ガス発生剤の分解に関する研究
著者
脇 国男
学位授与大学
東洋大学
取得学位
博士
学位の分野
工学
報告番号
乙第89号
学位授与年月日
1996-10-14
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000868/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaガ ス 発 生 剤 の 分 解 に 関 す る 研 究
巴日要
V ー nF V Z脇
国 男
1 ー ー 第 1 章 緒 論 ガス発生剤はロケット燃料,農薬などを揮散させる組成物として大量に用いられて いる。今日まで多くのプラスチック類が合成されてきたが,実用化するためには種々 の添加剤などを加えて加工する必要がある。特に日用品,雑貨,土木,建築材料など に用いるための軟質,多孔性の材料を製造するためには発泡剤が大きな役割を担って いることから,ガス発生剤の意義について述べた。次いで現在までに用いられてきた ガス発生剤を紹介し,同時に今日まで研究した未報文のガス発生剤について述べた。 第 2 章 ア ゾ ビ ス イ ソ ブ チ ロ ニ ト リ ル の 熱 分 解 ラジカル重合触媒として多く用いられているため詳細に研究されていたが,ガス発 生剤の見地からは研究されていなかった。示差熱分析(DTA)によって加熱速度を 変えて分解挙動を調べた。別に他の発泡剤のように20種の試薬を添加剤として用い, その分解挙動をDTAによって調べた。分解温度の低下は示さなかったが,いくつか の添加剤は発熱分解を抑制する効果を示した。分解生成物は分解装置をガスクロマト グラフィーに直結して測定した。実験条件下ではアゾ基の脱窒素化が100%,ビラジ カルの2量化生成物であるテトラメチルサクシノニトリルは85%の転化率であった。 そのほか不均化反応によってイソブチロニトリル15.3%およびメタアクリロニトリ ル14.5%が生じていることを見いだした。分解速度は発生ガスの圧力測定およびD TA法によって行い,見かけの活性化エネルギー(Ea)はそれぞれ29.6および29.9 Kcal/molであった。圧力法による場合,融点前後に相当する2領域(90∼98℃)お よび(100∼110℃)のlogk対1/Tの延長線は平行線になり,活性化エントロピ
ー△Sキはそれぞれ6.7および7.le、uであった。この相異は分解が固相∼液相過程と
液相に基ずくものと推定した。 第3章アゾジカルボンアミドの熱分解 アゾジカルポンアミド(ADCA)は工業的にゴム,プラスチックおよび煉煙剤組 成物として,今日もっとも多く用いられているガス発生剤である。その半面固相にお ける理論的研究はされておらず,わずかに溶液中における分解生成物の報告があるの 1ー ー て同定した。おもな生成物は窒素,一酸化炭素,ビウレアおよびイソシアヌル酸であっ た 。 微 量 生 成 物 と し て イ ソ シ ャ ン 酸 , シ ャ ン 酸 ア ン モ ニ ア , シ ャ ン 酸 ア ン モ ニ ア お よびシャメライドを同定した。分解速度はガス発生法によって圧力増加を追跡した。 速度式は自触式に適合し,各温度の速度定数は3段を示した。この意味を考察し,第 1段のEaは31.6Kcal/mol,前指数項値は1.0×1012を得た。分解生成物の経時変化を 追跡した結果,ガス発生速度は2種の極大値を示すことが判明し,窒素および一酸化 炭素の発生速度に一致した。これらの結果に基ずき分解機構を考察した。 第4章ヒドラゾジカルボンアミドの熱分解 ADCAの熱分解残留物中にはヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)が生成して いた。HDCAはADCAの原料でもあるが,発泡剤の助剤としても用いられている。 しかし熱分解に関する研究は行われておらず,詳細な研究が必要であった。DTAに よる熱特性では255℃付近に吸熱ピークを示し,融解∼分解と考えられた。厳密な 観察からHDCAは固相で分解し,生成物の増加とともに液相を呈することが判明し た。等温分解による分解生成物はPGC,irスペクトルおよびInsスペクトルによっ て分析した。主なものはウラゾールおよびアンモニアで,他に少量の窒素,イソシア ン酸,セミカルバジド,尿素およびイソシアン酸アンモニウムを同定した。 速度論的解析は発生ガス容積および減圧下における圧力増加によるガス圧法によっ て求めた。分解は固相分解による自触式に適合し,見かけのEaおよび前指数項値は
それぞれ40.0Kcal/mol,3.3×1014SeC 'であった。分解過程は脱アンモニウムによるウ
ラゾールの生成が主反応であり,実験結果に基ずき分解機構を推定した。 第5章5−ヒドロキシテトラゾールの熱分解 近年テトラゾール類はエアバッグ用のガス発生剤として注目を集めている。特に現 在用いられているアジ化ナトリウムは分解後の残留物に発癌性あるいは爆発性物質を 生ずる恐れがあることから,それに代わる有効な試薬として期待されている。著者は 220年ほど前からこの多窒素含有化合物であるテトラゾール類に着目し,その熱特性に ついて調査してきた。このうち5−ヒドロキシテトラゾール(HOT)を選びその熱 分解を行った。熱特性は密封ステンレスセル(SC-st)に試料を入れ,DSCに よって分解熱量を測定した。分解発熱ピーク温度は260℃付近(加熱速度:10℃/ min)でガス発生剤としては高温分解型であった。このテストからHOTは自己反応性 化学物質の可能性がある結果を得た。分解残留物は窒素および少量の樹脂状物質を含 むウラゾールであり,ほかに少量の一酸化炭素,二酸化炭素,カルバモイルアジド, 痕跡量のアンモニアおよび水であった。260,280および300の定温分解では窒素量は 約0.7∼0.9mol/molで,構造からの優先的な脱窒素は生じないことが判明した。 速度論的解析は213∼225℃間で,減圧下における圧力増加と発生ガス容積による ガス発生法によった。分解は固相反応による自触式に適合し,見かけのEaおよび前 指数項値は両法ともよく一致した。圧力法から得た値はそれぞれ170.2Kj/mol,7.3
XlO14sec 'であった。分解過程はいくつかの併発反応を伴うことが推定され,基質か
らのプロトピーによるカルバモイルアジドの生成,それによる二次的反応によること を示した。 ︶ 第6章TiO2/H2○界面における窒素含有化合物の光触媒無機化 近年プラスチック類の廃棄,界面活性剤など種々の物質の河川への流出は環境破 壊にも繋がり深刻な問題となっている。このため紫外線照射による分解の研究がなされている。このうちTiO2触媒による研究が多くを占めている。しかし含窒素化合
物の光分解は最近になってからである。著者はガス発生剤の一環として窒素化合物を 多く扱ってきた。熱分解に対し光分解過程を対比させることは興味深い。 ここでは二つのガス発生剤である多窒素化合物:アゾビスフォルムアミド酢酸(AFAA)およびトリヒドラジノトリアジン(THTA):を酸素雰囲気下,TiO2
分散水溶液中で紫外線照射し,無機化生成物を追跡した。AFAAの共役二重結合お よびTHTAのヘテロ原子含有環の光開裂反応を紫外・可視スペクトルによって,ま た光分解反応によって生成した無機化生成物(二酸化炭素,窒素,アンモニウムイオ ンおよび硝酸イオン)をガスクロマトグラフィーおよびイオンクロマトグラフィーに ー 3ー ー ー (269nm)は消失した。THTAは0.1mmol濃度においては紫外吸収ピーク(214 nm)は1.5時間後に消失した。無機化生成物は照射時間とともに増加し,それぞれ 0.1mmol濃度においてはAFAAは11時間後,二酸化炭素:約50%,アンモニウム イオン:約27%,硝酸イオン:18%収率であった。THTAの分解はAFAAより も緩慢であった。二酸化炭素および硝酸イオンは1時間の誘導期を経た後生成した。 照射10時間後の無機化収率は二酸化炭素,アンモニウムイオンおよび硝酸イオンは それぞれ約11,2.5および5.1%収率であった。 誘導時間後のAFAAの三者とTHTAの硝酸イオンの生成速度はほぼ一次反応で あった。窒素ガスはAFAAのみが発生し,10時間後の発生量は基質1mmol濃度に 対し0.91mmol/lであった。これらの結果から生成ガスおよび両イオンの生成機構を 考察した。 4