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<実践報告>終末期患者の食前含嗽による口腔内症状の効果 利用統計を見る

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(1)

終末期患者の食前含嗽による口腔内症状の効果

The Effects of Additional Fasting Gargling

on Oral Symptoms in the End-Stage Cancer Patients

井上 貴美

1)

,中村美知子

2)

INOUE Takami, NAKAMURA Michiko

要 旨

終末期患者の口腔内に生じやすい苦痛症状の実態を明らかにし,食前含嗽を追加することによる口腔内症 状の改善を目的に,終末期患者 14 名を対象に調査を実施した。 患者の好みの含嗽液で,食前に 3 回の含嗽を追加した結果,口腔内の主観的症状 20 項目と客観的症状 11 項目中,「乾く」「さっぱりしない」「口唇の乾燥・亀裂」が有意に改善した。含嗽開始後 1 日目に改善した症 状は 5 日目にはさらに改善傾向であったため,食後の含嗽を含めた 1 日 6 回以上の含嗽が有効であると考える。 キーワード 終末期患者,口腔内症状,含嗽

Key Words End-Stage Patients, Oral Symptoms, Gargling

受理日:2012 年 7 月 10 日

1) 山梨大学医学部附属病院看護部:Palliative Care Team, University of Yamanashi Hospital

2) 山 梨 大 学 大 学 院 医 学 工 学 総 合 研 究 部( 臨 床 看 護 学 ): Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering(Clinical Nursing), University of Yamanashi

Ⅰ.はじめに

終末期とは,予後が半年あるいは半年以内であると予 測できる時期1)と定義されている。終末期患者(以下, 患者)は,疼痛,倦怠感,呼吸困難などの様々な苦痛症 状を経験する場合が多く,それらの症状は可能な限り緩 和されることが望ましい。患者は末期には症状悪化に伴 う体力低下により,自身で日常生活を行うことが困難な ことが多くなる。患者が様々な苦痛を感じている中で, 口腔内が清潔であることは,肺炎の予防,栄養摂取など の意義があるだけではなく,味を楽しみ,今を生きてい ることを実感できるために重要である2)といえる。 患者におこる口腔内の主観的症状(以下,主観的症状) は,口の乾き,疼痛,嚥下困難,味覚変化,口渇や炎症 による口腔の違和感や不快感などである3)4) 。口腔内の 客観的症状(以下,客観的症状)は,炎症,潰瘍,感染, 出血など口腔内の各部位の変化である3)5)。患者は,化 学療法や放射線療法も併用することで多く,副作用であ る粘膜障害,骨髄抑制による易感染性,食欲低下などに よる体力や抵抗力の低下なども生ずるため,口腔内の症 状は悪化しやすい状況にある。 口腔ケアとして簡便である含嗽は,口腔内に入れた水 と空気,あるいは呼気とを頬筋運動で振動させて口腔や 咽頭の細菌や食物残渣,塵埃,分泌物などを洗い流し, 乾燥を防ぎ,潤いを与えることができる。口腔内は歯磨 きなどの機械的清掃である程度の清潔は保てるが,複雑 な形態であることから,含嗽による清掃効果は大きいと いわれている6)。そのため,終末期の患者に簡便な口腔 ケアである含嗽を実施し,主観的症状と客観的症状の変 化と,含嗽の実施による効果を明らかにする意義は大き いと考える。

Ⅱ.研究目的

終末期患者の口腔内に生じやすい主観的・客観的症状 の実態と,食後と併用した食前 3 回の含嗽による症状の 改善とその変化を明らかにし,今後の患者の有効な口腔 ケアについて検討する。

Ⅲ.用語の操作的定義

1. 終末期患者: 悪性,良性を問わず,生命予後が半年 あるいは半年以内と主治医が判断した 患者。 2. 口腔内症状: 患者に生じやすい主観的症状(口の乾 き,味覚変化,違和感や不快感など) と客観的症状(舌や口唇の乾燥,口腔 内出血など)。

(2)

3. 含   嗽: 1 口の含嗽液を水が歯の内側と外側を 往復するように強くぶくぶくするこ と。 4. 含 嗽 液: 水,レモン水,イソジン水,緑茶のう ち,患者が選択した液。

Ⅳ.研究方法

1. 対象者 A 大学医学部附属病院に入院中の緩和ケアチームに依 頼があった終末期患者 14 名。予後は主治医から約半年 と本人または家族に伝えられている。 2. 調査期間 2009 年 6 月〜 10 月 3. 調査内容 1) 対象者の属性:疾患名・年齢・性別・治療内容 2) 口腔内症状に関する内容:主観的症状と客観的症 状の観察項目は以下の通り (1) 主観的症状:20 項目(乾く,パサパサする,ネ バネバする,かゆい,熱い,違和感がある,不 快感がある,かみにくい,飲みにくい,さっ ぱりしない,味が薄い,味が濃い,味がわか らない,塩辛く感じる,苦味がする,金属の 味がする,甘く感じる,おいしくない,味が まずい,食欲がない)3)〜 5)7)8) (2) 客観的症状:11 項目(話しにくさ,飲みにくさ, 口唇の乾燥・亀裂,舌の乾燥・亀裂,唾液の 状態,粘膜の状態,歯肉出血,歯または義歯 の汚染,口臭の強さ,口腔内出血,痰の付着)9) (1)(2)の各項目の評価基準は 1 点から 3 点の 3 段階評価とし,得点の高さは症状の強さを示す。 4. 調査項目について

客観的症状としては Oral Assessment Guide7)の声・

嚥下・口唇・舌・唾液・粘膜・歯肉・歯又は入れ歯の 8 項目を参考にした。客観的症状は,先行文献7)と日常の 観察で多いと考える「口臭の強さ」「口腔内出血」「痰の 付着」の 3 項目を追加し,11 項目とした。 主観的症状は,化学療法の副作用が食事に与える影響 の研究8)結果の,「喉が乾く」「パサパサする」「ネバネ バする」「飲みにくい」「味が薄い」「塩辛い」「味がわか らない」などに他文献5)9)10)と日常多いと感じる症状「不 快感」「おいしくない」の 9 項目を加えた 20 項目とした。 5. 調査手順(図 1) 1) 調査者が対象者から研究の同意を得た。調査目的 や方法を説明し調査の同意書に署名を得た。本人 自身で署名が困難な場合は,家族より署名を得た。 2) 調査日程 含嗽開始前: 調査用紙をもとに患者属性,主観的 症状と客観的症状を調査し,これを 基礎データとした。 前   日:含嗽液は 4 種類(水・レモン水・緑茶・ イソジン水)を 1 時間毎に順番に口に 含み,好みのもの 1 種類を決定した。 レモン水は 3%または 5%から好みで 選択した。 含嗽開始 1 日目:調査者が食前 3 回の含嗽を実施し て,19 時〜 20 時に主観的症状と 客観的症状を調査した。 2 日目〜 4 日目:調査者が毎日食前 3 回の含嗽(7 時, 11 時,17 時)を実施した。 5 日目: 調査者が食前 3 回の含嗽を実施し,19 時 〜 20 時に主観的症状と客観的症状を調査 した。 3) その他,自身で実施してきた含嗽や歯磨き習慣は, 通常通りとした。 含嗽開始前 含嗽開始日 2 日目 3 日目 4 日目 5 日目 調査日程 19 時〜 20 時 19 時〜 20 時 19 時〜 20 時 介入 (含嗽) 含嗽液を選択 各食前に 3 回/日含嗽 (7 時・11 時・17 時) 調査内容 ・属性 ・主観的症状 ・客観的症状 備考 含嗽液は水・レモン水・緑茶・イソジン液から患者が選択した。 図 1 含嗽による主観的・客観的症状の調査手順

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4) 含嗽方法  1 回に含嗽液 100cc を用いた。含嗽開始日から 5 日目までの 5 日間は同一の含嗽液を使用した。4 〜 5 回に分割し,1 口の含嗽液を水が歯の内側と外側 を往復するように強くぶくぶくすることを 4 〜 5 回 繰り返した11) 。 6. データの分析方法 1) 基本属性は基本統計量を算出した。 2) 含嗽による主観的症状の変化に関する含嗽開始前, 含嗽開始 1 日日,5 日目の差の検定には,Mann-WhitneyU 検定を用いた。 3) 含嗽による客観的症状の変化に関する含嗽開始前, 含嗽開始 1 日日,5 日目の差の検定には,Mann-WhitneyU 検定を用いた。 4) 含 嗽 に よ る 主 観 的 症 状 と 客 観 的 症 状 の 関 係 は, Spearman の順位相関係数を用いた。 5) 統計ソフトは SPSS Ver.16 を用いた。 7. 倫理的配慮 本研究は,山梨大学倫理委員会の承認(No534)を得て 実施した。看護部長,看護師長,主治医に研究の主旨, 調査内容,方法を文書および口頭で説明し,調査協力の 承認を得た。調査対象者には本研究への参加は任意であ り,拒否・中断が可能であり,それによる治療上の不利 益は生じないことなどを文書および口頭で説明し,同意 書に署名した対象者のみ調査をおこなった。

Ⅴ.結果

1. 対象者の特徴(表 1) 対象者は終末期患者で,A 大学病院で治療または療養 をしている 14 名で,男性 7 名(50%)・女性 7 名(50%) であった。平均年齢は 68.9±11.8 歳であった。14 名中 13 名(92.9%)は食道癌や肺癌などの悪性腫瘍で,1 名 (7.1%)はリウマチ・間質性肺炎であった。放射線療法 は 4 名(28.6%),化学療法は 3 名(21.4%)(重複回答)で あった。医療用麻薬などによる鎮痛療法は 13 名(92.9%) が 受 け て い た。 味 覚 障 害 の あ る 患 者 は 14 名 中 10 名 (71.4%)であった。 表 1 対象者の特徴 (n=14) 項目 Mean ± SD 年齢(才) 68.9 ± 11.8 項目 n(%) 性別 男 7(50.0) 女 7(50.0) 病名 悪性腫瘍(部位:食道・肺など) 13(92.9) 間質性肺炎 1( 7.1) 治療 放射線療法 4(28.6) 化学療法 3(21.4) 鎮痛療法 13(92.9) 味覚障害 あり 10(71.4) 表 2 患者の主観的症状と含嗽による変化 n=14 項目 含嗽開始前 含嗽開始 1 日目 5 日目 有意差1)

Me Mean ± SD Me Mean ± SD Me Mean ± SD

乾く 3.0 2.7 ± 0.6 3.0 2.6 ± 0.8 2.0 2.0 ± 1.0 *1 さっぱりしない 2.5 2.4 ± 0.7 1.5 1.6 ± 0.7 1.0 1.2 ± 0.6 *2, ** 食欲がない 3.0 2.4 ± 0.8 2.5 2.4 ± 0.7 2.0 2.2 ± 0.7 おいしくない 2.0 2.3 ± 0.7 2.0 2.1 ± 0.7 2.0 2.0 ± 0.7 味がまずい 2.0 2.2 ± 0.8 2.0 2.1 ± 0.8 2.0 1.9 ± 0.6 パサパサする 2.5 2.1 ± 1.0 2.5 2.1 ± 1.0 1.0 1.7 ± 0.9 味がわからない 2.0 1.9 ± 0.8 2.0 1.9 ± 0.9 2.0 1.7 ± 0.7 違和感がある 2.0 1.8 ± 0.8 2.0 1.8 ± 0.8 1.5 1.6 ± 0.8 不快感がある 1.5 1.7 ± 0.8 1.5 1.7 ± 0.8 1.0 1.6 ± 0.8 飲みにくい 2.0 1.6 ± 0.6 1.5 1.6 ± 0.6 1.0 1.4 ± 0.5 ネバネバする 1.0 1.4 ± 0.7 1.0 1.2 ± 0.6 1.0 1.0 ± 0.3 かみにくい 1.0 1.4 ± 0.6 1.0 1.4 ± 0.6 1.0 1.3 ± 0.5 味が薄い 1.0 1.3 ± 0.6 1.0 1.2 ± 0.6 1.0 1.2 ± 0.6 味が濃い 1.0 1.1 ± 0.3 1.0 1.1 ± 0.3 1.0 1.1 ± 0.3 塩辛く感じる 1.0 1.1 ± 0.5 1.0 1.1 ± 0.5 1.0 1.1 ± 0.5 甘く感じる 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.1 ± 0.3 1.0 1.0 ± 0 かゆい 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 熱い 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 苦味がする 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 金属の味がする 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 注) 1)Mann−WhitneyU 検定 *1 含嗽開始 1 日目と 5 日目 p < 0.05 *2 含嗽開始前と含嗽開始 1 日目 p < 0.05 **含嗽開始 1 日目と 5 日目 p < 0.01

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2. 主観的・客観的症状と含嗽による変化(表 2 表 3) 含嗽液の選択には,緑茶は 8 名,レモン水 4 名,水は 2 名が選択し,イソジン水を選択したものはいなかった。 口腔内症状の改善では 3 種類(水又はレモン水又は緑茶) ともほとんど差はなかった。 主観的症状では,含嗽開始前と比較して 5 日目に得点 が低下した項目は,「乾く」「さっぱりしない」など 13 項 目であり,「乾く」は含嗽開始前中央値 3.0(平均値 2.7± 標準偏差 0.6)(以下,平均値±標準偏差)と比較し 5 日 目 2.0(2.0±1.0)に得点が有意に低下(p < 0.05)し,「さっ ぱりしない」は含嗽開始前 2.5(2.4±0.7)と比較し 5 日目 1.0(1.2±0.6)に有意に低下(p < 0.01)した。「かゆい」「金 属の味がする」「苦味がする」など 10 項目の症状は低値 (1.0)であった。 客観的症状では,含嗽開始前と比較して 5 日目に得点 が低下した項目は「口唇の乾燥・亀裂」「舌の乾燥・亀裂」 「唾液の状態」など 7 項目であった。「口唇の乾燥・亀裂」 は含嗽開始前 2.0(1.9±0.4)と比較して 5 日目 1.5(1.5± 0.5)(p < 0.05)に有意に低下した。「飲みにくさ」「歯肉 出血」など 7 項目の症状は低値(1.0 程度)であった。主観 的症状・客観的症状ともに,有意に高値へ変化した項目 はなかった。 3. 主観的・客観的症状の関係と変化(表 4) 含嗽開始前と 5 日目の主観的症状と客観的症状の関係 性では,含嗽開始前・5 日目ともに,主観的症状「乾く」 は客観的症状「舌の乾燥・亀裂」(r=0.55 p < 0.05)「唾 液の状態」(r=0.68 p < 0.01)と有意に相関があり,主 観的症状「パサパサする」は客観的症状「唾液の状態」(r =0.67 p < 0.01)「話しにくさ」(r=0.55 p < 0.05)と 有意の正相関があった。含嗽開始前には,主観的症状 「さっぱりしない」は客観的症状「舌の乾燥・亀裂」(r= 0.55 p < 0.05)「唾液の状態」(r=0.49 p < 0.05),主 観的症状「ネバネバする」は客観的症状の「飲みにくさ」(r =0.63 p < 0.05)「粘膜の状態」(r=0.63 p < 0.05)「歯 又は義歯の汚染」(r=0.54 p < 0.05)と有意に相関して いた。 表 3 患者の客観的症状と含嗽による変化 n=14 項目 含嗽開始前 含嗽開始 1 日目 5 日目 有意差1)

Me Mean ± SD Me Mean ± SD Me Mean ± SD

唾液の状態 3.0 2.5 ± 0.7 3.0 2.4 ± 0.8 2.0 2.0 ± 0.9 舌の乾燥・亀裂 2.0 2.0 ± 0.7 2.0 2.0 ± 0.7 2.0 1.6 ± 0.6 口唇の乾燥・亀裂 2.0 1.9 ± 0.4 2.0 1.8 ± 0.4 1.5 1.5 ± 0.5 * 話しにくさ 2.0 1.9 ± 0.9 2.0 1.9 ± 0.9 2.0 1.6 ± 0.6 口臭の強さ 1.0 1.4 ± 0.7 1.0 1.4 ± 0.7 1.0 1.0 ± 0 飲みにくさ 1.0 1.2 ± 0.4 1.0 1.2 ± 0.4 1.0 1.2 ± 0.4 粘膜の状態 1.0 1.2 ± 0.4 1.0 1.2 ± 0.4 1.0 1.1 ± 0.3 歯又は義歯の汚染 1.0 1.2 ± 0.4 1.0 1.1 ± 0.4 1.0 1.0 ± 0 痰の付着 1.0 1.2 ± 0.6 1.0 1.1 ± 0.3 1.0 1.0 ± 0 歯肉出血 1.0 1.1 ± 0.3 1.0 1.1 ± 0.3 1.0 1.1 ± 0.3 口腔内出血 1.0 1.1 ± 0.3 1.0 1.0 ± 0 1.0 1.0 ± 0 注) 1)Mann − WhitneyU 検定  *含嗽開始前と 5 日目 p < 0.05 表 4 患者の主観的と客観的症状の関係 ─含嗽開始前と開始 5 日目─ n=14 主観的症状 客観的症状 含嗽開始前 含嗽開始 5 日目 相関係数 p 値1) 相関係数 p 値1) 乾く VS 舌の乾燥・亀裂 0.55 * 0.92 ** 唾液の状態 0.68 ** 0.91 ** パサパサする VS 唾液の状態 0.67 ** 0.75 ** 話しにくさ 0.55 * 0.80 ** さっぱりしない VS 舌の乾燥・亀裂 0.55 * 唾液の状態 0.49 * ネバネバする VS 飲みにくさ 0.63 * 粘膜の状態 0.63 * 歯又は義歯の汚染 0.54 * 1)Spearman の順位相関係数  *p< 0.05 **p< 0.01

(5)

Ⅵ.考察

終末期患者を対象に,含嗽による口腔内の主観的症状 と客観的症状の変化を 5 日目まで調査した結果,終末期 患者に出現しやすい口腔内症状,口腔内症状改善のため の含嗽方法,などについて以下に考察する。 1. 終末期患者の口腔内症状で改善した症状と改善し にくかった症状 主観的症状の「乾く」「さっぱりしない」と客観的症状 の「口唇の乾燥・亀裂」が改善したことや「乾く」や「さっ ぱりしない」ことと「唾液の少なさ」「舌の乾燥の強さ」の 関係があったという結果からも,含嗽により口腔や口唇 等に湿潤を与えることは効果的であると考える。 主観的症状の口腔内乾燥が多いという結果であった が,抗がん治療などによる唾液腺の障害,医療用麻薬な ど薬剤の副作用,酸素吸入や口呼吸などの状況があるた め多い症状であると考える。また,対象者の平均年齢は 68.9 才であり,高齢者における口腔内症状(かみにくさ, 義歯の痛みなど)をもつ人の割合は全体の 57%に達して いたという報告12)からも疾患のみでなく年齢的にも口 腔内症状はより生じやすいのではないかと考える。 5 日間含嗽を実施した後も改善が少なかった主観的症 状は「おいしくない」「味がわからない」「味がまずい」で あった。今回の研究では味覚変化が対象者の 7 割に出現 しており,病状の変化など患者の身体状況や治療内容に も関係することが多いため,味覚障害は含嗽だけで改善 を期待することが困難であったと考えられる。味覚回復 のためにレモン水や緑茶などで含嗽を行ったが明確な根 拠のある結果が得られていないという結果13)にも一致 した。しかし,唾液分泌からみると水よりも 10%レモ ン水がもっとも多く,主観的評価では水と 5%レモン水 が高いという結果14)も出ているため,患者の症状にあ わせた含嗽液の選択が求められる。 2. 終末期患者の口腔内症状改善のための含嗽方法 患者は,含嗽水としてイソジン水は好まず,水や緑茶 など日頃口にしている液を選択した。先行文献15)でも, イソジン水以外であればその他の糖分を含まない液との 除菌の効果は同様であったため,患者が好む含嗽液で含 嗽をすることで,口腔内がさっぱりし,心地よいと思え ることで含嗽がしやすくなると考える。 夕食後の含嗽から朝食までは長時間であるため,口腔 内に痰などが付着し,口の不快感が増強するため,食事 前に含嗽を行うことは口腔内の汚染が除去され,効果的15) であると考える。看護師による患者の口腔ケアは 1 日 3 回としている場合が多く,食前後の口腔ケアはされてい ないという報告10)からも,食前の含嗽の重要性が考え られる。 5 日間の含嗽の実施において,口腔内の主観的・客観 的症状で悪化したものはなかった。含嗽開始日に,主観 的・客観的症状は改善し,5 日目にはさらに改善したこ とから,含嗽の継続の効果が期待できると考える。 終末期患者にとって,口腔内が清潔でさっぱりしてい ることは気持ちよく日々を過ごすことができ,含嗽の継 続の効果があることで爽快感10)が得られることは極め て重要であると考える。

Ⅶ.結論

1. 終末期患者の好む含嗽液は緑茶が多かったが,口 腔内症状の改善では 3 種類(水又はレモン水又は緑 茶)ともほとんど差はなかった。イソジン水は臨床 ではよく使われる含嗽液であるが,味が好まれな いため,今後含嗽液の種類は問わず,患者が好む 液で含嗽を実施することを優先する必要がある。 2. 終末期患者の口腔内症状として,主観的症状では 「乾く」「さっぱりしない」「食欲がない」「おいし くない」「味がまずい」「パサパサする」「味がわか らない」など,客観的症状では「唾液の少なさ」「舌 の乾燥・亀裂」「口唇の乾燥・亀裂」「話しにくさ」 が高値(> 2.0)であった。通常の含嗽に加えて食前 の含嗽を定期的に行うことで「さっぱりしない」「乾 く」「口唇の乾燥・亀裂」で,実施前と比較し有意 に低値になった。変化のなかった症状は,主観的 症状の「食欲がない」「味がわからない」「おいしく ない」「味がまずい」,客観的症状の「話しにくさ」「舌 の乾燥・亀裂」であった。 3. 含嗽方法は,食後の 3 回の含嗽に加えて,各食前 に 100cc 程度の含嗽水で,4 〜 5 回に分けて,1 回 に 4 〜 5 回含嗽をすることでも口腔内症状が低下 傾向にあった。含嗽 1 日目に低下のあった口腔内 症状は,5 日間続けた後にはさらに低値となったた め,長期にわたって 1 日 6 回以上定期的に含嗽を 行うことが有効あると考える。 本論文は,平成 21 年度山梨大学医学工学大学院修士 論文(看護学専攻)の一部である。

(6)

引用文献 1) 臨床医学委員会終末期医療分科会(2008)終末期医療のあり方に ついて.5. 2) 篠原明子,有賀悦子(2008)終末期における口腔ケアの重要性. 臨床栄養,113(5):616-619 3) 小島操子,佐藤禮子,監訳(2007)がん看護コアカリキュラム. 医学書院,東京,230-232. 4) Twycross R,Andrew W,武田文和監訳(2003)トワイクロス 先生のがん患者の症状マネジメント.医学書院,東京,77-82, 90-92. 5) 日本口腔・咽頭科学会編集(1998)口腔咽頭の臨床.医学書院, 東京,52. 6) 茂木健司,笹岡邦典,他(2007)各種口腔ケアの効果に関する検 討─口腔常在菌数を指標として─第一報 含嗽剤の薬剤効果. The Kita Kanto Med J,57:239-244.

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参照

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