Title
EWS/F1i-1を標的とした遺伝子治療の基礎的研究 (リボザイ
ムを用いて)( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
楊, 文毅
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第382号
Issue Date
1998-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14751
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氏名 (本籍) 学位の種頬 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 楊 文 毅(中国)
博
士(医学) 甲第 382号
平成10
年 3 月 25 日学位規則第4条第1項該当
EWS/Flト1を標的とした遺伝子治療の基礎的研究 (リボザイムを用いて) (主査)教授清
水
克 時 (副査)教授 高 見 剛 教授 佐 治 重 豊 論文内容の要旨 ユーイング肉腫(Ewing.ssarcoma)は骨肉腫とともに最も悪性度が高く,発症時,すでに肺転移や多発性 の骨転移をきたしている症例も多く,いまだに治療に難渋する場合が多い。近年の基礎医学の進歩により,癌の 発生機構が遺伝子レベルで徐々に解明されつつあり,ユーイング肉腫においては,ユーイング肉腫細胞の染色体 のt(11;22)相互転座とその転座により新規なキメラ遺伝子EWS/Fli-1が発現 さらに,このキメラ遺伝子産 物は強力な転写因子であり.アンチセンスによりこの遺伝子発現を抑制するとtumorigenicityが消失することが 判明してきた。 リボザイム(Ribozyme)は触媒活性を有するRNA分子であり,マグネシウムイオン存在下に特定の相補的な 塩基配列を認識して.特異的にRNA鎖を切断する特性がある。この特性を利用して,ウイルス感染症や悪性腫 瘍の治療に応用しようとする試みが研究されている。今回,我々はユーイング肉腫の発生に大きく関与すると考 えられているキメラ遺伝子EWS/Fli,1を特異的に切断するリボザイムを合成し,そのRNA切断活性,および抗 腫瘍活性について検討した。 1.研究方法 1)リボザイムの設計: キメラ遺伝子EWS/Fli-1のBreakpoint近傍配列を切断できるハンマーヘッド型のリボザイムを2種類設計し 合成した。リボザイムの安定化を図るため,酵素活性に必要な部分はRNAとし,他の配列はDNAに置換するこ ととした。リボザイムの合成には,DNA/RNA合成機によりリボザイムプロトコールを剛、て行った。総塩基 数はリボザイムー1が47塩基,リボザイムー2が46塩基である。 2)EWS/Fli-1cDNAのクローニング ユーイング肉腫細胞株Tc135よりグアニジン法にてtotalRNAを抽出し.逆転写酵素によりc-DNAを合成した。 EWS/Fli-1の5,末端,3,末端の24baseに相補的なプライマーを合成し,PCR法によりEWS/Fli-1cDNAを増幅 乱 プラスミドベクターpCDNAに組み込みクローニングした。このプラスミドを大腸菌(DH5a)に導入後大 量培養し,WizardPlusMaxiprepsDNAPurificationSystemを用いてDNAを抽出した。 3)i花Uか0におけるリボザイムの切断活性 ①合成DNA/RNA基質の切断 DNA/RNA合成機によってリボザイムの標的部位を含むオリゴDNA/RNAキメラ基質を合成し,T4 polynucleotidekinaselと[γ-nP]ATPにより末端標識した後,リボザイムと混合した。次いで基質を15%ポ リアクリルアミドゲルに展開,各バンドをイメージアナライザーで解析し,基質の切断状態を検討した。②in uitro transcription RNAの切断
pcDNA-EWS/Fli-1をMscIで処理した後,T7RNApolymeraseによりEWS/Fli-1mRNAを試験管内で合
成した。その際[α-甲]UTPにより標識した。これを合成基質の切断実験同様にリボザイムと反応させた後, 切断効果を検討した。
-75-4)リボザイムのユーイング肉腫細胞におよぽす作用 ①細胞増殖への影響の検討 96穴培養皿にTc135を播種し,一晩培養乱 PBSで1回洗浄し,無血清培地で20分間培養。次いで,培地を捨て た後,室温で15分間混和したリボザイムとTfxTM-50の混合液を添加した無血清培地と1時間接触させ.10%FCS 加培地を添加し,さらに,2日間培養を行った。Trypan blue染色で細胞数を計測し,抑制率を算出した。 ②EWS/Fli-1蛋白発現の変化の検討 Tc135を10cm径培養皿に播き,一晩培養後.PBSで1回洗軌 無血清培地で20分間培養後培地を捨て.リボザ イムとTfxTu-50の混合液と1時間接触させた。次いで10%FCS加培地を加え,さらに,48時間培養後,細胞を採 集し,Western blot法でEWS/Fli-1蛋白の発現を検討,得られたバンドをイメージアナライザーで解析した。 2.研究結果 1)in uitrDでマグネシウムイオンの存在下リボザイムは計画通り,基質DNA/RNAとEWS/Fli-1発現プラス ミドからの転写産物RNAを切断した。両実験ともリボザイムー1の酵素活性ほリボザイムー2の活性より高かっ た。 2)両者のリボザイムともTc135の細胞増殖を抑制した。リボザイムー2はリボザイムー1より高い抑制率を示し た。 3)リボザイムを投与したTc135では無投与のそれに比較し,EWS/Fli-1蛋白の発現が低下していた。 3.考察 リボザイムの標的として研究が進められている遺伝子は大きく2つに分類される。ひとつは癌遺伝子あるいは その発現に関与している遺伝子であり,それらの発現を抑制することにより腫瘍細胞の増殖を直接阻止しようと するものである。他のひとつは多剤耐性に関与している遺伝子で.抗癌剤に対する感受性を高めようとするもの である。我々はユーイング肉腫の腫瘍発生に大きく関与しているキメラ遺伝子EWS/Fli-1をターゲットとし, ハンマーヘッド型リボザイムを合成した。このキメラ遺伝子は正常細胞には存在せず,肉腫細胞にのみ存在する ことから,遺伝子治療の標的として理想的である。今臥 我々が合成したリボザイムは合成オリゴDNA/RNA 基質と山口か0で転写させたRNAを理論的に正しく切断で善た。また.ユーイング肉腫細胞へのリボザイムを 投与によって細胞増殖が抑制可能で,EWS/Fli-1蛋白質発現の減少を伴っていた。これらの結果はリボザイム を用いたユーイング肉腫に対する治療の可能性を示唆するものと考えられ,今後,生体内にリボザイム遺伝子を 効率よく.安全に導入できるベクターシステムや,リボザイムの開発など遺伝子治療の実用化に向けた精力的な 研究が待ち望まれる。 論文審査の結果の要旨 申請者 楊文教はリボザイムを用いてユーイング肉腫の遺伝子治療の基礎的研究を行った,玩L融和で肉腫の 転写させたRNAを正しく切断でき,細胞増殖が抑制可能で,EWS/Fli-1蛋白質発現の減少を伴っていた。これ らの結果ほリボザイムを用いたユーイング肉腫に対する治療の可能性を示唆した。この成果は整形外科学ならび に腫瘍の遺伝子治療の研究の進数 発展に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] EWS/Fli-1を標的とした遺伝子治療の基礎的研究 (リボザイムを用いて) 平成10年1月発行 岐阜大医紀 20(46):20∼25