魚肉脂質の酸化簡易判定法
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第2部C) 第48巻 第1号 ido Un iver i ion (Sec i IC)Vo Journalof Hokka l I ty ofEducat t s on l .48 . , No. 平成 9 年8月 Augus t ,1997. 魚肉脂質の酸化簡易判定法 冨岡 文枝 北海道教育大学旭川校家政学研究室. i f ing n1 Si i ive Deterioration of t ・ npl ed Test ethod for oxida r Lipidsin Fi sh N[eat. Fumie Tomioka Home Economi ikawa Campus csLaboratory , ,Asah Hokkai do Un i i ion tyofEducat ver s , Asah ikawa070. Abstract. The TBA method Was modi f ied so as to Convenient ly detectl ion off ish,for food- i i d oxidat p ionin highschool educat . A pieceoff ish wasimmersedin TBA reagentsolut ionandheated underinfraredlamp. A pink loped‐ Color Was deve. 1. 緒. 言. 酸化した脂質を摂取すると大部分は小腸での吸収時に分解するが,その際小腸にさまざまな炎症を起こす. そして一部は吸収され, 肝臓, 腎臓などで細胞変性を伴う組織器官の機能の機能低下をまねく. また, 生体 内で生ずる過酸化脂質と疾病や老化との関係が指摘されており, 血栓症, 動脈硬化, 癌, 糖尿病, 高脂血症 ) こ のよ う に食 品 お よ び生 体 内脂 質 の酸 化 は健康 と の 関連 な どに過酸 化脂 質 が 関与 して いる とさ れて いる1 .. が深く, 実際の食生活においても正しい知識を持つことが必要である. 一方, 高等学校家庭科での脂質酸化の取り扱いを見ると, ほとんどの教科書に「脂質(あるいは食用油脂) は酸化 (あるいは酸敗) しやすい」 という記載があり, さらに一部の教科書には簡易実験として食用油を試 料 と した ク ライ ステス トが図示さ れて いる. しか し, 脂 質 酸化 という 現 象 を生徒 に理 解さ せるた め の実 験 と. しては, フライ油を試料とするよりも直接食する食品を試料にする方が, 生徒に興味, 関心をもたせ易いと 思われる. ところが, 脂質酸化の簡易試験の多くは試験紙に油滴をのせて呈色を観たり, 試験管に油脂と試 薬を入れて呈色を観るものであり,脂質を食品から抽出することなく食品そのままの状態で行うものは浅川, )の開発した POV (過酸化物価) 試験液法以外きわめて数少ない このPOV 試験液法は乾燥食品を 松下ら2 . 試料とし, 試料を粉砕することなく試験液に浸潰し青色への変化を観察するものであり, きわめて簡単で, 結果もわかりやすい. しかし, 試料は乾燥食品に限定されている. そこで筆者は, 近年, n‐3系列の多価不 飽和脂肪酸を多く含むとして栄養価値が見直される一方, きわめて脂質酸化を受けやすいとして注意を促さ れている魚類を試料とし, 中学, 高校などの食物教育の中で実施できる簡単でわかりやすい実験を検討した (1).
(3) . 冨岡 文枝. 表1 鮮魚1). 加工 魚. 試料の店頭での状態. さ んま. 未 処理 の 1 尾. さば. 未処理の1尾. ふくら ぎ ぶり. 3 枚 に おろ して表 皮の 薄 皮 を剥 い た刺 身 用 焼 き 魚、 煮 魚 用 の 切身. まぐろ (中とる). 刺身. 開 きあ じ 干 し宗 八 かれ い 塩 さば. ポリ袋入り ポ リ 袋 入り 3 枚 お ろ しの もの を プラ ス チ ッ ク ト レー ・ パ ッ ク 入り. しめさ ば こ うな ご. 刺身 ポ リ袋 入り. にぽし. 不活性ガス充填袋入り. 1)鮮魚 は全 て プ ラス チ ッ ク トレー ・ パ ッ ク 入 り. の で報告 する. 2. 実. の. 試. 験. 方. 法. 料. ス ー パ ーマ ーケ ッ トで購入 した 表 1の魚類 を用 い, こう な ご, に ぽしはそ の まま, そ れ以 外の魚 は0‐5cm. 程度の薄切り魚肉片とし, 実験に供した. 2 ( ) 簡易実験 )が TBA(チオ バ ル ビツ ール)試 験紙 を作成 する 際に用 いた 試 験液, す なわち 2-チオ バ ル ビ 浅川, 松 下 ら3 ツ ー ル酸 0‐7g , ク エ ン酸2‐0g, 硫 酸第 1 鉄0.3g をloomlの温水に溶 , カ ル ボ キ シメ チ ルセ ルロ ース 0‐6g. 85W 赤外線ランプの下4cm で加 0秒間浸漬させた後,1 解したものを調製し, この試験液に試料魚肉片を1 熱 した. なお, 試 験液量 は試料 が 浸漬する 程度, すなわち 魚 肉一 片 あた り 7~1o mi , こう な ごとに ぼしは5~10 匹 あた り 5 ml程度 が適 当 であ り, 試 験液 は試 料 ごと に新 しい もの と交換する の が望 ま しいよう であ っ た. また. 加熱時間は肉質が熱変性により白色不透明となり,かつ焦げ色が着かない程度,すなわち生魚類は10分程度, 加工 魚 は7- 8分程度, にぼしは5分程度とした. なお, 本 TBA 簡易試験は感度を高くするため, 反応液に 鉄塩を加えて, 一次生成物の過酸化物を二次生成物に変化させ, すでに存在していた二次生成物に合して TBA 試薬反応物を呈色させている. すなわち, 後述する化学特数の過酸化物価と TBA 値の総和のよう な意 味内容を示す. また, 本実験では試験液からイオウ化合物臭がでるので, 試料を発色させるまでの実験操作 を局所換気しながら行う必要がある. ( 3 ) 脂質の抽出と化学特数の測定. 4 }により魚肉から脂質を抽出し, 抽出脂質の i 簡易試験結果と実際の酸化程度を比較するため, B1 r gh‐Dye ) )により TBA 値 を比色 法7 )により カ ル ボニ ル価(COV) を熊 沢法6 過酸化 物価 (POV) を基準 油脂 分析法S , , により測 定 した.. (2).
(4) . 魚肉脂質の酸化簡易判定法. 3. 結果および考察. 鮮魚類について実験した結果を表2に示した. まぐろとぶり以外の試料は薄切りした後, 直ちに実験に供 したためか, 皮下の脂肪層のみ呈色していた. 図1にふくらぎの呈色状態を示した. 刺身状や切り身で店頭 にあったまぐろとぶりは表面全体が薄く呈色し, 空気との接触面より酸化することが観察できた. 呈色は魚 体の脂質含量の影響を受けるため, 異なる魚種間の酸化の比較を行う ことはできないが, 各試料魚の酸化脂 質の存在場所は明確に観察することができた. 表3に加工魚の実験結果を示した. 開きあじは表皮が赤く呈色した. 干し宗八かれいは肉質が白いためか 開きあじと同程度の化学特数であったが, 非常にはっきりした呈色を示した. また, 生さばと塩さばとしめ さばを比較したものを図2 に示 した. これ による と生さ ばよ り 塩さ ばが, 塩さ ばより刺 身状 の しめさ ばの 方 が強く呈色しており, 塩や酢による処理は微生物の繁殖を抑えて日持ちを良くするが, 保存期間が長くなっ た分だけ, 空気との接触時間が長くなり, 酸化が進むことを説明するのに適した材料と考えられた. 化学特 数 も しめさ ば, 塩さ ば, 生さ ば の順 で酸 化 して いる こ と を示 して いた. こう な ごにつ いて は図3 に示 した よ. うに頭部がはっきり呈色し, 脂質酸化を観察する試料としては最適であった. にぼしは不活性ガス充填包装 されていたので, 実験は家庭での使用実態に合わせて, 開封して ビニール袋にいれ, 冷蔵庫内, 室温明所, 室温暗所に保存して, 保存場所による比較実験を行った.3 1日間保存した試料の実験結果を図4に示した. これによると不活性ガス充填包装開封直後の試料と開封後保存した試料の間には呈色に差が生じたが, 保存 場所が異なる試料間にあまり差は生じなかった. 化学特数をみると簡易実験同様, 開封直後のものと冷蔵庫 保存のものに大きな差がみられた. 以上の実験結果から, さばおよびにぼしの実験のように同じ種類の試料 であれ ば, 化学特数と TBA 簡易試験の結果が同一傾向を示すことが確認された. 水産食品の低温保存, 低温流通の技術が進歩し, 微生物汚染に対しては対策が充分となり, 長期貯蔵が可 表2 試料. さんま さば ふく ら ぎ ぶり まく る. 鮮魚類の TBA 簡易試験結果と抽出脂質の化学特数. 総 脂質 (%). POV ( meq/kg). COV ( meq/kg ). ( mmol/kg ). 13 .6 11 .2 3 .1 17 .9 16 .1. 17 .1 11 .9 19 .4 10 .5 14 .5. 27 .9 14 .9 65 .2 24 .9 24 .9. 2 ‐6 1 .2 1 .7 1 .8 1 ‐8. 表3 試料. 開き あ じ 干 し宗八 かれ い. TBA値. TBA簡易 試 験 結 果. 皮 下脂 肪層 の み 呈 色 皮以外 ほと ん ど呈 色 せず 皮下脂 肪層 の み 呈色 全 体 に 薄く 呈色 全 体 に 薄く 呈 色. 加工魚類の TBA 簡易試験結果と抽出脂質の化学特数. 総脂 質 ( %). COV POV TBA値 ( meq/kg ) (l n eq/kg ) ( mmol/kg ). 1 .9 2 .5. 38 .4 34 .0. 54 .9 47 .9. 2 ‐1 2 ‐0. 20 .0 17 .9 6 .2 8 .0 7 .2. 23 .9 38 .9 124 .3 58 .9 183 .3. 27 .2 32 .5 155 .7 142 ‐7 149 .4. 2 .1 3 .0 1 .7 2 .5 5 ‐6. TBA簡 易 試 験結 果. 皮下 が強 く 呈 色 皮下脂肪 層 は強く、 肉 質部. も全体に薄く呈色 塩さ ば しめさ ば こう な ご にぼ し・ 開封 直後 冷蔵 庫 保 存後. (3). 皮部 は強 く、 肉質 部 も 呈色 全 体 に 強く 呈 色 頭部 が強 く 呈 色 頭部 が呈 色 頭部 が強 く呈 色.
(5) . 冨岡 文枝. TBA試験. ぬ. rで ). ~ふく ら ぎ~ 魚肉脂質 劣化 簡易 試 験一. 生. プラン「 B. A. 図1. 図2. ふくらぎの TBA 簡易試験結果 左. :生. 中央:TBA 試験液に浸漬せず, 加熱したもの 右 :TBA 試験液に浸漬し, 加熱したもの (TBA 簡易試験). . A. 生さば, 塩さば, しめさ ばの TBA 簡易試験結果 A:生さばをTBA試験液に浸漬せず, 加熱したもの B:生さ ばの TBA 簡易試験結果 C:塩さ ばの TBA 簡易試験結果 D:しめさばの TBA 簡易試験結果. 一戸三キ ーきき 一‘; ′ ー - -デ. - ◆ に 「- . . A. B. 図4 図3. D. C. こうなごの TBA 簡易試験結果 A:こうなごの TBA 簡易試験結果 B:こうなごを TBA 試験液に浸潰せず, 加熱したもの. B. C. D. にぼしの TBA 簡易試験結果 A :不活性ガス充填包装開封直後 B :カ月間冷蔵庫に保存したもの C :カ月間明所に保存したもの D :カ月間暗所に保存したもの 上段:TBA 試験液に浸漬せず, 加熱したもの. 能 とな っ た. しか し, いか に低温 にお いて も空 気 による 酸化 は徐々 に進 行 し, 酸化 劣化 が残さ れた 問 題 と し. て顕在化してきた.魚肉脂質の劣化の評価はPOV などの化学特数のみでは不十分とされ,蛍光分析や NMR ) しかし, これらの方法は特殊な機器を使用するため, 学校 分析などによる評価法の研究が報告されている8 . 教育の中に応用してゆける方法ではない. そこで筆者はできるだけ簡単で, 結果が明瞭な方法として, TBA 試験紙を作る際の試験液に直接魚肉片を浸した後, 加熱して呈色を観る方法を検討した. その結果, 魚の種 類により脂質含量が異なり, 脂質の存在状態も異なるため, 呈色状態から化学特数を推定することが困難な ことなどの問題は含むが, 酸化脂質の存在状態, 生さばと塩さばとしめさ ばのような鮮魚と加工魚の比較, さ らにに ぼ しの 保存 実 験 な ど種々 の実験 が可能 である こ とがわ か っ た. この こと によ り 学校食物 教育 の 中 で. 魚肉脂質の栄養的な有効性と同時に, 酸化しやすさな どを理解させるのに有効な方法と考えられた. また, この 方 法 を生 徒 に興 味, 関心 を持た せや すいス ナ ッ ク 菓 子 に適用 した ところ, ス ナ ッ ク 菓子 自体の 褐色 と TBA の赤色 呈色 を は っ きり 識別 でき な い も の が多 く, ス ナ ッ ク 菓 子 につ い て は浅 川 ら の POV 試 験. )の方が適するようであった.さらにスナック菓子を試料とする際は,呈色が明確になるまで長期間酸化 紙法2 させる必要があり, この点からも購入直後に実験できる魚類は教材・試料として有効のように思われた. (4).
(6) . 魚肉脂質の酸化簡易判定法. 約. 4. 要. 学校食物教育の中で実施することができる脂質酸化実験を検討 した. 試料は事前に酸化させるため長期の準備期間を要しない魚類とし, 実験法は脂質を食品から抽出すること なく, 食品をそのまま試験液に浸し, 酸化脂質の呈色を観察する TBA 試験液法を適用した. その結果, 酸化 脂質の存在状態, 生さばと塩さばとしめさばのような鮮魚と加工魚の比較, さらににぼしの保存実験な どの 種々 の実 験 が 可能 である こ とがわ か っ た.. 献. 文. 1986 ) 1) 五十嵐備, 金田尚志, 福場博保, 美濃 真:過酸化脂質 と栄養, 光生館, 東京, 63‐71 ( ( ) 1 1 ‐ 5 1 3 1 9 7 5 2 8 2) 浅川具美, 松下雪郎:栄養 と食糧, , 5. 8( 1 9 8 3 ) 7 ‐ 7 3) 金田尚志, 植田伸夫:過酸化脂質実験法, 医歯薬出版株式会社, 東京, 7 iol 1959 ) igh,E. G.and Dye 4) B1 :Can r ‐37 .J . Biochem‐Phys ,911‐917( , W-J.. 1986 ) 5) 日本油化学協会編:基準油脂分析 試験方法, 2 .4 . 12‐86 ( 6) 熊沢. 恒, 大山. 1965 ) 保:油化学, 14 , 167-172 (. 2 ‐ 8 3( 1 9 8 3 ) 7) 金田尚志, 植田伸夫:過酸化脂質実験法, 医歯薬出版株式会社, 東京, 8 7 ‐ 3 9( 1 9 9 3 ) 8) 藤本健四郎編, 日本水産学会監修:水産脂質--その特性と生理活性, 恒星社厚生閣, 東京, 2. (5).
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