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算数科授業における創発に関する研究

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(1)

平成

26年

学位論文

算数 科 授 業 に お ける創 発 に関す る研 究

兵 庫 教 育 大 学 大 学 院

教育 内容 ・方 法 開発 専攻

M 1 3 1 4 3 D

学 校 教 育 研 究 科

認 識 形 成 系 教 育 コー ス

(2)

序 章 本研 究 の 目的 と本 論 文 の構 成 。・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ 第 1節 本研 究 の 目的及 び方 法・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・

1

創 発研 究 の意 義

2

算 数 科 にお け る創 発

3

本研 究 の 目的 第 2節 本論 文 の構 成 。・・ ・・ ・ ・・ ・ ・・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ 第1章 社会的相互作用 と創発 の捉 え方・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 8 第 1節 社会的相互作用・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・9 第2節 創発 の捉 え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・ ・・・ 12

1

創発 の字義

2

社会科学 にお ける創発 の捉 え方

3

教育心理 学 にお ける創発 の捉 え方

4

数学教育学 にお ける創発 の捉 え方

5

本研 究 にお け る創発 の捉 え方 創発 に関す る先行研 究・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・19 節 吉迫氏 の創発 に関す る研 究・ ・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・ ・。20 節 江森氏 の創発 に関す る研 究・・・ ・・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・・・・・ 。24

l

コ ミュニ ケー シ ョン連 鎖

2

反 省 的 思 考 と反 照 的 思考 第3節 吉村 氏・ 山 口氏 。中原 氏 らの創 発 に関す る研 究・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ 。29 第4節 創 造 性 に関す る研 究・ ・ ・ ・・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ 。32 第5節 社 会 的相 互 作 用 の分析 に関す る研 究・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・。36 第6節 考 察 ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・39

l       o 4 立 早   第   第 04 猜 弟

(3)

第3章 他分 野にお ける創発 に関す る先行研 究・・ ・・・・・・・ ・・ ・・・・ ・・・41 第 1節 社会科学 にお ける創発 に関す る研 究・・・・・ ・・・・・・ ・・・・ ・・42 第2節 教育心理学 にお ける創発 に関す る研 究・・ ・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・・ 。44 第3節 教育 工学 にお ける創発 に関す る研 究・ ・・・・ ・・・・・・ ・・ ・・・・47 第4節 考察・ ・・・・ ・・ ・・・・・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・・・・・ ・・50 第

4章

算数科授 業 にお ける創発 の枠組・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・ ・・53 第 1節 創発 に寄与す る要因 。・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・・・・・・・54 第2節 算数科授業 にお け る創発 の枠組・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・ ・・57 第

5章

創 発 に寄 与す る要 因検 証 のた めの実験授 業 ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・60 第 1節 実験授 業 の概 要 ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・61

1

実験授 業 の 目的

2

実験授 業 の時期 及 び対 象

3

実験授 業 の問題 と方 法

4

分析 方 法 第 2節 授 業 づ く りの視 点・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・64 第3節 授 業 の実 際 ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・66

1

視 点 Iによる授 業

2

視 点 Ⅱに よる授 業

3

視 点 Ⅲ に よ る授 業 第4節 実験 授 業 の考 察・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・75 第6章 創 発 を促 す授 業 実践 例 。・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・82 第 1節 授 業 実践 の 目的 と方 法及 び概 要・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・83 第2節 授 業 づ く りの視 点 ・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・84 第3節 創 発 を促 す授 業 ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・85

1

授 業 実践 の計 画

2

授 業 の実 際 第4節 授 業 実践 の分析 。考 察・ ・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・・89

(4)

終 章 本研 究 の ま とめ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・・ ・ 。95 第 1節 本研 究 の総括 と成 果 。・ ・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 。96

1

本研 究 の総 括

2

本研 究 の成 果 第2節 今 後 の課 題 ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ 。99 お わ りに 。・・・ ・ ●● ●● ●●●● ●●・ ・・・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・ ● ●●●0100 引用・ 参考 文献・ ・・・ ・ ・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・ ・・・・ ・ ・・・・・ 。101

(5)

本 研 究 の 目的 と本 論 文 の構 成

本 章 では

,本

研 究 の 目的 を明 らか に し

,本

論 文 の構 成 を示す。

1節

本研 究の 目的及 び方法

1.創

発研究 の意 義

2.算

数科 にお ける創発

3日

本研 究の 目的

2節

本 論 文 の構 成

(6)

1節

本 研 究 の 目的及 び方法

1.創

発 研 究 の 意 義

『教育の情報化ビジヨン』

(文

部科学省

,20H)に

おいて

,21世

紀を生きる児童に求め

られ る能力 が次 の よ うに述 べ られ て い る。 「21世紀 は

,新

しい知識 。情報 。技 術 が政 治・経 済 。文化 をは じめ社 会 の あ らゆ る領 域 で の活 動 の基盤 と して飛 躍 的 に重要性 を増 す

,知

識 基盤 社 会 の時代 と言 わ れ てい る。 競争 と技術 革新 が絶 え間 な く起 こる知識 基盤 社 会 お い て は

,幅

広 い知 識 と柔 軟 な思 考 力 に基 づ く新 しい知 や価 値 を創 造 す る能 力 が 求 め られ る よ うに な る。 また

,社

会構 造 の グ ローバル 化 に よ り

,ア

イデ ィア な どの知識 そ の ものや 人材 を め ぐる国際競 争 が加 速 す る と ともに

,異

な る文化 。文 明 との共存 や 国際協 力 の必 要性 が増 大 して い る。」(文部 科 学省

,2011,p3)(下

線 筆者) さ らに

,そ

の力 を育む た めの教 育 の在 り方 の重要性 に も触れ

,児

童 が コ ミュニ ケー シ ョン を通 じて協働 して新 た な価 値 を生 み 出す 教 育 を行 うこ とが重 要 だ と述 べ てい る (文部 科 学 省 ,20H)。 また,山口氏 も

,知

識 基盤 社 会 にお い て求 め られ る学力 とい う視 座 か ら,「数 学 的 な思考 力」,「数 学 的 な表 現 力・ コ ミュニ ケー シ ョンカ 」,「数 学 的 な活 用 力 」 とい う二 つ の学力 を 育成 す る こ とが求 め られ る と述 べ,「数 学 的 な活 用力 」につ い て は

,次

の よ うな力 の育成 を 重視 すべ きで あ る と述 べ て い る (山 口,2011)。 「③ の 「数 学 的 な活 用力」 につ いて は, とか く 日常生活 へ の活 用 が 強調 され る傾 向 にあ るが

,新

指 導 要領 の 日標 で も 「学 習 」へ の活 用 が追カロされ た よ うに,「数 学 的 な活 用力 」を幅 広 く捉 え るべ きで あ る と考 え る。こ うした視座 か ら,今後 は, 次 の よ うな 「数 学 的 な活 用 力 」 の育成 を重視 す べ きで あ る と考 え る。

Kl日

常生活 や他 教 科 の学 習 に活 用 す る力

K2算

数・ 数 学 の学 習 に発 展 的 に活用 す る力

K21考

察 の対 象 を拡 張 しなが ら

,解

決 方法 や 考 え方 な どを別 の 問題 解 決 の文 脈 にお い て活 用 す る力

(7)

K22学

んだ知識 。技能や考 え方 な どを活用 しなが ら

,新

しい知識 ・技能や考 え方 を創 り出す力」(山 口

,2011,p15)(下

線筆者) つま り

,知

識基盤社会 を生 きる児童 には

,コ

ミュニケー シ ョンを通 して

,協

働 して新 しい 知識や価値 な どを創 り出す力 が求 め られ る と考 え られ る。 これ について筆者 は

,算

数科授 業 においては

,知

識伝達型 の学習 ではな く

,学

ぶ過程 を大切 に した知識構築型の学習 を 目 指 してい くこ とが重要で ある と考 える。 筆者 は これ までの教職経験か ら

,学

ぶ過程 を大切 に した知識構築型 の授業 にも大 き く二 つの タイプがある と考 えている。一つ は

,特

定 の児童 の考 えで知識 が共有 され てい く授業 である。そ して

,も

う一つ は

,学

級 の皆 で新 しい知識 を創 り出 し

,そ

れ が共有 されてい く 授業である。 どち らか とい うと多 くは前者 の タイプの授業 であ り

,特

定 の児童 の気づ きや 知識 によつて

,結

果 として課題解決 が図 られ知識 が共有 され てい つた。 しか し

,前

述 した よ うにこれか らは後者 のタイプの よ うな授業 も求 め られ る。数 は少 ないが後者 のタイプの 授業にも出会 つた経験がある。 そのよ うな授業では

,教

,児

童双方 に満足感や達成感 が 高かつた。 しか しなが ら

,こ

の よ うな授業・現象 はその多 くを偶然性 に依拠 し

,そ

の よ う な授業づ く りの手立ては暗黙知 の よ うに存在 していたため

,こ

れ まで強 く意識す ることは なかつた。 しか し

,そ

こに 「創発」 とい う概念 を持 つて強 く意識 した時 に

,そ

れ は偶然性 を離れ

,知

識基盤社会 に求 め られ る力 を育成す る新 しい算数・数学教育 とな る と考 える。 ここに創発 の研究 を行 う意義があると考 える。

2.算

数 科 に お け る創 発

次 に

,算

数科 において創発 とい う概念 に着 目す る意義 について述べ る。 その意義 と 大 き く二つ ある と考 える。一つ 目は

,児

童 の学ぶ意欲 の向上 が期待 で きるこ とである。 成 19年 度 の学校教育法 の一部改正 を受 けて出 され た,『言語活動 に関す る指導事例集』 部科学省

,2010)で

,学

力 について次 の よ うに述べ られ てい る。 「ここには

,学

力の重要な3つの要素が示 されている。 ① 基礎的 。基本的な知識 。技能 ② 知識 。技能を活用 して課題 を解決す るために必要な思考力・判断力・表現力等 て   平   文 し         <

(8)

③ 主体的 に学習 に取 り組 む態度」(文部科学省

,2010,pl)

つま り

,文

部科学省 (2010)では知識基盤社会 において求 め られ る学力 として, 上記の三 つ を明確 に してい るのである。主体的 に学習 に関わ ることな くして

,算

数科授 業 にお いて 創発 が生起す るこ とはあ りえない。つま り,算数科授業 において創発 を促 す とい うことで, 学ぶ意欲 の向上

,言

い換 えると

,文

部科学省 (2010)が 明確 に示 した学力の要素であ る, 主体的に学習に取 り組む態度の さらなる育成 を期待す ることができるのである。 二つ 目は

,算

数科授業 において

,よ

り概念理解 を深化 させ ることが期待 できるとい うこ とである。河野氏は

,集

団的 な問題解決 において指摘 され る

,一

部 の学習者 の発言 によつ て予定調和で答 えにた ど りつ く学習軌跡 とい う課題 に対 して

,知

識構築 とい う新 たな学習 過程 モデル を示 してい る。 そ して

,知

識構築 を 目指す授業 にお ける協 同的 な問題解決 では 概念理解 が促進 され た り,概念理解 が深 まった りす る様子 がみ られ た と述 べてい る(河野, 2012)。 つ ま り

,新

しい知や価値 の創造 である創発 を促す算数科授業 において も

,学

ぶべ き 概念理解 の深化が期待 で きる と考 え られ るのである。 以上か ら,創発 を促す算数科 の授業づ く りを 目指す ことに よつて,算数科授 業 を通 して, 知識基盤社会 に求 め られ る新 しい知や価値 を創 造す る能力 の育成 を図 る ことがで き, さら に主体的に学習 に取 り組む態度 の育成や学ぶべ き知識や概念 の理解深化 が促 され るよ うに なる と考 える。

3.本

研 究 の 目的

本研 究では

,1で

述べた よ うに算数科授業 における創発 とい う概念 に着 目す る。 しか し 江森氏が

,創

発 とは どの よ うな現象で あるかな ど

,そ

の中身の議論 はまだまだ始まったば か りである (江森,2010)と 述べ るよ うに

,数

学教育学 において創発 の研 究が十分 にな され てい る とは言 い難 い。 そ こで

,ま

ず創発 に関す る研 究の視点 を以下の表 0-1の よ うに整理 した。

(9)

0-1

創 発 に関 す る研 究 の視 点 そ の他 数学教育学 創発 の捉 え方 A D 創 発 の特徴 B E 場 (授業) ゛つ り C F 創発 の研 究 には

,大

き くその 「捉 え方」 と「特徴」

,創

発 を促す ための 「場づ く り」 とい う視 点がある。「場づ く り」とい うのは

,創

発 を促す組織や環境 とい うこ とであ るが

,算

数 科 においては 「授業」 とい うこ とである。本研 究では

,2で

述べ た よ うに算数科 において 創発 を促す授業づ く りを 目指す こ ととした。本研 究の 目的 は

,以

下の通 りである。 ・ 算数科授業 にお ける創発 の捉 え方や特徴 な どを考察 して倉1発に寄与す る要因 を明 らか に し

,創

発 を促す授業づ く りを提案す ること。 本研 究の 目的は

,表

0-1では

Fに

あた る。 この 目的を達成す るために

,ま

ず数学教育学 だけではな く

,様

々な分野 にお ける創発 の捉 え方 について概観す る (A,D)。 次 に

,創

発 に 関す る先行研究か ら

,創

発 の特徴 について考察す る (B,E)。 また

,他

の学問分野 における 創発 に関す る先行研 究か ら

,創

発 を促す場作 りについて考察す る (C)。 そ うして得 られた 示唆 をもとに

,算

数科授 業 にお ける膚1発を促す授業づ く り (F)につ いて考察 してい く。

(10)

2節

本 論 文 の構 成

本節 では

,本

研 究 の内容 を概観 す る。本研究 の流れ をま とめ る と

,次

の図 0-1の よ うに なる。 図0…

1

本 研 究 の全 体 的構 成 本論文は六つ の章か らな る。 まず第1章では

,本

研 究 において重要 と考 える

,創

発研 究 に欠 かす こ とのできない社会 的相互作用 について概観 す る。 そ して

,創

発 とはいつたい ど うい つた現象 なのか を明 らか にす るため,様 々な創発 の捉 え方 を概観 し,本研究における創発 の捉 え方 を同定す る(1)。

(1)社

会的相互作用 と創発 の捉 え方

(2)創

発 に関す る先行 研 究 (3)他分 野 にお け る創発 に関す る先行研 究 創 発 の特徴

:[is

ζ

][り

° 創発 を促す場 づ く り (4)算数科授業 にお ける創発 に寄与す る要因の枠組 (5)倉1発に寄与す る要 因検証 のた めの 実験授 業 (6)創発 を促 す授 業 実践例

(11)

第2章と第 3章では

,理

論的研 究 として

,創

発 に関す る先行研 究 を概観 す る。 まず創発 の特徴 を明 らかにす るため

,第

2章

では

,数

学教育学 にお ける創発 に関す る研 究

,創

発 と 関係 が深 い創 造性 に関す る研 究

,社

会的相互作用 の分析 に関す る研 究 について考察す るこ とで

,算

数科 にお ける創発 の特徴 を明 らかにす る (2)。 また第

3章

では

,他

の学問分野に おける先行研 究 を概観 し,その考察か ら数学教育学における創発研 究へ の示唆 を得 る(3)。 以上か ら得 られ た創発 に寄与す る要因 を第

4章

で整理 し

,算

数科授業 にお け る創発 に寄 与す る要因 を構造化 して示す (4)。 そ して第5章では

,こ

の枠組 をもとに

,創

発 に寄与す る要因につ いて実験授 業 とその考 察 を通 して検証す る (5)。 第6章では

,創

発 を促す算数科授業構成 の一例 を具体的 に示 し

,そ

の授業 の分析・考察 を行 い (6),本研 究 のま とめを行 う。

(12)

1章

社 会 的相 互 作 用 と創 発 の捉 え方

本章では

,創

発研 究 において欠 かす こ とのできない社会的相互作用 について, ミー ド社 会学 にもとづ くブルーマー氏 の シンボ リソク相互作用論 を概観す ることで

,本

研 究での社 会的相互作用 の捉 え方 を整理す る。 また, どの よ うな現象が創発 であるかを明 らかにす る ため

,様

々な創発 の捉 え方 を概観 し

,本

研 究 にお ける創発 の捉 え方 を同定す ることを 目的 とす る。

1節

社 会 的相 互 作 用

2節

創発 の捉 え方

1.創

発 の字義

2.社

会科学 にお ける創 発 の捉 え方

3.教

育心理学 にお ける創 発 の捉 え方

4.数

学教 育 学 に お ける創 発 の捉 え方

5.本

研 究 に お ける創 発 の提 え方

(13)

1節

社 会 的 相 互 作 用

数学教育学 にお いて

,社

会的相互作用 の重要性 を指摘 した多 くの理論的研 究がな されて きた (例えば

,中

,1995,金

,1998,山

口,2014)。 こ うした社会的相互作用 に焦点 を あてた近年 の研究 において,「二人寄れ ば文殊 の知恵」 とい う諺 があ らわす よ うな 「創発 (emergence)」 とい う現象が注 目され てい る。この 「創発」とい う現象は,ミ ー ド社会学に おいて も注 目されてお り, ミー ドの思想体系 における基礎 的諸概念 の一つ として挙 げ られ てい る (小川,1997)。 また

,こ

の ミー ド社会学 に基づ くシンボ リック相互作用論では

,社

会的相互作用 を

,そ

れ 自体 きわめて重大 な もの

(Hブ

ルーマー

,1991)と

考 えてい る点 は 注 目に値す る。 以上 を踏 まえ,本節 では,特にブルーマー氏 のシンボ リック相互作用論 について考察 し, 本研 究で重視す る社会的相互作用 について概観す る。 「シンボ リック相 互作用論 」 は, ミー ド理論 に基礎 をお く社 会 学 。社 会 心理 学 の一 つ の 理論 で あ る。ブル ー マー 氏 に よ る と,「シ ンボ リック相 互 作 用論 」は

,人

間集 団 と人 間行 動 の科 学的研 究 のた めの

,現

実 的 なア プ ロー チ で あ り

(Hブ

ル ー マ ー

,1991),次

の二 つ の前 提 に立脚 す る もので あ る。 「第 一 の前提 は

,人

間 は

,も

の ご とが 自分 に対 して持 つ意 味 に の つ とつて

,そ

の もの ご とに対 して行 為 す る とい うもの で あ る。(中略

)第

二 の前提 は,この よ うな もの ご との意 味 は

,個

人 が そ の仲 間 と一緒 に参加 す る社 会 的 相 互 作 用 か ら 導 き出 され

,発

生 す る とい うこ とで あ る。 第 二 の前提 は

,こ

の よ うな意 味 は, 個人 が

,自

分 の 出会 った もの ご とに対 処す るなか で

,そ

の個 人 が用 い る解釈 の 過 程 に よって あつ か われ た り

,修

正 され た りす る とい うこ とで あ る。」

(Hブ

ル ー マ ー

,1991,p2)

こ こで の 「意 味 」 は

,人

々 の社 会 的 相 互 作 用 の過 程 で 生 じた も の で あ り

,シ

ン ボ リ ソク 相 互 作 用 論 で は

,意

味 は社 会 的 な産 物 と考 え られ る。 ま た

,第

二 の 前 提 に あ る よ うに

,シ

ンボ リ ノク相 互 作 用 論 で は ,「 社 会 的 相 互 作 用 を

,そ

れ 自体 き わ め て 重 大 な も の 」

(Hブ

ル ー マ ー

,1991,p9)と

考 え

,社

会 的 相 互 作 用 は

,人

間行 動 を形 成 す る過 程 で あ っ て

,人

(14)

行動 を表出 させ た り解放 した りす るた めの単な る手段 または状況 ではない と述べてい る(H ブルーマー,1991)。 さらに

,第

二 の前提では 「解釈 の過程」がキー ワー ドとなる。 この解 釈 の過程 については二つ の段階がある と し

,そ

れ は,「第一 に

,行

為者 は

,そ

れ に対 して 自 分が行為 してい るもの ご とを,自 分 に対 して指示 lndlcateする。」

(Hブ

ルーマー,1991,

p6)と

「第二に

,こ

の 自分 自身 とのコ ミュニケー シ ョンの過程 によつて

,解

釈 は

,意

味 を あつか うとい うこ との問題 にな る。」

(Hブ

ルーマー

,1991,p6)で

ある と述べ てい る。 この よ うに

,シ

ンポ リック相互作用論 では

,社

会的相互作用が重要であ り

,社

会的相互 作用 によって生 じた意味 にのっ とつて,も の ご とに対 して行為 し,解 釈 してい く。これ は, シンボ リソク相互作用論 の中心的な認識 の一つであ り

,集

団 を

,そ

の中で人々が様 々な状 況 において互 いの行為 を指示 し合 い

,相

手の行 った指示 を解釈 してい く一つ の過程 で ある とみ な してい る。 また

,社

会 的相 互 作 用 につ い て

,非

シ ンポ リ ックな相 互 作用 とシ ンボ リックな相 互作用 の二つ を区別 してお り

,そ

の特徴 につ いて次 の よ うに述べ て い る。 「非 シンボ リックな相互作用では

,人

間 は

,お

互 いの身振 りや行為 に対 して直 接 に反応す る。シンボ リックな相互作用 では,人 間はお互いの身振 りを解釈 し, その解釈 に よつて生み出 された意味にのっ とつて行為す る。」

(Hブ

ル ーマー, 1991,p 84) 「シンボ リックな相互作用 は

,解

釈 と定義 を含 んでい る。解釈 lnterpretat]on とは,他 者 の行為や言及 の意味 を確定す ることであ り,定 義 deflnltlonと は, 自分が ど う行 為 しよ うとしてい るのかに関す る指示 を他者 に対 して伝 達す るこ とで ある。」

(Hブ

ルーマー

,1991,p84)

「シンボル の使用

,解

,ま

たは他者 の行為の意味の推定 によつて

,人

間の相 互作用 は媒介 されている。」

(Hブ

ルーマー

,1991,p102)

この よ うに シ ンボ リ ックな相 互 作 用 で は

,シ

ンボル の使 用 に よつて 「解 釈 」 が な され, 「意味」 が創 出 され てい くとい う人 間行 動 の形成過程 を見 る こ とがで き る。

(15)

社会的相互作用 を算数科授業 において重要視す る意味は

,学

級集 団 を一つの集 団や社会 とみ ることに よつて

,授

業 にお け る社会的相互作用 の力動性 やその所産 を分析す ることが できると考 え られ る点である。 これは意味の創 出である学びの過程 を重要視す ることで も ある。 さらに

,シ

ンボ リック相互作用論 の観点か ら考 えれ ば

,算

数科 にお ける 「シンボル」 と しては言葉や数

,式

,図 ,表

,グ

ラフな どが挙 げ られ る。これ らの使 用や,「解釈」,「定義」 に着 目す ることが創発 を捉 える重要な視点にもなると考 え られ る。 以上の よ うに言葉 のや り取 りだ けではな く

,こ

れ らを総合 的 に捉 えるこ とが本研究 にお ける社会的相互作用 の捉 え方で ある。

(16)

2節

創 発 の捉 え方

近年

,創

発 とい う現象 は様 々 な分 野 にお い て注 目され

,い

か に新 しい ア イデ ア が創 造 さ れ るのか とい う問 い が学 際的 な研 究課 題 とな つてい る (國領

,2006,井

,2008,/1森

, 2010,吉村 ら,2013)。 そ こで本 節 で は

,創

発 が様 々 な学 問分 野 で どの よ うに捉 え られ て い るか を概観 し

,本

研 究 にお け る創 発 の捉 え方 を同定す る。

1.創

発 の字 義

まず始 め に

,創

発 の字 義 を見 てみ る。創 発 につ い て,『広 辞苑 第 六版 』(新村,2008) は

,次

の よ うに述 べ られ て い る。 「創発 進化 論 。シ ステ ム論 の用語 。 生物進 化 の過 程 や システ ムの発 展 過 程 にお いて ,先 行す る条件 か らは予沢」や 説 明 ので きない新 しい特性 が生 み 出 され る こ と」 (新村

,2008,p1630)(下

線 筆者) しか し,『広辞苑 第五版』には記述がない こと,『大辞林』,『日本 国語大辞典』な ど多 く の 日本語辞書 には 「創発」とい う用語が掲載 されていない ことな どか ら,「創発」とい う用 語 が今 日ではまだ 日常生活 において広 く使用 され てはいない と言 える。 さらに,『哲学事典』(下中

,1971)で

は次の よ うに述べ られてい る。 「創発

emergence

一般 に

,進

化論で用 い られ る概念 で

,先

行与件 か ら予言 した り

,説

明 した りす る こ とが 不 可 能 な進 化二 発 展 をい う。G H Lewesが そ の著 Problems of Llfe and MIndの 中でemergent propertyの 概 念 を導 入 し

,そ

れ に 基 づ い て

CLモ

ー ガ ンが Emergent Evolutlon(1923)に 提 唱 した概 念 。 生物 の 進 化 の歴 史 の なか で

,生

物 の発 生

,神

経 系 を備 えた生物 の 出現

,人

間 の 出現 な ど い くつ か の段 階 にお い て

,先

行 の諸状 態 に基礎 はお い てい る ものの

,そ

れ らか ら 直接 予 見す る こ との で き ない よ うな飛 躍 が認 め られ る, とい うのがモ ー ガ ンの主 張で

,こ

れ らを創 発 の典 型 例 と考 えた。」(下中

,1971,p864)(下

線 筆者)

(17)

以 上 か ら,「創 発 」 とは生物 学 を含 む 自然科 学 の 中か ら起 こった概 念 で あ り,「先行 す る 条件 か らは

,予

測 や 説 明 が で きない こ と」,また

,進

化や発 展 な どの 「新 しい特性 」がそ の 要素 として あげ られ る。

2.社

会 科 学 に お け る創 発 の捉 え方

前項で述べた よ うに

,創

発 は 1920年代 に

CLモ

ーガン氏 によって提唱 された概念であ り(下中

,1971),自

然科学 の分野 で注 目されて きたが

,近

年 では流動的 な社会情勢 も影響 し,社会科学 において も注 目されてい る概念である(國領,2006)。 例 えばその一例 として, 國領 (2006)で は2005年の総選挙 を例 に挙げ,「2005年 の総選挙 における自民党の地滑 り 的な勝利 も, 日本 の先行 きに関す る不安感や焦燥感 が 「改革 を止 め るな」 とい うキー ワー ドでヘ ク トル を与 え られ て一気 に噴 出 した

,創

発的な現象 と考 えるこ とがで き るだろ う。」 (國領

,2006,pl)と

述べ られ てい る。この よ うな社会科学 にお ける創発 の捉 え方 として, 國領 氏は以下の よ うに述べてい る。 「多 くの要因や多様 な主体が絡ま り合いなが ら,相互 に影響 しあつてい る うちに, ある時 にエネル ギー の向 き方 が一定方向にそ ろつて

,当

初 は思い もよ らなかつた 結 果 が ポ ン と現 出 す る こ とが あ る。 そ ん な現 象 の こ とを創 発 とい う。」(國 領

,2006,pl)(下

線筆者) つ ま り

,國

領 (2006)では創発 を

,多

様 な主体が相互 に作用 し合 うこ とに よって

,当

初 は思 い もよ らなか つた結果 が現 出す る現象である と捉 えてい る。

3.教

育 心 理 学 に お け る創 発 の捉 え方

蘭氏・高橋氏 は

,学

級集 団はその成 立の経緯 か ら鑑 みて も社会的 な影響 を大 き く受 けて お り

,教

師 は社会 の要請 に過乗1適応 し

,生

徒 の教育 によ り管理的 になってい る側 面 もある と述べてい る (蘭 。高橋,2013)。 しか し

,管

理的 な学級経営 が効果 を上 げ る どころか

,逆

に多 くの歪みを生 じさせ ていることは明 らかである とも述べ

,管

理的色彩 の強い教育では な く

,児

童 の 自律性 を育む教育 の観 点 に立 った学級経営や集 団指導が必要で あ ると述べて

(18)

いる (蘭 。高橋,2013)。 この点 については

,昨

,学

校現場 において問題 とされ る学級崩 壊 とよばれ る現象 の多 さを考 える と重要 な指摘 である。蘭氏 。高橋 氏 は

,そ

こで現代の学 級経営の考 え方 として有力 な手 がか りになるのが

,複

雑系の考 え方 と自己組織 的な集 団運 営の発想で ある とし

,以

下の よ うに述べ てい る。 「本論 は

,複

雑 系 を

,教

育 の場 にお ける学級集 団研 究 の視座 か ら丼 関 (2008)の 考 え方 を参考 に,「多数 の構成要素 か らな る集 団で

,各

要素が他 の要素や環境 と不 断 に相互作用 をお こなつてお り

,そ

の結果 として要素の総和以上のふ るまいを全 体が表す もの」 と定義す る。」(蘭・高橋

,2013,p320)(下

線筆者) そ して

,こ

の複雑 系の考 えを取 り入れ た学級経営に教師 の適切 な管理運営での運用 によ って導かれ る学級集 団を 「創発学級」 と呼んでい る。 創発 について明確 な定義 を してい るわけではない ものの

,創

発 学級 と複雑 系の定義 を考 える と

,創

発 は

,主

体で ある生徒 が環境や仲間 と活発 に相互作用す るこ とによって

,要

素 の総和以上のふ るまい となる新たな価値や活動が生まれ る現象である と捉 えることができ る。

4.数

学教 育 学 に お け る創 発 の捉 え方

次 に

,数

学教育学 にお ける創発 の捉 え方 について考察す る。江森 氏が,「治1発 とは どの よ うな現象 なのか

,そ

の中身の議論 については学問的な探求が始まったばか りで

,用

語 の定 義 も未確 定な状態 にある。」(/1森

,2010,p71)と

述べ るよ うに

,数

学教育学 にお ける創 発についての明確 な定義 は

,ま

だ十分 に共有 されてい るとは言 えない。 そ こで

,数

学教育 学にお ける創発 に関す る先行研 究 として

,吉

迫 (2002a),江 森 (2012),吉 村 ら (2013)を 考察 し

,そ

れ らの研 究 において どの よ うに 「創発」が捉 え られてい るか を概観す る。

(19)

吉 迫 氏 に よ る 「 創 発 」 の 捉 え 方 「ネゴシエーション 社会的相互行為過程において

,個

人が自分の思考を 絶えず変容 させ ることによつて相互に適応 していく過程」(吉迫,2002a,

p31)

「創発 ネ ゴシエー シ ョンに参加 している個々の学習者が寄与す ることに よ り

,特

定の学習者のアイデアだけでは生 じないよ うな数学的アイデア が

,ネ

ゴシエーシ ョンの最終的な所産 として生 じること」(吉迫,2002a,

p31)(下

線筆者) 江 森 氏 に よ る 「 創 発 」 の 捉 え 方 「「創発 とは

,構

成 要素以上の ものをもた らし

,か

,も

との要素 に還元 できない もの を生み 出す ことである」と定義すれ ば,こ こで創 造 され たア イデ アは

,送

り手 と受 け手 のいずれ にも内在 され てはいなか つた もので, コミュニケーシ ョン1こよつて創発 されたものだ と言 うことができる。」(江 森

,2012,p80)(下

線筆者) 吉 村 氏 口山 口 氏 ・ 中 原 氏 ら に よ る 「創 発 」 の 捉 え 方 「本研究では

,授

業における社会的相互作用を重視す る立場か ら

,創

発 を 「一人一人の個人によっては決 して創 り出されなかつた知識や考えが,生 会的相互作用 によつて新 たに創 り出 され る現象」と定義す る。」(吉村・山 口 。中原 ら

,2013,p194)(下

線筆者)

(20)

5.本

研 究 に お け る創 発 の捉 え方

以上,社 会科学,教 育心理学,数 学教育学における創発 の捉 え方 について概観 してきた。 これ らの特徴 をま とめた ものが

,次

の表 1-1で ある。 表

1-1

先 行 研 究 に お ける創 発 の 捉 え方 (下線 は筆 者) 創 発研 究 の分 野 創発 の捉 え方 社会科 学 國領 (2006) 多 くの要 因や 多様 な主体 が絡 ま り合 い なが ら, 相 互 に影 響 しあ つて い る うち に

,あ

る時 にエネ ル ギー の 向 き方 が一 定方 向 にそ ろつて

,当

初 は 思 い もよ らなか つた結 果 が ポ ン と現 出 教 育心理 学 高橋 (2013) 多数 の構 成 要 素 か らな る集 団 で

,各

要 素 が他 の 要 素 や 環 境 と不 断 に相 互 作 用 を お こな っ て お り

,そ

の結果 と して要素 の総 和以 上 のふ るまい を全 体 が表す もの 数学教育学 吉迫 (2002a) ネ ゴ シエー シ ョンに参加 して い る個 々 の学習 者 が寄与す るこ とに よ り

,特

定 の学習者 のアイ デ アだ けで は生 じない よ うな数 学 的 アイデ ア が

,ネ

ゴシエーションの最終的な所産として生 じる こ と 江森 (2012) 「倉孵発とは, 構 成要素以上 の1)のをもた らし, か つ 、1、 との要 素 に還 元 で き な い もの を生 み 出 す ことである」 と定義すれ ば

,こ

こで創造 され たアイデアは

,送

り手 と受 け手 のいずれ に も内 在 され てはいなかつた もので

,コ

ミュニケー セ ョンによって創発 された もの 吉村 ら (2013) 創 発 を 「二 人一 人 の個 人 に よつて は決 して創 り 出 され なか つた知識 や 考 えが

,社

会 的相 互 作用 に よつて新 た に創 り出 され る現 象 」 と定義 す る

(21)

各分野 にお ける創発 の捉 え方 の特徴 を見 る と

,い

ずれの捉 え方 において も

,表

現 は違 う ものの 「創 り出 され た ものの新奇性」についての記述 がある。 さらに,「それ らは社会的相 互作用 によつて生み出 され る」 ことも記述 されている。 つ ま り

,数

学教育学 にお ける創発 を考 える際 にも

,そ

れ は社会的相互作用 を通 して

,新

しい ものが生み出 され る現象であると大 きく捉 えることができる。 ここで

,数

学教育学 にお ける創発 の捉 え方 を さらに詳 しく考察す る。 まず, どの よ うに して創発 が生起す るかについてである。吉迫氏は

,ネ

ゴシエー シ ョンの最終的な所産 とし て生 じると述べ

,江

森氏 は コ ミュニケー シ ョンによつて創発 され る と述べ

,吉

村 氏・ 山 口 氏 。中原氏 らは社会的相互作用 によって創 り出 され ると述べてい る。吉迫氏 によると

,ネ

ゴシエーシ ョンとは

,社

会的相互行為過程 にお ける思考 の変容過程 の こ とで ある。 また, 江森氏 はコ ミュニケー シ ョンについて,「数学学習 にお けるコ ミュニケー シ ョンは,問 題解 決

,推

,情

報伝 達

,な

らび に

,数

学的知識 を関連づ ける とい う

,数

学学習 の場 で展開 さ れ ている諸活動 を統合す る活動 で ある」(江森

,2012,p46)と

述べ てい る。この ことか ら, 本研 究 を進 めるにあたつて

,ネ

ゴシエー シ ョンや コ ミュニケー シ ョンは社会的相互作用 と 同様 の意味 として扱 うこ ととす る。 したがつて

,本

研 究では

,社

会的相互作用 に よつて創 発 は創 り出 され る と捉 えることとす る。 次 に創 り出 され るものの新奇性 について検討す る。吉迫氏

,吉

村氏 らは

,そ

の新奇性 に ついて 「特定の個人 によっては創 り出 されない」ことを挙 げてい る。また江森氏 も,「もと の要素に還元できない」 ことを挙 げていることか ら

,創

発 され るものは

,一

人一人 の個人 によっては倉1り 出せ ない ものだ と言 える。 また

,本

研 究では算数科授 業 にお ける創発 を考 えるこ とか ら

,生

み 出 され るものはアイデア といった見方や考 え方 だ けでな く数学的知識 も含 まれ る。 したが つて

,本

研 究では吉村 ら (2013)の 捉 え方 に依拠 し

,創

発 を次 の よ う に捉 えることとす る。 本 研 究 に お け る 創 発 の 捉 え 方 創発 とは

,社

会的相互作用によつて

,一

人一人の個人によつては決 して創 り出されなかっ た新 しい知識や見方 。考え方が

,新

たに創 り出され る現象のこと

(22)

次章以降 (第

2章

,第

3章

)で

,創

発 の理論的研 究 として

,数

学教育学 だけでな く,

他 の学問分野 にお ける創発 に関す る先行研 究 も概観 し

,創

発 に関す る先行研 究について考 察す る。

(23)

2章

創 発 に関す る先行 研 究

本章では

,ま

,数

学教育学 にお ける創発 に関す る先行研 究 を概観す る。 また

,創

発 と 創造性 を関連づ けた研 究 も見 られ ることか ら

,数

学教育学 にお け る創造性 に関す る先行研 究について も概観 す る。 さらに

,創

発 の大 きな特徴 で もある社会的相互作用 の分析視 点 と なる先行研 究の考察 を踏 まえて

,算

数科 にお ける倉1発の特徴 を明 らかにす ることが本章の 目的である。

1節

吉迫 氏の創発 に関す る研究

2節

江森 氏 の創発 に関す る研究

1ロ

コ ミュニケー シ ヨン連鎖

2.反

省 的思考 と反照 的思考

3節

吉村氏 口山口氏・中原氏らの創発に関する研究

4節

創 造 性 に関す る研 究

5節

社 会 的相 互 作 用 の分析 に関す る研 究

6節

考 察

(24)

1節

吉 迫 氏 の創 発 に関す る研 究

吉迫氏は

,創

発 的ネ ゴシエー シ ョン (創発 が起 こつてい るよ うなネ ゴシエー シ ョン

)に

着 日し

, Stelnbrlng(1997)の

認識論的三角形 を用 いて

,創

発 が起 こる過程 を記述 し

,創

発 のメカニズムを検討 してい る (吉迫,2002a)。 Stelnbrlng(1997)の 認識論 的三角形 とは

,図

2-1の よ うに数学的意味の認識論的構造 として,「指示 の文脈」,「記号体 系」,「概念」とい う三つの構成要素 の相互 関係 を表 した も のである。吉迫氏は

,創

発 の過程 を提 えやす くす るた めに

,こ

の認識論的三角形 を用いて 創発過程 を記述 し

,そ

れ を 「創発 プ ロセ ス」 と呼んでいる。

指示鈴文脈

図 2…

1

認 識 論 的 三 角 形 (吉迫

,2002a,p31)

そ して

,創

発 的 ネ ゴシエ ー シ ョンの事 例 分析 か ら

,次

の よ うに考 察 して い る。 「以上 の よ うに,創 発 的ネ ゴシエー シ ョンの具体的事例 を比較 す る こ とに よつて, 創 発 の メカニ ズ ム につ い て考 察 して きた。 そ の結 果

,基

盤 とな るア イデ ア か ら倉1 発 的 なアイデ アヘ の移 行 に は,「異 な る新 しい指 示 の文脈 の導入 」 と「古 い指示 の 文脈 の修 正」 の

2つ

の タイ プ が あ る こ とが分 か った。 前者 は

,基

盤 とな るアイデ ア と創 発 的 な アイデ ア との間 に大 きな飛 躍 が あ る場合 で あ り

,後

者 は

,基

盤 とな るアイデ ア と創 発 的 な アイ デ ア との間 につ なが りが 見 られ る場合 で あ る。」(吉迫, 2002a , p 36) つ ま り

,吉

迫 氏 に よ る と

,創

発 プ ロセ ス は新 しい指 示 の文脈 が生 じる基盤 の違 い に応 じ て,「異 な る新 しい指 示 の文脈 の導入 」 と「古 い指 示 の文脈 の修 正 」 とい う二つ の タイ プ に 類型 化 で き る とい うこ とで あ る。以 下

,吉

迫 (2002a)に基 づ いて

,二

つ の タイ プ の事 例 を 概観 す る。

(25)

(1)「

異 な る 新 し 事例は

,小

学校第4 この授業では

,次

の よ い 指 示 の 文 脈 の 導 入 」 の 事 例 (吉 迫

,2002a,p.32)

学年の 「□と△を用いた式」の単元における授業の一場面でル)ろ うな問題 (図

2-2)が

提示 されている。

0

1つ

のテープルに

,い

すは

6個

ずつ並びま九

2段

目になるといすは

,次

のように並びます。

3段

目は同 じように並びます。

5段

日ではいすはいくつ並びます力、

2-2「

異 な る新 しい指 示 の 文 脈 の 導 入 」の事 例 に お け る問 題 (吉迫

,2002a,p.32)

この場 面 で は,「1段増 え る ご とに いす が6個ず つ増 えて い く」 とい う関係 を用 い て5段目 のいす の数 を求 め る解法 か ら,「 6× (段の数

)=(全

体 の いす の数)」 とい う言葉 の式 が生 じ, さ らに,「6× □

=△

」 とい う式 がつ く られ てい る。 この時 点 で の式 は

,数

値 的推 測 か ら帰納 的 に生 じた もので あ る。 しか しそ の後

,あ

る児童 が この式 を

,斜

めの机 にいす を全 部移動 させ た図 (図

23)を

用 いて根 拠 づ けて い る。 つ ま り, この事 例 で は

,帰

納 的 に生 み 出 され た式 に対 して

,図

2-3を用 い た新 しい理 由づ けが創 発 して い る と述 べ て い る。 吉迫氏 は この事 例 につ い て

,新

しい指 示 の文脈 (図

2-3)が

導 入 され る こ とに よつて, 創発 が起 こつて い る と述 べ てお り

,こ

れ は数 学 的表 現 の変容 が創 発 を もた ら した事 例 で あ る と捉 える こ とが で き る。 図

2-3 (吉

,2002a,p.32)

吉迫 (2002a)では, この事 例 にお け る創 発 プ ロセ ス を図

24の

よ うに記 述 して い る。

(26)

推測 (6ずつ増えている) い指示の \

/咸

跡 剌 算術的関係

/咸

新 しい算術的関係 図

2-4「

□ と△ を用 いた 式 」の授 業 に お ける創 発 プ ロセ ス (吉迫

,2002a,p.32)

(2)「

古 い 指 示 の 文 脈 の 修 正 」 の 事 例 (吉 迫

,2002a,pp.33-34)

この事例は

,小

学校第

5学

年 の 「分数 と小数・整数」の単元 にお ける授 業の ‐場面であ る。この授業では,「21ン+3=2/31.にな るのだ ろ うか。」とい う課題 が提 示 され てい る。 この 場面では

,図

2-5に基づ いて

,A「

21′÷3は 2/31′ になる」

,B「

21.+3は 1/31′ になるJと い う二つの対立す る意 見が提示 され てい る。

Aは

量分数 の考 えに基づ いてい るが

,そ

の説明 は十分ではな く

,Bは

分割 分数 の考 えに基づいてい る。 その後

,図

2-6に用 いた 「分割 分 数 としての 1/3と 量分数 としての2/31´ の関連」 とい う新 しいアイデアが創発 している。 吉迫氏は

,こ

の事例 について

,図

2-5の再解釈 (図 歩

6)が

倉U発を もた らした と述べ て お り

,そ

れ までの学習者 のアイデ ア (古い指示 の文脈

)の

再解釈 が創発 を もた らした事例 であると捉 えるこ とができる。

2/3で

2-5(吉

,2002a,p.33)

2-6(吉

,2002a,p.33)

また

,吉

迫 (2002a)では,この事 例 にお ける創発 プ ロセ スを図2-7の よ うに記 述 してい る。

(27)

冨 `▼ 2` 指示の ′ι ttθ=f″′ 記群 剰 分数の概念 2′

:∫

:/3 都 :

2-7

2L+3=2/3L」

の事例における創発プロセス

(吉

,2002a,p.33)

以 上 の二つ の タイ プ の創 発 プ ロセ ス につ いて

,吉

迫 氏 は 「異 な る新 しい指 示 の 文脈 の導 入 」 の タイ プ の創 発 プ ロセ ス は

,創

発 的 なアイデ ア を生み 出 した個 人 は

,そ

れ までの学習 者 の寄与 を表 す表 現 (記号体 系

)を

反省 の対象 に してお り

,そ

の表現 (記号体 系

)の

背 景 にあ る

,そ

れ まで の学習 者 の アイデ ア (古い指 示 の文脈

)は

考 慮 してい な い と して い る。 また,「古 い指示 の文脈 の修 正 」の タイ プ の創 発 プ ロセ スで は

,そ

の表 現 (記号体 系

)の

背 景 に あ る

,そ

れ ま で の学 習者 の アイデ ア (古い指示 の文脈

)を

反 省 の対 象 に して い る と言 え る と述 べ て い る (吉迫 ,2002a)。 以 上 の こ とか ら

,創

発 プ ロセ ス には二つ の タイ プが あ る こ と

,ま

た この 二つ の タイ プ に はそれ ぞれ,「数 学 的表 現 」や 「それ までの学習者 の アイデ ア」 とい つた反 省 の対 象 が存在 す る こ とが わか る。 つ ま り

,創

発 が生起す るには

,数

学 的表 現 に着 目す る こ とが重 要 で あ り

,そ

れ を学習者 が反 省 し数 学 的表現 を変容 させ てい くこ と

,そ

して それ を関係 づ け

,解

釈 して い くこ とが

,重

要 な要 因 にな る と考 え られ る。

(28)

2節

江 森 氏 の創 発 に関す る研 究

1.コ

ミュニ ケー シ ョン連 鎖

/1森氏は

,人

間の思考 は 自己中心的 な ものであ り

,他

者 との コ ミュニケー シ ョンを行 う 利点の一つ として 自己中心性 か らの脱却 があることを述べ

,コ

ミュニケー シ ョンの連鎖 に ついて分析 してい る。そ して この コ ミュニケー シ ョンの連鎖 には,「協応連鎖」,「共鳴連鎖」, 「超越連鎖」,「創発連鎖 」の四つ の類型 があることを述べ

,各

連鎖 について以下の よ うに 定義 してい る。なお,「協応連鎖」,「共鳴連鎖」,「超越連鎖」についての定義 は/1森 (2012) か ら,「倉1発連鎖」 につ いては江森 (2007)から引用す る。 協 応 連 鎖 「本書では

,メ

ッセー ジ送信 が学習者 の予沢」可能性 の範 囲内で連鎖 してい く時, この連鎖 を 「協応連鎖」 と呼ぶ ことにす る。」(江森

,2012,p63)

共 鳴 連 鎖 「本書では

,生

Gの

発言 「上 のか ら下のを引いて

,上

のをたす と」か ら

,教

師 の発言 「①―②

+①

だか ら,これ は2番 目の解答

,①

×2-② と同 じこ とを している つて言 うんだね l」 に見 られ る連続的な対話 を

,送

り手 の意 図 を受 け手 が首尾 よ く解釈す るこ とに よ り成 立す るコ ミュニケー シ ョン連鎖 とい う意味で,「共鳴連鎖」 と呼ぶ こ とにす る。」(江森

,2012,p68)

超 越 連 鎖 「それ ゆえ

,本

節 で定義す る超越連鎖 は

,第

1送

信者 が予期 していなかつた情報 が第

2送

信者 か ら第 1送信者 にフィー ドバ ック され る とい う点 で

,共

鳴連鎖 と区 別 され るものであ る。超越 連鎖 の場合 には

,第

1送信者側 には

,な

ぜ そ の よ うな フィー ドバ ックが返 つて くるのかが理解 できない とい うコ ミュニケー シ ョンの断 絶状態 が一時的 に もた らされ る。つま り第

2送

信者 が メ ソセー ジを受信す るこ と によ り想起 した知識 が第 1送信者 の想起 してい る知識 よ りも高度 な ものになって い る点が

,超

越連鎖 の特徴 であ る と言 える。」(江森

,2012,p79)

(29)

創 発 連 鎖 「本稿では

,い

ずれ の学習者 も所有 していない新 しいアイデ アが創発 され るコ ミ ュニケー シ ョン連鎖 を 「創発連鎖」 と呼ぶ ことに し

,第

4項

以降 にお いて

,数

学 の学習場面における信1発連鎖 の事例 を分析 してい くこ とにす る。」(江森,2007,

p14)

この よ うに

,江

森氏 は コ ミュニケー シ ョンの連鎖 を四つ に類型化 し

,そ

の中の一つ とし て創発 を位置付 けていることがわかる。 しか し

,江

森氏が 「コ ミュニケー シ ョンの参画者 本人が,「あつ

,そ

うか

,ひ

らめいた │」 と発言 しない限 り

,他

者 が

,創

発 の瞬 間 を同定す ることは困難 であ る。」(江森

,2007,p16)と

述べ るよ うに

,創

発 を捉 えるには慎重 な分 析が必要であ る。そ こで

,江

森氏 は,「児童Bの発言 の後 に行 われ た

,児

童Cの送信 した メ ノセ

,児

童Aにどの よ うな認知変容 をもた らしたのか」 とい う研 究課題 を設 定す る ことで,「送 り手」,「メ ソセー ジ (発言 。図・動作)」 ,「受 け手」 を1組の構成要素 とした コ ミュニケー シ ョン・プ ロセスか ら

,児

童 の認知 プ ロセ スを分析 してい る (江森,2007)。 その結果

,児

童 Aと 児童

Bや

児童

Cは

図を異 なる形 で解釈 していた こ とを挙げ

,メ

ソセ ー ジの解釈 には独 自性 が存在す ること

,ま

た解釈 と創発 には次の よ うな関係 があることを 述べてい る。 「私たちは

,同

一の物理的 な刺激物 としてのメ ッセー ジに対 して

,そ

れぞれ の所 有す る知識や経験 ,あ るいは,見 方や考 え方 の癖 によって,個 別 な解釈 を見出す。 この個別 な解釈 とい うものが

,時

,創

発 と呼ばれ る現象 を もた らす こ とにな る のである。」(江森

,2007,p20)

この よ うに,/11森氏 は,「送 り手」 と「メ ッセー ジ」,「受 け手」を1組とした コ ミュニケ ー シ ョン・ プ ロセ ス を抽 出 し

,児

童 の認知 プ ロセ スを分析す るこ とで

,児

童 の個別 の解釈 が創発 をもた らす ことを述べてい る。以上か ら,メ ソセー ジ (発言 。図・動作

)が

児童 の 個別 の解釈 を促 し,創 発 を媒介 してい る と捉 えるこ とができる。つま り,参 画者 の発言や, 図

,動

作 な どが創 発 を促 す契機 とな り

,そ

れ らは創発 が生起す る上での視 点 とな る と考 え られ る。

(30)

2.反

省 的思 考 と反 照 的思 考

江森氏は

,い

ずれ の参画者 も所持 していなかったアイデアがそのプ ロセ スの中で創造 さ れ る時の コ ミュニケー シ ョンの生産的特性 を 「コ ミュニケー シ ョンの創発性 」 と呼び

,新

しいアイデアが生み出 され る創発連鎖 を Pelrce氏 の論理学 を用いて分析 している (/1森, 2010,pp 71-72)。 そ して

,例

示 され た表現に対す る Reflectlve Thlnklngの 役割 には

,反

省的思考 と反 照的思考 とい う側 面があることを述べ

,こ

れ に よ り創発的 な思考過程 の説 明 が可能になると述べてい る。江森氏によると

,こ

こでの 「例示 された表現」 とは

,例

示 に よつて未整理 な思考 を他者 に伝達す るために用い られ るメ ッセー ジの ことであ り

,江

森氏 は例示 として表現 された数列や 図はメ ッセー ジの受信者 ごとに多様 な解釈 が行 われ る余地 を残 してい る と述べ てい る (江森,2010)。 また

,反

省的思考 と反 照的思考 について

,/1森

氏 は次のよ うに述べてい る。 「私たちは

,抽

象的 には考 え られ ない,「思考 には必ず思考 の対象 が存在す る」と い う立場 を前提 にす る と

,反

省的思考 とは

,思

考 の対象 を表す とい う表現活動 に 対す る思考で あ り

,こ

の思考に反省 とい う名前 を付す理 由は

,こ

の思考の結果 と して

,前

表現活動 の一部 に何 らかの改良が施 され る点 にある。 そ して さらには, この反省的思考 は

,第

,第

二の反省的思考 をもた らし

,第

,第

二 の表現活動 として行 われ る思考 の対象 を表す とい う活動 が

,新

しいアイデ ア を もた らす生産 性 の高い表現 を創 出す る活動へ と高 め られ るこ とにな る。 そ の一方 で

,反

照的思 者 の特徴 は、 この思考 に よつて表現 の改 良が もた らされ ない点にあ るに反 照的思 考 とは

,そ

れ までの試行錯誤 に よつて精緻化 され てきた表現 を観 照す るこ とに よ り,例示 され た表現 に新 たな解釈 としての選択的知覚 を与 える思考 の こ とで ある。」 (江森

,2010,p77)(下

線筆者) この よ うに

,反

省的思考 と反照的思考 の大 きな違 い として

,表

現 の改 良が もた らされ る か ど うか とい う点が挙げ られ る。 そ して この反省的思考 と反照的思考は連鎖 し

,そ

の連鎖 は個人の思考の深 さによつて

,い

か よ うにも延長 され

,複

雑 に結 びつ く可能性 が ある と述 べている。 また

,反

照的思考 とい う新 しい考 え方 を数学的 コ ミュニケー シ ョンに導入す る ことで

,他

者 が示 した 「あ る表現」が

,そ

の表現 を生み出 した本人の意図を超 えて

,他

(31)

に思いがけない情報 をもた らす ことが説 明可能 になる (江森

,2010)と

して

,創

発 との関 係性 を次の よ うに述べてい る。 「例示 とい う伝達方法に基づ く創発連鎖 に対 して

,反

省 的思考 と反照的思考 とい う考 え方 を導入す る ことに よ り

,創

発現象が起 こるのは

,主

に他者 が示 した例示 された表現 の意 味 を反照的思考 で解釈す る段階である ことがわか つて きた。」(江 森

,2010,p.77)

つ ま り

,反

省的思考 に よってそれ までの表現 が新 しいアイデア を もた らす生産性 の高い 表現へ と改 良 され

,そ

の表現の意味 を反照的思考で解釈す ることによって

,新

たな解釈 が もた らされ

,創

発す る とい うこ とである。 この ことか ら創発 を分析す る視 点 として

,反

省 的思考 と反照的思考 とい う考 え方 は非常 に示唆 に富む。 また江森 (2010)では

,反

照的思考 で用い られ る仮説 の形成 と発 見の過程 を考察す るた めに,Peirce氏 の論理学 に着 目す ることで,受け手側 で生 じる他者 の例示 に対す る「驚 き」 とい う情動的経験 が

,創

発 現象 を もた らす要因 となることを

,電

話線 問題 を事例 に次の よ うに述べてい る。電話線 問題 とは,「家 と家 の間 を直接電話線 で結ぶ ことに します。今

,ど

の家 とどの家の間に も

,ち

ょ うど1本ずつ電話線 を取 りつ けます。」とい う課題 である。江 森氏 は

,こ

の事例では図 2-8の よ うな創発連鎖が見 られた と述べ

,以

下 の よ うに考察 して いる。 地安

A●

メ ジセー チ キ 児童

BOメ

ッ七―ジ

+

覚童

Cの

メヅ七―ジ

鬼意

Aの

ま観的解釈

(慰鐵 曲 鋤

(1麟

児童

Aの

問題闘げ

Kl+2+3+…

+17+18+撥

=19麟

図 2…

8

創 発 連 鎖 (江森

,2010,p.81)

(32)

「児童

Aの

悩 み は

,児

Bの

図 に よ り解 消 され た。 児 童 Aと児 童

Bの

コ ミュニケ ー シ ョンは

,こ

の時 点 で完結 され るはず で あつた。 しか し

,そ

こに児 童

Cが

入 り 込 む こ とに よ り,児童

Aは

,なぜ 児童Cが児童Bの図 で は見 に くいか らと言 つて, 三角形 状 の図 を提 示 した のか

,瞬

間的 に分 か らな か つた のだ と考 え られ る。 つ ま り

,児

童 Bと児 童Cと い う

2人

の送 り手 か ら提 示 され た

2つ

の メ ッセ ー ジ を同時 に 受 け 入 れ る こ と で

,あ

る 種 の 認 知 的 不 協 和 状 態 に 陥 っ た と考 え られ る (cf Festlnger,1957)。 そ して この時 に派 生 した 「なぜ 」 とい う疑 間 と驚 きが, そ の驚 き を解 消 させ る仮説 の形成 へ と向か わせ る こ とにな る。」(江森,2010,p82) 以 上 の よ うに

,江

森 (2010)では,Reflectlve Thlnklngに は反 省 的 思考 と反 照的 思考 とい う側 面 が あ る こ と

,そ

して特 に反 照 的思考 の段 階 で

,新

た な解 釈 が もた らされ創 発 す る可能性 が高 い こ とが述 べ られ て い る。 さ らに

,Pelrce氏

の論理 学 を導入 し

,2人

の送 り 手 か ら提示 され た 二つ の メ ッセ ー ジを同時 に受 け入れ る こ とで陥 った

,あ

る種 の認 知 的不 協和状態 が反 照的 思考 を もた らす こ とが述 べ られ て い る。

(33)

3節

吉 村 氏・ 山 口氏・ 中原 氏 らの創 発 に関す る研 究

吉村 氏・ 山 口氏 。中原 氏 らは

,近

年 の数 学教 育 にお け る認 識 論 的研 究 で は

,数

学的 知識 の構 成 に果 たす社 会 的相 互作用 の重要性 が指摘 され てい る と述べ

,特

,社

会的 相互 作用 に よつて新 しい知識 や 考 えが協 働 的 に創 造 され る 「創 発 」 とい う現 象 が 注 目され てい る と 述べ て い る(吉村・山 口・中原 ら,2013)。 また,吉村・山 口 。中原 ら(2013)は ,吉迫 (2002) と江 森 (2010)では,「 どの よ うに創発 が生 じるか (how)Jに関す る考 察 が 中心 とな つて い る こ とを指 摘 し,「創発 の主体 (who)」 や 「創 発 の内容 (what)」 を含 めて総 合的 に考察 を 行 うこ とを研 究 のね らい と して

,授

業 の質的 考 察 か ら算数 科 授 業 にお け る創 発 を図

29の

よ うに類型 化 し

,次

の よ うに述 べ て い る。

贔 舅茫

写驚労Υピ

l 纏瀬難■

Fu澱

鸞 隋 摯 蒻

節 濠

髄 雉 藤

創 発 騨

$薫

驚 鑢 暮 鐵 轟

鸞 簿

鸞 え藤

慇 熔

わ 讐糠 儘 攀 藩霧

鰻 盗 鮫

漁 角 轟 図2…

9

創 発 の 四 つ の類 型 (吉村・ 山 ロ ロ中原 ら

,2013,p.195)

「創発 とい う視 点で算数 の学習過 程 を記述・ 分析 しよ うとす る とき

,新

しい表記 へ とつ なが る よ うな知識 。概 念や方法 に関す る創発や

,す

べ ての参 画者 に とつて の創発 が注 目され る。 しか し

,算

数 の学習 の意 義 と して

,思

考 の拡 張や 発 展 につ い ての理 解 とそ の創 造 が あ る。 そ のため

,可

視化 され に くい創 発 的 見方・ 考 え方 や

,教

師 も含 めた創 発 や 一 部 の学 習者 た ちに とつて の創 発 とい つた様 々な スケー ル の創 発 に も注 目して,算数 の学習過 程 を記述 。分析 す る こ とは重 要 で あ る。」(吉 村 ・ 山 口 。中原 ら

,2013,p.195)

つ ま り

,算

数科 授 業 にお け る創 発 を考 え る と

,創

発 の主 体 や創 発 の 内容 な どに よって, 様 々な スケール の創 発 が存 在 す る とい うこ とで あ り

,そ

れ らを捉 え よ うとす る こ とは重要

(34)

だ とい うことである。 例 えば

,吉

村・ 山 口 。中原 ら (2013)は

,第

2学

年 「三角形」 の事例 では

,二

つの類型 の創発 を同定す ることができると述べている。 一つ 日は,「知識や問題解決 の方法 に関す る創発」である。「三角形 を

,三

点 を直線 で結 んだ形 として よいか?」 とい う発 間に対 して,児童 は,当初 は一直線 上 にない三点(図 2-10) で考 えることが暗黙の前提であつた。 しか しその前提 を覆すアイデア (図

2-H)が

出 され た ことで,この場面において創発 が見 られ ると氏 らは述べている。吉村・山 口。中原 ら(2013) では

,こ

の創発 は, これ までの創発研究で も取 り上げ られ てい るよ うな知識や問題解決の 方法 に関す るもの (創発

1)で

あ り,これ は教師 の想定内のアイデ ア (創発

B)で

あつた こ とか ら

,こ

れ を

,創

発 Blと 類型化 してい る。 図

2-10(吉

村 ら

,2013,p.195)

図2…

11(吉

村 ら

,2013,p.195)

二つ 日は

,見

方 に よつ て図形 の捉 え方 が変 わ る とい う「見方 。考 え方 に関す る創 発 」で あ る。 この創 発 につ いて

,吉

村 ・ 山 口 。中原 ら (2013)は

,こ

れ ま で の創 発 研 究 で は あま り指摘 され て い ない 見方 ・ 考 え方 に関す る創発 (創発

2)の

事 例 で あ る と述 べ

,こ

の創 発 の特徴 として

,特

定 の表 記 物 に注 目 して生起 した こ とを挙 げ て い る。 図 ウの図形 (図

212)に

対 して

,当

,三

角形 と捉 えて い た児 童 が見方 を変 えれ ば三角 形で はない と捉 え る よ うにな った り

,三

角形 で はな い と捉 えて い た児 童 が 見方 を変 えれ ば 三角形 と捉 え られ る よ うにな つた りした。 これ は

, :

……… 数学 的 な見方 に関す る創 発 が生起 して い て 吉村 氏 ・ 山 口氏 。中原 氏 らは, この創 発 遂 方 ・考 え方 (創発

2)と

呼 び

,教

師 の想 気 (創発

B)で

あ った こ とか ら

,創

発 B2と カ い る。 図

2-12 (吉

村 ら

,2013,p.195)

(35)

以上の よ うに

,吉

村・ 山 口 。中原 ら (2013)では

,創

発 には様 々なスケール の創発 があ ることを示 し

,創

発 を四つ に類型化 してい る。つ ま り

,創

発 の主体や創発 の内容 を含 めた 総合的 な考察 が重要 だ とい うこ とであ り

,こ

れ らは創発 を企 図す る上での視点 になる と考 え られ る。

(36)

4節

創 造 性 に関す る研究

大石 (2014)の よ うに

,こ

れ まで個人 に焦点が当て られ ていた創造性研 究 に社会的相互 作用 の視点 を取 り入れた研 究 な ど

,創

造性 と創発 を関連づ けた研 究が見 られ る (例えば飛 田 。三浦

,2013,前

田 ら,2011,2012)。 そ こで本節 では

,創

造性研 究 を概観 す ることで

,創

造性研 究か らも数 学教育学 にお ける創発 の特徴 についての示唆 を得 るこ ととす る。 まず創造性 の捉 え方について概観す る。その捉 え方 は

,多

くの研 究者 に よつてそれ ぞれ の立場か らな されている。例 えば

,数

学教育 にお ける創造性研 究 を行 つてい る秋 田氏 。齋 藤氏 は,学校教育 において児童・生徒 の個性や能力 の伸長 を図 る とい う立場 か ら,恩田(1971) にお ける捉 え方 と齋藤 (1999)に お ける捉 え方 を採用 してい る (秋田・齋藤,20H)。 その 捉 え方 をも とに

,秋

田・齋藤

(20H)で

,個

人または学級集団 に とつて価値 のあるもの を生成す る創 造性 についての研 究が行 われ てい る。本節 で も

,算

数科 において

,学

級集 団 に とつて価値のあるものが生成 され る現象 について考 えることを 目的 とす るため

,両

氏 の 捉 え方 につ いて概観す る こととす る。 恩 日

(1971)に

よ る 捉 え 方 「創造性 とはある 目的達成 または新 しい場面の問題解決 に適 したアイデアを生 み出 し

,あ

るいは新 しい社会的

,文

化的 (個人的規準 を含む

)に

価値 あ るものを つ くり出す能力お よびそれ を基礎づ ける人格特性 である。」(恩田

,1971,p16)

斎 藤

(1999)に

よ る 捉 え 方 「創造性 とは

,本

人にとつて新 しく価値があ り, 評価 され るものを発想 した り

,つ

くり出 した り (齋藤

,1999,p3)

その学習集 団の構成員 によつて す る能力及 び人格 特性 で あ る。」 これ らの創造性 の捉 え方 には

,創

造性 が

,創

造性能力 と人格特性 の二つの側 面か ら構成 され てい ることが わか る (秋田・齋藤,20H)。 秋 田氏による と

,創

造性能力 は創造的思考 に支 え られ

,人

格特性 は創造性態度 に支 え られてい るものである。 ここでの創 造的思考 と は

,発

散的思考 と収束的思考 が統合 され た ものであ り

,算

数科授業 にお ける問題解決 にお

参照

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