日本福祉大学社会福祉論集 第 124 号 2011 年 3 月 要旨 社会福祉基礎構造改革の集大成として 2000 年に制定された社会福祉法の第 1 条に, 法の目的として 「地域における社会福祉の推進を図る」 ことが掲げられて以降, 地域を 基盤とした社会福祉システムの形成に向けた政策が推進されてきた. その一環として, 第 1 条の改正と並行して, これを実現するための社会福祉関係法の制定・改正も行われ てきた. それにもかかわらず, 孤独死の発生など, 地域で生活する人々への支援が十分 に行われていない実態が明らかになっている. 本稿は, 地域で生活する人々の生活を支 えるための社会福祉供給のあり方を明らかにすることを目的にして, 社会福祉供給の基 本枠組みであるニーズとその充足1)について考察する. はじめに, 従来の公的社会福祉サービスの提供を地域を基盤とした支援体制へと転換 するための課題を検討する. 次に, 地域生活支援におけるニーズを明らかにする. それ を踏まえて, ニーズに対応する支援手段の充足の方法を考察する. キーワード:地域生活支援システム, 生活支援ニーズ, 制度の隙間ニーズ, 地域による充足手段
Ⅰ
地域生活支援システムの視点
公的福祉サービスの供給体制は, 社会福祉を必要とする人が公平に利用できる方法を追求して 構築されてきた. しかし, こうした供給体制は万能ではない. 公平性の原理に基づいて供給され る公的福祉サービスは, 人々の求めるニーズに対して十分に対応しえない面をもっている. 秋元 美世は, 基準化には 「行政の法的責任の明確化とそれによる裁量の恣意的行使の排除」 という機 能があり, 明細に基準化できるものや, すべきものについては確定化すべきであると述べている. そして, 「比較的緩やかな基準を設定すること」 は可能であり, 現にそのような制度が存在して いることを指摘している (秋元 2007:65-66). こうした指摘によれば, 公的福祉サービスの提地域生活支援のニーズと充足方法
小
松
理佐子
供をめぐる問題には, 制度設計の問題と, 制度の運用上の問題とが混在しているといえる. 他方において, 制度というものは, 制度と制度の 「隙間」 が生まれるという課題を解消するこ とができないものであるという見方もある. 制度化されたサービスの 「隙間」 の援助を可能にす るには, 地域の相互扶助を含む何らかの支援のシステム化をすることが有効であるという (小林 2007). 地域を基盤にした社会福祉のシステムの登場の背景には, 国による政策の推進という外的要因 に加えて, 社会福祉の内部から生み出された思想やそれに伴う援助方法の変化がある. それは, 入所型施設を中心とした社会福祉から, 在宅型の社会福祉へ, さらには, 入所型施設をもコミュ ニティの資源として位置づけようとするコミュニティ・ケア (地域ケア) へという変化である. それに伴って, 援助の目標も変化してきた。 地域を基盤とした社会福祉システムにおいて目標と なるのは, それを利用する個人の生活自体を地域を基盤とした状態にすることである. 生活の場を入所型施設とした場合と, 居宅あるいは地域とした場合とでは, 個人のニーズ及び その充足方法に違いが生じてくる. 最近では, 地域での生活には, 近隣の見守りや励ましといっ た, サービスという類型にはなじまないかたちの援助が不可欠であるということについて, 大方 の合意が得られるようになっている2). 他方, 地域生活を支えようとする実践からは, 地域で課題を抱えながら生活する人々への多様 な援助方法が生み出されてきている. 例えば, 「このゆびとーまれ」 をはじめとする 「富山型」 といわれる 「共生ケア」 の実践が展開されている. 「共生ケア」 は, 「①地域のなかで当たり前に 暮らすための小規模な居場所を提供し, ②利用の求めに対しては高齢者, 子ども, 障害者という 対象上の制約を与えることなく, ③その場で展開される多様な人間関係を, ともに生きるという 新たなコミュニティとして形づくる営み」 を要素にしたケアの形である. 「共生ケア」 では, 高 齢者や子どもなど多様な利用者の間の関係性はもとより, 利用者と近隣住民, 利用者とスタッフ, ボランティア, 利用者と家族などの間の主体的な関係形成を保障するための実践が行われており, こうした実践から, 「居場所」 という空間の中で形成される人間関係が, 問題解決機能を持って いることが指摘されている (平野編 2005:33). また, 精神保健福祉の分野では, 「べてるの家」 の実践からも, 丁寧な人間関係づくりこそが 有効な援助方法となりうるということが, 「 非 援助論」 というキーワードによって提起され ている (浦河べてるの家 2002). こうした様々な実践は, 社会福祉援助における主体と客体, す なわち援助する側と援助を受ける側という関係とは異なる関係性による問題解決の可能性を示唆 している. 従来の社会福祉の供給をめぐる議論では, 財の再配分によって供給されるサービスの供給シス テムを主眼においていた. しかし, これまで社会福祉の供給をめぐる議論の基本枠組みとされて きたニーズとその充足方法 (資源) は, 地域福祉実践という要素を導入した地域を基盤としたシ ステムにおいては異なるものとなることがこうした実践から明らかになりつつある. 地域を基盤 としたシステムにおいては, 前述したような 「居場所」 という空間も充足方法 (資源) の一部と
して捉えられる. 以上のことから社会福祉の供給体制の再構築に向けた課題を整理すると, 次のようになる. 一 つには, 社会福祉のみならず生活に関連する諸分野の政策・制度に広げた体制にすることである. これを横の広がりとするならば, 二つ目の課題は縦の広がりとでもいおうか. すなわち, 公的サー ビスの提供という方法, あるいは援助者と被援助者という関係性の中で課題の解決を図ろうとす る方法に加えて, 制度の 「狭間」 を埋める多様な方法を創造することである. 三つ目には, 制度 が設計上あるいは運用上の問題によって個人のニーズに一致しない点について, 修正可能な制度 システムの構造にすることである. 本稿では, このような課題を解決して新たに構築しようとする体制を, 従来の社会福祉供給シ ステムと区別して地域生活支援システムと呼ぶことにする. 地域生活支援システムとは, 地域生 活の実現を目的にして, 公的サービスはもとより, インフォーマルサービス, 場合によってはサー ビスという類型にはなじまない様々な相互支援・共生の営みをも生活支援の手段の一部に位置づ け, これらを利用者のニーズに応じて組み合わせて提供することを可能とするシステムである.
Ⅱ
社会福祉におけるニーズ概念
1 . ニーズの多様な理解 これまで社会福祉においてニーズという概念は, それを使う人や場面によってかなり異なる用 い方をされてきた. その違いは, 政策論から検討されてきたニーズ論と援助論から検討されてき たニーズ論との違いから派生しているものと考えられる. 援 助 論 に お い て し ば し ば 参 考 に さ れ て き た の は , ジ ョ ナ サ ン ・ ブ ラ ッ ド シ ョ ウ (J. Bradshaw) によるニード概念である. ブラッドショウは, ニードを, 規範的ニード (norma-tive need), 感じられたニード (felt need), 表出されたニード (expressed need), 比較ニード (comparative need) の 4 つに類型した. これによればニードとは, 専門家や行政官などが考え た基準によって判定されたものだけをいうのではなく, 本人が感じているという, 主観的な性格 をもつものもニードとみなされることになる. 三浦は, 実践分野で使用されているニードという用語とは区別して, 政策分野でのニードの定 義を示した. それは, 政策分野において把握するニードは, 「個々のニードに共通する社会的な 要援護性として把握する」 必要があるという理由からである. そして三浦は, 「ある種の状態が, 一定の目標なり, 基準からみて乖離の状態にある」 ものを広義のニードとし, 狭義のニードを 「回復, 改善等を行う必要があると社会的に認められたもの」 と定義した. また, 三浦は, ニー ドとニーズの概念を厳密に区別し, 集合論的に捉えた概念としてニードという用語を使用した (三浦 1980:59). しかし, しだいに社会福祉の分野では, 政策論を論じているか援助論を論じているかというこ とと関係なく, ここにあげた様々な意味を含めて使用される傾向が見受けられる. 論者によっては, 限定的な意味でニーズという用語を用いている場合がある一方で, 多様なタイプを混在させ てニーズという用語を用いている場合もある. こうした混乱の状況の中で武川正吾は, 福祉政策の分野に限定して, ニードやニーズではなく 必要という用語を使用すべきだと提起している. その第一の理由は, ニードやニーズと言い換え ると, 社会福祉が必要であるか否かを考えるのを妨げるからであるという. 必要は, 「何らかの 価値判断, しかも社会通念として確立した価値判断を前提にして」 おり, ここにニード・ニーズ との違いがある (武川 2009:137-138). また, 岩田正美は, 最低生活保障の検討をする際に必要という用語を用いている. 岩田は生活 の基礎的必要として, 「食料, 被服, その他日常財で充たされる必要」 「家具, 光熱水費等によっ て充足される必要」 「住宅によって満たされる必要」 「保育, 介護の必要」 「教育」 「医療, 保健」 「他の特別な必要」 をあげている. 論文の中で必要という用語の定義をされてはいないが, 文脈 からすると武川の定義と類似の意味で必要という用語を使用していると推測される (岩田 2006: 38). 2 . ストレングスモデルによる提起 こうした混乱にさらに新たな問題を提起したのがストレングスモデルである. 前述した三浦の定義は, 何らかの設定された基準を満たない場合に 「ニーズがある」 と判断さ れるという解釈である. こうした考え方は, 政策論に限らず援助論においても共通していた. つ まり, 皆ができることができない場合に 「援助が必要」 と判断されるのである. フェルトニード という主観的な性格のものをニードとしてみなす場合であっても, 「皆よりもできるようになり たい」 というものに対して 「援助が必要」 とは判断されてこなかった. それに対してストレングスモデルは, 「すべての人は目標や才能や自信を有しており, また, 環境には, 資源や人材や機会が内在している」 という見方を前提にして, その人のもつ問題では なく可能性に焦点をあてている. そして, その人の願望, 能力, 自信といった面のアセスメント を行う. こうした考え方は, 精神障害者に対するソーシャルワークの経験から生み出されたもの である. すなわち, 問題を探し出す活動では特定の解決方法があるという幻想を生み出すが, こ うした考え方で行われる実践が, 現実には成果をあげなかったという経験である (田中監訳 2008:59). したがって, ストレングス視点から行われるアセスメントでは, ニーズとして把握 される事柄とは異なる性格の事柄が把握されることになる. そしてそこから開始される問題解決 の過程は, 問題の把握から開始される過程とは異なる過程をたどるというのである. ストレングスモデルが提起しているのは, 単なるニーズ把握の方法ではなく, 問題解決の方法 である. すなわち, これまでニーズを把握することによって, それをサービスに結びつけようと してきた. これは, 一つのニーズに対して有効な特定のサービスが存在するという前提のもとに 構築されてきた方法であったといえる. ストレングスモデルは, こうした従来の方法の見直しの 必要を示唆している.
3 . 地域福祉ニーズ このようにニーズをめぐって多様な解釈がみられている. その論点はニーズを, 必要として理 解するか, 希望として理解するかという点にある. 必要という設定された基準に基づいて, 基準 に満たない部分を把握しようとするか, 希望という基準とは無関係のところで, 弱さ (マイナス 面) ではなく強さ (プラス面) を把握しようとするかである. こうした議論に, さらなる論点を 提起したのが, 地域福祉という視点からみたニーズ論である. 平野隆之は, 社会福祉の対象の把握方法として, ニーズとは別の 「地域生活」 という新たな概 念を提起した. 平野が 「地域生活」 が提起した意図は, 次のようなものである. 地域で生活する 人々の抱える問題を解決するには, 問題を抱える当事者だけではなく, 地域社会に変容を求める などの働きかけが必要である. したがって, それには当事者のニーズの把握だけではなく地域社 会の変化の必要性の把握をも視野にいれた把握方法を必要とする (平野 2002). また, 宮城孝は, コミュニティソーシャルワークの展開過程の研究の中で, アセスメントの内 容を, ①個別アセスメント, ②潜在的ニーズの把握, ③地域アセスメント, と整理している. 宮 城はニーズという用語を用いてはいないが, 個人の課題を解決するための支援を展開するにあたっ て, 支援の場である地域の状況を把握することの必要を提起したといってよい (宮城 2008). さらに, 鷹野吉章はこれを発展させて地域福祉ニーズについて検討している. 鷹野は, 公的な 福祉サービスによって充足されてきた体制の中では, 実質的に個人の必要性と同義語とされてき たが, 地域福祉という範疇から考え直したときには, 「集団や地域全体の福祉等の活動上の諸ニー ズも含むべき」 だと指摘した. そして, 鷹野は, 地域福祉ニーズの種類を, 生活上のニーズと福 祉活動上のニーズとに整理している. 生活上のニーズを保持するのは, 「地域住民, なかでも福 祉サービスを必要とする住民, または福祉サービス利用当事者組織」 であり, 福祉活動上のニー ズを保持するのは, 「福祉活動を行う地域住民, 民生委員・児童委員, 福祉ボランティア, NPO 団体, 福祉事業者」 である (鷹野 2009:12-13). こうした地域福祉分野の研究者からの提起は, 課題を抱える個人の解決に, 制度による解決だ けではない多様な支援手段を用いようとする地域生活支援を考える上において, 重要な意味をもっ ている. 同時に, 多様なニーズ把握の視点が提起されたことによって, 本来そこから導かれるべ きニーズの充足方法が拡散してしまい, 結果として課題の解決に結びつかないことが危惧される. 多様な種類のニーズが想定される中で, 課題の解決に効果的なニーズの把握方法はいかなるもの であるかということが問題となる. 4 . 地域生活支援のニーズ把握 これについては, 過疎地域に対する政策研究から示唆を得ることができる. 村落研究の研究者 である秋津元輝は, 1960 年代から進められた国の過疎地域に対する政策を引き合いに出しなが ら, 集落の実態を捉える際に, 集落の再生を目標としておく場合と, 「消滅もやむなし」 の姿勢 をとる場合とでは, 見えてくるものが違うと指摘している (秋津 2009). 秋津によれば, 1960
年代に展開された国の過疎対策の主たる方法の一つは, 集落移転という方法であった. これは, 過疎地域では必要を充足しえないために, 必要を充足している地域へと移住させることによって, 過疎地域の住民の必要を充足させようとした政策であったといえる. しかし, 目標の設定の仕方 によっては, 集落移転以外の必要の充足の仕方もあるという指摘である. 類似のことが別の立場からも指摘されている. 釜石市の事例研究などをもとに, 希望学を研究 する玄田有史らは, 個人の形成する希望が社会状況を変えていく可能性を秘めていると述べてい る. つまり, 個人と個人がつながることによって, 個人の力量を超えた希望を実現する可能性が みえてくるという (玄田・宇野 2009:xxiii). これらの研究を踏まえると, 地域の構成員である個人が, どのように生きたいかという目標を もち, そのために他者と関わるための何らかの行動を起こすことによって, 既存の問題解決の方 法とは異なる新たな解決方法を見出す可能性があると仮定することができる. そして, 新たな解 決方法が見出されることによって, 従来は充足が困難であるとみなされていた地域レベルの必要 が, 充足可能となる可能性をもっていると考えることができる. つまり, 個人のニーズを, 必要という面から把握するか, 希望という面から把握するかによっ て, 地域の必要に対する充足の可能性が異なってくるということになる. 個人のニーズと地域の ニーズとを別々に把握するのではなく, 両者を関連づけて把握することに意味があるといえる. ただし, 個々のレベルからみると, 個人の希望が地域の希望や必要と合致するとは限らない. 地域という集合的に捉えるニーズは, マイノリティの人々の希望に対する配慮が不足することが 少なくないといえる. したがって, 地域生活支援システムにおいては, 社会福祉供給の論理で判 定される必要と, 地域の変容をもたらす可能性を秘めた希望との融合を図るための 「場」 を設け ることが重要な課題となる. その上で, 設定された 「場」 が地域の必要の充足という結果に向け て進行できるようにする運営方法を検討する必要がある.
Ⅲ
地域生活のニーズ
1 . 地域生活のニーズの種類 地域で生活をしている住民は, 実際にどのような生活上のニーズを感じているのだろうか. 地域生活のニーズの内容を明らかにするために, とりわけ生活問題が深刻化していると考えら れる大都市部と過疎地域という二つのタイプの地域を取り上げて, ニーズの分析を行うこととす る3). 大都市部の事例として使用するのは, 名古屋市北区である. 名古屋市北区は, 政令指定都市で ある名古屋市の北に位置している. 主要道路網や JR, 私鉄, 地下鉄, 市バスなどが縦横に通じ ており, 名古屋市の産業発展に重要な役割を果たしてきた地域である. 人口は 165,886 人 (2009 年 4 月現在) で, 名古屋市内 16 区の中で三番目に多い区である. 過疎地の事例として使用するのは, 山形県最上町である. 最上町は, 山形県のちょうど中央の山間に位置する町である. 1970 年には 14,540 人であった人口は, 徐々に減り続けて 2009 年 3 月末には 10,393 人, 高齢化率は 29.3%となった. かつては主産業であった林業・農業が衰退し, 地域の資源である温泉を活かした観光に重点を置いた政策を展開してきたが, 近年では観光客の 減少も著しい. この二地域で住民を対象とした懇談会を開催し, そこで住民があげた地域の課題を整理すると, 図 1 にあげた項目に分けることができる. 2 . 日常生活の基盤 生活環境:生活インフラ, 安全など 住民が生活に必要な事柄の一つとしてあげているのは, 生活インフラである. 生活インフラに 関わる意見の中には, 共通してあげられる道路, 下水道とあわせて, 積雪の多い最上町の場合に は, 除雪の設備や方法に関する事柄があげられているのが特徴である. 生活インフラに加えて, 住民があげているのが安全に関わる事柄である. 大都市部にある名古 屋市北区の場合には, ひったくり, 放火, 通り魔などの犯罪が多発しており, 防犯は安心して暮 らせる地域であることの重要な条件となっている. 安全に関するもう一つの関心事は, 防災である. 偶然にも懇談会を実施した時期, 二つの地域 はそれぞれに災害に対する不安材料を抱えていた. 名古屋市北区では, 集中豪雨による水害に遭っ た直後であった. 区内の多くの家屋が, 床上浸水の被害に遭っていた. 他方, 最上町では, 隣接する新潟県で中越地震が発生したばかりであった. こうした背景もあっ て, 両方の地域でそれぞれに防災が住民の大きな関心事となっていた. 防災対策に関する住民の 関心は, 「避難する場所 (公園等) がない」 「防災無線のスピーカーの音が聞こえない」 など設備 の面だけでなく, 「プライバシー問題があるため, 障害を持った方の災害対策が行われていない」 「中越地震規模の災害が発生した場合, 孤立化の可能性が大, 対策方法は」 など, 被災時の支援 に関わる問題にも寄せられている. これらに加えて住民が関心を寄せているのが, 自然環境についてである. 大都市部に位置する 図 1. 地域生活におけるニーズ 生活困難:福祉サービス 生活困難への予防 日常生活:移動, 買い物など 生活基盤:住宅, 仕事 (=収入) 生活環境:生活インフラ, 安全など
名古屋市北区の場合には, 住民は, 公害問題や川のヘドロなどによる自然環境の悪化に不安を抱 えている. 他方, 過疎地域の最上町の場合には, 自然環境は仕事や収入に関わる関心事となっている. す なわち, 家計収入の中に農業収入が含まれている住民にとって, 農作物のでき具合は家計を左右 する問題である. 農業収入のためには, よい農作物を生産するための自然環境を維持する必要が あるという意味で, 住民は自然環境の維持に強い関心を寄せている. また最上町の住民は, 中越 地震の経験などから, 自然環境の管理の如何によっては住む家を奪われることにもつながりかね ないという意識をもっている. 生活基盤:住宅・仕事 (収入) このような地域の生活環境の上に, 個人・家族の生活が築かれることになる. 個人・家族の生 活基盤となるのは, 住宅と, 住宅を含めた生活必需品を入手するための収入である. その収入源 となるのが仕事である. ここでいう生活基盤には, これら住宅, 仕事 (収入) が含まれている. 住宅に関わる事柄として, 名古屋市北区では, 「豪雨の後, 地域から離れていった老人がいる」 という意見が出されている. 発言した住民の趣旨は, それまで同じ地域の住民であった人が離れ たことのさびしさを訴えることにあったと推測される. しかし, この発言からは, 大都市部でひ とたび困難な事態を経験すると, その後に同じ場所で生活再建することの難しさをうかがうこと ができる. 他方, 最上町では, 「高齢家族に対する住宅の維持・管理はどうあるべきか」 という問題が出 されている. 住宅の維持・管理は, 私的に行われる範囲のものである. しかし, 空き家がそのま ま放置されている, 積雪の多い冬季に雪でつぶされる恐れがある古い家があるなど, 私的に解決 することに限界が生じている実態がみられている. 放置されたままになっている空き家が放火な どの犯罪の原因になる可能性や, 屋根に積もった雪が隣家や道路に落ちてきて事故を招く危険性 があるなどから, 住民にとってはこのことを他人の家のこととして見過ごすことのできない問題 となっている. また, 収入を得るための仕事への関心は, 地域のおかれている状況によって違いがみられてい る. 比較的雇用の機会を得やすい名古屋市の一部に属している北区では, 仕事についてとりたて て関心が寄せられていない. しかし, 最上町では 「仕事をする場がない」 ということが住民の深 刻な問題となっている. 働く場がなければ, その地域で生活すること自体が困難となる. そして このことは個々の生活の維持だけでなく, 地域の維持の困難へとつながっている. こうした問題 を解決するためには, 地域の産業の活性化が必要となる. それは, 個人の課題ではなく, 地域全 体で取り組むべき性格の課題である.
3 . 日常生活のニーズ 住民が日常生活を送る上で不可欠なものとして認識しているのは, 移動, 買い物, ゴミ捨て, 生活情報, 健康とそれを害したときの医療, そして教育 (学校) である. ① 移動・買い物 移動は, 買い物をはじめとする日常生活上の様々な行為を行う上で不可欠な要件といえる. 公 共交通機関が不十分である最上町では, 「車がないと不便」 「公共交通の手段がない」 という問題 があげられている. 他方, 多様な公共交通機関が整備されている名古屋市北区では, これとは異なった意味で移動 の問題を指摘している. 例えば, 「地下鉄ができることで, バス路線の変更等, 高齢者が不便に なっている」 「地下鉄は階段が多すぎて高齢者にはたいへんである」 など, 公共交通機関の利用 上の問題である. 買い物は, 移動と関連の深い問題である, 最上町では 「店がない」 「運転できない人が買い物 に出かけるのにバス停が遠い」 などの問題が出されている. 他方, 名古屋市北区は 「大型スーパー ができて便利になった」 という声があるが, 郊外にできた大型スーパーに行くには車が必要であ る. 車の運転ができない人にとっては, 従来の商店街の方が便利であるが, 大型スーパーができ たために商店街の客が減少し, 空き店舗もみられるようになっている. そうした中で 「商店街が 活性化していない」 という問題が出されている. 名古屋市北区で話題となっている移動や買い物に関わる問題は, たとえ公共交通機関や店が用 意されても, それを利用できない立場の人の問題が残るということを現している. 買い物が不便 であるという問題は, 最上町では地域の共通の問題として現れているが, 名古屋市北区では少数 の弱い立場の人の問題として現れている. そのために名古屋市北区の場合には, 最上町に比較す ると, 買い物が不便であるという問題を地域の問題として認識されることに難しさがあるといえ る. ② ゴミ出し 日常生活の中から出されるゴミをめぐる問題は, どちらの地域でも話題にあげられている. 具 体的には, 「高齢者にゴミの分別を理解してもらうのが難しかった」 「ゴミの出し方, 外国人や若 い単身世帯への協力の呼びかけ」 「資源ごみ回収の指導当番がなくなるようにしてもらいたい」 などの意見が出されている. これらにみるように, ゴミをテーマに出されている意見は, 地域で 決めたルールを守るという暮らし方についての問題提起でもある. ③ 情報の入手 情報に関わって住民から出された意見の一つには, 「子ども, 孫などの通学者のいない家庭に は, 学区の連絡がない」 との意見に代表されるように, 身近な地域の情報を求めるものである.
住民は, 行政が作成する広報紙やホームページなどには取り上げられない狭い範囲の地域の情報 を求めている. こうした情報は, 例えば小学校に通う子どもがいるなど, 地域と何らかの接点を もつ住民には自然に入ってくる性格のものであるが, 反対に, 地域との接点をもたない住民には 入手しにくい性格の情報であるといえる. もう一つは, 情報へのアクセスに関わる問題である. 例えば, 「市のホームページから情報は 取りだせるが, パソコンをもっていない人や高齢者には使えない」 「回覧板は通達が浸透してい ない」 という意見にみられるように, 情報を提供する側が提供しても, 個々の住民には届いてい ないという問題が指摘されている. ④ 医療−健康 病気になった時に受診できる医療機関が存在しているということが, 日常生活を送る上で不可 欠であることはいうまでもない. それにもかかわらず最上町では, 「総合病院がない」 「診療所が なくなった」 「産科, 小児科がない, 遠い」 など, 医療機関が不足している現状が明らかになっ ている. また, 名古屋市北区では医療機関は存在しているものの 「近くの医師の往診がなかなかきても らえない」 「安心してかかれる病院がない」 「病院への送迎を車椅子でないとしてもらえない」 な ど, 医療サービスを利用する上で不便な問題が生じている. 医療が十分に用意されていることと対になっている住民の関心事は, 健康の維持である. 健康 の維持という課題は, 「いつまでも若くて, 元気でいたい」 という願望であると同時に, 必要で もある. 住民からは 「健康対策がない」 「定期健康診断の無料化, 奨励」 などの行政の施策への 要望や, 「たばこの喫煙 (が問題). 禁煙をすすめるべき」 「ラジオ体操やウオーキングを奨励す る」 などの住民が取り組むべき課題も出されている. ⑤ 教育 (学校) 子どもが成長する上において学校が存在することは不可欠のことであり, この必要についての 議論の余地はないといえる. しかし, 過疎化が進行する最上町では, 「少子化により学校の規模 が小さく存在が危うい」 「高校がない」 という問題が生じている. 4 . 生活困難への対応:福祉サービス, 予防的支援 これまで取り上げてきたような人々に共通する生活基盤が用意されていてもなお不便や不足な ど生活上の困難が生じた場合に, 個別的に必要となるのが福祉サービスである. 住民が必要とし て捉えている福祉サービスは, 二種類に大別することができる. 一つは, 実際に社会福祉・社会保障の法制度で対応している範囲の類である. 多くの住民の関 心は, 高齢者介護サービスと保育サービスに寄せられている. これらに関連する施設の不足や, サービスの利用しにくさなど, 多くの意見が出されている. こうした特定の困難な状況に直面し
た人々への福祉サービスが必要なことは自明のことである. これとは別に住民から出されている様々な意見は, 一言でいえば, バルネラブルな人々への支 援の必要である. 具体的には, 「若いお母さんが子育てについて話し合える場所がほしい」 「閉じ こもりの老人が多い」 「生きがいやサークルがほしい」 「老人世帯に対する訪問販売」 等々である. このようなバルネラブルな人々の問題は, 前で取り上げた生活環境などの項目で出されている 意見と重なるところも少なくない. 「歩道がしっかり確保されておらず, 自転車に乗った老人が 危ない」 「高齢者や障害者など災害弱者について, 災害対策が行われていない」 「高齢者一人暮ら しの除雪が大変, 先が心配」 などの意見がみられている. これらの意見の中で話題にのぼっている人々は, 現時点で困難な状況に陥っているわけではな い. また, 今後, 話題にのぼった人すべてが, 社会福祉・社会保障制度を利用しなければならな いような困難な状況に陥るというわけでもないだろう. しかし, これらへの対応がなされなけれ ば, 一部には何らかの困難な状況が発生する恐れはある. つまり, 住民が望んでいるのは, 困難 に陥らないための予防的支援である. 5 . 地域によるニーズの相違 以上取り上げてきたニーズを総合して, 大都市部と過疎地域とを比較してみると, 大都市部で は, 例えば過疎地域で 「除排雪の設備が整備されていない」 とあるような施設設備の不足につい ての発言はほとんどみられていない. 大都市部では, 「施設の閉館時間が早いので利用しにくい」 「公共施設に段差があって障害者が利用しにくい」 など, 一定の施設が用意されていることを前 提にした改善点があげられている. それに対して過疎地域では, 施設・サービスそれ自体の不足 があげられている. それは保健・医療・福祉分野においても同様である. 例えば, 両方の地域の懇談会では医療に 関しても話題にのぼった. しかしその内容は, 大都市部では 「医療情報がない」 「よい病院を知 りたい」 という多数のサービスが存在する中での情報提供のあり方が問題になっていたのに対し て, 過疎地域では 「診療所がなくなった」 「小児科がない」 というようにサービスが存在しない ことが問題になっており, 両方の地域で取り上げられた問題の性格はかなり異なったものとなっ ている. その結果として, 住民の地域組織に対する認識も大きく異なっている. 大都市部では地域の文 化を創造していく場の活動単位として地域の組織が捉えられているのに対して, 過疎地域では日 常生活を維持していくための単位として地域の組織が捉えられている. 過疎地域では, 生活基盤となるインフラの整備自体が遅れたままに今日に至っている. そして, さらなる過疎化の進行と地方分権政策の推進が, 今後のインフラ整備への対応の困難を予測させ る. また, 担い手の不足を理由に, 伝統的に行われてきた祭りなどの季節ごとの行事を廃止して いる集落も少なくない. このことは, 活動によって直接的にもたらされる利益だけでなく, 心の 結びつきにも影響を与えている. 頼れる人がいない, 集落の将来を担ってくれる若者がいないと
いう状況が, そこに暮らす人々を 「何となく不安」 という気持ちにさせている. このような状況 の中で, 過疎地域ではその場所で基本的な生活が継続できるようにすることが第一の課題となる ことが予想される. したがって, 過疎地域では, 定住を可能にするための生活基盤に関するニー ズの把握とその充足がより重要な意味をもつものであると考えられる.
Ⅳ
地域生活のニーズの充足方法
1 . 日常生活におけるニーズ これまでみたように実際に日常生活を営んでいる人々が求めている内容は, 広範囲に及んでい る. これらの項目のどれがもっとも重要であるかという優先順位をつけることは困難である. こ のうちのどれが欠けても生活は成立しえない. また, 求められている内容の中には, 複数の要件 との関連をもっているものも多々ある. 例えば, 前にあげた 「歩道がしっかり確保されておらず, 自転車に乗った老人が危ない」 という課題は, 道路の整備という課題であると同時に, 高齢者の 生活への支援の課題でもある. そして, これらの充足には相互に関連性をもっている. 「ショー トステイがない」 という課題を解決するために, サービスを提供する事業を立ち上げることによっ て, 介護サービスを必要とする人に応えるだけでなく, 雇用の場の創出につなげようとする方法 もある. 古川孝順は, 社会福祉の対象を, 生活ニーズ, 生活支援ニーズと区別して, 社会的生活支援ニー ズ (所得保障ニーズ, 保健医療ニーズ, 福祉ニーズ) と説明している. ここでいう生活ニーズとは, 人間が生きるために充足されなければならない必要や欠乏, 欲求 という意味での一般ニーズのうち, 「①充足の有無が直接的に生命と活力の維持・再生産に関わっ ている, ②充足が社会関係や社会制度との関わりのなかで行われる, という 2 つの条件を満たす もの」 である (古川 2003:126). 生活支援ニーズとは, 「生活者の生命や活力の維持再生産に不 可欠とされる生活ニーズが通常の自助努力の水路によって十分に充足されえないところに形成さ れるニーズ」 である (古川 2003:127). そして, 社会関係や社会制度とのかかわりのなかで生活支援ニーズがインフォーマル, 市場, 民間によって充足されない場合や欠落した場合に, 社会的生活支援ニーズが形成される. そして, それに対応するサービスが社会的生活支援サービス (所得保障サービス, 保健医療サービス, 福 祉サービス) であり, 社会福祉は, 社会的生活支援サービスの一部に関わるものであるという (古川 2003:126-134). ここでいう福祉ニーズとは, 「福祉サービスによって充足 (困難や障害の除去や緩和による生 活支援, 治療, アフターケア) が期待される」 ニーズである (古川 2003:133). これまで説明 してきた住民の意見のうちの 「生活困難」 「生活困難への予防」 が, これに対応していると考え てよいだろう. ただし厳密にいえば, 住民の意見の中には古川が想定しているものとは異なる内 容を含んでいるものも見られる. 例えば, 「空き家を借りて, 高齢者のサロンをできないか」 「老人給食会などで, 会に出て来れない方をどのようにすればよいか」 など, 直接的に福祉サービス に対応させることができない性格の意見がみられる. これらの意見の中には, 発言する住民が理 想とする地域のイメージをもっており, それに向けて行動したいという意思が含まれていると受 け取れる. 保健医療ニーズに関しても同様である. 住民の意見の中には 「たばこの喫煙 (が問題). 禁煙 をすすめるべき」 「ラジオ体操やウオーキングを奨励する」 など, 必要という意味よりも希望と いう意味に近いニーズがあげられている. 所得保障ニーズに関わる意見でも 「個人商店は難しい」 「農業所得の減少」 などがみられるが, このニーズへの対応がすべて所得保障サービスによって行われるとは言い難い. 意見を出した住 民自身も, この要望を公的扶助やその他の所得保障によって解決することを望んでいるわけでは なく, 生活費として必要な収入が得られるだけの仕事を求めている面をもっている. さらに, 地域生活のニーズには, 民生児童委員の活動にみられるように, 既存のサービスの隙 間に生まれるニーズも存在することが明らかになっている (小松 2007a). このように地域生活 におけるニーズを捉えると, 古川の想定したニーズとサービスという, いわば一対一の関係では ない複数の選択肢を想定することができる. 2 . 生活支援ニーズとその充足方法 地域生活におけるニーズを起点にして, その充足方法に結びつける道筋を示したのが図 2 であ る. 地域生活のニーズには, 古川が社会的支援ニーズと説明したニーズ (a) が存在する. これは 社会的生活支援サービスという現状でいえば制度によって提供されているサービス (A) によっ て充足することが前提となっている. ただし, 本来は A のサービスが対応すべきニーズがあっ ても, ニーズの発生からサービス提供までの間に隙間が生まれる. それが制度の隙間ニーズ (a') である. 制度の隙間ニーズ (a') は, A のサービスが充足されるまでの間, A 以外の充足方法に よって充足されることになる. 生活支援ニーズ (b) は, 生活支援サービス (B) によって充足されることが基本となる. た だし, 生活支援ニーズの中には, それに対応するサービス (B) が地域の中に存在しないことも 想定される. そうした場合には, 地域によって何らかの充足手段 (B') が用意される必要がある. その中には, 地域によって新たな生活支援サービスを創出する方法や, 「居場所」 の提供や見守 りなど多様な方法が想定される. 生活ニーズ (c) は, 市場によって提供される生活サービス (C) によって充足されることが 基本となる. ただし, 住民が持っている生活ニーズの中には, 健康を維持するために 「ラジオ体 操やウォーキングを奨励する」 など, 必要という意味よりも希望という意味に近いニーズもみら れる. こうしたニーズは, 個別的には, 企業の経営するスポーツクラブへの加入といった生活サー ビス (C) による充足も可能である. しかしこのような住民の意見の中には, 自分自身だけでな
く近隣住民も含めて健康で暮らせるようにしたいという意思が含まれている. このことが地域の 活力になり, 自分自身がいきいきと暮らすことができる地域になるという期待や, 支援を必要と する人を増やさないことが自分の暮らす地域や自治体にとって有益であるという趣旨が, このよ うな意見には含まれている. このような趣旨を考えると, 生活ニーズ (c) の充足方法は, 地域 による充足手段 (C') という選択肢も想定可能である. さらに, これらのニーズとは異質なニーズとして参加ニーズ (z) が想定される. これは, 例 えば 「サロンを開きたい」 という意見にみられるような, 自らの参加によって地域を変えたいと いうニーズである. こうした参加ニーズ (z) が, 地域による充足手段の提供 (B' や C') や生活 支援サービス (B) に結びつくことによって, 当該地域のニーズの充足方法がより豊かなものと なる. 以上のことを考えると, ニーズと充足方法との間に, 一対一対応ではない多様な経路をもつボッ クスが必要になってくる. このボックスが, 透明でどこからも見えるボックスになっていること によって, 多様な経路の開発が可能となると考えられる. 注 1 ) 三浦文夫は, 社会福祉経営論の議論を, R. ティトマスのソーシャルアドミニストレーション論を援 用し, 「その基礎には, 社会福祉が目的とする人間の自立と社会的統合が妨げられている社会福祉ニー ドがどのようなものであり, そしてそのニードの充足に必要な方法はどのようなものであるのかという ことの検討が不可欠である」 とし, 社会福祉のニードとその充足方法から研究を進めている. 三浦文夫 (1980) 増補 社会福祉政策研究―社会福祉経営論ノート― 全国社会福祉協議会, 45 ページ 2 ) 例えば, 厚生労働省が設置した 「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」 が 2008 年 3 月にま とめた報告書では, 「新たな支えあい」 の概念の中に, 共助の活動を位置づけ, 住民による 「身近な相 談や見守り, 声かけ」 があげられている. 3 ) 各地での住民懇談会は, 市町村地域福祉計画の策定過程の中で開催されたものである. それぞれの計 画の策定期間及び懇談会の実施時期は, 次のとおりである. 図 2. 地域生活のニーズと充足方法
「場」
A 社会的生活支援サービス (制度) 充足方法 B 生活支援サービス (制度外サービス) B' 地域による充足手段 C' 地域による充足手段 C 生活サービス (市場) ニーズ a 社会的支援ニーズ a' 制度の隙間ニーズ b 生活支援ニーズ c 生活ニーズ Z 参加ニーズこれらの地域福祉計画の策定に, 筆者は策定委員として関わっている. 本論で取り上げている住民の 意見は, 計画書の中に掲載され, 公表されているものを使用している. 文献 秋元美世 (2007) 福祉政策と権利保障 法律文化社 秋元美世 (2010) 社会福祉の利用者と人権 有斐閣 チャールズ・A・ラップ, リチャード・J・ゴスチャ著 / 田中英樹監訳 (2008) ストレングスモデル―精 神障害者のためのケースマネジメント 金剛出版 (Charles Anthony Rapp・Richard Joseph Goscha (2006) The Strength Model-Case Management with Psychiatric Disabilities, Second Edition, Oxford University Press) 古川孝順 (2001) 社会福祉の運営 有斐閣 古川孝順 (2003) 社会福祉原論 誠信書房 平野隆之 (2002) 「社会福祉の対象」 岡本民夫・小林良二・高田眞治編著 社会福祉原論 ミネルヴァ書 房, 47-70 ページ 平野隆之編著(2005) 共生ケアの営みと支援 全国コミュニティライフサポートセンター 岩田正美 (2006) 「最低生活保障のゆくえ」 鉄道弘済会 社会福祉研究 第 96 号, 32-39 ページ 小林良二 (2007) 「地域生活支援システムの現状と課題」 鉄道弘済会 社会福祉研究 第 99 号, 31-36 ペー ジ 小松理佐子 (2007a) 「地域における相談活動と家族支援ネットワーク―民生委員児童委員の役割を考える」 鉄道弘済会 社会福祉研究 第 98 号, 42-49 ページ 小松理佐子 (2007b) 「過疎地域に求められる地域福祉計画」 牧里毎治・野口定久編 協働と参加の地域福 祉計画 ミネルヴァ書房, 99-106 ページ 小松理佐子 (2010) 「過疎地域から考える地域福祉―生活の継続を可能にする地域福祉活動―」 日本生命 済生会 地域福祉研究 №38, 25-34 ページ 宮城孝 (2008) 「CSW の展開過程」 日本地域福祉研究所 コミュニティソーシャルワーク 創刊号, 25-34 ページ 三浦文夫 (1980) 増補 社会福祉政策研究―社会福祉経営論ノート― 全国社会福祉協議会 日本村落研究学会監修・秋津元輝編 (2009) 集落再生―農山村・離島の実情と対策 農文協 鷹野吉章 (2009) 「福祉ニーズの論点とニーズ顕在化― 地域福祉ニーズ を展望して―」 日本地域福祉研 究所 コミュニティソーシャルワーク 3 号, 5-14 ページ 武川正吾 (2006) 「福祉社会のガバナンス」 福祉社会学会 福祉社会学研究 3 東信堂, 48-66 ページ 武川正吾 (2009) 「福祉政策における必要と資源」 社会福祉士養成講座編集委員会編 新・社会福祉士養 成講座④現代社会と福祉―社会福祉原論― 中央法規出版, 119-142 ページ 東大社研・玄田有史・宇野重視編 (2009) 希望学[1]希望を語る―社会科学の新たな地平へ― 東京大学 出版会 上野谷加代子 (2009) 「共に支えあう仕組みの構築」 鉄道弘済会 社会福祉研究 第 104 号, 20-33 ページ 浦河べてるの家 (2002) べてるの家の 「非」 援助論 医学書院 策定期間 住民懇談会の実施時期 名古屋市北区 2003 年 3 月∼2004 年 5 月 2003 年 5 月∼9 月 山形県最上町 2004 年 4 月∼2006 年 10 月 2005 年 1 月∼2 月