SiO?基板上に支持された慣性半径以下の膜厚を持つ
PMMA 薄膜の緩和過程に現れる薄膜効果
著者
關屋 和貴
2015 年度 修士論文要旨
𝐒𝐢𝐎
𝟐基板上に支持された慣性半径以下の膜厚を持つ
PMMA 薄膜の緩和過程に現れる薄膜効果
関西学院大学大学院理工学研究科 物理学専攻 高橋研究室 關屋和貴 近年、高分子材料に求められる性能の高度化に伴い、高分子材料の薄膜化が 進んでいる。高分子薄膜材料は、有機光学デバイスなどの電子材料の分野や、 生体材料などに広く採用されている。高分子薄膜は疑似的な二次元空間への閉 じ込め効果や、表面及び界面付近の分子鎖の動きやすさの違いによる複雑な階 層構造を示し、その結果、バルクとは異なる特徴的な物性を示すことが知られ ている。しかし、その物性は階層構造の複雑さや評価手法が未確立であったた めに研究が遅れており、未知の部分が多い。我々のグループでは、X 線反射率 (XR)法を用いた高分子膜の膜厚の精密測定を通して、物性物理学上の未解決 問題のひとつであるガラス転移現象の解明を目的として研究を行ってきた[1]。 そして、単分散ポリスチレン超薄膜の膜厚の長時間変化(緩和)が薄膜を支持 する基板との相互作用と[2]、熱履歴の双方に強く依存する [3]という結果を得 た。本研究では SiO2と強く相互作用することで知られている PMMA(ポリメ タクリル酸メチル樹脂)薄膜[4]を SiO2基板上に形成し、膜厚緩和の熱履歴依存 性と膜厚依存性を調査した。図1 に低真空下 140℃での 12 時間アニールを二回 繰り返したPMMA 薄膜(初期膜厚=6.5nm、Mw=815,100、Mw/Mn=1.09)の 室温での膜厚の変化を示す。この図より、膜厚の緩和は単一の緩和時間を有す るstretched exponential 関数では再現できず、速い緩和と遅い緩和の少なくと も二種類の緩和が同時進行していることが判る。今回行った膜厚緩和の試料の 膜厚依存性の実験より、速い緩和が表面領域における緩和で、遅い緩和が基板 とPMMA との界面領域における緩和であることを示唆する結果を得た。[1] C. Yang, R. Onitsuka and I. Takahashi, Eur.
Phys. J. E36 (2013) 66.
[2] 日本物理学会 2013 年秋季大会概要集第二 分冊 299P
[3] 日本物理学会 2014 年秋季大会概要集 2986P
[4] R. Inoue, et. al., Phys. Rev. E 88 (2013) 032601.
図1. 12 時間アニール後の室温における 膜厚 h(t) の緩和曲線