiro

1

, Shunji Takahashi

2

, Nozomi Kanno

2

,

Mitsuo Kaku

3

, Keita Morikane

4

, Misao Takano

5

, Joji Shiotani

6

,

Hiroyoshi Nakajima

7

, Yuka Ono

7

, Shinichi Fujita

8

, Yasuko Senda

8

,

Kenji Inagaki

9

, Takafumi Katayama

9

, Shuji Mastuo

10

, Hisashi Kono

10

,

Isao Nishi

11

, Nobuchika Kusano

12

, Motoko Nose

12

, Ayako Hara

13

,

Yuko Tanaka

13

, Hitoshi Miyamoto

14

, Kazufumi Hiramatsu

15

, Katsunori Yanagihara

16

,

Yoshitomo Morinaga

16

, Shiro Maeda

17

, Kohei Uechi

17

and Ryu Yoshida

1 1)

Drug Discovery & Diseases Research Laboratory, Shionogi & Co., Ltd.

2)

Sapporo City General Hospital

3)

Tohoku University Hospital

4)

Yamagata University Hospital

5)

Niigata University Medical & Dental Hospital

6)

The Cancer Institute Hospital of JFCR

7)

Mitsui Memorial Hospital

8)

Kanazawa University Hospital

9)

Japan Community Health care Organization Chukyo Hospital

10)

Tenri Hospital

11)

Osaka University Hospital

12)

Okayama University Hospital

13)

Tottori University Hospital

14)

Ehime University Hospital

15)

Oita University Hospital

16)

Nagasaki University Hospital

17)

University Hospital of the Ryukyus

(28)

We determined MICs of antibacterial agents against 2,562 clinical strains of aerobic

Gram-negative bacteria

18 genus or species

isolated at 17 facilities across Japan in 2010 and 2012.

The ratio of strains producing extended-spectrum β-lactamases

ESBL

had a trend to

increase until 2012. The prevalence of ESBL-producing Escherichia coli increased from 10.3%

of all isolated E. coli in 2010 to 22.5% in 2012, which was significant increase from 3.8% in

2008 reported on our previous surveillance. The prevalence of ESBL-producing Klebsiella

pneumoniae increased slightly from 3.7% in 2010 to 4.6% in 2012. Although the prevalence of

ESBL-producing Klebsiella oxytoca decreased from 12.1% in 2010 to 9.6% in 2012, our previous

surveillance revealed the gradual increase of the ratio of ESBL-producing K. oxytoca from 3.2%

in 2006 to 12.1% in 2010. With these increase of ESBL-producer, the MIC

90

s of ceftazidime and

cefepime against E. coli showed significant increase from 2 μg/mL and 8 μg/mL in 2010 to 32 μg/

mL and 64 μg/mL in 2012, respectively. On the other hand, the MIC

90

s of flomoxef and

cefmetazole against E. coli were maintained as similar level between 2010 and 2012.

Against glucose-non-fermentative Gram-negative bacteria, the activities of most

antibacterial agents were similar to those against the isolates in 2008.

The ratio of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa increased from 1.1% in 2008 to

5.8% in 2010, however, it decreased to 2.4% in 2012. The multidrug-resistant Acinetobacter were

3.2% and 0% from all isolated Acinetobacter spp. in 2010 and in 2012, respectively.

Table 3. In vitro susceptibilities of Escherichia coli
Fig. 2. Number of bla CTX-M  genes among extented-spectrum β-lactamase  (ESBL) -producing  Escherichia coli isolates between 1992 and 2012
Table 7. In vitro susceptibilities of Proteus vulgaris
Table 8. In vitro susceptibilities of Providencia spp
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参照

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