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薬物治療に対する統計学的および科学的エビデンスに基づく薬剤師業務の研究

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Academic year: 2021

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全文

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生年月日

学位論文審査結果の報告書

本籍(国籍)

学位の種類

く頭和・平成 47年5月1日

学位記番号

学位授与の条件

(博士の学位)

松浦正佳

大阪府

論文題目

士(薬学)

学位規程第5条該当

学位論文受理日

学位論文審査終了日

審査委員

薬物治療に対する統計学的および科学的

149 号

エビデンスに基づく薬剤師業務の研究

20玲年

2018年

(主査)

(副主査)

(副主査)

(副査)

(指導教員)

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高田充隆

小竹武

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(2)

我が国では急速な人口の高齢化が進んでおり,2017年6月現在の総人口1億2,676万人の中で 65歳以上の人口は3,498万人,総人口の27.6%を占める。鉐歳以上の人口は今後も増え続け, 20如年には3,921万人となり総人口の35.3 %を占めると推測される。また,2015年度の国民医 療費は42兆3,644億円であったが,今後鉐歳以上の人口の増加とともに国民医療費も増加する ことが予想される。このような人口の高齢化や医療費増大の問題が発生している状況下で, 医薬品の供給や在宅医療,服用薬の一元的管理,多剤投薬による薬物相互作用の防止など, 薬剤師に期待される役割は多岐にわたる。 学校教育法および薬剤師法の改正が行われ,臨床業務に長けた薬剤師を養成するために 2006年度から薬学教育6年制が開始された。2012年からは臨床現場での長期実務実習を含む新 課程を卒業した薬剤師が数多く誕生している。本研究は,薬物治療に対する薬剤師の科学的 介入について多角的な視点で検証を行い,超高齢社会における医療に貢献し得る薬剤師の業 務ついて検討するものである。 第1章では,薬郵拍市がかかりつけ薬剤師としての機能を有しているかの検証を行った。400 名を超える薬剤師に受診勧奨の実態に関するアンケート調査を実施し,94.フ%の薬剤師が相 談を受けたことがあると回答があったことより,ほとんどの薬剤師は地域住民の身近な健康 の相談相手であることがわかった。また,85.4%の薬斉伯而が症状に応じて受診勧奨を行って いることより,患者からの相談に対して薬学的知見に基づき判断し,必要に応じて受診勧奨 を行っていることがわかった。アンケート結果のヒートマップ分析からは,釦歳以上の患者 に受診勧奨を行うことが多い薬邦畑市の勤務する薬局では,複数の診療科からの処方篝を応需 する傾向にあった。20歳以上では年齢を重ねるに比例して複数医療機関を受診し,服用薬剤 数が多くなる傾向にある。かかりつけ薬斉伯市は医薬品の一元的かつ継続的な薬学管理指導を 求められていることからも,患者からの健康相談や受診勧奨に留まらず,患者とのコミュニ ケーションを深め,会話を通して患者から得た情報により,患者が気付いていない副作用や 疾患を見つけ,受診勧奨につなげるととの重要性が示された。 第2章では,複数の患者の事例を横断的に評価することを目的とし,入院患者に対する抗精 神病薬の投与と副作用発現の関連性を検討した。抗精神病薬を投与する治療では,依然とし て多剤併用療法が中心である。抗精神病薬の多剤併用と副作用発現の関連性を検討するため, クロルプロマジン換算値と血球系検査項目について重回帰分析を行った。その結果,赤血球 数と血小板数はクロルプロマジン換算値ならびに累積クロルプロマジン換算値と相関があり, 塞栓性疾患予防のために定期的な血液検査の必要性が示唆された。薬郵」師が薬物治療を統計 学的に分析し,提案を行うなど治療に参画していくことにより,副作用を予防し,薬物治療 を最適化できることが明らかとなった。 第3章では,薬剤師が物理化学的に評価できる事例として,一包化調剤に適さない先発医薬 品と一包化調剤に適したジェネリック医薬品を比較し,一包化調剤における錠剤の安定性に ついて検討した。錠剤の一包化調剤の適性は,吸湿による錠剤の重量変化および外観変化と は関係しないことが明らかとなった。近年長期処方が増加傾向にあり,その中で長期処方の 一包化調剤も増加傾向にある。一包化調剤に適した製剤でも,吸湿により錠剤表皮の亀裂や 言△

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(3)

-2-変色などの外観変化を起こす可能性があることから,一包化調剤の可否は薬剤の安定性を薬

剤師が物理化学的な評価に基づき判断することの重要性が明らかとなった。

第4章では,礁下機能の低下した高齢者に使用されているとろみ調整剤が,血糖値に及ぽす

影響について検討した。高齢者における礁下障害は飲食および服薬コンプライアンスに大き

く影響し,礁下障害の程度によっては,薬だけではなく,とろみ調整剤によりとろみをっけ

た食事を摂るケースが多い。しかし,加齢により耐糖能の低下してぃる高齢者が多く,漫然

と糖類を主成分とするとろみ調整剤を服用することが,血糖値にどの程度影響をするのかに

ついて検討した。その結果,とろみ調整剤中の多糖類の配合比率によっては,とろみ調整剤

の摂取が血糖値に影響する可能性が示唆され,特に糖尿病患者や耐糖能の低下した高齢者で

は,とろみ調整剤を多量・頻回で使用する場合には注意が必要であることが明らかとなった。

とろみ調整剤などの薬剤服用時に使用する添加剤についても,患者の疾患、に与える影響を薬

邦伯市が生化学的に評価し,提案することの有用性が明らかとなった。

本研究により,薬剤師は臨床の知識と能力に特化するのではなく,薬学教育で習得した幅

広い知識をいかし,物理化学や統計学,生化学に基づき薬物治療を評価する臨床能力も併せ

持っことが必要であることが明らかとなった。さらに,薬斉伯市は地域包括ケアシステムの中

で職能を発揮していくことが期待されており,かかりっけ薬斉伯市として患者の状態を把握し,

副作用の発見だけでなく,薬物治療の効果にっいても評価し,薬の専門家として治療に提案

ができるジェネラリストとしての能力が必要とされていることが明らかとなった。

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-3-学校教育法および薬剤師法の改正が行われ,臨床業務に長けた薬剤師を養成するために 2006年度から薬学教育6年制が開始された。2012年からは臨床現場での長期実務実習を含む 新課程を卒業した薬斉1旧市が数多く誕生している。しかし,薬剤師の対物業務に目を向けると 情報が少なく,時に薬斉畑市が判断をするに足る情報がないケースもある。著者は,薬物治療 に対する薬斉嶋市の科学的介入について多角的な視点で検証を行い,エビデンスに基づく提案 を行い,医療に貢献し得る薬斉脂市の業務ついてまとめたものである。 第1章では,卯0名を超える薬剤師に受診勧奨の実態に関するアンケート調査を実施し,そ れらの結果より,ほとんどの薬剤師は薬学教育で学ぶ臨床に関する内容を活かし,地域住民 の身近な健康の相談相手となっていることを明らかにした。これからの薬斉旧市は医薬品のー 元的かつ継続的な薬学管理指導を求められていることからも一患者からの健康相談や受診勧 奨に留まらず,患者とのコミュニケーションを深め,会話を通して患者から得た情報により, 患者が気付いていない副作用や疾患を見つけ,受診勧奨につなげるととの重要性を明らかに した。 第2章では,統合失調症患者は依然として多剤併用療法が中心であるため,抗精神病薬の 投与と副作用発現の関連性に着目し,クロルプロマジン換算値と血球系検査項目について検 討している。自己組織化マップ,クラスター分析および重回帰分析を用いるととにより,ク ロルプロマジン換算値と赤血球数および血小板数に相関性があることを突き止め,抗精神病 薬の重大な副作用である肺塞栓症や深部静脈血栓症予防のため,クロルプロマジン換算値の 高い患者は定期的な血液検査の必要性を明示している。薬斉鵬市が薬物治療を統計学的に分析 することで副作用を予防し,薬物治療を最適化できることを明らかにした。 第3章では,一包化調剤に適した錠剤と一包化調剤に適さない錠剤とを比較し,一包化調 剤における錠剤の安定性について検討している。その結果,錠剤の一包化調剤の適性と吸湿 による錠剤の重量変化および外観変化とは関係しないととを示している。一包化調剤に適し た錠剤でも,吸湿により錠剤表皮の亀裂や変色などの外観変化を起こす可能性があり,一包 化調剤の可否は薬剤の安定性を薬剤師が物理化学的な評価に基づき判断することの重要性を 明らかにした。 第4章では,嘩下機能の低下した高齢者に使用されているとろみ調整剤が,血糖値に及ぼ す影響について検言寸した数少ない事例である。デンプン系,グァーガム系,キサンタンガム 系とろみ調整剤を用い,消化酵素により生じるグルコース量とマウスを使用した血糖値ヘの 影響を検討している。その結果として,とろみ調整剤中の多糖類の配合比率によっては,と ろみ調整剤の摂取が血糖値に影響する可能性を示している。糖尿病マウスへの投与結果より, 耐糖能の低下した高齢者がとろみ調整剤を多量・頻回で使用する場合には注意が必要である ことを明らかにした。とろみ調整剤などの薬剤服用時に使用する添加剤についても,患者の 疾患に与える影響を薬剤師が生化学的に評価し,提案することの有用性が明らかにした。 以上,本研究は薬剤師が臨床薬学に特化するのではなく,薬学教育で習得した知識をいか し,物理化学や統計学,生化学に基づき評価することで薬の専門家としての職能を発揮でき ることを明らかにしている。基礎薬学の知識を活用し検討することで今までにないエビデン スを得ることが出来ることを明らかとし,本研究の事例が今後の薬剤師業務のエビデンス創 りに貢献できる可能性を期待させるもので,博士(薬学)の学位を授与するに相応しいもの であると考える。 妻△

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参照

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