Title
αシヌクレインシャペロンによるプリオン蛋白質の核形成
とアミロイド形成の阻害( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
白坂, 真紀
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医科学) 連創博甲第51号
Issue Date
2020-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/79352
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。論文内容の要旨
蛋白質ミスフォールディング病は、可溶性蛋白質のアミロイド様凝集体への構造変換に特徴づけられ る、重篤な一群の疾患である。通常、構造変換は、パーキンソン病のα-シヌクレイン(αS)、アルツハ イマー病のアミロイド-β、伝染性海綿状脳症(TSES)のプリオン蛋白質(Prion protein、以下 PrP)の ように、単一の疾患関連蛋白質により発生する。しかし、異種アミロイド形成蛋白質間の相互作用が、ア ミロイド形成と疾患の病理に大きく影響することを示唆する証拠が、これまで多数報告されている。こ こで我々は、単量体状態のαS がin-vitroでPrP のアミロイド形成を抑制することを示す。 まず、チオフラビンT アッセイと透過型電子顕微鏡画像から、単量体αS が PrP のアミロイド形成の 成長段階を妨げることなく、核形成段階を抑えることが明らかとなった。この一方で、表面プラズモン共 鳴および共沈降アッセイからは、αS と単量体 PrP または線維性 PrP との相互作用は検出されなかった。 この結果は、αS が変性状態に近い中間体に結合しシャペロン様活性によって、PrP のアミロイド形成を 抑制することを示している。さらに、最近PrP と相互作用が示唆されていたオリゴマーαS は、実際は PrP と相互作用しないことが分かった。以上、本研究により、PrP アミロイド形成に対するαS のシャペ ロン様活性を明らかにすることができた。
論文審査結果の要旨
これまで神経変性疾患は、疾患に関連する固有の蛋白質が凝縮して蓄積することにより発症すると考 えられてきたが、本研究によりパーキンソン病などの原因とされるαシヌクレインがプリオン蛋白質の 凝集に干渉すること、特にプリオン蛋白質の中間状態と相互作用することが明らかとなった。 蛋白質ミスフォールディング病は、可溶性蛋白質のアミロイド様凝集隊への構造変換に特徴づけられ る、重篤な一群の疾患である。通常、構造変換は、パーキンソン病のα-シヌクレイン(αS)、アルツ ハイマー病のアミロイド-β、伝染性海綿状脳症(TSEs)のプリオン蛋白質(PrP)のように、単一の疾患関 氏 名 ( 本 籍 ) 白坂 真紀(大阪府) 学 位 の 種 類 博 士 (医科学) 学 位 授 与 番 号 甲第 51 号 学 位 授 与 日 付 令和 2 年 3 月 25 日 専 攻 医療情報学専攻 学 位 論 文 題 目 αシヌクレインシャペロンによるプリオン蛋白質の核形成と アミロイド形成の阻害(Suppression of nucleation and amyloidogenesis of prion protein by α-synuclein chaperone)
学位論文審査委員 (主査)教 授 武藤 吉徳 (副査)教 授 森田 洋子
連蛋白質が関与して起きる。しかし、異種アミロイド形成蛋白質間の相互作用が、アミロイド形成と疾 患の病理に大きく影響することを示唆する証拠が、これまでにも報告されている。 本研究において、最近 PrP との相互作用が報告されていたオリゴマーαS は、実際は PrP と相互作用 しないこと、また単量体のαS がin vitroで PrP のアミロイド形成を抑制することが見いだされた。次 にそのメカニズムとして、単量体チオフラビン T アッセイと透過型電子顕微鏡画像を解析することによ り、単量体αS が、PrP アミロイド形成の成長段階を妨げることなく、その核形成段階を抑えることを 明らかにした。さらに、表面プラズモン共鳴および共沈降アッセイにより、αS と単量体 PrP または線 維性 PrP との間で、相互作用がないことを明らかにした。これらの結果は単量体αS が、PrP の単量体 やアミロイド形成とは異なる、PrP の変性状態に近い中間体に結合することにより、PrP のアミロイド 形成を抑制することを示している。以上の研究成果は、PrP アミロイド形成に対するαS のシャペロン 様活性とそのメカニズムを、これまでにはない詳細なレベルで明らかにしている。 申請者が見出した知見は、複雑な神経変性疾患の病態解明、さらには治療法開発に大いに貢献できる と期待できる。こうした観点より、申請者白坂真紀の論文は学術的価値が極めて高く、博士学位論文に 値するものと判定した。
最終試験結果の要旨
白坂氏の論文は、パーキンソン病などの原因とされるαシヌクレインがプリオン蛋白質の凝集に 干渉すること、特にプリオン蛋白質の中間状態と相互作用することを明らかにした。 申請者が見出した知見は、複雑な神経変性疾患の病態解明、および治療薬開発に大きくつながる 画期的な内容をまとめたものであり、審査付き論文として公表済みの論文に基づく、完成された内 容であることを確認した。 また、公聴会において、学位論文の内容に関する事項、すなわち、プリオン蛋白質のアミロイド 形成、αシヌクレインとプリオン蛋白質中間体との相互作用、今後の研究の方向性などについての 諮問を行った。 申請者からは、充分な内容の回答が得られたので、博士(医科学)に値するものと判断し、最 終試験に合格したと判断した。 論文リスト1. Maki Shirasaka, Kazuo Kuwata, Ryo Honda, α-Synuclein chaperone suppresses nucleation and amyloidogenesis of prion protein. Biochem, Biophys. Res. Commun. in press [IF=2.559(2017)]