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あるクライン群の極限集合について

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Academic year: 2021

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(1)

あるクライン群の極限集合について

防衛大 山本博夫 (HIRO-O YAMAMOTO) 赤座は簡単なクライン群を構成しその極限集合のハウスドルフ次元は1以上であること を示した. ここでは赤座の結果を赤座の方法でパソコンを使って詳しく計算することによっ て, ほんの少しだけ改良し 1 を 105 に置き換えられることを報告する. 併せてささやかな 問題を提示する. 1. 4個の円で囲まれた基本領域を持つクライン群の構成$([\mathrm{A}])$ $E_{1}$

:

$z- \frac{2\sqrt{3}iZ/3-i/3}{iz-2\sqrt{3}/3}$ $E_{2}$

:

$z-\underline{2\sqrt{3}iZ/3+(\sqrt{3}+i)/6}$ $(\sqrt{3}-i)z/2-2\sqrt{3}i/3$ $E_{3}$

:

$z \mapsto\frac{-2\sqrt{3}iZ/3+(\sqrt{3}+i)/6}{(\sqrt{3}+i)Z/2+2\sqrt{3}/3}$ $2\sqrt{3}z/3-1$ $E_{4}$ : $z\mapsto\overline{-(\sqrt{3}+3)z}$ これらは全てある (ユークリッドの) 円の内と外を入れ替える位数2の楕円的変換であ

る. $E_{1},$$E_{2}E_{3,4}:E$ で生成される群を $G$ とする. $G$の元 $S$は全て $S=S_{n}S_{n_{-}}1\ldots s2S_{1},$$S_{j}\in$ $\{E_{1}, E_{2}, E_{3,4}E\},$$S_{j}\neq S_{j+1}$ と唯–通りに書ける. 自然数$n$ を Sの長さと言い, 長さを強調

するとき $S_{(n)}$ と書くことにする. $S_{(n)}$の形をした $G$ の元は全部で4

.

3n-l個ある.

注意 1. $G$ の元は全て–意に書けることを示すには (ある) 基本領域は内部が互いに素

な円で囲まれていることを仮定しなくても, 内部が互いに素な単純閉曲線で囲まれている

ことが仮定できれば良い.

2. 収束指数,X 一ビウス変換 $S$

:

$z\mapsto(az+b)/(cz+d)$,ad–bc $=1,$$c\neq 0$ に対して

ユークリッドの円 $|cz+d|=1$ つまり $|z-S^{-}1(\infty)|=1/|c|$ を Sのアイソメトリックサー

クルと言う. Sのアイソメトリックサークルの半径を $R_{S}$で表せば$R_{S}=1/|c|$ である. $G$の

元で $c=0$ つまり $\infty$ を固定するものは $id$ のみであるから $G’:=G-\{id\}$ の全ての元に

対しアイソメトリックサークルを定義できる. 正項級数 $P^{\mu}(G):=\Sigma_{S\in G^{\prime R_{S}^{\mu}}}$ を $G$ の

\mu

元ボアンカレ級数と言うことにする. さて $L_{(n)}^{\mu}(G):=\Sigma_{S_{(n)}}R_{S_{(n}}^{\mu})$ と定義すれば明らかに

$P^{\mu}(G)=\Sigma_{n=1(}^{\infty}L\mu n)$ である. $\delta(G):=\sup\{\mu;P^{\mu}(G)=\infty\}$ を $G$ の収束指数と言う. 良く知

られているように $0<\delta(G)<4$ である.

3. クライン群の極限集合のハウスドルフ次元と収束指数 1で構成したクライン群$G$は幾

何学的有限であることは直ちに分かるが, この場合は$G$の極限集合A(G):$=\{S(\infty);s\in G\}’$

のハウスドルフ次元$d_{H}(\Lambda(G))$ は $G$の収束指数

\mbox{\boldmath $\delta$}(G)

の丁度半分であることが$\mathrm{D}.\mathrm{S}\mathrm{u}\mathrm{l}\mathrm{l}\mathrm{i}\mathrm{v}\mathrm{a}\mathrm{n}[\mathrm{S}]$

数理解析研究所講究録

(2)

によって証明された. よって $d_{H}(\Lambda(G))$ を (下から) 評価するには

\mbox{\boldmath $\delta$}(G)

(下から) 評価 すれば良い. 注意2.

一般に集合のハウスドルフ次元の評価はその定義からすぐ解るように下からの

評価が上からの評価に比べて難しい. そこでハウスドルフ次元となんらかの関係のある量 を見つけてその量を下から評価することがよく行なわれる

. 今の場合

\mbox{\boldmath $\delta$}(G)

がその量である. 4. 定理 ここで改めて定理を述べる. 定理. 1 で構成したクライン群$G$ の極限集合のハウスドルフ次元は (実は) 105 以上で ある. 補題1. $0\leq\mu\leq 4$ とし自然数 $n$ を固定する. 任意の S\in G’に対し $*$ .-. $\frac{\Sigma S_{(n)}R^{\mu}S(n)s}{R_{S}^{\mu}}>1$ $.\sim \mathrm{m}$ . が成り立つと仮定すれば$P^{\mu}(G)$ は発散する. ただし仮定*において $S(n)S=Tu+n\ldots\tau u+1\tau_{u}\cdots\tau 1$

証明. 仮定より任意の $s_{(1)}\text{に対して}\Sigma S(n)R\mu s_{(}s(n)1)>R_{S_{(1)}}^{\mu}$ である. 両辺を全ての $S_{(1)}$に

ついて加えれば$L_{(n+1)}^{\mu}>L_{(1)}^{\mu}$ である.

同様に仮定より

$\sum_{S_{(n)}}R^{\mu}s_{()}S_{(n+}\mathfrak{n}1$

) $>R_{S_{(n+}1)}^{\mu}$ が成り

立つから両辺を全ての $S_{(n+1)}$につぃて加えれば $L_{(1)}^{\mu}2n+>L_{(n+1)}^{\mu}>L_{(1)}^{\mu}$ これを繰り返して

$P^{\mu}(G)>\Sigma_{k}\iota L\mu l\cdot L=1(kn+1)(\mu>)1arrow\infty(larrow\infty)$ を得る $\square$

次に$*$の成り立つ十分条件を求めよう

.

補題2. $0\leq\mu\leq 4$ とする. $k=1,2,3,4$ に対して $**$ $\sum_{j\neq S_{(-1}}k\sum_{S_{()}E_{\mathrm{j}}}n-1R^{\mu}n)>4^{4}$ が成り立てば*が成り立つ. 証明. 任意のメービウス変換 $S,T$に対し $R_{ST}=R_{S}R_{T}/|\tau(\infty)-S^{-1}(\infty)|$ が成り立つ $(\mathrm{F}\mathrm{o}\mathrm{r}\mathrm{d}[\mathrm{F};\mathrm{P}\cdot 40])$

.

また $G$

の非有界な基本領域の補集合の直径は

4

だから任意の

$0\leq\mu\leq 4$ と任意の $S$, S(n)\in G’ に対し $|S(\infty)-S(n)(\infty)|^{\mu}\leq 4^{4}$ である. これらと仮定より

$\frac{\sum s_{(n)}R^{\mu}s_{(n)}s}{- R_{S}^{\mu}}=\sum_{)S_{(n}}\frac{R_{S_{(n)}}^{\mu}}{|S(\infty)-S_{(}^{-1}n)(\infty)|\mu}\geq\sum_{n}S_{1)}\frac{R_{S_{(n)}}^{\mu}}{4^{4}}>1$

を得る. よって$*$が成り立つ. $-$ $\tau$ ’ 口 定理の証明. \mu を 21,$n$ を 13 とすればパソコンの力を借りて$**$の成り立つことを示すこ とができる. よって補題2より *が成り立ち補題1より $P^{2.1}(G)$ は発散する. このことは $\delta(G)\geq 2.1$ であることを示す. つまり $d_{H}(\Lambda(G))\geq 1.05$ を得る.

169

(3)

注意3. 補題

2

の証明で

2

番目の不等号の評価がいかにも乱暴である

.

赤座の原論文$([\mathrm{A}])$ では劣調和関数の性質等を使って左辺の分母をより精密に評価している

.

実際\mu $=1$ では あるが, なんと $n=5$ としても$*$が成り立つことを手計算で示している. 5. 問題 注意1でも触れたようにここで紹介した赤座の方法は非古典的ショットキー群,

つまり円とは限らない単純閉曲線で囲まれた基本領域を持つショットキー群の極限集合の

ハウスドルフ次元を調べるのにも有効である. また Chuckrow$([\mathrm{c}])$ によれば, ある (非古 典的) ショットキー群の列 $\{\Gamma_{j}\}^{\infty}j=1$の代数的極限に不連続でないクライン群r が存在する.

Bishop-Jones の定理 $([\mathrm{B}\mathrm{J};\mathrm{T}\mathrm{h}\mathrm{e}\mathrm{o}\mathrm{r}\mathrm{e}\mathrm{m}\mathrm{l}.5])$ によれば$\lim \mathrm{i}\mathrm{n}\mathrm{f}jarrow\infty dH(\Gamma j)\geq d_{H}(\Gamma)\geq 4$だから任

意の\epsilon $>0$ に対し $d_{H}(\Gamma_{\epsilon})>4-\epsilon$なる非古典的ショットキー群が存在する. 問題 1. 任意の\epsilon$>0$ に対し $d_{H}(\Gamma_{\epsilon})>4-\epsilon$なる非古典的ショットキー群を構成せよ. 現実には非古典的ショットキー群は僅かに1例しか知られていない $([\mathrm{Y}])$

.

問題1を甚だ しく倭小化して 問題 2. その非古典的ショットキー群の極限集合のハウスドルフ次元を下から評価せよ.

170

(4)

References

[A] T.Akaza, Singular sets of

some

Kleinian groups(II). Nagoya Math. J., 29 (1967), 145-162.

[BJ] C.Bishop and P.Jones, Hausedorff dimension and Kleinian

groups,

to appear.

[C] V.Chuckrow, On Schottky groups with applications to Kleinian groups, Ann. of Math.,

88

(1967)

47-61.

[F] L.Ford, Automorphic functions, Chelsea, New York,

1951

[S] D.Sullivan, Entropy, Hausdorff

measure

old and new, and the limit sets of geometri-cally finite Kleinian groups. Acta Mathematica, 153 (1983),

259-277.

[Y] H.Yamamoto, An example of a nonclassical Schottoky group. Duke Math. J.

63

(1991),

193-197.

参照

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