407 人 工 知 能 30 巻 4 号(2015 年 7 月) 昨年度より本学会の理事を拝命し,学会運営の一部に携わっている.それ以前は,研究会に参加したり,論文を投 稿したりと,ユーザの立場から学会に関わることが多かったが,運営するという側から学会を見る機会を得ることに なった.私見としては,学会は,発表する機会やほかの研究に触れて刺激を受ける機会という「場」をつくり出すこ とが重要だと思っているが,この「場」をつくり維持するにはやはり労力が必要であることを身に染みて感じる. 極めて具体的な話で恐縮であるが,理事になって驚いたことの一つは,本学会の理事会の出席率の高さである.首 都圏以外の理事も多い中,昨年一年間は大多数の理事が,月に一度の理事会に出席し,議論に参加している(ちなみ に学会から交通費が支給されることはない).このことも,学会運営というのは,大いなるボランティアの力で動い ているということの一端を表している.学会活動というのは,自分がやりたい研究とは別の活動であり,ある意味, 町内会の当番のようなものであると感じている.つまり持ちつ持たれつという面が大きく,このような運営に携わる のは,過去にお世話になった場に対して恩返しという意味合いもあるだろう.一方で,そのような後ろ向きな(?) 義務感だけでなく,理事会で一線級の研究者と顔見知りになれるというメリットも大きい.最近メールや各種 SNS でのコミュニケーションが可能となったとはいえ,実際に会って(用件以外のことも含めて)話す機会がもてるとい うのは貴重である.これは,予稿集や論文が遠隔で入手可能となった昨今でも,全国大会や研究会,さらには国際会 議や研究機関への訪問によって,実際に会って議論することに価値があり続けるのと同じであろう.情報自体は公開 され陳腐化するとしても,それを産み出す人の考え方を知ることや,それを担う人と人とのつながりや信頼関係は, 得難いものであると感じている. 理事会での筆者の担当は広報(基盤)である.以前,全国大会で当時の会長が,人工知能学会のことを「永遠の青 年学会」と言っておられたが,そのような進取の気風に富む学会活動を支えるうえで,その基盤部分は逆に堅固で安 定していることが必要条件である.学会は人が入れ替わるのが常であり,多大な献身や技能がないと成り立たないシ ステムは持続可能ではない.このような前提条件をもった学会において,システムの基盤部分を破綻させないため には,さまざまなポリシーやルールが必要である.これに関して,先代の広報(基盤)担当理事のご尽力は大きく, Webやメーリングリストの基盤部分のシステムは抜本的な整理が完了しつつある.整理された基盤上で,このシス テムのわかりやすさを向上させたり,運用がうまく回るように関係各所との周辺ルールを整備したりするのが,この 一年の理事としての役目であると考えている.つまり,構築された基盤を維持可能なものとして機能させていくこと である. 筆者自身,本学会のプラットフォームを利用させていただいて,自分の専門分野に関する「場」の創出に取り組ん でいる.現在,本学会論文特集「知的対話システム」の特集号編集委員長として,2016 年 1 月の掲載に向けて査読 を含めた編集作業を実施中である.また今年度の本会全国大会で,5 回目となる同名のオーガナイズドセッションを 企画した.ここからは雑談対話システムに関する対話データの公開や shared task がスピンアウトしようとしている. さらには,本会 SLUD(言語・音声理解と対話処理)研究会の一環として,第 6 回対話システムシンポジウムを 10 月 29 日 30 日に企画しており,これにも実行委員長として参画している.これらの場の創出が,研究分野の発展に つながり,またそこで得られた新たな知見や人と人とのつながりが,新たな研究の進展やそれを通じた社会への還元 をもたらすことを期待している. 学会は,すでに社会実装され,ひとまず成立しているシステムである.このシステムを,いかにその本来の目的を 果たす範囲内で持続可能なものにできるか.これは一つのチャレンジであり,それを意識しながらあと 1 年の任期 を全うしたいと思う.
サステイナブルな学会運営
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