椙山女学園大学
児童の間食と生活状況の関連性
著者
加賀谷 みえ子
雑誌名
椙山女学園大学研究論集 第1部
号
20
ページ
p179-187
発行年
1989
URL
http://id.nii.ac.jp/1454/00003008/
児童の間食と生活状況の関連性
加賀谷みえ子。木村友子。福谷洋子。小杉信之
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Mieko KAGA YA, Tomoko KIMURA, Yoko FuKUY A and Shinshi KosuGI
緒 言
児童の間食は食事とともに食生活に果す役割が大きく,また,間食の与え方が悪いと 1 日の栄養摂取状態や食習慣の形成・健康面に悪影響を及ほすと考えられる。しかし,児童 の間食摂取状況の実態調査はあまり報告されていない。そこで,間食摂取の実態を把握し 栄養的視点からも好ましい間食の摂り方を指摘し,健康的な生活習慣を自主的に身につけ させることを目的として,我々は間食に関する意識調査を行い,食生活と間食との関連を 検討し,留意すべき若干の知見を得たので報告する。2
調査方法
1) 調査対象 名古屋市内に在住する市立小学校24校の 5 ・ 6年生,男子 545名 (51%),女子 517名 (49%)の児童 1,062名を対象とした。 2) 調査期日は昭和62年 9月 7日∼ 9月12日。 3) 調査内容は,①生活状況;家族構成,母親の職業の有無別,歯みがきとうがいの状 況,食事の喫食環境。②身体状況;身長,体重,体型,う歯有無。③食生活状況; 3日間 食事状況,食欲。④間食の有無。⑤間食の摂取頻度。⑥間食の喫食時間。⑦間食の種類別 喫食状況。⑧間食の調達方法。⑨間食の手作り体験率と手作り意識度などである。ただし, 児童への質問は栄養士養成課程校外実習校において1学級単位に自記式アンケート用紙を 配布し各項目ごとに説明を加えつつ児童に記入させ,記入終了後,直ちに回収した。また 間食喫食頻度は「侮日食べる」を十7, 「週3 4回食べる」を+ 3.5, 「週1 2回食べる」 を十1さらに種類別喫食頻度での「食べない」は0として付加し数量化し算出した。なお 児童の身長・体重・う歯有無は,定期健康診断の検査実測値を用いた。 調査紙配布数の回収率は 100 %であった。調査結果は男女別•世代別・体型別・う歯の 有無別・母親の職業有無別に区分し集計し,X2
検定を行った。加賀谷みえ子・木村友子・福谷洋子・小杉信之
3
結果と考察
1)生活状況 児 童 の 家 族 人 数 は 平 均 4.7人 で あ り , 兄 弟 姉 妹 の 人 数 は 平 均 2.3人である。核家族は 72.2%であり,他の27.8%は祖父母との同居による3世代家族であり,母親が職業をもっ ている児童は52%であった。 食後の歯みがき・うがい状況の結果を図1に示した。歯みがきやうがいをする児童(時 々する者を含め) 66%で,男女別では女子の方が男子より11%多く,X2
検定の結果,有 意差が認められた。 食卓を囲む人数は図2の通りで,孤食者は全児童では朝食13%, 夕 食4%であった。体 型別には朝食・タ食ともに肥満児がやや高い傾向を示した。また,男女別,世代別につい ても検討したが差がみられなかった。゜
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2) 身体状況 児童の平均身長は男子 142.4士 7.5cm, 女子 144.0士 7.9cm, 平均体重は男子 36.4土 7.9kg, 女子37.4士 8.3kgであった。 1987年度学校保健統計調査報告書1)と比べ,身長・ 体重共にほぼ同程度であった。次に体型について児童肥満度判定法(ローレル指数)から 求めた結果を図3に示した。全児童では普通が76%と最も多く,やせは 19%,肥満は 5% であった。男女別では女子はやせの児童が男子より 5%多い傾向にあり,有意差が認めら れた。 う歯の現状を図4に示した。う歯有り (未処置歯+処置歯)の児童は81%であり, 1987 年度学校保健統計調査成績1)の10・ 11歳の全国平均91%より下回り, しかもう歯未処置の 児童は全国平均値より低い傾向にあった。男女別には有意差は認められなかった。 3) 食生活状況 食欲について,食欲がある児童は朝食94.2%,昼食(給食) 96.9%,夕食98.4%に及ん でおり,男女間に差は見られなかった。 平日 3日間の食事喫食状況においての欠食率は朝食平均 6%,夕食平均 3%であった。 男女別•世代別・体型別の差は何れも僅少で有意差は認められなかった。理由として「食 べる時間がない」 85%で圧倒的に多く,「食べたくない」 7%,「太りたくない」 4%,「そ の他(習慣など)」4%であった。対象者は成長期で運動量も激しい年齢でもあり,食事の 配慮が大切でありながら,児童の不規則な生活が欠食を招くー要因となっていた。
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処置歯 未処置歯 う歯無し 図4. う歯の状況加賀谷みえ子・木村友子・福谷洋子・小杉信之 4)間食の喫食率と間食の摂取頻度 間食の喫食率は男子97.2% (530人),女子98.8% (511人)と高率を示した。これは 齋藤ら2)の調査でも男子94.5%,女子98.4%で同様な傾向が見られた。 一週間中に摂取した間食の頻度を図5に示した。全児童では平均 4.5回/週で,男女別 では女子が男子を上回り有意差が認められた。また体型別では肥満児の喫食頻度は普通・ やせ型の児童を下回る傾向を示したが有意差は認められなかった。 間食の1日当りの喫食回数(図6)は,全児童 1.4回摂取しており,男女間にほとんど 差は見られないが,体型別には肥満児で 1.0回とやや低い値を示した。これは肥満児にと って太っている意識からと推察されるが,摂取量が問題となりうる。
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(複数回答) 間食時間゜
決まっている 決まっていない1 決まっているI
決まっていない1 決まっているI
決まっていない1゜
20 40 60 80(%) 圃璽全児童 匡 男 仁コ女*
P <0.05 図 7.間食の喫食時間 25 50 75 100(%) く朝 食〉 64 l 34 ヽ12 --—一 ,,│61 53I
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1亡
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く男 25 女 5 0 別〉 75 品 目 1.果 物 類 2.乳 菓 子 類 3.清 涼 飲 料 4 5 6 7 ー 184 ー 8 9 11 スナック菓子 牛 乳 嗜好飲料・ コーヒー牛乳 チョコレート ガム 軽 食 類 飴 キャラメル 10.洋 菓 子 類 ビスケット・ クッキー 12.せんべい・ あられ 13.芋・枝豆・ とうもろこし 14.和 菓 子 類 * * * P <0.005 **P<0.01 * P <0.05 く体 型 別〉 < う 歯 有 無 別 〉 100(%) 0 25 50 75 190(%) O 25 50 75 100(%) 頻 度 平 均 値 ' I I I ’頻度平均値 '’
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1回食べる 巴 巴 食 べ な い6) 間食の種類別喫食状況 男女別・体型別・う歯有無別に間食の種類の摂取頻度分布に差があるか否かを調べ,結 果を図9に示した。種類別 14品目中,男女間では果物類,清涼飲料,嗜好飲料,軽食類・ 飴・キャラメル,洋菓子類,ビスケット・クッキー,芋・枝豆・とうもろこし,和菓子類 の9品目に,体型別では清涼飲料,スナック菓子,嗜好飲料,飴・キャラメルの4品目に, う歯有無別では清涼飲料,嗜好飲料の2品目において有意差が認められた。平均喫食頻度 について一週間に 4回以上食べている品目は,各区別において果物類,乳菓子類,清涼飲 料,スナック菓子,牛乳,チョコレート・ガム(体型別のやせ型のみ)であり,洋風系統 の嗜好が好まれた。一方,素材的な芋・枝豆・とうもろこし,和菓子類は各区別とも,や や低喫食頻度であった。体型別では肥満児は,普通,やせの児童に比べ,種類別の11品目 において低頻度を示し,前述の間食の摂取頻度と同傾向であった。 間食の内容を栄養的視点からみると果物類,牛乳・乳菓子類が多く食べられていること はエネルギー・ビタミン C ・カルシウムなどの給源ともなり,栄養素的にも良い役割を果 していると考えられる。反面,清涼飲料(コーラ・炭酸入りジュース)やスナック菓子・ チョコレートなどの市販品はとかく糖質・脂質・塩分が多く,過剰摂取から食欲減退や栄 養素のアンバランスやう歯の発生など児童の健康状態に悪影響となるので留意しなければ ならない。 7)間食の調達方法 間食の調達方法は,全児童では「家族が用意すると自分で買うの半々」 57%, 「家族が 用意する」 31%,「自分で買う」 12%であり,男女別(図10)では男子は「自分で買う」 が女子より多く, しかも「自分で買う」は母親が職業をもっている児童に多く,男女間・ 母親の職業有無間に有意差が認められた。しかし世代別には有意差はなかった。 8) 間食の手作り状況 近年,間食(おやつ)の種類が非常に多くなり,特に子供向け市販品が大量に氾濫して いるが,市販品は品質・保存性・栄養価などの向上の目的で,食品添加物がしばしば用い られ添加物の有害性に対する不安感をもつ母親も多い。一方,家庭での簡単なおやつ作り の意識や関心も高まりつつあると報じられている。そこで子供の間食作りの体験の実状と 手作り意識の普及を調査した。間食作りの体験率は全児童では74%とかなり高く,男女別 では男子60%,女子87%で,女子の体験率は有意に高いことが認められた。また手作り意 識は「作ってみたい」が男子57%,女子92%であり,女子の間食の手作り意識が極めて高
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要約
間食は児童の食生活において食事とともに1日の栄養摂取状態や食習慣に大きな影響を 与えているので,児童の間食の実態を調べる目的で,児童 1,062名に間食に関する意識調 査を実施し,間食と食生活との関連を検討し,次の結果を得た。 1)児童の体型は普通型76%,やせ型19%,肥満型が 5%であり,男女間では女子は男 子に比べ,やせ型が 5%多く有意差が認められた。また,う歯状況は81%で全国平均に比 ベ下回り, しかも未処置の歯も低い傾向にあった。うがい。歯みがき実行率は66%で,比 較的よく実行されていた。 2)食事の欠食率は朝食 6%,夕食 3%であり,理由は「食べる時間がない」が85%で 圧倒的に多く,児童の不規則な生活が原因と思われる。食卓を囲む人数は,孤食者が朝食 13%,夕食 4%で体型別では肥満者がやや高い。 3)児童の間食の喫食率は男子97.2%,女子98.8%と高率を示し,一週間当りの間食の 喫食頻度は平均 4.5回/週で,男女間では女子の喫食頻度は,男子を上回り有意差が認め られた。また,間食の1日当りの喫食回数は男女とも 1.4回であり,体型別では肥満児は 1日1回とやや低く,太っている意識からと推察されるが喫食量が問題になりうる。 4) 間食の喫食時間は決めていない児童が84%と顕著であり,喫食時刻では下校直後> 夕食前>夕食後>就寝前>登校前の順で,男子では夕食前,女子では下校直後が比較的多 く,男女間に差が認められた。 5)間食の種類別 14品目の喫食状況は男女間では 9品目,体型別では 4品目,う歯有無 別では2品目に有意差が認められたが,各区別とも果物類,乳菓子類,清涼飲料,スナッ ク菓子,牛乳,チョコレート・ガムが上位を占めていた。 6)間食の調達方法は「家族が用意すると自分で買うの半々」 57%, 「家族が用意する」 31%,「自分で買う」 12%であり,男女別および母親の職業有無別では「自分で買う」が 男子・母親の職業有りにやや多く,有意差が認められた。 7)間食の手作り状況では間食作りの体験率は男子60%,女子87%で,手作り意識は「作 ってみたい」男子57%,女子95%であり,女子の意識が著しく,この面での助長が望まし い。 以上,総合的にみると児童の間食喫食の実態は,栄養的視点ではエネルギーの過剰摂取 以外は食事で不足しがちなカルシウム・ビタミン Cなどを補う現状のようで,児童の間食 と食生活との関連が強いと思われた。食生活において正しく健康管理するためには児童が 正規の食事を十分とるように心掛けることが望まれる。しかし児童にとって間食は楽しみ なものであるので,間食を与える時間・質と量,食品の組合せを考慮した実践的な栄養指 導教育することの必要性が大きい。引用文献
1)文部省大臣官房調査統計課:学校保健統計調査報告書 6, 46-53, 88-95 (1988) 2)齋藤證子:栄養学雑誌, 41, 36 (1983)