タンパク質と小分子の特異的な相互作用を利用した超分子タン
パク質集合体の構築
○大洞 光司・小野田 晃・林 高史(阪大院工)
Construction of Supramolecular Protein Assemblies using the Specific Interactions between Proteins and Small Molecules
Koji Oohora, Akira Onoda, and Takashi Hayashi (Department of Applied Chemistry, Graduate School of Engineering, Osaka University)
近年、生体内に存在する巨大なタンパク質複合体を素材として、薬物輸送や触媒反応場等のシステムを構 築する研究が注目されている。 しかしながら、魅力的な機能を有するタンパク質を人工的に集積化し、利用 するアプローチはまだ発展途上な段階である。 そこで、我々はタンパク質集積化のための相互作用として小 分子とタンパク質間の特異的な相互作用、特にヘムとヘムタンパク質の相互作用に着目した。 最近、我々は 単純なヘムタンパク質の一つであるシトクロム b562からなる超分子集合体について報告している 1。 本発表 では、さらなる機能化と超分子集合体としてのユニークな性質の発現を指向した酸素貯蔵ヘムタンパク質ミ オグロビン(Mb)をビルディングブロックとする超分子集合体について報告する2。 まずFig. 1a に示すように、マレイミドを有する合成へムを、システインを有する Mb 変異体 A125C に修飾 し、得られたヘム修飾Mb から天然へムを除去することで一次元状の超分子集合体を自発的に形成させた。 集 合体の形成はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および原子間力顕微鏡(AFM)を用いて評価した。そ の結果、大きいもので、400 nm 程に達する繊維状の構造体を形成し、その構造体の形成が熱力学的な平衡に 制御されていることが示された。 続いて、Mb の性質に注目し、得られた集合体のへムの第六配位子を水分 子からシアン化物イオンに変えたところ、ヘム鉄とタンパク質内の His93 の結合が強化され、集合体として の安定性が著しく向上した。 また、集合体に過酸化水素を添加したところ、過酸化水素と反応したヘムが酸 化活性種となり、アミノ酸残基上にラジカル種を生成し、集合体間でそれらのカップリング反応が進行した。 結果として、繊維状組織体がクロスリンクした三次元ネットワーク状構造体が走査型電子顕微鏡により観察 された。 さらに興味深いことに、繊維状および三次元ネットワーク状組織体は Mb の本来の機能である酸素 貯蔵能をほとんど保持していた。 以上の集合体の特徴的な性質は、Mb を変性させずに超分子的に集積化し、 モノマーユニットであるMb の性質を利用した結果であると考えられる。 本発表では上記の系に加えて、2種のタンパク質から構成される共集合体形成についても報告する。そ の概略をFig. 1b に示す。特異的な相互作用を持つ、もう一つのタンパク質と小分子のペアとして、ビオチン
とストレプトアビジン(SAv)を選択した。Mb 変異体 A125C のジスルフィド二量体と SAv が交互に並んだ 一次元状構造体の構築をめざして、Fig. 1b 中のようなビオチン二量体を有する合成ヘムを調製し、Mb dimer のアポ体に導入した後、SAv と混合した。 その結果、繊維状の交互共集合体を形成していることが、SEC お
よびAFM により示された。
Figure 1. Schematic representation of (a) supramolecular Mb polymer and (b) supramolecular SAv–Mb copolymer. (1) Hayashi, T. et al. JACS, 2007, 129, 10326. (2) Oohora, K. & Hayashi, T. et al. Chem. Sci., 2011, in press.