足関節底背屈運動が腓腹筋の血行動態に及ぼす影響について
5
0
0
全文
(2) . 原 著. 足関節底背屈運動が腓腹筋の血行動態に及ぼす影響について 森 明子½ 国安勝司½ 藤田大介½ 渡邉 進½. 要 約 深部静脈血栓症は ,医療現場やエコノミークラス症候群の想定される状況下において ,安静臥床や 長時間の座位等の不動により発症し ,重篤なケースでは肺塞栓をも引き起こすことで問題となってい る.深部静脈血栓症は肺塞栓症を引き起こす場合もあり,効果的な予防が必要である.今回は 健常若年者を対象に右足関節底背屈運動を. 名の. 秒間に 回のペースで 回行わせ ,これを セット実施. し ,レーザー組織血液酸素モニターを用いて足関節底背屈運動中の腓腹筋の血流や末梢循環動態の変. )は安静時と比べて運動中に増加. 化について測定した.その結果,酸化ヘモグロビン(以下,. し休息中には減少する傾向が見られたが ,有意な変化は認められなかった .脱酸化ヘモグロビン( 以. )は安静時と比べて ,運動中では有意な減少が認められた .また , は運動 )は運動前後. 下,. 中と比べて ,休息中では有意な増加が認められた .総ヘモグロビン量(以下,. にて有意な変化は認められなかった .今回の結果から ,足関節底背屈運動は血流のうっ滞の改善に効 果があることが示唆された . は予防的見地より,近赤外線分光法(. 深部静脈血栓症(. $. !%!%:以下,&'( )を用い,足関節底背屈. はじめに. !!:以下 ,. 運動中の腓腹筋の血流や末梢循環動態がどのように. )は ,医療現場やエコノミークラス症候群の. 変化するかを測定することを目的とした .. 想定される状況下において,安静臥床や長時間の座 位等の不動により発症し ,重篤なケースでは肺塞栓 をも引き起こすことで問題となっている .. . 対象と方法. 名 歳)で. 対象は循環器疾患の既往歴のない健常若年者. は欧米では非常に頻度の高い疾患であり,古くから. その予防に力が注がれてきている.近年,本症は我. ). ( 男性 名 ,女性 名 ,平均年齢は. が国においても決して少なくない疾患と認識され ,. あった .服装は軽装とし ,下肢や体幹を締め付ける. "年には我が国独自の肺血栓塞栓症#深部静脈血. ようなものがないように配慮した .測定肢位はセミ. 栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガ イド ラインが示され. ファーラーとし ,指定した運動以外には四肢・体幹. た .その中で ,予防法の一つとして「早期離床およ. の運動が加わらないように指示した .. を余儀なくされ る状況下において早期から下肢の. 波長 受光 演算レーザー組織 酸素モニター(オメガウェーブ社製 *+,'- ). 自動他動運動やマッサージを行い,早期離床を目指. を用いて測定した .組織血液酸素モニターの測定に. び積極的な運動は. の予防の基本となる.臥床. 組織酸素動態は. す」と掲げられている .しかし ,そこに具体的な. 際し ては ,受光部が 腓腹筋外側頭筋腹中央になる. 実施頻度等の内容は記されておらず ,経験的判断に. ように ,また ,受光部と発光部の距離が一定になる. は肺塞栓症を引. "%. 委ねられている傾向がある.. ようにプ ローブを固定し ,測定深度が. き起こす場合もあり ,効果的な予防が 必要とされ. なるように調整した .測定にあたり,組織酸素飽和. に. ( )をパラメータとし ,それが安定し の安静後,右足関節底背屈運動を 秒間に 回のペー. る.一方で ,医療現場では術後の安静期間は短縮さ. 度(以下,. れてはきているものの ,急性期,慢性期を問わず臥. ていることを確認してから測定を開始した . 分間. 床を強いられる患者も少なくない.そこで今回我々. 川崎医療福祉大学 医療技術学部 リハビ リテーション学科 倉敷市松島 川崎医療福祉大学 (連絡先)森 明子 〒
(3)
(4) . .
(5) ". 森 明子・国安勝司・藤田大介・渡邉 進 結. 果. 1 )を表 に示した .各運 "" ")秒であった .. 各測定項目の変化率( 動間の平均回復時間は .. 安静時と比べて ,運動中に増加し休息中には減少 する傾向が見られたが ,有意な変化は認められな かった .. . (. 安静時と比べて ,運動 ( 2" 21 ),運動 2" 1 ),運動 ( 2) 1 )では ,有意な. 減少が認められた . 図. 組織酸素モニター貼付部位 受光部が腓腹筋外側頭筋腹中央になるように ,受光 部と発光部の距離が一定になるようにプローブを固 定し ,測定深度が になるように調整した.. 回を行わせることを セットとして,合計 セット実施した . セット目( 以下,運動 )の運 動後は ,休息を取り( 以下,休息 ),(値が運.
(6) . 安静時と比べて ,運動時,休息時いづれにおいて も有意な変化は認められなかった .. スで. 動前の値に近づき,安定したことを確認してから ,. セット目(以下,運動 )の運動へ移行した .そ して再度,休息を挟み(以下,休息 ), セット目 (以下,運動 )へと運動を進め ,再度休息(以下, 休息 )を取り終了とした. これら運動中の測定機器からのデータは , .# 変換装置( /0 , ! )を 介し ,コン ピューターで記録し た .安静時の総ヘモグ ロビ ン. ),酸素化ヘモグロビン( 以下, ),脱酸化ヘモグロビン(以下, ) の平均を とし ,その後の変化の割合( 百分率 ) 量( 以下,. 考. 察. は) 年 %0 が提唱した つの誘発因 子が大きく影響している.その因子は 血流の停滞, 血管内皮障害, 血液凝固能の亢進である. 予防法には ,薬物的予防法と理学的予防法がり,リ スクに応じて両者を組み合わせて対応される場合も あるが ,出血の危険性がある症例には理学的予防法 が優先して用いられている .したがって ,早期離 床および積極的な運動を促す理学的予防法は ,血流 の停滞の予防・改善の面から考えても,大きな役割 を占めると言える.太田ら は早期離床が困難な患 者においては ,静脈還流を促進するために ,下肢の 挙上や関節運動を自動的に実施することが効果的で. を求めた .統計処理は ,安静時と各運動間,安静時. あると報告している.また ,他動運動やマッサージ. と各休息間の. にも高くはないが効果が認められるとも報告してい. (. ) ).. 群間の差で検討し , 検定を用いた. る.平井らは いくつかの理学的予防法について血 流速度の指標を用いて検討しており,足関節の背屈 運動,背底屈運動は有効であると述べている.しか しながら ,各種理学的予防法の効果ついての先行研. 表. 運動前後における各測定値.
(7) ). 足関節底背屈運動が腓腹筋の血行動態に及ぼす影響について. る.なお,本研究では ,運動介入として底背屈運動. の増加(動脈血の増加)と , の減少( 静脈還流量の増加)が相殺し合 う結果となり , の変化が起こらなかった. を. ものと考える.また ,血流量の変化を示すとされて. に行う などが見受けられるが ,運動の回数には定. も有意な変化が認められなかったのは ,健常人の場. 説がない.したがって ,我々は ,日常の臨床で使い. 合,. やすい回数を本研究では条件とし適応した.. 流量の変化まで及ばなかったものと考える.動的運. 究はまだ少なく,実質的な方法は各施設,各担当理 学療法士の経験をもとに行われているのが現状であ. 回 セットを条件とした .先行研究では 時 間毎に ) 分間 ,頻回に実施させる ,体位変換時. 理学的予防法による効果として ,血流量の増加と 線溶能の活性化があげられる.後者は血管内皮表面 で. ! !!! の変化によるものであり,血流速度. は ,運動による. が本研究では運動介入前後を比べて. いる. 回 セットでは運動負荷として少なく,血. 動中の筋血流量に関して. ( らは ,単位時間あた. りの筋血流量は運動強度に比例して増加すると報告 している .これについて ら は ,膝伸. 34. #分に達し ,掌握運動のような小筋 #分以下であると報告している.また ,運. によるところが大きいと報告されている .よっ. 展運動では約. て,. 群では. 流量および血流速度を評価することは意義のあるこ ととされており ,本研究では血流量の変化に着目. いう報告もある.ヒトの下腿血流量は ,低頻度では ,. し ,足関節底背屈運動が下肢血行動態に及ぼす影響. 頻度に比例して血流量は増加するが ,高頻度(. について検討した .. 回 分)になると ,血流増加の起こる弛緩時間が短. 予防に対する効果を判定するにあたり,血. 本研究で行った足関節底背屈運動の介入後では , 安静時と比べて. については有意な変化は認. められなかったが ,運動中に増加し休息時には減少. 動を決めるもう一つの要因に運動のテンポがあると. #. . くなるのでむしろ血流量は減少すると報告されてい る .これらの先行研究を考えると筋収縮強度,運 動のテンポ ,筋の緊張と弛緩時間の比率など ,様々. する傾向が見られた.これは ,運動による酸素需要. な運動条件を組み合わせて用いることにより,運動. に伴う循環血液量の増加が ,下肢筋への動脈血流入. によって血流量が変化してくるものと考える.. が増加したものと考えら. 量に影響を与え , れる.. 下肢筋のポンプ作用は静脈還流を増加させ ,血流 のうっ滞を改善するだけではなく,様々な血管作動. 一 方 , は 安 静 時 と 比 べ て ,運 動 ( 2" 21 ),運 動 ( 2" 1 ),運 動 ( 2) 1 )では ,それぞれ有意な減少が認めら れた. は動脈にほとんど 存在せず ,その 経時変化は静脈の動態を反映するため ,. から ,足関節底背屈運動は血流のうっ滞の改善に効. の減少は静脈還流量の増加を示すという報告もあ. 難であった .したがって ,今後も健常人での基礎的. る .従って,本研究の場合も,. なデータを収集すると共に ,臨床現場で ,より効果. が運動. 性物質を産生・活性化させ ,抗凝固作用や線維素溶 解作用を発揮すると報告されている .今回の結果 果があることは認められたが ,適切な運動負荷量 , 頻度,運動の持続的な持ち越し効果などの検証は困. 中に有意に減少した結果より,静脈還流量が増大し. 的に運動療法の一環として取り入れることができる. たと考えられる.. ように ,今後の課題として取り上げていきたいと考. は安静時と比べて,運動時,休息時いづ. えている.. れにおいても有意な変化は認められなかった .これ. 文 献 ) ,
(8) :
(9) . .. ,. , !!" !# , $%$ .. & )森尾比呂志:エコノミークラス症候群.呼吸と循環, ( ' ),&$ "&$% ,&((& . ' )中村真潮,中野赳:肺血栓塞栓症)深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)の予防ガイド ライン .外科治療, ( ' ),&%*"&!' , &(( . )山田典一,藤岡博文,中野赳:深部静脈血栓症・肺塞栓症の予防と治療.臨床科学, , *' " *'! , $$% .. * )太田覚史,山田典一,辻明弘,石倉健,太田雅弘,矢津卓宏,中村真潮,伊藤正明,井阪直樹,中野赳:静脈血栓塞栓症 ( & ),#$"$* ,&(( . に対する各種理学的予防法の静脈血流増加効果についての検討.静脈学, . % )平井正文,岩田博英,温水吉仁,城所仁,早川直和,錦見尚道:深部静脈血栓症予防における運動,弾性ストッキング , 間欠的空気圧圧迫法の臨床応用.静脈学, ( ),*$"%% ,&(( ..
(10) . 森 明子・国安勝司・藤田大介・渡邉 進. ! )柏木宏,遠藤則之,古田一裕,三好俊策,加藤裕一,原田龍一,永井秀雄:外科術後の肺塞栓症;診断,治療および予防 と対策の現状.血液・腫瘍科, ( % ), $&"*( ,&((( .. # )石井政次,川路博之,浜崎允,井田英雄,高木理彰,小林真司,山川正紀,佐藤哲也,新田長生:+ , 予防のための大 腿静脈流速からみた血流改善の比較.- . , ,**!"**$ ,&(( .. $ )原寛美:+ , の予防と治療. .
(11) , ,!!*"!#( ,&((. .. ( ) /- ,0 12 , 3 1
(12) 13 :4 3
(13) 0 . .
(14) ,. ,'#'"'$& ,&(( .. )53 ,/6 +. , 75
(15) :-
(16) 3 .
(17)
(18) . .
(19) ,(. ), '!". & ,&((' .. & )- 8 ,83 - ,10 3 - , , ,9:3 /
(20) 3 ,:4;3 3 <3 3 3 3 3
(21)
(22) ..
(23) , ,. ". . % , $$$ .. ' )1 ,7
(24) 0 2 , 3 + ,
(25) 7 :1 3
(26) ;6 3
(27) 03
(28) 3 0 .. , ,. & " &% , $$# .. )0 /:
(29) 3
(30)
(31)
(32) 3 0 3
(33) 3 0
(34) .
(35) .. ! , ,**"%& ,. $$ .. * )0 /:7
(36) 3
(37) 3 6 0 0 <3 . . , ,&$#"'(' ,.
(38). $$& .. % )冷水陽子,阿久根和恵,浜田和美,本坊まゆ子,新福優子,大瀬克広,大脇哲洋,吉中平次,垣花泰之:下肢深部静脈血 栓症予防に対する間歇的下肢加圧装置の有用性.手術医学, ( ),&#"' ,&(( . ( 平成&(年 * 月' 日受理).
(39) 足関節底背屈運動が腓腹筋の血行動態に及ぼす影響について. .
(40)
(41)
(42)
(43) / 974= 3 >?48/1>= +3 >.4,/
(44) 1333 @/,/?/ A/
(45) ' = &((#B
(46) C D = ?471=
(47) ;6. / D 0 E
(48)
(49)
(50)
(51)
(52) A+ ,BF 3 + ,
(53) 3 3 F @
(54) 0
(55) ;6 0 3 3 0. ;3 F
(56) 3 3 A&(F#(F%
(57) B
(58) 3
(59) F , 6
(60)
(61) ;
(62) ; D .
(63) = &( ' F , 0
(64) ;6 0 3 3 6 3
(65) 30 3
(66) 0 F 9-
(67)
(68) 3 0
(69)
(70)
(71)
(72) 3 0 = 3 0EF , + -
(73) 0E
(74) 3 0
(75) 6
(76) 3 0 F ,-
(77)
(78) 0 0EF , 3 300
(79)
(80) ;6F .
(81) C / 974. + 7 = 3 - 1
(82) , 0= 6 >
(83) @ . 3 = !( ( $'= . C
(84) A6
(85) @ .3 F #= ?F = &((# %'" %!B.
(86)
図
関連したドキュメント
F1+2 やTATが上昇する病態としては,DIC および肺塞栓症,深部静脈血栓症などの血栓症 がある.
血管が空虚で拡張しているので,植皮片は着床部から
私たちの行動には 5W1H
に時には少量に,容れてみる.白.血球は血小板
混合液について同様の凝固試験を行った.もし患者血
り最:近欧米殊にアメリカを二心として発達した
が作成したものである。ICDが病気や外傷を詳しく分類するものであるのに対し、ICFはそうした病 気等 の 状 態 に あ る人 の精 神機 能や 運動 機能 、歩 行や 家事 等の
選定した理由