MMC胸腔内注入が著効を示した
悪性神経線維腫の胸腔内転移の一例
山梨医科大学 整形外科学教室
雨宮毅 堀内忠一 浜田良機
はじめに マイトマイシンC(以下MMCと略す)の胸 腔内注入により、悪性神経線維腫切除後の胸 腔内転移巣の縮小と胸水の減少をみた1例を 経験したので報告する。 症例症例:40才、男
主訴:右腎部腫瘤と同部の痔痛、ADL障
害 現病歴:17才時、某大学病院で von Reck− linghausen病の診断を受けた。18才時、他医 で胸椎に対する手術が施行されたがその詳細 は不明。その後医家を訪れることなく放置し ていたが、平成2年11月頃より右腎部の腫瘤 が増大、平成3年3月近医で切除術を施行さ れた。しかし同年7月頃より腎部腫瘤は再発、 徐々に増大したため9月、当科を受診した。 既往歴・家族歴:特記すべきことなし。 入院時所見:右讐部を中心にハンドボール 大の巨大な腫瘤をみとめ、皮膚は緊張し、腫瘍 の中央部は強い熱感と圧痛をみとめた(図1)。 入院時検査所見:WBC 9600/μ1、 CRP 7.7 ㎎/d1、 ESR 1時間値52mm、2時間値83㎜と充 進し、炎症所見を示唆する結果をみたが、そ の他肝機能、腎機能、電解質等には特に異常 はなかった。 入院時X線所見:仙骨から骨盤部にかけて の骨破壊像はない。また胸部X線像では、脊 椎の強度の側蛮をみるが肺野には明らかな異 常をみない(図2、3)。術前CT、MRI、血管造影所見:CT、
MRIでは、仙骨後面に多房性の巨大な腫瘍
の増生をみとめた。血管造影では腫瘍は右内 分裂像やクロマチンに富む核小体を有してい る。(図5)。 術後経過:切除縁は辺縁切除縁(marginal margine)であるため、創の治癒を待って術後 3週より局所に対するradiationを開始、3Gy ×10回、total30Gyの照射を施行した。 他方放射線照射開始とほぽ同時期より乾性 咳噺、左胸部痛が出現。術後4週の胸部X線 像では、両側、特に左側に多量の胸水貯留お よび右胸壁、肺門部の転移巣をみた(図6)。 治療と転移巣との確定診断をかねて、胸腔穿 刺を施行。採取した胸水の色調は黄色透明、 細胞診ではclass 1、すなわち腫瘍細胞はみ とめなかった。そこでその後局所への放射線 照射と平行して週1∼2回、各1000∼2000m1 の胸水の吸引を施行したがその減少はみられ ず、さらに腫瘍の増大をみたので(図7)、試みに術後8週より局所投与が可能なMMC6
mgの週1回胸腔内投与を開始したところ、総 投与量18mgとなった頃より胸水貯留の減少、 腫瘍の縮小をみとめた(図8)。そこでその後 も週1回の投与を続けたところ、総投与量3 6mgの時点で胸水の貯留はなくなり、腫瘍は 著明に縮小、呼吸困難もなく術後16週で退 院した(図9)。現在近医で定期的にMMC投与を継続しな
がら経過観察中である。 考察 von Recklinghausen病の神経線維腫の悪性 化する頻度はBrasfieldらは29%と報告して いるが、新村らによれば1。3%、D’Agostino らは3。1%とし、数パーセント以下とされて いる。告、海外では54%、すなわち内外共に約半 数にみられている。転移部位としては、肺4 6%、肝22%などこの両者に多く、血行性 転移がほとんどとされている。 悪性神経線維腫に対する治療としては、手 術療法、放射線療法、化学療法が行なわれて いる。しかしこのうち化学療法については、 児玉らが化学療法単独、もしくは放射線療法 との併用でも長期生存例はなく、これらに手 術を加えた3者併用でも4例の生存をみるの みであったと述べている。このように放射線 照射や化学療法は本腫瘍に対しては有効でな いというのが一般的な意見である。今回の症 例では、局所に対して辺縁切除縁の切除のた め、やむおえず放射線療法を併用した。他方 腎部腫瘍切除後4週でX線像上、多量の胸水 と共に胸腔内転移が確認された。手術療法や 全身化学療法の適応はないと考え、やむおえ