ピアニストの着衣状態と演奏効果との関係
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(2) 182. ピアニス トの着衣状態 と演奏効果との関係. 心地 とい う人間にとっての微妙 な問題 を解 く手掛 か りとした。. 2.研 究 内 容 (1)研 究 の概 要 被検者 は 30歳 の女性 ピア ニ ス トであ る。 ピア ノ演奏 実験 に使用 した衣 服 は ,一 つ は胴部 ・袖 が 被 検 者 の 体 型 に フ ィッ トした密 着 型 の 長袖 ブ ラ ウ ス (綿. ブ ロー ド)と ロ ン グ ス カ ー トの. A服 で ,こ. れ に対 し B服 は,演 奏 会用. に作製 した もので ,両 袖 お よび右肩部 の ない ,シ ル クタフタの ロン グ ドレス で あ る (図. 1)。. A・. Bの 実験服 を着用 してそれぞれ 同一 曲 目, I∼. Ⅲの フ レ. ーズ を演奏 し,そ の 間 の被検者 の生理 的変化 な らびに姿勢変異量 につい て調 べ ,演 奏 を録音 した 〔 実験. 1〕. 。実験 1で 得 られ た演 奏 曲 の 録音 テ ー プ を 45. 実験 名 の被検者 に聴取 させ ,SD尺 度法 を用 い て評定 を行 った 〔 お よび 2の 結果 を分析 し,実 験服. Aお. よび. 2〕. 。実験. 1. Bの 着装 の異 なる状態 が被検 者. ピアニ ス トの生 理 的状態 や演奏効果 に影響 をお よぼす ものか ど うか ,総 合 的 に考察 し検討 を試 み た。. (2)実 験 1の 手順 本学音楽室 を実験 室 と し,被 検者 は入室後安静 を保 ち,右 上 腕 二 頭筋 お よ び上 腕 三頭筋 に筋電 図表面電極 を,左 耳垂 に容積脈波計 を装 着 した。通常 は 指尖 で容積脈波 を測 定す るのが 一般 的 で あ るが , ピアニ ス トの演奏 を研究 対 象 とす る本実験 で は,指 尖 にか わ る部 位 と して左 耳 垂 に装 着 す る こ と と し た。脈波 の安定 を待 って ,ブ ラームス・ ソナ タ・3番 ・作 品 5を 演奏 開始. ,. 演奏 終 了後安 静 10分 ,そ の 間 の脈 波 ・筋電 図 を T社 製記録装置 R-60に 収 め た。 また ,演 奏 中 の 姿 勢 を背 面 ・側 面 か ら ビ デ オ 撮 影 した (図. 2)。. な. お ,S社 製 エ レク トレッ トコンデ ンサ ーマ イク ロ フ ォ ン ECM-959Aお よび ス テ レオカセ ッ トコー ダー WM― D6Cを 用 いて演奏録音 を行 った。. 30分 間休憩 をは さみ , もう一 つ 実験服 を着用 して同様 の 実験 を行 った。2.
(3) 木岡 悦子 ・森. 183. 由紀. B服. (前 身頃). バス ト ゆとり量 8%. ウ エス ト畜 ゆ と り量 │:. 8%‐. B服. 図 1 実験用衣服. Aお よび B. 胴 部 パ ター ン.
(4) 184. ピアニ ス トの着衣状態 と演奏効果 との関係. 卜オ 」 撮 影 [コ. 筋電図電極 脈波 ピックア ップ装着 筋. 電. ・. 図. 脈. 波. 測. ―. 定. 一. ―. J. 1筋 電図 :上 腕二頭筋. 1 │. I. I. 上腕三頭筋. 可. 60. 図2. 週間後,A・. 実験 1の 手順. B服 の着用順序 を変えて同様の実験を行 った。 これについては. 室内の環境条件 を同一 にす るよう配慮 した。実験 日① は 1994年 12月. 14. 日,実 験 日② は 1995年 1月 9日 で ある。室温 20± 2℃ ,湿 度 50± 5%で あ った。. (3)筋 電図お よび容積脈波 の測定 と解析方法 上腕 二 頭筋 お よび三 頭 筋 の 筋電 図 を NECソ フ ト「筋電 図計 測 NO。 9801」 に よ り積分 し,実 験服 間 の筋活動 の差 につい て検討 した。 容積脈波 の測定記録 か ら安静時 お よび各 フ レーズ ご とに脈波 の比較 的安定 して い る 15秒 間 の拍 数 を読 み 取 り,1分 当 た りの拍 数 に換 算 した。演 奏 前 安静時 に対す る各 フ レーズの値 の比 を求 め分散分析 を行 った。 また波形 を積 分 し,振 幅 と基 線 か らの揺 れ につい て考察 した。. (4)画 像 よ りとらえた演奏 中の姿勢分析 演奏 中の動作 を背面お よび右側面 か ら ビデ オ撮 影 し,演 奏 中 の動作分析 の 資料 と した。 あ らか じめ被検者 の頸椎 点 ,左 右肩峰点 ,左 右肘点 ,胴 部左右 外佃1点 をマ ー ク し,そ れ ら基準点 の演奏時 の動 きを ビデ オ画面上か らとらえ た。画像解析装置 ピアス Ⅲに よ り2/15秒 間隔 で 分析 した。実験 服. Aお. よび.
(5) 185. 由紀 悦子 ・森 木岡. ぶ 3ポー ー ー ′. ′4 o庶 3堅︱︱ ︱ ´. 貧 経 駅 ︶ 回腎 恨 騰 C 畔 森 黙 郷 め国. 収 ⊃懸 嶽︱ ︱ ︱ 収 DK へ 、い ひ. 3 収制︱︱ ︱ く 騨 , D憧 収 o駆︱︱ ︱ 和榊 製 く誕. D憧 収 o興︱ ︱ ︱ 和印 製 く熙. 3収側︱ ︱ ︱ く 騨 , 3 Dコ 判絆︱︱︱︱響 へ ︵ ″ホ 、気. 収 D s● く堕︱︱ ︱ 収 D O和o型. 3桜︱ ︱ ︱ 響黒穏. 製 D小 R小 RIII Ю総0 3駆. 3 響O s後 ЦIII Ю総o s後量. H КIヽト. 3量︱ ︱ 1 3ぶ. 3 D響 測幹︱︱︱︱響 ヘト ″ホ ヽ気. 目К I ヽ 、. D憧 製 o嘔︱ ︱ ︱ 榊鎌 役く熙. 日К l ヽ ト.
(6) 186. ピアニス トの着衣状態 と演奏効果との関係. Bの それぞれ I∼ Ⅲフ レーズ につい て行 った画像解析結果 を比 較検討 した。 (5)「 実験 2」 演奏効果の評定. 実験服 Aお よび Bそ れぞれについ て,収 録 したブラームス・ソナ タ 03 番 ・作品 5の フレーズ I∼ Ⅲ演奏録音曲を,被 検者に順序 を変えて聴取 させ た。被検者 は 19歳 ∼50歳. (う. ち男性 16名 )45名 で,年 代構成 は,20歳 代. が 23名 と最 も多 く,他 はそれぞれ数名の分布状態である。 相対する形容詞対からなる評価項 目につい て,5段 階尺度 による SD評 定 法 で演奏効果 を調べ た。 フレーズ Iは フォルテに始 まって左 手 にス タッカー トの続 く軽やかな調子 を特徴 とする。 これに続 いて感情 を込めたや さしい旋 律 のフレーズ Ⅱ,フ レーズ Ⅲはフォルテシモ に始 まり力強い鋭 い音が連なる ものである。そ こで,フ レーズ Iで は「澄 んだ響 き/濁 った響 き」「ダイナ ミックな/お とな しい」「軽 やか/重 たい」 な ど 4評 価項 目,フ レーズ Ⅱで は「潤 いのある/カ サ カサ した」「柔 らか い/硬 い」 な ど 5項 目,フ レーズ Ⅲでは「繊細 な/荒 い」「ダイナ ミックな/お とな しい」「鋭 い/に ぶい」 な ど 6項 目をとり,計 15評 定項 目 とした. (図. 3)。. 評定 については「どちらと. も言 えない」 を各評定 の 中央値 とし,評 定内容 の程度 を「非常 に」「やや」 と段階区分 し,5段 階の評定尺度 を作成 した。 各評定尺度結果 を 5∼ 1に 得 点化 し,各 フレーズ ごとに実験服 および被検者 の性別 を要因 とする 2元 配置 法 による分散分析 を行 った。. 3.結 果 お よ び 考 察 (1)演 奏 中の筋電 図お よび脈波 の変動 演奏 中の 筋電 図 お よび容 積脈波 の 変動 の一 例 を図 4-1∼ 3に 示 した。上 か ら脈波 ,筋 電 図 (上 腕 二 頭筋 ),同 じく (上 腕三頭筋 ),声 紋 (ピ アノ音 の ダ イナ ミック ・ レンジ)の 記録波 であ る。上腕 二 頭筋お よび上 腕 三頭筋 の筋電 図 で は,曲 の進行 に したが って 実験 服. AOBに 一 見 して類似 した スパ イク.
(7) 木岡. 悦子 ・森. 己 ぼ ョ 糸. 187. EHC(上 腕 二 頭筋 ). EHG(上 腕三 頭筋 ). (mV). EIG(上 腕 二 頭 筋 ). EIC(上 腕三頭筋 ). 図 4-1 演奏中の生理的変化 一フレーズ I一. の展開がみ られるが, しか し,B服 における振幅は A服 に比較 して大 きく 緻密 であ ることが うかがえる。筋電図の積分値 を求めると,上 腕二頭筋 ・三 頭筋 いずれにおいて も A服 着用時 よ り B服 の方 が積分値 が大 で,特 にフ レ.
(8) ピアニス トの着衣状態 と演奏効果 との関係. 188. EIC(上 腕三 頭筋 ). EIC(上 腕 二 頭 筋 ). EHC(上 腕 三 頭 筋 ). 図 4-2 演奏中の生理的変化 一フレーズ Ⅱ― 電 果 ズ 市 一 筋 結. Ⅱの上 腕 三 頭筋 にお い てその差が顕著 な傾 向が認 め られた。上腕二 頭筋. 図 の積分値 を実験 日,実 験服 ,フ レーズ を変動 要因 と して分散分析 した を表 1に 示 した。実験 日,実 験服 間 にそれぞれ. 1%水 準 で ,フ. レーズ 間.
(9) 木岡 悦子 ・森. (mV) ● ・5司. 由紀. 189. A月 艮 脈波. EHC(上 腕 二 頭筋 ). EIC(上 腕三 頭筋 ). 0」. ― ― ― ― ― ― Ttt「 :│. ―. (口 V). 0.5¬. ―― ― ― 一. ― ― 三 立 F一. B月 反 脈波. ●.23J EHC(上 腕 二 頭 筋 ). EIC(上 腕三頭筋). 声紋. 図 4-3 演奏中の生理的変化 一フレーズⅢ―. に 5%水 準 で有意差 が認 め られた。 上腕三 頭筋 にお いて も同様 の結果 が得 ら れ た。A服 着用 時 よ り B服 の 筋 電 図積 分値 が 大 で あ る とい う こ とは,上 腕 二 頭筋 お よび三 頭筋 にお け る筋電 図 に表 れ た電気 的抵抗 が. B服 着用 時 に大.
(10) ピアニス トの着衣状態 と演奏効果 との関係. 190. で ,筋 活動 が 大 で あ った とい え る。 この こ とにつ い て は,A服 で は衣 服 に よる拘 束 のため に動作 が妨 げ られ腕 を動 かす 度合 いが充 分 で なか ったの に対 し,B服 で は抵抗 な く演奏 がで きた もの と推察 され る。 演奏 中の脈拍数 の変化 につい ては,記 録 された容積脈波 か ら単位 時 間当 た りの脈拍数 を読 み取 り,演 奏前脈拍数 に対す る変化率 を求 め ,分 散分析 を行 った。結果 は表 2の とお り,脈 拍 数 につい ては実験服 間 お よび フ レーズ 間 に 有意差 が認 め られ た。 しか し,実 験 日間 には差 はみ られ なか った。脈拍数 に つい ては酸素消費量 の増加 とともに上 昇す る とい われ るが ,本 実験 にお い て 表 1 上腕 二頭筋積分値 に関す る分散分析表 変 動 因. 自由度. 全体 (T) 因子 A(実 験 日) 因子 B(実 験服 ) 因子 C(フ レーズ). 11. 1 1 2 1 2 2 0. 交互作用 (AB) 交互作用 (AC) 交互作用 (BC) 交互作用 (ABC) 誤差 (SE). 偏差平方和. 不偏分散. 分散比. 0.4025. 0.1408 0.1408 169.0000[ 0。 1408 0.1408 169,0000[ 57.0000 0.0950 0。 0475 0.0208 0.0208 25.0000 0.0017 0.0008 1.0000 0.0017 0.0008 1.0000 0.0000 0.0000 0.0000 2. 0.0017. **] **] *] *]. 0.0008. [**]p<0.01 [*]p<0.05 表 2 脈拍 数 に関す る分散分析表 変 動 因 全体 (T) 因子 A(実 験 日) 因子 B(実 験服 ) 因子 C(フ レーズ) 交互作用 (AB) 交互作用 (AC) 交互作用 (BC) 交互作用 (ABC) 誤差 (SE). 自由度. H. 不偏分散. 1867 O。 0.0133 0.0133 0.0833 0.0833 0,0517 0.0258 0.0033 0.0033 0.0217 0.0108 0.0117 0.0058 0.0000 0.0000. 1 1 2 1 2 2 0. [**]p<0.01 [*]p<0.05. 偏差平 方和. 2. 0.0017. 0.0008. 分散比. 16.0000 [] 100.0000 [**] *]´ 31.0000 4.0000 3.0000 7.0000 0.0000.
(11) 木岡 悦子 0森. 由紀. も B服 の 筋活動 が 大 で あ る こ とに よる酸 素消費量 の増加 が ,脈 拍 数 の上 昇 を招 い た と考 え られ る。. 脈波積分値 については,実 験 日② において実験服 Aと Bと の 間 に有意 な 差が認 め られた。 しか しこの場合 ,B服 での脈拍数が大 であ るにもかかわら ず,A服 における脈波積分値が大 であ ったのは,図 4(脈 波)に もみ られる か. ように基線 か らの揺 れが B服 に比 して大 きくあ らわれてい ることと かわ ると考 えられる。 容積脈波 は,気 温や体位あるい は精神的状態 や 自律神経支配状況な ど,人 間のいろいろな外 的・内的因子 の影響 を表現 してい るナイー ブな情報 であ る。それだけに,課 せ られた負荷 に対 してどのように反応するか,そ の反応 の大 きさか ら情報 を得 ることがで きると考 える。逆 に記録 された容積脈波 の 情報 か らその変動量 を読み取 ることは,着 衣状態 によるス トレスの違 い を読 み とることになると考 えたものである。脈波 では呼吸系 の リズムに沿った波 型が記録 されるのが一般的であるが,本 実験 では,加 えて基線か ら上 ・下に 不規則 な揺れが顕著 にみ られた A服 着用時 につい ては,精 神的不安定 の度 合 い を示す もの と考 えられる。 特 に実験 日② のフレーズ Ⅱでは,A服 着用時 の演奏時間が 41秒 に対 し ,. B服 では 46秒 とゆった り演奏 されてい るにもかかわ らず,脈 波 の積分値 を みる と A服 時 が 5.6 mVOsec,B服 では 3.4 mVOsecと 両者 に顕著 な差が認 め られる。A服 着用時 の演奏 では,フ レーズ Ⅱにおける脈 波型 の基線か らの 揺れが最 も大 きくあ らわれてい ることと関連す ると解 した。 脈波お よび筋電図の積分値 が実験 日① ・② に異なる特徴 がみ られ実験 によ って差が認 め られた。実験 日② では,実 験 日① よ りも A服 の場合 の脈波 の 積分値 が大 きくあ らわれ,こ れに反 して筋電図の積分値が同 じく実験 日① の それ よ り小 さい ことが認 め られた。つ ま り,被 検者 は実験 日② の時 のほ う が ,A服 着用 で腕 を動 か しに くい もどか しさを よ り大 き く感 じとって い た と推定 され る。筋活動 が小 で あ るこ と,そ れ に よる心 の不安定要素 が脈 波 の 基線 の揺 れ に大 き くあ らわれた もの と考 え られ る。実験 日① ・② とも環境 条.
(12) 192. ピアニス トの着衣状態 と演奏効果との関係. 件 や実験 条件 を同一 となる よ う配慮 したに もかかわ らず ,実 験 日による差が 生 じた ことは,被 検者 の心 身 の状 態 や ,外 気 温 と室温 との差 な ど微 妙 な問題 とかかわ った こ とによる と思 われ る。. (2)ビ デオで とらえた演 奏 中の動作域 演 奏 中 の 各基準 点 の 軌 跡 を被 検 者 背 面 で と らえ る と,図 5(フ レー ズ I 例 )に み られ る よ うに頸椎 点 ,左 右肩 峰点 ,左 肘 点 にお け る B服 で の 最 大 移動距離 が. Aの それ に比 べ て大 き くあ らわれ て い た。 この場 合 ,画 面上 で. の 2次 元計測 に よる誤差 はあ るか と思 われ るが ,B服 にお い ては動作拘束 が 少 なか った こ とが そ の画面動作域 を大 き くした とい える。 被検者 が演 奏 中 に,A服 で は 両 手 を交差 す る こ とが 極 め て 困難 で あ った A服. B服. 頭籠点 左肩峰点. 顕椎点. _. 右肩峰点. サ. 左肩 峰点 ‐・. ー. 右肩峰点 ―. ―. ―. 左肘点. 右肘点. 一. ―. ヽ. 一. 口部右外側点. 日部左 外側点. 田部右外側点. 計測点 の最大移動距離 A. 点 頸 椎 右 肩 峰 点 左 肩 山 筆 点 点 右 肘 左 点 肘 胴部右外側点 胴部左外倶1点. 18。. B 7. 20。 8. 18.2. 21.9. 5. 21.4. 19。. 39。 9. 39。 3. 42.7. 44。 2. 15.8. 14.0. 16。. 7. 14。. 1. (cm). 図 5 画面か らとらえた演奏中の各基準点 の軌跡.
(13) 木岡 悦子・森. 193. 由紀. と告げていた。 このことか らも動作域が制限されたことが裏付 けられた。一 方,胴 部 における動作域 では,A服 のほ うが最大移動距離が大 き くあ らわ れていた。 このことは,腕 の動作制限が体幹部 で補 われた結果 であろ うと考 えられる。背面 か らとらえた演奏時の被検者 の姿勢 を基準点の動 きから考察 す ると,ゆ と りのない A服 の着用時 に うけた上腕動作 の制限が,そ の補償 を 体幹 の動 きに補償 されてい ると解 された。演奏中の動作制限 によるス トレス が脈波型や筋電図な どに B服 の場合 と異なる結果 を招 いたと考 えられる。. (3)演 奏効果 の評価結果 演奏効果 に関す る評定得点 を各 フレーズご とに,被 検者 の性別 ,実 験服. ,. 評価項 目を変動因子 として 3元 配置 による分散分析 を行 った結果 ,い ずれ も. B間 に有意差 が認 め られ,ゆ と りのない袖付 きの A服 よ り演奏 会用 の B服 が評価得点が高 い ことがわかった。三つ の フレーズ の うち,フ 実験服 A・. レーズ Ⅱについてのみ被検者 の性別 に有意差 があった。男性 の評定平均値 3.34に 対 し,女 性 は 3.63で 高 い得点 が示 された。すべ ての フレーズ にお い. て評価項 目間に有意差が認め られた。 各項 目別 に評定 にかかわる印象因子 を分 散分析 か ら求 める と. (図. 6),フ. レーズ Iで は「澄 んだ響 き一濁 った感 じ」「軽や か一重 たい」「鋭 い一鈍 い」 に実験服. AOB間 の差がみ られた。 フレーズ Ⅱでは「潤 いの あ る一カサ カ. サ した」「広 が りのある一広が りのない」「澄 んだ響 き―濁 った感 じ」「柔 ら かい一堅 い」 に実験服 A・. B間 の差がみ られた。「軽やか一重 たい」 の評定. 項 目にお いては,男 性 3.19の 評定平均値 に対 し,女 性 3.74で 被検者 の性別 に差が認 め られた。 フレーズ Ⅲでは「澄 んだ響 き―濁 った感 じ」「繊細 な一 荒い」「 リラックス した―緊張 した」 に実験服間の差が認め られた。 以上のように,ピ アニス トの着衣状態が演奏効果 にどの ようにかかわるか につい て評価 を行 った ところ,多 くの項 目にわた り,長 袖 ・密着衣 で ある. A服 に比 し,袖 のない演奏会用の B服 に高 い評価得点が得 られた。筋電 図 や容積脈波 にあ らわれた生理 的状態や,被 検者 の動作域 における A・. B服.
(14) ピアニス トの着衣状態 と演奏効果 との関係. 194. フレーメ. 実 験 服 別 評 定 平 均 値 1°. ② ダイナ ミックな. ° 1・. ° 1・. 1°. 因. 性. 1°. 別. …・¨ 濁 った感 じ ン"… ‐ 。 ・ ・ ・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ おとな しい. ① 軽やか. 一 く ………… ). ④ 鋭い. ………こ )と III1. 子 ‐ 翼裏蔵障萱葎扇. ** **. .¨. 11い. *率. ① 潤 いのある. ・ カサカサ した ……. **. ② 広がりのある ③ 置んだ響き. …・… 広が りのない … ¨。濁 った感 じ. **. ④ 軽やか. …… 重たい. 一 < 〓′ ■. ⑤ 柔 らかい ① 澄 んだ薔 き ② ダイナ ミックな ③ 繊細 な Ⅲ. ④ リラックス した. ―. 6. **. …… 硬 い. ** ** *. **. III I装. した. **. Ⅲ ・…・ ぼんや りした …・ …・‐. ③ はつきりした. 図. **. ノ ………… 濁 った感 じ ¨ ・‐ ・ ・‐ …Ⅲ … … 。おとな しい. フ ………… ¨ 鈍 い. O鋭 い. *. :A月 晨, …0¨ :B月 腱. **:p<〔 0.01 *:pく 〔0.05 ロ ー ル フ わ る 因子 の イ とそ れ にか か プ 演奏評価. 間 の差 は演奏評価結果 を裏付 け る もので あ った。実験後 ,被 検者 で あ る ピア ニ ス トか ら,B服 で は開放感 があ り,音 量 ・ニ ュ ア ンスの コン トロールが 自 由 にで きたが ,A服 で は左 右 の 交差 が思 う よ う にで きず弾 きに くか つた。 また ,腕 の 力 が抜 けない ため に豊 かな音量が出せ なか った とす る感想 が得 ら れた。演奏効果 の評価 に関す る実験 を通 して ,衣 服 が ピア ニ ス トの心理 ・生 理 にかかわ つて微妙 な音 の 世界 を も左右す るこ とが 示唆 され た。. 4。. 要. 約. ピアニ ス トの着衣状態 が演奏効果 に どの ような影響 を与 えるか につ い て着 衣実験 を通 して被検者 ピア ニ ス トの生理 的状態 を筋電 図 ,脈 波 ,動 態 か ら考 察 した。 さらに録音 テ ー プ を 45名 の被検 者 に聴取 させ ,評 価項 目 ご とに評.
(15) 木岡. 悦子 ・森. 由紀. 195. 価 し,SD法 に よ り分析 した。 結 果 ,長 袖 の タイ トフ ィ ッ トした上 着 の 実験服 奏 会用 の 実験服. A着 用 時 と,袖 な しの演. B着 用 時 の 間 に有 意 に差 の あ る こ とが 明 らか とな った。B. 服 の場合 が上 腕 二 頭 筋 ・三 頭 筋 の 筋 活動 が 著 し く,脈 波 にお い て は実験 服. Aの 積分値が大 であ った。腕 の動 きが思 うよ うにな らない とい った心理的 ス トレスが脈波形 の不安定 さにつ なが った と思 われる。実験服 Aと. Bの そ. れぞれについて,演 奏 を録音 したテ ー プを聴取 した被検者 の評価判定 は. ,. 「澄 んだ響 き/濁 った感 じ」「軽やか/重 たい」 な ど Bの ほ うに高 い得点 が 得 られ,A・. B間 に有意差 のあることが認 め られた。以上 ,ピ アニス トにと. っての衣服 は′ い理 ・生理 に影響 し,演 奏効果 を左右す るものであることが明 らか となった。 本稿 を終えるにあた り,厳 しい条件下 で演奏実験 をしていただい た ピアニス トの 岩佐 え り子 さんに深謝 いた します。また,実 験 にご助力 いただいた方 々,中 で も NEC メディカル中谷国泰氏 にお礼 申 し上げます。石川 マサエ・吉川充恵両助手 には実験 ・研究にお手伝 いいただき感謝 いた します。 なお,本 研究 の概要は平成 7年 度 日本家政学会第 47回 大会 にお いて発 表 した。 引用な らびに参考文献 。梅本尭夫 (1996)『 音楽心理学 の研究』ナ カニ シヤ出版 ・大山 正,瀧 本 誓 ,岩 澤秀紀 (1993)『 セマ ンテ ィック 0デ イフアレンシャ ル法 を用 いた共感覚性 の研究 ―因子構造 と因子得点 の比較 ―』行動計量学 ,. 20,2,55-64 0木 岡悦 子 (1985)『 タイ トス リー ブに よる上 肢 圧迫 と抹 消循 環血流 及 び皮 温 膚 の早期応答』甲南女子大学研究紀要,創 立 20周 年記念号 ,597∼ 608 0木 岡悦子 (1986)『 タイ トな着衣 での負荷作業時 における身体的影響 につい て 』 日律F言 志, 41,1,473 ・木 岡悦子 ,森 由紀 (1995)『 負荷作業 におけるタイ トウェアの着用感 と作業 能率へ の影響』甲南女子大学研究紀要,創 立 30周 年記念号 ,277∼ 296 。木岡悦子 ,森 由紀 ,石 川マサエ (1995)『 日本家政学会第 47回 大会要旨集』 ・田口真善 ,山 地啓司,北 川 薫 ,大 築立志 ,島 岡 清 (1980)『 体力 ・健康 ・ 運動 ―その科学的基礎 一』文理閣,155 0吉 村正治 (1980)『 臨床脈波のポイ ン ト 』中外医科 167∼ 171.
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