博 士 ( 医 学 ) 遠 藤 三 紀 子
学 位 論 文 題 名
脂質代謝におけるperilipin の作用に関する研究
―トランスジェニックマウスを用いた機能解析―
学位論文内容の要旨
1. 緒言
肥 満 は糖 尿病、高 脂血症 などの生 活習慣病 の主要 な危険因 子であ り、肥満 による イ ンスリ ン抵抗性 が生活 習慣病の 発症と深 くかかわっていることが明らかになっている。
肥満 症 や2型糖 尿病は全 身の遊 離脂肪酸(FFA)の 増加を伴 い、こ のことは 直接イン スリ ン抵 抗 性 を 導く と 言 われ て い る。 さ らにこのFFAは 脂肪細胞 に由来 するもの であり 、 脂肪 細 胞 か らのFFAの 放 出 を抑 制 す るこ と で2型 糖 尿 病に お け る血糖 上昇を改 善する ことが 指摘され ている 。
脂肪細 胞は、過 剰なエ ネルギー を脂肪 滴内にトリアシルグリセロールとして貯蔵し、
必要に 応じてそ のエネ ルギーを 脂肪酸と して放出する。脂肪細胞における脂肪分解(水 解) 反 応 は、生体 のエネル ギ一貯 蔵の出納 におい て重要な 反応で あり、本 反応がホ ル モン感 受性リパ ーゼ(HSL)を介す ことは 知られて いるが、 その機 序の詳細は解明されて いない 。HSLの 脂肪分解作用を修飾する蛋白質のひとつとしてべりりピン(perilipin)が 挙げ ら れ る。ベリ リピンは 、脂肪 組織なら びにス テロイド 産生臓 器に特異 的に発現 し て い る 蛋 白 で 、細 胞 内 の 脂肪 滴 表 面に 局 在 して い る 。HSLと同 様 にcAMP依 存性 プ ロ テイ ン キ ナ ーゼA(PKA) によ ル リ ン酸化 され、HSLと脂 肪滴と の相互作 用の調節 に関 与す る こ とが推測 されてい る。非 刺激下で はべり りピンは 脂肪滴 表面を包 み込むよ う に局 在 し ているが 、カテコ ールア ミンの刺 激によ るりン酸 化によ り、脂肪 滴上から 細 胞 質 へ 移 動 し 、HSLが 脂 肪 滴 に 結 合 す る の を 容 易 に す る こ と が 報 告さ れ て い る。
本 研 究で は、ベリ リピン の作用を 個体レペ ルで包 括的に解 析し、 肥満発症 、脂質 代 謝へ の 関 与を明ら かにする 目的で 、脂肪細 胞特異 的に発現 する、 ヒ卜ベリ リピン過 剰 発現ト ランスジ ェニッ クマウス の開発を 行った 。
2.対象と方法
導入DNAとして、脂肪細胞特異的発現を導くadipocyte fatty acid‑binding protein (aP2) の プ ロ モ 一 夕 一・ エ ン ハ ンサ 一 領 域を 含 む5.4kbのDNA断 片 下 流に 、1.8kbの 全蛋 白 翻 訳領域 を含むヒ トベリ リピンA cDNAのHind III/ Eco RI断片と0.4kbのSV40 intron polyAを 含 ん だ 全 長7.7kbのDNA断 片 を 作 成 し た 。 こ のDNAを 用 い て 卜 ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス を 作 成 し 、 尾 よ り 抽 出 し た ゲノ ムDNAを 用 いて 、PCR法 と サ ザン プ 口 ット法にてスクリーニングを行い、解析を行った。
Rl: PCR法とWest.em blot法を用 いて、各 組織におけるそれぞれ遺伝子、蛋白レベルで の ヒ ト ベ リリピン の発現を 確認し た。表現 型の検 討として 、体重 測定や白 色脂肪組 織 量 の 検 討 、脂肪組 織の病理 組織学 的検討、 血中レ プチン、 脂質パ ラメ一夕 ーの測定 、 腹腔内プドウ糖投与による耐糖能検査、酸素消費量検査を施行した。又、in vivo、in vitro に お け る イソプロ テレノー ルに対 する脂肪 分解反 応につい てイソ プロテレ ノールを 用
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い て検 討を 行っ た。 めvivoと して はマ ウス 腹腔内にイソプロテレノールを 投与し、投 与 前 と15分 後 の 血 中FFA濃 度 の 変 化 を 検 討 した 。加vl舳 の検 討と して は、 副睾 丸周 囲 白色 脂肪 組織 より単離した白色脂肪細胞を用 いて、adeI螂i鵬添加、非添 加状態にて イ ソ プ ロ テ レ ノ ー ル で 刺 激 し 、 上 清 中 へ の FFA放 出 量 を 検 討 し た 。 3. 結 粟
ヒ トベ リリ ピンAの全 蛋白 翻訳 領域 を含 む遺 伝 子を 、脂 肪細 胞特 異的 に発現させたト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス ( 以 下Tgマ ウ ス ) を樹 立し た。 尾 より 抽出 した ゲノ ムDNA を サ ザ ン プ ロ ッ トに て解 析し 、 約30コピ ーの 遺伝 子の 導入 を確 認し た。 このTgマ ウ ス の 白 色 、 褐 色 脂 肪 組 織 に お け るRNAと 蛋 白 レベ ルで のヒ トベ リリ ピン の発 現を 、 Rl'PCR、Westem blot法に て確 認し た。
Tgマ ウス の体 重 は、 摂食 量に 差が ない にも 関わらず低値をとり、白色脂肪組織重量 の 減少 を認 めた 。 組織 染色 ではTgマ ウス にお いて、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の小 型 化を 認め た。 腹 腔内 プド ウ糖 負荷 試験 にお けるTgマウスの耐糖能には異常を認めな か った 。血 中脂 質 の検 査で は、 総コ レス テロ ールや中性脂肪は有意な変化を認めなか っ たも のの 、Tgマ ウスの‑ FFAは高値を呈して いた。又、血中レプチン値は体重の増加 に 比例 して 高値 を とっ たが 、対 照に 比し その 増加率は低値を示し、このことは脂肪組 織 の減 少に 伴う と 予想 され た。 酸素 消費 量はTgマウスにおいて低下していたが、この こ とは レプ チン 減 少を介する結果生じたものと考えた。in vivoにおける脂肪分解反応 の 検 討 で は 、 腹 腔 内 へ の イ ソ プ ロ テ レ ノ ー ル投 与に より 、 血中FFAの増 加率 がTgマ ウ スで 亢進 して い た。 次に 、副 睾丸 周囲 白色 脂肪組織より単離した白色脂肪細胞を用 い て 、 上 清 中 に 放出 され るFFA濃度 を指 標に 加W加 での 脂肪 分解 反応 を検 討し た。 単 離 し た 白 色 脂 肪 細胞 にお いてadcn囀ineを添 加せ ずcAMP、PKA活 性を 抑制 しな い状 態 で は 、 イ ソ プ ロ テレ ノー ルに よ る刺 激前 の上 清へ のFFA放 出 量が 約3倍と 著明 に亢 進 し てい た。 一方 、adenosi鵬を添加した場合は 、イソプロテレノールによる上清中への FFA放 出 量 は 約2倍 の 亢 進 を 認 め た 。 よ っ てTgマ ウ ス に お い て 、 脂 肪 分 解反 応の 基 礎 値 と 、 カ テ コ ー ル ア ミ ン に 対 す る 反 応 性 の 両 者 が 亢 進 し て い る と 考 え た 。 4.鈷語
脂 肪細 胞特 異 的に べり りピ ンを 過剰 発現 させ たマウスを作成し、生体におけるべり りピ ンの 機能 に つい て解 析し た。 ベリ リピ ント ランスジェニックマウスでは、体重増 加の抑制と脂肪細胞の小型化ならび に脂肪分解反応の亢進を認めた。以上の結果から、
ベリ リピ ンは 生 体に おけ る脂 質代 謝の 調節 に重 要な役割を果たしていることが示唆さ れた 。今 後脂 肪 細胞 にお ける 脂質 代謝 機能 を解 明する上で、本動物は有用なモデル動 物であると考えられた。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
脂質代謝におけるperilipin の作用に関する研究
― ト ラン ス ジェ ニ ッ クマ ウ スを 用 い た機 能 解析 ―
肥満は 糖尿病、 高脂血症 などの生活 習慣病の 主要な危 険因子であり、肥満に よるイ ンスリン 抵抗性が 生活習慣病 の発症と 深くかか わっていることが明らか になっ ている。 脂肪細胞 における脂 肪分解( 水解)反 応は、生体のェネルギー 貯蔵の 出納にお いて重要 な反応であり、本反応がホルモン感受性リバーゼ(HSL) を 介す こ とは知ら れている が、その 機序の詳 細は解明 されてい ない。HSLの脂 肪分解 作用を修 飾する蛋 白質のひとっとしてぺりりピン(peri lipin)が挙げら れる。 ペリリピ ンは、脂 肪組織なら びにステ 口イド産 生臓器に特異的に発現し て いる 蛋 白で、細 胞内の脂 肪滴表面 に局在し 、HSLと同様 にcAMP依存性 プロテ インキ ナーゼA (PKA)に よルリン 酸化され、HSLと脂肪滴 との相互作用の調節に 関 与す る ことが推 測されて いる。in vitroで の検討で 、HSLのみを りン酸化 し ても脂 肪分解が 起こらな いことから 、脂肪分 解反応に おけるべりりピンの果た す役割 が重要と 考えられ る。本研究 では、ベ リリピン の作用を個体レベルで包 括的に 解析し、 肥満発症 、脂質代謝 への関与 を明らか にする目的で、脂肪細胞 特異的に発現する、ヒ卜ベリリピン過剰発現卜ランスジ,エニックマウス(以下 Tgマウス)の開発を行った。
導入DNAとして、脂肪細胞特異的発現を導くadipocy te fat ty acid−binding protein (aP2)のプ口 モーター ・工ンハ ンサー領域 を含む5.4kbのDNA断片下流 に 、1.8kbの 全 蛋 白 翻 訳 領 域 を 含 む ヒ ト ベ リ リ ピ ンAcDNAと0.4kbのSV40 intron polyAを結 合 し た全 長7.7kbのDNA断片を 作成した 。このDNAを 用いて Tgマウス を作成し 、体重測 定、白色脂 肪組織量 の検討、 脂肪組織の病理組織学 的検討 、血中レ プチン、 脂質バラメ ーターの 測定、腹 腔内ブドウ糖投与による 耐糖能 検査、酸 素消費量 測定、脂肪 分解反応 について 解析を行った。尾より抽 出 した ゲ ノムDNAをサ ザンブ□ ットにて 解析し、 約30コピー の遺伝子 の導入を 確 認し た 。このTgマ ウスの白 色、褐色 脂肪組織 におけるRNAと蛋白レ ベルでの ヒ ト ベ リ リ ピ ン の 発 現 は 、RT−PCR、Western blot法 に て 確 認 し た 。 Tgマウス の体重は 、摂食量 に差がない にも関わ らず低値をとり、白色脂肪組 織重量 の減少と 、白色な らびに褐色 脂肪細胞 の小型化 を認めた。血漿総コレス