Title
セメント系複合材料補強用ポリビニルアルコール短繊維の
開発と応用( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
小川, 敦久
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 乙第063号
Issue Date
2009-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/33556
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与 日 付 専 攻 学位論文題 目 小 川 敦 久(岡山県) 博 士(工学) 乙第 63 号 平成 21年 3 月 25 日 生産開発システム工学専攻 セメント系複合材料補強用ポリビニルアルコール短繊維の開発と応用
(DevelopmentandapplicationsofPVAfibersforfiber-reinforcedcement・based
composibs)学位論文審査委員
(主査)教 授 六 (副査)教 授 森 哲昭 恵博 郷本 教 授 内 田 裕 市論文内容の要旨
この論文においては,セメント系複合材料の補強に適したポリビニルアルコール(PV心短繊維の物性と 使用条件を明らかにするとともに,m短繊維の分散と配向状態がセメント系複合材料の力学特性に与える 影響を明らかにすることを目的としている。さらに,PVA繊維補強セメント系複合材料を吹付け保護モルタ ルやボードとして利用した場合や,既設構造物の補強に用いた場合の性能を明らかにすることを目的として いる。 第2章では,PVA短繊維とセメントマトリックスとの付着力について検討した。PVA短繊維とセメント マトリックスとの付着力は,ポリプロピレン(PP)短繊維の場合に比べ,数倍大きいことを実験的に明ら かにするとともに,顕微鏡観察によりPVA短繊維とマトリックスの界面に密実なカルシウム化合物が濃縮 していることを確認し,このカルシウム化合物の生成が付着力を高めていることを指摘した。 第3章では,PVA短繊維の分散と配向状態がPVA繊維補強セメント系複合材料の力学的特性に与える影 響について検討した。モルタル中にPVA短繊維を混入する前に,前もってm短繊維を吸水させておく ことによって,短繊維の分散性が大きく向上し,施工性も向上することが明らかにした。短繊維を混入し たセメント系複合材料は,型枠面近傍では短繊維が型枠面に沿って配向し体積比率が高くなるため,型枠 面方向の引張特性が高くなることを明らかにした。フライアッシュの添加は短繊維の分散と流動性の改善 に有効であり,ポリカルポン酸系高性能AE減水剤は,流動性の向上に効果が高いことが明らかにした。 増粘剤を,水溶液として添加することにより,増粘効果が短時間で発揮され,添加量が少なくてよいこと を明らかにした。 第4章では,PVA短繊維がコンクリートやモルタルの乾煉収縮ひび割れの幅を抑制する効果について検 討を行った。弾性係数が高く,セメントとの付着が高いPVA短繊維の添加により,モルタルの乾燥収縮に ょるひび割れ開口幅が抑制されることを,リング試験により確認した。この抑制効果は,短繊維の弾性係 数と添加した短繊維の総表面積の積が大きいほど高いことを明らかにした。10m角の実大試験体(鉄道用 コンクリート軌道床)を作製し,打設後1年間にわたって,ひび割れの発生と進展を観察した結果,PVA 短繊維の添加により,乾燥収縮ひび割れの幅が抑制されることを確認した。 第5章では,PVA繊維補強セメント系複合材料を吹付け保護モルタルやボードとして利用した場合の性 能について検討した。PVA短繊維を添加した法面の吹付け保護モルタルについて,水中凍結一水中融解に ょる凍結融解試験を行った結果,通常のモルタルと比較した場合,動弾性係数の変化が少なく,試験片の 重量減少,スケーリングや損傷も少ないことを明らかにし,この材料を寒冷地での法面の吹付け保護モル タルへ適用できることを示した。PVA繊維補強セメント系複合材料で作製したボードに,壁材や埋め込み 型枠などへの適用を想定し,正負交番による面内せん断実験を行った結果,従来から用いられている構造 合板に比べて,約1.5倍のせん断破壊靭性を有することを明らかにし,このボードを薄型・軽量な補強面 材として使用できることを示した。 第6章では,PVA繊維補強セメント系複合材による既設構造物の補強に関する検討を行った。建築構造 物の損傷制御を目的として,PVA繊維補強セメント系複合材料で作製したボードを梁の打込型枠とした実 験を行い,曲げモーメントおよびせん断力下において,発生するひび割れが大変形領域まで微細な状態を 保つことを確認した。PVA繊維補強セメント系複合材料を用いた既存橋脚の耐震補強について検討するた め,橋脚のモデルを作製し,正負交番載荷による加力試験を行った。その結果,この材料を柱のヒンジ部 の帯筋周辺からかぶりの部分に適用すると,材料の使用量が少なくかつ大きな効果が得られることを明ら かにした。ただし,この材料と既設コンクリートフーチング部との付着が不十分な場合には主筋の抜け出 しが発生し,補強効果が認められないことを指摘した。論文審査結果の要旨
この論文においては,セメント系複合材料の補強に適したポリビニルアルコール(PVA)短繊維の物性 と使用条件を明らかにするとともに,PVA短繊維の分散と配向状態がセメント系複合材料の力学特性に与 える影響を明らかにしている。セメント系複合材料の流動性は,増粘剤と球状のフライアッシュを用いる -53一ことにより,繊維の分布が均一化し,流動性が向上することを明らかにしている。セメントマトリックス 中のPVA短繊維の分布が均一であるほど,セメント系複合材料の引張強度が大きいことを明らかにしてい る。PⅥ1繊維補強セメント系複合材料を埋設型枠として用いたRCはり部材の曲げおよぴせん断特性を明ら かにしている。既設RC柱の主鉄筋の周りにPVA繊維補強セメント系複合材料を巻き立てることにより,RC 柱の耐震性能が大幅に向上することを明らかにしている。