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<論説>民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外 : 東京高裁平成一五年一一月二六日判決を素材として

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(1)民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. 城. ││東京高裁平成一五年一一月二六日判決を素材として││. 雅. 七四条一項)。そしてこの両者のいわば中間として、利益または損失の一方についてのみ分配の割合が定められてい. -1-. 目次 一問題提起 二民法六七四条二項の制定過程 三フランス法における裁判例. 四検討とまとめ. 問題提起. 屋. 民法上の組合における損益分配の割合は、組合契約において組合員によって決定されていれぼ、その割合とな. 車 内. る。反対に、損益分配の割合が定められていないときは、その割合は各組合員の出資額に応じて定められる(民法六. 1.

(2) るときは、 その割合は、利益と損失に共通であるものと推定される(民法六七四条二項)。そのため、損失について. のみ分配の割合が定められているときは、民法六七四条二項によって、利益についても同じ割合で分配が実行される. のだが、近時、損失についてのみ分配の割合が定められている民法上の組合に関して、利益を、損失分担の割合とは. 異なる割合、具体的には組合事業への出資に比例した割合で分割することを命じた裁判例が現れた。. 東京高裁平成一五年一一月二六日判決. 、 いずれも弁護士であるところ、昭和五九年四月一日に共同で渉外法律事務所を開設 [事案の概要] Xおよび Yは. した。その際Xは、資本、事務所施設、銀行からの与信、顧客、書籍、什器備品、事務職員等有形、無形の設備一切. 、 を出資したのに対して、 Yは労務提供をするのみという形で本件事務所の共同経営に参画した。また Xおよび Yは. 新たに運転資金等を借り入れる際はX Yいずれかが主債務者となり他方が連帯保証人となるが、内部的負担割合は各. 二分の一とすること、自らの依頼者と相手方の依頼者とを区別することなく本件事務所の依頼者として受任業務を遂. 行すること、従業員と施設を共同して利用すること、および、当座預金口座を共用することを合意した。更に Xおよ. びYは、昭和六四年一月一日以降は、双方の売り上げおよび経費を個別に仕分けたうえで、賃料、光熱費等の共通経. 費を各自が二分の一ずつ負担する旨の合意をした。その後本件事務所は Y の脱退によって平成三年三月三二日に解散. したのだが、平成三年三月三二日現在の借入金債務の合計額はおよそ三億四O七一万円であった。その一方で Xおよ. びYは、昭和五九年四月一日から平成三年三月二二日までの聞に本件事務所会計から随時金員を引き出しており、そ の総額は、 Xがおよそ四億三九二O万円、 Yがおよそ二億O三五九万円であった。. 2-. 1号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(3) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. Xは、本件事務所はパートナーシップ契約に基づいて開設されており、債務も利益も原則として XとYが平等に負. 担・分配するが、利益分配については、事務所全体の収益に対する各自の貢献度に応じた増減を行うことが合意され. ていた、と主張して、 Y の負担分を立て替えて返済した銀行からの借入金等およそ一億二七八八万円の支払い等を求. めて Yに対して訴を提起した。これに対して Yが、本件事務所は民法上の組合であり、利益分配に関する明確な合意. は存在しなかったと主張し、また Xは本件事務所の清算人の立場にあるとして、損失分担と同じ二分の一の割合での. 残余財産の分配や、本件事務所のための借入金を返済したことによる求償等およそ一億三四六八万円の支払いを求め て反訴を提起した。. 原審(東京地裁平成一三年一二月二六日判決)は、本件事務所は民法上の組合であり、また X Y聞に利益分配に関. ω. する何らかの合意があったと認めることはできないと判断したうえで、 X の本訴請求をおよそ三七五万円の限度で、 また Y の反訴請求をおよそ一億一六九八万円の限度で、それぞれ認容した。 Xが控訴。. [判旨] 一部取消、 一部控訴棄却。. 東京高裁は、本件事務所が民法上の組合であること、また X Y間に本件事務所の利益分配の割合に関する明確な合. 意はなかったことを認定したうえで、本件事務所の設立から解散に至るまでの経緯およびその聞におけるXとY の本. 件事務所に対する貢献等を考察すると、﹁配分的正義の要請あるいは信義公平に照らし、上記利益の分配は、昭和五九. 年四月一日から平成三年三月三二日までの期間を通じて、 Xが六割、 Yが四割の各割合で行うのを相当と認める。﹂. と判示した。そして東京高裁は、この割合に基づいて本件事務所の営業利益の総額をX Y間で分配し、この分配金か. らYが既に受領した引出金を控除したうえで、本件事務所解散時の借入金債務総額の二分の一 (Yの損失分担額)の. -3-. 1.

(4) うちの未払い分と合計した結果、原判決を取り消し、 X の本訴請求をおよそ一二八万円の限度で認容した。. 民法六七四条二項が主要な争点となった大審院判決および最高裁判決は存在せず、次に紹介する下級審裁判例. が数件存在する程度である。そしてこれらの下級審裁判例は全て、利益についてのみ分配の割合が定められている事. 例に関するものであり、裁判所は民法六七四条二項を適用して、損失分担の割合を利益分配の割合と同一であると判 断している。. 東京地裁大正一一年一二月一日判決は、 XとYが、農商務省水産局から物品の払下げを受けたうえで転売すること. を目的とした民法上の組合を設立し、その際、 Yは労務出資をし Xは財産出資をすること、また利益分配は Xが七、. Yが三の割合で行うことが合意され、 Xは資金提供義務の履行の担保として Yに対して三OO円を預けたところ、組. 合がおよそ三八一円の損失を出したため、 Xが組合を脱退し、 Y に対して前記預金の返還および損失分担として合計. およそ四六五円の支払いを求めて訴を提起した、という事案である(詳細は不明であるが、原審において Xは勝訴し. たものの、請求額を変更して東京地裁に控訴し、 Yも附帯控訴していたようである)。 Yは、前記預金は XがYの営業. に加入する対価であり返還義務はないことや、 X Y聞には組合が終身間存続する旨の合意があり清算義務はないこと. 等を主張したのだが、東京地裁は Y の主張を認めず、﹁損失負担ニ付キ何等特約ノ見ルベキモノナキ限リ損失負担ノ割. 合ニ付テモ亦利益分配ノ割合-一準ジテ各自担スベク定メタルモノト推定ス﹂と判示して、原判決を変更し、損失のう. ち利益分配と同じ割合の十分の三であるおよそ一一四円に前記預金を加えた合計およそ四一四円の支払いをYに対し て命じている。. -4-. l号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(5) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. 東京地裁大正一四年五月一四日判決は、 XがYから Y所有の鉱業権の二分の一の割合の持分を譲り受け、 XとYが. 共同鉱業権者となって各一 000円ずつを出資し、当該炭鉱の採掘事業を営むことを目的とする民法上の組合を設立. し、同時に、①Xが業務執行者となること、②前記出資額以上の事業費が必要になった際は、 Xが立て替えて支払う. こと、③収益金は、まず事業費に充当し、なお余剰があるときはXとYが各二分の一の割合でこれを取得すること、. という内容の合意をしたところ、組合を脱退した XがY に対して、立替支払をした事業費の二分の一の償還を求めて. 、 Xのみが損失を分担する旨の合意が存在した等の主張をしたのだが、東京 訴を提起した、という事案である。 Yは. -5-. 地裁は Y の主張を認めず、﹁当事者間ニ損失ノ発生シタル場合、之カ分担ノ割合ニ付テハ、先ツ別段ノ契約アリタルト. キハ之ニ依リ、若シ之無キ場合ハ民法第六百七十四条ニ依リ之ヲ定ムヘキモノトス。然ルニ本件ノ場合ニ於テハ、損. 失分担ノ割合ヲ定メタリト認ムヘキ何等ノ事実ナキヲ以テ、之ヲ定メサリシモノト認ムヘク、唯利益金分配ノ割合ニ. 付テハ、前段認定ノ事実-一依リ平等ノ割合ニ依ル定メヲ為シタルモノト認ムルコトヲ得。従テ本件損失分担ノ割合. ハ、前記法条第二項ニ依リ右利益分配ノ割合ト同一ナルモノト推定セラルヘキモノトス(句読点は執筆者)﹂と判示. して、 Y に対して、利益分配と同じ二分の一の割合での事業費およそ四一 O六円の償還を命じた。 Yは控訴したのだ. が、東京控訴院昭和二年三月コ二日判決も、 Yが償還すべき金額をおよそ三五四五円に変更した点を除いて、原審と 同じ判断を下している。. 中巻二(民法講義明)﹄でさえ、民法六七四条. 体系書や注釈書も、民法六七四条二項をそのまま紹介するにとどまるものがほとんどであり、民法上の組合に. 関する記述が最も充実していると思われる我妻栄博士の﹃債権各論. 3.

(6) 二項をそのまま紹介したうえで﹁普通の場合の当事者の意思に合し、かつ公平に適する。﹂と述べるにとどまってい. す。。. 本稿の目的は、前記東京高裁平成一五年一一月二六日判決(以下、東京高裁判決という)を素材として、利益. フランス法における. 民法六七四条二項の制定過程﹂)、次に、この. 検討とまとめ﹂)。. ボ ア ソ ナ lド草案では、後述するフランス民法典旧一八五三条一項に倣って、次のような規定が置かれていた。. ボアソナlド草案. 民法六七四条ニ項の制定過程. なお本稿では、あくまで営利を目的とした民法上の組合のみを検討の対象とする。. 裁判例﹂)、得られた成果を検討し、まとめることによって結論とする(﹁四. 問題について日本法と類似した法状況にあるフランス法における裁判例を紹介したうえで(﹁三. を達するため、まず民法六七四条二項の制定過程を明らかにし(﹁二. 出資に比例した割合で分配すべきであるのはいかなる場合か、を明確にすることにある。そして本稿では、この目的. または損失の一方についてのみ分配の割合が定められているときに、他方について、民法六七四条二項を適用せずに. 4. l号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(7) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. ボアソナ!ド草案七八九条一項. ﹁組合員自身または仲裁人による持分の定めがないとき、または仲裁人による決定が無効であるときは、組合財産お よび利益または損失は、各組合員の出資の価額に応じて分配される。﹂. ボアソナ lドは注釈の中で、 ローマ法および旧法時代には出資比例主義ではなく頭数割主義(損益分配の割合が定. められていないときは、利益または損失は、組合員の頭数で分割されるという立場)を支持する見解もあったこと、. 損益分配の割合が頭数割とされるのは、出資が平等であるという推定を根拠としてのことであり、組合員たちが各自. 7-. の損益分配の割合を決定しておかなかったのは、各組合員に対して平等の利益を受ける資格が与えられることを組合. 員たちが承認していたためであるから、出資が平等の場合には頭数割主義も不当とはいえないこと、しかしながらフ 四. ランス民法典は公平の観点から出資比例主義を採用し、ボアソナ!ド自身もフランス民法典の解決案に倣ったこと、 を述べている。. ただしボアソナ!ドの注釈においては、利益または損失のどちらか一方についてのみ分配の割合が定められている. 旧民法. 場合については、言及がない。. lvJJ. v﹄. o. 旧民法では、まず財産取得編一四一条において、ボアソナ lド草案七八九条一項とほぼ同じ内容の規定が置かれて. 、. 2.

(8) 旧民法財産取得編一四一条. ﹁社員自身ニテ若クハ仲裁人ヲ以テ持分ノ定方ヲ為サス又ハ仲裁人ノ定方ノ無効ト為リタルトキハ会社資本及ヒ利 益又ハ損失ハ社員ノ出資額ノ割合ニ応シテ之ヲ配当ス﹂. ところが旧民法では、財産取得編一三七条一項において、特定の組合員の利益分配の割合と損失分担の割合とを同. 一にしないことを合意することができると規定したうえで、二項として次のような規定が置かれていた。. 旧民法財産取得編一三七条二項. ﹁然レトモ利益ノミヲ予見シテ右ノ持分ヲ定メタルトキハ損失ニ付テモ同一ノ定方ヲ合意シタリトノ推定ヲ受ク﹂. 旧民法の立法理白書によると、この一三七条二項は、組合契約の当事者である組合員たちの意思を取り違えること. がないようにすることを目的としていたという。すなわち、組合員たちが利益に関してのみ分配の割合を定めたの. は、組合員たちが事業の成功のみを考慮しており、組合が損失を出して解散することを予想するのは不吉であったた. めである、と考えるのが自然であるから、組合員たちが特定の組合員の利益についてのみ分配の割合を定めていると. きに、当事者間に合意が存在しないからといって、前述した一四一条に従って出資額に比例した割合で損失分担の割. 合を決定することは、当事者である組合員たちの意思に反しているのであり、利益分配の割合に関する決定は損失分 担の割合に関する決定をも意味していると推定される、というのである。. -8-. l号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(9) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. これに対して、. 一三七条二項が、利益についてのみ分配の割合が定められている場合について規定し、損失につい. 一四一条に従って各組合員の出資額に. てのみ分配の割合が定められている場合について規定していないのは、意図的なものであるという。 つまり旧民法の 立場では、損失についてのみ分配の割合が定められている場合には、利益は、. 比例した割合で分配される。組合が損失を出して解散することを予想しているというのは例外であり、また特定の組. 合員が他の組合員以上に損失を分担することには何か例外的な理由があるのだから、 そのような例外に関する合意を. 他の場合、すなわち組合が利益を出して解散する場合に類推して拡張すべきではない、というのがその理由である。. 9-. 現行民法. ﹁併シ乍ラ、是ハドウモ当事者ノ意思ガ第一サウデナカラウ。損失ダケヲ想像シテサウ云フ分配法ヲ定メルト云フ. ている。. 利益は出資額に比例して分配されるという旧民法財産取得編一三七条二項の立場を変更した理由を次のように説明し. リ又諸国ノ法典モサウナツテ居ル﹂と述べたうえで、損失についてのみ分配の割合が定められている場合について、. 定められている場合に、 その割合が利益分配と損失分担とで共通であることについては﹁明カニ当時者ノ意思デモア. 六七四条二項について起草担当者である富井政章博士は、法典調査会において、まず利益についてのみ分配の割合が. み分配の割合が定められているときは、 その割合は利益分配と損失分担とで共通であると推定される。この現行民法. 現行民法六七四条二項では、このような旧民法の立場が更に変更され、利益または損失のどちらか一方についての. 3.

(10) コトハ実際ハ滅多ニナイコトト思ヒマスガ、 ソレハ何カ都合ガアツテサウ云フコトニシタノデス。 ソレガ為メニ、必. 要/アツタ場合ニハ反対ノ分配法ニスルト云フ意思デハドウモナカラウト思ヒマス。其場合ニ従テ利益ノ分配ヲ為ス. ト云フコトデアレパ、 モツト明カニ約定ヲ為スガ自然デアラウト思フ。 ソレデサウ云フ危ウイ推定ヲ下サナイコトニ シテ、本条第二項ノ知ク定メタ(句読点は、執筆者)﹂. そしてドイツ民法草案とスイス債務法が、このような立場を採用している立法例として紹介されている。. 1 0-. 営利を目的とした民法上の組合において、損失についてのみ分配の割合を定めているときの組合員の意思を. ことができない。. 定を及ぼすべきではない例外的な場合があるのかという点については、民法六七四条二項の制定過程からは読み取る. と現行民法の起草者が考えていたことは明白である。ただし、当事者による反対の証明があったとき以外に、この推. 過程を見るかぎり、損失についてのみ分配の割合が定められているときは、利益も同じ割合で分配されるべきである、. であり、どちらか一方の推定が間違っていると断定することはできない。しかしながら、少なくともこのような制定. 民法)、 それとも﹁利益も同じ割合で分配する﹂というものであると推定すべきか(現行民法)は政策的判断の問題. ﹁利益はそれとは異なる割合、つまり原則どおり出資に比例した割合で分配する﹂というものであると推定べきか(旧. 4. 1号 第5 3巻第. 近畿大学法学.

(11) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. フランス法における裁判例. フランス法における民法上の組合の損益分配の割合に関する規定は、次のようなものである。. フランス民法典旧一八五三条一項. ﹁会社契約書ニ利益又ハ損失ニ付各社員ノ持分ノ定ナキトキハ各社員ノ持分ハ会社ノ資本ニ対スル出資ニ比例スル モノトス。﹂. この規定は、 フランス民法典の組合に関する諸規定を全面的に改正した一九七八年一月四日の法律七八│九号の施. 行に伴って改正され、現在では一八四四条の一第一項前段として次のように改められている。. フランス民法典一八四四条の一第一項前段. ﹁利益におけるそれぞれの組合員の持分及び損失に対するその分担は、組合資本におけるその持分に比例して決定 される。﹂. このようにフランス法においては、組合員が損益分配の割合を定めていないときは、 その割合は各組合員の出資額. -11-.

(12) に応じて定められる出資比例主義が原則とされている。しかし日本法とは異なり、利益または損失の一方についての. み分配の割合が定められているときに関する規定は存在しない。そしてフランス法においても、日本法におけると同. 様に、旧一八五三条一項および現在の一八四四条の一第一項前段が主要な争点となった裁判例は、これから紹介する. 三件が存在する程度であり、そのうちの二件は利益についてのみ分配の割合が定められていた事例である。. フランス法において損益分配の割合が主要な争点となった裁判例には、次のようなものがある。. アミアン控訴院一八四O年五月二七日判決. 、 一八三三年八月二七日、 Xとの間で、この工事の施工を目的とす [事案の概要]道路の建設工事を落札した Yは. る組合を設立した。この組合契約には、第一に、この落札の利益はXが三分の一、 Yが三分の二の割合で共有する、. 第二に、落札や見積の諸費用はXとYが半分ずつ分担し、前払い金が必要なときも、同じくXとYが半分ずつ分担す. る、という特約が含まれていたが、損失分担に関する合意はなされなかった。ところが、この組合の事業が失敗し損. 失を出したため、 YがX に対して、財産出資が平等であるのだから、民法典旧一八五三条によって損失分担も平等で. あるべきである、ということを根拠として、損失の半分を分担するよう主張した。これに対して Xは、各組合員が分. 担すべき損失の割合を決定するために考慮すべきは、出資の価額ではなく各自の利益分配の割合である、本件におい. ては、組合契約によれば、 Xは事業から生ずる利益の三分の一についてのみ権利を有しているにすぎないから、損失 は三分の一のみ分担すべきである、と主張した。. - 12-. 2 ①. l号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(13) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. 一八四O年二月一 O 日の仲裁裁定は、次のように述べて Xおよび Y に損失を半分ずつ分担させた。﹁一八三三年八. 月二七日の口頭での合意によって、各組合員の利益における持分は決定されたが、損失に関しては決定されないまま. であった。そしてこの合意の条項によれば、組合のための前払い金は各組合員が半分ずつ分担することとされていた. のだから、組合の損失も同じ割合、すなわち各組合員が半分ずつ分担すべきことは明らかである。たしかに前払い金. はY によって支払われたのだが、しかし Yは前払い金相当額を組合の利益から天引きしているので、実際にはこの前. 払い金は、前記口頭の合意に従って各組合員によって半分ずつ分担されたものと見なされなければならない﹂。 Xが. 控訴。. [判己旦﹁組合に関しては、組合員聞における割合上の平等が認められなければならない。組合員たちが損失を分担. する割合について合意していないときに、組合員の一人に対して、合意によって利益についてその組合員に割り当て. られている持分よりも大きい持分を、損失について課すならば、この法原則に反することになる。 Yおよび Xは、組. 合から生ずべき利益は、三分の二は Y のものであり、三分の一は X のものであると定めたが、損失を分担する割合に. ついては話し合っていなかった。 それゆえ、損失分担の割合は利益分配の割合と同一であることをYおよびXは望ん. でいた、と推定される。 Yが主張するように、このような推定が組合設立時の Yの意思ではなかったとしても、この. 点について Yが沈黙を守っていたことに責任があるよそのうえで前記仲裁裁定を取り消し、 X Y聞に存在した本件組 合の清算を、 Xが三分の一、 Yが三分の二の割合で行うよう命じている。. -13-.

(14) 破殻院一八六五年一月一一自民事部判決. [事案の概要] Xおよび Yらは、 一八五三年一一月二O 日付の私署証書で、 ワインの販売を目的とする組合を設立. する契約をした。この組合の資本二O万フランは、 XとYらが各一 O万フランずつ出資することとされ、また組合契. 、 そして残りの三分の一は Yらが分配を受けることが規定されていた。この 約の一一条では、利益の三分の二は Xが. 組合は一八五六年九月四日に解散したのだが、 一八六一年二月二八日確定の財産目録によると、回収の見込みが不確. 実な債権を除いた組合の積極財産は、およそ一 O万七000フランであった。そこで Xが訴を提起し、各組合員は組. 合契約において平等の出資を約しているのだから、損失も半分ずつ負担すべきである、と主張した。これに対して Y. らは、利益に関して合意している分配方法を損失に対しても適用すべきであり、 それゆえ Xが損失の三分のこを、 らが三分の一を負担すべきである、と主張した。. 一八五八年. よそ一万五七0 0フランの支払いを命じた。﹁組合契約は利益についてのみ規定しており、何も書かれてはいないが、. 損失は利益と同一の比率で分配されなければならない。 Xはこの分配を十分に理解していたのであり、. 一一月二二日には、この時期に確認されていた損失の九分の六を自らの借方にすることで、自らこの分配方法を適用し. た。(民法典旧)一八五三条の諸規定をここで適用することはできない。なぜなら本件組合契約の一一条および二一条. において、組合員に対する利益分配の割合、および、各組合員がこの利益持分を行使しなければならず、また行使す. ることができることが規定されていたことは明らかだからである。第三者に対する全ての組合債務を完済した後で、. 組合の積極財産はX Y間で分配された。しかし Xが行った先取りはX の権利を超過しており、この超過によりXは 一. 1 4-. ②. 第一審(ランス商事裁判所一八六一年六月一八日判決)は Yらの主張を認めて次のように判示して、 Xに対してお. Y. l号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(15) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. 万五六九四フラン八一サンチームの債務者である。﹂. Xが控訴し、. '市 t廿. 附. し f こ(20 控 訴. X に三分の二、 Y に 三分 の 一 の 割. たうえでなお分配すべきものとして残っている積極財産および消極財産の分配に関して組合員間で決定された割合. 規定(民法典旧一八五三条。執筆者注)に配慮すべき理由がある。明示の条項がない限り、 いったん出資を先取りし. 行使されてなお分配されるべき積極財産および消極財産が存在しているときにのみ、利益および負債の分配に関する. 財産が不十分であるために部分的にのみ行使することができるにせよ、平等な取戻権を有している。この先取り権が. 資の先取りに関しては、完全に対等な立場にある。組合員は、出資全額について行使することができるにせよ、積極. 減少させる結果をもたらした損失には適用することができない。本件におけるように出資が平等の組合員は、この出. て利益における各自の割合に比例して支払われなければならないとしても、この原則は、出資自体または組合財産を. Xが 破 接 申 立 を し 、 次 の よ う に 述 べ た 。 ﹁ た と え 完 全 に 先 取 さ れ た 出 資 の 他 に 支 払 わ れ る べ き 負 債 が 、 組 合 員 に よ っ. 合で割り当てることを命じた。. の一、 Y に 三 分 の 二 の 割 合 で 割 り 当 て 、 し か る 後 に 利 益 ま た は 損 失 が あ る と き は 、. 益 を 分 配 す べ き 理 由 が あ る 。 ﹂ そ の う え で 、 今 後 回 収 さ れ る 組 合 債 権 等 は 、 出 資 を 完 全 に 返 済 す る ま で は 、 X に三分. には損失を被っていることになる。この返還の後に処分可能な積極財産が残っている場合にのみ、組合員に対して利. ればならず、この償還は組合債務を構成する。そのため、組合への出資を完全に返還していなければ、組合は最終的. た。﹁これらの価額(本件組合の未回収債権等。執筆者注)は、まず最初に組合への出資の償還に割り当てられなけ. ては第一審の判断を維持して棄却したうえで、 Y の 附 帯 控 訴 に 基 づ い て 第 一 審 判 決 を 取 り 消 し て 、 次 の よ う に 判 示 し. 原審(パリ控訴院一八六二年二月一六日判決)は、 X の 控 訴 ( 第 一 審 に お け る 主 張 と 同 じ 主 張 内 容 で あ る ) に つ い. Y も.

(16) を、出資の先取り自体という全く異なる活動に及ぼすことはできない。﹂そのうえで Xは、未回収債権の分配に関し ては、出資と同じ割合である Xが三分の二、 Yが三分の一で行うべきである、と主張した。. [判己旦﹁組合員間では、組合の清算方法および組合員間での利益または損失の分配について、法律によって禁止さ. れていないあらゆる合意をすることができる。この分配について組合契約で何も定められていないときにのみ、民法. 典旧一八五三条の規定によって、各組合員の持分は組合財産における出資に比例する。それゆえ原判決は、法律に違. 反することなしに、本件組合契約の諸条項および諸条件の解釈によって、当事者らが積極財産の分割前に自らの出資. - 16-. という資本を取り戻すことができることにせよ、損失が出資額を考慮せずに、当事者らが利益を手に入れることを同. じ組合契約によって呼びかけられた割合で負担されることにせよ、判示することができたのである。﹂こうして破段院. は 、 X の破授申立を棄却する一方で、原判決を、当事者間の合意の解釈を誤っているとしてY の附帯控訴に基づく部. 分についてのみ取り消した(つまり、損失分担の割合を利益分配の割合と同一であるとした第一審判決の内容で確定 したことになる)。. ω. 破致院一八六一年三月二七日民事部判決. 一八四五年七月二八日、毛織物業を目的とした組合を設立し、 Xは三万フラン、 Y. 資総額である五万フランは全て失われたようである。そして〆組合の清算に際して、 Xが、出資が完全に失われたこと. れた。判例集からは明らかではないが、この組合の事業は失敗し、出資総額を上回る損失は出なかったもののの、出. は二万フランをそれぞれ出資した。また組合契約では、利益および損失は、各組合員が半分ずつ分担する旨が定めら. 、 [事案の概要] Xおよび Yは. ③. l号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(17) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. により、損失を平等に負担するために、 Yに対して出資の差額一万フランの半額五000フランの返還を請求する権 利を有している、と主張した。. 一八五六年六月四日の仲裁裁定では、 X Y聞の現在の決済に対しては﹁利益および損失は、各組合員が半分ずつ分. 担する﹂という前記特約が適用されること、全ての分配に先立って、利益および損失は二人の各組合員が半分ずつ分. 担すべきであること、積極財産が不十分であることによって組合員は負債を弁済する義務を負うところ、この弁済は、. 組合員が半分ずつ負担することを合意した損失を構成することなどが判示され、 Xの主張が認容された。. これに対して、原審(パリ控訴院一八五九年三月五日判決)は次のように判示してこの仲裁裁定を取り消した。﹁た. とえ本件組合における X の出資が Y の出資を一万フラン上回っているとしても、この組合への出資の不平等は組合設. 立契約の諸条項の一つである。この組合契約のいかなる条項においても、本件のように組合への出資が完全に失われ. た場合において、組合員の一人が他の組合員に対して出資の差額の返還を請求することは認められていない。それ 故 、 X の五000フランの返還の訴を認容した仲裁人の判断は不当である。﹂. Xが破按申立をし、次のように主張した。まず原判決によれば、他の組合員よりも多くの金額を組合に出資した組. 合員は、組合の積極財産が消極財産によって完全に使い果たされたときは、 その全額を失い、かつ少ない金額しか出. 資していない組合員に対する返還請求権も持たない、なぜなら、損失は二人の組合員によって半分ずつ負担されると. いうことが組合契約上定められているものの、 その組合員の出資はより少額であるからである、という。しかしなが. ら、組合の諸取引の結果、組合の積極財産が増加したときには利益が発生しているのに対して、組合の諸取引の結果. が組合財産の減少であるときには損失が発生している。本件においては、損失額に関係なく、また組合財産が全て失. -17-.

(18) われたかどうかに関係なく、各組合員は他の組合員と平等の金額についてのみ、この損失を被る義務を負う。それゆ. え組合財産が失われたときは、他の組合員よりも少額の出資しかしていない組合員は、損失の平等を回復するために、. 他の組合員に対して償還をする義務を負うのであり、五000フランの返還請求を認めた仲裁裁定は正当である。原. 判決は、この仲裁裁定を取り消すに当たって、組合契約のいかなる条項もこのような返還請求権について規定してい. ないことを根拠としている。しかしこの返還請求権は、利益および損失を二人の組合員の間で半分ずつ分配する旨の. 合意から発生していることは間違いない。各自の計算は、出資が不平等であるにもかかわらず利益が平等であること. を保証しているのだから、損失が平等であるという結論に達するのは当然である。そのうえ、赤字のために積極財産. が完全に失われた場合と、積極財産の一部が失われたにすぎない場合とを区別する理由はない。損失の分配は合意さ. れた割合で行われるという原則は、常に同一である。この合意された割合での分配は、組合への出資に比例していな. いならば、積極財産が完全に失われた場合であっても積極財産の一部が失われたにすぎない場合であっても、行われ. るべきではないというのが原判決の立場である。しかし組合の事業の結果四万フランの損失を被った場合を想定して. みると、 Xは自らの出資と Yの出資との差額であるである一万フランを取り戻す権利を有している。 Y の出資は完全. に失われるのに対して、 X の出資はY の出資額相当分についてのみ失われる。たとえ組合員の一人の出資の全額が使. い果たされ、 その一方で他の組合員の出資は一部のみが失われるとしても、損失と出資が比例するのではなく、損失. は平等に分配される。もし消極財産が組合の積極財産の総額である五万フランを超過するならば、 その超過分はやは り各組合員によって半分ずつ負担されるべきである。. これに対して、 Yは次のように反論した。 Xが前提としているのは、組合員が各自の出資の全額を失ったときに、. -18-. 1号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(19) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. 出資額が平等でないことから、組合の損失は組合員間で平等の割合で分配される旨の条項があるにもかかわらず、組. 合の損失を平等でない割合で被った、ということであるが、これは誤りである。組合契約の効果として、組合員の出. 資は、利益分配について約された割合、すなわち半分ずつの割合で、二人の組合員に帰属する共通財産体と一体化し. ている。したがって五万フランの出資は、負債によって使い果たされていなければ半分ずつ分配されるべきであると. ころ、各組合員は、出資が使い果たされた結果、等しい金額、すなわち二万五000フランを失い、 X の破段申立が. 原判決に向けた全ての批判は、各組合員が自らの出資の所有者のままであり、組合解散の際にはその出資についての 優先権を保持していることを前提として推論されているが、これは誤りである。. [判旨]破段申立棄却。﹁①X Y間に存在した商事組合においては、出資は、組合設立契約によれば、不平等であっ. た。すなわちX の出資は三万フラン、 Yの出資は二万フランであり、二人の出資には一万フランの差があった。②前. 記組合契約の条項では、利益および損失は、各組合員によって半分ずつ分担されるべきものとされていた。③前記組 合の解散の際に、これらの出資は使い果たされ失われていた。. 原判決は、更に、前記組合契約のいかなる条項においても、本件のように組合への出資が完全に失われた場合にお. いて、組合員の一人が他の組合員に対して出資の差額の返還を請求することは認められていない、と判示した。. こうして確認された事実関係において、原判決は、 Xが前記出資の差額を根拠としてY に対して提起した五000. フランの返還請求を棄却したところ、この原判決は当事者間の合意を評価し適用したにすぎないのであり、この点に. おいて、破段申立の根拠として援用された民法典(旧) 一八五三条にも、また他の法律にも違反していない。﹂. -19-.

(20) 前述のように、 フランス法においては、組合員が損益分配の割合を定めていないときは、 その割合は出資に比. たにもかかわらず、この合意に基づくX の請求が棄却されたのだという。. されるべき損失は発生しておらず、 そのため﹁損失は二人の組合員が半分ずつ分担する﹂旨の合意の存在が認定され. 額である三万フランを失っているものの、組合の負債が組合の積極財産を超過したわけではないから組合員間で分担. のであり、 その組合財産である五万フラン全額が組合の事業によって失われたときは、たしかにX個人としては出資. フランを出資した時点で、 その三万フランはX の所有から離れて、 XとY の共同財産である組合財産の一部となった. 判断があったものと推測されるという。そしてこのような立場に立てば、③判決の事案では、 Xが組合に対して三万. ω. 員個人が出資を取り戻すことができないとしても、それは組合員全員によって分担されるべき損失ではない、という. 組合員が分担すべき損失とは、組合の解散・清算の時点で組合の負債が組合財産を超過した部分のことであり、組合. の一部を形成し、その代わりに組合員は出資に相当する割合で組合財産に対する持分を取得する、そのため、第二に、. 院判決の背後には、第一に、組合員が組合に対して出資をした場合、 その出資はその組合員の所有を離れて組合財産. せて行われている点が注目される。③判決の評釈では、判決文では明らかにされていないものの、前記のような破段. またフランス法の裁判例においては、損益分配の割合に関する議論が﹁損失(宮立。)﹂の定義に関する議論と合わ. 根底には、①判決で述べられている﹁組合員聞における割合上の平等﹂という考え方があるものと思われる。. ているときは、 その割合は利益と損失とで共通であると判断するのが、判例の立場であると考えてよい。そしてその. ω. 例した割合になると推定されるところ、①判決および②判決に見られるように、利益についてのみ分配の割合を定め. 3. しかしながら、出資した全額を取り戻すことができないときは、それはやはり﹁損失﹂というべきではなかろうか。. 2 0. l号 第5 3巻第 近畿大学法学.

(21) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. もちろん﹁損失﹂には、会計上の損失や税法上の損失などさまざまなものがあり得るが、民法の解釈においては、出. 資額を割り込んだ時点で﹁損失﹂と考えるべきではなかろうか。実際、②判決の評釈では、﹁損失﹂とは、組合契約. において別の表現が用いられていない限り、運営開始当初の組合財産の価額と、 その後確認された積極財産の価額と. ω. を比較したことから発生する欠損のことである、と定義されている。. 検討とまとめ. 一つは、残余財産が直ちに﹁利益﹂であるとはいえないこと、特に組合が長期間にわたって運営され、. その聞に利益配当をしている場合や組合員の加入・脱退があった場合に、出資とは区別される﹁利益﹂がどれだけ発. 指摘している。. 間. 民法六八八条二項が出資比例主義を採用している理由について、起草担当者である富井政章博士は主に二つの点を. 割すべきである。. ω. ても同じ割合が定められたものと推定し、出資の割合ではなく組合員によって定められた割合に従って残余財産を分. また利益または損失の一方についてのみ分配の割合が定められているときは、民法六七四条二項によって他方につい. 六八八条二項)、予め組合員によって損益分配の割合が定められているときは、 その割合に従って残余財産を分割し、. た後になお残る積極または消極の財産)は、各組合員の出資の価額に応じて分割されるのが原別であるのだが(民法. まず前提として、民法上の組合における清算の際の残余財産(組合債権を全て実現し、組合債務を全て弁済し. 四. 生したのかを清算時に見極めることが困難であること、 である。もう一つは、民法六六八条によって出資その他の組. 2 1. l.

(22) 合財産は総組合員の共有になることから、組合に出資された物は、当事者間の特約がない限り、出資額に関係なく平 等の割合で分割されてしまうため、この不都合を避ける必要があったこと、 である。. 民法六八八条二項が出資比例主義を採用している理由がこのようなものである以上、組合員が合意によって残余財. フランス法における裁判例﹂において述べたように、残余財産が清算の時点までに実行された出資. 産分割の割合を変更することを認めても、民法六八八条二項の立法趣旨に反することはない、と考える。 そして、﹁三. ω. 総額を上回っているときは利益分配の割合に従って、反対に出資総額を下回っているときは損失分担の割合に従っ. - 22-. て、残余財産全体が分割されるべきである。組合の運営中に実行される利益分配や損失分担に関しては、民法六七四. 条によって組合員がその割合を自由に決定することができるにもかかわらず、組合の解散および清算に際しての残余 財産の分割に関しては、組合員の意思が排除される、というのは不当だからである。. 闘. 次に、組合員が損益分配の割合について何も定めていない場合について民法六七四条一項が出資比例主義を採. である。. 義は、出資も総組合員の共有に属すると規定した民法六六八条に反し、また分配の際の計算が甚だ困難であること、. まず出資を組合員に対して返還したうえで、更に利益や損失があるときは、 それらを平等に分配するという頭数割主. ハ少ナク損ヲスル﹂という立場を採ることが、当事者の意思でもありまた公平でもあること、 である。もう一つは、. タ者ハ余計取ル、少ナク出シタ者ハ少ナク取ル。損ヲシタ場合一一モ、余計出シタ者ガ余計損ヲスル、少ナク出シタ者. 用したことについて、起草担当者である富井政章博士は二つの理由を挙げている。一つは﹁利益ヲ得タラ、余計出シ. 2. l号 第5 3 巻第 近畿大学法学.

(23) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. そして本稿で検討の対象としている民法六七四条二項の立法理由も、前述のとおり﹁当事者の意思の推定﹂である。. 利益または損失の一方についてのみ分配の割合が定められているときには、契約自由の原則に配慮しつつ、﹁より多く. 利益を得る可能性を持つ者は、より多く損失を被る危険性も負うべきである﹂、﹁より多く損失を被る危険性を負う者. は、より多く利益を得る可能性も持つべきである﹂という観点から、当事者の意思が明示されていないもう一方につ. フランス法における裁判例﹂において見たように、 フランス法においても当事者. いても同じ割合であると推定する方が、当事者間の公平が図られるという意味において、組合員の意思により合致す るものと考えられるし、また﹁三. 請求することができる結果となってしまう。このような事情を考慮すると、この事案についてX の主張と Y の主張の. - 23-. 間の公平が重要な意味を持っている。. これは、裏を返せば、当事者聞の公平を損なう結果をもたらすおそれのある事情があるときは、利益または損. Y. 主張どおり利益分配も損失分担と同じ二分の一の割合で計算すると、 YがX に対して五九五二万円の清算金支払いを. びY の反訴請求は、共に過剰な請求であったことは明らかである。また東京高裁が採用した計算式に基づいて、. の. XもYもおおむねこの割合に応じた利益分配を既に受け、また損失分担を既にしているのであり、 X の本訴請求およ. する合意は存在しないのだが、組合の事業への貢献利益はXが六割、 Yが四割であることが認定されている。そして、. 判決では、損失については平等の割合で分担する旨が当事者間で合意されていたこと、および、利益分配の割合に関. 戻って出資に比例した割合で分配を実行すべきである)、ということになる。本稿で素材として取り上げた東京高裁. 失の一方についてのみ分配の割合が定められているとしても、民法六七四条二項の推定をすべきではない(原則に. 3.

(24) ω. 双方を事実上斥ける結論を出した東京高裁の判断は妥当であったと考える。別の言い方をするならば、東京高裁判決. は、組合員間の公平を損ねる結果となるときは民法六七四条二項の推定が働かない場合があることを示した裁判例で. ︿止淫﹀. ある、ということができる。. ω. 判例時報一八六四号一 O 一頁。この判決の評釈として、三村藤明・ NBL七九六号八頁および塩崎勤・民事法情報一二九号 五一頁以下がある。なおこの判決では、法律事務所を共同で設立、運営する契約の法的性質も争点の一つとされているのだが、 この点については取り上げない。. ω 判例時報一八六四号一 O八頁。 ω この三七五万円は、 Yが未払いでいる本件事務所の賃料および共益費であって、立替金支払請求は棄却されている。 ωYも附帯控訴したのだが、こちらは却下されている。 ω. 具体的には、次の諸事情が指摘されている。まず本件事務所は開設当時、既にその前身である A法律事務所として運営されて いたが、その出資(信用、顧客、事務員・秘書等の人的およびその他の書籍、什器備品等の物的諸設備一式)は全て Xが築き. 上げていたものであり、 Yは字義どおり身一つで参加したにすぎないこと、事務所開設後もXはそれまでの信用、顧客を抱えて 業績を上げていたこと、 Yは日本国内において弁護士としてほとんど実績がなく、顧客の導入等自力での業績ははかぽかしくな. い状態が長く続いたこと、したがって、開設時から昭和六三年二一月三二日までの両名聞の売り上げには著しい差があることが. 容易に推測され、また昭和六四年一月一日から本件事務所が解散した平成三年三月一一二日までの聞の貢献利益は、鑑定の結果に よれば、 Xが六0 ・三%であるのに対して、 Yが三九・七%であること、渉外事務所であっても経費の平等負担が当然に利益. の平等分配と連動するものでないことは X Y共に十分承知していたこと、本件事務所では、給与としての事業主報酬は平等とさ. れていたところ、その余は明確な形での報酬の支給はなく、 Xおよび Yは適宜に引出金という形で本件事務所から金員を引き出 し、これを報酬との認識の下に使用していたこと、引出金はおおむね振替伝票等により相手方のサインや押印をし、相手方がそ. の出金事実を承知した上でなされたものであること、 YはX の取得した引出金について異議を述べたことは一切なく、また本件 訴訟が提起されるまで、 X に対して引出金の返還や清算を求めたことは一度もなかったし、自らも引出金の返還や清算を申し出. 2 4. 1号 第5 3巻 第 近畿大学法学.

(25) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. たことはなかったこと、 Yは昭和六三年四月一日付けでX に全く事前の相談もないまま突然本件事務所内に自らが主宰する渉. 外法律事務所を設立、運営したこと、 Yは平成一 O年三月に本件事務所を退去するに当たって、 Xが本件事務所において弁護士 業務を行うことを知りながら、事務所内の設備を散乱させたままで去り、 X の業務遂行に多大な支障を与えたこと、またその. 問、自らが負担すべき借入金債務の支払いを拒否し、あるいは本件事務所の賃料を滞納するなどし、 X にこれらの立替払いを余 儀なくさせたこと、である。 紛鑑定の結果によると、本件事務所の営業利益総額が、およそ六億一六九O万円。 Yはその四割であるおよそ二億四六七六万円. の分配を受けることができるのだが、そのうちのおよそ二億O三五九万円は既に引出金として受領しているので、 Yが分配を請 求することができるのはおよそ四コ二六万円となる。その一方で、本件事務所解散時の借入金債務総額はおよそ三億四O七一 万円であり、 Yが負担すべき二分の一はおよそ一億七O 三五万円であるのだが、 Yは合計一億二五O 一万円しか支払っておら. ず、その不足分は Xが立て替えて支払っている。そのためYはX に対しておよそ一二八万円(一億七O三五万円マイナス四コ二 六万円マイナス一億二五O 一万円)の支払い義務を負う。 例 法 律 新 聞 二O九七号一五頁。 法律新聞二四二五号一八頁。. ω ω. ﹁二民法六七四条二項の制定過程﹂で述べるように、民法六七四条二項はドイツ民法草案およびスイス債務法を参考にして. 法律新聞二七O 八号二一頁。 側我妻栄﹃債権各論中巻二(民法講義明)﹄八二三頁(岩波書庖、一九六二年)。. ω. 設けられた規定であることから、この問題についてはドイツ法を参考にすることも考えられる。しかしながら、ドイツ法におい ては、日本法とは異なり、組合員が損益分配の割合を定めていないときは頭数割主義が原則とされているため、日本法とは議論 の前提となる状況が異なっている。これに対してフランス法においては、日本法と同様に、組合員が損益分配の割合を定めてい. ないときは出資比例主義が原則とされており、またコニフランス法における裁判例﹂で紹介するように、利益についてのみ. 分配の割合が定められているときは、その割合は利益と損失とで共通であるものと推定することが判例の立場として確立され. ているといってよい。それゆえ、ドイツ法ではなくフランス法を紹介することが、本稿の目的により適合しているといえる。. JNF-. O. H0. ω の・回OH ozkpU回-Mug-Z門目。。。門目。巳 句。己吋]品目立3 門戸己念日︼ ロ285目)仰向忌円ロロ8日目。三巴 ・・ zoC4己-o 注在。ロ・ 吉田。 ω w∞ ∞80・(雄松堂出版、復刻版、一九九八年) ω 民法上。口の組合は、現行民法までは﹁会社﹂と呼ばれており、﹁組合﹂に変更すべきか議論の対象とされていたのだが、明治二. 2 5-.

(26) 1号 第5 3巻第 近畿大学法学. 九年三月一三日の第九回帝国議会・衆議院民法中修正案委員会において正式に﹁組合﹂という呼称に変更されている(慶中俊 雄編著﹃第九回帝国議会の民法審議﹄二四二、二四三頁(有斐閣、一九八六年))。そのためそれ以前は、民法上の組合は﹁会. ω. 社﹂、組合員は﹁社員﹂と呼ばれていた。 ﹃[仏語公定訳]日本帝国民法典並びに立法理白書第3巻 財 産 取 得 編 ( 第l章i第四章)・理白書﹄二六三、二六四頁(信 山社、復刻版、一九九三年)。. ω. 師法務大臣官房司法法制調査部監修﹃法典調査会民法議事速記録四﹄八九二頁(商事法務、一九八四年)。 側ドイツ民法第一草案六四七条二項 ﹁若シ単ニ利益ニ付テノ持分ノミ又ハ単-一損失ニ付テノ持分ノミカ規定セラレタルトキ疑ノ存スルニ於テハ其規定ハ両持分ノ 為メ効力ヲ有ス﹂(今村研介﹃濁逸民法草案第二巻(一八八八年第一草案)﹄(信山社、復刻版、一九九九年)より引用)。 仰神戸大学外国法研究会編﹃仏蘭西民法[町]財産取得法 ﹄(有斐閣、復刻版、一九五六年)より引用。フランス法における 会社 (ωO 丘幹臥)は、営利を目的とした民法上の組合も包含する概念であるため、このような訳となる。. ω ω ω. ∞∞H・H・ 5H・ ロ・ H 学説は、日本法と同様に、この問題について言及しているものはあまり見受けられないのだが、③判決の評釈によると、判. 法務大臣官房司法法制調査部司法法制課編﹃フランス民法典l物権・債権関係│﹄(一九八二年)より引用。 ・口 ω・ 側∞・ 5ぉ - N ロ・ 5∞何回・∞・ この事件では、組合契約の一五条で﹁清算の際は、未回収の積極財産は組合員間で半分ずつ分配する﹂と規定されていたこ とから、未回収の組合債権および第三者から未受領の商品の取り扱いも争点とされ、第一審ではこの規定に従い、回収や売却お よび換価処分を行ったうえで、その代価はX Y間で半分ずつ分配すべきものと判示された。 Yの附帯控訴は、この分配の割合を 変更せよ、というものであった。. ω ω. i r. 例の立場と同じく、利益についてのみ分配の割合を定めているときは、その割合は利益と損失とで共通であると見なす立場が通. 目. 説であるという(ロ・ 5∞戸﹁∞・また冨 P 5 0 町 広 江 一司﹁﹀ZHOF208Hem-g 同弔問問ーフ寸吋忠広ち gtρ5 門 戸 ① 門o 自HSFMO Rhgロ﹁回目︼﹀目。Z回CHYF・ g h Fも同旨)。 O・ 注 ・ ・ け OEO-Y) ロ ・ 臼 ・ ・ 5E一 喝 ロ 。58・ ロo 5﹁(③判決の無署名評釈)。 ロ・ 5∞H・ H ・ ロ・ 58・ H・∞・(②判決の無署名評釈)。もっとも、組合運営中に実行された労務出資があるときは、この出資も当然組合財産. ω ω.

(27) 民法上の組合における損益分配の割合の推定の例外. に含まれる趣旨であろうと推測される。 )o. 法務大臣官房司法法制調査部監修﹃法典調査会民法議事速記録五﹄一七頁以下(商事法務、一九八四年)。. MW 星野英一﹃民法概論町(契約)﹄三三二頁(良書普及会、合本新訂、一九九四年. m. 倒したがって、残余財産はプラスなのだが、出資全額を償還するには不足しているときは、損失分担の割合に基づいて分配を実 行すべきである。なおドイツ民法が、まず組合債務を弁済し、ついで出資を償還し、その上で残るものを残余財産とする、そ. ω. して組合債務を弁済した残りが出資の償還に不足なときは、損失分担の割合でこれを填補すべきものと定めていることを紹介. ﹃法典調査会民法議事速記録四﹄・前掲注帥八九一、八九二頁。. し、﹁立法論としては、ドイツ法が優れているであろうか。﹂と指摘する見解がある(我妻・前掲注 八四八頁)。なお民法上の 組合と類似した法制度である合名会社に関しては、特に定めがなければ、純財産額(積極財産から債務を控除した額)と財産 出資の総額(資本額)とを比較して、積極ならば利益とし、消極ならば損失とすべきである、という見解が主張されている(鈴 木竹雄 H竹内昭夫﹃会社法[第三版︺﹄五五六頁(有斐閣、一九九四年))。. ω. 側ただし、出資等の組合事業への貢献利益以外の諸事情まで考慮に入れたことは、不当である。 YがX に無断で別の法律事務所 を設立したり、本件事務所の解散後の Y の行動によってX の業務遂行に支障が出たりしたこと等は、単に債務不履行や不法行為 の問題として処理すれば足りるのであり、利益分配の割合を決定することとは無関係だったのではなかろうか。. 2 7-.

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