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( 良好な血糖コントロールを得るための自己注射治療 )=( 注射製剤 + 注入デバイス ) ( 患者の適正使用 ) ( 継続 ) モノ ヒト ( 注射製剤 + ペン型注入デバイス 針 ) 患者の適正使用 適正性 有効性 ( 高品質 ) 安全性 経済性 物質の性状 性質 特徴など 基礎薬学系 適正な保

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新潟薬科大学 薬学部*

朝倉俊成

医療デバイスの進歩〜糖尿病治療用注射製剤の

ペン型注入デバイスの変遷と療養指導の関係〜

Advancement in Injection Devices ~Relationships between Transitions in Injection Pen Devices of Diabetes Treatment and Diabetic Patient Education~

A basal-bolus regimen that better matches physiological insulin secretion is offered as a basis of insulin regimen to achieve tight control of blood glucose in a daily life. An insulin regimen includes Multiple Daily Injections (MDI) using insulin pens and Continuous Subcutaneous Insulin Infusion (CSII) using insulin pumps. Administrating insulin subcutaneously with a dose accuracy requires high-precision and high-quality delivery devices, as well as usability, easier to understand, comfort, and reliability for patients. The development of insulin delivery devices has added an improvement in these items through the long periods of time and stages. In the future it is expected to develop delivery devices that are able to deal with an “individual” including an addition of assistive functions for ensuring more accuracy in patients’ procedures; a more improved portability than before; and having programming functions to support detailed parts of each patients’ life under diabetic care.  日常生活において厳格に血糖をコントロールするために、インスリン療法の基本として、生理的 インスリン分泌に近い basal-bolus 療法が行われている。インスリン療法には頻回インスリン療法 (MDI)と持続皮下インスリン注入療法(CSII)があり、MDI ではペン型注入デバイス、CSII ではポン プ式注入デバイスによって行われる。インスリンを皮下に適正に注入するには高精度で高品質な注入 デバイスが必要で、同時に患者にとって操作性や認知性、快適性、そして信頼性などが得られるもの でなければならない。注入デバイスの開発は、長い期間と段階を経てこれらの項目について改良が加 えられてきたが、今後は患者の手技においてもより適正性が確保できるような補助機能の追加や今ま で以上の携帯性の向上、患者個々の糖尿病療養生活の細部に対応したプログラム機能を有するなど、 「個」に対応可能なデバイスの開発が期待される。 ToshinariAsakura*

Keywords: insulin self injection, basal-bolus regimen, injection pen device, insulin pump

*DepartmentofClinicalPharmacy,FacultyofPharmaceutical Sciences,NiigataUniversityofPharmacyandAppliedLifeSciences 1.はじめに  糖尿病の治療は、健康な人と変わらない QOL の 維持と、健康な人と変わらない寿命を確保すること を目標とし、そのためにはさまざまな合併症の発症・ 進展を阻止することが重要になる1)。すなわち、医 療においては血糖、体重、血圧、血清脂質の良好な コントロール状態を維持するために食事療法や運動 療法、そして薬物療法が導入される。薬物療法では、 種々の経口血糖降下薬とインスリン製剤や GLP―1 受容体作動薬の注射剤を病態に合わせて用いる。  インスリンは「劇薬」に指定され、さらに重症低血 糖を回避するために「ハイリスク薬」として位置づけ られる注射製剤である2)。1921年にインスリンが 発見されて以来、生理的なインスリン分泌の再現を 目的としたインスリン療法が勧められた。また、日 常生活で厳格に血糖をコントロールするには、患者 の病態や生活様式に合わせたインスリンの処方が必 要であることから、より有効な basal-bolus療法を 行うために超速効型から持効型製剤まで多くのイン 糖尿病疾患治療における DDS の進歩

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スリン製剤が開発されてきた。しかし、良好な血糖 コントロールを維持するためには、このような「病 態と薬剤効果(適応)」だけを重視し、新たな製剤開 発だけではうまくいかない。糖尿病治療の基本は、 「患者が自らの生活(生活動作や食事)を把握し、日々 の血糖を良好にコントロールするために適切な療 養生活を送ること」であり、患者の心理やアドヒア ランス向上への配慮も含めた“患者の視点で治療法 を改良する姿勢”は必要となる。以上のことから、 頻回インスリン療法(MultipleDailyInjections: MDI)ではインスリン注入デバイス(ペン型注入デ バイス)、持続皮下インスリン注入療法(Continuous SubcutaneousInsulinInfusion:CSII)ではポンプ式 注入デバイスの開発において、治療上の安全性・有 用性のほかに患者の使用性・簡便性に配慮すること が求められてきた。  そこで、本稿では糖尿病治療用注射製剤の注入デ バイス開発の歴史についてまとめ、特にペン型注入 デバイスの開発とともに療養指導との関係を考察す る。なお、本稿は筆者が日本くすりと糖尿病学会誌 「くすりと糖尿病」にまとめた内容3)をもとに加筆し た。また、本文中のデバイスには、すでに販売を中 止しているものがあるが、中止した期日の記載は省 略する。 2.自己注射療法を適正に行うためのポイント  自己注射治療で良好な血糖コントロールを得るた めには、「(注射製剤+ペン型注入デバイス)×(患者 の適正使用)×(継続)」という関係に注目して管理す る。「注射製剤」ではインスリンの作用と作用発現時 間・持続時間といった薬効や用法・用量、そして品 質管理、「ペン型注入デバイス」では適正にインス リンを体内(皮下)に注入するための精度や操作性 など、いずれも「モノ」を見極めることが基本とな る。「患者の適正使用」はこれらのモノを日常生活の なかで正しく実践できることや不具合時の対応も含 めたリスクマネージメント、「継続」は患者の QOL 適正性 有効性 (高品質) 安全性 経済性 物質の性状、性質、 特徴など 基礎薬学系 適正な保管 確実な識別(選択) 正しい 組み立て カートリッジ使用型 注入デバイス プレフィルド型注入デバイス 正しい混和・ 針の取り付け 正しい 後片付け (空打ち)試し打ち 正しくかつ 確実に注入 正しい 投与量設定 定期的な確認 良好な血糖 コントロール 継続 × 継続 操作 適正な品質保管・管理 リスクマネージメント (セーフティマネージメント) 適正な手技の実践 (作動確認も含まれる) 適正な部位に正しく穿刺 (手指機能)障害、 理解力低下への適応 恐怖感、痛み (不快感)など さまざまな(生活)環境 正しい知識と実践力 患者背景 (性格、行動、生活など) 適正な注射部位・注入操作 臨床系 心理面への アプローチ ニーズ 医薬品 (作用) 治療 QOLの向上 アドヒアランスの向上 簡便性 良好な使用感:官能性、機能性 コンプライアンスの向上 使用者の順応性 副作用: 低血糖(対処) (注射製剤 + ペン型注入デバイス、針) × 患者の適正使用 「モノ」 「ヒト」 (良好な血糖コントロールを得るための自己注射治療)=(注射製剤+注入デバイス)×(患者の適正使用)×(継続) 図1 自己注射に関わる管理すべきポイント

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(qualityoflife)や多様な生活様式にどのように適応 させるかなど、「ヒトの取り組み」に注目したアプ ローチが鍵となる(図1)4)。すなわち、ペン型注入 デバイス(モノ)には高精度・高品質なものが求めら れるが、同時に、患者(ヒト)にとって操作性(使用 性、簡便性、誤操作防止)や認知性(直感的に使用で きる)、快適性(心地よい)、そして信頼性(安全・安 心)などが得られるものでなければならない。 3.ペン型注入デバイスの種類  インスリン療法では、ディスポーザブルシリンジ による「バイアル−シリンジ型」のほかに、インスリ ンカートリッジ(以下、カートリッジ)を注入器に組 み込んで使用する「カートリッジ使用型」と、あらか じめカートリッジが組み込まれているディスポーザ ブルタイプの「プレフィルド(キット)型」のインスリ ンペン型注入デバイスが用いられる(図2;GLP―1 受容体作動薬のペン型注入デバイスも合わせて表 記)。現在、わが国ではおもにプレフィルド型が汎 用されているが、これまでのデバイスの開発には多 くのステップを経て現在にいたっている(図3)。新 規開発のペン型注入デバイスもあるが、多くは機種 の改良によるものである。また、なかには不具合な どから発売中止(回収)にいたった例もある。週1回 投与以外の GLP―1受容体作動薬では、インスリン のペン型注入デバイスを採用している例が多い。 4.ペン型注入デバイスの開発 4―1.シリンジからペン型へ(第1次開発、1998年頃)  1921年にインスリンが発見され、インスリン療 法は患者による注射が治療の主流になってきた。し かし、まだ注射針が太くて長いことから痛みや恐怖 感(不快感)があり、面倒であるなどの理由で自己 注射そのものがネガティブな印象で捉えられるよ うになった。そこで、ノボ社(現 ノボ ノルディス クファーマ)は医師重視の姿勢から患者に目を向け たデバイス開発を行った5)。その結果誕生したのが、 カートリッジをデバイス本体に組み込み、専用の極 図2 現在、主に使用されているペン型注入デバイス 注)各々の大きさの比率は異なる (2016年9月現在) プレフィルド型(キット型) バイアルーシリンジ型 インスリンバイアル製剤+専用シリンジ GLP-1受容体作動薬 イ ン ス リ ン 製 剤 カートリッジ使用型 ノボペン4(ノボ ノルディスク ファーマ) ヒューマペンラグジュラ(イーライリリー) イタンゴ(サノフィ) ビクトーザ皮下注18mg(ノボ ノルディスク ファーマ) バイエッタ皮下注5,10μgペン300(アストラゼネカ) リキスミア皮下注300μg(サノフィ) ビデュリオン皮下注用2mgペン(アストラゼネカ) トルリシティ皮下注0.75mgアテオス(イーライリリー) ミリオペン(イーライリリー) フレックスペン(ノボ ノルディスク ファーマ) フレックスタッチ(ノボ ノルディスク ファーマ) ソロスター(サノフィ) インスリングラルギンBS注キット「FFP」 (富士フィルムファーマ) イノレット (ノボ ノルディスク ファーマ) ビデュリオン皮下注用 2mg (アストラゼネカ)

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細の注射針で注射するという現在のペン型注入器の 形式である。これによって、バイアルから1回毎に インスリンをシリンジで吸引する必要もなくなり、 外観上もシリンジには見えない「ペン型」が登場した (注射器から注入器への変革)。  ペン型への変革は、患者の恐怖感や不便さを改善 しただけではなく、安全性と有効性といった適正性 も患者の使用下で向上させた。ペン型注入デバイス の携帯性および便利さから、患者の日々の食事計画 および活動がより柔軟になった6 ,7)。ペン型注入デ バイスはコンパクトで目立たず、患者が外出すると きも使用が容易で、これらの特徴が公での注射器使 用にともなう社会的不安を減少させたという報告も ある8)。筆者は、インスリン療法を専門とする医療 従事者(30名)と専門としない者(20名)に10単位分 のインスリンを注射してもらったときの液量を計測 図3 わが国におけるペン型注入デバイスの発売の歴史 (2016年9月現在) ノボペン® ノボペン® ノボペン® ノボペン®300 ノボレット® イノレット® フレックスペン® 新フレックスペン® フレックスタッチ® ビクトーザ® ノボペン®4 インノボ® オプチペンプロ® ランタス注®キット オプチクリック® イタンゴ® ソロスター® XR 用 リスキミア® オートペン® ヒューマペン®エルゴ ラグジュラ® ヒューマカート®キット ミリオペン® ミリオペン® バイエッタ® アテオス® BD ペンジェクター® ビデュリオン皮下注用 ビデュリオン皮下注用ペン インスリン プレフィルド BS「FFP」 2016 GLP-1 受容体作動薬 1996 1997 1998 2001 2005 2008 2011 2016 2016 2003 2005 2009 2003 2008 2016 2013 GLP-1 受容体作動薬 インスリン プレフィルド インスリン プレフィルド 2000 1990 2010 2009 2010 2012 2008 2002 1994 2000 2001 1988 1989 1993 1998 GLP-1 受容体作動薬 インスリン プレフィルド GLP-1 受容体作動薬 インスリン キット した試験を行った。その結果、ペン型注入デバイ スであるフレックペン®(ノボノルディスクファー マ:以下、FP)使用群では両者とも高精度で差は見 られなかったが、シリンジ群では専門としない者で 誤差が大きくなった9)。このことは、シリンジでの 注入精度は“慣れ”に大きく影響されたが、機械的に 投与量を設定することができるペン型注入デバイス では排出インスリン量が一定であることを示してい る(図4)。このことから、ペン型注入デバイスは使 用性や簡便性のほかに、信頼性を確保するうえで有 用な医療用具として認知されるようになった。  ペン型注入デバイスとしてはじめに登場したの は、「カートリッジ使用型」の原型といえるノボペ ン®(ノボノルディスクファーマ:以下、NP)であ る。この基本的な構造は、内部に薬液のカートリッ ジが組み込まれており、そこから設定した量の薬液

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ない項目が存在し(図5)、同時に患者への適正使用 のための基本的な指導内容が確立した。  登場した NP は注入ボタンを1ノックで2単位注 入することができ、組み立ても単純で操作がわかり やすかった。しかし、多量のインスリンを必要とし た患者ではノック数が増える、また2単位刻みでし かインスリン量を調整できないという理由で、1単 位刻みで調整可能で、1度投与量を設定すれば1ノッ クで注入完了にできる注入器開発が望まれるように なってきた。 4―2. 「カートリッジ使用型」ペン型注入デバイスの 普及(第2 次開発、1 9 8 9 年〜1 9 9 3 年頃)  新たに開発されたのがノボペン®Ⅱ(ノボ ノル ディスク ファーマ)やノボペン®Ⅲ(ノボ ノルディ スクファーマ)、ヒューマペン®エルゴ(イーライリ リー)などの「カートリッジ使用型」のペン型注入デ バイスである。いずれも NP以来、カートリッジを 乾電池のようにデバイスに組み込み、使用してなく なったら交換するという仕組みであるが、設定した 図5 ペン型注入デバイスの機構と、材質、形状などによって特徴づけられる項目・関連するトラブル例 インスリン 針 インスリンカートリッジ ゴム栓 ゴムピストン 注入ピストン 押し込む 投与量設定ミスなど ペン型注入デバイスの機構 品質低下(温度、光に よる影響)、逆血など 落下によるガラス破損など 液漏れ、空気混入、注入抵抗の増大など 識別低下(取り違い)など *注入精度の低下、  不具合など

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医薬品の品質 耐衝撃性 ゴムピストン 注射針 ゴム栓 混和 残量目盛 太さ グリップ感 キャップの ホールド性 表示・識別性 注入機構 ◯◯◯注◯◯ 投与量設定ダイ アル回転トルク せり出し クリック音 注入抵抗 確実な注入 投与量数字 投与量表示 *未嵌合、針詰まり、   針折れ、破断など 残量不足など 投与量設定ミスなど *破裂、亀裂、   コアリング→   液漏れなど (懸濁製剤の場合) 混和不足→   濃度不均一 落下破損、光の影響など 患者がうまく握れない、滑る (注入できない→   注入精度への影響)など *注入不足(注入精度の低下) など *:注入精度の低下に大きく影響する項目 図4  インスリン療法を専門とする医療従事者(30名)と専門としない者 (20名)を対象とし、注入デバイス(FlexPen®)とシリンジを用いて 10単位のインスリンを排出したときの排出インスリン量(単位)の比 較 (文献9より) HCPs:医療従事者 を注入するというものである。現在まで、この基本 的な機構は変わらず、ペン型注入デバイスの部品(材 質)、構造や形状から、操作上留意しなければなら

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インスリン量を1回の注入ボタンの押し込みで注入 できるというペン型注入デバイスに切り替わった。 しかし、わが国では高齢者の糖尿病患者が多いこと から、カートリッジを交換する(組み立て)操作が患 者指導の上で非常に障害になってきた10 ,11)。さらに、 自然災害(地震)などで1本のペン型注入デバイスが 破損してしまった場合、交換用のカートリッジが何 本あっても使用することができない。このようなリ スクマネージメントの観点からも、カートリッジ交 換をしなくてもよい「プレフィルド(キット)型」ペン 型注入デバイスの開発が望まれてきた。 4―3. プレフィルド(キット)型ペン型注入デバイス の登場(第3 次開発、1 9 9 4 年〜2 0 0 0 年頃)  プレフィルド型ペン型注入デバイスとして、ノボ レット®(ノボノルディスクファーマ:以下、NL) が登場した。NL は、これまでのカートリッジ使用 型に比べて材質の変更で軽量化されており、インス リンがなくなるとそのまま廃棄するというプレフィ ルド型特有の新しいスタンスを定着させた。しかし、 単位設定はキャップを使用して行うものであり、操 作性において不便な点が指摘されていた。この点も 含めて、高齢者や手指障害、視覚障害がある患者で も適正かつ容易に使用できるデバイスが求められ、 改良と新たなペン型注入デバイス開発の時期へと移 行する。 4―4. 高齢者向けのペン型注入デバイスの登場 (第4 次開発、2 0 0 1 年頃)  高齢者向けに登場したのがイノレット®(ノボ ノ ルディスク ファーマ:以下、IL)である。IL は、 これまでの「ペン型」とは違って「箱型(キッチンタイ マー型)」という形状で握りやすく、注入ボタンの表 面も広く湾曲させることで押しやすさを向上させた デバイスである。そのため、高齢者や手指などに障 害がある患者への第1選択という位置づけで広く使 用されるようになった。この IL が登場してから高 齢者への自己注射導入が進むようになり、後述の「プ レフィルド型(キット型)」とともに広く外来診療で 自己注射が導入されるようになってきた(図6)12) そして、同時期に携帯性や使用感の向上、さらに高 品質を目指したデバイスが求められた。 4―5. 操作性と高精度を目指した注入機構の改良・ 開発(第5 次開発、2 0 0 0 年〜2 0 1 3 年頃)  2000年頃から各社とも「カートリッジ使用型」や 「プレフィルド(キット)型」の主力製品を発売し、自 己注射は広く普及した。しかし、同時に臨床で多く の問題点が指摘されるようになってきた。1つは、 患者の手指や視覚などの障害によってペン型注入デ バイスを適正に使用できないケースの存在。もう1 つは、臨床で自己注射のトラブルやペン型注入デバ イスの不具合報告が増加してきたことである。その ため、各ペン型注入デバイスとも単に注入するとい う道具から、“どのような患者に有用なのか”という 具体的な使用性や選好性をもとにした差別化ととも に、ペン型注入デバイスの安全性が評価されるよう になってきた。さらに、自己注射の療養指導に関与 する医療従事者は、ペン型注入デバイスの特徴を活 かした臨床での使用や患者指導のあり方について注 目するようになり、ますますペン型注入デバイス開 発が“患者中心”に移行してきた。  例えば、その1つに単位設定表示の数字の大きさ の比較がある。現在のほとんどのペン型注入デバイ スの投与量設定数字の大きさは新聞の文字程度であ り、日常生活において大きな問題ではない。しかし、 視力の程度によっては数字が認識できないケースも あることから、投与量数字の表示法の認識性を高め るといった点においても開発に力を入れるように 図6 ペン型注入デバイスの対象者年齢と指導所要時間 ヒューマカートキット (分) (歳) 年齢 外来での自己注射導入が 容易になった mean±SD カートリッジ製剤使用注入器 プレフィルド製剤 ノボペン300 ヒューマペンエルゴ 指 導 所 要 時 間 0 20 40 60 80 40 50 60 70 80 フレックスペン イノレット

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入ボタンを押しても滑りが悪い」ものの「注入ボタン を押している感覚があるのが安心できる」といった 意見もある。  筆者は、小児の1型糖尿病患者が突然高血糖に なったという事例を経験した13)。その原因は、オプ チクリック®(アベンティスファーマ)のゴム栓でコ アリングが生じたことで、注入時に液漏れを起こ し、適量のインスリン製剤が排出されなかったため であった(図8)14)。その後、この製剤のゴム栓の改 良が行われた。これまでにも、実際に臨床で経験し たトラブル事例や検証試験などから、ペン型注入デ バイス使用上の注意喚起や回収が報告され、改良ま たは(全部、一部の)使用中止になっている事例があ る(表1)。  このように、安全・安心なペン型注入デバイスを 目指して改良は進んできたが、根本的に注入機構を 改良しないと解決できない事例も残っていた。手指 障害や握力低下の患者では、適正に注入操作を行う ことが困難な場合がある。すなわち、「ペン型注入 デバイスをしっかりと握って保持しながら、せり出 した注入ボタンを垂直に最後まで押し込む」という 操作が難しい事例がある(図9)。垂直、斜め(14 .7°) から注入ボタンを押し込んだときの注入抵抗を測 図7  ミリオペン® (MP)、ソロスター® (SS)、フレックスペン® (FP) の注入抵抗 図8 フレックスペン® とオプチクリック® の注入精度の比較(30単位注入時)

All doses within specified range FlexPen®

(n=5; 9 doses per pen) OptiClik

®

(n=5; 9 doses per pen)

Investigator specified dose accuracy range (± 1.5 U; based on ISO standards)

>10U inaccuracy!

Consecutive doses from each of 5 pens ■ □ ● ○ ◆ Pens 1 to 5

Consecutive doses from each of 5 pens ■ □ ● ○ ◆ Pens 1 to 5 0 19 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 32

Discharged insulin dose

( U) 0 19 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 32

Discharged insulin dose

( U) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 なった。同時に、医療従事者は患者の視力を確認し てより患者にあった注入器を選択するといった、患 者の使用性からペン型注入デバイスを選択するとい う基準も打ち出されるようになった。  また、注入時に患者の指に伝わる抵抗(負荷)が、 患者の使用性評価に影響することも確認されてい る。図7に示すように、ミリオペン®(イーライリ リー:以下、MP)とソロスター®(サノフィ:以下、 SS)はスムーズに注入できる。そのため「注入しや すい」という意見が多いが、スムーズであるために 「注入されている感覚がないので不安だ」という意見 もある。一方、FP では小さな波が存在するために「注 ゴムピストンの変位(mm) 注入抵抗値(N) 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 0 2 4 6 8 10 12 14 MP SS FP (文献14より)

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表1 主なペン型注入デバイスの不具合事例 注入デバイス名 メーカー 内容 備考 2 0 0 0 9 インノボ3 0 0 ノボ ノルディスク ファーマ 回収(クラスⅠ) 注入器の解除ボタンの不作動 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kaisyu/00 -1 -006 .html 2 0 0 1 2 ヒューマペンエルゴ イーライリリー 回収(クラスⅠ) カートリッジホルダーの爪折れ http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/ kaisyu/00 -1 -015 .html 8 ノボペン3 0 0 ノボ ノルディスク ファーマ 回収(クラスⅠ) 内部部品の不具合 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/ kaisyu/01 -1 -029 .html 2 0 0 1 1 2 ヒューマカート R、 3 /7 注キット イーライリリー 回収(クラスⅡ) 内部部品の不具合 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/ kaisyu/kaisyuu2001 -2 -318 .html 1 2 ヒューマログ注キット イーライリリー 回収(クラスⅡ) 内部部品の不具合 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/ kaisyu/kaisyuu2001 -2 -298 .html 2 0 0 4 2 ランタス注キット3 0 0 アベンティス ファーマ 回収(クラスⅠ) 誤操作による故障と投与量の異常 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/ kaisyu/kaisyuu2003 -1 -077 .html 3 オプチペンプロ1 アベンティス ファーマ 緊急安全性情報 過量投与となるおそれがある不具合 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2 0 0 4 /0 3 / h0305 -2 .html 2 0 0 5 6 オプチペンプロ1 アベンティス ファーマ 医薬品・医療用具 等安全性情報 過量投与となるおそれがある不具合 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2 0 0 4 /0 6 /s0624 -4 .html 9 オプチクリック アベンティス ファーマ 注意喚起 液漏れ http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005 /09 / h0930 -7 .html 2 0 0 7 2 オプチクリック アベンティス ファーマ 回収(クラスⅡ) 投与量設定ディスプレイの異常 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/ kaisyu/2006 /kaisyuu2006 -2 -2511 .html 図9 障害は注入操作にどのように影響するか 定すると、FP と SS では斜めからの注入で注入抵 抗の上昇や波形の乱れが生ずる(図10)。これを改 善するには、図9に示したようないくつかの改良 点を実現する必要があった。それに対して、IL や MP では、垂直でなくとも注入抵抗を高めることな く注入ボタンを最後まで押し終えることができる (図10)。ただし、それでも注入ボタンのせり出し をなくすことはできず、完全に問題を解決したとは 手指障害 握力低下 a.「せり出し」が負担 b.「注入抵抗」が負担 c.努力して「押し込む」 d.本体をしっかりと握ることができない 最後まで押し込む しっかりと握る(保持) e.「不安定」になる (震える、動く、傾くなど) 注入精度の低下、注射の痛み増大 「せり出し」をなくす 「注入抵抗」をなくす 「押し込まない」 システムにする 握りやすくする 安定性を高める 適正な注入、QOL向上 臨床でよく見られる問題点 改良点:必要とされる注入デバイスの特徴

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いえなかった(図11上段)。そこで、注入ボタンの せり出しをなくために、新たな注入機構で稼働する ペン型注入デバイスの開発が待たれていた15 ,16)。以 上のように、この時期からペン型注入デバイスの機 構が患者の使用性に大きく影響することに視点が向 くようになってきた。 4―6. 半自動型患者ペン型注入デバイスの開発 (第6 次開発、2 0 1 3 年〜)  フレックスタッチ®(ノボ ノルディスク ファー マ:以下、FT)は、内部にトルクスプリングを用い て半自動的に注入を行う17)。したがって、FT では 注入ボタンのせり出しはなく、「本体を軽く固定し て注入ボタンを軽く押すだけ」という操作が可能に なった(図11上段、図12)。しかし、FT はこれま でと異なった注入機構であることから、医療従事者 は、患者に対して新たな注入機構の特性を押さえた うえで使用上の説明を変える必要がある。例えば、 これまでのペン型注入デバイスの稼働はすべて患者 自身の制御に委ねられてきたが、FT では注入ボタ ンのせり出しがなく、注入は半自動的に稼働するた め、患者にはいつまで注入ボタンを押せばよいかわ かりにくい。このような自動化が進んだ注入機構に おいては、患者に異常を警告するアラート機能や、 操作状態を認識してもらうための信号(音響、振動 など)を発するフィードバック機構が重要になる。 そこで、FT では単位設定操作(正回転と逆回転)と 注入操作(注入途中と完了)で計4種のクリック音を 発するようにしている。  半自動型という新たな機構を有する FT がどの程 度操作性を高めたかを確認するために、従来の注入 機構の SS と MP を対象に、使用性と選考性を評価 した結果がある18)。この試験は、1型糖尿病と2型 糖尿病患者でペン型注入デバイス使用者とインスリ ン未治療者の合計90名、医師、薬剤師、看護師の 合計60名を被験者とし、FT、SS、MP の使用順序 図1 0 垂直、斜め(1 4 .7°)から注入ボタンを押し込んだ時の注入抵抗の推移 イノレット フレックスペン ソロスター ミリオペン 注入抵抗 ( N) 注入抵抗 ( N) 注入抵抗 ( N) 注入抵抗 ( N) 0 5 20 25 15 10 0 5 20 25 15 10 0 5 20 25 15 10 0 5 20 25 15 10 0.98 0 9.98 8.98 7.98 6.98 5.98 4.98 3.98 2.98 1.98 10.98 0.98 0 9.98 8.98 7.98 6.98 5.98 4.98 3.98 2.98 1.98 10.98 変位(mm) 変位(mm) 垂直 垂直 垂直 垂直 変位が極端に短いものがある 波形(振幅)が重なってない 波形(振幅)が重なっている 注入抵抗が増加 垂直 14.7° 速度:10単位/秒 n=各10 0.98 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 9.98 8.98 7.98 6.98 5.98 4.98 3.98 2.98 1.98 10.98 変位(mm) 変位(mm) (文献15より)

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図1 2 2種のペン型注入デバイスと注入機構の違い 注)実際の大きさの比は異なる。内部を示すために模式化している。 薬 液 新たな注入機構(FT) 従来の注入機構(例:FP) 注入ボタン 投与量設定 ダイアル 投与量表示窓 注射針 ゴムピストン カートリッジ 注入ボタンを押す 投与量設定時に トルクスプリング に蓄えられた力 が解放される ゴムピストンが薬液 を押し出す 注射針より薬液が 排出する せり出しがない せり出した注入 ボタン軸(設定量 に比例してせり 出す) トルクスプリング せり出した注入 ボタンを真上から 完全に押し込む 注入ボタン軸が 回転しながら押し 込まれる 注入ボタンを 押し込む際、滑ら ないように しっかり握る ゴムピストンが薬液を 押し出す 注射針より薬液が 排出する (文献17より) 図1 1 従来のシステムの限界と半自動型の必要性 従来の 「押し込みタイプ」 最後まで押し込む ボタンを押し込む せり出した隙間に 触れない 注入器の固定 しっかりと握る(保持) 指 握る フレックスタッチ(FT) 「最後まで押し込む」ほどの力は不要 「しっかりと握る(保持)」ほどの力は不要 半自動型の開発 指 押す 軽く持つ 支える ピンチ力 握力 イノレット(IL) ミリオンペン(MP) 斜めからでも押し込むことができる 垂直に(真上から)押し込む 「せり出し」を押し込み続ける 「せり出し」をなくす 半自動型の 「押すタイプ」 問題解決 問題解決 従来の注入デバイスでは 解決できない問題 新たな注入機構の 必要性

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による群を設定して被験者を層別に無作為に割り付 けて試験したものである。結果の一部として、最良 スコア(5点)の評価を行った被験者数の割合を注入 器別に示した(表2)。「使いやすさ」は SS と MP が 9 % に対して FT が33 % と最も多く、ほかの項目 でも FT が高評価であった。特に注目したい項目は、 「注入ボタンが押しやすい」「注入のしやすさ」「注入 時のペン型注入デバイスの長さ」「注入ボタンに指が 届く」である。設定投与量に比例して注入ボタンの せり出しがある SS と MP では、投与量の増加にと もなって高く評価した被験者数の割合が減少するの に対し、せり出しがない FT は一定の割合を保って いた。さらに、信頼性においても FT を高く評価し ている割合が多かったことから、注入機構の違いが 患者の使用性・選考性に大きく反映し、新たな注入 機構が注入操作全般にわたって有用であることが確 認されている。 5.ポンプ式注入デバイスの変遷  インスリンのポンプ式注入デバイス(ポンプ)は、 1960年代初頭に Dr.Kadish にてアイディアが出さ れ、その後さまざまな医学者により研究がなされた (図13)。1979年に英国の Dr.Pickup がはじめて ポータブルのシリンジポンプを原理としたポンプ を報告し、その後、より小さな装置と注入回路が 表2 フレックスタッチ®(FT)、ソロスター®(SS) 、ミリオペン®(MP)の使いやすさ、信頼性に関する評価 項目(n=1 5 0) スコア5 点の選択割合 フレックスタッチ®(FT) ソロスター®(SS) ミリオペン®(MP) 使いやすさ 使いやすさ 33 % 9 % 9 % 握ったときの安定性 41 % 2 3 % 2 8 % 注入ボタンの押しやすさ 58 % 1 4 % 1 9 % 注入ボタンを押しきったことのわかりやすさ 47 % 1 6 % 1 5 % 投与量メモリの表示 2 1 % 1 9 % 1 8 % カートリッジホルダーによる識別性 55 % 8 % 7 % 注入操作中の識別性 53 % 8 % 7 % 注入ボタンが押しやすさ 2 0 単位 59 % 23 % 19 % 4 0 単位 50 % 7 % 9 % 最大投与量* 39 % 1 % 5 % 注入のしやすさ 2 0 単位 53 % 21 % 21 % 4 0 単位 45 % 1 1 % 1 3 % 最大投与量* 33 % 3 % 5 % 注入時のペンの長さ 2 0 単位 35 % 15 % 12 % 4 0 単位 33 % 6 % 5 % 最大投与量* 32 % 0 % 3 % 注入ボタンに指が届く 2 0 単位 55 % 24 % 28 % 4 0 単位 54 % 1 3 % 1 6 % 最大投与量* 52 % 2 % 9 % 信頼性 正確な投与量に対する信頼性 35 % 2 4 % 2 0 % 日常的なインスリンの注射管理 36 % 2 3 % 1 9 % 使用した注入器による血糖コントロール 21 % 1 5 % 1 2 % 識別性に対する自信 39 % 2 1 % 2 0 % *最大投与量:フレックスタッチとソロスターは80単位、ミリオペンは60単位。 高評価であるスコア5を選択した割合を示している。 (文献18より)

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andComplicationsTrial)の結果が報告され、1型糖 尿病の管理には、MDI または CSII による厳格な血 糖コントロール(強化療法)は、従来のインスリン療 法と比較して HbA1 c の改善や合併症進行リスクを 低減させるのに有効であることが証明された。そ の後の追跡調査(EDIC:EpidemiologyofDiabetes InterventionandComplications)からも、CSII の選 択肢を検討することが理にかなっているとされ20) わが国でもポンプによる CSII が増加している。ポ ンプはポンプ本体と注入セットからなる。MDI で はペン型注入デバイスに注射針を装着し、持効型と 超速効型などのインスリンを併用して1日数回皮下 注射を行うが、CSII ではポンプ本体にあらかじめ インスリンを注入したリザーバーをセットし、機械 的にリザーバーから一定の basal インスリン量を一 定時間に排出する。bolus インスリンは、注入のボ タン操作直後に一定時間でインスリンが注入され る。(図14)21)。ポンプ本体は設定されたプログラ ムによって作動する電子機器であるため、患者個々 に合わせて設定できるプログラムの柔軟性(ソフト 面:最小注入量と最大注入量、注入速度の設定、ま た bolus インスリンの注入量を自動計算する機能の 有無など)と、患者の生活環境に耐えうる電子機器 図1 3 世界で最初のインスリンポンプ (http://www.medscape.org/viewarticle/460365 _2) Dr. Arnold Kadish of Los Angeles,

California, devised the first insulin pump in the early 1960s. It was worn on the back and was roughly the size of a Marine backpack 図1 4 MDI と CSII の比較 (http://www.medtronic-dm.jp/what-is-csii/ より一部改変) インスリン注射 MDI(ペン型注入デバイス) CSII(インスリンポンプ) 注入法 ペン型注入デバイス+注射針 ポンプ+注入セット 種 類 持効型+超速効型など 超速効型 回 数 1日1〜5回 2~3日に1回のカニューレ留置 一定量のインスリンが一度に皮下に注入 一定量のインスリンが少量ずつ皮下に注入 多くのメーカーから発表された19)。1993年に大規 模な臨床試験である DCCT(TheDiabetesControl

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としての耐久性や携帯性(ハード面:防水性など)な どが開発の大きなポイントになる。注入回路は、ポ ンプ本体から皮下へインスリンを注入するチューブ と穿刺針(金属針の翼状針とカニューレだけを皮下 に留置する留置針タイプ)である21)。インスリンの 注入量は、血糖自己測定(SMBG:Self-monitoring ofBloodGlucose)や 持 続 血 糖 モ ニ タ ー(CGM: ContinuousGlucoseMonitoring)を参考に調節す る。 わ が 国 で は、2015年 に リ ア ル タ イ ム CGM の機能を持ったインスリンポンプ(SAP:Sensor AugmentedPump)療法が開始された(図15)。こ れまで CSII で使用されているパラダイム®インス リンポンプ722(メドトロニック)と、最新の SAP であるミニメド®620インスリンポンプ(メドトロ ニック)の仕様において、日本語表示になったこと や安全性、各種設定などで大幅に改良されている ことが確認できる(図16)22)。なお、リアルタイム CGM は、皮下間質液の糖濃度を測定しているため 血糖値そのものではない。そのため、実際の血糖値 とは経時的に多少のずれが見られるが、ほぼリアル タイムに血糖に近似させた皮下間質液の糖濃度(セ ンサーグルコース値)の変化が得られるため、血糖 の自己管理に有用である23)。SAP は、すべて機械 が血糖をコントロールするというものではない。ま た、前述の通り CGM の値と血糖の値は時間的なず れがあることから、SMBG を用いながら補正する 必要がある。  CSII は MDI より生理的なインスリン分泌が再現 できるため、重症低血糖のリスクの低下やより厳格 な血糖管理が期待され、皮下注射の回数が減るので QOL が改善する。しかし、常にポンプを装着する といったストレスで QOL が低下する患者もいる。 ポンプのトラブルも生じやすいので、注意が必要で ある。ポンプは水や熱に弱いので、入浴・シャワー、 図1 5 SAP 療法2 3) (廣田勇士, プラクティス ,32 ,678 -684(2015)より) ミニメド 620G インスリンポンプ CGM:トランスミッタ ケアリンクプロ 皮膚 グルコースセンサー 間質液 細胞 グルコース 血液 間質液グルコース値を測定 5 分間の平均値をポンプに表示 インスリンポンプ・CGM データを レポートに表示 毎日の CGM グラフ, アラーム発生回数などを 最大 3 ヵ月記録

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サウナなどに注意する。また、海外旅行時などでは 内蔵されている時計の設定に注意する。なお、空港 のセキュリティーチェックでは、X線検査には通さ ない。これらは、機械的な問題であるので今後、何 らかの改良があればより使用しやすい。注入回路に 関しては、皮下硬結やかぶれなどの皮膚トラブルの ほかに、皮下注入セットの未交換によるカニューレ の閉塞や就寝時の注入チューブのもつれなどによる インスリン注入途絶トラブルがある。なお、これに よるケトアシドーシスの発症予防策を講じておく ことは、すべてのポンプ使用者に重要なことであ る24) 6.今後の展望  現在のペン型注入デバイスの機構では、1本の カートリッジを何回かに分けて注射するため、カー トリッジ内へ血液が逆流する可能性がある。吉原ら は、血液の逆流によってインスリン濃度が有意に減 少することを報告しており、患者への適正な手技の 徹底以上に、血液が混入しないような機構の開発も 必要と考える25 ,26)。ポンプのチューブ交換は、原則 的に3日に1回実施するが、4日以上同じ穿刺部位を 使用することで皮下に挿入したカニューレが徐々に 閉塞してくるため、インスリン注入量が減ることが 図1 6 パラダイム インスリンポンプ7 2 2 とミニメド6 2 0 インスリンポンプの仕様比較 (メドトロニック、ミニメド620インスリンポンプ説明書、2016より)

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文献  1)日本糖尿病学会編・著,“糖尿病治療ガイド2016-2017”, 文光堂,東京,26(2016)  2)朝倉俊成,日本薬剤師会雑誌,63,1335-1340(2011)  3)朝倉俊成,くすりと糖尿病,4,31-39(2015)  4)朝倉俊成,ファルマシア,51,442-446(2015)  5)W.ChanKim,RMauborgne,有賀裕子訳,“ブルー・オーシャ ン戦略”,武田ランダムハウスジャパン,東京,90-92(2005)  6)EChantelau,etal.,PatientEducCouns.,30,167-173(1997)  7)CharlesF,etal.,PractDiabInt.,19,104-107(2002)  8)LindaM.H,etal.,DiabetesCare,20,292-298(1997)  9)ToshinariA,etal .,DIABETESTECHNOLOGY& THERAPEUTICS,11,657-661(2009) 10)朝倉俊成ほか,プラクティス,13,263-267(1996) 11)朝倉俊成ほか,プラクティス,13,575-579(1996) 12)朝倉俊成ほか,Prog.Med.,23,3381-3385(2003) 13)朝倉俊成ほか,プラクティス,22,713-718(2005) 14)TAsakura,JournalofClinicalResearch,8,33-40(2005) 15)朝倉俊成ほか,Prog.Med.,29,1851-1856(2009) 有効のほかに、患者の使用感や選好性なども加味し ながら行われてきた。今後はトラブル時だけではな く、通常の手技においてもより適正性を無理なく確 保できるような補助機能の追加、今まで以上の携帯 性の向上、患者個々の糖尿病療養生活の細部に対応 したプログラム機能の充実(スマート機能の応用)な ど、単に「モノ」だけではなく「個」に対応可能なデバ イスの開発が期待される。なお、開発が進めば高価 になる可能性がある。医療保険制度の整備も含め、 医療費に関しても注目しておく必要がある。 16)TAsakura,JournalofDiabetesScienceandTechnology,5, 1203-1209(2011) 17)朝倉俊成,Prog.Med.,35,585-594(2015) 18)朝倉俊成ほか,くすりと糖尿病,3,147-156(2014) 19)川村智行ほか,“1型糖尿病お役立ちマニュアルPart4”,日 本 IDDM ネットワーク,東京,25-29(2010) 20)雨宮伸ほか監訳,“インスリンポンプと CGM”,医歯薬出版, 東京,12-17(2015) 21)http://www.medtronic-dm.jp/what-is-csii/(最終閲覧日: 2016 年9 月1 日) 21)小林哲郎ほか編集,“インスリンポンプ療法マニュアル”,南 江堂,東京,13-16(2014) 22)メドトロニック,ミニメド620 インスリンポンプ説明書, 2016 23)廣田勇士,プラクティス,32,678-684(2015) 24)伊藤新,プラクティス,32,685-692(2015) 25)朝倉俊成ほか,Prog.Med.,23,3066-3071(2003) 26)吉原博夢ほか,糖尿病,59,179-187(2016) 27)朝倉俊成ほか,プラクティス,23,577-580(2006) 図1 7 ペン型注入デバイス使用時の操作項目におけるミスの割合 (朝倉俊成ほか , プラクティス ,23(5),577 -580(2006)より) ある24)。したがって、適切なポンプの使用法や注入 セットの交換法の指導が必要となる。  このように、いずれの場合も患者が適正な手技を 自己流で変更している場合があり、特にベテランで あると思っている患者ほど、手技の再確認を行う必 要がある。著者らの調査では、患者が自己流でアレ ンジしたり忘れている操作項目に特徴があり、それ をチェックすることが必要であることが明らかに なっている(図17)27)  これまでの注入デバイスの開発は、安全・安心、 インスリン単位の設定の誤り インスリン製剤の種類・商品名を知らない 針を取り外すとき針キャップは使用した 試し打ち・空打ちの未実施 インスリン注射の注射時刻の誤り 懸濁インスリン製剤での注射前の混和忘れ 注射しているインスリン単位の誤り 針を正しく刺していない インスリン製剤の保管場所の誤り 注射の部位の誤り % 69.2%(198名) 65.7(188) 注入後に針を抜くまで注入ボタンを押したまま にしていない 注入終了後のカウントの未実践 39.2(112) 19.9(57) 12.9(37) 6.1(14)* 3.8(11) 3.8(11) 2.4(7) 2.4(7) 2.1(6) 0(0) 対象:インスリン自己注射を3年以上実施している糖尿病患者 複数回答 n=ミス項目を有する患者286名 *n=懸濁インスリン製剤を使用していてミス項目を有する228名 ミスの割合 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

参照

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