• 検索結果がありません。

顧客をつなぎ止めるサービス組織

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "顧客をつなぎ止めるサービス組織"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

顧客をつなぎ止めるサービス組織

著者

山本 昭二

雑誌名

関学IBAジャーナル

2009

ページ

12-13

発行年

2009-04-01

URL

http://hdl.handle.net/10236/6144

(2)

1.飽和市場でのマーケティング戦略

 日本企業の直面する国内市場の問題は、少子高齢化であるとよく言われる。もちろん人口が 減少することは、市場の減退を意味するし実際に単価を上げることのできない企業は撤退を余 儀なくされるだろう。  国内の自動車の販売台数が減少するといった事態に対応して、日本の自動車メーカーは海外 に市場を求めて積極的にグローバル化を進めている。それでは、国内市場に対して企業は工夫 のしようがないのかと言えばそうではない。消費者のニーズを反映した製品はやはり強い競争 力を持っており、多くの企業にとって日本国内で勝ち抜くことは依然として重要な課題である。  本稿では、顧客をつなぎ止めようとする企業の努力、所謂リレーションシップ・マーケティ ングの実践例を通して製造企業のサービス戦略を考えてみたいと思っている。一般に、サービ ス•マーケティングの研究対象としてはサービス企業を取り上げる場合が多いが、サービスは、 製造企業にとっても競争上重要な要素として理解されている。その実行上の問題点はいくつか あるが、本稿では製品のアフターサービスについて二つの事例を提示してみたいと思う。

2.2つのサービスの発展方向

 消費者は、製品を購入することによってある種の良い状態を経験したいと考えている。消費 者は、新しいエアコンを買うことによって快適な生活を送りたい、新しいレンジを買うことで おいしい食事を手際よく作りたいという気持ち持っている。また、消費者は安全に電気器具を 使いたいという欲求も当然持っている。  製造企業のマーケティングでは、この2種類の欲求を製品そのもので満たすこともできるし、 これをアフターサービスと言った形で長期的な関係の中で提供することも可能である。リレー ションシップ・マーケティングの考え方では、優良な顧客を追加的なサービスで引き留めるこ とは繰り返し言及されている。  先に挙げた二つの種類の欲求は、欲しい結果を与えることのできるサービスと回避したい結 果を回避できるサービスという言葉で言い表せるのかもしれない。この二つの種類の欲求はど ちらも重要なものだが、それを達成した場合の効果は異なると考えられている。  前者のタイプのサービスでは、より良いサービスが得られたことで消費者が感じるものは 「喜び」である。顧客は良いサービスを手に入れられたことで満足し、もっと良いサービスを 提供して欲しいと感じる。すなわち前者のサービスは飽和すると言うことが考えられている。  後者のタイプのサービスでは、消費者は回避された結果を見て「安心」という感情が起こる と考えられる。安心することによって顧客は他の代替案を探さなくなり、結果としてつなぎ止 めることが可能であると考えられている。そして、この感情は簡単には飽和しない。すなわち、 長期的な取引の継続には非常に有効であると考えられている。この状況を作り出すことで顧客 の固定化が進むと言えるだろう。

3.ダイキン工業のサービス戦略

 ダイキン工業は、エアコンのトップメーカーとして知られているが、90年代の初め頃には 12

顧客をつなぎ止めるサービス組織

経営戦略研究科教授(経営戦略専攻)

 山 本 昭 二

(3)

ルームエアコンの業績が落ち込み大型店の店頭からも撤退する事態になっていた。そこで、業 務用エアコンで大きなシェアを握っていた同社はそのサービスネットワークを使ってきめ細 かいアフターサービスを提供するネットワークを構築した。エアコンが壊れることは季節に よっては大変な不便を強いることになるし、消費者としては回避したいことは確かであった。 しかし、このサービスは消費者にとって決定的な差別化要因とはならなかった。  このサービスは購入者に評価されたが、シェアを回復するには至らなかった。それは、購入 時にエアコンが壊れると言うことに重要性を見いだすことが難しかったからである。他社の打 ち出す静粛性や薄型といった手に入れたいと感じる便益に比べるとインパクトを与えること ができなかった。結局、1999年に売り出す「うるるとさらら」のシリーズで湿度調整が細かく できるという機能を付けて、大ヒットとなったのである。その後、2001年5月に開設された 「ダイキンコンタクトセンター」で顧客窓口を一本化し24時間修理受付を行うなど、さらなる サービスの向上が図られている。

4.シャープのハイクックレディー

 電子レンジの販売におけるシャープのハイクックレディーは興味深い事例を提供している。 シャープは電子レンジのトップメーカーであったが、2003年に「ヘルシオ」という新しいタイ プの過熱水蒸気を使ったレンジの導入では、新しいレシピの開発や調理法の開発に従来から電 子レンジでレシピ開発を行っていたハイクックレディーという部隊が大きな役割を果たした。  同社は、新しい機器に不慣れな消費者をサポートするだけではなく、消費者からの新しいメ ニューの要請に対して電話で応対して答えるというサービスを続けている。このサービスは電 子レンジの時代からシャープの強みであるのは、ハードの良さとサービスが作り出すソフトが 消費者に欲しいと思わせる便益を作り出しているからである。ただ、このタイプの便益は満た されてしまうと飽和が早いので、次々と新製品を出して満足度を高めたり、レシピも新しいも のを開発したりしている。このような不断の努力がなければ顧客をつなぎ止めることはできな いだろう。

5.まとめ

 この二つの事例は、製造企業のサービス戦略に示唆を与えている。ダイキン工業は、入り口 で回避型のサービスを訴求したがそれは不十分であり、欲しいと思わせる属性を製品に付加し てやっと全体の戦略が整合的となった。これからの顧客維持は低コストで実現できるかもしれ ない。  シャープはこれからも努力を続けることで顧客を維持し続けなければいけない。そのための 顧客維持コストはそれなりに支払わなければいけないだろう。シャープには低コストの顧客維 持戦略が求められていると思われる。ただし、ヘルシオのコンセプトにこの点が既に含まれて いる。すなわち、健康に良いという回避型の属性が製品そのものの優位点になっていることは 見逃せないことである。 参考文献

 Andrade, Eduardo B.(2005),“Behavioral Consequences of Affect: Combining Evaluations and Regulatory Mechanisms,” Journal of Consumer Research, 32, Dec., 355-362.

 Higgins, E. Tory(1987), “Self-Discrepancy: A Theory Relating Self and Affect,” Psychological Review, 94-3, 319-340.

山本昭二 (2006), 「顧客価値概念の拡大 ―サービス・マーケティングの視点から―」,マーケティング・ ジャーナル,27-3,

参照

関連したドキュメント

(b) 肯定的な製品試験結果で認証が見込まれる場合、TRNA は試験試 料を標準試料として顧客のために TRNA

「必要性を感じない」も大企業と比べ 4.8 ポイント高い。中小企業からは、 「事業のほぼ 7 割が下

ことで商店の経営は何とか維持されていた。つ まり、飯塚地区の中心商店街に本格的な冬の時 代が訪れるのは、石炭六法が失効し、大店法が

本事業を進める中で、

い︑商人たる顧客の営業範囲に属する取引によるものについては︑それが利息の損失に限定されることになった︒商人たる顧客は

・環境、エネルギー情報の見える化により、事業者だけでなく 従業員、テナント、顧客など建物の利用者が、 CO 2 削減を意識

夜真っ暗な中、電気をつけて夜遅くまで かけて片付けた。その時思ったのが、全 体的にボランティアの数がこの震災の規

5.更なるヒューマンエラー防止の取り組み 5. 更なるヒューマンエラー防止の取り組み ◆良好事例を水平展開で実施しているもの